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日本におけるPR会社のビジネスモデル

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Academic year: 2021

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日本における

PR 会社のビジネスモデル

プリンシパル・エージェント理論による分析

要約 メディア環境が変化した今、PR 会社のビジネスは効果を発揮するときである。しかし 今PR 業界の業績も芳しくない。その原因は費用対効果が不透明であることが大きいと 一般にいわれている。これはプリンシパル=エージェント理論における、観察可能性の 不足ととらえることができる。そこでプリンシパル=エージェント理論の枠組みを利用 し、分析を行い、PR 会社とクライアントの間で起こりうる諸問題を明らかにし、その 分析結果をふまえ、問題を解決しうる新しいPR 会社の在り方を提案した。

丹沢安治ゼミナール

総合政策学部政策科学科

07W1404017K 細田咲恵

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目次 はじめに 1. 研究の動機 2. 問題意識 3. 本書の構成 Ⅰ.先行研究 I-1.分析対象についての先行研究 I-2.使用する理論についての先行研究 Ⅱ.分析対象の紹介 Ⅱ-1.PR とは Ⅱ-2.PR 業務の説明 -株式会社プラップジャパンを例に- Ⅱ-3.PR 会社を取り巻く環境 Ⅱ-4.広告に対するPR の優位性 SIPS モデルへのあてはめ Ⅲ.理論的枠組みによるPR 会社の分析 Ⅲ-1.エージェンシー理論によるプラップジャパンの分析 Ⅲ-2.分析から得られた含意 Ⅳ.政策的提言 Ⅴ.まとめ おわりに 参考文献

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はじめに 1.研究の動機 私が PR について興味を持ったのは、大学2年の夏、『戦争広告代理店-情報操作と ボスニア紛争-』1という本を読んでからである。その本には、ボスニア紛争時にアメ リカのPR のプロが国家 PR を行い、世論を変え、結果的に紛争の情況さえも大きく変 化させた実際の出来事について記されていた。PR の持つ力に驚き、日本でも PR ビジ ネスを行っている会社があると知って調べたのがきっかけである。 2.問題意識 マスコミ業界不況の今、媒体購入を主としないPR 会社のビジネスモデルは注目に値 するものである。消費者のメディア環境が変化を遂げた現代だからこそ、PR 会社の業 務は効果を発揮するはずである。近年のメディア環境の変化により、企業や団体、行政 機関等が広告よりも費用対効果の高いPR を採用する傾向は高まってきている。 しかし、企業内でのコスト意識は依然高く、不安定な景気動向も相まって、広報予算 の支出は未だ削減対象にあり、PR 会社の業績もその影響を受ける結果となってしまう。 しかし、PR 先進国アメリカでは、企業の M&A の際は PR 会社を雇うのが慣例となっ ている程にPR の普及率は高い。 筆者は、日本での普及率の低さはクライアントとPR 会社間のエージェンシー関係に 問題があると考えた。本研究ではこの問題を解決しうるクライアント、PR 会社の2者 間の関係について考える。 3.本書の構成 Ⅰ章にて、PR に関する先行研究、使用する理論であるプリンシパル=エージェント 理論の先行研究を述べる。Ⅱ章ではPR 業務ついて説明し、PR 業界の現状、広告業界 の現状を述べ、消費者行動のモデルとして提唱されている、「SIPS」にあてはめ、PR 会社のビジネスの優位性を述べる。Ⅲ章ではプリンシパル=エージェント理論を使った プラップジャパンの分析を行い、そこから得られる含意について述べる。そしてⅣ章で はⅢ章の分析結果をふまえ「マクロ・モデル」2を取り入れた評価方法を政策的提言と して述べる。 1 高木徹[2005]『ドキュメント 戦争広告代理店』東京:講談社 2 トム・ワトソン、ポール・ノーブル[2007]『広報・PR の効果は本当に測れないのか?』東京:ダイヤモンド社

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Ⅰ 先行研究 I-1.分析対象についての先行研究 これまで PR 会社について研究したものは、『商品パブリシティへの意識に関する調 査研究--PR 会社、広告会社、そして消費者の視点』五十嵐正毅[2010]等の研究のように、 PR 業務の効果について焦点を当てており、PR 会社のビジネスモデルや組織の内部構 造、クライアントとの取引形態に焦点を当てたものは無かった。 そこで本研究は先行研究に不足していた、PR 会社とクライアント間の関係に着目し、 PR 会社の抱える問題点を探っていう点から意義のあるものであると言える。 I-2.使用する理論についての先行研究 プリンシパル=エージェント理論とは、アーノルド・ピコー、ヘルムート・ディート ル、エゴン・フランク『新制度派経済学による組織入門』には、<取引費用理論が経済 行為者間の財・サービスの交換関係をまったく一般的に考察するのに対して、プリンシ パル・エージェント理論は、対象とする財・サービスの交換関係をもっと特殊な委託者 (プリンシパル)と受託者(エージェント)の関係として取り上げる。>3とある。 同文献によると、プリンシパル=エージェント理論とはエージェントと呼ばれる個人 または企業が、プリンシパルと呼ばれる他者のために情報の非対称性の上に行動すると き起こる諸問題を取り上げ、その問題に対する対処法について、エージェントのシグナ リング・コスト、プリンシパルのコントロール・コスト、残された厚生上の損失、の3 つの要素からなるエージェンシーコストに注目し、述べたものである。 諸問題とは、契約の事前におこる、逆選択、事後におこるモラル・ハザードとホール ドアップであり、プリンシパルがエージェントの行動とその結果を観察することが可能 で望ましい行動と結果が計約の中で法的効力のあるかたちで定められていればプリン シパルはエージェンシー関係で起こる諸問題を解決することができる。 しかし、実際にはこのような完全情報の状況はあり得ない為、<できる限り「摩擦の ない」交換・同期化プロセスとの間で厚生を最大化するような折衷案をみつけること> がこの理論の本義とされる。 3 アーノルド・ピコー、ヘルムート・ディードル、エゴン・フランク[2007]『新制度派経済学による組織入門 市場・ 組織・組織間関係へのアプローチ』東京:白桃書房

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本研究ではこのプリンシパル=エージェント理論の理論的枠組みを利用し、クライアン トとPR 会社の契約上起こりうる諸問題を明らかにする。 Ⅱ.分析対象の紹介 Ⅱ-1.PR とは PR とはパブリックリレーションズの略であり、株式会社プラップジャパン第40期 有価証券報告書によると<PR事業は、企業・団体・行政の情報を効果的にステークホ ルダーに発信し、企業・団体・行政に対して良好なイメージを醸成し、信頼感や購買行 動へとつなげていく事業>とある。 そのPR 事業の中で最も代表的なものがパブリシティ活動である。パブリシティ活動 については、上記報告書に<メディア(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・インターネット) 等を通じて、情報をステークホルダーへと到達させる手法は、パブリシティ活動と呼ば れ、クライアントが発信したい情報をメディアの特性やニーズに合わせ、収集・加工を 行い、様々な手段を通じてメディアに発信、テレビのニュースや新聞記事として情報の 受け手へクライアント情報を伝えていくもの>4と記述がある。 また、矢島尚『PR 会社の時代』では、PR について<新製品の情報や企業のおける業 績なお経営情報、人事、海外戦略、M&A などをニュースとして、マスコミに取り上げ てもらうよう働きかけをすること>と説明しており、実際のPR 業務の種類は多岐にわ たるが一般的理解としてはパブリシティ活動が主なPR 業務であると考えてよい。 Ⅱ-2.PR 業務の説明 -株式会社プラップジャパンを例に- PR 業務の説明として、株式会社プラップジャパンを例にあげる。 株式会社プラップジャパンは日本有数の総合PR 会社である。具体的なサービス内容 は、コミュニケーションサービスとクリエイティブサービスに分けられており、コミュ ニケーションサービスは、クライアントのPR戦略のコンサルティングから実際に企業 が発信したい情報を適切なタイミングで適切なメディアに、適切な方法で提供するメデ ィアリレーション業務まで行っている。また、企業の不祥事等の危機管理に対応するた めのクライシストレーニング、企業経営者のメディア対応力を強化するメディアトレー 4株式会社プラップジャパン『有価証券報告書 第 40 期(2009 年 9 月 1 日 ‐ 2010 年 8 月 31 日)』

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ニングのサービスの提供も行っている。クリエイティブサービスは、PRの素材として のPRイベントの企画実施やPR誌等のコミュニケーションツールを制作している。 ※株式会社プラップジャパン第40期有価証券報告書より ここで、業務内容をより深く理解して頂く為に、一つ事例を挙げる。2005 年秋に行わ れた総選挙で自民党をクライアントとした、政党PR についてである。 自民党の広報部が開催したコンペティションによって選ばれたプラップジャパンは、 プレスリリースの発行を提案、自民党の広報の問題点を摘出、広告制作の際の提案、問 題時のテレビ出演での対応のアドバイス等、広報、PR におけるコンサルティング業務 を主として行った。これはサービス内容でいう、コミュ二ケーションサービス、クライ シストレーニング、メディアトレーニングにあたる。この事例でもそうだが、サービス の内容は複合的であり、1つのサービスに対する対価を支払うという料金体系では難し く、人件費のみを請求する、フィー制をとっている。 Ⅱ-3 PR 会社を取り巻く環境 PR 会社の現状を理解するうえで、広告業界の現状を理解することは非常に重要である。 まずは広告業界の現状から述べる。 によると、<2009 年の総広告費は 5 兆 9,222 億円、前年比 88.5%と 2 年連続で減尐>とあ る。その中でもマスコミ4媒体(テレビ・新 聞・ラジオ・雑誌)は大幅に減尐し、前年比 85,7%となった。この現象の主な原因として あげられる理由は大きく2つある。ひとつは、 クライアントとなる企業が金融危機の影響を 受け、広告費を削減しているということ。も う一方は、消費者のメディア環境の変化であ る。メディア環境の変化とは、佐藤尚之『明日の広告』によると、<4大マスメディア以 ※株式会社電通『日本の広告費(2009)』より

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外に多くのメディアが誕生し、また、消費者は多くの娯楽を享受することができ、4大マ スメディアの効果が薄れてしまった。また、インターネット等、消費者が自ら情報発信す ることが可能となり、企業側が発する広告による情報を鵜呑みにするのではなく消費者自 身が吟味して情報を選択できるようになり、消費者のマスコミ、広告への信頼度が薄まっ てしまった。>とある。このような理由から、日本最大手の電通も 2007 年から、当期純利 益が年々減尐しているという現状にある。 Ⅱ-4 PR 業界の現状 広告業界の不振が叫ばれる中、PR 会社は広告・広報業界で有望なビジネスモデルといえ る。その理由としては、1.広告代理店によるプロモーションよりも低価格で広報が行え るということ 2.変化した消費者にも比較的受け取られやすい、第三者からの情報発信 を主な広報手段としていること が挙げられる。 このような要素もあり、PR 業界の市場規模は2008年では741億円となり、2 006年より13.4%増加した。また、2008年に行ったPR 会社へのアンケート 調査では、これからの市場予測について60%の企業が、売上高を予想し、不況時の PR 業務の需要についても、78%の企業が重要の増加を予想した回答であった。(日本 パブリックリレーションズ協会調べ) ※2008年 日本パブリックリレーションズ協会調べ しかし、現在PR 会社各社の業績は芳しくない。財務状況を公開している大手 PR 会 社2社の当期純利益をみると、株式会社プラップジャパンは平成19年を境に減尐し、 株式会社共同 PR については平成20年から当期純利益は大きくマイナスの値に陥り、 深刻な赤字財政となっている。 Ⅲ-4 PR 業界を有望視する裏付け 「SIPS」による考察

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PR 業界の現状は上記のように芳しくないが、なぜ現在、PR 会社が有望であると述べてい るか、消費者行動モデルの新しい考え方である、「SIPS」にあてはめ、説明する。

「SIPS」とは、「AIDMA」「AISAS」に続く消費者行動モデルの新しい考え方である。

S は(Sympathy:共感)を表し、I は(Identity:確認)を表し、P は(Participation: 参加)を表し、最後の S は(Share:共有)を表している。まず消費者は、情報を受け、 共感し、真意を確認し、その情報の内容によっては参加をし、他人と共有することで、 また情報が発信されるという流れである。クリエイティブディレクターの佐藤尚之によ ると、<(このモデルによると)共感喚起を中心にした「広告」よりも、「普段の企業 活動」や「ソーシャルメディア上での企業の『ふるまい』」が大きく関係してくるもの になるだろう。そして「興味」を経て「企業活動に参加」し、その過程や結果や将来像 をソーシャルメディア上で「共有」する。そしてそれがまた「共感」につながって…、 と、サイクル化していく。この結果、企業と生活者は長い関係性を築いていくことがで きる。>とある。 また、SIPS には購買(消費)が無いが、これは「企業活動への参加意識」に取って 代わられる。物は買うわけだが、それは企業の社会活動への参加感に近い感覚になるの ではないか。「P」が「Purchase」ではなく「Participation」であるところが、ソーシ ャルメディア時代の消費行動の特徴であると、 佐藤は述べている。 これに PR 会社のビジネスをあてはめると、 <S:共感>の時点では、広告代理店が発信す る企業側からのメッセージを受け取るよりも、 PR 会社のパブリシティー活動によって第三者 であるメディア媒体が発信するニュースや新 聞記事などの方が消費者の共感を得られやす い。 また、<I:Identity>において、消費者は ニュースや記事から受け取り、興味を持った情 報を自ら検索し、真実かどうか確認する。これ は、広告のモデルでも同じことであり、メディアに触れる機会が多くなった消費者は、 その情報が真実かどうか自らの目で確認するのである。 そして、<P:参加>においては、消費者は PR 会社の行うイベントが当てはまるとい える。例として、株式会社プラップジャパンが行った、避妊薬のキャンペーンなどがあ げられる。プラップジャパンは、避妊薬の安全性を PR し、日本での浸透を図るという

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ミッションにおいて、「セルフカフェ」という期間限定のカフェをオープンさせ、その 場に来た消費者に避妊薬の安全性を理解してもらうための仕掛けをした。こういった、 消費者参加型のプロモーションという面でも、広告媒体を頼りにする広告代理店のビジ ネスモデルよりも PR 会社のビジネスの方が有利であるといえる。 最後の、<S:共有>において、これは広告代理店、PR 会社両者とも可能であるが、 PR 会社のプロモーションの方がより高い効果を得られると考える。情報を受けた消費 者が、経験をし、その感想を mixi や twitter 等で述べる。そしてその情報を他人と共 有する。この点においては、共有させたいほどその情報を理解していることが重要であ り、「参加」をしている方がより「共有」までつながりやすいのである。したがって、こ の点においても PR 会社のプロモーションの方が、より高い効果を得られると考えられる。 SIPS モデルへの当てはめにより、現在の消費者行動には広告よりも PR の方が適応している ということがわかった。しかし、この結果があるにも関わらず、PR 会社は業績が芳しくな い。これは何故か、以下で説明する。 Ⅲ.理論的枠組みによるPR 業界、PR 会社の分析 Ⅲ-1.エージェンシー理論によるプラップジャパンの分析 PR 会社が行うプロモーションについては、現在の変化した消費者行動に適応した、効果 を期待できるものであると分かったが、それでもなお業績が芳しくない理由はクライアン トと PR 会社間の契約関係にあると考えた。クライアントと PR 会社の契約方法は現在、フ ィー制となっている。宣伝会議アドバタイムズ 2009 年1月1日号によると<広告会社は、販促 物の制作や PR 戦略、商品開発などのプランニ ング業務が増えており、それらの業務は「コミ ッション制」ではサービスとなってしまい、広 告会社は充分な利益を上げられなくなってきて います。>とある。欧米の広告会社ではフィー制 が多い。日本の広告会社のフィー制への移行が望 まれるなか、PR 会社はコミッション制ではなく、 フィー制を利用している。こうして考えると、契 約方法としては好ましいはずである。そのフィー 制で契約をする2者関係についてエージェンシー 理論を使い分析する。 ※筆者作成

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クライアント(プリンシパル)PR 会社(エージェント)として考える。 プリンシパルはエージェントの観察を、プロジェクト終了後の報告書、また、プロジェク トを行う際にクライアント企業に駐在する PR 会社社員の観察のみで行う。(この報告書と は、プロジェクト終了後にメディアにどれだけ露出したかを図るものであり、商品の PR の 場合を考えると、PR の効果から、商品購入にどれだけ至ったかを明らかにするものではな い。)この場合、駐在社員をおいて共同で作業を行う場合を別として、エージェントに支 払う人件費が、プロジェクトの効果に比例しているものなのかを図ることは困難である。 ここで、プリンシパルのコントロールコストが生じる。更に、エージェントは効果を計り にくいプロジェクトの結果をプリンシパルに伝えるために多大な時間と人件費を費やすこ とになる。(全国の新聞、雑誌記事の調査だけも、1日では終わらないと現場社員は語っ ている)これは、エージェントのシグナリング・コストが生じていると考えられる。こう して、厚生上の損失、つまりプリンシパルのコントロール・コストとエージェントのシグ ナリング・コストがかかっているために、完全情報が実現した状況からの乖離が生じる。 ここから生じる問題が3つある。 1つは「逆選択」である。エージェント(PR 会社)によって提供される財・サービスに かかわる特性について、契約締結より前に、知ることができないために、質の悪いエージ ェントが、この特性を意識的に隠し、質のよいエージェントがこの特性を知らしめること ができず、市場から脱出するという危険が考えられる。 次に危惧されるのは「モラル・ハザード」である。ここではプリンシパルとエージェン トの関係の中で生じる、情報の非対称性が問題となる。プリンシパルは、プロジェクトの 進行具合を逐一報告してはいるが、その成果がどのようなものなのかを自身で評価するこ とができない。(PR 業務への知識の不足による)そこで、エージェントの努力水準がどの ようなものなのかを知ることが出来ないために、エージェントが怠慢を起こす可能性があ る。また、プロジェクト終了後も、報告書が実際の成果と結びつくものであるとは言い難 いものであるため、そこから評価をすることも困難である。この問題が、プリンシパルが 支払うフィーは相応なものなのかを考える点においてもっとも考慮しなければならない点 である。 Ⅲ-2.分析から得られた含意 プリンシパル・エージェント理論の分析結果から、現行の契約形態であると、プリンシ パルのコントロール・コスト、エージェントのシグナリングコストが高いため、逆選択や モラルハザードが生じる危険性があるため、企業は PR 会社を利用しないのであると考えら

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れる。ではこの問題を解消するための提案を以下に述べる Ