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オオイタデジタルブック「明日を守る~防災立県めざして」

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Academic year: 2021

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局地的豪雨への備え必要

  ( 二〇〇六年八月二十九日 ) (写真上)公開シンポジウムで意見を交わすパネリストら (写真左)会場の一般参加者も活発な発言 ※NHK大分放送局スタジオホールキャンパス ▽大分大学   奥田憲昭教授       (経済学部) ▽大分県   大城博課長補佐 (防災危機管理課) ▽大分合同新聞   安東公綱記者 ▽NHK   横田晃洋記者 ▽NHK   山崎登解説委員 ▽NHK   富田典保 アナウンサー (司会)   絶えない風水害から命を守るには―。二十五日、大分市で 開いた大分合同新聞社の創刊百二十周年記念企画「明日を守 る ― 防 災 立 県 め ざ し て ―」 の 第 二 回 公 開 シ ン ポ ジ ウ ム。 「 風 水害の実態」や「自治体の防災」をテーマに、安全・安心の 社会づくりを来場者と一緒に考えた。

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富 田   大 分 県 は 繰 り 返 し 風 水 害 に 見 舞 わ れ て き た 〝災害大県〟だが、 いま、 わ た し た ち を 取 り 巻 く 環 境 が 変 わ り つ つ あ る のかもしれない。 安 東   竹 田 市 で は、 六 十 年 に 一 度 と い わ れ た 一 九 八 二 年 の 豊 肥 水 害 か ら わ ず か 八 年 後、 さ ら に 大 き な 水 害 に 襲 わ れ た。 九 重 町 で は 昨 年、 一 時 間 に 八 四 ミ リ の 豪 雨 が 降 り、 温 泉 街 が 土 砂 に 埋 ま っ た。 県 内 で は、 こ の 三 十 年 の 間 に 五 〇 ミ リ 以 上 の 雨 を 観 測 し た 回 数 が 倍 増 し て い る。 一 九 七 六 年 か ら 八 五 年 の 十 年 間 に 三 十 一 回 だ っ た の が、 九六年から二〇〇五年は六十四回となっている。 横田   大分県は地質的に火山灰層が多く、土砂災害が起こり や す い 状 況 に あ る。 過 去 十 年 間 で 発 生 し た 土 砂 災 害 は 五 百 三 十 件。 新 潟、 神 奈 川 県 に 次 い で、 全 国 で 三 番 目 に多い。 山崎   地球温暖化が進むと、豪雨の地域と小雨の地域が偏在 す る な ど、 地 球 規 模 で 気 象 現 象 が 激 化 す る と い わ れ て い る。 今 年 七 月 の 梅 雨 前 線 で は、 九 州 南 部 で 数 日 間 に 一 〇 〇 〇 ミ リ を 超 え る 雨が降った。     こ れ は 瀬 戸 内 地 方 の 年 間 雨 量 に 匹 敵 す る 量 だ。 想 定 を 超 え る 雨 が 降 る ようになり、 日本の治水 対 策 は 転 換 点 を 迎 え て いる。

相次ぐ豪雨被害

倍増した激しい雨

  全国各地で局地的な豪雨被害が相次いでいる。地球温暖化 の進行が原因とみられる。大分県内でも一時間に五〇ミリ以 上の激しい雨が倍増し、地域の暮らしに深刻な影響を与えて いる。 山崎登 解説委員 富田典保アナウンサー

