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1. はじめに (1) 平成 27 年 10 月から医療事故調査制度 ( 以下 事故調制度 といいます ) が動き出しました その制度の開始 ( 改正医療法の施行 ) までには厚労省 ( ないし日本医師会 ) が一般的なガイドラインを策定し 信頼の置ける確たる 指針 を臨床現場に示すものと思っていま

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平成27年11月 日

医療事故調査制度の内容とその運用

(厚労省と日本医師会の基本的な考え方に基づいて) 弁護士 福 﨑 博 孝 1.はじめに 2.医療事故調査制度の創設の目的とその背景 (1)中立的な専門機関(新しい事故調査機関とその制度)創設の模索 (2)医療事故の刑事事件化を避けるための解決策 (3)まとめ 3.新しい医療事故調査制度に関する「厚労省と日本医師会の基本的な考え方」 (1)医療事故調査制度の中立性・公正性・客観性・透明性 (2)遺族への制度的な配慮 (3)まとめ 4.新しい医療事故調制度の概要と調査の流れ (1)医療事故調制度の概要 (2)医療事故が発生した場合の調査の流れ ❶【死亡事例発生直後】 ❷【医療事故の判断】 (A)医療に起因する死亡か否か(要件①) (B)死亡が予期されなかったか否か(要件②) (a)要件の概要について (b)「医療事故」判断において留意すべき点 (Ⅰ)インフォームド・コンセントの重要性 (Ⅱ)具体性をもった「死亡等の可能性」の説明と記録 (Ⅲ)医療事故の判断と「過失の有無」-ボタンの掛け違えをしないために- (C)複数の医療機関にまたがって医療を提供した結果の死亡 (D)支援団体等の「当該医療機関に対する支援」 ❸【遺族への制度等の説明】 ❹【調査・支援センターへ報告】 ❺【医療事故調査開始(事故調査)】 ❻【遺族への結果の説明】 ❼【調査・支援センターへの報告】 長崎県医師会医療事故調査ホットライン 090-5022-9255 (医療に関わる死亡事故が発生した時には、ここに電話をすると相談が可能です。)

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1.はじめに (1)平成27年10月から医療事故調査制度(以下「事故調制度」といいます。)が動 き出しました。その制度の開始(改正医療法の施行)までには厚労省(ないし日本医師会) が一般的なガイドラインを策定し、信頼の置ける確たる「指針」を臨床現場に示すものと 思っていましたが、後述の資料のほかに、いまだそれらしき「纏まりのあるもの」(ガイド ライン、マニュアルの名を付したもの)は公にされていません。しかし、医療の現場では そのようなことを言ってはおれませんし、また、一部の医療者・法律家(弁護士)からは 「事故調制度の利用を限定的・制限的なものにすべき」という趣旨のガイドラインも明ら かにされています(以下、このような考え方を「制限的に取り扱う立場」といいます。)。 このような状況の中で、平成27年8月、日本医師会が「(平成26・27年度)医療安 全対策委員会 第2回中間答申『医療事故調査制度における医師会の役割についてⅡ~院 内事故調査の手順と医師会による支援の実際~』」(資料④。以下「日医中間答申」といい ます。)を公にし、これによって、日本医師会は、その事故調制度の実施に関する「基本的 な考え方」を明らかにしました。また、厚生労働省(以下「厚労省」といいます。)も、既 に(医療法の)「改正の要点~平成27年5月8日付医政発0505第1号都道府県知事宛 通達~(厚労省医政局長)」(資料②。以下「厚労省局長通達」といいます。)、「医療事故調 査制度に関するQ&A」(資料③。以下「厚労省Q&A」といいます。)を明らかにしてお り、厚労省の基本的な考え方はそれなりに推測することができます。 しかるに、一部の医療者等の主張する「制限的に取り扱う立場」をみるに、厚労省や日 本医師会の基本的な考え方に沿うものとなっているのか疑問無しとしません。「事故調制度 を制限的に取り扱う立場」と「厚労省・日本医師会の基本的な考え方」は、その基本理念 に相違が見られるような気がしてならないのです。そこで、本論稿では、添付の資料①な いし同④に基づいて、「厚労省と日本医師会の事故調制度に対する基本的な考え方」を確認 し、さらに、その考え方に基づく「新しい医療事故調査制度に基づく調査の流れ」を整理 して、臨床現場における、その具体的な運用や対処法を考えてみたいと思います。 (2)新しい事故調制度を制限的に取り扱う立場の人たちは、「医療事故調運用ガイドラ イン」としてそれを冊子化していますが、ガイドラインとは、元来、「政府や団体が指導方 針として示す、大まかな指針、指導目標」を意味します。その意味では、今回の事故調制 度の運用に当たっては、厚労省がガイドラインを策定すべきですし、それに基づいて日本 医師会がマニュアル(手引書、取扱説明書)を作成し、医療の現場に配布すべきというこ とになります。しかし、その一方では、上記厚労省局長通達・厚労省Q&Aの内容をみる 限り、それこそがガイドラインであると考えることも可能であり、そうすると、日本医師 会の日医中間答申がマニュアル的なものということになります。したがって、少なくとも、 医療の現場の医療者は、原則として、厚労省の局長通達やQ&A、日医中間答申に従って おけば問題は生じないはずですし、これらの理念や考え方を理解した上での遺族対応、社 会対応をすべきものといえます。もちろん、厚労省や日本医師会のガイドライン・マニュ アル的な指針や考え方が間違っているという考え方もあり得ますが、それは制度を前進さ せながら議論を続け、将来的に修正すべきところを修正していく、という姿勢で対応すべ きものと思料いたします。

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2.医療事故調査制度の創設の目的とその背景 (1)中立的な専門機関(新しい事故調査機関とその制度)創設の模索 平成11年から平成12年にかけての一連の医療事故事件(横浜市立大学附属病院事件、 都立広尾病院事件、京都大学附属病院事件、東海大学附属病院事件など)では、医師・看 護師が業務上過失致死罪や医師法21条違反によって逮捕起訴されあり、あるいは在宅起 訴されたりしました。それを契機として、医療界では「中立的な専門機関」(新しい事故調 査機関とその制度)の創設の機運が高まりました。なぜなら、医師・看護師の過失によっ て惹起された医療事故(死亡事故)とはいえ、警察・検察などの捜査機関が医療行為の「正 否」を適切に評価することができるのかという疑問があり、医師・看護師が業務上過失致 死罪や医師法21条違反で摘発されたことから医療全体に与えた萎縮効果は甚だしく、そ れこそ「医療の崩壊」につながりかねない状況に陥ったからです。 またその後も、平成18年には、産科医が業務上過失致死罪・医療法21条違反で逮捕 起訴されるという福島県立大野病院事件が惹き起こされたことによって、産科医療関係者 のみではなく医療界全体が震撼させられ、捜査機関による医療行為の「正否」の評価(判 断)を回避するシステムとしての「中立的な専門機関」(新しい事故調査機関とその制度) の創設をますます強く模索するようになったのです。 医療界の新しい事故調査制度創設の模索とその努力は、平成21年の「産科医療補償制 度」の運営開始によって産科医療分野においてはそれが結実しましたが、その他の医療全 般についてはその後も検討が続けられ、ついに平成26年6月、医療・介護一括法案が国 会で成立し、平成27年10月から新しい医療事故調査制度(事故調制度)が運営を開始 することとなったのです。 (2)医療事故の刑事事件化を避けるための解決策 ア 以上のとおり、わが国の医療事故事件については、医療行為に起因して患者が死 傷した場合に、それを刑事事件化し刑事司法によって裁くことの「医療への重大な影響」 (医療の萎縮と崩壊)が懸念されてきました。そして、それを避ける方法として「中立的 な専門機関」(新しい事故調査機関とその制度)が検討され、その創設が模索されてきたの です。 もちろん、医療事故を減少させ医療をより安全なものとすること(医療の安全)が最重 要課題であることは当然なのですが、その方法として刑事司法を使うことは医療を萎縮さ せて崩壊させるおそれがあり、それを避けるためには、「中立的な専門機関」(新しい事故 調査機関とその制度)が必要不可欠であるということで、その創設が急がれていたのです。 もっとも、医療事故の刑事事件化を避けるためには、刑事司法への「2つの入口」を塞 がなければなりません。それは、まず第1に、「医師は死体の検案をして異状があると認め たときには24時間以内に警察署に届け出なければならない」とされる(罰則付きの)医 師法21条であり、そして第2に、当該医療事故で死亡した遺族による「業務上過失致死 罪としての刑事告訴」ということになります。 もっとも、刑事司法への「2つの入口」を塞ぐことは、そう容易なことではありません。

