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分娩時に会陰部に温罨法を行うことによる会陰裂傷の低減の効果

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Academic year: 2021

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日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 29, No. 2, 293-302, 2015

*1花みずきレディースクリニック(Hanamizuki Lady's Clinic)

*2長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(Nagasaki University, Graduate School of Biomedical Sciences)

資  料

分娩時に会陰部に温罨法を行うことによる

会陰裂傷の低減の効果

Reducing perineal trauma by application of warm packs

in the second stage of labor: Histrical controlled trial

柴 山 知 子(Tomoko SHIBAYAMA)

*1

江 藤 宏 美(Hiromi ETO)

*2 抄  録 目 的  分娩第2期に会陰部に温罨法を行うことで,第1度,第2度会陰裂傷の発生を減少させることができる かを明らかにすることである。 対象・方法  対象は正期産,経膣分娩予定,単胎,頭位であり,医学的合併症がない初産婦とし,historical

controlled trial designを用いた。介入方法は,産婦が子宮口全開大に近い時期から外陰部消毒を行う前

まで,温湿タオルを用いて会陰部を温めた。タオルは30分毎に交換し温度を保つようにした。会陰裂 傷の程度は,分娩に立ち会った医師が分娩直後に判断した。同時に,産婦の基本的情報を医療記録より 収集した。データ分析は,t検定,χ2検定を行った。本研究は倫理委員会の審査を受け,承認を得て実 施した。 結 果  対象は,介入群49名,コントロール群50名であった。対象者の特性について両群間に有意差はなかった。  会陰裂傷の発生頻度について,介入群では第1度会陰裂傷は28名(57.1%),第2度会陰裂傷は16名 (32.7%)であった。コントロール群では,第1度会陰裂傷は31名(62.0%),第2度会陰裂傷は13名(26.0%), 2群間で有意差はなかった(p=0.517)。また,第3度会陰裂傷は介入群3名(6.1%),コントロール群3名 (6.0%),第4度会陰裂傷は両群ともに発生しなかった。  温罨法の実施時間は,介入群で平均2.77 2.43時間であった。温罨法の実施時間と会陰裂傷では,第 1度会陰裂傷における温罨法実施時間は平均2.27 2.59時間,第2度3.98 1.99時間,第3度1.85 1.51時間 で有意差が認められた(p=0.002)。出血量と温罨法の実施時間,出血量と温罨法開始から児娩出までの 時間に有意な相関はなく,温めることによる出血量の増加は見られなかった。 結 論  分娩時に会陰部に温罨法を行うことによる第1度,第2度会陰裂傷低減の効果を得ることができなか った。しかし,温罨法は生理学的に皮膚の伸張性の向上や,循環血液量の増加,回復に影響があると言

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キーワード:会陰裂傷,温罨法,分娩第Ⅱ期,ヒートショック・プロテイン Abstract

Objective

The purpose of this study was to clarify whether perineal warm pack application in the second stage of labor reduces first degree and second degree perineal laceration.

Methods

A historical controlled trial design was used. Participants were nulliparous women without medical complica-tions, with delivery being at term, vaginal delivery, singleton pregnancy and cephalic presentation. The intervention method involved the midwife applying a warm moist towel to the perineum from close to full cervical dilation until vulvar cleaning is conducted. The towel was exchanged every 30 minutes to maintain its temperature. The extent of perineal laceration was evaluated immediately after delivery by the obstetrician attending the delivery. At the same time, the woman's basic information was collected from the medical record. Data analysis included t test and chi-square test. This study was approved by the institutional review board.

Results

Participants comprised 49 women in the intervention group and 50 women in the control group. There was no significant difference between participant characteristics of the 2 groups. In the intervention group, first degree perineal laceration occurred for 28 women (57.1%), and second degree perineal laceration occurred for 16 wom-en(32.7%). In the control group, first degree perineal laceration occurred for 31 women (62.0%), and second degree perineal laceration occurred for 13 women (26.0%), with no significant difference between the 2 groups (p=0.517). Third degree perineal laceration occurred for 3 women in the intervention group (6.1%), and for 3 women in the control group (6.0%), while fourth degree perineal laceration did not occur in either group. Warm pack application time was a mean of 2.77±2.43 hours for the intervention group. Concerning warm pack application time and perineal laceration, warm pack application time for first degree perineal laceration was a mean of 2.27±2.59 hours, for second degree perineal laceration it was a mean of 3.98±1.99 hours, and for third degree perineal laceration it was a mean of 1.85±1.51 hours, with significant difference (p=0.002). No significant correlation was found between haemorrhage volume and warm pack application time, and between haemorrhage volume and the duration from warm pack ap-plication start until delivery of the baby. An increase in bleeding volume due to warming of the perineum was not found.

