平成21 年(2009 年)8 月 21 日 ~原油価格は世界景気回復に伴い、緩やかに上昇を続ける見込み~ 1.価格動向 7 月は調整色が強 まり、60 ドル割れ その後上昇基調に 転じるも、原油需要 回復観測の後退か ら上値重い展開 原油価格(WTI 期近物)は 7 月以降調整色を強め、足元では上昇基調 に転じているものの、上値が重い展開が続いている(第1 図)。 7 月は、2 日発表の 6 月米雇用統計の悪化を受けて、世界景気回復期待 が後退し、原油価格は66 ドル台へ急落した。その後も米原油在庫動向な どを材料に下落基調をたどり、10 日には 59 ドル台と約 2 ヵ月振りに 60 ドルを割り込んだ。その後、主要国の経済指標や原油在庫統計を材料に 上昇に転じ、8 月に入り 70~71 ドル台まで戻ったものの、14 日には米消 費者信頼感指数の悪化を受けて原油需要回復観測が後退し、67 ドル台と 約2 週間振りの安値となるなど、一進一退のレンジ相場を続けている。 第1 図:原油価格(WTI 期近物、終値)の推移 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4 09/7 (ドル/バレル) (資料)Bloombergより三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 (年/月)
投機筋のポジショ ンは、7 月に買い越 し幅が縮小 持ち高制限の具体 策発表まで、警戒的 な動きが続こう 原油先物市場の投機筋のポジションは、7 月に入り買い越し幅は大きく 縮小したが、8 月に入ると世界景気回復期待の高まりを背景に、再び拡大 している(第2 図)。 7 月に買い越し幅が縮小した背景には、世界景気回復期待がいったん後 退したことのほか、7 月 7 日に米商品先物取引委員会(CFTC)が、原油、 ヒーティングオイル、天然ガス、ガソリン、その他エネルギー商品の先 物取引について持ち高制限を検討すると発表したのを受けて、投機筋が 原油先物市場の持ち高圧縮に動いたためとみられている。 CFTC は、持ち高制限の免除規定の見直しも含めて、7、8 月に消費者 や市場関係者から意見聴取を行なう予定とのことである。米オバマ政権 は金融規制強化に積極的なことから、持ち高制限が実施される可能性が 高い。具体策が発表されるまで、投機筋の警戒的な動きが続くであろう。 第2 図:原油先物の投機筋のポジション -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 07/1 07/7 08/1 08/7 09/1 09/7 (年/月) (先物ネット建玉・ 千枚) 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 (ドル・バレル) ノン・コマーシャルの ネットポジション(左目盛) 原油価格(WTI、右目盛) (注)ノン・コマーシャルとは、原油生産や精製に従事しない業者のこと。1枚=1,000バレル。 (資料)米国商品先物取引委員会、ニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)資料より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 買い越し 売り越し 2.需給動向 4~6 月期の供給超 過幅は拡大 世界の原油需要の 落ち込みは1~3 月 期がボトムの模様 IEA(国際エネルギー機関)によれば、今年 4~6 月期の世界の原油需 給バランスは供給超過となり、その幅は前期から拡大した(第 3 図)。 供給は前期からほぼ横這いだったものの、先進国の原油需要が大きく低 迷したためである。需給バランスが緩んだにもかかわらず、同時期の原 油価格が上昇したのは、投資家の世界景気回復を先取りした動きだった といえる。 需要サイドについては、今年 4~6 月期の世界の原油需要は前年比▲ 3.1%と、前期(同▲3.5%)からマイナス幅は縮小した。IEA によれば、 今年後半もマイナス幅の縮小が続くと見込まれており、世界の原油需要 の落ち込みは、今年1~3 月期がボトムとなる模様だ。 金融危機の影響が深刻な先進国(OECD 諸国)は同▲6.7%と、前期(同
新興国の中でも回 復の姿は二極化 込んだが、欧州(同▲5.8%)は前期(同▲2.7%)からの悪化ペースがよ り大きかった。 新興国(非 OECD 諸国)は、同+1.3%と前期(同▲1.5%)からプラス の伸びに転じた。注目される中国の原油需要が同+7.5%と増加に転じたほ か、その他アジア諸国や中東、アフリカの原油需要が増加した。これら 新興国の原油需要は、今年後半も回復基調が見込まれる一方、東欧や旧 ソ連諸国については低迷が続くとみられており、同じ新興国の中でも、 金融危機の影響の大きさによって回復の姿が異なっている(第4 図)。 第3 図:世界の原油需給バランス 第 4 図:新興国・地域別の原油需要 0 20 40 60 80 100 120 140 03 04 05 06 07 08 09 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 需給バランス(右、逆目盛) 原油価格(左目盛) ( 百 万 b/d) ( ドル/バレル)
(資料)IEA,Oil Market Report より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
( 年) 需要超過 供給超過 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 08Q1 Q2 Q3 Q4 09Q1 Q2 Q3 Q4 (年/四半期) 中東 新興欧州 新興アジア 旧ソ連諸国
