修正1ヵ月における超低出生体重児と正期産児の上肢自発運動の比較
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(2) 348. 理学療法学 第 45 巻第 6 号. 図 1 実験概要 妥当性検証の概要(左図),マーカー(中央図),振子と Kinect(右図)を示す.. 早期からポジショニングを実施している。出生後早期の 安静が必要な時期には,安静保持や全身の屈筋緊張を高. 方 法. める目的にポジショニングマットを用いて児を胎児姿勢. 1.評価機器の妥当性検証. に近づける。その後,呼吸循環動態が落ち着いてきた適. 1)測定装置. 切な時期には,自発運動を促す目的に非対称性姿勢を是. 評価機器は,乳児自発運動評価を目的に,色の表現を. 正する簡便な方法として新生児枕を使用することがあ. 赤(R) ,緑(G),青(B)の三原色で表現する RGB カラー. る。しかし,超低出生体重児の自発運動の特徴を示す定. モデルに深度(Depth)の情報を加えた RGB-D カメラ,. 量的な指標はなく,適切な評価がなされていないのが現. そして運動測定と解析を兼ねたノートパソコンから構成. 状である。新生児期∼乳児期初期の自発運動が発達を促. さ れ る。 実 験 に 用 い た 評 価 機 器 は,RGB-D カ メ ラ に. 進させることを鑑みると,超低出生体重児特有の自発運. Microsoft 社製 Kinect for Windows v2(以下,Kinect) ,. 動の特徴を理解することは重要であり,その特徴の理解. そしてノートパソコンに SONY 社製 VAIO Duo 13 で. と発達支援の介入による変化を客観的に捉えることは重. ある。Kinect は,ゲーム用センサでありながら高い利. 要である。. 便性があり,専用のソフトウェアライブラリを用いるこ. 乳児自発運動評価の先行研究において,Prechtl らは早. とで,人の関節位置の推定や取得画像の 1 ピクセル毎の. 産児の自発運動を観察し,その質を分類することで脳性. 三次元位置を得ることができる。プログラミングには,. 13)14). 。し. 開発環境を Microsoft 社製 Visual Studio 2013,そして. かし,これは視覚的に運動の質を分類する評価法のため. ソフトウェアライブラリを KINECT Application Program. 熟練する必要があり,定量的な評価方法ではない。また,. Interface と Open Source Computer Vision Library を. 近年では三次元動作解析機器を用いた研究の発展により. 使用した。開発したソフトウェアでは,指定したカラー. 麻痺や発達障害を予測することを示している. 15)16). が,これ. マーカーを追跡してリアルタイムに 3 次元座標を出力す. らは症例数が極少数であったり,主に正期産児を対象と. るアルゴリズムとした。色の認識は,外界の光量の影響. していたり,超低出生体重児を対象とした報告ではない。. を 少 な く す る た め, 画 像 の 色 空 間 を RGB か ら 色 相. 超低出生体重児の自発運動を定量的に捉えることが難し. (Hue),彩度(Saturation) ,明度(Value)の成分から. い理由には,NICU の限られた空間の中へ大型の三次元. なる色表現 HSV へ変換した後に行った。そして,認識. 動作解析機器を持ち込むことができないことがある。. された色のピクセル群からもっとも集積している領域を. よって,定量的分析により超低出生体重児の自発運動の. 選択し,その領域におけるピクセル群の三次元位置の平. 特徴,および自発運動の改善を報告した研究は少ない。. 均を時間情報とともに出力させた. そこで,本研究は超低出生体重児の自発運動の特徴を. 用したカラーマーカーは,フェルト生地の赤色と青色の. 正期産児と比較し明らかにするとともに,新生児枕によ. 2 色とした(以下,Kinect マーカー) 。. る即時的影響を検証することを目的とした。具体的には,. 2)測定方法. 乳児自発運動評価のために開発された小型の三次元動作. 方法は,単純な動体に対して高い信頼性がある計測機. 計測システムを用いて上肢の自発運動を計測,解析した。. 器と評価機器を用いて同時に計測し,それぞれ得られた. なお,本研究は評価機器の三次元座標データの妥当性を. データを比較して類似性を評価した。使用する動体は,. 検証したうえで,上肢の自発運動の評価を行った。. 乳児の四肢の運動を三次元的な往復運動と仮定した振子. 児の自発運動を捉えた報告が散見される. 17). 。なお,実験で使. とした。高い信頼性がある計測機器は,三次元動作解析 機器 VICON 社製 NEXUS1.7.1 と赤外線カメラ 9 台(以 下,VICON)である。同時計測の概要を図 1 左図に示.