Conclusions

The effect of reduction of first degree and second degree perineal laceration due to warm pack application dur-ing labor was not found. However, warm pack application has the merits of physiologically improvdur-ing skin elasticity, increasing circulatory blood flow, and producing heat shock proteins which are said to promote recovery, so a posi-tive effect can be expected. Further research into the timing and application method is needed.

Key words: perineal laceration, warm pack application, second stage of labor, heat shock protein

Ⅰ.緒   言

 分娩は本来,医療介入が行われずに進むことが多い が,様々な状況により,微弱陣痛や遷延分娩,弛緩出 血などのリスクが生じることがある。その中でも会陰 裂傷は発生頻度が高く,助産ケアで改善できる可能性 が高い。第1度,第2度会陰裂傷は全体で約67%(第1 度会陰裂傷は約51%,第2度会陰裂傷は約16%),第3 度会陰裂傷は約0.2%発生しているという報告(大野・ 本田,2003)や,第1度,第2度会陰裂傷は約80%(第1 度会陰裂傷は約19%,第2度会陰裂傷は約61%),第 3度会陰裂傷は約0.1%発生しているという報告(芳中, 2003)がある。  その要因を見てみると,まず,仰臥位分娩という分 娩時の姿勢が挙げられる。現在日本ではフリースタイ ル分娩が取り入れられてきているが,実際はほとん どの産科医療施設で仰臥位分娩が行われているのが現 状である。仰臥位分娩では,力が下方に入りにくく怒 責をかけるため,児頭が骨盤誘導線に沿って下降,娩 出されることによって,娩出圧のベクトル方向は会陰 部に向かい,会陰裂傷の原因となる(進,2003)。その 他,会陰裂傷が起こる要因として,初産婦,高齢初産

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分娩時に会陰部に温罨方を行うことによる会陰裂傷の低減の効果 などで膣入口が狭い場合,急激に児が娩出された場合, 会陰の伸展不良,会陰保護が適切でない場合,前回切 開部に瘢痕ができている場合,巨大児,吸引・鉗子分 娩などの産科手術に際して発生する場合など,多様な ものがある(Albers, 2003;進,2010)。さらに,日本 人を含むアジア系人種は,会陰裂傷が起こる可能性が 白人に比較し約2倍,黒人の約5倍のリスクがあると 言われており(Goldberg, Hyslop, Tolosa, et al., 2003), 白人に対してアジア人の方が会陰裂傷を生じるリス クが高いと報告されている(Dahlen, Homer, Cooke, et al., 2007)。  このように,大多数が経験している会陰裂傷は,産 後の生活に大きな影響を与えている。会陰裂傷の程度, 会陰切開の有無に関わらず,93.3%もの褥婦が産後外 陰部痛を訴えており(佐藤・長谷川・豊岡,1994),会 陰裂傷の程度がひどくなるほど,会陰部の痛みは強く, 歩く,座るといった日常生活活動を難しくする可能性 が高くなると考えられる。また,骨盤底筋群を弱める ため,排泄機能,性生活へ悪影響が及ぼされる可能性 があることから,苦痛を感じている産婦は少なくない と考えられる。さらに,第3度,第4度といった高度 会陰裂傷になると,産後1か月において便失禁が生じ ている褥婦は,第1度,第2度会陰裂傷が生じた褥婦 よりも約3倍多く,尿失禁においては約2倍多いと報 告されている(坂口・大平・小林他,2006)。高度会陰 裂傷が生じるリスク因子として,会陰切開の実施,吸 引分娩,クリステレル圧出法,初産婦,高齢,出生時 体重,児身長,頭囲の大きさなどがある(片山・藤井 ・中山他,2002;坂口・大平・小林他,2006;吉田・ 尾山・竹内他,2006)。  そのような会陰裂傷を予防するために,様々な助産 ケアが行われており,会陰マッサージや分娩体位の工 夫はエビデンスがあり,会陰裂傷の低減に効果がある と言われている。妊娠期にオイルなどの潤滑剤を使 用して会陰マッサージを行う方法は,会陰マッサー ジを行わない時と比較し会陰裂傷が約2割減少してい る(Beckmann & Stock, 2013)。また,分娩時の体位で は,仰臥位や座位に比べ,側臥位,四つ這い,蹲踞位 といった姿勢は会陰裂傷が起こりにくい傾向にある (篠崎・堀内,2011)。会陰マッサージや分娩体位の工 夫の他にも,会陰裂傷予防のケアとしてエビデンスは 明確ではないが,分娩第2期に会陰保護をしない方法 (Albers, Sedler, Bedrick, et al., 2005),会陰の伸展性を 良くするために会陰や骨盤底筋群を柔軟にする運動や 排臨・発露の過程をゆっくり待つ方法もある(森・佐 藤・鳥越,2010)。  助産ケアの1つに会陰部を温めるというケアも実施 されている。分娩第2期に,湯に浸したタオルを使用 し,皮膚にあたる温度を38∼44℃に保ち,助産師に よって常に温罨法を実施する方法が行われており,温 めた方が温めない方よりも高度会陰裂傷の発生を半 減させ,産後の会陰部の疼痛や尿失禁の発生を1/3に 減少させた(Dahlen, Homer, Cooke, et al., 2007)。ま た,介入を受けた女性,介入を行った助産師の約8割 が,温罨法を実施することで会陰裂傷が減少したと感 じ,助産ケアを行っていくことに肯定的であったと報 告されている(Dahlen, Homer, Cooke, et al., 2009)。日 本においては,温罨法における会陰裂傷低減について は報告されていないが,子宮口開大5cmから会陰部に 60分間40∼41℃の温湿布を当てる方法が行われてお り,温罨法による産痛緩和効果が高いという報告があ った(岡村・北川・藤森他,2005)。  先行する研究結果を統合したCochrane Libraryよ り,分娩第2期に会陰部に温罨法を行うことにより, 第3度,第4度会陰裂傷が約半数減少すると報告され ている(Aasheim, Nilsen, Lukasse, et al., 2011)。しか し,温罨法を行った研究は,海外では実施されている が,日本ではあまり行われておらず,日本人に対す るエビデンスは十分でないと考えられる。また,第3 度,第4度会陰裂傷を減少させるために,会陰マッサー ジや会陰保護などの方法は効果があると言われている が,発生頻度が約80%と高い第1度,第2度会陰裂傷 について日本では研究があまり行われていない。第1 度,第2度会陰裂傷の発生を減少できたら産後の生活 がより良いものになるのではないかと期待できる。本 研究では,様々なケアの中でも,温罨法を行うことで 会陰裂傷が減少できるか効果を検討し,助産ケアに活 かしていきたいと考えた。研究目的は,子宮口全開大 近くになった時点で,会陰部に温罨法を実施し,温罨 法を行わない場合と比較して,第1度,第2度会陰裂 傷の発生を減少させることができるかを明らかにする ことである。

