16
兵 角
「日本の外来生物」
監修多紀保彦
編著財団法人自然環境研究センター
平成 17年 (2005年) 6 月 1 日から「特定外来生
物による生態系等に係る被害の防止に閲する法
律」が施行された. 通称「外来生物法」である .
この法律によって外来種の国内への持ち込み が
規制されるようになった . ま た,こ の施行に相
侠って「外来種」という言葉がクローズアップ
されたように思える .
こ こ に 紹 介 す る 「 日 本 の 外 来 生 物j では,
235
種 の 外 来 種 が 美 し い カ ラ ー 写 真 と 丁 寧 な 解
説文によって掲載されている . 英タイトル“
A
Photographic Guide to the
Invasive
Al
ien
Species
in ]apan"
が示すように,掲載対象は「侵略的外
来穏」であり,本著では 外 来生物法によって法
的規制を受けている「特定外来生物
J
85種と ,
環境省によって選定された「要注意外来生物」
148種の総てが網羅されている .
I
はじめに」に
も記されているが,自然環境研究センターのス
タッフが総力をあげてとり組んだ大著である.
本著では外来性甲殻類9種( フジツボ類1種,
ザ リガニ類
5
種,カ ニ類
3
種) が掲載されて いる.
特定外来生物5 種と要注意外来生物 4 種であり ,
16ページにわたっている . 執筆担当は本学会会
員で もある中山聖子研究 員である . ザリガニ類
のターキッシュク レイ フイッシユ , ラスティー
クレイフイッシユ,ヤビーは外来生物法による
第2次指定( 平成 17年12月14日付け公布) によっ
て規制対象とされたものであるが, その実態、を
紹介した専門書はほとんどなく, 重要な情報源
になるものと思 われ る. 外来生物法施行 以前 に
平凡社
2008年4月刊A 5変. 480pp.
ISBN978-4-582-54241-7 3400円( + 税)
刊 行された「外来種ハン ドブック
J
( 日本生態学
会編,村上興正 ・鷲谷いづみ監修. 2002) では 7
種の外来性甲殻類が掲載されており,このうち,
ウチダザリガニ,アメリカザリガニ,チチユウカ
イミドリガニの3種は本著との共通種である.
j去による規制はもちろん重要である . しかし,
外来生物侵入による生態系の改変は不可逆的な変
化であることを,その脅威を,社会に周知させて
いくことこそが本当は必要である . 全国に広く ,
島興部にまで分布しているアメリカザリガニは ,
1927年( 昭和 2 年) に鎌倉市に荷揚げされたわず
か20個体が囲内起源となって蔓延したものであ
る. 日ごろから外国産の材料 を取り扱う立場にあ
る研究者にあっては,外来種問題の重要性( 危険
性) を常に念頭に置きながら ,実験動物の取り扱
いに 卜分な注意をはらっていかなくてはならない
と思われる .
人間の活動範囲が全世界的規模に達している現
在,それに伴う生物の移出入は ,故意にせよ過失
にせよその規模もまた甚大である. 対象生物も植
物か ら晴乳動物にいたっており,明治時代以降圏
内に持ちこまれた生物だけでも 2200穫に達すると
いわれている . すべての生物を正確に同定するこ
とはまず不可能であり,専門家の協力を得なけれ
ばならないケースが多いと思われるが,本書が少
なくとも問題となる生物の存在,その流布につな
がることはまちがし、ない .
粛藤暢宏 ( 株式会社水土舎)