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医師法21条については、それを改廃するか又は捜査機関がその条文を使わないように慣 習的にフリーズ(死文化)させてしまわなければなりません。また、遺族による業務上過 失致死罪の刑事告訴については、「遺族の納得できる方法によって事故原因を明らかにし、 当該医療者等の民事責任の有無を明確にできなければ、『遺族が刑事告訴をしない』という 保証はない」ということにならざるを得ません。しかし、医療界が新しく創設する医療事 故に関する調査制度が、「遺族からの信頼」や「わが国の一般社会からの信頼」に応えるだ けの「中立性・公正性・客観性・透明性」を備えていたらどうでしょうか。事故原因の究 明が中立性・公正性・客観性・透明性をもってなされ、しかも、それに基づいて遺族への 民事的な対処(民事責任の有無の確認と、責任が肯定された場合の損害賠償)がなされる とすれば、刑事司法への「2つの入口」は事実上塞ぐことが可能になるのではないでしょ うか。 イ 医師法21条による医療機関から警察署への事故届出にしても、また、遺族によ る業務上過失致死罪についての刑事告訴にしても、医療機関と遺族との間に医療事故紛争 が発生し又は発生する可能性があるからこそ、そのことが問題となります。そして、医療 事故紛争の多くが刑事事件化することは、医療を萎縮させ医療の崩壊を招いてしまうおそ れがあるのですから、それを避けるためには、医療界側から、「遺族」や「わが国の一般社 会」を納得させることができるような解決策を提示しなければなりません。 そして、「遺族」や「わが国の一般社会」の信頼を前提にし、「遺族」や「わが国の一般 社会」を納得させ得る医療事故紛争の解決手法は、医療死亡事故について、①死亡原因(真 実)を真剣に解明(究明)すること、②そのことを遺族へ開示し真摯に説明すること、③ 再発防止策の検討又は再発防止を約束すること等であり、また、医療者側に責任(過失) がある場合には、さらに、④遺族へ謝罪すること(もちろん、責任が有る無しにかかわら ず「共感表明」としての謝罪は事故直後に必要である)、⑤民事的な賠償責任(医療事故保 険の利用)を履行することということになります。これらの医療事故紛争の回避ないし解 決の流れを、医療機関が中立性・公正性・客観性・透明性をもって実行することが最も現 実的な解決策であり、逆に、それに外れるような対応を医療機関が行おうものなら、遺族 の意思によって、いつ刑事事件化しても不思議ではなく、また、医療や医療者に対するわ が国の一般社会からの信頼は減殺され、医療死亡事故のたびに、「医師法21条の届出をす べきかどうか」、「遺族が刑事告訴しないかどうか」等について、医療者自身が悩み続けな ければならなくなります。 (3)まとめ 以上のとおり、これまで医療界で模索してきた「中立的な専門機関(新しい事故調査機 関とその制度)の創設」という新しい事故調制度には、医療の安全や再発防止を実現する という目的のほかに、「医療事故(死亡事故)の刑事事件化を回避する」という極めて重要 な目的があったはずであり、今回の法制度化された新しい事故調制度もその趣旨は受け継 がれているはずです。 したがって、本年10月から開始された事故調制度についても、医療の安全と再発防止 という法律に明記された理念と目的の達成を目指すという視点とともに、「医療事故の刑事 事件化を回避するためにはどうしたらよいのか」という視点での解釈や運用が求められま

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す。そして、そのためには、新しい事故調制度がわが国の一般社会に受け入れられるよう な「信頼性」を獲得できる解釈と運用が求められますし、さらには、医療者・医療機関に 対する疑心暗鬼を遺族に生じさせないような、確固たる「中立性・公正性・客観性・透明 性」をもった制度の構築が求められます。 事故調制度を制限的に取り扱う立場の人たちは、「この制度は、あくまで『医療の安全』 のための制度であり、『紛争防止』や『紛争の早期解決』を目的としたものではない」と説 明していますし、確かに、立法の過程ではそのような趣旨のことが議論されてはいたと思 います。しかし、「医療の安全」と「医療紛争を発生させないこと。医療紛争を深刻化させ ないこと」は両立するはずですし、そうしなければ医療の現場は混乱します。また、「医療 の安全」のための事故調制度(手続)に則って作成された個別事件の調査結果を医療事故 紛争の解決のために利用することは法律上何ら禁止されているわけでもありません。医療 事故の刑事事件化を回避するためにも、民事的な紛争解決が急がれるときに、この制度の 果実である調査結果を当該医療機関が利用できない(利用しない)とすることは、本末転 倒という結果を招くのではないでしょうか(もちろん、この場合においても、当該医療事 故の当該医療者の非懲罰性、秘匿性は守られることを前提とすることになります。)。 3.新しい医療事故調査制度に関する「厚労省と日本医師会の基本的な考え方」 以上のとおり、新しい医療事故調査制度は、「遺族からの信頼」「わが国の一般社会から の信頼」に応えられるだけの「中立性・公正性・客観性・透明性」を備えていなくてはな らないと思われます。そうでなければ、捜査機関による医師法21条活用のおそれはなく ならず、また、身内を亡くして疑心暗鬼に陥りがちな遺族の刑事告訴も完全には払拭でき ないことになって、「医療事故の刑事事件化からの回避」という制度本来の目的を達成する ことはできません。 そして、厚労省も日本医師会も、そのことを十分に意識しているようであり、それを前 提にして事故調制度の実務的運用を行っていこうとしているものと思われます。いずれに しても、厚労省局長通達(資料②)、厚労省Q&A(資料③)、日医中間答申(資料④)の 次のような記述をみれば、そのことを十分にうかがい知ることができます。 (1)医療事故調査制度の中立性・公正性・客観性・透明性 ア 厚労省は、事故調制度の「中立性・公正性・客観性・透明性」を重視しており、 次の1.2.とおり、「外部専門家の支援」を前提とした制度設計を目指しています。これ は、医療事故調査が当該医療機関のお手盛りの院内調査に堕するものではないことを社会 的に明らかにし、事故調制度への国民の信頼を高める目的があるものと思われます。 また、参議院厚生労働委員会でも、3.のとおりの付帯決議をしていますから、厚労省 は、その趣旨を遵守せざるを得ないはずです。 1.医療事故調査を行う際には、医療機関は医療事故調査等支援団体(筆者注:都道府 県医師会・大学病院等。以下「支援団体」といいます。)に対し、医療事故調査を行う ために必要な支援を求めるものとするとされており、原則として外部の医療の専門家 の支援を受けながら調査を行います。(厚労省Q&A〔資料③・Q6A6〕)