Ⅱ.研究方法

1.研究デザイン  過去の研究データから発生率などのデータをコン トロール群として引用する,historical controlled trial

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2.対象者とリクルートの方法  A県内にある,研究の同意が得られた産科医療施設 2施設にて実施した。施設は,分娩中に会陰部に温罨 法を行っておらず,会陰切開をルーチンに行っていな い施設を抽出し,施設の責任者に文書と口頭にて研究 の説明を行い,同意を得た。  続いて,対象者のリクルートを行った。対象の組み 入れ基準は,正期産(妊娠37週以降42週未満),経膣 分娩予定,単胎,頭位であり,医学的合併症がない初 産婦とした。経産婦は,前回の分娩の状況により,会 陰が伸びやすく,会陰切開を行っていた場合,その部 分から裂傷する可能性が高いため除外した。また,除 外基準として,上記以外の産婦,予定帝王切開の産婦, 外国人とした。  介入群のリクルートの方法は,妊娠後期に妊婦健診 で来院した際に,対象者に研究について,口頭と文 書で説明を行い,研究参加の意思を確認し同意を得 た。介入群のリクルート期間は,A施設では2013年6 月から10月,B施設では8月2週目から9月末まで行っ た。分娩の目的で来院した際に再度,研究参加の可否 を確認し,研究参加の同意を得た。  一方,コントロール群は,研究協力が得られた産 科医療施設ですでに分娩した初産婦を対象とした。A 施設においては,産科医療施設のスタッフに,2013年 1月から5月に出産した初産婦全員を抽出してもらい, 郵送にて研究の主旨を文書で説明し,研究協力の同意 を得た。具体的には,介入開始時期前に,すでに分娩 した初産婦に,研究協力依頼書と同意書,返信用封筒 を送付した。研究参加に同意が得られた場合は,サイ ンした同意書を返信用封筒に入れて返送してもらった。 また,B施設では,2013年7月2週目から8月1週目に 出産した初産婦全員をスタッフに抽出してもらった。 そして,1か月健診の来院時に口頭と文書で研究の説 明をし,同意を得た。 3.介入方法  事前に施設のスタッフに研究について説明を行い, 使用物品,温罨法を実施する時期について周知した。 また,手順について詳細を示した資料を作成し,研究 方法についての確認を行った。   会 陰 部 の 保 温 に 使 用 す る タ オ ル(100% 綿,30 77cm)は水で濡らして絞り,11 20cmに折りたたんで に一定に保たれるようにした。スタッフは,子宮口全 開大に近い時期になった時に,ビニール袋に入ったタ オルを温蔵庫から取り出し布袋へ入れ,それをパット の外側から会陰部に当て温めた。タオルの交換は温度 が保持できる30分毎とした。温罨法は,外陰部消毒 を行う前まで実施した。介入実施は施設のスタッフに 依頼し,分娩経過中,研究者は分娩には一切関わらな いこととした。  なお,研究に先立ちタオルの温度の下降について, 研究者が温罨法を座位にて10回程度実施することで 以下の事を確認した。パットの外側からタオルを当て ると,会陰側のパットの温度は約40℃となった。さ らに,30分後の温罨法の温度は37∼38℃で,ほとん ど下降しなかった。  会陰裂傷の程度(無傷,第1度̶第4度会陰裂傷)の 判断は,分娩直後に分娩に立ち会った医師に行っても らった。今回会陰切開を行った場合は,その後の傷の 深さに応じて,会陰裂傷に相当する程度を判定し組み 入れることとした。 4.データ収集項目と分析方法 1 ) データ収集項目  産婦の基本的情報は,会陰裂傷に影響を及ぼすと考 えられるデータを医療記録より収集した。  介入群,コントロール群ともに,基本データとして, 年齢,妊娠週数,身長,体重(非妊時,最終妊婦健診 時),出生時体重,出生時身長,頭囲,性別,分娩時刻, 分娩体位,分娩所要時間,会陰マッサージの有無(妊 娠期,分娩時)を収集した。分娩時データとして,会 陰裂傷の程度(無傷,第1度̶第4度会陰裂傷),会陰 裂傷の部位(膣,陰唇,尿道周囲,陰核,会陰),会 陰切開の有無・部位,会陰縫合の有無,出血量,誘発 剤使用の有無(予定誘発,誘発,促進剤),器械分娩(ク リステレル圧出法,吸引分娩,鉗子分娩),分娩介助 者の項目について収集した。  さらに介入群については,温罨法を開始した時刻, 終了した時刻,途中中断した時刻をスタッフに記入し てもらった。また, 安全性情報として,低温火傷,熱感, かゆみの有無について記入してもらい,詳細に把握し た。 2 ) データの分析方法  メインアウトカムとして,第1度,第2度会陰裂傷

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分娩時に会陰部に温罨方を行うことによる会陰裂傷の低減の効果 の発生頻度,セカンダリーアウトカムとして,第3度, 第4度会陰裂傷の発生頻度,会陰切開の発生頻度とし た。  サンプルサイズのパワーアナリシスを行った結果, α=0.05(両側検定),β=0.2,事例発生率=0.70(70%), 減少させたい割合=0.60(60%)とした。介入群=0.70 (1-0.6)=0.28とすると,介入群,コントロール群そ れぞれ30人ずつ(Yatesの補正あり)であった。今回は, 脱落率を考慮し,このサンプル数に準じてデータ収集 数を各群少なくとも40人を必要数とした。

 統計解析は,Statistical Package for Social Sciences (SPSS)Ver.20を用いて行った。グループ間の差を検 討するために,記述統計,t検定,χ2検定を行った。 3 ) 研究期間  倫理委員会承認日から2014年3月31日までとした。 その内,データ収集期間は倫理委員会承認日から2013 年10月31日まで行った。 5.倫理的配慮  本研究は,長崎大学大学院医歯薬学総合研究科倫 理委員会の審査を受け,承認を得て実施した(承認番 号:13071124)。  研究対象者へは,研究の趣旨や参加についてのメリ ット・デメリット,自由意思で研究に参加することが できること,研究への参加を途中で中止する際の権利 や手順,研究への参加・不参加に関わらず不利益を被 らないこと,個人が特定できないように配慮すること を口頭と文書で説明した。また,得られたデータは連 結可能匿名化とし,すべてのデータへのアクセスはパ スワードを用い,データの保管は施錠できるところに 厳重に管理した。また,温罨法を実施する際に低温火 傷が生じる可能性があるため,事前に研究者がシミュ レーションを行い,方法を十分に検討し安全性を確認 した。さらに,介入による傷害に備え,保険に加入した。

