生命薬学講座 分子生物学分野 担当:荒牧弘範 (H24.4.26)
第一薬科大学
3年生
第一薬科大学
3年生
『分子生物学』
第2回 朝日新聞 4/18/2011.遺伝子とは何か
(p3)
A 遺伝子を担う分子 (p3)
SBO `親から子へ受け継がれる形質(遺伝情報)の伝達を担う 分子である遺伝子、その本体である核酸(DNA)の発 見・同定の歴史を学ぶ。ポイント
` 遺伝子の本体はDNAである。 ` DNAは、リン酸・糖・塩基からなるヌクレオチドを基本単 位とする。①細胞の構造と遺伝子を構成する物質
遺伝子DNAを構成する核酸を含んだ成分の発見 ` 1869年にミーシャーによって膿の中の細胞の核の中か ら発見され、ヌクレインと名付けられた。 ` ヌクレインは、当初、リン酸とタンパク質のみを含んでい ると見なされていた。 ` 精製により純化された結果、5種類の有機塩基(アデニン 、ウラシル、グアニン、シトシン、チミン)とリン酸を含む新 規の酸性物質で有ることが分かり、この新規成分は核酸 と命名された。 ` その後、核酸は、塩基とリン酸の他に糖 (D-リボース、2-デオキシ-D-リボース)を含んでいることも明らかになった 。 遺伝子DNAを構成する核酸を含んだ成分の発見 `その後の更なる化学的な分析により、核酸は、塩基・リ ン酸・糖(五炭糖)から構成される(モノ)ヌクレオチド(p8) を基本構成単位としていることが明らかになった。 遺伝子DNAを構成する核酸を含んだ成分の発見 ` このようにして遺伝情報の伝達と発現に関与しているデ オキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)が発見された 。
②遺伝子の本体の発見
(p4)
`生物の形質が親から子孫に受け継がれている現象であ る遺伝は、メンデルを初めとする科学者により科学的に 明らかにされていた(1865年)。 ` 優性の法則 ` 分離の法則 ` 独立の法則優劣の法則
黄オス(AA) + 白メス(aa) ↓ ↓ 精子(A) 卵(a) ↓ 子供(Aa) この特徴の違う遺伝子を二つ受けた子供の翅の色は どうなるのでしょう?分離の法則
F
1 黄オス(Aa) + 黄メス(Aa) ↓ ↓精子(A)又は 精子(a) 卵(A)又は 卵(a)
↓
黄メス(AA) +黄メス(Aa/aA)+白メス(aa)
F
2第一代で現れなかった特徴が第二代で現れる事を 「分離の法則」と呼びます。
独立の法則
` 上の例以外に、例えば翅の形が変わる遺伝子があると します。 ` すなわち遺伝子型Aやaと違う、遺伝型Bとbがあり、 BB/Bb/bBが普通の翅の形で、bbは翅の形がギザギザに なるとします(あくまでも空想の例ですが)。 ` この様に違う遺伝型がそれぞれ独立して子孫に遺伝す ることを「独立の法則」といいます。独立の法則
この場合、産まれてくる子供は1. 黄色くて普通の翅(AABB, AaBB, aABB, AaBb, aABb, AabB, aAbBなど)
2. 黄色くてギザギザの翅(AAbb, Aabb, aAbb) 3. 白くて普通の翅(aaBa, aabB, aaBB) 4. 白くてギザギザの翅(aabb) の4種類が見られます。
②遺伝子の本体の発見
(p4)
` 染色体がタンパク質とDNAから成っていることも明らか にされていた。 ` 当時は20種類のアミノ酸からなるタンパク質の方が、4 種類しかないヌクレオチドから成る核酸よりも遺伝子の 本体として相応しいと考えられていた。 ` グリフィスらは、莢膜をもつ病原性のS型と莢膜をもたな い非病原性のR型の2種類の肺炎双球菌を用いて種々 の実験を行い、菌間で病原性の形質転換が起こること 発見した(図1・3)。②遺伝子の本体の発見
(p5)
グリフィスは、肺炎双球菌を使って形質転換因子が あることを示した。 ` 病原性のなかったR型が、死んだS型菌と混ぜることに よって、病原性が現れ、S型菌に変わっていた。 ` 何らかの因子が、病原性(およびコロニーの形と莢膜の あるなし)という形質を転換させた。 ` 因子の本体は、わからなかった。 エーブリーは、形質転換因子が何かを求めるため、 分解実験を行った。分解実験結果