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2.本制度では、医療機関が院内調査を行う際は、公平性、中立性を確保する観点から も、専門家の派遣等の医療事故調査等支援団体の支援を求めるとされています。医療 機関の監理者においては、法の趣旨を踏まえ、医療事故調査に当たり、外部からの委 員を参画させ、公平、中立な調査に努めていただくようお願いします。(厚労省Q&A 〔資料③・Q13A13〕) 3.(付帯決議)院内事故調査及び医療事故調査・支援センターの調査に大きな役割を果 たす医療事故調査等支援団体については、地域間における医療事故の内容及び質の格 差が生じないようにする観点から、中立性・専門性が確保される仕組みの検討を行う こと。また、事故調査が中立性、透明性及び公正性を確保しつつ、迅速かつ適正に行 われるよう努めること。(厚労省局長通達〔資料②・10頁〕) イ また、日本医師会も、厚労省と同様の立場に立っているものと思われ、新しい医 療事故調査制度に関する日医中間答申(資料④)では、次のとおり、医療事故が発生した 医療機関の「院内事故調査委員会」について、「外部委員の選任」と「外部委員の判断」を 重視し、中立性・公正性・客観性・透明性をもった制度の構築を目指しているようです。 1.外部委員の選任は支援団体としての極めて重要な業務の一つであり、「医療事故調査 支援委員会」において組織的に決定すべきであるが、その際、医療機関の規模及び地 域の実情等に応じて柔軟に対応することとする。(日医中間答申〔資料④・5頁〕) 2.当該医療機関と協力して病態の主領域と副領域を決定し、主領域では複数の専門医 の選出・推薦が望ましい。支援団体は『医療事故調査支援委員会』により外部委員の 推薦を行う。(日医中間答申〔資料④・12頁〕) 3.監理者は、支援団体の推薦する専門医や看護師等に外部委員として参加を求める。 委員長や主領域の専門委員は外部委員が望ましく、委員長の選任方法としては外部委 員の互選等が考えられる。(日医中間答申〔資料④・12頁〕 4.医療事故調査・支援センターへの調査結果の報告についての責任者は監理者である が、その報告内容は、院内事故調査委員会が委員長を中心に修正協議を重ねた結果と してまとめたものである。監理者はその調査結果を尊重することとし、監理者による 恣意的な修正は認められない。(日医中間答申〔資料④・14頁〕) 5.監理者から遺族に説明する場合に、院内事故調査委員会に参画した外部委員などの 支援団体に対し、支援を求められることも想定される。その場合には、第三者の立場 から、より公正で客観的な観点で医学的な死因の調査結果を説明することにより、遺 族の理解が深まることも期待されるため、可能な範囲内で協力することが望ましい。 (日医中間答申〔資料④・15頁〕) (2)遺族への制度的な配慮 ア 医療事故が発生した直後の、いまだ原因が明確になっていない段階においては、 当該医療機関やその支援団体に「遺族への配慮」が欠かせません。そこでの遺族への配慮 の欠如や遺族との間のボタンの掛け違えが、医療事故紛争を生じさせたり又はその紛争を 拡大させたりすることになります。そして、遺族の不信感が増大し、その感情が極限に達 すると、そこには遺族よる刑事告訴が待っている可能性もあります。遺族による刑事告訴

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により、警察・検察などの捜査機関は、好むと好まざるとにかかわらず刑事捜査を進めな ければならなくなり、医療事故の刑事事件化が余儀なくされるのです。このことは、「中立 的な専門機関(新しい事故調査機関とその制度)の創設」に邁進してきた医療界の企図と 逆行することになることが明らかです。そのため、厚労省も、遺族への説明等に疎漏がな いように注意喚起し、遺族の意見等を取り入れる制度的な配慮を求めています。 1.遺族への説明については、口頭(説明内容をカルテに記載)又は書面(報告書又は 説明用の資料)若しくはその双方の適切な方法により行う。調査の目的・結果につい て、遺族が希望する方法で説明するよう努めなければならない。(厚労省局長通達〔資 料②・12頁〕) 2.院内調査報告書の内容についての遺族からの意見については、…医療事故調査・支 援センターへの報告前にあらかじめ説明を行う際に、遺族からその内容について意見 があった場合、その内容を報告書に記載していただくことになります。(厚労省Q&A 〔資料③・Q14A14〕) イ また、そのことは日本医師会も同様の立場であり、日医中間答申(資料④)では、 医療機関や支援団体の遺族への配慮を求めています。 1.監理者は医療事故であると判断した場合、まず、遺族へ医療事故調査制度の概要と 当該事例に関する医療事故調査・支援センターへの報告内容を分かりやすく説明する。 (日医中間答申〔資料④・7頁〕) 支援団体は監理者からの要請があれば、必要に応じて遺族への説明の支援を行う。 (日医中間答申〔資料④・7頁〕) 2.院内調査において、「関係者からの聴取」をすることになるが、その際には、「遺族 の心情や疑問についても十分聴取することが望ましい。その際、遺族の疑問や意見を 遮ることなく聞き取り、そして、監理者は、院内事故調査委員会で原因を明らかにし、 遺族の疑問や不信に答えるよう努める。」としている(日医中間答申〔資料④・9頁〕)。 3.医療事故調査終了後、監理者は遺族に対して調査結果を説明するが、必然的に専門 的な内容が含まれることが多い。遺族へは理解できるよう分かりやすく説明する必要 があるため、監理者の求めに応じて支援団体は適切に支援を行う。(日医中間答申〔資 料④・14頁〕) 監理者から遺族への説明については、口頭又は書面若しくはその双方の適切な方法 により行うこととされている。さらに、調査の目的・結果について、遺族が希望する 方法で説明するよう努めなければならないこととされている。(日医中間答申〔資料 ④・14頁〕 (3)まとめ 以上のとおり、厚労省局長通達(資料②)、厚労省Q&A(資料③)、日医中間答申(資 料④)では、医療機関や支援団体に対し事故調査制度の「中立性・公正性・客観性・透明 性」を高める対応を求めており、また、遺族への制度的な配慮をも求めています。そして それは、今回の事故調制度が創設されるに至った背景を考えれば当然のことであり、日医 中間答申(資料④・3~4頁)では、これを「日本医師会の基本的な考え方(院内事故調