(資料)IEA, Oil Market Report より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 IEA見通し (前年比、%) 今年の世界原油需 要は、先進国の大幅 減を受けて、前年比 減少の見込み OPEC の減産姿勢 は概ね維持 2009 年は、日米欧の景気後退を受けて、先進国全体の原油需要は前年 から一段と減少するとみられる。年後半以降、先進国景気は回復に向か うと見込まれるが、原油需要の回復ペースは緩やかなものとなろう。一 方、新興国ついては、景気減速を余儀なくされるものの、原油需要は小 幅ながらも前年比プラスを維持する見込みだ。 世界の原油需要に占める先進国の割合は 5 割強であるため、世界全体 でみれば、前年比減少は避けられない。IEA によれば、世界の原油需要 は前年比▲2.7%と前年(同▲0.3%)から一段と減少する見込みである。 2010 年については、世界景気の回復に伴い、世界の原油需要も緩やかな がら増加に転じよう。 供給サイドについては、これまでの減産決定の順守が加盟国に求めら れるなか、OPEC(石油輸出国機構)11 ヵ国の生産量は減少が続いてき たが、5 月以降は一進一退となっており、7 月の減産順守率は 69%にとど まった。国別にみると、アンゴラとイランの順守率が一桁台と最も低い ものの、他の加盟国は 50%以上を達成しており、概ね減産姿勢は維持さ れている。
OPEC 生産余力は 拡大 9 月 9 日総会では減 産見送りの可能性 高い また、OPEC の生産余力(=生産能力-生産実績)をみると、昨年半 ばには 200 万バレル台まで縮小したが、その後は減産基調にあることか ら足元では 600 万バレル台に拡大しており、今後の世界景気回復時には 増産の対応可能である(第 5 図)。ただし、生産余力の約半分はサウジ アラビアが占めており、その他の加盟国の生産余力は小幅にとどまる。 今後も OPEC の生産動向は、サウジアラビアの影響が大きい展開となろ う。 次回OPEC 総会は 9 月 9 日に予定されている。OPEC 関係者達からは、 現在の価格水準で推移する場合には追加減産の必要はない旨、コメント が相次いでいる。足元の原油需要は依然として低迷しているものの、一 部の新興国では景気底打ちがみられることや、上記の関係者の発言を踏 まえると、9 月 9 日の総会では追加減産が見送られる可能性が高い。 第5 図:OPEC の生産実績と生産余力 20 22 24 26 28 30 32 34 36 02 03 04 05 06 07 08 09 ( 百 万 バレル/日 ) (注)2006年まではOPEC11カ国。
(資料)IEA,Oil Market Report より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 (年) 生産実績 生産余力 07/1 アンゴラ加盟 07/12 エクアドル加盟 09/1よりインドネシア脱退 3.価格の見通し 世界景気回復に伴 い、原油価格は緩や かな上昇基調をた どる見込み 2010 年末にかけては、世界景気の回復を背景に、原油需要は緩やかな 回復に向かうと見込まれ、これに伴い原油価格は緩やかな上昇基調を辿 ると予想される。ただし、先進国の原油在庫は高水準にあることや、世 界景気の回復ペースを踏まえると、2009 年末~2010 年初にかけて四半期 平均でみれば70 ドルとほぼ横這いとなろう。 また、当面は、世界景気動向と商品先物規制の行方を睨みながら、値 動きが大きい展開が予想される。例年秋口にかけて多発するハリケーン の動向も、製油所への被害により供給不安を高めることから、短期的な 価格上昇リスクとして注視する必要があろう。
中期的に価格上昇 リスクが存在 さらに中期的には、新興国におけるモータリゼーションの進展や産油 国の資源ナショナリズムなどによる価格上昇リスクが存在する。モータ リゼーションについては、新興国の自動車燃料需要は着実に増加してお り(第 6 図)、今後も経済成長や所得水準向上を背景に、自動車普及率 の上昇とそれに伴う自動車燃料需要の増加が続くとみられている。OPEC によれば、2010 年から 2030 年にかけての原油需要増加分の約 40%が、 モータリゼーションによる需要増と見込まれている。 また、資源ナショナリズムについては、OPEC の生産量の約 85%を政 府や国営企業が支配しているほか、特に近年ロシアやベネズエラは石油 資源の国家管理を強めている。こうしたいわゆる資源ナショナリズムの 高まりは、開発投資上の最大の障壁であり、供給懸念をもたらすもので ある。このように、需要と供給いずれの面においても、中長期的な価格 上昇リスクが存在することに、留意する必要があろう。 第6 図:自動車燃料需要の推移 10 15 20 25 30 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 (注)自動車燃料は、自動車ガソリンと軽油。 (資料)IEA資料より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 (年) (百万バレル/日) OECD諸国 非OECD諸国 (中村 明、篠原 令子)
WTI先物 前年同期比 (ドル/バレル) (%) 08/1Q 97.8 67.9% 08/2Q 123.8 90.4% 08/3Q 118.2 57.3% 08/4Q 59.1 ▲34.7% 09/1Q 43.3 ▲55.7% 09/2Q 59.8 ▲51.7% 09/3Q 68 ▲42.5% 09/4Q 70 18.5% 10/1Q 70 61.6% 10/2Q 71 18.7% 10/3Q 73 7.4% 10/4Q 75 7.1% WTI先物 前年比 (ドル/バレル) (%) 2008年 99.7 37.8% 2009年 60 ▲39.6% 2010年 72 19.9% (注)期中平均価格 原油価格の見通し 見 通 し 照会先:経済調査室 (次長 佐久間) TEL:03-3240-3204 E-mail: [email protected] 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、金融商品の売買や投資など何らかの行動を 勧誘するものではありません。ご利用に関しては、すべてお客様御自身でご判断下さいますよう、宜し くお願い申し上げます。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当室はそ の正確性を保証するものではありません。内容は予告なしに変更することがありますので、予めご了承 下さい。また、当資料は著作物であり、著作権法により保護されております。全文または一部を転載す る場合は出所を明記してください。また、当資料全文は、弊行ホームページhttp://www.bk.mufg.jpでもご覧 いただけます。