Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japanese Physioal Therapy Assooiation理
学療法
学第
39
巻 第8
号474
一
476
頁 (2012
年 )シ ン
ポ ジ
ウ ム 皿
ヘル ス
プ
ロフ
ェッ
シ
ョン
と し
て
の
理 学
療
法
士
の
可 能 性
*一
勤 労 者
の
健 康 を
守
る
産
業保健分野
への
関
わ
り
一
高野 賢
一
郎
* * は じめ
にまず理 学療法 士 に な じ みの薄い 産業 保健 分 野につ い て解 説 す る
。
産業 保 健 分 野 (occupational health)と は労 働 者の健 康 対策
を行う
領域 であ り,
労 働 安 全 衛生法 に基づい てい る。
お も な 目 的 は 企業で働 く勤 労 者の健 康 障 害の予 防と健 康の保 持 増 進で ある。
この分野の専
門職には産業 医,
保健 師,
衛生管 理 者が お り,
情 報の提 供,
評価
助言な どの支 援を行 うこと となっ てい る。
今回,
著 者ら が実 践して いる産 業 保健 分 野へ の理 学 療 法の 関 わ り につ い て紹 介し,
ヘ ル スプロ フェ ッショ ンと し ての理学 療 法士の可 能性につ い て述べ る。
これ ま
で の歩
み 本 邦の産 業 保 健 分 野におい て,
これ まで多 くの理 学 療 法 士か ら腰 痛 や頸 肩 腕 症候 群 な どの骨 関 節 疾 患 をはじめ内部 疾 患や メ タ ボリッ ク シ ン ドロー
ムな どの予防・
改 善と し て 理 学 療法が 有 効である とい う介 入 研 究や その報 告が な さ れ てい る。
藤 村 ら1〕は,
1993年の 日本理 学 療 法 士 学 会 (現在の 日 本 理 学 療 法 学 術 大 会)の演 題分 類の ひとつ に 「産 業・
労務管理 」 が 加 わ り 5つ の演 題が発 表 されて い る経 緯か ら し て,
こ の頃に産業保
健 分 野で の理学 療 法が芽生えたの で はない か と推察
してい る。
ま た1998
年には奈 良2}がこの分 野の理 学 療 法 を 「産業
理学療
法 」 として定 義づけ して紹 介 して お り,
最 近で は2010
年
の第45回 全 国 学 術 研 修 大 会で筆 者3〕が産 業 保 健 分野 に お け る 理学療 法 士の専門性は高い こ と,
産 業 理 学 療 法 が 勤 労 者の疾病 予防に大 き な効 果 を上げる こと が できる と報 告した と こ ろ で あ る。
産 業 保 健 分 野 を担 う
メ ンバー
産業 保 健 分 野を担 うメ ンバー
につ い て 説 明 す る。
こ のメン バー
に は 以下の専 門 職 が お り,
それ ぞ れの専
門性
を活
か し た事
業 を展 開 している。
この中で産 業医と衛
生管
理者だけは法律で 選 任 しな くては な らないと定
め られ てい る とこ ろが 重 要である。 産 業 医 :作 業管理,
作業
環 境管
理 健康 管理の 3管 理 を 行 う。
* Occupational Health * * 独 立 行 政法 人 労働 者 健 康福 祉 機 構 関 西労災病院勤 労 者予 防 医療セ ン ター
(〒660−
8511 尼崎 市稲葉 荘3−
1−
69)Kenichiro Takano
,
PT:Japan
Labour Health and WelfareOrganization KANSAI ROSAI Hospital Center for Preventive Medicine キ
ー
ワー
ド:産業理学 療 法.