Ⅲ.結   果

1.対象者の特性  A施設において,介入の実施は6月から10月に出産 予定であった初産婦60名中,研究の組み入れ基準に 合致し,研究参加に同意が得られた31名(51.7%)に 行った。研究を実施出来なかった理由は,外来での 説明にて研究参加の同意は得られていたが,経済的 理由や胎位が骨盤位となったことによる妊娠中の転 院,分娩中の妊娠高血圧症候群(pregnancy-induced hypertension,以下PIH)や胎児心拍数低下,多量出 血による緊急搬送,多忙により実施不可能によるもの であった。また,コントロール群においては,該当期 間中に出産した初産婦52名中34名(回収率65.3%)か ら研究参加の同意が得られた。  B施設においては,8月から9月に出産予定であった 初産婦67名中,研究参加に同意が得られた者は35名 であった。その内,24名(35.8%)に介入を行った。研 究を実施できなかった理由は,分娩中の胎児心拍数低 下により緊急帝王切開となったこと,スタッフが多忙 により実施不可能によるものであった。また,コント ロール群においては,該当期間に分娩した初産婦で, 1か月健診で来院した28名中21名(75.0%)より同意が 得られた。  対象者の研究参加については,図1のフローチャー トに示す通り,介入群55名のうちPIHであった者を2 名,出生時体重が2500g以下であった者を4名除外し, 介入群:リクルート A施設 n=60 B 施設 n=67 n=31 n=24 コントロール群:リクルート A施設 n=52 B 施設 n=28 n=34 n=21 介入群 n=49 コントロール群 n=50 PIH n=2 出生時体重 2500g 以下 n=4 PIH n=1 出生時体重 2500g 以下 n=4 介入群 n=55 コントロール群 n=55 図1 対象者のフローチャート

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49名(89.1%)を解析の対象とした。また,コントロー ル群55名のうち,PIHであった者を1名,出生時体重 が2500g以下であった者を4名除外し50名(90.9%)が 解析の対象となった。  対象者の基本的特性について,介入群,コントロー ル群で比較したところ,表1に示す通り両群間に有意 な差は認められなかった。 2.会陰裂傷の発生頻度  今回の研究のメインアウトカムを見ると,会陰裂傷 の発生頻度について表2に示す通り,介入群では,第 1度会陰裂傷は28名(57.1%),第2度会陰裂傷は16名 (32.7%)の割合で発生していた。また,コントロー ル群では,第1度会陰裂傷は31名(62.0%),第2度会 陰裂傷は13名(26.0%)の割合で発生していた。会陰 裂傷の発生頻度について,介入群,コントロール群 の2群間で比較すると有意差はなかった(χ2=0.420, =0.517)。  セカンダリーアウトカムである高度会陰裂傷の発生 頻度では,第3度会陰裂傷は,介入群では3名(6.1%), コントロール群では3名(6.0%)の割合で発生してい た。第4度会陰裂傷は,両群ともに発生していなかっ た。会陰切開においては,介入群では10名(20.4%), コントロール群では7名(14.0%)に行われており,2群 間において有意差はなかった(p=0.436)。  出生時体重と会陰裂傷では,第1度会陰裂傷は平均 3167.3 253.8g,第2度会陰裂傷は3234.8 429.9g,第3 度会陰裂傷は3406.0 363.0gであり,有意差はなかっ た(p=0.583)。頭囲も同様に,第1度会陰裂傷は33.2 1.1cm,第2度会陰裂傷は33.8 1.2cm,第3度会陰裂傷 は33.2 1.0cmであり有意差はなかった(p=0.216)。 3.温罨法による影響  温罨法を行った介入群に注目して解析した結果を 表3に示す。温罨法は全体で平均2.77 2.43時間行われ ていた。このうち,温罨法の実施時間と会陰裂傷の 関係を見ると,第1度会陰裂傷における温罨法実施時 間の平均は2.27 2.59時間,第2度会陰裂傷では3.98 年齢(歳) 29.5(23-40) 30(21-40) 0.757a 妊娠週数(週日) 40.2 0.85 39.9 1.09 0.280b BMI 20.2 2.39 19.8 1.66 0.313b 体重増加量(kg) 11.1 3.1 10.5 3.3 0.364b 分娩所要時間(時間) 15.96 8.30 16.37 8.39 0.810b 出血量(g) 530.0(152-2,130) 419.0(70-1,406) 0.093a 出生時体重      3000g未満        3000-3500g未満        3500-4000g未満 14(28.6) 24(49.0) 11(22.4) 23( 46.0) 22( 44.0) 5( 10.0) 0.105 d 頭囲         33cm未満        33-35cm未満        35cm以上 16(32.7) 27(55.1) 6(12.2) 25( 50.0) 23( 26.0) 2( 4.0) 0.117 d 妊娠期会陰マッサージ なし        あり 42 7(85.7)(14.3) 4010( 80.0)( 20.0) 0.595c 分娩時会陰マッサージ なし        あり 45 4(91.8)( 8.2) 50(100.0) 0.056c 器械分娩(吸引)    なし        あり 3217(65.3)(34.7) 3614( 72.0)( 18.0) 0.521c 分娩体位       側臥位        仰臥位        四つ這い 20(40.8) 27(55.1) 2( 4.1) 19( 38.0) 30( 60.0) 1( 2.0) 0.776 d

a: Mann-Whitney U検定 b: t検定 c: Fisherの直接法 d: χ2検定 平均 中央値(標準偏差/最小値­最大値)/人(%)

表2 会陰裂傷の発生頻度 合計 (N=99)(n=49)介入群 コントロ ール群 (n=50) p値 裂傷程度 無傷  第1度 第2度 第3度 第4度 5( 5.1) 59(59.6) 29(29.3) 6( 6.0) 0 2( 4.1) 28(57.1) 16(32.7) 3( 6.1) 0 3( 6.0) 31(62.0) 13(26.0) 3( 6.0) 0 0.517a 会陰切開 なし あり  8217(82.8)(17.2) 3910(79.6)(20.4) 43 7(86.0)(14.0) 0.436b a: χ2検定  b: Fisherの直接法  人(%)

(7)

分娩時に会陰部に温罨方を行うことによる会陰裂傷の低減の効果 1.99時間,第3度会陰裂傷では1.85 1.51時間と,温罨 法実施時間と会陰裂傷の程度に有意差が認められた (p=0.002)。  また,温罨法を終了してから分娩に至るまでの時 間の平均は,第1度会陰裂傷では31.89 40.64分,第2 度会陰裂傷では38.63 41.22分,第3度会陰裂傷では 33.67 27.32分となり,会陰裂傷の程度との間に有意 差はなかった(p=0.868)。  出血量と温罨法の実施時間(r=0.080, p=0.587),出 血量と温罨法開始から児娩出までの時間(r=0.181, p=0.212)との相関に有意差はなく,温めることによる 出血量の増加は見られなかった。温罨法実施の途中, 熱感を感じた者は49名中3名おり,内2名は途中中断 することもあった。この3名のうち,大腿部が発赤し たものが1名いたが,発赤は持続せず消失し,産後か ゆみを訴える者はいなかった。

