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資料 9 不動産分野における 地域社会 経済への貢献に関する 情報開示の事例集 令和 3 年 3 月 国土交通省 不動産 建設経済局不動産市場整備課

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不動産分野における

地域社会・経済への貢献に関する

情報開示の事例集

令和

3 年 3 月

国土交通省

不動産・建設経済局不動産市場整備課

資料 9

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目次

はじめに ... 1 第1 章 不動産分野におけるESG 投資の高まり ... 2 第2 章 不動産分野における地域社会・経済への貢献の重要性 ... 3 2.1 不動産分野における社会(S)への対応の重要性 ... 3 2.2 不動産分野特有の提供価値としての地域社会・経済への貢献... 4 第3 章 本事例集の位置づけ ... 6 第4 章 地域社会・経済への貢献に関する開示事例 ... 10 4.1 地域社会・経済への貢献に係る開示事例の検討概要 ... 10 4.1.1 開示事例の調査と分類 ... 10 4.2 地域社会・経済への貢献に関する開示事例の解説 ... 14 第5 章 コロナ禍における対応に関する開示事例 ... 37 第6 章 地域社会・経済への貢献に関する情報開示のポイント ... 41

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はじめに

我が国の不動産分野におけるESG 投資や SDGs 対する理解・認識は、現段階で一様では ない。先進的な企業においては、気候変動への対応を含むESG 投資に係る情報開示等が進 められつつあるものの、業界全体では途上の段階であり、さらなる対応が求められる。 特に、TCFD への対応の進展に見られるように、環境(E)は世界全体の重要課題として 認識されており、環境課題への影響の評価手法等について概ね整理され、広く理念の共有、 実践が既に進められている。 一方で、社会(S)は、国や地域ごとの課題の隔たりもあり、課題としての理解・認識に 差が生じており、社会的課題への影響の評価手法等についても十分に整理がされていない。 しかしながら、不動産は地域の特性とは不可分のものであり、不動産の特性を生かした当該 地域の社会的課題解決への貢献が期待されている。 今後、我が国の不動産市場をさらに活性化させていくとともに、それを我が国経済および 各地域の持続可能性に繋げていくためには、ESG 投資の概念、特に社会的課題の解決にお いて、不動産投資・開発・運用がどのように関連し、どのように貢献しうるのかの整理が必 要である。これにより国内外のESG 志向が高い不動産投資家による ESG 投資を呼び込み、 さらにこの投資が社会的に有意義なインパクトを与え、中長期的に安定したリターンを得 ることに繋がるとともに、持続可能な社会の実現に貢献するものと考える。 本報告書は、不動産分野が地域社会・経済へいかに貢献しうるかについて整理を試みたも のであるが、この課題はかなり広範な分野に関わることから、まずは海外における先進的な 社会的課題に応じた不動産の情報開示事例を整理し、今後、我が国の実情や地域固有の課題 に応じた、いわゆる社会的課題の解決に貢献しうる不動産へのESG 投資を促進する上での 検討の参考となるようとりまとめたものである。 本報告書を端緒としつつ、今後、さらに活発な議論が行われることが期待される。

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1章 不動産分野における ESG 投資の高まり

近年、投資の意思決定に環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance) の観点を組み込むESG 投資が活発化している。ESG 投資は、2006 年に策定された責任投 資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)の提唱を機に普及した概念である。 PRI は国連環境計画金融イニシアティブ(UNEPFI:the United Nations Environment Programme Finance Initiative)と国連グローバル・コンパクト(UNGC:The United Nations Global Compact)により提唱され、機関投資家に対し、投資分析と意思決定プロセ スにESG を可能な限り組み込むことを求めたが、公表当初の署名数は 63 機関にとどまり、 その影響力は限定的であった。しかしその後、2008 年のリーマンショックを契機として、 資本市場での短期的な利益追求に対する批判が高まり、不動産投資市場においても利益追 求のあり方が見直された。PRI の署名数は 2021 年 3 月時点で 3,821 の投資家と1、急速な 拡大を見せている 図表 1 PRI 署名機関数・合計資産残高の推移 (出所)PRI ホームページより作成 さらに 2015 年には、ESG が急速に普及する契機となる複数の大きな動きが見られた。 世界では、9 月に国連が SDGs を提唱、12 月にはパリで第 21 回気候変動枠組条約締約国会 議(COP21・いわゆる「パリ協定」)が採択された。国内に目を向けると、3 月に金融庁・ 東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を策定、さらには、9 月の年金積立 1 PRI ホームページ(https://www.unpri.org/signatories/signatory-resources/signatory-directory) 0 250 500 750 1000 1250 1500 1750 2000 2250 2500 2750 3000 3250 0 20 40 60 80 100 120 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 合計資産残高(兆米ドル) 署名機関数 合計資産残高 (兆米ドル) 署名機関数

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金管理運用独立行政法人(GPIF)による PRI 署名は、その投資額の大きさが強い影響力と なり、その後運用会社が次々とPRI に署名し、ESG の取組意識を高めるのに貢献した。

不動産業界におけるESG 投資の広がりの背景には、PRI を不動産投資に適用する考え方 として国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)不動産ワーキンググループが 2007 年に公表した「責任不動産投資(RPI:Responsible Property Investment)」がひとつの契 機となったと考えられる。不動産ビジネスにおいて気候変動、資源枯渇、都市化の進行等は、 不動産の長期的な投資パフォーマンスを左右しかねない重大なリスクファクターとなる。 RPI では、「不動産投資家は不動産の取得、管理、売却の意思決定に際してサステナビリテ ィを考慮に入れることにより、将来収益に関するリスクを最小化すべきである」と説いてお り、ESG への積極的な取組を促している。具体的に RPI が掲げた責任不動産投資戦略 10 カ条をみると、省エネルギーや環境保護などのESG の環境(E)に関するテーマをはじめ、 労働者福祉や地域市民としての活動などの社会(S)に関するテーマも取りいれていること が確認できる。 我が国において2,600 兆円を超えるとされる不動産は2、国民生活や経済成長の重要な基 盤であり、環境(E)や社会(S)に関する課題解決への貢献可能性が大きい。そのため、 ESG 投資や SDGs の考え方を踏まえた不動産の開発・運用・投資は重要であり、我が国の 社会・経済への影響は極めて大きいと考えられる。