予防,
職域拡大 従 業 員50 人以 上の事 業 所で ひとりの産 業 医 を選 任 するこ と が法 律で決 まっ て い る。
衛生管 理 者 :事 業場
の衛 生 全 般管
理 を行 う
。
従 業 員
50
人以 上 で ひとりの衛
生管
理者を選 任 する こ と が法 律で決 まってい る。
保 健 師・
産 業 看 護 師 ;産業
保 健分野のコー
デ ィネー
ト を実 施 する。
法 律で 選 任 す ること は 決 まっ てい ない。
その他 (管理 栄 養 士,
心 理 判 定員,
健 康運動 指導士,
ヘ ル ス ケア ト レー
ナー
な ど) 著者は,
こ こ に理 学 療 法士 が関わっ てこ の分野の一
翼 を担 うべ き だ と考え て お り,
加 えて,
あ る一
定 以 上の従 業 員のい る事 業 所に は,
保 健 師と ともに理 学 療 法 士 を雇 用 あるい は契 約しな け れ ば な ら ないと法 律に明 記 する ことを国に働 きかけてい きたい。
以下に理学 療 法士 がこ の分 野に関わる意 義につ い て記 す。
・
理学療 法士 は,
個 人や集 団に合わ せ た運 動 指導が できる・
勤 労者の疾 病や障 害を予 防・
改 善 する運 動 を指 導できる・
作 業時の動 作 分析か ら安 全 な作 業 方 法 を指 導できる・
人間工学に基づ き機 器 導 入 など作 業 環 境 改 善 を提 示で きる・
統 計 的 手 法 を使っ て介 入 効 果 を説 明できる・
目 的 を達 成 するた めに産 業 医 な ど他の専 門職 と連 携できる そしてなに より もこれ らを総 合 的に実 施できることこ そ 理学療
法士 が関わる意 義だ と考 える。
我々 の関 わ り を 通 じて 勤 労 者の 健 康 が 守 ら れ,
企業の生 産性アップ につ な が ること を 願っ てい る。
なお,
こ こ で注 意 すべ きは,
健 康運動指導士 やヘ ル ス ケア トレー
ナー
など が理 学 療 法 士と競 合 する 可能性が あ ること で あ る。
他の専 門 職と連 携でき理 学 療 法 学や医学そ して人 間工学 を 学んでき た 理学 療 法士に分 が あると思 われ る が,
考
え方
を変え て,
そ れ ぞ れの専 門 性 を活 か し共 同 して産 業 保健 分野 の仕事
に あ た るのも よいか も しれ ない。
就 業 者数 と産 業保 健 専
門 職 の数
現在
,
本 邦の就 業 者 数 は6
,
280
万 人であ り.
産業 医が 6万5 千人 (就 業者 数1
,
0
O
人 に1
人の割 合 ),
保 健 師が 1万6
千 人 (就 業 者 数4
.
OOO
人 に1
人 ),
そ して理学 療 法士 は わずか100人未 満 (62
万 人 に1
人)
で あ る。
対 象 者は非 常に多 く,
今 後,
理 学 療 法 士が職 域 拡 大できる大き な 可能性
を秘め た分 野であ り,
門戸 が 開け ば,
多
くの 理学療法
士 のカ
が 必要と な る。 N工 工一
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Japanese Physioal Therapy Assooiationヘ ル スプロ フ ェ ッ シ ョンと して の理 学 療 法十の可 能 性
475
海 外
と本 邦
の 産業
理 学 療 法 工 業 先進国 で あ る アメ リカ,
オー
ス トラ リア.
ヨー
ロ ッ パの一
部 地 域 で は 産 業 理 学療 法が仕 事と し て確 立しており,
労 働 災 害の予 防 と し ての運 動指 導.
入 間工学 的な作業 姿 勢の評価.
そ し て 高 齢の 勤 労 者へ の運 動機 能の改善 指 導がなさ れてい る。
海 外での産業理学療法
の形態は,
開業し た 理学 療 法.
[:の事 務 所と 企業との契 約が ほ と ん どで あ る が一
部の企業で は理学療 法lr
を雇 用し ている。
で は同じ先
進 国で あ る本 邦で な ぜ 理学療 法.
L
が 企業に雇 用さ れて いない の であ ろうか.
理学 療 法 士の開業 権 の問 題やこ の分 野へ の宣 伝 不足 な ど種
々 の理由が考
えら れ る が.
労 働に対 する勤 労 者の考え方の違い も関係し てい る よ う で ある。
た とえば,
同じライン で働 く勤 労 者が腰 痛な ど で休ん だ場
合,
本 邦の企 業で は他の者がその仕 事を カバー
し,
生 産性が低
下することはない。
しか し海外の企業では休ん だ場 合,
勤 労 者ひ と りの 仕事
が決 まっ てい るこ とか ら他の者 がカバー
するこ と な く確
実に生 産 性が低下する。
ま た休 業 までい か な かった と しても筋
骨格系
障害
や メンタルなどは そ れ自体が勤 労 者の生 産 性を低下 さ せ る。
つ ま り心 身の障 害 は 生 産 性 低 ドに直結 す るの であ る。
そうい っ た 理 由 を 理 解 し てい る 海 外の企業は勤 労 者 個 人の生産 性を 重視し,
こ れ を 維 持 す る た め に 健 康管理 と し て積 極 的に理 学 療 法士 と契 約あ るいは雇用 関 係 を 結 ぶので あ ろ う。
海 外に比べ本 邦の産 業 理学 療 法 が まっ た く遅 れてい る とい うわ け でもない。
2011
年に オ ラン ダで実 施 された WCPT (WorldConfederation
for
Physical
Therapy
) 学 会にお け るほ ぼすべ て の発表が 骨 関 節 疾 患 お よ び そ れ に 関するもの であ り,
内 部 疾 患 や メ タ ボ リック シン ドロー
ムに 関する 理学 療 法は報 告 されて い ない。
本 邦 で は内部 疾 患 やメ タ ボ リックシ ンドロー
ム も対 象と し た 産業理学療 法 や 介 入 研 究 が な さ れ て お り4),
こ の分野で は イニ シ ア チ ブを とること ができる の ではないだろ うか。
本 邦で は
,
平 成16
年
に開 設さ れ た労 働 者 健 康 福 祉 機 構の 9 つ の勤 労 者 予防 医療センター
にこ の分野を仕 事にしてい る理 学 療 法士 が9
名
おり.