Ⅳ.考   察

1.温罨法の効果  分娩時に会陰部を温めた介入群で,第1度会陰裂 傷は28名(57.1%),第2度会陰裂傷は16名(32.7%), コ ン ト ロ ー ル 群 で は そ れ ぞ れ31名(62.0%),13名 (26.0%)で,会陰裂傷の発生頻度について2群間に有 意差はなかった。また,会陰裂傷の発生頻度について, 本研究では第1度,第2度会陰裂傷は88%の割合で起 こっていた。先行研究において,70∼80%起こってい るという報告よりもやや多い結果であった(大野・本 田,2003;芳中,2003)。  会陰裂傷という観点から皮膚の組織と温罨法による 影響についてみてみると,皮膚は,表皮,真皮,皮下 組織によって構成され,身体の部位によって異なるが, 表皮の厚さは平均約0.2mm程度,表皮と真皮を合わ せた厚さは平均約2.0mmであると言われている(佐藤 ・佐伯・原田編,2012)。皮膚を温めると,皮膚の伸 張性の向上や,循環血液量の増加,回復に影響がある と言われるheat shock protein(熱ショックタンパク質, 以下HSP)が喚起されるといったメリットがある。  産科婦人科学会の定義によると,第1度会陰裂傷は 会陰皮膚と膣粘膜にのみ限局する裂傷のこと,第2度 会陰裂傷は会陰の皮膚のみならず筋層の裂傷を伴う が肛門括約筋は損傷されないものとされている(川井, 2008)。皮膚の一部である真皮に注目すると,その構 成はコラーゲン線維でできており,それ自身には弾力 性はなく,張力に対して強い抵抗性を示す特徴がある。 しかし,ラットを用いた先行研究において,ラットの 尾部の腱組織を45℃の温浴で温めることで,25℃の浴 中内と比較して,腱組織の伸張性が高まると報告さ れている(Lehmann, Masock, Warren, et al., 1970)。腱 組織はコラーゲン繊維が密であり,腱組織の長軸方 向に対してコラーゲン繊維が平行に走っていることか ら,伸張性が乏しい組織と言われている。伸張性が乏 しい腱組織においても,45℃で温めることにより伸張 性が高まることが示されている(細田,2013)。そのた 表3 会陰裂傷とその要因(介入群) 裂傷程度(n=49) p値 n 無傷(n=2) 第1度(n=28) 第2度(n=16) 第3度(n=3) 温罨法実施時間(時) 49 1.18 0.26 2.27 2.59 3.98 1.99 1.85 1.51 0.002a 温罨法終了から児娩出まで(分) 48 13.00 31.89 40.64 38.63 41.22 33.67 27.32 0.868a 出血量(g) 49 588.0 285.7 536.2 280.0 680.1 488.8 503.3 366.1 0.903a 分娩所要時間(時) 49 17.45 19.59 15.77 7.78 17.40 8.37 9.07 5.53 0.387a 年齢(歳) 49 27.5 3.54 29.2 4.06 31.6 4.88 29.7 3.79 0.321a 会陰切開 なしあり 3910 20(4.1) 325(51.0)(6.1) 9 7(18.4)(14.3) 3 0(6.1) 0.125b 器械分娩(吸引) なしあり 3217 20(4.1) 622(12.2)(44.9) 610(12.2)(20.4) 2 1(4.1)(2.1) 0.024b 分娩体位 側臥位仰臥位 四つ這い 20 27 2 1(2.1) 1(2.1) 0 15(30.5) 11(22.4) 2( 4.1) 2( 4.1) 14(28.5) 0 2(4.1) 1(2.1) 0 0.092 c 性別 男児    女児 2227 11(2.1)(2.1) 1315(26.4)(30.5) 9 7(18.4)(14.3) 2 1(4.1)(2.1) 0.677b 妊娠期会陰マッサージ なし        あり 742 11(2.1)(2.1) 424( 8.2)(48.8) 15 1(30.5)( 2.1) 2 1(4.1)(2.1) 0.604b