(3) 修正1ヵ月における超低出生体重児と正期産児の自発運動の比較. 349. した。VICON は,原点から左右方向を x,前後方向を y,. 読影を行っている。正期産児の選択基準は,1)出生体. 鉛直方向をzとした。Kinect の設置は,床面より 60 cm. 重 2,500 g 以上かつ在胎期間 37 週以上の児とした。除. の高さで水平より 45 度下方へ傾けた状態で三脚へ取り. 外基準は,1)健診でなんらかの指摘を受けている児,2). つけ,座標系を VICON に合わせた。用意した振子は,. 入院中の児,3)研究参加に同意が得られなかった児と. VICON 社製の赤外線反射マーカー(直径 30 mm)へ. した。対象の募集は,研究の目的,方法などを記した掲. Kinect マーカーを帯状に貼布した特殊なマーカー(図 1. 示を院内,学内掲示板にて行った。対象の基本属性とし. 中央図)を,鉛直から吊るした 50 cm の紐の下端に接. て,性別,出生体重,在胎期間,評価時体重,評価時修. 着した(図 1 右図)。実験条件は,振子の動きを x-z 面. 正月齢を調査した。. そして y-z 面で行わせるようにし,マーカーの初期位置. なお,本研究は東京女子医科大学病院倫理委員会(承. を鉛直方向から図 1 左図の条件下で Kinect が映像取得. 認番号 160111) ,首都大学東京荒川キャンパス研究安全. 可能な最大角度 30°から自由落下させた。この実験条件. 倫理委員会(承認番号 16005)の承認を得たうえで実施. で両機器による同時測定を実施した。取得したデータの. した。研究の実施にはヘルシンキ宣言および人を対象と. 解析では,振子 5 周期分の x,y,z 座標各々を両機器 2. する医学系研究に関する倫理指針を遵守した。また,対. 群間で比較した。解析するデータの区間は,開始の 1 振. 象が 1 歳未満のため,代諾者である両親へ研究の目的,. 幅目から 5 振幅目(振子の最大速度 1.3 m/s)までの 5. 内容などについて文書および口頭で十分な説明を行い,. 周期と,6 振幅目から 10 振幅目(乳児の自発運動の最. 書面にて同意を得た後に実施した。. 大速度である 0.8 m/s. 16)18). )までの 5 周期を抽出し,2. 2)測定方法. 条件で比較した。. 乳児自発運動評価には Kinect を用いて測定した。測. 3)解析方法. 定時期は,超低出生体重児群は出生予定日から 1 ヵ月後. 解析は,評価機器より得られた三次元座標の時系列. の修正月齢 1 ヵ月,正期産児群は生後 1 ヵ月に行った。. Kinect デ ー タ( サ ン プ リ ン グ 周 波 数 34 Hz), そ し て. 測定場所は,超低出生体重児群は東京女子医科大学病院. VICON データ(サンプリング周波数 100 Hz)を用いた。. NICU 内の 1 室,正期産児群は対象児の各自宅で外的刺. 両データともに,ローパスフィルタ(カットオフ周波数. 激が少ない場所を使用した(図 2) 。測定場所の室温は. 5 Hz) を 通 過 さ せ, ノ イ ズ 除 去 を 行 っ た。 そ の 後. 28℃と児の体温管理を行った。測定時間は,乳児自発運. VICON データは,サンプリング周波数 100 Hz を間引. 動評価に適した覚醒して動きがある状態を維持しやすい. きにより 33 Hz へダウンサンプリングを行い 34 Hz へ. 授乳後 60 ∼ 90 分の 30 分間とした。児はおむつと白色. 近似させた。なお,Kinect データには,カラーマーカー. の肌着 1 枚のみを着用させた状態で,Kinect マーカーを. がセンサから隠れたことによる欠損が時折ある。欠損値. 両手首の遠位端を 1 周するように貼布した(図 3 左図) 。. は,直前と直後のデータを用いて線形補間した。解析開. バスタオルの上に黒い布を敷き,Kinect にて測定を行っ. 始点を 0 とし,振子の 5 周期分の Kinect データ(x,y,. た。超低出生体重児群,正期産児群ともに児を黒い布の. z),VICON データ(x,y,z)を x,y,z 各々におい. 上に Kinect カメラの中心に臍,カメラ側に両足がくる. て 2 群間で比較した。