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査の基本的な視点)」として次のようにまとめています。 支援団体による院内事故調査の支援活動のなかで、初期対応の内容を充実させること は極めて重要な要素となる。以下では、院内事故調査に関わるすべての関係者が理解し、 共有しておくべき目的や理念を示す。 ① 当該 医療 機 関と 外部 の 委員 が協 力 して 客観 的 に原 因を 明 らか にす る よう 努め る こ と。そして、診療・看護の詳細について、個々の状況を考慮して、当該医療機関とと もに検証する。 ② 因果関係が一見、明らかな事例においても、即断することなく事例の背景を幅広く 収集し、審議を尽くすことが、遺族や関係者の疑問に答え、事故防止策を導くことで ある。 ④ 遺族への説明の際などに、小さな事実誤認等が明らかになると、遺族の不信感を募 らせかねない。このことには関係者が十分に留意する必要がある。 4.新しい医療事故調査制度の概要と調査の流れ 厚労省と日本医師会は、このような基本的な考え方に基づいて、事故調制度の内容や運 用を説明し、医療現場をその方向にうながそうとしています。そこで本項では、平成27 年10月施行に係る「事故調制度の概要」について紹介し、さらに、「医療事故が発生した 場合の調査の流れ」について、厚労省が作成した「医療事故に係る調査の流れ」(厚労省概 要図〔資料①〕)の時間軸に沿って、厚労省、日本医師会の考えている具体的な運用内容を 整理してみたいと思います(なお以下、「医療法」を「法」と略すことがあります。)。 (1)医療事故調制度の概要 まず、今般の医療法の改正に基づく事故調制度の概要は、厚労省が作成した資料①の概 要図(医療事故に係る調査の流れ)のとおりであり、次のように整理することができます。 ア 病院等の管理者(病院長など)は、「医療事故」が発生した場合には、あらかじ め遺族に対し「定められた事項」を説明した上で(法6条の10第2項)、遅滞なく調査・ 支援センター(第三者機関)にその旨を報告しなければなりません(同第1項)。したがっ て、院内で死亡事故が発生した場合には、病院等の監理者は、まずは当該死亡事故が医療 法でいう「医療事故」に該当するか否かを判断しなければなりません(その判断がちょっ と面倒であり、判断に迷うことも多くなりそうです。この点については後述します。)。 イ 病院等の監理者が調査・支援センターに報告したら、当該病院等は、院内調査委 員会などを立ち上げて「院内調査」を実施しなければならず(法6条の11第1項)、調査 終了後には、その調査結果をあらかじめ遺族に対し説明をした上で(同第5項)、調査・支 援センターにその調査結果を報告しなければなりません(同第4項)。 ウ 都道府県医師会や大学病院等の「支援団体」は、病院等の監理者から、医療事故 調査をするために必要な支援を求められた場合には(法6条の11第2項)、その支援を行 うことになります(同第3項)。 エ また、調査・支援センターは、医療事故が発生した病院等の管理者又は遺族から、 当該医療事故について調査の依頼があったときは、必要な調査を行うことができ(法6条

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の17第1項)、その調査結果については病院等又は遺族に対して報告しなければなりませ ん(同第5項。通知では「報告書を交付する」とされています。)。しかしそれは、病院等 の管理者が医療事故として調査・支援センターに報告した事案についてのみであって、そ の場合にだけ遺族が調査依頼をすることができるとされているにすぎません。したがって、 病院等の監理者が「医療事故」と認めないものについては、遺族であっても調査・支援セ ンターに調査の依頼をすることができないことになります。 (2)医療事故が発生した場合の調査の流れ 資料①の概要図(医療事故に係る調査の流れ)を見てもらえば分かりますが、新しい事 故調制度の調査の流れは、死亡事故が発生すると、その時間軸(左から右)に従って、概 要図のとおりに動いていくことになります。そこでここでは、その時間軸のそれぞれの時 点において、当該医療機関(病院等)や支援団体が、「どのようなことをやっていくのか」、 「どのようなことをやらなければならないのか」について、厚労省局長通達(資料②)、厚 労省Q&A(資料③)、日本医師会の日医中間答申(資料④)に基づいて整理してみます。 ❶【死亡事例発生直後】 厚労省概要図(資料①)には、死亡事故発生直後のこととして、「制度外での遺族への一 般的な説明」という記載があります。すなわち、後述する制度上の(病院等による)「遺族 への説明」(法6条の10第2項、同の11第5項)とは別に、当然死亡事故が発生した直 後に、病院等は、遺族に対し、少なくとも共感表明としての「謝罪」(死亡という結果にな ってしまったことについての心情的な謝罪であり、「最善は尽くしたのですが、このような 結果になり申し訳ありませんでした。」「結果的に最悪の結果になり申し訳ありませんでし た。」などというもので、法的な責任を認める趣旨のものではありません。)をするととも に、何らかの事故原因の説明を余儀なくされますが、そのことはこれまでと何ら変わりが ありません。厚労省概略図ではそのことを示唆しているものと思われます。この段階では、 事故原因についての確たる説明はできないとしても、ここのところで遺族を感情的にして しまうと、その後の事故調査の手続に支障が生じるばかりか、不必要に紛争を生じさせ又 は紛争を増幅させることになります。したがって、この場合には、少なくとも「原因究明 の約束」等をすることによって遺族に冷静になっていただく必要があります。 ❷【医療事故の判断】 新しい事故調制度では、「医療事故」を「①医療者が提供した医療に起因し又は起因する と疑われる死亡・死産であって、②当該管理者が死亡・死産を予期しなかったものとして 厚労省令で定めるもの」と定義しています(法6条の10第1項)。すなわち、ここではそ の要件が2つあり、それは第1に「医療に起因する死亡(疑われる死亡も含む)」(要件①) であり、第2に「死亡を予期しなかったもの」(要件②)ということになります。したがっ て、病院等内での患者の死亡が「医療に起因するものか否か」、また、「予期されなかった ものか否か」が問題となり、病院等の監理者は、院内死亡事故が発生した場合には、これ

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が「医療事故」に該当するか否か(要件①②の存否)を速やかに判断しなければならない ということになります。 この点について、日本医師会は、次のとおり、極めて重要な指摘をしています(日医中 間答申〔資料④・6頁〕)。 監理者は医療事故の疑いがあれば、積極的に医療事故調査・支援センターに報告し、 院内事故調査委員会に付して真理を求める姿勢が望まれるが、実際には、本制度対象に おける医療事故に該当するか否かの判断に迷う事例も予想される。 すなわち、この日本医師会の姿勢は、事故調制度を利用するか否かの「門前」において、 「医療事故の定義に該当するか否か」という判断を厳格にし、「医療事故」該当性を否定す る方向で対処するのではなく、「疑いがあれば事故調制度の対象とする」という制度の積極 的な運用(利用)をうながしていると思われるのです。死亡事故が発生した初期段階で、 「医療事故ではない」又は「医療事故である」などという判断が難しいことは明らかであ ることからすれば、本制度の目的・理念である「医療の安全確保」「事故再発の防止」とい う観点からしても、「疑わしきは制度の対象に」という姿勢が望まれるということなのだと 思われます。すなわち、厚労省や日本医師会は、事故調制度の積極的な利用と運用があっ てこそ「医療の安全」が実現できるのであり、「再発の防止」が可能となる、と考えている のではないでしょうか。 (A)医療に起因する死亡か否か(要件①) 厚労省局長通達(資料②・1頁)では、「『医療』に含まれるものは制度の対象であり、 『医療』の範囲に含まれるものとして、手術、処置、投薬及びそれに準じる医療行為(検 査、医療機器の使用、医療上の管理など)が考えられる。」と説明されており、さらに、「施 設管理等の『医療』に含まれない単なる管理は制度の対象とはならない。」とされています。 この要件①については、次のとおり、厚労省局長通達(資料②・2頁)において具体的な 整理がなされており、詳解されていますので、参考にして下さい。 (a)「医療に起因する死亡又は疑われるもの」としては、 ○診察 -兆候、症状に関連するもの ○検査等(経過観察を含む) -検体検査に関連するもの -生体検査に関連するもの -診断穿刺・検体採取に関連するもの -画像検査に関連するもの ○治療(経過観察を含む) -投薬・注射(輸血含む)に関連するもの -リハビリテーションに関連するもの -処置に関連するもの

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-手術(分娩含む)に関連するもの -麻酔に関連するもの -放射線治療に関連するもの -医療機器の使用に関連するもの などが挙げられています。 このほかに、「医療に起因する死亡又は疑われるもの」として、 ○その他 以下のような事案については、監理者が医療に起因し、又は起因すると疑われるもの と判断した場合 -療養に関連するもの -転倒・転落に関連するもの -誤嚥に関連するもの -患者の隔離・身体拘束/身体抑制に関連するもの が挙げられています。 しかしここでは、その前提として、「監理者が医療に起因し又は起因すると疑われるも のと判断した場合」とされていますので、療養、転倒・転落、誤嚥、隔離・身体拘束・身 体抑制に関連する死亡事故は、病院等の監理者の合理的な判断にゆだねられる範囲が広い といえます。 (b)「医療に起因する死亡又は疑われるもの」には含まれないものとしては、 ○施設管理に関連するもの -火災等に関連するもの -地震や落雷など天災によるもの -その他 ○併発症(提供した医療に関連のない、偶発的に生じた疾患) ○原病の進行 ○自殺(本人の意図によるもの) ○その他 -院内で発生した殺人・傷害致死等 などが具体例としてあげられています。 もっとも、ここにおける「併発症」は、あくまでも提供された医療とは関連性のない偶 発的に生じた疾患とされており、「合併症」と混同しないようにしなければなりません。合 併症は、後述する「死亡が予期されなかったか否か」(B)において検討されることになり ます。 (c)なお、死産については、厚労省局長通達(資料②・4頁)において、次のよう に説明されています。 死産については「医療に起因し、又は起因すると疑われる、妊娠中または分娩中の手 術、処置、投薬、及びそれに準じる医療行為により発生した死産であって、当該監理者 が当該死産を予期しなかったもの」を監理者が判断する。

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人口動態統計の分類における「人工死産」は対象としない。 (B)死亡が予期されなかったか否か(要件②) (a)要件の概要について 要件②についても、次のとおり、厚労省局長通達(資料②・3頁)、厚労省Q&A(資 料③・2頁)に具体的に整理されて詳解されていますので、参考にして下さい。 すなわち、医療法6条の10第1項は、「医療事故」の要件の1つとして、「当該監理者 が死亡・死産を予期しなかったものとして厚労省令で定めるもの」(要件②)を挙げ、さら に、厚労省令(医療法施行規則1条の10の2)では、「当該死亡又は死産を予期しなかっ たもの」とは、「以下の事項のいずれにも該当しないと監理者が認めたものをいう。」とさ れています。したがって、逆にいえば、以下の(1)(1号事由)、(2)(2号事由)、(3)(3 号事由)のいずれか1つに該当すると直ちに「予期しなかったもの」とはいえなくなり(す なわち、「予期したもの」ということになり)、「医療事故」には該当しないこと(医療事故 非該当)になってしまいます。 (1) 管理者が、当該医療の提供前に、当該医療者により、当該患者等に対し、当該死亡 又は死産が予期されていることを説明していたと認めたもの(1号事由) (2) 管理者が、当該医療の提供前に、当該医療者により、当該死亡又は死産が予期され ていることを診療録等に記録していたと認められたもの(2号事由) (3) 管理者が、当該医療者からの事情聴取及び医療安全管理委員会からの意見の聴取を 行った上で、当該医療の提供前に、当該医療者により、当該死亡又は死産が予期され ていると認めたもの(3号事由) 以上からすれば、「当該医療者が当該患者に対し、死亡が予期されていることを説明して いた」(1号事由)と「病院等の監理者が認めた」ときには、当該死亡事故を「医療事故」 と判断する必要はなく、医療法に基づいて調査・支援センターに報告する必要もないし、 また、同法に基づく院内調査に付する必要もないということとなります。 また、上記説明(1号事由)がなされていないとしても、「当該医療者が、当該死亡が予 期されることを診療録等に記録していた」(2号事由)と「病院等の監理者が認めた」とき も、上記同様の対処が可能となります。 さらに、上記説明(1号事由)がなく、かつ診療録等に記録がない(2号事由)として も、「当該医療者からの事情聴取」及び「医療安全管理委員会からの意見聴取」を行った上 で、「当該死亡が予期されていた」と「病院等の監理者が認めた」とき(3号事由)も、上 記同様に「医療事故」と判断する必要はなく、調査・支援センターに報告する必要もない し、院内調査に付する必要もないということになります。 もっとも、ここでいう「病院等の監理者が認めた」という監理者の判断については、「組 織として判断する」とされていますので(厚労省局長通達〔資料②・5頁〕)、そのことを 忘れないで下さい。 (b)「医療事故」判断において留意すべき点

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(Ⅰ)インフォームド・コンセントの重要性 上記の「1号事由」を見てもらえば分かると思いますが、「死亡等を予期しなかったもの か否か」を判断するについては、「予期されていることを説明していたか否か」が重視され ており、厚労省の通知(厚労省局長通達〔資料②・3頁〕)では、 患者等に対し当該死亡又は死産が予期されていることを説明する際は、医療法第1条 の4第2項の規定に基づき、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努め ること。 参考)医療法第1条の4第2項-医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い 手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得る よう努めなければならない。 とされています。 すなわち、医療行為前の患者・家族に対するインフォームド・コンセントが重視されて いるのです(また、直截的な表現とはなっていませんが、その事前の説明を診療録等に記 録することも重視されているといえます。)。 さらに、厚労省Q&A(資料③・Q5A5)では、「3号事由」の具体例等について、次 のように説明しています。 医療法施行規則第1条の10の2第1項第3号に該当する具体的事例は、例えば以下 のような場合が考えられます。 1.単身で救急搬送された症例で、救急対応のため、記録や家族の到着を待っての説明 を行う時間の猶予がなく、かつ、比較的短時間で死亡した場合 2.過去に同一の患者に対して、同じ検査や処置等を繰り返し行っていることから、当 該検査・処置等を実施する前の説明や記録を省略した場合 いずれにしても、医療法では医師等の責務として、医療を提供するにあたっては、適 切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないとされている こと等に基づき、医療行為を行う前に当該患者の死亡の可能性が予期されていたものに ついては、事前に説明に努めることや診療録等へ記録することが求められます。 これらの記述から見る限り、病院等の監理者は、1号事由(説明)がなく、かつ2号事 由(記録)がない場合でも、3号事由によって「死亡等が予期されていた」(よって「医療 事故」ではない)と判断できることが可能ではありますが、その想定された具体例は、上 記1.2.のとおり非常に狭い内容ものとして理解されており、むしろ、事前のインフォ ームド・コンセントを履行し、それを診療録等に記録することを重視しているといえます。 要するに、新しい事故調制度では、医療者や医療機関のインフォームド・コンセントの 充実と記録化(説明した内容を診療録等に記録しておくこと)を重視して推し進め、医療 行為による患者の死亡の可能性(医療の不確実性)を、その家族に事前に意識し認識して もらうことによって、「(医療法でいう)医療事故ではない」との判断を遺族に理解しても らおう(少なくとも、そのことによって医療紛争が生じたり又は拡大しないようにしよう) としているものと考えることもできます。 (Ⅱ)具体性をもった「死亡等の可能性」の説明と記録