こ の中に著 者 も含 まれ てい る.
図1
に,
著 者らが 産業理学療 法 と して関 わっ てきた事 業 所 数 と対 象 者数の 変遷の グラ フを 示 すt.
平 成16
年 度 に 関 わっ た事 業 所 数25
ヵ 所,
対象者 数300
名 で あっ たのが.
平成23
年 度に は事業 所 数253
ヵ所,
対象者 数16
,
074
名へ と急増 し てい る。
こ の こと から 本邦 に おい て も 産 業 保 健 分 野へ の理学療 法 士の需 要は高い とい えるので はない だ ろうか。
マー
ケ
ティン グ・
宣 伝 広 報・
営 業著 者らの産 業理学 療 法の進 め
方
の第ユ歩は,
マー
ケ ティング である。
企業や健 康 保険組合へ の ア ン ケー
ト調査や衛 生 管 理 者.
産業 医 保健 師か らの聞 き 取 り調 査 お よ び 講 習会な どの参 加 者へ の調査 を 通 じてニー
ズ を 把 握 し,
プロ グ ラムを作 成す る の であ る。
そ し て ホー
ム ペー
ジ,
冊 チ,
ダ イレク トメー
ルなど を通じて宣伝,
広 報 す る。
企 業へ の 営 業 湎 動 を 通 じ て.
その企 業に相 応 しいプロ グ ラム に し て実 施 する、
t これ を本
社か ら支 社 へ そ して関 連 企 業へ と展 開してい くの で あ るtt 以 下 に 著 者 ら が 実 施 してい る産 業理 学 療 法に おける4
つ の仕事
(図2
) につ い て説 明 する。 1ヵ所〕 [名) 300−
.
.
.
.
−
18DDO 16ゆDO 250.
.
一.
−
14000 200−.
.
一
一
.
12000 .事 業 所 数 10000_
対 象 者 数 150.
.
.
80001
1
−
i
黨
⊥6年 度17年 度18年 度19年 度20年 度Z1年 度2Z年度23年 度 図 1 産業保健 分野へ の介入件 数の変遷 図2
産 業 保 健 分野 に おける理 学 療法 十の仕 事 1.
勤 労 者へ の指導
・
個人指 導これ は 理学 療 法十 が もっ と も 得 意 と す る ところ で あ ろう
。
理 学 療 法士 は,
外 傷や痛み な ど が あ れ ば,
筋 力 テス トや 動作のテ ス ト な ど か ら評 価 し て.
問 題 が あ れ ば プロ グ ラムを立て計画 的 に治 療ま で 結 びつ け る こ と が で き る。
個人指 導に おい て や や不 安 なのが 予 防と し ての関わ りで あ る。
理学療法
十 は予 防 とし て の知 識 や 技 術 を 十 分に学ん でい ない の で あ る。
そ ん な 我々が勤 労 者に接 して まず 衝 撃を受け るのが,
指導
に し た がっ て く れ な いとい うこ とである。一
般に病院では患者 は 治療目標に向かっ て.
多 少 痛み が あって も 理 学療 法士の指 導に し た がっ て くれ る。
し か し予 防と な る と様チ が 違って く る。
多 くの場 合,
勤労 者は.
現 在 別に困っ てい る わ け で は ない か ら,
改 善の モチベー
シ ョ ンが わ か ない の であ る。
た と え ば 肥 満 解 消の た め に 運動 を 指 導して も.
別に病 気が 発 症 し た わ け で ない か ら,
忙しい・
疲 れる・
場 所 が ないか らと理 由 をつ けて運 動を拒 否し ようと す る のである。
した がっ て我々 に は,
勤 労 者を動かす,
動き たくさ せる心 理 学 的技 術や考 え 万の修 得が 必要で あ る。
・
集 団指 導 こ れ は理学 療 法士 には苦 手な 分 野 か も し れ ない。
プ レゼ ン テー
ショ ン や体 操 指 導な ど 企業で指 導す る場合,
多 くの従 業 員 へ 健康の情 報を伝え な け れ ば な ら ない。
我々 は その際 に 必 要 な プレゼン技 術 も.
1.
分に学んで いないた め.
今後 その修 得 が 必 要 である.
産 業理学 療 法におい て.
個 人の疾 病 や 障 害の悩 み を100
%解 決 すること は重 要 だ が,
そ れ 以E
に重 要 なの が全 体の 身 体 能 力 を10
% でも上 げることである。
産 業 保 健の指 導 者に N工 工一
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Japanese Physioal Therapy Assooiation476 理学 療 法 学 第