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ダウンロード配信と

これからの音楽市場

日本大学商学部

商業学科 4 年 1301-0566-1

岩崎可奈

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目次

はじめに

1.先行研究

2.日本国内の定額制音楽配信サービスの現状

2.1 定額制音楽配信サービスとは

2.2 定額制音楽配信サービスごとの比較

2.3 国内での定額制音楽配信サービスの認知率や実態調査

2.4 定額制音楽配信サービスの問題点と改善策

3.国内における音楽産業の売り上げ

3.1 音楽 CD の生産数

3.2 音楽配信売上

3.3 ジャンル別タイトル生産数

4.違法ダウンロードへの対策

4.1 違法ダウンロードの刑罰化

4.2 DRM 楽曲

4.3 音楽市場との関連性

5.日本国民の音楽離れ

5.1 音楽に対する日本国民の反応

5.2 日本の音楽市場の上位

5.3 現在の音楽業界の状況と取り組み

6.日本国外の音楽産業の現状

6.1 世界の音楽産業

6.2 ナップスターによって音楽産業に変化は起きたか

6.3 無料音楽アプリに違法性はあるのか

7.結論

おわりに

謝辞

参考文献

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はじめに

近年、人々は、携帯電話や携帯オーディオプレイヤーを使い、簡単に音楽を外へ持ち 出し、室内ではなく外出先でも音楽を聞くようになった。30 年以上前には、携帯電話や 携帯オーディオプレイヤーはまだ存在しておらず、人々が音楽を聞く手段として利用し ていたのは室内で使うレコードである。そのレコードの後に普及したのは CD であり、 今ではその CD からダウンロード配信や無料動画サイトでの視聴などへと移行してきて いる 1。今でこそ CD 不況と呼ばれているが、このまま CD もレコードのように廃れ、音 楽配信が主流になっていくのか。 また、2012 年 10 月 1 日には、違法ダウンロードに刑罰を与える改正法も成立し、著 作権法によって、音楽に携わった人たちは保護されるようになり、違法ダウンロードに よって音楽市場が縮小してきている現象を阻止しようともしている。しかし、この違法 ダウンロードの刑罰化によって、本当に音楽市場は縮小されずに済んでいるのか。 そして、日本国内のみならず、世界中でもスマートフォンが普及しつつある今、海外 の音楽産業や日本でダウンロードされている中国製の音楽アプリなども、どのような状 態にあるのか。 以上の 3 点を、文献などを参考にしつつ、研究していくこととする。 はじめは先行研究とする。第 2 章では、これまでの音楽媒体についてと今年提供され 始めた定額制音楽配信サービスの現状、問題点等を述べる。第 3 章では、日本国内にお ける音楽の売り上げの推移等から売れなくなっていく理由を明らかにしていく。第 4 章 では違法ダウンロードの刑罰化と音楽市場の関連性について述べていく。第 5 章では、 音楽需要の現状から日本人の音楽離れについて探り、音楽業界の今を考える。第 6 章で は日本国外の音楽産業の現状からこれからの世界の音楽産業はどうなっていくのか述べ る。そして、第 7 章では結論を述べる。

1.先行研究

尚絅学院大学の高木和男(2006)は、日本のレコード産業を揺さぶっているのが携帯電 話の存在であり、日本のレコード産業を現在のような構造不況業種に追いやったのが、 携帯電話の存在だと言われているが、その理由として今までは中高生がレコード購買の 中心だったが、携帯電話が普及し、CD の購入にまわっていたお金が携帯の使用料とし て支払われるようになってしまったからであると述べ、その一方で音楽業界にとっては 敵のような存在だった携帯電話が、音楽配信の端末として急浮上してきたとも述べ、CD の衰退には携帯電話の普及が関わっており、さらには音楽配信の端末としても関わって きていることを明示している 2 また、拓殖大学の田崎慎也と竹末俊昭(2007)は、不正に著作権を持つファイルまでを も交換することができる『ファイル交換サービス』は日本でも問題になっているが、他 にも CD の売り上げ不振に影響している原因は、レンタル CD や中古 CD の利用者が増

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加している点と、PC を家庭に持つ人が多くなったことから、楽曲のデータを PC 内に取 り込み、PC で音楽を楽しむことが一般化し、これにともない視聴方法も CD/MD から楽 曲データを携帯端末に取り込み、持ち歩くスタイルへ変化した点であると述べ、こちら でも CD の衰退にはレンタルや中古販売、音楽プレイヤーの小型化などがあげられてい る 3 埼玉女子短期大学の森沢幸博(2007)は、インターネット向け音楽配信市場を構成する 要素には、配信サービス、商品として音楽コンテンツ、ユーザーインタフェースとして デジタルオーディオプレイヤー等のハードウェア、著作権を保護する DRM があるが、 音楽コンテンツのユーザーインタフェースとなるのがデジタルオーテディオプレイヤー iPod であり、その iPod で利用できる著作権保護ファイル規格は AAC 形式に限定されて おり、その DRM プラットフォームは FairPlay で、iPod で利用できる楽曲ファイルはア ップル社の配信サービス iTMS のみで購入可能であり、その iTMS にはソフトウェア iTunes 画面からしかアクセスできず、アップル社のデジタル音楽ビジネスは、ソフトウ ェア iTunes を基本軸として展開されている。こうしたビジネスモデルとプラットフォー ムによって、アップル社は継続的に収益を得ることが可能となり、DRM 技術によって保 護された音楽コンテンツとサービスによって、ユーザーの囲い込みを実現しながら、継 続的な商品購買を維持している。さらにアップル社は独自の FairPlay の技術使用を他社 には非公開とする戦略をとっているため、iTMS からダウンロードした音楽は、iPod で のみ再生できるが、他の DRM を使った楽曲とは互換性を持たせず、iPod で再生できな いようにしていると述べ、インターネット向け音楽配信市場が出始めたころの Apple 社 ならではの音楽の保護の仕方が示されている 4 文教科学委員会調査室の鈴木友紀(2012)は、インターネット上のファイルが違法で あるか否かを見分けることは非常に困難であり、刑事罰化により、一般ユーザーによる インターネット利用が萎縮するのではないかという懸念も主要論点の一つとなった。こ れは、平成 21 年改正の際も議論された課題であるが、修正案提出者からは、「エルマー ク」の普及によりそうした懸念はなくなっていく旨の答弁が行われた。エルマークとは、 合法配信であることを識別しやすくするために、日本レコード協会が発行しているマー クであり、音楽や映像を正規配信するサイトのトップページや購入ページなどに表示さ れているものである。徐々に普及は進んでおり、平成 24 年 9 月 28 日現在、260 事業者、 1,493 サイトに付されており、その一方でエルマークの認知度は決して高いものではなく、 また、正規配信サイトでもアップル社の iTunes ストアのように、エルマークを付してい ないサイトもあり、現状においてエルマークは決して十分なものであるとは言えない状 況にあるとも述べており、違法ダウンロードを取り締まったり、合法かどうかを見極め たりするにはまだまだ課題があることが示されている 5 青山学院大学の岩井千明(2000)は、インターネット音楽配信サービスの問題点とし て音楽ソフトビジネスは売り上げが縮小傾向にあり、 無料音楽配信サービスは利用者の 支持を得ており、法規制があっても新たなサービスに移行して利用を続けており、多く の無料音楽配信サービスは日本国外で開発、提供されており、音楽ソフト業界の対抗措

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置にはコスト面、技術面、法律面などを考慮すると完全に防止することは簡単ではなく、 有料の音楽配信サービスは価格面、代金決済面で小売販売やレンタル CD に比較してユ ーザーへの便益が劣っている。また、イーズミュージックのような革新的なサービスは 既存ビジネスモデルへの共食いのリスクが大きく容易には実施しがたく、著作権処理や デジタル処理のコストを考慮すると楽曲のオンライン化には制約があり、既存の楽曲は それらのコストが上乗せされるため全ての音楽ソフトをデジタル化してオンラインで販 売することはできない。一方、ユーザーはコピーの制約がなく「品揃えの豊富な」無料 音楽配信サービスを利用するという悪循環が生まれている。ブロードバンドなど高速イ ンターネット環境や携帯電話の高速化、小型携帯端末(PDA)の普及と共にさらなる無料 ないし有料の音楽配信サービスの普及が促進する可能性が高まっているなどと述べ、そ の改善策として、現在一部の音楽ソフト会社では実施しているが、根本的に価格を小売 CD と同じくするということで十分とはいえない、ほとんどの音楽サービスサイトが独 自に Web 展開を行っているがユーザー数を増やす活動が十分でないため、一般ユーザー まで自分自身が持つコンテンツの存在を認識させる必要がある。そのためにはユーザー 数の多いポータルサイトやショッピングサイトとの連携を推進すべきである。ユーザー 側が情報を探して音楽ファイルの購入まで行かせるのではなく、目の前に常に購入した い曲が提示されているという状況を作る必要がある。また、Amazon 等のショッピング サイトで有料音楽ファイルを CD の代わりに販売することも考えられ、ユーザー調査結 果を見る と音楽ファイル購入に当たっては代金決済が大きな阻害要因となっており、ク レジットカードなどオンラインの決済手段を持たない層や、クレジットカード番号を入 力することに抵抗を持つユーザー層のために極力手間のかからない決済手段を提供する 必要がある。これもまた、有力なショッピングサイトと提携し彼らの 持つ決済手段を利 用するか、インターネットプロバイダーと提携することにより予めダウンロードする権 利をプロバイダー価格に含めて請求するようなシステムを構築する必要がある。インタ ーネット上でレンタルショップを開設して例えば月額固定料金 1000 円で 10 曲までダウ ンロードが可能とか 2000 円支払えば 20 曲まで自由にダウンロードができて自分の好き なコンピレーションアルバムを作れるとかいった課金パターンを増やす方法もある。そ の場合、曲が聴ける期間をプログラム上で 10 回までとか 3 ヶ月以内という制約をつける ことによりヒット曲中心のレンタルショップよりユーザーに与える利得は大きくなる。 現在無料音楽配信サービスではダウンロードのインデックスサーバーが混雑しているこ とに目をつけて比較的品質の良い(空いている)サーバーへのアクセスを有償としてい る場合がある。有償音楽配信サービスは、無料音楽配信サービスのファイル品質を改善 し、高品質のダウンロードサービスを有料で提供することにより、無料音楽サービスユ ーザーが不満と思っているサーバーの混雑や音楽ファイルの品質の悪さをカバーするこ とが可能となる。複数の音楽ソフト会社が共同でこのシステムを運営することにより、 コストの分散化、ならびに無料音楽配信システムの品質を上回ることが可能となると述 べ、音楽配信サービスが実施するにあたっての課題が示されていた 6

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2.日本国内の定額制音楽配信サービスの現状

そもそも音楽を再生する媒体の始まりは、1877 年にアメリカの発明王、エジソンによ る蓄音機の原型「フォノグラフ」が最初である。それまでは、クラシック音楽などは楽 譜を作り、記録していくか、民族内で、口伝で伝承していく方法しかなく、一度聞いた らもう二度とそっくりそのまま同じ音楽を聞けなかったものが、録音することによって 何度でも聞けるようになった。そして、舞台で聞くような音楽も、家で聞くことができ るようになったのである。その後、音楽を再生する媒体は円盤のレコードとなり、日本 にも広く使われるようになった。そして、ラジオ、テレビとともにアーティストたちは レコードに自分たちの楽曲を録音し、販売するようになった。その後、カセットテープ も音楽メディアとして販売され、レコードとともに市場の大半を占めることとなる。レ コードはカセットテープより音質が良かったが、カセットテープは音楽を再生するため だけではなく、自分で録音することができたため録音メディアとしても使用することが できた。また、カーステレオなどで手軽に使用できるため、レコードと同時に発売され ることが多かった。1982 年になると、CD(コンパクトディスク)が発売され、徐々に市場 を広げていくこととなる。その勢いとともにカセットのシェアがレコードを追い抜き、 レコードの衰退が露わになっていった。1990 年になると、CD とカセットのシェアがほ ぼ同格となり、90 年代後半になると CD のシェアが 90%近くなり、成長は止まったとい える。2004 年には音楽ダウンロードというメディアが登場し、iTunes のなどの有料音楽 配信によって CD のシェアを減らすこととなる 。そして、2015 年には日本でも定額制 音楽配信サービスという新たなジャンルが普及し始め、確立された。

2.1 定額制音楽配信サービスとは

定額制音楽配信サービスとは、毎月定額支払えば対象の音楽が聴き放題というサービ スで、サブスクリプション型音楽配信サービスとも言われる。本文では定額制音楽配信 サービスで統一する。2008 年にヨーロッパでサービスを開始した「Spotify」が 2015 年、 有料会員数を 2000 万人突破したことで有名になった。 日本国内でもその波は広がっており、2015 年 5 月にはエイベックス・デジタルとサイ バーエージェントの共同出資によって設立された AWA 株式会社による「AWA」、6 月に はエイベックス・デジタルとソニー・ミュージックエンタテイメントと LINE 株式会社 の共同出資によって設立された合併会社である LINE MUSIC 株式会社による「LINE MUSIC」といった国内発サービスが開始された。そして 7 月には Apple から「Apple Music」、 9 月には Google から「Google Play Music」、11 月には大手オンラインショッピング企業 である amazon から「Prime Music」がサービスを開始した。そして 2016 年 9 月にはつい に、「Spotify」も日本に上陸し、混戦状態となっている7

これらの定額制音楽配信サービスは、今まで CD を購入したり、レンタルしたり、iTunes 等で購入したりして、1 曲や CD アルバム 1 枚から購入していたのに対して、月に定額

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払えば基本的に聴き放題なため、CD を何枚も買ったり、借りたりするよりも安く、数 万といった幅広い楽曲を聴くことができる。

2.2 定額制音楽配信サービスごとの比較

前節で述べた定額制音楽配信はサービスごとにどのように違うか、「AWA」、「LINE MUSIC」、「Apple Music」、「Google Play Music」、「Prime Music」の5つに絞って比較して みることにする。 比較する内容は、①主なプラン、②配信曲数、③無料視聴期間、④レコメンド機能、 ⑤オフライン再生、⑥プレイリスト作成、⑦歌詞表示、⑧最高音質、⑨対応デバイス・ システムの計 10 個である。 表 1 定額制音楽配信サービスの内容比較 出典:著者作成 プラン内容はほとんどのサービスが 1000 円前後だが、AWA はスタンダートプランの 他にもライトプラン(月額 360 円)とフリープラン(無料)がある。また、LINE MUSIC はベ ーシックプラン(20 時間で 500 円)があったり、学割(ベーシックプラン 300 円、プレミア AWA LINE MUSIC

Apple Music Google Play Music Prime Music 主なプラ ン 月額 960 円(スタ ンダートプラン) 30 日で 960 円(プレミア ムプラン) 月額 980 円 (個人向け通 常プラン) 月額 980 円 年額 3900 円(月額換 算 325 円) 配信曲数 数百万曲 (2016 年末に 1000 万曲予定) 約 1800 万曲 約 3000 万曲 約 3500 万 曲 約 100 万曲 無料視聴 期間 30 日間 30 日間 3 か月間 30 日間 30 日間 レコメン ド機能 ○ × ○ ○ ○ オフライ ン再生 ○ ○ ○ ○ ○ プレイリ スト作成 ○ ○ ○ ○ ○ 歌詞表示 ○ ○ × × × 最高音質 320kbps 320kbps 256kbps 320kbps 256kbps 対応デバ イス・シス テム iOS/Android/PC(W in/Mac)/ Chromecast/ Apple CarPlay/Android Auto iOS/Android/ PC(Win/Mac ) iOS/Android/ PC(Win/Mac )/AppleTV/A pple CarPlay/Appl e Watch iOS/Androi d/PC(Win/ Mac)/ Chromecast iOS/Androi d/PC(Win/ Mac)/Fire タブレッ ト/Fire TV

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ムプラン 600 円)を導入したりしている。Apple Music は個人向けのほかにファミリー向 けのプランがあり、こちらは家族が買ったものを 5 人まで共有することができ、月額 1480 円となる。Google Play Music でも Apple Music 同様ファミリープランが開始され、こち らも 6 人まで月額 1480 円で利用することができる。しかし、こちらはファミリープラン の申し込みができるのが Android のアプリのみで、この料金体系が導入されている国の 数が 8 か国と少ないのが若干の難点といえる。Prime Music は、amazon の有料会員であ るプライム会員の特典のひとつと考えるのが妥当である。プライム会員であれば追加料 金もなくすぐ使えるため、プライム会員の価格である年額 3900 円がサービスを利用する のに必要だといえる。主なプラン内容の価格だけ見ると、この 5 つのサービスの中では、 Prime Music が一番安いといえる 8。 配信曲はサービスによって幅が広く、邦楽、洋楽はもちろん、K-POP やボーカロイド 曲、サウンドトラックなど様々なジャンルの曲が配信されている。しかし、アーティス トが所属するレーベルが楽曲提供を許可するか、レーベルが許可をしていてもアーティ スト自身が許可しないと配信はされない。また、数百万曲配信といっても、オルゴール やカラオケバージョン、他アーティストのカバーバージョンなど、オリジナルのアーテ ィストが歌っている曲が配信されているとは限らない。自分の聞きたいアーティストの 曲がどのサービスから配信がされているのかを調べてから無料期間などに利用してみる などしてから本格的に利用開始すべきである。

2.3 国内での定額制音楽配信サービスの認知率や実態調査

マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが 2015 年 9 月 4 日から 9 月 7 日に全国 47 都道府県の 20~69 歳の男女、週に 1 回以上音楽を自発的に聴く 3000 人にインターネットで、サブスクリプション型音楽配信サービス(本文では定額制音楽 配信サービスとする)の認知率や利用率、利用する理由などを調査し、その実態を明ら かにした 9 図 1 のとおり、定額制音楽配信サービスの認知では、認知者が 66.9%、非認知者が 33.1% となり、70%近くの人がサービスについて認知をしているという結果となった。また、 同サービスの利用率では、利用者が 7.9%に対して非利用者が 92.1%と、圧倒的に非利用 者の割合が高い。サービス自体は認知しているが、実際に利用しているわけではないた め、市場に浸透しているとは言い難い結果となった。

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図 1 サービスの認知率(左) サービスの利用率(右) 出典:株式会社クロス・マーケティング10 図 2 の同サービス利用意向の有無では「ぜひとも利用してみたい」(1.4%)、「機会が あれば利用してみたい」(10.3%)となり、利用意向有りの合計でも 11.7%と積極的な利 用意向は見られなかった。反して、「全く利用してみたいと思わない」(41.4%)、「利用 してみたいと思わない」(24.9%)となり、6 割以上の人に利用意向が無い状況である。 図 2 サービス利用意向の有無 出典:株式会社クロス・マーケティング11 図 3 の利用意向有りの理由では「新曲を聴けそうだから」「懐かしい曲が聴けそうだか ら」がどちらも 47.4%で最多。図 4 の利用意向無しの 理由では「無料の動画配信サービ スで十分だから」が 28.0%で最も多く、次いで「現在活用しているもので満足している ため」が 22.0%と続いている。約 3 割が「音楽を聞くのに無料で十分」、約 2 割が「音 楽にお金をかけたくない」と思っていることがわかる。

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図 3 サービス利用意向の有りの理由 出典:株式会社クロス・マーケティング 12 図 4 サービス利用意向の無しの理由 出典:株式会社クロス・マーケティング13 これだけの人が定額制音楽配信サービスを知っていながら、利用しなかったり、利用 しようと思わなかったりする理由がほぼ金銭面でありながら、音楽自体は聞きたいと思 っていることがうかがえる。 2015 年ではこのような結果だったが、株式会社インプレスが 2016 年 7 月 25 日から 7 月 28 日までに 20,868 人に対して定額制音楽配信サービスの利用状況を調査し、現在利 用していると回答した 1,081 人に対して詳細な利用実態を調査した結果もある。こちら は、回収率が性年代別に異なり母集団を正しく推計することが困難であるため、利用率 に関する集計は上記の性年齢階層別のスマートフォンでのインターネット利用人口構成 比を用いて比重調整を行っている 14 図 5 を見ると、定額制音楽配信サービスの利用率は、「現在利用している」が 9.1%、 「過去に使用したことがある」が 16.5%であり、両者を合わせた定額制音楽配信サービ スの利用経験者は 25.6%となっている。回答人数や対象は若干異なるが、2015 年の結果 と比べると利用率は上がっていることになる。 性年代別にみると、現在の利用率は男性 20 代が 13.3%で最も高く、男性 13~19 歳が 11.2%、男性 30 代が 11.1%で続いている。女性より男性の方が利用率は高い傾向があり、

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10-30 代をピークに高年代では利用率が低くなる傾向になっている。 図 5 定額制音楽配信サービスの利用率 出典:株式会社インプレス 15

2.4 定額制音楽配信サービスの問題点と改善策

前節より、「音楽を聞きたいがお金をかけるほどではないし、すでに無料で自分の好き なアーティストの曲が聞ける」という状況が生まれているため、定額制音楽配信サービ スならではの強みが必要になってくる。例えば、図 5 にある「無料の動画配信サービス」 というのは、あくまで動画になっているため、普通の音楽配信サービスより通信料がか かるため、携帯電話などのキャリアのプランによっては、高い料金を払わなければなら ない可能性がある。また、現在の定額制音楽配信サービスでは、曲数は多くても、邦楽 の曲数は多くはなく、そのアーティストが実際に歌っていないバージョンのみの配信に なっていたり、最新曲の配信がされなかったりする場合もある。これらの問題を改善し、 月々定額払っている意味を持たせなくてはならない。それでは実際にどのようなことを すればよいのか。 定額制音楽配信サービスには、オンデマンド型とラジオ型の 2 種類ある。オンデマン ド型は先ほど述べた、「AWA」や「LINE MUSIC」などが挙げられ、利用者自ら選曲をす ることができる。一方で、ラジオ型は「うたパス 16」や「d ヒッツ 17」などが挙げられ、 チャンネルやステーションと呼ばれるプレイリストを選択し、そのプレイリストが流れ ているのを聞く形になる。このオンデマンド型とラジオ型とを比べると、ラジオ型の定 額制音楽配信サービスの方が料金は安く、ラジオ型のみに新譜を提供するレーベルやア ーティストが多い。その理由としては、オンデマンド型では自由に選曲ができるため、 CD やダウンロード配信の購入の足枷となってしまう可能性があるからだ。しかし、ラ ジオ型では自由に選曲ができないため、従来通りのプロモーションとして配信の許諾を しやすいのである。オンデマンド型では聞けなかった新譜が、ラジオ型では自ら選曲は できないが、チャンネルを回せば聞くことができる。

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利用者の重要視する点は「利用するのにいくら料金が必要か」、「曲数は何曲あるか」、 「新譜はきちんと配信されるか」が挙げられるだろう。ラジオ型の定額制音楽配信サー ビスを利用すれば、オンデマンド型より安く、そのタイミングではないが確実に聞きた い曲を聞けるため、解決策のひとつとして挙げておくこととする。

3.国内における音楽産業の売り上げ

3.1 音楽 CD の生産数

2016 年に一般社団法人日本レコード協会は過去 10 年間における CD 生産数量を発表 した。この図 6 を見るとわかる通り、9 年前の 2006 年から毎年減少しつつある。2012 年には 2 億 1517 万枚と一度持ち直したが、2013 年には 1 億 8873 万枚と、また大きく減 少してしまった。そして 2015 年も 1 億 6965 万枚と減少の一途をたどっている。邦盤の みでいえば、前年比 104%となっているが、洋盤との兼ね合いで、全体的には減少とい う形になっている。洋盤に関しては 2014 年には若干ではあるが、増加しており、これは、 EDM の影響ではないかと言える。EDM とは、エレクトロニック・ダンス・ミュージッ クの略称で、クラブなどで DJ がかける音楽の一つである。とくに 2014 年には世界的な エレクトロニック・ダンス・ミュージックフェスティバルのひとつである、ウルトラ・ ミュージック・フェスティバルが「ULTRA JAPAN 2014」としてお台場で開催され、 42000 人もの観客を集めたことなどから、EDM を聞く若者が増え、洋盤の生産が増加し たのではないだろうか。しかし、2015 年度には 2500 万枚を下回り、10 年前である 2006 年の 8063 万枚の三分の一以下である 2355 万枚となっている 18 図 6 日本国内の過去 10 年間の生産実績 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]19 また、図 7 の CD シングル生産実績を見ると、2013 年には 2010 年から増加傾向があ ったものが 4 年ぶりに減少している。2009 年の 44,900 万枚から一気に増加傾向になった

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のは、2010 年ごろからシングル CD のパッケージの種類を増やしたり、イベント参加券 を添付したりするなどの方法で、AKB48 などのアイドルグループがシングル CD の生産 数を増やしていたからであるといえる。2013 年になり、アイドルグループの勢いが落ち 着いてきてしまったのではないか。その落ち着きは 2014 年も変わらず、2015 年も前年 とはほぼ変わらないが、また減少傾向になりつつある 20 図 7 日本国内の過去 10 年間の CD シングル生産実績 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]21 図 8 の CD アルバムの生産実績を見ると、2012 年に一度持ち直し、150,311 万枚まで増 えたものの、また 2013 年には 128,137 万枚と減少してしまった 22。2012 年に生産数量が 増加した理由としては、アイドルグループの伸長、Mr. Children・桑田佳祐・松任谷由実・ 山下達郎といった人気アーティストのアルバムが発売されたことがある。とくに、後者 3 人は、「普段とくに音楽を聞いたりしないが、買うなら CD で買おう」と思う中高年の 世代に人気のアーティストといえるため、CD の売上に繋がったのではないか。そして、 2013 年の売り上げには 2012 年に発売されたアルバムによって売り上げが伸びたことの 反動がでているといえる。また、図 8 では分からないが、CD 全体と同じように洋盤の アルバム生産枚数も若干増加している。CD 全体、シングル、アルバムとそれぞれ見て きたが、これらの結果、CD の生産実績は、シングルの売り上げよりも、アルバムの売 り上げのほうが、直接影響しているといえる。

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図 8 日本国内の過去 10 年間の CD アルバム生産実績 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]23

3.2 音楽配信売上

また、図 9 の有料音楽配信売上をみてみると、2015 年の累計ダウンロード数は対前年 比 91%にあたる 1 億 7811 万ダウンロードとなっており、徐々に減少しつつあるのが分 かる 24 図 9 日本国内の過去 5 年間の有料音楽配信売上 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]25 表 2 から金額は前年比 108%の 470 億 7300 万円と増加していることが分かる。Master ringtones は着うた、Ringback tones は待ちうた・メロディコール、シングルトラック内の フィーチャーフォンは着うたフルという区分がされている。内訳をみると、アルバムの 販売に関しては、PC 配信・スマートフォン、フィーチャーフォンともに前年より増加、 PC 配信・スマートフォンにおいてはシングルの販売は前年と変わらないが、フィーチャ ーフォンが半分ほどになっている。さらに、PC 配信・スマートフォン向けのサブスクリ プションサービスは金額で対前年比 158%となる 123 億 8800 万円と成長した 26。2014 年はサブスクリプションサービスが急成長したが、全体としてはフィーチャーフォン向

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けダウンロード販売、つまり着うた・着うたフルの落ち込みをカバーできなかったので あるといえる。モバイルダウンロードの急激な減少は PC 配信・スマートフォン向けの 配信へ移行したわけではなく減少しているのである。 表 2 2015 年の有料音楽配信売上の内訳 (単位)数量:千回,金額:百万円 形態 1~12 月累計 数量 前年同期比 金額 前年同期比 Master ringtones 8,808 71% 786 73% Ringback tones 43,994 83% 2,981 79% シングルトラック PC 配信・スマートフォン 108,848 100% 17,438 100% フィーチャーフォン 6,021 51% 1,554 50% 小計 114,869 95% 18,992 92% アルバム PC 配信・スマートフォン 8,437 109% 9,229 111% フィーチャーフォン 0 0% 0 0% 小計 8,437 109% 9,229 110% 音楽ビデオ PC 配信・スマートフォン 1,776 88% 496 90% フィーチャーフォン 228 53% 74 51% 小計 2,005 81% 570 82% サブスクリプション PC 配信・スマートフォン - - 12,388 158% フィーチャーフォン - - 4 79% 小計 - - 12,393 158% その他 - - 2,123 159% 総合計 178,113 91% 47,073 108% 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]27

3.3 ジャンル別タイトル生産数

表 3 は、ジャンル別にオーディオレコードがどのぐらいのタイトル数売れたかを表し ており、通常の 12 ㎝ CD に関しては、邦盤、洋盤ともに前年比 100%以上となっている 28。つまり、アーティストが曲を作り、CD を出す数は増えていることがわかる。

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表 3 2014 年オーディオレコードジャンル別カタログ数 (単位:タイトル) ジャンル 8cmCD 12cmCD CD 計 アナ ログ カセット 合計 シング ル アルバ ム シン グル その 他 邦 盤 演歌 0 646 359 1,005 0 193 27 1,225 ポップス・歌謡曲 0 2,656 4,088 6,744 163 5 5 6,917 軽音楽 0 24 113 137 0 0 0 137 サウンドトラック 0 2 129 131 0 0 1 132 民謡 ・ 純邦楽 0 11 47 58 0 7 1 66 教育・教材・童謡・童 話 0 0 188 188 0 0 0 188 アニメーション 0 499 331 830 1 0 0 831 クラシック 0 6 99 105 3 0 0 108 カラオケ 0 0 1 1 0 0 0 1 その他 0 25 145 170 0 0 0 170 邦盤計 0(0%) 3,869(1 02%) 5,500(9 4%) 9,369(9 7%) 167(1 14%) 205( 97%) 34(6 3%) 9,775(9 7%) 洋 盤 ロック・ポップス・ダ ンス 0 13 1,913 1,926 18 0 3 1,947 ジャズ・フュージョン 0 3 1,077 1,080 6 0 0 1,086 ポピュラーソング 0 1 650 651 31 0 0 682 サウンドトラック 0 0 72 72 0 0 0 72 クラシック 0 1 1,647 1,648 0 0 0 1,648 その他 0 0 41 41 16 0 0 57 洋盤計 0(-) 18(90%) 5,400(9 2%) 5,418(9 2%) 71(21 5%) 0(-) 3(15 0%) 5,492(9 3%) 合計 0(0%) 3,887(1 02%) 10,900( 93%) 14,787( 95%) 238(1 33%) 205( 97%) 37(6 6%) 15,267( 96%) ( )内は対前年比 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]29

4.違法ダウンロードへの対策

4.1 違法ダウンロードの刑罰化

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先述したとおり、平成 24 年 10 月 1 日に、違法ダウンロードに刑罰を与える改正法が 成立した。著作権法によって、音楽に携わった人たちは保護されるようになり、違法ダ ウンロードによって音楽市場が縮小してきている現象を阻止しようともしている。参議 院文教科学委員会によると、著作権法第 30 条第1項では、個人的に又は家庭内その他 これに準ずる限られた範囲内において使用(私的使用)する場合は、原則として、権利 者の了解を得ずに著作物を無断で複製できることとされている。この原則に対し、平成 21 年の著作権法改正によって、著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル 方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合(同法第 30 条第1項第3号)、 つまり、違法にアップロードされた音楽や映像を、それが違法にアップロードされたも のであることを知りながらダウンロードした場合は、私的使用目的であっても違法とな ることが規定され、平成 22 年1月1日に施行された。この平成 21 年改正の段階では、 一つは、個々人の違法ダウンロード自体は軽微であること、二つ目に、家庭内で行われ る行為についての規制の実効性の確保が困難であることを理由として、刑事罰は設けな いこととされた。なお、権利者に無断で音楽等をアップロードする行為については、平 成 21 年改正の以前から違法とされており、10 年以下の懲役または 1000 万円以下の罰 金(併科可)が科せられる。しかし、日本レコード協会等の権利者団体からは、この法 改正が行われた後も、違法ダウンロードが依然として正規流通を上回る規模で行われて いることから、平成 21 年改正では見送られた刑事罰を導入することが必要である旨の 要望が繰り返された。例えば、平成 23 年7月7日に文化審議会著作権分科会法制問題 小委員会において行われたヒアリングに出席していた、日本レコード協会は、違法な音 楽・映像等のダウンロード数は、視聴のみが許可されているストリーミングサイトから の不正なダウンロードを含め年間 43.6 億ファイルと推定されるという平成 23 年の調査 結果を示した上で、大量に流通している著作権侵害ファイルの総量を減少させるため、 『違法アップロードに対するそれと同様に、違法ダウンロードに対する刑事罰を導入す る』という法改正の検討をお願いしたいとの要望がなされた。また、同じくヒアリング に出席した日本映画製作者連盟からも、30 条1項1号・2号・3号の行為に対する刑事 罰を設けるべきであるとの見解が示された。こうした状況の下、違法ダウンロード刑事 罰化について、自由民主党、公明党を中心に、議員立法としての提出も含めた検討が行 われたが、最終的には議員立法としての提出は見送られ、第 180 回国会に提出された閣 法に対する修正案という形で、違法ダウンロード刑事罰化は盛り込まれることとなった 30。違法ダウンロードの刑罰化には多くの改正と議論がされてきたのがわかる。 文化の振興及び国際文化交流の振興を図るとともに、宗教に関する行政事務を適切に 行うことを任務とする文化庁は、平成 24 年 7 月に違法ダウンロードの刑事罰化について 子供にも分かりやすく説明した Q&A をホームページに掲載した。こちらによると、原 則として個人で楽しむ分には違法にならず、刑罰の対象にならないと記されている。著 作権を持つ者に許可なく、インターネットにアップロードしたり、許可が下りてないも のだと知っておきながら自分のパソコンにダウンロードしたりすることが基本的には刑 罰の対象になるのである。このことから、違法にアップロードされている音楽や映像を

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ダウンロードすることは違法だが、録画や録音を伴わなければ刑罰の対象にならないと いうことがわかる。

4.2 DRM 楽曲

違法ダウンロードの防止のために最近では「DRM 楽曲」というものが出てきている。 DRM というものは、IT 用語辞典 31によると、デジタルデータとして表現されたコンテ ンツの著作権を保護し、その利用や複製を制御・制限する技術の総称のことで、音声・ 映像ファイルにかけられる複製の制限技術などが有名だが、広義には画像ファイルの電 子透かしなども DRM に含まれる。デジタル化された音楽などの著作物は何度コピーし ても、どんな遠距離を送受信しても品質が劣化しないため、インターネットの普及やパ ソコンの高速・大容量化にともなって、著作者の許諾を得ない違法な配布・交換などが 増えており、これに対抗するため、コンテンツの流通・再生に制限を加える DRM 技術 が注目を集めている。具体的な実装形態は様々で、メモリカードなどの記憶媒体に内蔵 されたり、音声や動画のプレーヤーソフトやファイルの送受信・転送ソフトに組み込ま れたり、それらを組み合わせたシステムなどがある。つまり、DRM はダウンロードされ た音楽が何度もコピーされ、流通しないために、記憶媒体やプレーヤーソフトに実装さ れているシステムのことである。これにより違法ダウンロードやアップロードによる著 作権侵害は防止されるようになった。 しかし、DRM によって視聴者には大幅に制限がかかることがある。例えば、インター ネットを通じて音楽をダウンロードした場合、DRM がかかっていたら、その楽曲をダウ ンロードした媒体が壊れると、パソコンの場合であれば OS をダウンロードし直したと しても楽曲はまたダウンロードしなくてはならない。つまり、一度ダウンロードした媒 体が使えなくなると、またもう一度お金を払って楽曲を購入しなくてはならない。視聴 者にとっては二度手間である上に、一度お金を払って買ったものにまたお金を払わなく てはならない。そこまでのリスクがある楽曲を購入する必要はないと考えられる。

2012 年にアップル社は日本で「iTunes in the Cloud」のサービスを開始すると同時に、 「iTunes Store」で販売されている楽曲の全曲の DRM を外し、DRM フリー化させた。こ れにより、著作権保護のため iTunes へ楽曲提供をやめるレーベルもあったが、視聴者側 からしてみれば、音楽再生機器などが壊れたりしても、楽曲をまたダウンロードする手 間はなくなるため、PC やスマートフォンへ気軽に音楽をダウンロードすることができる ようになったのである 32

4.3 音楽市場との関連性

ここまで音楽配信の視点から違法ダウンロードへの対策について見てきたが、音楽市 場にはどのような影響がでているのだろうか。違法ダウンロードの刑罰化については、 2014 年 5 月に「北海道警察本部サイバー犯罪対策課および北海道手稲警察署は、due お

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よび JASRAC が著作権を管理する楽曲の音楽ファイルを不特定多数の者にダウンロード させていたサイト「にこ☆さうんど♯」の運営者である、29 歳の男性を著作権法違反(公 衆送信権および送信可能化権侵害)の疑いで逮捕」33した例がある。このサイトは動画共 有サイト「ニコニコ動画」上に公開されていた動画を MP3 に変換し、ダウンロードやス トリーム配信を行っており、ニコニコ動画の動画が載っているページの URL を入力する だけで容易に変換やダウンロードができるようになっていた。ちなみに逮捕された容疑 者には、懲役 3 年(執行猶予 4 年)・罰金 500 万円の有罪判決を受けている。この一件に より、似たような営利目的の違法ダウンロードサイトは閉鎖しているため、違法ダウン ロードの抑制には繋がっているといえる。 ここまで、国内で違法ダウンロードの抑制を行ったり、視聴者への音楽配信楽曲購入 のデメリットを減らしたりと、音楽市場拡大へ向けて施策しているものの、前章で見た 通り、決して音楽市場は拡大していない。むしろ、減少しつつある。日本国民の音楽離 れが始まってきているのではないか。

5.日本国民の音楽離れ

5.1 音楽に対する日本国民の反応

2016 年 3 月に一般社団法人日本レコード協会による、2015 年度音楽メディアユーザー 実態調査が発表された。この実態調査ではおよそ 2000 人の 12~69 歳までの男女にイン ターネット上でアンケートをとったもので、日本国民が音楽に対してどう思っているの かを明らかにしている。 図 10 を見てみると分かる通り、「有料聴取層」の減少傾向は変わっていない。新しい 曲を意識的に聴いていない「無料聴取層(既知楽曲のみ)」、「無関心層」の増加傾向がみ られる。また、年代別では、図 11 は 2013 年度、図 12 は 2015 年度のものであるが、20 〜40 代を中心に有料聴取層が減少した。図 11 で 50 代は無関心層が縮小傾向にあるが、 図 12 になると無関心層も大幅に増加している。つまり、有料で音楽を聞く人の減少とと もに、意識的に新しい曲を聞く人も減少しており、全体的に音楽を聞こうとしている人 が少ないといえる。そして、図 13 は図 11 の中の有料聴取層のうち、購入が減ったと答 えた人の購入数が減った理由が表されている。「現在保有している音楽で満足」(45.9%)、 「金銭的な余裕が減った」(39.4%)が特に増加した。また、スマホ利用者増を背景に、 「動画配信サイト・アプリで満足している」(14.6%)という理由も大幅に増加している。 第 2 章で見た定額制音楽配信サービスを利用しない人の理由とほぼ同じであることが分 かる。そして、図 14 は図 11 の無料聴取層のうち、なぜ購入しなかったのかという理由 が表されている。その理由としては、「現在保有している音楽で満足」(39.0%)が前年 より大幅に増加した。また、前年最も高かった「(YouTube 等を使って)購入しなくても 好きな時に視聴できたため非購入」も 34.2%と依然根強い結果となった。これらの図と 理由から、「わざわざ買うほど聞きたい新しい音楽がない」ということがわかる 34

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図 10 音楽との関わり方(全体)

一般社団法人日本レコード協会[2014][2016] を基に著者作成

図 11 聴取層別セグメント構成 出典:一般社団法人日本レコード協会[2014]35

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図 12 音楽との関わり方(年代別構成比) 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]36

図 13 有料聴取層の購入減少理由 出典:一般社団法人日本レコード協会[2014]37

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図 14 無料聴取層の非購入理由 出典:一般社団法人日本レコード協会[2014]38

5.2 日本の音楽市場の上位

第 3 章や前節から、日本人の音楽離れが分かってきたが、そのような日本の音楽市場 でアーティストたちは人々に音楽を聞いてもらえるのか。 そもそも日本ではどのような曲が売れているのか。表 4 はオリコンが発表した 2015 年の年間シングルセールスランキングである。1~3 位を AKB48、4、6~8 を乃木坂 46 と 9 位の嵐以外、AKB48 グループの独占状態であり、さらには 27 位まで、AKB48 グル ープ、ジャニーズ、EXILE TRIBE の 3 つの大きな派閥で占められており、そのような派 閥に属していないアーティストの見る影もない39

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表 4 オリコン 2015 年ランキング シングルセールス部門 順

位 売上枚数(万枚) タイトル アーティスト

1 178.3 僕たちは戦わない AKB48

2 132.8 ハロウィン・ナイト AKB48 3 104.5 Green Flash AKB48 4 90.5 唇に Be My Baby 乃木坂 46 5 70.2 コケティッシュ渋滞中 SKE48 6 68.7 今、話したい誰かがいる 乃木坂 46 7 67.8 太陽ノック 乃木坂 46 8 62.1 命は美しい 乃木坂 46 9 57.2 青空の下、キミのとなり 嵐

10 53.1 Don’t look back! NMB48 11 Sakura 嵐 21 前向きスクリーム! 関ジャニ∞ 12 愛を叫べ 嵐 22 しぇからしか! HKT48 feat.氣志團

13 Thank you じゃん! Kis-My-Ft2 23 O.R.I.O.N.

三代目 J Soul Brothers from EXILE

TRIBE 14 前のめり SKE48 24 Summer Madness

三代目 J Soul Brothers from EXILE

TRIBE 15 starting over 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE 25 キミアトラクション Hey!Say!JUMP 16 12 月のカンガルー SKE48 26 コップの中の木漏れ日 ラブ・クレッシェンド 17 ドリアン少年 NMB48 27 AAO Kis-My-Ft2 18 Must be now NMB48 28 Hello,world!/コロニー BUMP OF CHICKEN 19 Kiss 魂 Kis-My-Ft2 29 最後もやっぱり君 Kis-My-Ft2 20 12 秒 HKT48 30 Dead or Alive KAT-TUN

出典:オリコン 2015 年ランキング 40より著者作成

表 5 は 2015 年 12 月、Apple が 2015 年度の iTunes 年間トップソングの結果を 20 位ま で発表した結果である。iTunes ではジャニーズの曲は配信されないことや、AKB48 グル ープのシングルセールスの強みである、握手会抽選券や選抜総選挙の投票権が付いてい ないことから、オリコンとは全く異なる結果となった 41

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表 5 2015 年度 iTunes 年間トップソング

順位 タイトル アーティスト

1 Dragon Night SEKAI NO OWARI

2 R.Y.U.S.E.I. 三代目 J Soul Brothers

3 Shake It Off Taylor Swift

4 I Really Like You Carly Rae Jepsen

5 シュガーソングとビターステップ UNISON SQUARE GARDEN

6 君がくれた夏 家入レオ 7 もしも運命の人がいるのなら 西野カナ 8 私以外私じゃないの ゲスの極み乙女。 9 ひまわりの約束 秦基博 10 トリセツ 西野カナ 11 あなたに恋をしてみました chay

12 SEE YOU AGAIN feat.CHARLIE PUTH WIZ KHALIFA

13 ヒロイン back number 14 あったかいんだからぁ クマムシ 15 Beautiful Superfly 16 Darling 西野カナ 17 長く短い祭 椎名林檎 18 にじいろ 絢香

19 Summer Madness 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE

20 夜空。feat.ハジ→ miwa

出典:iTunes store BEST OF 2015 トップセラーソング42より著者作成

表 4、表 5 から国内で売れている CD には偏りがあるが、一曲ずつバラバラで売られて いる音楽配信だと J-POP から洋楽まで様々なアーティストの曲が売れているのが分かっ た。つまり、アーティスト側から見ても、CD でランキング入りするほど売るのは大変 なことなのだということがわかる。

5.3 現在の音楽業界の状況と取り組み

2015 年 7 月 7 日に NHK で放送された、『クローズアップ現代「あなたは音楽をどう愛 す?~新・配信ビジネスの衝撃~」』に出演した音楽ジャーナリストのピーター・バラカ ン氏は、オリコンのシングルランキングの結果を受け、「昔だったら、ラジオを聴いてれ ば、もっといろんな音楽が耳に入ったと思う。テレビでも音楽番組がたくさんあった。 しかしそういうものがだんだんなくなってきたのだと思う。それから、レコード会社が 発売する音楽も、昔もっといろんなものがあった。今でもいろいろあるが、宣伝に力を 入れるのはアイドルばかりになっている。すると、みんなが受ける印象は今回のオリコ ンシングルランキングの結果になってしまう。実はもっともっといろんなタイプの音楽 がたくさん出てきている。」43と述べ、音楽に多様性がなくなったのではなく、音楽を視 聴者に伝えるメディア側の多様性が欠けていることが今、音楽業界の直面している状況 であると述べた。

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また、音楽業界の危機に対して行われている様々な取り組みも紹介された。例えば、 インディーズバンドなどは、CD の売上のみでは音楽活動を維持することができないた め、自らの写真を売ることで売り上げを出し、音楽活動を維持している。この写真が、 アーティストの音楽活動を支えつつ、ファンとの結びつきをより強くしていることにな る 44 ほかにも、ピースオブケイクの CEO である加藤氏は、ネット上でアーティストとファ ンを結びつけるための新たな仕組みを作成した。このサイトを利用して、アーティスト は自らの作品を公開し、販売することができる。さらに、ファン側も直接アーティスト へ金銭面での支援をすることもできる。この仕組みを利用したことによって、300 人も のファンがネットを通じてでき、年間 10 万円以上支援する人も現れ、バンド活動が維持 されているインディーズバンドもある 45 さらに、坂本龍一や竹内まりやといった大御所のアーティストをプロデュースしてき た、音楽プロデューサーの牧村憲一氏は、新しいアーティストを紹介する 500 円コンサ ートとなるものを始めた。このコンサートは、有名アーティストと一緒にコンサートを することで、より多くの人々に若手アーティストの音楽を届けるという試みである 46 このように、音楽業界に危機感を持った人々の活動を見ると、本当に音楽が聴きたい、 と思うような人はその価値に対してきちんとお金を支払って、音楽を聴こうとするとい うことが分かる。

6.日本国外の音楽産業の現状

6.1 世界の音楽産業

これまで日本国内の音楽市場の現状を見てきたが、世界ではどのようになっているの だろうか。日本レコード協会は 2016 年 6 月に機関誌「The Record」で 2015 年の世界の 音楽産業について明示している。図 15 を見ると分かるように、2009 年から 150 億 US ドルを下回っていた売り上げが 2015 年度は 150 億 US ドルに若干だが増加している。や はり、世界的にも有料音楽配信売り上げが年々増加しており、パッケージ売り上げを上 回る形になった。図 16 は有料音楽配信売り上げのフォーマット別の売り上げ推移である。 シングルトラック、アルバム、その他のダウンロードやモバイルに関しては減少してい るが、有料サブスプリクションやフリーミアムサービス、広告型ストリーミングが増加 しているため、その分をカバーしている形になっている。ちなみにフリーミアムサービ スとは、無料で利用できるサービスに付加価値をつけて、有料に利用させるものである。 世界的に有名な音楽アプリ『Spotify』はフリーミアムサービスで成り立っており、2016 年 9 月にやっと日本上陸を果たした。また、2009 年にはまだなかったシンクロ収入が 2010 年からは増加しており、2015 年には 4 億 US ドルにもなった。シンクロ収入はテレビ広 告、映画、ブランドとの提携、ビデオゲームの利用など、顧客開拓や収益強化の有効な 手段として音楽を活用する場合の収入のことである。CD パッケージの売り上げが下が

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っても、シンクロなどの権利収入が上がれば、音楽業界全体としては、売り上げが増加 することになる。図 17 は国別の音楽売り上げのランキングである。アメリカが世界最大 の音楽市場であり、最大の収入源は有料音楽配信であることがわかる。また、日本は世 界で 2 位であり、アメリカと比べると有料音楽配信による収入シェアはまだまだであり、 むしろパッケージのほうが最大の収入源であるといえる。CD が売れないといっても世 界的にみると日本は売れているほうであり、世界の音楽市場の半分はアメリカと日本で 賄っているといっても過言ではない。 図 15 世界音楽売り上げの推移(金額) 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]47 表 6 世界有料音楽配信売上(フォーマット別金額)推移 (単位:百万USドル) 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]48 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 シングルトラック 2,164 2,181 2,013 1,793 1,589 アルバム 1,287 1,483 1,587 1,514 1,385 他ダウンロード 86 63 54 47 27 モバイル 482 358 233 186 167 有料サブスプリクション・ フリーミアムサービス 404 660 1,035 1,419 2,254 広告型ストリーミング 253 365 410 569 634 その他 229 342 475 576 676 全世界 4,906 5,453 5,806 6,107 6,731

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表 7 2015 年音楽売り上げトップ 20(国別) 国名 即価格ベース 収入シェア US ドル (百万) 現地通貨 (百万) 対前年 比 パッケー ジ売上 有料音楽 配信売上 演奏権 収入 シン クロ 収入 1 アメリカ 4997.3 4997.3 1.0% 23% 66% 7% 4% 2 日本 2446.7 296223.7 3.0% 75% 18% 6% 1% 3 イギリス 1354.0 880.1 0.6% 35% 44% 19% 2% 4 ドイツ 1309.9 1178.9 -0.3% 60% 25% 14% 1% 5 フランス 809.1 728.2 -2.2% 42% 25% 29% 4% 6 オーストラリア 342.8 455.9 6.1% 29% 57% 12% 2% 7 カナダ 335.8 429.8 8.3% 35% 52% 11% 2% 8 韓国 281.3 318882.0 12.4% 31% 62% 7% 0% 9 イタリア 265.5 238.9 25.1% 44% 31% 22% 3% 10 ブラジル 247.0 825.1 -1.8% 25% 38% 37% 0% 11 オランダ 222.6 200.3 10.6% 32% 36% 31% 1% 12 スウェーデン 181.9 1535.6 7.6% 12% 68% 19% 1% 13 スペイン 179.2 161.2 10.0% 37% 38% 24% 1% 14 中国 169.7 1059.1 63.8% 10% 89% 0% 1% 15 アルゼンチン 141.6 1309.5 34.8% 21% 20% 58% 1% 16 メキシコ 126.4 2005.5 14.4% 34% 60% 5% 1% 17 ベルギー 116.1 104.5 7.5% 41% 25% 34% 0% 18 スイス 114.3 109.8 -2.7% 42% 37% 21% 0% 19 オーストリア 106.0 95.4 -3.0% 56% 21% 23% 1% 20 ノルウェー 105.9 855.0 2.6% 13% 64% 23% 0% 出典:一般社団法人日本レコード協会[2016]49

6.2 ナップスターによって音楽産業に変化は起きたか

ナップスターとは、1999 年 1 月にアメリカのナップスター社から発表された、インタ ーネットを通じて個人間で音楽のデータ交換を行うアプリケーションソフトのことであ る。また、2003 年 10 月には同社が同名の音楽配信サービスを開始している。 このナップスターは当時ノース・イースタン大学の学生だったショーン・ファニング 氏が、大学構内のネットワークで友人と MP3 などの音楽ファイルを共有する目的で制作 したとされ、1999 年 1 月に世間に発表された。このナップスターは P2P(ピア・トゥ・ ピア)の技術で作成されており、クライアントがあればそのネットワーク内で誰でもフ ァイル交換に参加することが可能となっていた。ナップスターが登場したことによって、 学生たちは音楽の共有が容易くできるようになり、そのネットワーク上にあるものを自 由に手に入れられるようになった。ノース・イースタン大学だけではなく、ほかの大学 でも使われるようになり、あまりの人気で、当時まだ細かったネットワークの回線を圧 迫し、ナップスターが禁止される大学も出てくるようになった。そんな中、ショーン・ ファニング氏はナップスター社を設立し、大学以外にもナップスターは広まっていくこ ととなる。 しかし、ナップスターで流通していた音楽ファイルのほとんどは著作権者の許可を得 ていない違法なものであったため、全米レコード協会(RIAA)やレコード会社は、著作

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権侵害を理由に連邦地裁に提訴をした。また、アーティストのメタリカも 2000 年 4 月、 ナップスター社および大学 3 校を相手に著作権侵害で訴えを起こした。ナップスター利 用者やファンから反発が起こると同時に、メタリカを指示する立場のファンやアーティ ストも現れ、レコード会社などの企業や、団体、政府までをまきこんだ「ナップスター 論争」が始まった。当時はアメリカでもまだインターネットは発展初期段階で、様々な ものに対して前例がなく、この裁判もインターネット上での著作権訴訟の先駆けとなっ た。論争が起こったのも音楽ファイルの著作権問題だけではなく、著作権保護を理由に して、自由なインターネット空間に対して政治的な介入が行われる恐れを抱いていた人 が多かったと思われる。 そして 2000 年 7 月、ナップスターは全米レコード工業会(RIAA)に著作権つき楽曲デ ータの発見と排除、つまり事実上の運営差し止めを求め提訴をされる。そして原告の請 求通りの仮決定が出され、事実上ナップスターは運営が出来なくなった。しかし、ナッ プスター社は決定効力が発生するのを留保するよう申し立てた。すると、連邦控訴裁判 所がサイトの継続を認める判決を下した。ちなみにメタリカとの訴訟においては、同時 期に和解が成立している。しかし、上の留保はあくまで一時的なもので、そのままでの 存続を認めたものではなかったのである。ナップスターはサービスを存続するための提 案を行ったが、全米レコード工業会側はすべてを拒否した。そしてナップスターのサー ビスも、2001 年 3 月には中止されてしまった 50 ナップスターの出現により、人々は「音楽を買わなくてもインターネット経由で聞 くことができる」という夢のようなサービスを味わってしまった。それを必死にレコー ド会社とアーティストが阻止し、判例を作ったことによって、後から日本でも P2P を使 ったファイル交換サービス「ファイルローグ」や「ウィニー」が出てきたが、いずれも サービスの停止がされている。

6.3 無料音楽アプリに違法性はあるのか

スマートフォンでアプリを落とすとしたら、iPhone なら App Store、android なら Google Play から見つけてくるのが基本である。音楽アプリもたくさんあり、第 2 章で述べた定 額制音楽配信サービスもアプリで展開されている。その音楽アプリの中で『無料』とい う言葉を使っているアプリがたくさんある。無料音楽アプリの中には、YouTube にアー ティストやレーベルが公式にあげた曲をストリーミング再生し、YouTube よりも使いや すく聞きやすくしただけのものもあれば、YouTube にアップされていない出所のわから ない曲が聞けるアプリもある。YouTube にアップされている曲は権利を持つ者が公式に アップしており、それをストリーミング形式で再生しているだけのものなので違法性が ないのは確かだが、それ以外の曲を再生できるアプリはどうなのだろうか。

App Store の無料ランキングを(2016 年 11 月 30 日 15:00 現在)見てみると上位に「Music FM 全て無料で聴き放題!」という音楽アプリがある。こちらは YouTube などにあがって ない曲もすべて無料で聞き放題、リクエストもすれば応えてくれるという夢のようなア

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プリである。このアプリは本来であれば音楽をアップロードして提供している時点で違 法アップロードとなり、刑罰の対象になるはずである。しかし、根強くランキング内に いるのである。これらの無料動画配信サイトからのストリーミング再生を行わないアプ リは、発表したり、App Store から消されたり、新たなアプリを発表したりを繰り返し、 まるでイタチごっこのようになっている。 ではなぜこれらのアプリは徹底的に罰せられないのだろうか。その理由は、これらの アプリは、あくまでもサーバーにアップロードされている曲を利用者に代わって検索し、 ストリーミング再生をしてくれているだけだからである。そのため、アプリ本体に違法 性はなくなってしまうのである。それでも違法にデータがアップロードされているサー バーにアクセスすることを助長してくるアプリについては日本レコード協会が平成 28 年度の事業計画書で、アプリの提供者に対する注意喚起や警告活動、アプリ削除要請、 違法ファイルへのリンク切除要請、ファイル削除要請などのほか、ストレージサービス 事業者に対する注意喚起、警告を継続実施するとした 51 また、そのアプリが接続し、音楽を提供している国外サイトに関しては、国際レコー ド産業連盟(IFPI)との連携により削除要請の対象を拡大するとともに、中国サイトに ついては、サイト運営事業者への直接訪問による協力関係の強化や「コンテンツ海外流 通促進機構」(CODA)等関係団体との連携による対策強化を継続して実施するとあった。 つまり、無料音楽アプリは、日本より著作権などの法律が厳しくない国外、主に中国の サイトにアップロードされた音楽を探し出し、利用者に提供しているものなのである。 そのため、アプリ自体には違法性はなく、実際に音楽がアップロードされていることが 違法なのである。さらに、音楽がアップロードされたサイトは、レーベルと契約を結び、 多少だが使用料も払うことによって、合法であるかのように見せているが、日本のレー ベルとは一切契約を結んでおらず、実際にはアップロードが違法なため、サイトの運営 事業者に削除要請をすることによって、対策をしていくことになった。 このように、日本レコード協会は日本のアーティストの著作権を守るために海外に渡 って直接交渉をしているのだが、日本国内の利用者は、アプリのレビューなどに「曲が なくなった。」「無料でたくさんの曲がある。」などと書き込み、アーティストのことや著 作権については全く考えていないのがわかる。逆に、定額制音楽配信サービスのアプリ に対しては、「(無料の試用期間が終わってしまって)なぜ無料じゃないのか。」など、 不満の声が投稿されており、音楽を聴くことに対して対価を支払う心意気が乏しくなっ ていた。

7.結論

音楽媒体の歴史から、音楽市場の現状まで見てきたが、今の音楽市場のままだと CD が廃れて、音楽配信に完全に移行する兆しも見えない。だからといって CD が復活する わけでもないだろう。人々が CD を買わなくなったうえに、お金を払ってまでして、音 楽を聞くこと自体を意識的に行っておらず、音楽市場自体が縮小してしまっているから

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である。 また、違法ダウンロードの刑罰化による音楽市場の縮小抑止はされているかというと、 違法ダウンロードの抑制はできていると思われるが、音楽市場の縮小は止まっていない。 いくら違法ダウンロードが抑制されてもその網を掻い潜ってダウンロードする人がいた り、そもそもそれが違法行為であるという考えのない人が多かったり、それ以前に規制 されたりすることによって自分から意識的に音楽を聞こうとする意欲が損なわれてしま っているといえる。現在の人々の音楽の聞き方に沿って、より音楽を自ら意識的に聞い てもらう方法を見つけ出さなければならない。 また、アーティスト側の飽和状態も問題の要因であると考えられる。レコード会社が 行うアーティストの売り出し方、大御所が多いため新人の売れにくさ、音楽面以外での 付加価値と消費者のニーズの一致など、CD が売れないことや曲が聞かれないことへの 対策などが弱いように感じられる。しかし、現代社会の日本人は『無料』という言葉を 重要視しすぎている。アーティストやレコード会社がどんなに消費者に向けて曲を作っ たり、パフォーマンスをしたりしてもお金にならなければ元も子もない。とくに、音楽 業界の場合、CD を 1 枚買うとアーティストには 110 円入り、ダウンロードの場合 16 円 入ることになる。アーティストに入るお金はそれっきりになる。これが正規の有料で聞 くストリーミングだと 1 回聞くごとに 0.16 円がアーティストに入る。10 回繰り返し聞か れればその 10 倍、100 回だとその 100 倍入る 52。繰り返し聞けば聞くほどアーティスト にお金が入る。消費者もアーティストにきちんと対価を支払って、音楽を聞くことがで きる。今まで音楽業界に入っても売れなければ損ばかりだと言われてきたが、CD を 1 枚売るということから、曲を 1 回聞いてもらうということでお金が入るのである。お互 いに対価を支払うハードルは下がり、ストリーミングによって音楽市場の可能性はまだ 発展の余地がある。しかし、そのストリーミングにすらお金を払うことをためらう人が たくさんいる。そもそも音楽業界に限らず、物やサービスにお金を払うことにためらい のない社会ができなければ音楽市場の復活は難しいと思われる。

おわりに

秋元康のプロデュースした AKB48 による CD を売る戦略方法はシングル CD の購入数 増加には貢献していたが、それはあくまでも音楽 CD より握手券やイベント参加券を購 入しているようなものである。実際、中古 CD ショップには AKB グループのシングル CD が山ほど売られている。それならば CD を作るコストを考えても普通にライブやイベ ントのチケットを売ってもよいのではないか。また、CD なら買えるが、仕事やお金の 関係でライブやイベントに行けない人も少なからずいるため、CD に付加価値を与える ほうが、効率が良いのかもしれない。 また、現在日本の主要な音楽ジャンルが J-POP や洋楽、K-POP、アニメソング、ボー カロイドなど大きく分かれてしまい、誰もが知っていて、誰もがその曲を聞こうとして いる、という曲がほとんどなく、今まであった、「誰もが知っている曲=ミリオンセラー」

図 1  サービスの認知率(左)  サービスの利用率(右)  出典:株式会社クロス・マーケティング 10 図 2 の同サービス利用意向の有無では「ぜひとも利用してみたい」 (1.4%) 、 「機会が あれば利用してみたい」 (10.3%)となり、利用意向有りの合計でも 11.7%と積極的な利 用意向は見られなかった。反して、 「全く利用してみたいと思わない」 (41.4%) 、 「利用 してみたいと思わない」 (24.9%)となり、6 割以上の人に利用意向が無い状況である。  図 2 サービス利用意向の有無
図 3  サービス利用意向の有りの理由  出典:株式会社クロス・マーケティング 12 図 4 サービス利用意向の無しの理由 出典:株式会社クロス・マーケティング 13 これだけの人が定額制音楽配信サービスを知っていながら、利用しなかったり、利用 しようと思わなかったりする理由がほぼ金銭面でありながら、音楽自体は聞きたいと思 っていることがうかがえる。  2015 年ではこのような結果だったが、株式会社インプレスが 2016 年 7 月 25 日から 7 月 28 日までに 20,868 人に対して定額制音楽
図 8  日本国内の過去 10 年間の CD アルバム生産実績  出典:一般社団法人日本レコード協会[ 2016 ] 23 3.2 音楽配信売上  また、図 9 の有料音楽配信売上をみてみると、2015 年の累計ダウンロード数は対前年 比 91%にあたる 1 億 7811 万ダウンロードとなっており、徐々に減少しつつあるのが分 かる 24 。  図 9  日本国内の過去 5 年間の有料音楽配信売上  出典:一般社団法人日本レコード協会[2016] 25 表 2 から金額は前年比 108%の 470 億 73
表 3  2014 年オーディオレコードジャンル別カタログ数  (単位:タイトル)  ジャンル  8cmCD  12cmCD  CD 計  アナ ログ  カセット シング 合計  ル  アルバム  シン グル  その他  邦 盤  演歌  0  646  359  1,005  0  193  27  1,225 ポップス・歌謡曲 0 2,656 4,088 6,744 163 5 5 6,917 軽音楽 0 24 113 137 0 0 0 137 サウンドトラック 0 2 129 131 0 0 1 1
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参照

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