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重症脳卒中および頭部外傷における急性期モニタリング

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Academic year: 2021

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(1)● 新評議員. 重症脳卒中および頭部外傷における急性期モニタリング 小泉 博靖1*,鈴木 倫保2. 要 旨  近年,頭蓋内圧と血圧変動の相関係数を指標とした重症脳損傷の急性期モニタリングが注目されている.脳 血管自動調節能の作用が血圧変動に対する vasomotor reaction を介して脳血管床に変動をもたらし,脳血管床 の変動が頭蓋内圧に反映されるため,頭蓋内圧と血圧の変動は連動し,この 2 変量の相関係数から脳血管自動 調節能の保全状態を評価することが可能である.我々は重症くも膜下出血,重症頭部外傷の自験例において本 モニタリング法を導入し,その有用性を検証した.重症くも膜下出血術後に脳血管攣縮を発生した症例におい て相関係数は上昇し,遅発性脳梗塞を併発した重症例ではその上昇が有意であった.また,重症頭部外傷では 急性期に解析した相関係数の平均値と 3 カ月後の転帰が有意に相関した.今回の我々の研究結果について文献 的考察を加えて報告する. (脳循環代謝 26:187∼191,2015). キーワード : くも膜下出血,頭部外傷,脳血管自動調節能,pressure reactivity index. の脳損傷に対し,急性期管理における頭蓋内圧の評価. 1.はじめに. は極めて基礎的かつミニマムな管理指標としてモニタ リングが行われてきた.近年,この頭蓋内圧の変動か.  重症くも膜下出血および重症頭部外傷の急性期にお. ら脳血管自動調節能を評価する新しい手法が提唱さ. ける治療法や全身管理についてはこれまで長年に渡り. れ,注目されている.すでに重症くも膜下出血や重症. 基礎研究や臨床試験が行われた結果,多くの知見が蓄. 頭部外傷の急性期においてその有用性が報告されてお. 積されてきた.しかしながら,これらの疾患は今日に. り,今後の新たな管理指標となる可能性が期待されて. 至っても依然として生命予後および機能予後が不良な. いる.今回,我々は重症くも膜下出血および頭部外傷. 疾患である.とくにくも膜下出血においては出血源で. の自験例における取り組みにおいて得られた成果を本. ある破裂脳動脈瘤に対する頸部クリッピング術や瘤内. 稿において紹介する.. コイル塞栓術が完遂した後も多くの症例で二次的に発. 2.Pressure Reactivity Index(PRx). 生する脳血管攣縮が致命的な障害を脳にもたらし,治 療を困難にしている.重症頭部外傷においては外傷に より受傷した脳実質の損傷は個々の症例において多種.  本来,脳血管自動調節能は血圧変動に応じて脳血管. 多様であり,必ずしも画一的な治療が奏功するわけで. 床の volume を調節し,脳血流量 (CBF)を一定に維持. はなく,個々の病態を正確に把握し,脳の損傷に応じ. している.脳血管床の volume 変動には血管平滑筋の. た適切な治療・管理を講じることが重要である.従来. 収縮・弛緩による vasomotor reaction が関与していると. より重症くも膜下出血および頭部外傷がもたらす重度. 考えられており,血圧上昇時には血管収縮による脳血 管床の減少により CBF の増加を防ぎ,血圧低下時に. 山口県済生会下関総合病院脳神経外科 山口大学医学部脳神経外科 * 〒 759-6603 山口県下関市安岡町 8-5-1   TEL: 083-262-2300   E-mail: [email protected] 1 2. は血管拡張による脳血管床の増大から CBF 減少を防 いでいる1).この脳血管床の増減は頭蓋内圧の変動に 反映されることが知られている.すなわち,血圧上昇 時には脳血管床の減少から頭蓋内圧が低下し,血圧低 ─ 187 ─.

(2) 図1. Pressure Reactivity Index (PRx) 脳循環代謝 第 26 巻 第 2 号. PRx:㻌 - 0.49. PRx:㻌 + 0.15 20. ICP (mmHg). ICP (mmHg). 18 17 16 15 14 13. 19.5 19 18.5 18. 84. 86. 88. 90. 92. 35. 94. 40. 45. Mean BP (mmHg). Mean BP (mmHg). 転帰良好例. 転帰不良例. 50. (小泉博靖・鈴木倫保ら㻌 㻌 脳循環代謝㻌 24 (2): 16-20). 図 1.Pressure reactivity index(PRx) 左:63 歳,男性.急性硬膜下血腫の症例.各 5 秒間毎の頭蓋内圧と血圧の平均値を 5 分間あたり 60 回分のデータとしてプロットし,2 変量の相関係数を算出すると頭蓋内 圧と血圧は負の相関を示した.血圧の上昇に対し,頭蓋内圧は減少し,脳血管自動調 節能による vasomotor reaction が反映されている. 右:27 歳,男性.両側前頭葉脳挫傷の症例.頭蓋内圧は血圧の変動と並行して上昇 し,両者に正の相関が認められる.このような状況では脳血管自動調節能による能動 的な vasomotor reaction は認められない.. 下時には脳血管床の増大から頭蓋内圧の上昇が認めら. ることが可能である.. れる.このとき,頭蓋内圧と血圧の変動には負の相関. 3.重症くも膜下出血における PRx モニタリング. が認められる(図 1 左).Pressure Reactivity Index(PRx) は頭蓋内圧と血圧変動の相関係数を算出したもので −1.0 から +1.0 の範囲で変動するが血管自動調節能が 良好に作用している状況では両者に負の相関が認めら.  これまでの報告では,重症くも膜下出血における急. れるため,PRx は負の値を示す.しかしながら,重症. 性期の PRx 値は,その後の生命予後あるいは機能予後. くも膜下出血や重症頭部外傷では時に血管自動調節能. に有意に相関することが示されている.Eide らは,く. が破綻し,血圧変動に応じた能動的な vasomotor reac-. も膜下出血 94 例を対象に急性期の PRx 値を解析した. tion が失われ,血圧上昇時には頭蓋内圧も上昇を来す. 結果,生存例に比し,非生存例では PRx 値が有意に高. 状態が認められ,両者に正の相関がみられる.この場. 値であったことを報告している4).また,Bijlenga ら. 合,PRx は正の範囲で高値を示す(図 1 右).このよう. は,重症くも膜下出血(WFNS grade IV, V)42 例を対象. に変動する PRx の値は重症くも膜下出血および頭部外. に急性期 PRx モニタリングの解析を行った結果,発症. 傷の急性期モニタリングにおいてその後の転帰と相関. 後 48 時間以内の PRx<0 を示す症例群では有意に生存. することが報告されてきた. .実際の PRx の解析で. 率が高かったことを報告している5).しかしながら,. は経頭蓋的に留置した頭蓋内圧センサーから得られる. PRx は本来,血圧変動に対する vasomotor reaction を反. 頭蓋内圧計測値と動脈ラインから得られる平均動脈圧. 映していることから,我々は最終的な生命予後よりも. の計測値をベッドサイドに配置した data acquisition. くも膜下出血後に発生する脳血管攣縮の病態をより鋭. system (PowerLab, ADInstruments, Dunedin, New Zealand). 敏に反映しうるのではないかと考え,脳血管攣縮の発. に入力し,データ解析ソフト(LabChart, ADInstruments,. 症を認めなかった症例群(group I)と発症を認めた症例. Dunedin, New Zealand)を用いて 2 変量の相関係数を算. 群(group II),さらに重度の脳血管攣縮の発生から遅発. 出した.頭蓋内圧と平均動脈圧のそれぞれ 5 秒間毎の. 性脳梗塞を併発した症例群(group III)との間で PRx 値. 平均値を算出し,これを連続する 60 回分の平均値を. は有意な差を生じるのではないかと仮説を立てた.実. プロットすることで 5 分間における 2 変量の相関係数. 際に当施設におけるくも膜下出血自験例 25 例(表 1)を. を解析することができる.モニタリングシステムは 24. 上記の 3 群に分類し,急性期の PRx 平均値を比較した. 時間持続的にデータを収集し,継時的に PRx を算出す. ところ,group (9 I 例),group II (6 例),group III (10. 2~7). ─ 188 ─.

(3) 図3 重症脳卒中および頭部外傷における急性期モニタリング. くも膜下出血発症後72時間のPRx平均値. 表 1.重症くも膜下出血自験例(25 例) Age Gender GCS score on admission. 62.4 ± 12.4 M:F=1:9 4.2 ± 1.5. <Location of the ruptured aneurysm>. <The number of cases>. Supra-tentorial Infra-tentorial. 21 4. p<0.05. PRx. p<0.05. 0.6 0.5 0.4. 0.3 0.2. <Aneurysm repair>. <The number of cases>. Neck clipping Coil embolization. 14 11. 0.1 0. 図2. 40.0% 8.0%. GCS: glasgow coma scale, GOS: glasgow outcome scale, GR: good recovery, MD: moderately disabled. くも膜下出血急性期のPRx平均値. PRx. p<0.05. p<0.05. 0.4. 0.3. Group II. Group III. Age Gender GCS score on admission. 45.2 ± 28.1 M : F = 16 : 7 6.3 ± 1.4. <CT findings>. <The number of cases>. ASDH DAI Contusion. 15 5 3. 0.37. 0.2. <GOS at 3 months after SAH>. 0.24. 0.1 0. Group I. 表 2.重症頭部外傷自験例(23 例). 0.6 0.5. 0.14 0.04. 図 3.くも膜下出血発症後 72 時間の PRx 平均値の比較 急性期に遅発性脳梗塞を発症した group III では発症後 72 時間の早期において PRx 値が有意に上昇していた.. <GOS at 3 months after SAH> % GR, MD Mortality. 0.36. % GR, MD Mortality. 0.04 Group I. Group II. Group III. 52.2% 13.0%. ASDH: acute subdural hematoma, DAI: diffuse axonal injury. 図 2.くも膜下出血急性期の PRx 平均値の比較 脳血管攣縮を発症しなかった group I では他の group II, III に比べ PRx 値は有意に低値であった.. 4.重症頭部外傷における PRx モニタリング 例)の 急 性 期 PRx 平 均 値 は そ れ ぞ れ 0.04±0.08, 0.24±0.05,0.37±0.18 であった.PRx 平均値は血管攣.  重症頭部外傷においても PRx モニタリングの有用性. 縮を認めなかった I 群で最も低く,血管攣縮が激しく. はすでに報告されており2, 3, 6, 7),Czosnyka らは,同疾. 脳梗塞に至った III 群で最も高値であり,血管攣縮を. 患において PRx>0.2 は脳血管自動調節能の障害を示唆. 認めなかった I 群と血管攣縮を認めた II, III 群との間. すると報告している7).我々が急性期に PRx モニタリ. では有意差が認められた(p<0.05) (図 2).また,発症. ングを導入し得た重症頭部外傷(受傷時 GCS <8)23 例. 後 72 時 間 以 内 の PRx 値 の 比 較 で は 0.04±0.10(group. (表 2)を 3 カ月後の転帰良好例(Glasgow Outcome Scale. I),0.14±0.11(group II),0.36±0.21 (group III)で遅発性. GR+MD, n=12)と転帰不良例(SD+VS+Dead, n=11)で比. 脳梗塞に至った group III では初期の 72 時間ですでに. 較した結果,急性期 PRx の平均値は転帰良好例,転移. 有意な PRx の上昇が認められていた(p<0.05) (図 3).. 不良例がそれぞれ 0.071±0.063,0.368±0.235 で両者に. 我々の研究結果では PRx 値の解析がくも膜下出血発症. 統計学的有意差が認められた(図 4).重症頭部外傷自. 後の早期において遅発性脳梗塞に至る重度の脳血管攣. 験例の転帰良好・不良の cutoff 値として PRx 0.2 とい. 縮発生を予測する上で有用性が期待される.. う指標を当てはめて考えた場合,PRx>0.2 の症例では 転帰が不良であったと考えられ,Czosnyka らの報告は ─ 189 ─.

(4) 図4 脳循環代謝 第 26 巻 第 2 号 重症頭部外傷急性期のPRx平均値. の局在による影響を受けにくい.PRx モニタリングは. p<0.05. 従来と変わらない手法で頭蓋内圧を測定しながら,血. 0.7. 圧変動との相関係数を解析することにより,頭蓋内圧. 0.6. 測定値からは読み取ることが困難な脳血管自動調節能. 0.5. の保全状態を評価することが可能となる.過去の報告. 0.4. が指摘している通り,脳血管自動調節能の障害は頭蓋. 0.3. 内圧の正常な症例においても検出され,脳損傷の重症. 0.2. 度を反映し,なおかつその重症度は発症後早期の解析. 0.1. 結果に反映される点で本モニタリングの有用性は大き. 0. 転帰良好例. い.さらなる検証を重ね,本モニタリング法を活用し. 転帰不良例. た治療プロトコールの確立が今後の課題と思われる.. 図 4.重症頭部外傷急性期の PRx 値 転帰良好例では PRx 平均値が有意に低値であった.. 文 献 1) Rosner MJ, Rosner SD, Johnson AH: Cerebral perfusion. 我々の研究結果と矛盾しなかった.. pressure: management protocol and clinical results. J Neu-.  重症頭部外傷で転帰不良であった症例群では第 1 病. rosurg 83: 949–962, 1995. 日目の PRx 値の 24 時間平均値がすでに 0.45±0.28 と. 2) Czosnyka M, Smielewski P, Kirkpatrick P, Laing RJ,. 高値であり,転帰良好であった症例群の第 1 病日目の. Menon D, Pickard JD: Continuous assessment of the cere-. 24 時 間 平 均 値 0.16±0.08 に 比 べ 有 意 に 高 か っ た. bral vasomotor reactivity in head injury. Neurosurgery 41:. (p<0.05).この傾向は重症くも膜下出血例で遅発性脳 梗塞を発症した症例群(group III)の PRx 値が発症後 72 時間で他群と比べ有意に高値であった経過と類似して いる.疾患を問わず,重度の脳損傷を来した症例では 脳血管自動調節能の破綻から血圧変動に対する vaso-. 11–17; discussion 17–19, 1997 3) Howells T, Elf K, Jones AP, Ronne-Engström E, Piper I, Nilsson P, Andrews P, Enblad P: Pressure reactivity as a guide in the treatment of cerebral perfusion pressure in patients with brain trauma. J Neurosurg 102: 311–317, 2005. motor reaction が著しく障害され,発症後(受傷後)急性. 4) Eide PK, Sorteberg A, Bentsen G, Marthinsen PB, Stub-. 期の早い段階で頭蓋内圧と血圧変動の相関係数の解析. haug A, Sorteberg W: Pressure-derived versus pressure. 値に反映されているものと考えられる.. wave amplitude-derived indices of cerebrovascular pressure reactivity in relation to early clinical state and. おわりに. 12-month outcome following aneurysmal subarachnoid hemorrhage. J Neurosurg 116: 961–971, 2012.  頭蓋内圧は重症脳損傷の急性期管理において欠かす ことのできない管理指標の一つとして今日では慣例的 に広く普及したモニタリング法といえる.急性期神経 モニタリングとして過去にはマイクロダイアリシス法 や局所脳組織酸素分圧測定によるモニタリングなど精. 5) Bijlenga P, Czosnyka M, Budohoski KP, Soehle M, Pickard JD, Kirkpatrick PJ, Smielewski P:“Optimal cerebral perfusion pressure”in poor grade patients after subarachnoid hemorrhage. Neurocrit Care 13: 17–23, 2010 6) Budohoski KP, Czosnyka M, de Riva N, Smielewski P, Pickard JD, Menon DK, Kirkpatrick PJ, Lavinio A: The. 力的な試みが行われ,それぞれの有用性が報告されて. relationship between cerebral blood flow autoregulation. きたが未だこれらのモニタリングが広く普及するには. and cerebrovascular pressure reactivity after traumatic. 至っていない.これらのモニタリング法は脳実質内に. brain injury. Neurosurgery 71: 652–660; discussion 660–. 挿入したカテーテル先端部のごく限られた狭い範囲の 生理現象を反映しているに過ぎず,測定結果はカテー テルの局在により大きく影響を受ける.これに対し, 頭蓋内圧は頭蓋内で平均化された圧変動を測定してい るため,前者のモニタリング方法に比べてカテーテル. ─ 190 ─. 661, 2012 7) Czosnyka M, Smielewski P, Kirkpatrick P, Piechnik S, Laing R, Pickard JD: Continuous monitoring of cerebrovascular pressure-reactivity in head injury. Acta Neurochir 71: 74–77 (suppl), 1998.

(5) 重症脳卒中および頭部外傷における急性期モニタリング. Abstract Monitoring of cerebrovascular pressure reactivity during the acute stage of severe subarachnoid hemorrhage and traumatic brain injury Hiroyasu Koizumi1 and Michiyasu Suzuki2 1Department of Neurosurgery, Yamaguchi-ken Saiseikai Simonoseki General Hospital, Yamaguchi, Japan 2Department of Neurosurgery, Yamaguchi University School of Medicine, Yamaguchi, Japan Recently, impaired cerebral blood flow autoregulation has been reported to be associated with poor outcomes for patients with severe subarachnoid hemorrhage (SAH) and traumatic brain injury (TBI). The Pressure Reactivity Index (PRx) derived from the Pearson correlation coefficient between intracranial pressure (ICP) and mean arterial blood pressure (MABP) has been reported as a useful indicator of impaired cerebrovascular autoregulation at the acute stage of severe SAH and TBI. We investigated whether the indicator monitored during the acute stage strongly correlated with the outcomes for patients with poor-grade SAH and severe TBI. The results of our study revealed that values of the PRx at the acute stage increased in the groups of patients with the development of cerebral vasospasm after SAH. In the group of patients who developed delayed cerebral infarction following cerebral vasospasm, the increase in the mean values of the PRx were significant compared to those for the group of patients without cerebral vasospasm. The PRx values of patients with poor outcomes after severe TBI were significantly higher than those of patients with favorable outcomes. We report the usefulness of PRx monitoring at the acute stage of severe brain damage. Key words: subarachnoid hemorrhage, traumatic brain injury, cerebrovascular autoregulation, pressure reactivity index. ─ 191 ─.

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