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安 東   二 〇 〇 四 年 の 台 風 21 号 の と き、 大 分 市 東 部 の 高 台 に あ る 十 世 帯 に 避 難 勧 告 が 出 さ れ た が、 避 難 し た の は 二 世 帯 だ け だ っ た。 雨 戸 を 閉 め て い て、 避 難 勧 告 を 伝 え る 広 報 の 声 が 聞 こ え な か っ た り、 こ れ ま で 大 丈 夫 だ っ た か ら と 楽 観 的 に 考 えていたのが原因だ。 大 城   避 難 勧 告 は 危 な い か ら 逃 げ て く だ さ い と い う お 願 い で、 避 難 指 示 は よ り 危 険 が 差 し 迫 っ て い る 場 合 に 出 さ れる。だが、日本の場合、いずれも強制力はない。 山崎   災害の恐れがある場合、こんな情報を出しますと、行 政 が 普 段 か ら 住 民 に 伝 え て お か な い と、 突 然、 避 難 勧 告 や 指 示 を 出 し て も 住 民 は 反 応 で き な い。 行 政 と 住 民 が共通認識を持たないと、情報は力を持たない。 大城   土砂災害の発生は予測が困難で、避難勧告・指示の判 断 は 難 し い。 災 害 の 予 兆 を 一 番 に 感 じ 取 る こ と が で き る の は 住 民。 自 ら の 判 断 で 逃 げ て も ら え る よ う、 行 政 と住民が一緒になって対策を講じる必要がある。 横 田   大 分 県 で 土 砂 災 害 警 戒 区 域 の 指 定 が 始 ま っ て 五 カ 月 が た つ が、 具 体 的 な 避 難 体 制 の 整 備 は ま っ た く 進 ん で い な い。 お 年 寄 り か ら 災 害 時 に ど う す れ ば い い の か 分 か ら な い と い う 声

災害と避難

楽観的考えやめて

  災害時、市町村が避難勧告・避難指示を出しても、住民が 避難しないという問題が浮かび上がっている。住民が適切に 避難し、安全を確保するための仕組みづくりが大きな課題と なっている。 横田晃洋記者 大城博課長補佐

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をよく聞く。もう一つ上の段階の防災体制を目指し、 行 政の早急な取り組みが求められている。 安東   間伐、下刈りなど手入 れ が 行 き 届 い た 山 林 に 比 べ て、 放 置 林 は 雨 水 を 吸 収 す る 腐 葉 土 が 少 な く、 保 水 力 が 格 段 に 落 ち る。 近 年、 大 雨 が 降 る と す ぐ に 川 が 増 水 す る と い わ れ、 災 害 を 防ぐ山の機能が低下している。 山 崎   こ れ は 非 常 に 深 刻 な 問 題 だ。 最 近 は 水 害 が 起 き る と、 山からの流木がすごく多い。山林の手入れ不足で、 山の 力 が 弱 ま り、 大 雨 に よ る 水 が 一 気 に 川 に 流 れ て し ま う。 山 の 保 水 力 が 失 わ れ た こ と で、 下 流 域 の 都 市 部 も 一 層 深 刻 な 水 害 に 悩 ま さ れ る 状 況 に な っ た。   安 東   山 林 所 有 者 だ け に 山 林 を 任 せ る の は 難 し く、 県 民 一 体 で 山 を 守 る こ と が 必 要 だ。 大 分 県 は 本 年 度 か ら 森 林 環 境 税 を 導 入 し た。 山 林 は 県 民 の 共 有 財 産 だ と の 認 識 に 立 ち、 ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 な ど、 山 を 守 る 動 き を 支 援 す る こ と も大切だ。 奥田   林業や一次産業の低迷 に よる後継者難は、 地域の 防 災 力 を 低 下 さ せ て い る。 県 内 の あ る 中 山 間 地 の 町 で 高 齢 者 世 帯 を 調 べ た ら、 そ れ ぞ れ の 子 供 の 世 代 は、 実 に 五 割 以 上 が 県 外 に 住 ん

林業不振と災害

保水力失う山林

  長引く木材価格の低迷や、中山間地の過疎化が林業の後継 者不足を招き、杉・ヒノキの放置林が増えている。間伐が遅 れ、荒れた山林は保水力を失い、中山間地の土砂災害や、下 流域の浸水被害を深刻化させている。 安東公綱記者 奥田憲昭教授