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省令第1号(1号事由)及び第2号(2号事由)については、厚労省局長通達(資料②・ 3頁)で、次のような説明をしています。 一般的な死亡の可能性についての説明や記録ではなく、当該患者個人の臨床経過等を ふまえて、当該死亡又は死産が起こり得ることについての説明及び記録であることに留 意すること。 また、それを受けた厚労省Q&A(資料③・Q4A4)は、次のような解説しています。 (患者又は家族への説明〔1号事由〕や記録〔2号事由〕については)当該患者個人 の臨床経過を踏まえ、当該患者に関して死亡又は死産が予期されることを説明していた だくことになります。したがって、個人の病状等を踏まえない、「高齢のため何が起こる かわかりません」、「一定の確率で死産は発生しています」といった一般的な死亡可能性 についてのみの説明又は記録は該当しません。 (Ⅲ)医療事故の判断と「過失の有無」-ボタンの掛け違えをしないために- (ⅰ)以上のとおり、医療法と同施行規則の「医療事故」の定義では、過失の 有無が要件とされておらず、「過誤(過失)の有無は問わない」とされています(厚労省Q &A資料③・2頁)。また、この点は、事故調制度を「制限的に取り扱う立場」の人たちの 強調するところでもあり、また、法文上もそのとおりといわざるを得ません。 しかしそれは、事故調制度における「医療事故」に該当する場合であっても、医療者に 民事責任が生ずる(医療者に過失が認められる)こともあれば、医療者に民事責任が生じ ない(医療者に過失が認められない)こともある、ということを意味します。逆にいえば、 事故調制度における「医療事故」に該当しない場合(調査・支援センターへの報告もしな ければ、院内調査にも付さない場合)であっても、「医療者に民事責任が生ずる(医療者に 過失が認められる)こともある」ということになるのです。 そしてこのことが、医療機関と遺族との間での医療紛争の火種になることもありますの で、注意して下さい。すなわち、医療者側の「医療事故」という定義や概念についての遺 族に対する説明しだいでは、その後の医療紛争を誘発しかねないということを意識してお く必要があります。“遺族をはじめとする一般の人たちの「医療事故」に対するイメージ・ 認識”と、“事故調制度でいう「医療事故」の定義的な意味付け”とが掛け離れている場合 などでは、医療者側が「本件症例は(医療法の事故調制度でいうところの)『医療事故』で はありません。」と遺族に対し説明すると、遺族は「本件症例は『医療過誤』ではありませ ん(当院には過失がなく、責任がありません)」と理解してしまうおそれがあるのです。そ の意味での事故調制度で予定されている「遺族への説明」(説明の内容やその方法)は極め て重要なものとなります。 (ⅱ)また、医療者の「過失の有無」が「医療事故が否か」(死亡が予期され なかったか否か)の判断要素として全く無関係とはいえないことも留意しておく必要があ ります。なぜならば、医療行為における医療者の過失は、通常「予期されていた」という ことはできないのであり、一般的には、医療者に過失のある医療行為については、「予期さ れていなかった」(医療事故に該当する)という判断に傾くことになるはずだからです(少 なくとも、遺族に対して、死亡事故発生後に、「病院等の医療者の過失(誤薬等)が予期さ れていた」などと直截的に説明することができるはずがありません。)。

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この点については、事故調制度を「制限的に取り扱う立場」においても、「頻発する類型 のエラー(誤薬等)」と「非常にまれな類型のエラー」を区別して、前者については「予期 した」と判断し、後者については「予期しなかった」と判断しているようです。果たして、 このような考え方が正しいのかどうか、わたしには分かりませんが、いずれにしても、医 療行為における医療者の「過失の有無」は、「死亡が予期されなかったか否か」という要件 の判断に影響を与えることになるはずです。また仮に、「頻発する類型のエラー(誤薬等)」 が「予期されていた」と判断するにしても、そのことの遺族への説明は細心の注意を払わ ないと、そのことのみで遺族の感情を逆撫でしてしまう可能性があります。 (C)複数の医療機関にまたがって医療を提供した結果の死亡 このような事態が生じたときの「医療事故」については、どちらの(どこの)医療機関 が調査・支援センターに報告し、院内事故調査を開始しなければならないのでしょうか。 この点について、厚労省Q&A(資料③・Q3A3)では、次のように説明しています。 (この事故調制度では)患者が死亡した場所は要件となっておりません。複数の医療 機関にまたがって医療を提供していた患者が死亡した時は、まず当該患者の死亡が発生 した医療機関から、搬送元となった医療機関に対して、当該患者の死亡の事案とその状 況について情報提供し、医療事故に該当するかどうかについて、両者で連携して判断し ていただいた上で、原則として当該死亡の要因となった医療を提供した医療機関から報 告していただくことになります。 しかし、実際の事例では、このとおりの対処が困難になることも想定されます。前医の 病院又は医院と後医の病院とで見解(どちら医療行為が当該死亡の要因となったのか、と いう点の意見)が相違し調整がつかない場合などには、どちらの医療機関も事故調査を開 始しないことが考えられ、その場合の遺族は感情的になって不信が増幅し、不必要に医療 紛争が発生し又は紛争が増幅することも考えられます。このような場合には、都道府県医 師会などの「支援団体」や「調査・支援センター」が間に入り、その調整をせざるを得な いことも考えられます(もっとも、これは制度的に予定されたことではないのかもしれま せんが、そのような調整は不可欠になりそうですし、また、「疑わしきは制度の対象に」と いう判断が求められる可能性もあります。)。 なお、上記のような複数の医療機関にまたがった医療を提供した結果の死亡事例につい て、日本医師会は、「診療所事例は2次医療機関等に搬送後の死亡事例が多いと予想され、 その際は2次医療機関等にも委員会(筆者注:院内事故調査委員会)への参画を依頼する。」 としています(日医中間答申〔資料④・13頁〕)。 (D)支援団体等の「当該医療機関に対する支援」 事故調制度では、「医療事故」に該当するか否か(調査・支援センターへ報告し、院内調 査を行うか否か)の判断を「病院等の監理者」にまかせています。この点について、厚労 省局長通達(資料②・5頁)は、前述のとおり、 監理者が判断するに当たっては、当該医療事故に関わった医療従事者等から十分事情