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に温罨法を行うことで,筋血流量が約23.6%有意に増 加し(仲村・村田・村田他,2012),筋硬度が約11%有 意に低下したという報告があり(古後・村田・村田他, 2010),皮膚の下にある筋にも好影響を与えていると 言える。  このような温罨法による効果は報告されているもの の,今回の結果から,温罨法による会陰裂傷の低減は 認められなかった。むしろ,会陰裂傷自体も,これま での報告よりやや高い割合で発生していたという結果 であった。このことは,先の報告から,皮膚の伸張性 を期待するには皮膚温の温度が十分に上がっていなか ったのではないかということが推測される。皮膚の温 度を45℃以上に保つことによって伸張性を高めるこ とが期待でき,会陰裂傷の予防につながるのではない かと考える。本研究においてみてみると,温罨法終了 から児娩出までの時間が平均30分以上かかっていた が,温罨法除去後も皮膚血流量は5分程度の上昇が続 き,20分後であっても温める前よりも皮膚血流量が約 40%高い割合で維持されており(細田,2013),温罨法 終了後もしばらく効果が持続すると考えられる。また, 外陰部消毒に使用する消毒は温めていることや児娩出 に備え部屋の温度を温かくしていることから,会陰部 の温度が急激に低下する可能性は低かったと推察され る。一方で,会陰は非常に敏感な皮膚であり,保温に 際しても温罨法自体を50℃で設定して保温していた ものの,皮膚に感じる温度は40℃を保つように心が けた。本研究において,約40℃の温罨法では皮膚が 柔軟性を起こすまでの至適温度を超えていなかった可 能性があり,十分に伸展性を高めることができず,会 陰裂傷予防の即時効果が得られなかったと推察される。 よって,分娩第Ⅱ期からの保温効果による裂傷低減の 効果を得ることは難しいことが示唆された。 2.会陰裂傷予防と早期治癒を促すための助産ケア  会陰裂傷予防を目的としたこれまでの研究は,高度 会陰裂傷の低減に重点が置かれその効果が示されてお り,第1度,第2度会陰裂傷に着目したケアの報告や 産後の治癒を促すような研究はほとんどないのが現状 である。しかし,第1度,第2度の会陰裂傷はお産の 70∼80%で起こっていると報告されている(大野・本 田,2003;芳中,2003)。そこで今回,発生頻度が高い 第1度,第2度会陰裂傷に注目し,その発生を減少さ あった。  会陰裂傷を予防するために,様々な助産ケアが行わ れており,妊娠中の会陰マッサージや側臥位や四つ這 いなどの分娩体位の工夫は,会陰裂傷の低減に効果が あると言われている(Beckmann & Stock, 2013;篠崎 ・堀内,2011)。他にも,分娩第2期に会陰保護をしな い方法(Albers, Sedler, Bedrick, et al., 2005) ,会陰の 伸展性を良くするために,会陰や骨盤底筋群を柔軟に する運動や排臨・発露の過程をゆっくり待つこともあ る(森・佐藤・鳥越,2010)。  近年,HSPが注目されており,その働きは刺激によ るストレスを加えることによって細胞内で大量に作ら れ,異常なタンパクができないよう,また異常になっ たタンパクを修復したりして,細胞を強化している。 HSPは1962年に発見され,ショウジョウバエを加熱 した際に増加したタンパク質である。温熱ストレスだ けではなく,どんなストレスでも作られるため,「ス トレス・タンパク」とも呼ばれている。ストレスで誘 導されるHSPは多様な種類があり,その中でも温熱 ストレスで最も多く誘導されるのがHSP70であると 言われている。  HSP70の作用は本来,タンパクの合成や運搬,分 解に関係している。HSP70は異常になったタンパク 質を認識して結合する。異常タンパクは,HSP70を 通過して傷害部位が修復され,良いタンパク質とな る。HSP70を充分に準備しておけば,ストレス障害は 軽減され,回復が早くなると言われている。HSP70を 増加させるために体を加温する方法が用いられる。そ の際,高い温度は必要なく,細胞がストレスと感じ, HSP70を誘導する41℃の温度で体を加温する。HSP70 は,様々な病気やストレス障害から体を守り,老化や 痴呆の予防,さらに運動能力まで向上させると言われ ている。熱の感じ方は人それぞれであるため,HSP70 の増加には個人差があると言われている。一方ヒトの HSP70含有量においては,ほとんどが温熱負荷後2日 目をピークに増加したという報告がある(伊藤,2005)。 また,約41℃で1日30分間保温するという方法で,温 熱群における壊死線維数が有意に少なかったことから, HSP70が誘導されたと報告されている(坂野・沖田・ 鈴木他,2009)。しかし,効果の頻度を見ると,温め れば温めるほどHSP70が増えるというわけではなく, 毎日温罨法を行えば耐性ができる。つまり,毎日同じ