` この抽出物をRNA分解酵素、タンパク質分解酵素や糖 質分解酵素で処理しても形質転換能に変化はなく、抽出 物をDNA分解酵素で処理した場合にのみにその形質転 換能が失われることを見いだした。 ` エーブリーの実験は、形質転換因子の本体がDNAであ ることを示している。 ` しかし、4種類しかないヌクレオチドからなるDNAが遺伝 子だとは信じられなかった。 ` この実験結果では、当時はタンパク質が遺伝子であると 強く信じていた当時の人々を説得するには不十分であり、 実験系へのタンパク質の混入を疑う科学者が多かった。 `ハーシーとチェイスが大腸菌に感染するウイルス(バク テリオファージ)の1種であるT2ファージを用いて、ファー ジの構成成分であるタンパク質とDNAのどちらがファー ジの複製に必要であるか、すなわち、どちらが遺伝物質 であるかを証明した。 `取り付いたバクテリオファージが 細菌に何を注入するかを確かめ る実験を行った。ハーシェイ・チェイスの実験
` 彼らは、硫黄(S)原子が ファージのタンパク質にの みに含まれ、リン(P)が DNAにのみ含まれている ことを利用した。 ` 放射性同位元素の35Sま たは32Pを含んだ培地で培 養した大腸菌に感染させ て35S標識T2ファージ(タン パク質を標識)と32P標識 T2ファージ(DNAを標識) を得た。 生化学分野の研究に使用されている放射性核種の 中では、エネルギーの高いβ線を放出 35S 32P遺伝子の本体はDNAだという決定的な証拠が
得られた。
`これらのファージを別々に未標識の大腸菌に感染させ一 定時間培養した後、ブレンダーで吸着したファージを大 腸菌から離し、遠心分離して上清と沈殿の放射能を調べ た。(図1-5) `その結果、32PでDNAを標識したファージを感染させた大 腸菌の場合にのみ、菌を含む沈殿に放射能を検出する ことができた。 `すなわち、ファージのDNAのみが菌体内に取り込まれる ことが分かった。よって、T2ファージはタンパク質ででき た殻ではなく、DNAを大腸菌体内に注入して自身を複製 することが分かった。こうしてDNAが遺伝子の本体であ ることが証明された。②遺伝子の本体の発見
(p4)
` 核酸(ヌクレイン)の発見から、核酸(DNA)が遺伝子の 本体であることが証明されるのに約80年を要した。 バイテクコミュニケーションハウスより バイテクコミュニケーションハウスより バイテクコミュニケーションハウスより バイテクコミュニケーションハウスより今日の誕生花 シャクナゲ(石楠花)
警 戒 心 を も てB 核酸 (6)
SBO ` DNAやRNAを構成している塩基、ヌクレオシドおよびヌ クレオチドの構造とその化学的な特徴を理解する。SBO
`生命のプログラムである遺伝子を理解するために、核酸 の構造、機能および代謝に関する基本的知識を修得す る。 `核酸塩基の構造を書き、水素結合を形成する位置を示 すことができる。ポイント
` 核酸を構成する塩基には、プリン塩基とピリミジン塩基 がある。 ` 塩基に五炭糖がN-グリコシド結合したものをヌクレオシド という。 ` ヌクレオシドにリン酸が結合したものをヌクレオチドという。 ` DNAやRNAは、ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で 連結したポリヌクレオチドである。①核酸塩基(p7)
`核酸を構成する塩基は、その母核から ` プリン塩基 ` ピリミジン塩基 `プリン塩基 ` アデニン、グアニン ` DNAとRNAで共通である。 `ピリミジン塩基 ` シトシン、チミン、ウラシル ` DNAにはシトシンとチミン ` RNAにはシトシンとウラシル①核酸塩基
②ヌクレオシド
` ヌクレオシドは、塩基にD-リボースあるいはデオキ シD-リボースがN-グリコ シド結合したものである。 `糖がD-リボースの場合、 アデノシン、グアノシン、 シチジン、ウリジンがある 。 `糖が2-デオキシD-リボー スの場合は、デオキシを つけて、デオキシアデノシ ンのように表す。②ヌクレオシド
` 例外として、チミンには、 2-デオキシD-リボースの みが結合しているので、 ヌクレオシドはそのままチ ミジンと表す。③ヌクレオチド
`ヌクレオチドは、ヌクレオ シドにリン酸が結合したも のをいう。 `例えば、アデノシンのリボ ースの5’の位置にリン酸 がものをアデノシン5’-モノ リン酸と表す。また、5’-ア デニル酸と表すこともある 。③ヌクレオチド
` このヌクレオチドのリン酸 が糖の3’と5’位の炭素間 にジエステル結合を形成 し、連結したものがポリヌ クレオチドである。 ` 糖がリボースのヌクレオ チドが連結したのがRNA 、デオキシリボースのヌク レオチドが連結したのが DNAであるポイント
`核酸を構成する塩基には、プリン塩基とピリミジン塩基 がある。 `塩基に五炭糖がN-グリコシド結合したものをヌクレオシド という。 `ヌクレオシドにリン酸が結合したものをヌクレオチドという。 `DNAやRNAは、ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で 連結したポリヌクレオチドである。C DNA鎖とRNA鎖 (p8)
SBO ` DNAの構造について説明できる。 ` 核酸塩基の構造を書き、水素結合を形成する位置を示 すことができる。 ` RNAの構造について説明できる。 ` DNA鎖とRNA鎖の類似点と相違点を説明できる。ポイント
` DNAは二本鎖でらせん構造をとる(二重らせん構 造 ) 。 ` DNA二本鎖の塩基間では、アデニンとチミン(A-T)、グ アニンとシトシン(G-C)が塩基対を形成している(相補 的結合) 。 ` DNAにおける塩基の配列順序は、遺伝情報として一 次構造を指定している。 ` RNA鎖は、基本的に一本鎖であるが部分的に二本鎖 を形成する(p54)。 ①DNAの構造 a DNAの二重らせんモデル ` DNA研究が始まった当初、DNAに含まれる4種類の塩 基の比は等しく、DNAはアデニン、グアニン、シトシン、 チミンの各々の塩基からなるデオキシモノヌクレオチドが 1つずつ結合したテトラマーの集まりと考えられていた。 ` 1949年、シャルガフは種々の生物に含まれるDNAの塩 基組成を調べた結果、4種類の塩基の比は等しくなく、ア デニンとチミン、グアニンとシトシンの量がそれぞれ等し いことを発見した。(シャルガフの法則:表1-1)①DNAの構造
a DNAの二重らせんモデル
①DNAの構造 a DNAの二重らせんモデル ` シャルガフはDNAの塩基の組成を調べ、4種の塩基 の比は等しくないが、AとTおよびGとCの量が等しい と言う関係があることを見つける。 ` プリン塩基(A+G)=ピリミジン塩基(T+C)a DNAの二重らせんモデル
`ウィルキンスとフランクリンらによって撮影されたDNAの X線回折像の結果より、DNAがらせん構造をとっている ことが予想されていた。a DNAの二重らせんモデル
` これらの知見をもとに、1953年、ワトソンとクリックは、 DNAの二重らせんモデルを作り上げ、イギリスの科学雑 誌『Nature』に発表した。 ワトソンとクリックの出会い ワトソンとクリックが発表したDNA二重らせん 構造の特徴 1. らせんは右巻きである(らせんが右上がりに巻くのを右 巻きと定義)。 ワトソンとクリックが発表したDNA二重らせん 構造の特徴 2. 二本のDNA鎖はお互いにねじれあって、二重らせんを 形成している。この場合、塩基は内側にリン酸とデオキ シD-リボース部分は外側にある。 ワトソンとクリックが発表したDNA二重らせん 構造の特徴 3. 4種類の塩基はデオキシ-D -リボースとリン酸から なるらせんの内側に、らせん軸にほぼ垂直となるよう に、らせん階段の板のように埋め込まれている。ワトソンとクリックが発表した
DNA二重らせん構造の特徴
4. らせんの直径は2nmである。らせんは10塩基対で1回 転し、その距離は3.4nmである。塩基対は、0.34nm間 隔で積み重なっている。ワトソンとクリックが発表したDNA二重らせん 構造の特徴 5. 二本の鎖はそれぞれ逆方向に向いている。1本の鎖 が上向き(5’→3’)なら、もう一方の鎖は下向き(3’→5’)に 並んでいる。 ワトソンとクリックが発表したDNA二重らせん 構造の特徴 6. 二重らせんには、幅の広い主溝(major groove)と幅の 狭い副溝(minor groove)がある。 ワトソンとクリックが発表したDNA二重らせん 構造の特徴 7. 二本鎖の塩基間でアデニンとチミン(A-T)、グアニンと シトシン(G-C)が塩基対を形成して結合(水素結合)し ている。A-T、G-C間の結合は特異的で、他の結合( A-C 、 A-G、C-T、G-T)は起こらない。(相補性) `以上の特徴をもつ二重らせんDNAは、B型DNAと呼ば れている。 `この他、B型と立体構造が少し異なるA型DNAや、らせ んが左巻きのZ型DNAも発見されており、これらは互い に主溝や副溝の深さが異なっている。 `発表された特徴のうち、⑦の相補性(相補的結合)は、2 本鎖DNAが複製される際に、片方の鎖(鋳型鎖)の塩基 配列をもとに、相補的な塩基配列を持つもう一方の鎖を 合成する。 `また、もう片方の鎖の方も同様に合成され、正確にもと の2本鎖DNAが複製される遺伝の仕組みを見事に説明 することを可能にした。