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大城   今年七月の大雨で、日田市上津江町の雉矢地区住民が 多数、 自主避難した。消防団員が安否確認などで全戸を 回 り、 確 実 な 情 報 伝 達 を し て い た こ と が 背 景 に あ っ た。 行政としても消防団を頼もしく思っている。 山崎   阪神大震災ではがれきの下から助け出された三万五千 人 の う ち、 二 万 七 千 人 が 家 族 や 近 所 の 住 民 の 救 助 だ っ た。 地 域 の 防 災 力 を ど う 高 め る か は と て も 重 要。 消 防 団 員 の 高 齢 化 や サ ラ リ ー マ ン 化 へ の 対 応 は、 地 元 企 業 や郵便局との連携、OBの協力などが必要だ。 奥田   集落単位では、六十五歳以上の高齢化率が 50%を超え た 所 も 珍 し く な い。 要 介 護 度 が 高 い 高 齢 者 や 障 害 者 は、 自 力 で 避 難 で き な い。 地 域 の 中 の 災 害 時 要 援 護 者( 災 害弱者)をしっかり把握することが大切だ。 富田   行政にもさまざまな課題がある中で、地域住民の役割 がいかに大切かが分かる。 奥田   これからは防災に福祉を組み入れた「防災福祉コミュ ニティー」 づくりを考えていくべきだと提言したい。そ れには、行政と地域の協働が欠かせない。

地域力と防災

住民の役割大きい

  地域住民で組織する消防団(水防団)は住民の救助、避難 で頼りにされる存在。しかし、過疎・高齢化や会社勤めの団 員の増加など、コミュニティーの弱体化が影を落とす。 で い た。 過 疎・ 高 齢 化 が 進 む 地 域 ほ ど、 災 害 発 生 時 は 家 族 に 頼 れ な い。 地 域 の 力、 近 所 で 助 け 合 う 力 が 求 め られる。

市町村合併の影響

職員減補う体制を

  市 町 村 合 併 で 大 分 県 は 五 十 八 市 町 村 か ら 十 八 市 町 村 へ と、 地域が大きく変わった。合併後、旧市町村の役所、役場は新 市 の 振 興 局 や 支 所 と な り、 職 員 数 が 大 幅 に 減 っ た こ と か ら、 防災面での対応力低下が懸念されている。住民への情報伝達 の一元化も新たな課題として浮上した。

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横 田   合 併 後 の 振 興 局 長 や 支 所 長 が、 市 長 に 代 わ っ て 避 難 勧 告・ 指 示 を 出 せ る よ う に す る「 代 理 権 」 を ど う す る か が 課 題 と な っ て い る。 合 併 し た 十 二 市 の う ち 十 市 が 運 用 し て い る。 昨 年 の 集 中 豪 雨、 台 風 災 害 の 教 訓 か ら、 人 命 に か か わ る こ と は、 地 域 の 事 情 に 詳 し い 職 員 の 正 確で迅速な判断が必要との認識が浸透してきた。 安東   防災行政無線、ケーブルテレビなど、災害情報の住民 へ の 伝 達 手 段 は 旧 市 町 村 で ま ち ま ち。 こ れ を 一 本 化 す る に は お 金 も 時 間 も か か る が、 大 切 な 情 報 を 市 民 に 確 実に伝える方策を真剣に検討してほしい。 奥田   日田市と合併した旧日田郡(二町三村)は、職員が半 数 近 く に 減 っ た。 災 害 時 の 対 応 力 の 面 で、 住 民 の 不 安 が 非 常 に 高 ま っ て い る。 合 併 後 の 災 害 対 応 を ど う す る かは、行政にとって大きな責任を負った課題だ。 大 城   災 害 対 策 本 部 が 設 置 さ れ た 場 合、 合 併 で 本 庁 勤 め に な っ た 職 員 で も、 住 ま い が あ る 地 元 で 応 急 対 策 や 情 報 収 集 に 当 た る シ ス テ ム に し て い る 自 治 体 が あ る。 職 員 の 減 少 を 補 う こ と の で き る 防 災 体 制 の 維 持・ 強 化 を 一 生懸命に考えている。 ●山崎登・NHK解説委員の見解

行き詰まり見せる治水対策

       

情報の共通認識を

  最近、国内で起きている水害は、日本のこれまでの治水対 策に限界があることを示している。   降った雨はなるべく早く川に流し、川から出さず、早く海 へと流す―というのが日本の治水対策を貫いている思想だ。   ところが、堤防や下水道を造る際に想定していた雨量(下 水道では一時間に約五〇―六〇ミリ)を超える雨が頻繁に降 るようになった。かつては一〇〇ミリの雨が降るなんて考え られなかった。地球温暖化の影響と考えられている。治水施 設が局地的な豪雨に対応できなくなり、治水対策は行き詰ま りを見せている。   加えて、財源難や自然保護意識の高まりから、次々にダム