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分娩時に会陰部に温罨方を行うことによる会陰裂傷の低減の効果 刺激を繰り返し受けることで身体が慣れてしまい,ス トレスを感じにくくなってしまう。週に2回であれ ば,3∼4か月でHSP70が低下する可能性があり,毎 日行っている場合は4∼5週間で低下する可能性があ る。効果が薄らいだと感じたら,加温を1週間中止す ることで,細胞は加温したことを忘れるため,再度加 温することでHSP70が増加すると言われている(伊藤, 2005)。  以上のことから,温罨法を行うという介入は生理学 的視点から見ると,皮膚の伸張性が向上すること,循 環血液量が増加すること,筋緊張が低下することから, 理論上は会陰裂傷を減少させることに有効性があると 言える。また,温罨法を行うことでHSP70が増加す るため,会陰裂傷の早期治癒に有効性があると言える。 研究の限界

 本研究では,historical controlled designを用いて, 介入群,コントロール群の2群を比較した。2群間の対 象者の特性に有意差はなかったものの,研究協力機関 との合意の中で対象者同士のマッチングを行うことが できなかった。また,会陰裂傷の発生には,会陰マッ サージの有無や分娩体位,分娩時の呼吸法,身体の循 環,助産師の介助の方法などの様々な要因が関係する ことも考慮に入れ,今後はランダム化比較試験など研 究デザインの検討を行う必要があると考える。

Ⅴ.結   論

 本研究において,分娩時に会陰部に温罨法を行うこ とによる第1度,第2度会陰裂傷低減の効果を得るこ とができなかった。温罨法を分娩第Ⅱ期に適用し皮膚 温の温度を上げることで皮膚の伸展性を高めることに は限界があり,会陰裂傷予防の効果を得ることは難し いことが示唆された。しかし,妊娠中からの温罨法に よる皮膚刺激によって,heat shock proteinを発生させ 生理学的に皮膚の伸展性の向上や筋緊張の低下,循環 血液量が増加する結果,会陰裂傷を減少させる可能性 が示唆された。温罨法については,会陰裂傷予防だけ ではなく,会陰裂傷発生後の治癒促進のケアとして効 果も視野に入れ,その方法や時期などを検討していく 必要があると考えられる。 文 献

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参照

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