2章 不動産分野における地域社会・経済への貢献の重要性

2.1 不動産分野における社会(S)への対応の重要性 ESG 投資を行う上で、社会(S)への対応は、環境(E)と同様に重要な要素である。例 えば、ビジネスと人権に関する指導原則の決議(国際連合・2011 年)や、現代奴隷法(英 国・2015 年)を受け、サプライチェーンにおける人権問題への対応は社会の関心事となっ た。持続可能な地域社会の形成など、これまで議論されてきた要素に加え、2020 年に発生 した新型コロナウイルス感染症拡大を契機として、従業員の安全や健康にも関心が高まっ た3 UNEP FI の不動産ワーキンググループが策定した RPI では、責任ある不動産投資戦略の 10 箇条の重要要素として、5 つの社会(S)(「歩行に適した都市整備(ウォーカビリティ 等)」、「都市再生と不動産の利用変化への柔軟性」、「労働者福祉」、「社会的公正性とコミュ ニティ開発」、「地域市民としての活動」)を取り上げている。同ワーキンググループがSDGs 2 2018 年度国民経済計算(2011 年基準・2008SNA)ストック編 Ⅲ.付表 1.国民資産・負債残高 (https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h30/tables/30ss1_jp.xlsxhttps://www.esri.cao. go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h30/tables/30ss1_jp.xlsx)より作成 3 例えば、世界経済フォーラムの 2020 年 10 月 16 日の記事( https://www.weforum.org/agenda/2020/10/covid-19-litmus-test-sustainability/

https://www.weforum.org/agenda/2020/10/covid-19-litmus-test-sustainability/)では、BNP Paribas Asset Management の調査結果(BNP Paribas Asset Management survey shows Covid-19 prompts rise in social considerations within investment decision-making)等を参照しつつ、新型コ ロナウイルス感染症の拡大後、投資家は直近の課題としての社会(S)の重要性を認識する傾向か拡大している、と指 摘している。

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4 達成への寄与を意図して発表したポジティブインパクト不動産投資フレームワーク4におい ても、不動産がインパクトを与えるカテゴリーとして、「健康と衛生」、「雇用」、「包摂的で 健全な経済」等の社会(S)に関する要素を取り上げている。 また、国土交通省が2019 年に開催した「ESG 不動産投資のあり方検討会」では、不動産 投資におけるESG や SDGs のあり方及び取り組み推進のための検討が実施された。同年 7 月に公表された当該検討会の中間とりまとめでは、不動産業界に求められる社会(S)への 対応として、「地域社会・経済への寄与」、「健康性・快適性の向上」、「災害への対応」、「超 少子高齢化への対応」の4 つが挙げられ、社会(S)への取り組みの重要性が提起された5 2.2 不動産分野特有の提供価値としての地域社会・経済への貢献 不動産分野における社会的課題には「企業等、組織としての社会的課題」と「不動産その ものの特性としての社会的課題」があると考えられる。前者の「企業等、組織としての社会 的課題」は、組織が経済活動を進める上での対応が求められる課題である。これは不動産業 に限らず、全業種共通の課題といえることから、すでに主要な課題は整理され、かつ、情報 開示の枠組みが整備されつつある(図表 2 参照)。一方で、後者の「不動産そのものの特性 としての社会的課題」は、十分に整理されておらず、さらに情報開示の枠組みについても手 つかずの領域が広く残されている。 不動産に関する領域については、地域社会との強い関わり合いを持ち、地域社会のあり方 等に大きな影響を与えるという不動産固有の特徴を踏まえ、レジリエンス(環境の変化や突 然の危機に対する強靭性や回復力)の向上、持続可能で、衡平な社会の構築観点からの社会 的課題の整理が求められている。 図 3 は、新型コロナウイルス感染拡大をはじめ、めまぐるしく変化する社会環境におい て、我が国がレジリエントかつ持続可能な社会の構築のために、企業・ファンド等の活動や 個別不動産を通じて達成すべき目的について整理し、さらに達成すべき目的の実現のため に、講じるべき手段を整理したものである。

4 UNEP FI「Positive Impact Real Estate Investment Framework」

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5 図表 2 不動産業界における社会(S)の課題6 分類 課題 課題の概要 不動産業界で求められる対応(例) 情報開示/KPI の内容(例) 個別不動 産として の対応 レジリエントかつ持 続可能な社会づくり への貢献 不動産を通じて、レジリエントで 持続可能な地域社会づくりへ貢献 する。 不動産を通じた地域社会への貢献(地域社会・経 済への寄与、健康性・快適性・安全性の向上、災 害対応、少子高齢化対応) (情報開示や KPI に関する枠組みが未整備) 企業・フ ァンドと しての対 応 人権 サプライヤーも含めた労働者の人 権尊重、児童労働/強制労働の回 避、先住民族への権利尊重の取り 組み。 サプライチェーンにおける人権問題の管理(コン クリート型枠の違法材や、開発現場での外国人労 働者の労働問題の対応等) 不動産開発における先住民族への権利尊重 従業員や関係者に対する人権方針や手続の啓蒙・ 周知・研修 人権に関するコミットメント方針 バリューチェーンにおける人権デュー デリジェンス・プロセスに基づく評価 結果や取組状況 労働慣行 自社従業員におけるダイバーシテ ィへの配慮や結社の自由の確保。 女性活躍推進 ジェンダー、年齢、国籍、障害者等のマイノリテ ィが働きやすい環境整備 働き方改革に対する取組み 従業員、役員、管理職のダイバーシテ ィ比率 フレキシブルな働き方導入比率 育児休暇取得状況 人材開発 自社従業員の定着や能力開発に係 る施策や取り組み。 従業員のモチベーション維持のための業績評価制 度(例:360 度評価)や、長期インセンティブ (例:自社株購入制度)の導入 従業員の能力開発プログラムの構築及び研修の実 施や機会の提供 従業員の離職率 従業員満足度調査の結果 従業員一人あたりの年間平均研修時間 能力開発プログラムの内容 労働安全衛生 サプライヤーも含めた労働者の安 全・健康の確保。 不動産開発現場における労働者の健康リスクの管 理、労働災害の回避(サプライヤー含む) 自社従業員への労働安全衛生に関する研修や監査 の実施 従業員の健康リスクの管理・監督方法 従業員の欠勤率 労働災害の件数 ステークホルダー エンゲージメント エンゲージメントを通じたステー クホルダーからの信頼の獲得や、 評判リスクの最小化。 投資家、従業員、顧客/テナント、サプライヤー、 コミュニティ等、重要なステークホルダーに対す るエンゲージメントの実施 ステークホルダー・エンゲージメント の方針/手順/結果(従業員は(「人材 開発」、サプライヤーは「人権」、 「労働安全衛生」も対象) CSR・社会貢献活動 各種 CSR 活動と社会貢献活動。 各種 CSR 活動、社会貢献活動の実施(低所得者に 配慮した価格低減施策や低賃料の提案等) CSR 活動/社会貢献活動の戦略と KPI 従業員ボランティア従事時間数 慈善団体等への寄付金額 社会側面に関する情 報開示 社会側面に関する情報開示とモニ タリング。 社会側面に関する情報開示とモニタリングの実施 社会側面に関する各種 KPI 社会側面の法令順守の状況 ※人権デューデリジェンス:企業が人権侵害に関するリスクを事前に特定し、その防止・対処に向けた取り組みを行うこと。 ※ステークホルダー・エンゲージメント:事業者がステークホルダーのことを理解し、ステークホルダーとその関心事を、事業活動と意思決定プロセスに組み込む こと。 6 課題分類は、各種 ESG 評価機関や ESG 情報開示フレームワークにおける社会分野に関する評価基準及び開示項目に基づき整理。

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6 図表 3 我が国において期待される、不動産による社会(S)へのインパクト

3章 本事例集の位置づけ

本事例集では、不動産そのものの特性と特に深い関係にあると考えられる「地域社会・経 済への寄与」、「健康性・快適性」、「安全性の向上」、「災害への対応」、「超少子高齢化への対 応」の観点から整理している7。特に、地域に根ざし、「不動」である不動産の特性と深い関 わりのある「地域社会・経済への寄与」の観点を基盤とした上で「健康性・快適性」、「安全 性の向上」、「災害への対応」、「超少子高齢化への対応」の具体例を抽出しており、以下、「不 動産を通じた地域社会・経済への貢献」を指すとの考えのもと、地域社会・経済への寄与と も合わせて、総称して「地域社会・経済への貢献」と述べる。 本事例集は、我が国の不動産業界が、地域社会・経済に貢献し、レジリエントかつ持続可 能な社会づくりに資する取り組み内容の検討・開示に活用可能な参考情報を整理するため に、海外の不動産企業における「地域社会・経済の貢献」に関する開示事例と、それらを踏 まえた開示のポイントを解説するものである。なお、不動産を通じた「地域社会・経済の貢 献」の具体的な内容については、海外不動産企業が開示する取り組みをもとに、次章で整理・ 説明する。 7 これらの 4 つの社会的課題は、前述の通り、2019 年に開催した「ESG 不動産投資のあり方検討会」において、不動 産業界に求められる社会(S)の課題として示されている。 個 別 不 動 産 企 業 ・ フ ァ ン ド コロナ禍 基盤としての持続可能な企業・ファンド レジリエントかつ持続可能な 社会を支える不動産 取り巻く環境の変化 不動産と社会分野へのインパクトの関係(イメージ) 【経済効果の創出】 経済効果 地域における雇用創出 イノベーション創出空間の提供 【移動環境の整備】 主要交通機関へのアクセス性向上 ウォーカビリティ向上 【不動産利用者の健康性・快適性の向上】 健康性・快適性に配慮した不動産設計 地域住民への健康性・快適性の向上 来訪者への健康性・快適性の向上 働きやすい環境づくりを通じた生産性向上 【防災を含めた安全・安心な空間の提供】 自然災害に強い不動産の提供 非常時や災害時の防災拠点・避難所機 能の提供 不動産整備を通じた犯罪の抑制や治安対策 【利用者間の交流活性化】 コミュニティスペース設置やイベント開催に よる地域住民の交流活性化 企業間のコラボレーション誘発 不動産業界に限らない論点 人権対応 労働慣行(ダイバーシティ対応等) 情報開示 人材開発 労働安全衛生 ・・・ レジリエントかつ 持続可能な社会 地域社会・経済への寄与 災害への対応 健康性・快適性・安全性の向上 超少子高齢化への対応 目的 手段 ※コロナ禍以外は国土交通省 「不動産ビジョン2030」より抜粋 少子高齢化・人口減少 の進展 空き家・空き地等の遊 休不動産の増加・既存 ストックの老朽化 新技術の活用・浸透 働き方改革の進展 グローバル化の進展 インフラ整備の進展によ る国土構造の変化 地球環境問題の制約 健康志向の高まり 自然災害の脅威

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7 【コラム】不動産業界における人権問題について

ビジネスと人権に関する指導原則の決議(国際連合・2011 年)や現代奴隷法の制定(英 国・2015 年)を受け、社会(S)の課題の中でも、サプライチェーンにおける企業内の人権 問題への対応に関心が高まっている。我が国では、経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)が作成した人権デューデリジェンスのガイ ダンス日本語版が作成されるとともに82020 年に「ビジネスと人権」に関する行動計画が 策定されるなどの動きがあり9、国内における人権問題への関心は高い。 不動産業界においても、業界特有の人権問題が指摘されている。例えば、東京オリンピッ クの競技場建設工事で、コンクリート型枠に違法伐採・人権問題の疑いのある熱帯材の使用 を環境NGO が問題視したことを皮切りに10、コンクリート型枠における違法材への対応に 注目が集まっている。また、東日本大震災の復興事業や東京オリンピック・パラリンピック による建設事業の増大に伴い、建設業での外国人材活用が進む中、一部で人権侵害を伴う違 法な労働管理が指摘されている11。このような人権問題を受け、2018 年には、建設・不動 産の国内大手企業8 社による「人権デューデリジェンス勉強会」が発足するなど、対応が進 められている。 人権問題への社会の関心の高まりを受け、企業は、人権方針を策定及び開示し、各種国際 原則に基づく人権対応を進めるとともに、サプライチェーンを含めた人権に関するデュー デリジェンスを行い、評価結果と対応方針の開示が求められている。既に、海外の不動産企 業では、具体的な対応の開示が始まっている。 <(参考)Landsec 社の人権に関する情報開示> Landsec 社は、人権方針を策定および開示し、各種国際原則に基づき人権問題への対応を 宣言するとともに、現代奴隷法に関する声明の中で、人権デューデリジェンスに関する評価 8 OECD「責任ある企業行動のための OECD デュー・ディリジェンス・ガイダンス」 ( https://mneguidelines.oecd.org/OECD-Due-Diligence-Guidance-for-RBC-Japanese.pdf https://mneguidelines.oecd.org/OECD-Due-Diligence-Guidance-for-RBC-Japanese.pdf) 9 ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議「「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020ー 2025)」 (https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100104121.pdfhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100104121.pd f) 10 2017 年 9 月 11 日、47 の環境 NGO が、IOC と 2020 年東京大会当局に対して公開書簡を送付し、東京の新国立競 技場の建設に熱帯林破壊、人権侵害につながる疑いのある合板の使用があると問題提起した。(出所:FoE Japan プレ スリリース「47 の NGO、オリンピック 2020 年東京大会のための熱帯雨林破壊と人権侵害をやめるよう要請」(2017 年9 月 11 日) 11 厚生労働省の資料によれば、2019 年の全国の労働基準監督機関における技能実習実施者に対する監督指導につい て、建設業では、1,317 件の監督指導のうち 79.6%にあたる 1,048 件で違反が確認された。主な違反事項は「賃金台 帳」、「割増賃金」、「賃金の支払い」であった。(出所:厚生労働省 報道発表資料「外国人技能実習生の実習実施者に対 する平成31 年・令和元年の監督指導、送検等の状況を公表します」(2020 年 10 月 9 日))

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8 結果と今後の取り組み方針を記載している。

図表 4 人権方針

(出所)Landsec 社「Human Rights Policy」(日本語部分は国土交通省加筆)

人権は、国連の「世界人権宣言」で基本的権利が示 されている。ビジネスにおける人権の責任は、同 「ビジネスと人権に関する指導原則」で提示されて いる。 Landsec は、自身のあらゆるビジネス活動及びパー トナーシップにおいて、社会・環境への影響と人権 問題への対応を進める。 我々は、「世界人権宣言」及び「労働における基本 的原則および権利に関するILO 宣言」の内容を含 め、人権の尊重の責任を認識している。 上記宣言に基づき、人権に関する 8 つのコア原則を 規定する。これは自社の従業員の活動のみならず、 サプライヤーや請負業者における活動も含む。 8 つのコア原則の内容(差別の禁止、賃金・ 労働条件の平等、強制労働や児童労働の禁止等) 我々のコミットメントは自社従業員及び Landsec の名の下で働く従業員全てに適用される。 我々の目標は、自社のみならず、サプライチェーン 全て人権への認識を高めることである。このため、 我々の直接のサプライヤーもこの方針を遵守するこ とを期待する。

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図表 5 人権デューデリジェンスの結果

(出所)Landsec 社「Modern Slavery Statement 2020」(日本語部分は国土交通省加筆)

デューデリジェンス 2020 年、UK 内のサプライチェーン(建設労働者含む)のデューデリ ジェンスを実施。合計3 か所、計 91 名について調査。 今回の調査では顕著な問題は確認されなかったが、調査は継続。今後 はスコープを拡大し、海外のサプライヤーも対象とする想定。 2020 年の調査結果の概要は下記の通り。 61%が UK 内で勤労する権利証明を提出するよう依頼されたと回答。 89%が生活賃金(Real Living Wage)以上の給与支払いを受けている と回答。 差別に苦しんでいるとの回答者はゼロ。ただし、1 名が言葉の暴力の 被害を受けたと回答。 97%が厚生施設に、98%が安全措置に満足していると回答。 リスク評価 2017 年にビジネス活動上の人権 リスクを評価。 自社従業員に関する人権リスク は低いと評価したものの、下記 2 点の重要リスクを特定。 清掃・安全・建設サービスに おける労働による債務返済や 労働搾取 海外における建築資材の採取 や製造時の労働搾取

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4章 地域社会・経済への貢献に関する開示事例

4.1 地域社会・経済への貢献に係る開示事例の検討概要 4.1.1 開示事例の調査と分類 個別不動産に関連する開示について海外事例12を調査したところ、図表 6 の具体的内容 の列に記載する事項が確認された。これら事項をUNEP FI の不動産に関する枠組み13にお ける「地域・社会経済への貢献」の該当項目を参考に、図表 6 の貢献分野に記載した 5 つ に分類した。 図表 6 個別不動産による地域社会・経済へ貢献14 貢献分野 具体的内容 経済効果の創出 経済効果 地域における雇用創出 イノベーション創出空間の提供(例:不動産を活用した新技術 のトライアル機会の提供) 移動環境の整備 主要交通機関へのアクセス性向上 ウォーカビリティ向上(例:歩行空間の整備) 不動産利用者の 健康性・快適性 の向上 健康性・快適性に配慮した不動産設計 地域住民への健康性・快適性の向上 来訪者への健康性・快適性の向上(例:高齢者・子育て家族が 利用しやすい空間設計) 働きやすい環境づくりを通じた生産性向上(例:多様な人材や 働き方をサポートする環境整備) 防災を含めた安 全・安心な空間 の提供 自然災害に強い不動産の提供 非常時や災害時の防災拠点・避難所機能の提供 不動産整備を通じた犯罪の抑制や治安対策 利用者間の交流 活性化 コミュニティスペース設置やイベント開催による地域住民の交 流活性化 企業間のコラボレーション誘発 上記の地域社会・経済へ貢献の具体的内容について、海外不動産企業の情報開示では、「経 済効果」、「地域における雇用創出」、「主要交通機関へのアクセス性向上」、「健康性・快適性 に配慮した不動産設計」において総付加価値や雇用の創出者数等を用いて定量的に開示す る事例が見られるが、その他の内容については、関連する取り組みをケーススタディとする 定性的な開示が中心となっている。

12 S&P Global ESG 評価の上位かつ GRESB 参加の企業を ESG 評価における優良企業と推定し、26 社を抽出した上 で当該企業のうち、不動産による地域社会・経済への貢献(雇用創出、経済付加価値額の増加、ウォーカビリティ向上 等)について定量的に開示している例や、コロナ禍を踏まえた具体的な取り組みを開示している20 社を選定して調査 した。 13 具体的には、UNEP FI のポジティブインパクト不動産投資フレームワーク、責任不動産投資において、不動産特 有の地域社会・経済への貢献に該当する項目を参照した。 14 貢献分野及び各分野の具体的内容は、UNEP FI の不動産に関する枠組み(ポジティブインパクト不動産投資フレ ームワーク、責任不動産投資)における地域・社会経済への貢献に該当する項目や、海外不動産企業の開示事例に基づ き整理。

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12 図表 7 地域社会・経済へ貢献に関する海外不動産企業の開示アプローチ 大項目 小項目 海外企業の主な開示アプローチ 開示例 経済効果 の創出 経済効果 定量:不動産開発に伴う総付加価値 (GVA)等を算定し、定量的に開示。 ・不動産事業による追加的な総付加価値(GVA)を開示【Dexus】 地域における雇用創出 定量:不動産開発や運営に伴う雇用の創出人 数を開示。 ・自社事業の雇用創出効果を算定して開示【Covivo】 イノベーション創出空間の 提供 定性:該当する取り組みが実施されている不 動産をケーススタディとして開示。 ・テック系企業と提携して、既存・新規開発物件において新技術のパ イロットを実施【Swire Properties】 移動環境 の整備 主要交通機関へのアクセス 性向上 定量:交通機関のアクセス性が高い物件の数 や割合を開示。 ・自社の開発エリアで交通機関へのアクセスが徒歩500 メートル圏内 の比率を開示【Swire Properties】 ・2025 年までに自社運営物件の 95%以上を主要公共交通機関から徒歩 10 分圏内にする目標を設定【Covivo】 ウォーカビリティ向上(歩 行空間の整備等) 定量・定性:ウォーカビリティに配慮した不 動産をケーススタディとして開示。一部はウ ォーカビリティスコア等の定量値を用いた開 示も実施。 ・Walk Score を用いて不動産のウォーカビリティを定量的に開示 【Kilroy Realty】 ・自社の複合開発プロジェクトをウォーカブルな都市空間の創出とし て紹介【Lendlease】 不動産利 用者の健 康性・快 適性の向 上 健康性・快適性に配慮した 不動産設計 定量・定性:WELL 認証を取得した物件数や 面積を定量的に開示する例があるほか、健康 性・快適性に配慮した不動産開発をケースス タディとして開示する例も存在。 ・WELL 認証取得・申請数の開示【Hines】 ・不動産の健康及びサステナビリティに配慮した不動産設計の紹介 【Kilroy Realty Corporation】

地域住民への健康性・快適 性の向上 定性:該当する取り組みが実施されている不 動産をケーススタディとして開示。 ・自社開発エリアにおける、農薬使用やアレルゲンを抑制する植物の 設置や鳥のさえずりによる癒し効果を狙った生物多様性の取り組み 【Landlease】 ・バリアフリー・ユニバーサルデザインの取組状況について開示【City Developments Limited】 来訪者への健康性・快適性 の向上 ・商業施設に障がい者対応設備、多宗教ルーム、キッズスペースを設 置【Hammerson】 働きやすい環境づくりを通 じた生産性向上 ・自社が開発したオフィスにおける保育所の設置や屋上テラス及び庭 園の設置の取り組み【Dexus】 防災を含 めた安 全・安心 な空間の 提供 自然災害に強い不動産の提 供 定性:該当する取り組みが実施されている不 動産をケーススタディとして開示。

・自然災害を想定した自社開発物件の補強【Boston Properties, Inc.】 ・気候変動により影響を受ける物件に対する適応と予防策の開示 【Covivio】 非常時や災害時の防災拠 点・避難所機能の提供 ・ドメスティックバイオレンスから逃れた女性向けの宿泊施設提供 【Mirvac Group】 ・自治体と連携した避難訓練の実施【CapitaLand】

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13 大項目 小項目 海外企業の主な開示アプローチ 開示例 不動産整備を通じた犯罪の 抑制や治安対策 定性:該当する取り組みが実施されている不 動産をケーススタディとして開示。 ・商業施設における地域交通機関や警察との合同でのテロ対策訓練の 実施【Hammerson】 ・不動産開発を通じた犯罪抑制【Mirvac Group】 利用者間 の交流活 性化 コミュニティスペース設置 やイベント開催による地域 住民の交流活性化 定性:該当する取り組みが実施されている不 動産をケーススタディとして開示。 ・商業施設、オフィス、統合型施設における地域交流活性化を促すア トリウムスペースや子供の遊び場の提供【CapitaLand】 ・地域住民の憩いの場やイベントの開催を想定したスペースの創造 【Kimco Realty Corp】

企業間のコラボレーション 誘発

・テナント企業従業員を対象としたネットワークイベントの開催 【Swire Properties】

・スタートアップや社会的企業のための無料のコワーキングスペース の設置【City Developments Limited】

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14 4.2 地域社会・経済への貢献に関する開示事例の解説 以下は、図表 6 で示した個別不動産による「地域社会・経済へ貢献」に基づく海外不動 産企業の情報開示の参考事例である。 4.2.1 経済効果の創出 経済効果 <Dexus> Dexus 社は、自社の価値創造に資する資源として 5 つの要素を特定。このうち「不動産」 がもたらす価値として、地域における経済効果や雇用の創出効果を定量的に開示。 図表 8 5 つの価値創造要因

(出所)Dexus 社「2020 Annual Report」15(日本語部分は国土交通省加筆)

15 https://www.dexus.com/investor-centre/results-and-reporting/financial-results/2020/august/2020-annual-財務 不動産 環境 人的資源 顧客・ コミュニティ 不動産企業のため、自社資産は価値創造の中心。このため、所有 物件の潜在性の強化のための積極的な管理、更なる質の向上と活 用性の向上のための物件開発にとりくむ。 自社の価値創造要因として5 つの要素を特定し、 各要素が価値創造につながる要因を説明。

(18)

15

図表 9 経済効果や雇用の創出効果の開示

(出所)Dexus 社「2020 Annual Report」16(日本語部分は国土交通省加筆)

report https://www.dexus.com/investor-centre/results-and-reporting/financial-results/2020/august/2020-annual-report 16 https://www.dexus.com/investor-centre/results-and-reporting/financial-results/2020/august/2020-annual-report https://www.dexus.com/investor-centre/results-and-reporting/financial-results/2020/august/2020-annual-report

(19)

16 地域における雇用創出

<Covivo>

Covivo 社は、Utopies 社が提供する Local Footprint メソッドをもとに、自社の事業活 動により支えられている雇用を算定し、直接インパクト(自社の雇用)、間接インパクト(サ プライチェーンによる雇用)、誘発インパクト(自社事業により喚起される消費や税収によ り支えられる雇用)の三段階で開示。

(20)

17

図表 8 地域における雇用創出の開示

(出所)Covivo 社「2019 Annual Report on Sustainable Performance」17(日本語部分は国土交通省加筆)

17 https://www.covivio.eu/en/wp-content/uploads/sites/3/2020/06/2019-annual-report-on-sustainable-performance.pdf https://www.covivio.eu/en/wp-content/uploads/sites/3/2020/06/2019-annual-直接インパクト 間接インパクト 誘発インパクト 誘発インパクト: 自社及びサプライ ヤー等の従業員へ 支払っている給料 によって生活必需 品を消費すること で間接的に該当産 業の計 3,200 人の 雇用を支援 直接インパクト: フランス、ドイ ツ、イタリアにお いて 922 人の従業 員の雇用 間接インパクト: サプライヤー等へ の支払総額 5 億 2,000 万ユーロ、 これにより間接的 に計 7,100 人の雇 用を支援

(21)

18 イノベーション創出空間の提供 <Swire Properties> Swire Properties 社は、自社の既存・新規開発物件において、テック系企業と提携してア クセラレータプログラムを設立し、センサーや AR 等の新技術の実証実験をパイロットで 実施し、その取組を定性的に紹介している。本プログラムにより自社のみならず不動産業界 全体にとって有望な新技術を発見・開発し、将来的な経済効果への波及を期待していると言 及。 図表 9 不動産新技術のアクセラレータプログラムに関する開示

(出所)Swire Properties 社「2019 Sustainable Development Report」18

(日本語部分は国土交通省加筆) report-on-sustainable-performance.pdf 18 https://sd.swireproperties.com/2019/pdf/en/SwirePropertiesSustainableDevelopmentReport2019_EN.pdfhttps://s d.swireproperties.com/2019/pdf/en/SwirePropertiesSustainableDevelopmentReport201 9_EN.pdf 不動産新技術のアクセラレータ プログラムについて紹介 中国の 300 を超えるスタートアップから 12 社の最終候補者を選定。同 12 社は空調 センサー、警備ロボット、AR による不動 産販売等の提案につき、実証実験の機会が 与えられる。

(22)

19 4.2.2 移動環境の整備 主要交通機関へのアクセス性向上 <Swire Properties> Swire Properties 社は、自社の主要な開発 4 エリアにおける公共交通機関へのアクセス 性について、交通機関から徒歩500 メートル圏内の比率を用いて定量的に開示。 図表 10 交通機関へのアクセス性の開示

(出所)Swire Properties 社「2020 Places Impact Report」19

(日本語部分は国土交通省加筆) 19 https://www.swireproperties.com/-/media/files/swireproperties/publications/2020-places-impact-report.ashx https://www.swireproperties.com/-/media/files/swireproperties/publications/2020-places-impact-report.ashx 公共交通機関へのアクセス性 (交通機関から 500m 圏内の比率)

(23)

20 <Covivo> Covivo 社は、2025 年までに自社運営物件の 95%以上を主要公共交通機関から徒歩 10 分 圏内にする目標を設定するとともに、不動産の公共交通機関へのアクセス性を定量的に開 示。 図表 11 主要交通機関へのアクセス性向上の開示

(出所)Covivio 社「2019 Annual Report on Sustainable Performance」20

(日本語部分は国土交通省加筆) 20 https://www.covivio.eu/en/wp-content/uploads/sites/3/2020/06/2019-annual-report-on-sustainable-performance.pdf https://www.covivio.eu/en/wp-content/uploads/sites/3/2020/06/2019-annual-report-on-sustainable-performance.pdf 2025 年まで に自社運営 物件の 95% 以上を主要 公共交通機 関から徒歩 10 分圏内に する目標を 設定 不動産の公共交通機関へのアクセス性

(24)

21 ウォーカビリティ向上(歩行空間の整備等) <Kilroy Realty>

Kilroy Realty 社は、自社が開発した不動産のウォーカビリティを定量的に開示。指標に はWalkScore 社が提供する「Walk Score」を使用21

図表 12 ウォーカビリティに関する開示

(出所)Kilroy Realty 社「2019 Sustainability Report」22(日本語部分は国土交通省加筆)

21 Walk score は、米国 Walk score 社が提供するウォーカビリティに関する指標。当該地域について、歩行ルート や、近隣施設までの距離、人口密度、交差点の数等のデータに基づき、ウォーカビリティを0~100 点で点数化するも の。 22 https://kilroyrealty.com/sites/default/files/kilroy-realty-corporation-sustainability-report-2019.pdf https://kilroyrealty.com/sites/default/files/kilroy-realty-corporation-sustainability-report-2019.pdf 既存不動産ポートフォリオ の平均Walk Score を開示 Crossing 900 というオフィス複合施設 はWalk score において、 98 点を獲得 し、近隣に自家用車以外の交通手段や ウォーキングトレイル、小売店、レス トラン等の施設を備えた立地は、アク ティブなライフスタイルのための優れ た基盤をテナントに提供。

(25)

22 <Lendlease>

Lendlease 社は、自社が開発に従事した Darling Harbor について、シドニーで最もウォ ーカブルと言及するとともに、当該地域で生み出す経済効果を開示。

図表 13 ウォーカビリティに関する開示

(出所)Lendlease 社「Lendlease Group 2019 Annual Report」23(日本語部分は国土交通省加筆)

23 https://www.lendlease.com/-/media/llcom/investor-relations/asx-announcements/2019/lendlease-group-2019-annual-report.pdf https://www.lendlease.com/-/media/llcom/investor-relations/asx-announcements/2019/lendlease-group-2019-annual-report.pdf 自社の複合開発プロジェクトを、多数の住民、 ビジネスパーソン、学生の拠点となるウォーカ ブルな都市開発として紹介 経済効果の開示 開発によって生じた価値、建設による収入、運営・管 理時の資金等について、具体的な金額を記載し紹介

(26)

23 4.2.3 不動産利用者の健康性・快適性の向上 健康性・快適性に配慮した不動産設計 <Hines> Hines 社は、各種環境認証の取得状況と併せて、建物内で過ごす人々の心身の健康や快適 性を保証する建築物に与えられるWELL 認証について、取得済み及び申請中の不動産物件 数を開示。 図表 14 WELL 認証取得状況の開示

(出所)Hines 社「2019 Sustainability Report」24(日本語部分は国土交通省加筆)

24

http://hinessustainability.com/pdfs/Hines-2019-Sustainability-Report.pdfhttp://hinessustainability.com/pdfs/Hines-2019-Sustainability-Report.pdf

WELL 認証

(27)

24 <Kilroy Realty Corporation>

Kilroy Realty Corporation 社は、健康及びサステナビリティに配慮した不動産設計を開 示。大気環境の改善や庭園設置、採光による精神的な健康増進等、使用者の健康性・快適 性に配慮した設計について紹介。

図表 14 不動産の健康及びサステナビリティに配慮した不動産設計の紹介

(出所)Kilroy Realty Corporation 社「Sustainability Report 2019」25

(日本語部分は国土交通省加筆) 25 https://kilroyrealty.com/sites/default/files/kilroy-realty-corporation-sustainability-report-2019.pdf https://kilroyrealty.com/sites/default/files/kilroy-realty-corporation-sustainability-report-2019.pdf 室内 空気 環境 試験 汚染物質の排出が少ない材料の使 用、エアフィルターの性能 庭園設置、採光 による精神的な 健康増進やスト レス低減

(28)

25 地域住民への健康性・快適性の向上 <Lendlease> Lendlease 社は、自社開発エリアにおける、農薬使用やアレルゲンを抑制する植物の設置、 鳥のさえずりによる癒し効果を狙った生物多様性の取組について定性的に開示。 図表 15 地域住民への健康性・快適性の向上に関する開示

(出所)Lendlease 社「Annual Report 2020」26(日本語部分は国土交通省加筆)

26 https://www.lendlease.com/-/media/llcom/investor-relations/presentations/2020/ll8166-cam-lendlease-annual-report-2020-final.pdf https://www.lendlease.com/-/media/llcom/investor-relations/presentations/2020/ll8166-cam-lendlease-annual-report-2020-final.pdf 農薬使用を必要としない植物の使用や、アレルギー 物質抑制のための受粉の促進、鳥のさえずりによる 癒し効果を狙った取組の紹介

(29)

26 <City Developments Limited>

City Developments Limited 社は、不動産におけるバリアフリー・ユニバーサルデザイン の取組状況について定性的に開示。

図表 15 バリアフリー・ユニバーサルデザインの取組状況の開示

(出所)City Developments Limited 社「INTEGRATED SUSTAINABILITY REPORT 2020」27

(日本語部分は国土交通省加筆) 27 https://ir.cdl.com.sg/static-files/1666d9cc-5d77-422f-8f6c-50d6e3674d90 https://ir.cdl.com.sg/static-files/1666d9cc-5d77-422f-8f6c-50d6e3674d90 バリアフリー・ユニバーサルデザインの 取組状況の開示(高齢化を意識したデザ イン、地上から地下駐車場への歩行者用 /自転車用のスロープ設置等)

(30)

27 来訪者への健康性・快適性の向上 <Hammerson> Hammerson 社は、商業施設に障がい者対応設備、多宗教ルーム、キッズスペース設置な どの取組について開示。 図表 16 来訪者への健康性・快適性の向上の開示

(出所)Hammerson 社「Annual Report 2019」28(日本語部分は国土交通省加筆)

28 https://s3-hammerson.s3.eu-west-2.amazonaws.com/wp-content/uploads/2020/03/0857BU-2019-annual-report---final-original.pdf https://s3-hammerson.s3.eu-west-2.amazonaws.com/wp-content/uploads/2020/03/0857BU-2019-annual-report---final-original.pdf ショッピングモールに 障がい者対応設備や多 信仰礼拝室を設置する などの取組を紹介

(31)

28

図表 16 来訪者への健康性・快適性の向上の開示

(出所)Hammerson 社「Annual Report 2019」28(日本語部分は国土交通省加筆)

アウトレット施設に キッズスペースの設置

(32)

29 働きやすい環境づくりを通じた生産性向上 <Dexus> Dexus 社は、自社が開発したオフィスについて、保育所の設置や屋上テラス及び庭園の 設置を通じて、子供がいる人材へのサポートや不動産使用者の快適性の向上に貢献してい ることを開示。 図表 17 働きやすい環境づくりを通じた生産性向上の開示

(出所)Dexus 社「2020 Annual Report」29

29 https://www.dexus.com/investor-centre/results-and-reporting/financial-results/2020/august/2020-annual-report

(33)

30 4.2.4 防災を含めた安全・安心な空間の提供 自然災害に強い不動産の提供

<Boston Properties, Inc.>

Boston Properties, Inc.社では、洪水等の災害を想定し、耐水性の路盤施工や防水壁の設 置等、自社開発物件の補強の実施による自然災害へのレジリエンスの向上を開示。

図表 10 自然災害へのレジリエンス向上の取り組み

(出所)Boston Properties, Inc.社「2019 Environmental, Social & Governance Report」30

(日本語部分は国土交通省加筆)

30

https://storage.googleapis.com/bp-www/pdf/BXP_ESG_Report_2019.pdf

(34)

31 <Covivio> Covivio 社では、気候変動への適応及び予防策として、夏季における施設内の温度管理や、 川や海の氾濫による一時的・恒久的リスクを分析し、これらを設計時から考慮することで自 然災害に強い物件の建築に活用していることを開示。 図表 11 気候変動への適応及び予防策

(出所)Covivio 社「2019 ANNUAL REPORT ON SUSTAINABLE PERFORMANCE」31

(日本語部分は国土交通省加筆) 31 https://www.covivio.eu/en/wp-content/uploads/sites/3/2020/06/2019-annual-report-on-sustainable-performance.pdf https://www.covivio.eu/en/wp-content/uploads/sites/3/2020/06/2019-annual-report-on-sustainable-performance.pdf 洪水への脆弱性を土地調査により 検証しその結果を土壌の安定性を 考慮した建造物基礎に応用 事業活動に関連して配慮すべき 様々なリスクを詳細に情報開示 高温となる時期における施設の 冷却方法を設計段階から考慮 夏季も施設内で快適に過ごす ための必須事項を選定 川や海の氾濫による一時的・ 恒久的リスクを分析

(35)

32 非常時や災害時の防災拠点・避難所機能の提供 <CapitaLand> CapitaLand 社では、地元の自治体等と連携し、42 のショッピングモールでの避難訓練 の実施を開示。訓練は火災を想定し、テナント企業の従業員等35,000 人以上が参加、現地 の消防局の協力も得て実施され、関係者の防災意識向上に寄与。 図表 12 自治体と連携した避難訓練による防災機能向上

(出所)CapitaLand 社「Global Sustainability Report 2019」32(日本語部分は国土交通省加筆)

<Mirvac Group>

Mirvac Group 社では NPO 等と協働し、ドメスティックバイオレンス(DV)から逃れて きた人々のための宿泊施設を提供。避難所として機能させ、安全な環境において今後の生活 を検討する機会を提供していると紹介。

図表 13 DV 被害を受けた人々への避難機能の提供

(出所)Mirvac Group 社「Sustainability Report 2019」33

32 https://www.capitaland.com/content/dam/capitaland-sites/international/about- capitaland/sustainability/sustainability-reports/Capitaland_Integrated_Global_Sustainability_Report_2019.pdfhttps://www.capitaland.com/cont ent/dam/capitaland-sites/international/about-capitaland/sustainability/sustainability-reports/Capitaland_Integrated_Global_Sustainability_Report_2019.pdf 33 https://mirvacsustainability.azurewebsites.net/wp-content/uploads/2019/09/190902-FY18-Sustainability-中国では、CapitaLand は 130 以上の消防局、自治体及び関係機関と連携し、テナント従業員や買物客 35,600 人以 上を対象として火災を想定した避難訓練を実施。自治体からも高い評価を得た。

(36)

33 不動産整備を通じた犯罪の抑制や治安対策 <Hammerson>

Hammerson 社では、Brent Cross ショッピングセンターと地域交通機関や警察との合同 でのテロ対策訓練の実施を開示。訓練により、不測の事態に対する準備の重要性を規定した 対応措置の妥当性を評価するとともに、犯罪率の低減に寄与した旨を記載。

図表 14 テロ対策訓練による犯罪抑制

(出所)Hammerson 社「Annual Report 2019」34

<Mirvac Group>

Mirvac Group 社では、安全の観点からオープンスペースの確保、利用者同士の接点およ び交流機会を増加させる施策を講じることにより、犯罪率を低下させ、犯罪に関連して生じ る社会的コストの削減につなげたことを紹介。

図表 15 Mirvac Group 社による不動産整備を通じた犯罪抑制

(出所)Mirvac Group 社「Sustainability Report 2019」35

Report.pdf https://mirvacsustainability.azurewebsites.net/wp-content/uploads/2019/09/190902-FY18-Sustainability-Report.pdf 34 https://s3-hammerson.s3.eu-west-2.amazonaws.com/wp-content/uploads/2020/03/0857BU-2019-annual-report---final-original.pdf https://s3-hammerson.s3.eu-west-2.amazonaws.com/wp-content/uploads/2020/03/0857BU-2019-annual-report---final-original.pdf 35 https://mirvacsustainability.azurewebsites.net/wp-content/uploads/2019/09/190902-FY18-Sustainability-Report.pdf

(37)

https://mirvacsustainability.azurewebsites.net/wp-34

(38)

35 4.2.5 利用者間の交流活性化 コミュニティスペース設置やイベント開催による地域住民の交流活性化 <CapitaLand> CapitaLand 社では、90%のショッピングモール、オフィスビル、統合型開発において地 域交流活性化を促すアトリウムスペースや子供の遊び場を提供し、地域住民の交流活性化 に寄与していることを開示。 図表 16 地域住民の交流活性化事例

(出所)CapitaLand 社「Global Sustainability Report 2019」36(日本語部分は国土交通省加筆)

<Kimco Realty Corp>

Kimco Realty Corp 社では、地域住民の憩いの場やイベントの開催を想定したスペース の創造「Placemaking」により、人々の交流活性化に寄与していることを開示。 図表 17 地域住民交流スペース(Placemaking)の取り組み 36 https://www.capitaland.com/content/dam/capitaland-sites/international/about-capitaland/sustainability/sustainability-reports/Capitaland_Integrated_Global_Sustainability_Report_2019.pdf コミュニティエンゲージメントの促進を目的として、ショッピングモール、オフィスビル、複合施設の90%以上 にアトリウムイベントスペースや子供たちが遊べる場所を設置。

(39)

36

(出所)Kimco Realty Corp 社「2019 CORPORATE RESPONSIBILITY REPORT」37

企業間のコラボレーション誘発 <Swire Properties> Swire Properties 社では、自社の不動産において、企業間ネットワークを求めて移転して きた企業の従業員を対象としたインフォーマルなイベントや会合を開催し、企業間のコラ ボレーション誘発機会の創出に寄与していると紹介。 図表 18 テナント企業間のコラボレーション誘発事例

(出所)Swire Properties 社「Sustainable Development Report 2019」38

<City Developments Limited>

City Developments Limited 社では、Republic Plaza において、社会的事業に取り組む 企業に1 年間無料でスペースを貸し出す「Incubator For SDGs」を実施し、企業間の連携 を誘発。これらの企業が、規模の拡大や潜在的な投資家や市場を検討する場合の経営の専門 家とのネットワークづくりも支援していることを紹介。 37 https://p.widencdn.net/dt2xtc/Kimco-2019-CR-Report-FINAL https://p.widencdn.net/dt2xtc/Kimco-2019-CR-Report-FINAL 38 https://sd.swireproperties.com/2019/pdf/en/SwirePropertiesSustainableDevelopmentReport2019_EN.pdfhttps://s d.swireproperties.com/2019/pdf/en/SwirePropertiesSustainableDevelopmentReport201 9_EN.pdf

(40)

37

図表 19 City Developments Limited 社のスタートアップ支援の取り組み

(出所)City Developments Limited 社 「INTEGRATED SUSTAINABILITY REPORT 2020」39

5章 コロナ禍における対応に関する開示事例

5.1 コロナ禍における対応に関する開示事例の解説 2020 年においては、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、不動産の利用者の安全確 保に向けた計画の発表、顧客や地域社会等のステークホルダーに対する支援策に関する開 示事例が見られた。ここでは海外企業におけるコロナ禍における対応事例を紹介する。 39 https://ir.cdl.com.sg/static-files/1666d9cc-5d77-422f-8f6c-50d6e3674d90 https://ir.cdl.com.sg/static-files/1666d9cc-5d77-422f-8f6c-50d6e3674d90

(41)

38 <Hines>

Hines 社は、自社ウェブサイト上で「A Clean and Conscious Journey」と題して、不 動産におけるテナント企業の従業員や訪問者に向けた感染防止対策を作成し、公開。 場面 感染防止対策 在宅勤務期間中の Hines 実施済事項 物件全体の洗浄・消毒 物件内部の通気状況確認・調整 水質の点検と水道管のメンテナンス 消毒液の共用エリアへの設置 ソーシャルディスタンスを保つための標識の設置 火災時の避難手順を密にならないよう見直し 建物到着時の テナント従業員への注 意喚起 建物に入る前の手を洗浄・消毒 非接触型の入口の利用 建物に入る前のマスク着用 施設管理者による健康状態や体温のチェックへの対応 共有エリア、エレベーター等での他人との間隔の確保 なるべくドアに手を触れない 施設管理者がより高い感染防止対策を行っている点の確認 ロビーエリアの什器配置の変更 重要な共有事項は掲示板にて確認 執務フロア到着時のテ ナント従業員への注意 喚起 各フロア共用スペースの消毒液にて手を消毒 エレベーターのボタン等が消毒されている確認 列を作らない、混雑したエレベーターに乗らない コロナ前より出勤に時間を要することを心得る なるべくドアに手を触れない オフィス内の執務時の テナント従業員への注 意喚起 執務フロア全体が感染防止環境にあるか確認 マスクの着用 自分の執務スペースに同僚を招く際の間隔の確保 対面の会議は避けテレビ会議を活用 会議室に集まる人数の制限と会議前後の消毒 執務スペース内での一方通行ルールの遵守 自社への訪問者や来客を可能な限り制限 定期的な自分の執務環境の消毒 Hines の継続的な取り 組み 感染防止対策の励行 共用スペースの接触箇所への消毒液の配置 定期的な空気の入れ替え 共用スペースの一方通行 全社感染防止対策に則った厳格な物件管理 共用スペースの利用可能人数の制限 テナント、顧客、ベンダーとのより綿密なコミュニケーション テナント企業への全般 的なお願い 自分と周りの人の健康・安全への意識 感染が疑われる場合の自宅待機 定期的な手洗い 執務エリアの定期的な消毒 人との間隔の確保 共用スペースの一方通行等、物件毎のルールの遵守 新しい生活様式のための協調性を持った行動 握手をしない、手を振ることで代用 咳や鼻水はティッシュで拭く、手を使わない 洗っていない手で目や鼻や口を触らない 図表 20 Hines 社の不動産における感染防止対策

(出所)Hines 社 「A Clean and Conscious Journey」40より作成

(42)

39 <Prologis>

Prologis 社は、4 つのステークホルダー(顧客、地域社会、投資家、従業員)に対するコ ロナ対応支援策を開示。

図表 21 ステークホルダー支援の詳細

(出所)Prologis 社「2019 ESG Impact Report」41(日本語部分は国土交通省加筆)

41 https://s22.q4cdn.com/908661330/files/doc_financials/2019/ar/2019-prologis-esg-impact-report.pdf https://s22.q4cdn.com/908661330/files/doc_financials/2019/ar/2019-prologis-esg-impact-report.pdf 従業員 地域社会 顧客 投資家 IT/デジタルを活用した 福利厚生コンテンツの 提供 経営陣による週次メッ セージの配信 COVID-19 タスクフォ ースの設置 収入減の非管理職従業 員への無利子貸付 マスクや消毒液の配布 自社設立の基金を通じ た慈善団体への寄付: 5 百万米ドル 行政・医療機関等へス ペースの無償提供: 4.9 百万米ドル相当 フードバンク等を通じ た食料の無償配布: 850 万食 中国の病院へマスク・ 防護服の寄贈: 各5 万枚・5,000 着 24 時間対応管理サービ スの提供 政府コロナ支援給付金 の情報提供 賃借料の延滞猶予 その他支援物資の提供 財務状況、コロナ対応 策、短期・長期計画等 に関する情報交換 業界のコロナ影響に関 するレポートの発行 (計6 回) ビジネステレカンファ レンスの開催

(43)

40 <Healthpeak Properties Inc>

Healthpeak Properties Inc 社は、コロナ禍における対応として、従業員の健康と安全、リ スクマネジメント、ステークホルダーへの情報開示、事業者及びテナント支援、慈善事業 への寄付の5 点に関する実施内容を開示。

図表 22 新型コロナウイルス感染症への対応

(出所)Healthpeak Properties Inc 社「2019 ESG Report」42(日本語部分は国土交通省加筆)

42 https://www.healthpeak.com/app/uploads/Sustainability_Reports/2019/2019-ESG-Report.pdf https://www.healthpeak.com/app/uploads/Sustainability_Reports/2019/2019-ESG-Report.pdf 慈善事業への寄付 従業員の健康と安全 全社員のリモートワーク、 在宅勤務環境の整備、出社 体制への復帰方針の策定 リスクマネジメント パンデミックにおける全社 的リスク評価及びリスク低 減措置の検討 情報開示 投資家への事業状況に関す る適時のプレスリリース発 出、投資家とのエンゲージ メント オペレーターやテナント支援 テナント安全基準の見直し、敷地の一部を感染検査に貸 し出し、賃料の支払猶予、テナントやオペレーター向け の公的ローンの紹介、その他密なコミュニケーション 慈善事業への寄付 COVID-19 関連人道支援への寄付:子供への支援、住宅 支援、感染防止用品の支援、研究機関への支援、エッセ ンシャルワーカーへの食糧支援、フードバンク等

(44)

41

6章 地域社会・経済への貢献に関する情報開示のポイント

不動産による地域社会・経済への貢献を通じたレジリエントかつ持続可能な社会づくり の実現は、不動産業界だからこそできる社会分野での貢献である。このため、我が国の不動 産企業においても、不動産を活用した地域社会・経済に資する取り組みの開示を通じて、投 資家を含むステークホルダーにその価値を訴求し、不動産価値並びに企業価値向上につな げていくことが望ましいと考えられる。 なお、海外企業の地域社会・経済への貢献に関する開示事例を見ると、経済効果や雇用創 出といった項目で定量的な開示が見られるものの、そのほかの分野については、不動産を通 じたケーススタディとしての定性的な紹介が中心である。我が国の不動産企業においても、 定量データが取得可能な内容については定量的な開示を目指しつつも、まずは自社が実施 している地域社会・経済への貢献の取り組みを整理したうえで、それらの定性的な開示から 開始することが重要だと考えられる。 また、上記のような取り組みを開示するうえでは、自社の取り組み内容のみならず、それ が地域社会・経済への発展につながれば、自社の不動産の価値向上につながり、最終的には 自社利益に帰結するような、価値創造のストーリーと合わせた開示が有効だと考えられる。

図表  4  人権方針
図表  5  人権デューデリジェンスの結果
図表  9  経済効果や雇用の創出効果の開示
図表  8  地域における雇用創出の開示
+7

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