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や堤防を造ることが難しくなった。ならば、より多くの人に 危険を知らせ、早めに避難してもらおうと、ソフト対策が重 視されるようになってきた。 そこで新たな課題も生じている。 市町村が避難勧告や避難指示を出しても、住民が逃げてくれ ないという問題だ。   二〇〇四年の台風 23号で、兵庫県豊岡市が四万二千人に避 難 勧 告・ 指 示 を 出 し た が、 避 難 し た の は 一 割 に も 満 た な い 三千八百人だったという事例がある。住民が言葉の持つ意味 をよく理解できなかったからだ。情報の送り手と受け手が共 通の認識を持たなければ、防災情報がその力を発揮し得ない ということを浮き彫りにした。行政に突き付けられた大きな 課題だ。   犠牲者の約 40%を占める土砂災害は、 いつどこで起きるか、 現代の科学では分からない。犠牲者に占める高齢者の割合も 増えている。いざというとき、お互いに助け合えるよう、地 域の防災力をいかに高めるかが大切だ。 行政は地域に対して、 どういう支援ができるか真剣に考えてほしい。   街が整備され、便利になっていく中、人々は雨に対する警 戒 心 を な く し つ つ あ る。 「 少 し ず つ 自 然 が 荒 っ ぽ く な っ て い る」 と認識すべきだ。防災の基本は 「自分の命は自分で守る」 に あ る。 い ま、 「 安 全 」 を 他 人 任 せ に し て き た ツ ケ が 回 っ て きているのではないかと感じる。   【プロフィル】イラン地震、 雲仙 ・ 普賢岳噴火、 阪神大震災、 新潟豪雨災害、新潟県中越地震など、約 20年間にわたって国 内 外 の 災 害 現 場 を 取 材。 98年、 報 道 局 社 会 部 災 害 班 デ ス ク。 2000年から解説委員 (災害担当) 。長野県出身、 五十二歳。

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■オオイタデジタルブックとは  オオイタデジタルブックは、大分合同新聞社と学校法人別府 大学が、大分の文化振興の一助となることを願って立ち上げた インターネット活用プロジェクト「NAN-NAN(なんなん)」の一 環です。  NAN-NAN では、大分の文化と歴史を伝承していくうえで重要 な、さまざまな文書や資料をデジタル化して公開します。そして、 読者からの指摘・追加情報を受けながら逐次、改訂して充実発 展を図っていきたいと願っています。情報があれば、ぜひ NAN-NAN 事務局にお寄せください。  NAN-NAN では、この「明日を守る~防災立県めざして」以外 にもデジタルブック等をホームページで公開しています。イン ターネットに接続のうえ下のボタンをクリックすると、ホーム ページが立ち上がります。まずは、クリック!!! 別 府 大 学 ⓒ 大分合同新聞社 デジタル版「明日を守る~防災立県めざして」 第 28 回 編集     大分合同新聞社 初出掲載媒体 大分合同新聞(2006 年1月 1 日~ 2007 年 3 月 5 日) 《デジタル版》 2012 年 2 月 10 日初版発行 編集 大分合同新聞社 制作 別府大学メディア教育・研究センター 地域連携部/川村研究室 発行 NAN-NAN 事務局    (〒 870-8605 大分市府内町 3-9-15 大分合同新聞社 企画調査部内) ⓒ 大分合同新聞社 ●デジタル版「明日を守る」について  「明日を守る」は、大分合同新聞社が創刊 120 周年記念事 業として大分大学と立ち上げた共同プロジェクトの一環で、 2006 年1月から翌3月まで、同紙朝刊に掲載した連載記事。 今回、デジタルブックとして再構成し、公開する。登場人物 の年齢をはじめ文中の記述内容は、新聞連載時のもの。 2011 年8月5日           NAN-NAN 事務局 大分合同新聞社

参照

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