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を聴取した上で、組織として判断する。 としています。 しかし、事故調制度における「医療事故」の判断は、病院等で組織的な判断をするにし ても、そんなに容易なことではなく、調査・支援センター、都道府県医師会や大学病院等 の支援団体が、当該医療機関の支援をする必要がある場合(法6条の11第3項)も多く なりますので、医療機関の判断により、必要な支援を支援団体に求めることになります(厚 労省局長通達〔資料②・10頁〕)。 また、この点について、厚労省局長通達(資料②・5頁)では、 監理者が(筆者注:医療事故か否かを)判断する上での支援として、調査・支援セン ター及び支援団体は医療機関からの相談に応じられる体制を設ける。 としていますから、調査・支援センターも支援団体もこの要請を断ることはできないはず です。 そして、「監理者から相談を受けたセンター又は支援団体は、記録に残す際等、秘匿性 を担保すること」(厚労省局長通達〔資料②・5頁〕)とされており、当該医療機関が調査・ 支援センターや支援団体に相談し、支援を受けやすくなるような制度にしています。 いずれにしても、事故調制度における支援団体の支援内容については、日本医師会は、 次のような具体的な説明をしています(日医中間答申〔資料④・4頁〕)。 支援団体の役割は、医療事故の発生に際しての、「医療事故該当事案かの当否」や「病 理解剖・死亡時画像診断(Ai)に関する助言」等の相談対応から、「院内事故調査委員 会開催のための準備作業初期対応」、「院内事故調査委員会の開催」、「報告書の作成」と 広範に及ぶ業務を支援することになる。 ❸【遺族への制度等の説明】 当該医療機関が「医療事故」と判断し、調査・支援センターに報告する場合には、「あら かじめ」遺族又は死産した胎児の父母等に対し、定められた事項を説明しなければならな い(法6条の10第2項)とされています。 この場合の「遺族」の範囲については、「同法に遺族の範囲を法令で定めないこととして いる他の法令(死体解剖保存法など)の例にならうこと」とされ、「死産した胎児」の遺族 については、「当該医療事故により死産した胎児の父母、祖父母とする」とされています(厚 労省局長通達〔資料②・7頁〕)。また、例えば、「診療情報の提供等に関する指針」では、 「患者の配偶者、子、父母及びこれに準ずる者(これらの者に法定代理人がいる場合の法 定代理人を含む。)」とされていますので、参考として下さい(厚労省Q&A〔資料③・Q 7A7〕)。 さらに、厚労省局長通達(資料②・7頁)では、「遺族側で遺族の代表者を定めてもらい、 遺族への説明等の手続はその代表者に対して行う」ともされています。 当該医療機関は、「調査・支援センターへの報告事項」の内容を遺族にわかりやすく説明 する(厚労省局長通達〔資料②・8頁〕)ものとされ、また、その説明事項については、次

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のとおりとされています(同8頁)。 ●医療事故の日時、場所、状況 ○ 日時/場所/心療科 ○ 医療事故の状況 ・ 疾患名/臨床経過等 ・ 報告時点で把握している範囲 ・ 調査により変わることがあることが前提であり、その時点で不明な事項につい ては不明と説明する。 ●制度の概要 ●院内事故調査の実施計画 ●解剖又は死亡時画像診断(Ai)が必要な場合の、その具体的実施内容などの同意取 得のための事項 ●血液等の検体保存が必要な場合の説明 また、日本医師会は、ここでの遺族への説明について、次のような対応を求めています (日医中間答申〔資料④・7頁〕)。 監理者は、医療事故であると判断した場合、まず遺族へ医療事故調査制度の概要と当 該事例に関する調査・支援センターへの報告内容を分かりやすく説明する。その際、監 理者は、遺族に当該事例の日時、場所、状況、院内事故調査の実施計画等を説明すると ともに、医療事故調査制度の概要(外部委員を加えた審理で疑問点を明らかにして、事 後、遺族にも判りやすい表現で結果を説明する)を伝える。さらに、亡くなった原因を 明らかにするには、病理解剖やAiが必要な場合があることを分かりやすい表現で伝え て、遺族の承諾を得るよう努める。 以上の説明項目の中で、「制度の概要」についての説明は重要です。すなわち、「事故調 制度がどのような制度なのか」を遺族に十分に理解してもらわなければ、「医療事故ではな い=医療者側に責任がない」と即断したり、「医療事故である=医療者側に責任がある」な どと誤解してしまう可能性があるからです。また、事故調制度の概要説明において、「当該 事故調制度が信頼するに足りること」も理解してもらわなければなりません。さらには、 医療事故の原因を調査し分析して「医療の安全」につなげ「再発防止」を目指そうとする 制度であることを説明して理解してもらうことは当然のことであり、そのほかにも、当該 医療機関と遺族との間では、「当該医療事故の医療者側の過失の有無を検討しなければなら ない場合があること」、「当該医療機関が遺族に対し民事賠償責任を負うのか否かの検討も しなければならない場合もあること」等を、(遺族が誤解しないように)遺族に十分に理解 していただけるような説明をしなければなりません。 以上のとおり、この段階での医療機関の遺族に対する説明は必ずしも容易なことではあ りません。そこで、日本医師会は、「支援団体は、監理者からの要請があれば、必要に応じ て遺族への説明の支援を行う。」(日医中間答申〔資料④・7頁〕)としています。 ❹【調査・支援センターへ報告】

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当該医療機関が「医療事故」と判断した後、調査・支援センターに報告しなければなら ない報告事項は、厚労省局長通達(資料②・6頁)に詳しく記載されています。概ね、次 のような事項を、書面又はWeb 上のシステムによって報告することになります(法令、通 知)。 ●日時/場所/診療科 ●医療事故の状況(疾患名/臨床経過等、報告時点で把握している範囲、調査により変 わ る こ と があ る こ と が前 提 で あ り、 そ の 時 点で 不 明 な 事項 に つ い ては 不 明 と 記載 す る。) ●連絡先 ●医療機関名/所在地/監理者の氏名 ●患者情報(性別/年齢等) ●調査計画と今後の予定 ●その他監理者が必要と認めた情報 調査・支援センターへの報告期限について、厚労省局長通達(資料②・6頁)では、「個 別の事案や事情等により、医療事故の判断に要する時間が異なることから、具体的な期限 は設けず、『遅滞なく』報告するとする。なお、『遅滞なく』とは、正当な理由なく漫然と 遅延することは認められていないという趣旨であり、当該事例ごとにできる限りすみやか に報告することが求められている」とされています。 ❺【医療事故調査開始(事故調査)】 当該医療機関は、医療事故と判断し、調査・支援センターにその旨の報告した後は、速 やかにその原因を明らかにするために必要な調査を行わなければなりません(法6条の1 1第1項)。いわゆる「院内事故調査」を開始することになります。 院内事故調査を実施するに当たっては、「本制度の目的が医療安全の確保であり、個人の 責任を追求するためのものではないこと」、「調査の過程において可能な限り匿名性の確保 に配慮すること」、「調査の対象者については当該医療従事者を除外しないこと」(厚労省局 長通達〔資料②・9頁〕)とされています。したがって、当該医療機関・支援団体の院内事 故調査に関わる関係者は、そのことを銘記しておかなければなりません。そうでなければ、 当該医療事故に関わった当事者たる医療者に率直な事情説明を聴取することが困難となり、 真実の発見という目的を達成することもできないからです。 院内事故調査における「調査項目については、次の中から必要な範囲で選択し、それら の事項に関し、情報の収集、整理を行うものとする」(厚労省局長通達〔資料②・9頁〕、 厚労省Q&A〔Q8A8〕)とされています。 ・ 診療録その他の診療に関する記録の確保(例:カルテ、画像、検査結果等) ・ 当該医療従事者のヒヤリング(ヒヤリング結果は内部資料として取り扱い、開示し ないこと〔法的強制力がある場合を除く〕)とし、その旨をヒヤリング対象者に伝える。) ・ その他の関係者のヒヤリング(遺族からのヒヤリングが必要な場合があることも考

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慮する。) ・ 医薬品、医療機器、設備等の確認 ・ 解剖又は死亡時画像診断(Ai)については、解剖又は死亡時画像診断(Ai)の 実施前に、どの程度死亡の原因を医学的に判断できているか、遺族の同意の有無、解 剖又は死亡時画像診断(Ai)の実施により得られると見込まれる情報の重要性など を考慮して実施の有無を判断する。 ・ 血液、尿等の検体の分析・保存の必要性を考慮 なお、解剖や死亡時画像診断(Ai)について、厚労省Q&A(Q9A9、Q10Q1 0)は、次のように説明しています。 ○今回の制度では全ての症例に対して、必ずしも解剖を実施しなければならないことと なっておらず、監理者が選択する事項になっています。…このような知見を参考に、 地域の解剖体制と遺族の同意などを勘案して、解剖の必要性について考慮してくださ い。(資料③・Q9A9) ○今回の制度では全ての症例に対して、必ずしも死亡時画像診断(Ai)を実施しなけ ればならないこととなっておらず、監理者が選択する事項になっています。…このよ うな知見を参考に、地域の死亡時画像診断(Ai)の体制と遺族への説明状況などを 勘案して、死亡時画像診断(Ai)の必要性について考慮してください。(資料③・Q 10A10) しかし、日本医師会は、この点について、医療機関に対し、次のような対応を求めてい ます(日医中間答申〔資料④・9頁〕)。 Aiについては、生前にCT撮影が行われていることも多いため、必ずしも行わなけ ればならないものではないが、死亡までの情報が少ない場合や死因が不明な場合などに は、Aiの実施を検討する。精度の高い所見を得るためには、できるだけ迅速な対応が 必要である。…Aiは医療事故調査における資料収集の一部であり、死亡までの情報が 少ない場合や、死因が不明な場合は撮影を考慮する。ただし、Aiで得られるものは画 像所見であり、死因の診断が必ずつくものでないことに留意する必要がある。したがっ て、Ai読影結果のみに固執することなく、院内事故調査委員による臨床経過全体に対 する詳細な検討こそが院内事故調査の要諦であることを確認しておく。…読影には高い 専門性が求められる。そのため改めて専門家へ読影を依頼する必要が生じる場合がある。 なお、病理解剖について、日本医師会は、次のように指摘しています(日医中間答申〔資 料④・10頁〕)。 病理解剖の必要性が高いと考えられる事例は「臨床的にその死因が明確にできなかっ た事例」などであるが、具体的な要否については個別の判断が必要となる。病理解剖に ついて、同意が得られなかった場合には、Aiだけでも同意を得て実施することが望ま しい。 院内事故調査については、その調査の「中立性・公正性・客観性・透明性」を確保する ために、支援団体の支援と外部の専門家の参加(支援)が予定されており、厚労省Q&A (Q6A6、Q13A13)では、次のように対応を求めています。

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医療事故調査を行う際には、医療機関は、支援団体に対し、医療事故調査を行うため に必要な支援を求めるものとするとされており、原則として外部の医療の専門家の支援 を受けながら調査を行います。(資料③・Q6A6) 本制度では、医療機関が院内調査を行う際は、公平性、中立性を確保する観点からも、 専門家の派遣等の支援団体の支援を求めることとされています。医療機関の監理者にお いては、法の趣旨を踏まえ、医療事故調査にあたり、外部からの委員を参画させて、公 平、中立な調査に努めていただくようお願いします。(資料③・Q13A13) また、日本医師会も、支援団体の業務や院内事故調査の内容についての説明において、 次のような指摘をしています(日医中間答申〔資料④・5頁、同12頁〕)。 外部委員の選任は支援団体としての極めて重要な業務の一つであり、「医療事故調査支 援委員会」において組織的に決定するべきであるが、その際、医療機関の規模及び地域 の実情等に応じて柔軟に対応することとする。具体的には、主領域、副領域の専門医を 推薦するにあたり、都道府県医師会において予め適任者をリストアップしておき、経営 主体や地理的な事情など当該医療事故発生医療機関との第三者性の確保等を総合的に勘 案した上で、組織的に決定し、選任するのが望ましい。(日医中間答申〔資料④・5頁〕) 当該医療機関と協力して病態の主領域と副領域を決定し、主領域では複数の専門医の 選出・推薦が望ましい。支援団体は、「医療事故調査支援委員会」により外部委員の推薦 を行う。(日医中間答申〔資料④・12頁〕 また、日本医師会は、当該医療機関の院内事故調査委員会について、次のような対応を 求めています(日医中間答申〔資料④・12頁、同14頁〕)。 監理者は、支援団体の推薦する専門医や看護師等に外部委員として参加を求める。委 員長や主領域の専門医は外部委員が望ましく、委員長の選任方法としては外部委員の互 選等が考えられる。(日医中間答申〔資料④・12頁〕) 調査・支援センターへの調査結果の報告についての責任者は監理者であるが、その報 告内容は、院内事故調査委員会が委員長を中心に修正協議を重ねた結果としてまとめた ものである。監理者はその調査結果を尊重することとし、監理者による恣意的修正は認 めない。(日医中間答申〔資料④・14頁〕) 院内事故調査においては、医療機関の当事者(関与した医療従事者)への事情聴取など が重要になってきますが、その際の注意点について、日本医師会は、日医中間答申(資料 ④・6頁、同9頁)において、次のような指摘を行っています。 診療関連死に遭遇した医療機関、当事者の心労は大きく、当事者が精神的に不安定な 状態であることが予想され、事実確認が難しい。当事者の些細な思い込みや解釈で事実 確認を誤ると、残念な結果を招きかねない。当事者の心を開き、真実を述べる雰囲気の 情勢に心がける。具体的には、院内事故調査委員会を設置する趣旨、特に(前述の)「院 内医療事故調査の基本的視点」の内容を当事者にわかりやすく説明し、支援団体と当該 医療機関が共に協力して真実を求める姿勢を伝える。(同6頁) 当該医療従事者からは可能な限り聞き取り調査を行う。聞き取りは取調べではなく、 関係職員の心情に配慮して、監理者と関係者で病態を考える姿勢を貫くことが大切であ る。(同9頁)

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