また,振子 5 周期分の x,y,z. ように,かつ背臥位,頭部体幹が正中位の状態で寝かせ. 座標から Kinect および VICON の合成速度,合成加速. 新生児枕有無の 2 条件で 3 分間ずつ測定を行った。新生. 度をそれぞれ算出し,速度 2 条件で比較した。. 児枕は,青葉社製マイピローネオを用い,外後頭隆起が 枕の中心に位置するように設置した(図 3 右図) 。枕の. 2.乳児自発運動評価. 有無は,対象毎に無作為に順番を入れ替えて行った。児. 1)対象. の自発運動の測定は,児が覚醒し敏活に動いている状態. 対象は,東京女子医科大学病院 NICU 入院中の超低. (Brazelton の state 分類. 19). state 4)で行い,啼泣やぐ. 出生体重児群と,在宅の正期産児群の 2 群とした。超低. ずりが見られた場合は中止して抱っこをしてあやし,. 出生体重児群の選択基準は,1)出生体重 1,000 g 未満,. state 4 を維持できれば測定を再開し,評価時間 30 分を. 2)当院 NICU に入院中の児とした。除外基準は,1). 過ぎてしまう場合や泣き止まない場合には終了とした。. 染色体異常・奇形症候群(頭部変形を含む)の診断を受. 3)解析方法. けた児,2)新生児科医またはリハビリテーション科医. Kinect データ(サンプリング周波数 34 Hz)より得ら. 診 察 に て 神 経 学 的 異 常 の あ る 児,3) 入 院 中 の 頭 部. れた両手首の三次元座標の時系列データから対象児の機. magnetic resonance imaging(以下,MRI)にて中枢神. 嫌がよい state 4 の状態かつ自発運動が連続して確認で. 経疾患の異常のある児,4)研究参加に同意が得られな. きたはじめの 30 秒間を用い,以下の①∼④の 4 つのパ. かった児とした。なお当院では出生体重 1,500 g 未満で. ラメータを算出し,両群を枕の有無で比較した。なお,. 出生した児は全例頭部 MRI を施行し,放射線科医師が. データは 1 − 3)と同様にローパスフィルタ,欠損値の.
(4) 350. 理学療法学 第 45 巻第 6 号. 図 2 測定場所 超低出生体重児群の測定場所 NICU の1室(左図) ,正期産児群の測定場所自宅の一例(右図)を示す.. 図 3 測定条件 超低出生体重児,正期産児に貼付したマーカー(左図),新生児枕(右図)を示す.. 補間を行った。. くなってしまうため,本研究では運動時間,運動距離で. ①平均速度. 補正した Jerk Index (JI). 速度 x ,y ,z は左右上肢より得られた座標データ x,. は,両上肢データを平均化した。. 21). を用いた。なお Jerk Index. y,z を微分し算出した。x ,y ,z を合成し,三次元の 速度を算出した(V)。本研究では,瞬間の速度 V を解 析時間中で平均したものを平均速度として定義した ¯ )。なお平均速度 V ¯ は,両上肢データを平均化した。 (V ②対称性:平均速度の Laterality Index(LI). t: 運動時間 L: 運動距離. 左右上肢の速度の対称性を評価するために左右上肢の ¯ の laterality index を算出した。値が大きく 平均速度 V. ④突発性:加速度の尖度 Kurtosis. なるほど,非対称であることを示す。. 確率分布である尖度 Kurtosis (K). 動きのデータのばらつきを評価するために,加速度の 22). を算出した。加速. 度のデータ分布のピークが尖っていて裾が大きい分布を 示すこと,つまり尖度が大きい場合には,断続する突発 的な運動が多いことを示す。なお尖度は,両上肢データ ③流暢性:躍度 Jerk Index. を平均化した。. 運動の滑らかさを評価するために加速度の微分値,つ まり加速度の変化率を算出した。これは運動の巧緻性を 20). 表すとされており,Jerk (J). と呼ばれる。もっとも. 円滑な運動は等加速度運動で jerk は小さく,加速度が 不規則で激しい運動の場合 Jerk は大きくなる。しかし Jerk は運動時間,運動距離が大きくなれば Jerk も大き. xi: 加速度 m: 平均加速度 N: データ数.
(5) 修正1ヵ月における超低出生体重児と正期産児の自発運動の比較. 351. 図 4 Kinect と VICON の時系列データ 実線を Kinect の時系列データ,点線を VICON の時系列データを示す.. 統計解析. 加速度で ICC (1,1)を算出した。 乳児自発運動評価では,2 群間の基本属性,評価時情. 評価機器の妥当性検証では,Kinect と VICON の三次. 報の比較には性別をカイ二乗検定,出生体重,在胎期間,. 元座標データを各々 x,y,zで級内相関係数 ICC (2,1). 評価時体重,評価時修正月齢は対応のないt検定を行っ. を算出した。また Kinect と VICON の合成速度,合成. た。自発運動の各パラメータ①∼④に対しては,対象.
(6) 352. 理学療法学 第 45 巻第 6 号. 表 1 解析対象者の背景 超低出生体重児群 n=8. 正期産児群 n=8. p値. 男 5/ 女 3. 男 4/ 女 4. 0.61. 出生体重(g). 729 ± 144. 3,152 ± 390. <0.001. 在胎期間(週数). 24.6 ± 2.0. 38.1 ± 0.6. <0.001. 評価時体重(g). 2,270 ± 312. 4,292 ± 566. <0.001. 44.1 ± 1.6. 45.5 ± 1.4. 0.21. 性別(男 / 女). 評価時修正月齢(週数). 年齢は割合,他は平均±標準偏差で表示. (超低出生体重児群,正期産児群)と枕(有,無)を要. 週,正期産児群で 45.5 ± 1.4 週で有意差はなかった。超. 因とする二元配置分散分析を行った。さらに対象の違い. 低出生体重児はいずれも NICU 内,正期産児は対象児. と枕の有無を含めたすべての組み合わせを Bonferroni. の在宅内にて評価を行った。解析対象者の背景を表 1 に,. 法による単純主効果の検定を行った。いずれの検定も統. 解析に用いた左右,それぞれの手首マーカーの運動軌跡. 計解析ソフト(IBM SPSS Statistics Version 23)を用. の例を超低出生体重児,正期産児 1 例ずつ図 5 に示す。. い,有意水準は 5%とした。. 二元配置分散分析の結果,自発運動評価パラメータ②. 結 果. 対称性では,枕の有無による主効果は認めず,2 群間(超 低出生体重児群×正期産児群)による主効果が認められ. 1.評価機器の妥当性検証. た。交互作用は認められなかった。また,自発運動評価. 振子の最大速度 1.3 m/s において ICC(2,1)は x 座標. パラメータ①,③,④では,枕の有無と 2 群間(超低出. (x 方向振子)0.93,y 座標(y 方向振子)0.94,z 座標(x. 生体重児群×正期産児群)による主効果は認められず,. 方 向 振 子 )0.36,z 座 標(y 方 向 振 子 )0.50 で あ っ た。. 交互作用も認められなかった(表 2)。. 0.8 m/s においては x 座標(x 方向振子)0.98,y 座標(y. 単純主効果の検定の結果,枕なし条件で超低出生体重. 方向振子)0.93,z 座標(x 方向振子)0.84,z 座標(y. 児群は正期産児群に比べ②対称性において有意に非対称. 方向振子)0.60 であった。なお x 方向振子時の y 座標,. 性を示した(p = 0.001) 。枕あり条件では,②対称性は. y 方向振子時の x 座標は両機器の位置変化は 0 へ近似し. 2 群間で有意差を認めなかった(p = 0.09) 。超低出生体. た値であった。x,y 座標は 1.3 m/s 以下で VICON と. 重児群における LI は枕なし条件では 45.9 ± 8.8%,枕あ. の高度の妥当性を有し,z 座標は 0.8 m/s 以下において. り条件では 34.1 ± 21.9% であった。正期産児群におけ. 中∼高等度の妥当性を有した。. る LI は枕なし条件では 24.5 ± 12.2%,枕あり条件では. また,合成速度,加速度における ICC (1,1)は,1.3 m/. 16.6 ± 15.7% であった。自発運動評価パラメータ①平均. s における x 方向振子合成速度 0.69,合成加速度 0.68,. 速度,③流暢性,④突発性においては,対象の違いと枕. y 方向振子合成速度 0.64,合成加速度 0.63,0.8 m/s に. の有無を含めたすべての組み合わせにおいて有意差を認. おける x 方向振子合成速度 0.70,合成加速度 0.69,y 方. めなかった(表 3)。. 向振子合成速度 0.61,合成加速度 0.61 であった。. 考 察. 2.乳児自発運動評価. 1.評価機器の妥当性検証. 募集期間中に応募のあった超低出生体重児は 8 名,正. 本研究では,乳児の自発運動を定量的に評価するため. 期産児は 10 名であった。正期産児 2 名は解析時間中に. に,三次元動作計測システム Kinect を用いて解析を行っ. 啼泣し state 4 の状態で 30 秒間の計測が困難であったた. た。まず測定を行ううえで,Kinect の三次元座標デー. め除外した。よって解析対象は,超低出生体重児群 8 名. タが三次元動作解析機器 VICON と比較し妥当性がある. (男:女= 5:3) ,正期産児 8 名(男:女= 4:4)であっ. のかを振子の運動を評価し,検証した。結果,最大速度. た。2 群間の基本属性・評価時情報の内,出生体重(超. 1.3 m/s では x,y 座標の ICC は Almost Perfect ほぼ完. 低 出 生 体 重 児 群 729 ± 144 g, 正 期 産 児 群 3,152 ±. 璧. 390 g),在胎期間(超低出生体重児群 24.6 ± 2.0 週,正. Moderate 中等度の妥当性であった。Kinect の z 座標は. 期産児群 38.1 ± 0.6 週) ,評価時体重(超低出生体重児. x,y 座標に比べると精度が低い理由としては,x,y 座. 群 2,270 ± 312 g,正期産児群 4,292 ± 566 g)で有意差. 標は color camera から情報を取得するのに対し,z 座. を認めた。評価時修正月齢は超低出生体重児群 44.1 ± 1.6. 標は深度センサから情報を取得するためと考えられた。. 23). で あ っ た が,z 座 標 に お い て は Fair 普 通 ∼.
(7) 修正1ヵ月における超低出生体重児と正期産児の自発運動の比較. 353. 図 5 超低出生体重児(1 例)と正期産児(1 例)の手首マーカーの運動軌跡. 表 2 分散分析表 パラメータ. F値. 自由度. p値. ①平均速度. 枕の有無. 0.76. 1. 0.40. . 2 群間(超低出生体重児群×正期産児群). 0.35. 1. 0.57. 交互作用(枕の有無×対象の違い). 0.03. 1. 0.86. ②対称性. 枕の有無. 3.00. 1. 0.11. . 2 群間(超低出生体重児群×正期産児群). 14.1. 1. 0.002. 交互作用(枕の有無×対象の違い). 0.12. 1. 0.74. ③流暢性. 枕の有無. 0.03. 1. 0.87. . 2 群間(超低出生体重児群×正期産児群). 0.42. 1. 0.53. . 交互作用(枕の有無×対象の違い). 0.50. 1. 0.49. ④突発性. 枕の有無. 0.82. 1. 0.38. . 2 群間(超低出生体重児群×正期産児群). 0.81. 1. 0.38. . 交互作用(枕の有無×対象の違い). 1.08. 1. 0.32. しかし,最大速度 0.8 m/s では z 座標,および合成速度,. ∼ 0.76 と,Moderate 中等度∼ Substantial 十分な VICON. 合成加速度においても Substantial 十分な妥当性を有し. との妥当性であるため,乳児のごくわずかな動きまで完. た。先行研究では. 16) 18). ,乳児自発運動の最大速度 0.8 m/. 全には捉えきれていない可能性がある。. s,平均速度 0.06 ∼ 0.09 m/s と報告されており,Kinect. 従来,Kinect はマーカーを使用せずにモーショント. は乳児自発運動評価に適応できると考えられた。なお,. ラッキングをすることで成人の標点,関節角度を算出可. Kinect の x 方向振子の y 座標,y 方向振子の x 座標は. 能であり,成人の姿勢評価. 変動が軽微であることから VICON との ICC (2,1)は 0.43. れている。しかし,対象が乳児の場合,成人のモデルと. 24). や歩行評価 25)に用いら.
(8) 354. 理学療法学 第 45 巻第 6 号. 表 3 乳児自発運動評価各パラメータの実測値 超低出生体重児群. ①平均速度(cm/s). 正期産児群. 枕なし. 枕あり. 枕なし. 枕あり. 6.1 ± 3.4. 5.4 ± 2.0. 6.8 ± 3.3. 6.3 ± 3.5. 16.6 ± 15.7. p = 0.001. ②対称性(%). 45.9 ± 8.8. 34.1 ± 21.9. 24.5 ± 12.2. 4.3 ± 3.2. 3.8 ± 1.1. 4.5 ± 2.3. 4.9 ± 2.3. 18.1 ± 9.8. 17.6 ± 13.6. 18.1 ± 7.8. 25.6 ± 14.9. p = 0.09 4 ③流暢性(× 10 ). ④突発性 平均±標準偏差で表示. 18). 大きく異なるため乳児の標点を直接モーショントラッキ. ている. ングし,認識することができない。そこで,Olsen らは,. 平 均 速 度 は 超 低 出 生 体 重 児 群 6.1 cm/s, 正 期 産 児 群. 生後 3 ∼ 6 ヵ月の児を対象に Kinect の乳児のモデルを. 6.8 cm/s であり,同様の測定結果を示した。また,本. 作成し,マーカーレスにてモーショントラッキングを. 研究での対象は,神経学的異常を認めないことが予測さ. 26). 。これらの先行研究と本研究を比較すると,. ,乳児の体格の違いに. れる超低出生体重児を対象としたため,脳性麻痺で高値. より認識が難しく,マーカーの誤差が大きいことを指摘. を示す平均速度,jerk index と発達障害で高値を示す尖. している。また乳児にボディスーツを着用させ,認識を. 度は,正期産児と比較し差がなかったことは先行研究を. 行った検討を報告しているが. 行った報告もあるが. 27). ,解析範囲が大きく,また乳児. 支持する結果であった。. の自発運動を制限する可能性がある。本研究では,従来. 一方で,超低出生体重児群の自発運動は正期産児群に. とは異なりマーカーを使用したが,認識した色の中心点. 比べ LI が大きく,非対称な自発運動を呈していた。超. を算出するシステムを用い,極軽量の布マーカーを解析. 低出生体重児群の自発運動が非対称となる要因には早産. に使用した。その結果,VICON との中∼高等度の妥当. 児特有の形態や姿勢が関与していることが考えられる。. 性を有していること,体格による認識の影響を受けない. 自発運動は,受精後 8 週頃の胎児期から観察することが. こと,解析対象範囲を小さくできること,乳児の自発運. でき,受精後 15 ∼ 20 週の時期には出生するまでに見ら. 動を制限しないことは,対象の小さい低出生体重児や生. れるすべての運動のレパートリーをすでに獲得し,それ. 後直後の正期産児の自発運動を評価するうえで有効であ. 以降は新たな運動はみられないことが報告されてい. ると考えられた。. る. 30). 。また,出生後の筋緊張についての報告では,出. 生予定日頃には早産・低出生体重児と正期産児を比較し 31). 。しかし,形. 2.乳児自発運動評価. た場合,同等であると報告されている. 本研究では神経学的異常を認めないことが予測される. 態においては,予定日より早期に出生した超低出生体重. 超低出生体重児群の修正 1 ヵ月と正期産児群の生後 1 ヵ. 児は,頭部への栄養が優先され,内臓系への供給は不十. 月の自発運動を比較した。その結果,超低出生体重児の. 分であり頭部が相対的に大きく出生し,正期産児に比べ. 上肢自発運動は正期産児と同様の平均速度,流暢性,突. 体重も軽い。さらに,長期の治療や安静により頭部は縦. 発性を有していたが,左右の非対称性があることを示. 長横扁平であることが多い. した。. 部が左右どちらか横向きの非対称姿勢を呈しやすい。こ. 儀間らは極低出生体重児の修正 2 ∼ 5 ヵ月の自発運動. れらの報告により,早産として出生する超低出生体重児. をビデオ映像から平均速度,尖度等の解析を行い,自発. でも正期産児と同様に運動のレパートリーをすでに胎内. 運動の定量化と客観的指標に基づく早期介入の必要性を. で獲得し,出生予定日以降には筋緊張が同等まで改善す. 述べている. 28). 。正期産児を対象とし,三次元動作解析. 機器を用いて自発運動を計測した検討では,上肢の平均 16). 11). 。そのため児の姿勢は頭. るが,超低出生体重児特有の形態や非対称な姿勢によ り,自発運動へも非対称性が影響することが推察された。. 。また早. また,新生児枕が自発運動に及ぼす効果をみた検討で. 産児を対象としビデオ解析を用いて出生予定日前後の自. は,正期産で出生した予後が正常な児と,微細脳機能障. 発運動を計測し,脳性麻痺を呈した児は正常であった児. 害を呈した児に枕を使用したが,運動の質や量に変化は. に比べて上肢平均速度が高く,Jerk index が高値を示し. なかったと報告している. 速度は約 6.0 ∼ 9.0 cm/s と報告されている. 29). 32). 。しかし,本研究では,正. 。また発達障害を認めた児は予後が正常であった. 期産児ではなく,非対称性を示す超低出生体重児を対象. 児に比べて平均速度が遅く,尖度が高いことが報告され. としたため,非対称性が改善された可能性が考えられ. た.
(9) 修正1ヵ月における超低出生体重児と正期産児の自発運動の比較. る。修正 1 ヵ月において早産児は正期産児に比べ,頭部 への荷重割合が高く非対称であり,体幹屈曲位が減少し ていることが指摘されている. 33). 。枕を使用することで,. 頭部への荷重が減少し,体幹屈曲位を誘導したことによ り非対称性が軽減したことが推察された。 本研究では,超低出生体重児と正期産児の神経学的発 達である修正月齢に差がなく,2 群の自発運動の平均速 度,流暢性,突発性に差がない,また超低出生体重児の 自発運動の非対称性は新生児枕の使用により即時的に軽 減した。これらを考慮すると,神経学的異常を認めない 超低出生体重児は,正期産児と同様の自発運動を有して いるが,自身の体重や形態,姿勢などによりその自発運 動をうまく発揮できていない可能性が考えられる。よっ て,本研究により,超低出生体重児の自発運動と枕によ る影響を定量的に評価することで,超低出生体重児の自 発運動は非対称性の特徴があることが明確となり,介入 により軽減できる可能性が示された。 研究の限界として,本研究は修正月齢1ヵ月時のみの 自発運動の検討であり,超低出生体重児の自発運動が変 化する可能性があり,経時的な自発運動の評価が必要で ある。また,超低出生体重児の非対称な自発運動がその 後の感覚運動発達遅延にどのように関与するかは不明で ある。自発運動とその後の運動発達評価との関連を検証 する必要がある。さらに,NICU での新生児枕の継続的 な使用にあたっては,嘔吐や無呼吸発作の頻度が増加し ないか安全性を検討する必要がある。 結 論 今回,超低出生体重児の修正 1 ヵ月時の自発運動の特 徴と新生児枕による即時的影響について小型の三次元動 作計測システムを用いて検討を行った。本研究の結果か ら,超低出生体重児の自発運動は,正期産児と同様の平 均速度,流暢性,突発性を有していたが,左右の非対称 性があることを示し,新生児枕の使用により非対称性を 軽減できる可能性が示された。 利益相反 開示すべき利益相反はない。 謝辞:本研究に参加いただいた対象児の皆様,保護者の 皆様に深謝いたします。 文 献 1)OECD: Infant mortality. Health at a Glance. 2013; 21: 36‒37. 2)OECD: Infant health: Low birth weight. Health at a Glance. 2013; 21: 38‒39. 3)Moster D, Lie RT, et al.: Long-term medical and social consequences or preterm birth. N Engl J Med. 2008; 359:. 355. 262‒273. 4)Walsh MC, Morris BH, et al.: Extremely low birthweight neonates with protracted ventilation: mortality and 18-month neurodevelopmental outcomes. J Pediatr. 2005; 146: 798‒804. 5)Kieviet JF, Piek JP, et al.: Motor development in very preterm and very low-birth-weight children. JAMA. 2009; 302: 2235‒2242. 6)Suh-Fang J, Kuo-Inn T, et al.: Prognostic factors for walking attainment in very low-birthweight preterm infants. Early Hum Dev. 2000; 59: 159‒173. 7)Aarnoudse-Moens CSH, Weisglas-Kuperus N, et al.: Metaanalysis of neurobehavioral outcomes in very preterm and/or very low birth weight children. Pediatrics. 2009; 124: 717‒728. 8)Whitaker AH, Feldman JF, et al.: Motor and cognitive outcomes in nondisabled low-birth-weight adolescents: early determinants. Arch Pediatr Adolesc Med. 2006; 160: 1040‒1046. 9)Hadders-Algra M: General movements in early infancy: what do they tell us about the nervous system? Early Hum Dev. 1993; 34: 29‒37. 10)Van Schiea PEM, Repc A, et al.: General movements in infants born from mothers with early-onset hypertensive disorders of pregnancy in relation to one year’s neurodevelopmental outcome. Early Hum Dev. 2008; 84: 605‒611. 11)Hummel P: Impacting infant head shapes. Adv Neonatal Care. 2005; 5: 329‒340. 12)Nuysink J, Eijsermans M, et al.: Clinical course of asymmetric motor performance and deformational plagiocephaly in very preterm infants. J Pediatr. 2013; 163: 658‒665. 13)Prechtl HF, Einspieler C, et al.: An early marker for neurological deficits after perinatal brain lesions. Lancet. 1997; 349: 1361‒1363. 14)Einspieler C, Prechtl HF, et al.: The qualitative assessment of general movements in preterm, term and young infants -review of the methodology. Early Hum Dev. 1997; 50: 47‒60. 15)多賀厳太郎,立花達史,他:新生児・乳幼児の自発運動 の三次元動作解析.生体・生理工学シンポジウム論文集. 2000; 15: 165‒168. 16)Watanabe H, Taga G: General to specific development of movement patterns and memory for contingency between actions and events in young infants. Infant Behav Dev. 2006; 29: 402‒422. 17)藤本泰成,内尾 優,他:RGB-D カメラを用いた超低出 生体重児の上肢運動の測定装置の開発.システム制御情報 学会研究発表講演会講演論文集.2017; 61: 114‒115. 18)Kanemaru N, Watanabe H, et al.: Specific characteristics of spontaneous movements in preterm infants at term age are associated with developmental delays at age 3 years. Dev Med Child Neurol. 2013; 55: 713‒721. 19)Brazelton TB: Neonatal behavioral assessment scale 4th ed. Hart HM(eds), Clinics in Developmental Medicine, Mac Keith Press, London, 2011, pp. 48‒52. 20)Flash T, Hogan N: The coordination of arm movements: an experimentally confirmed mathematical model. J Neurosci. 1985; 5: 1688‒1703. 21)Kitazawa S, Goto T, et al.: Quantitative evaluation of reaching movements in cats with and without cerebellar lesions using normalized integral of jerk. In: Mano N, et al. (eds) Role of the Cerebellum and Basal Ganglia in Voluntary Movement. Elsevier, 1993, pp. 11‒19..
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(11) 修正1ヵ月における超低出生体重児と正期産児の自発運動の比較. 〈Abstract〉. Comparison of Upper Spontaneous Movements in Extremely Low-birth-weight Infants and Term Infants at 1-month Corrected Age. Yuu UCHIO, PT, MSc, Mikiko HASEGAWA, PT, MSc Department of Rehabilitation, Tokyo Women’s Medical University Yuu UCHIO, PT, MSc, Osamu NITTA, PT, PhD Department of Physical Therapy, Graduate School of Human Health Sciences, Tokyo Metropolitan University Tetsuo IKAI, MD, PhD Department of Rehabilitation Medicine, Tokyo Women’s Medical University Atsushi UCHIYAMA, MD, PhD, Satoshi KUSUDA, MD, PhD Department of Neonatal Medicine, Maternal and Perinatal Center, Tokyo Women’s Medical University Yasunari FUJIMOTO, PhD Faculty of System Design, Tokyo Metropolitan University. Purpose: In general, the development of infants is promoted through their own early spontaneous movements. However, the characteristics of spontaneous movements and effects of interventions in extremely low-birth weight (ELBW) infants are unclear. The purpose of this study was to reveal the characteristics of spontaneous movements and the effects of the use of an infant pillow in ELBW infants at 1-month corrected age. Methods: We evaluated spontaneous movements with and without the pillow in 8 ELBW infants and 8 term infants. The mean gestational age and birth weight of the ELBW infants were 24.6 weeks and 729 g, respectively. The ELBW infants were evaluated in Tokyo Women’s Medical University Hospital at 1-month corrected age. The term infants were evaluated at their home at 1 month after birth. Spontaneous movements were analyzed using the Microsoft Kinect depth sensor. The recorded spontaneous movements were quantified using 4 movement indexes (velocity, laterality index, jerk index, and kurtosis of acceleration). The results were calculated from three-dimensional trajectories of the arms. Results: Velocity, jerk index, and kurtosis of acceleration showed no significant differences between the groups with and without the pillow. The laterality index was higher in the ELBW infants than in the term infants without a pillow, but no significant difference was found between the groups with a pillow. Conclusion: Our results suggest that spontaneous movements of ELBW infants are more asymmetrical than those of term infants. Use of an infant pillow can improve the asymmetrical movements of ELBW infants. Key Words: Extremely low-birth weight infants, Spontaneous movements, Infant pillow, 3D motion analysis, Kinect. 357.
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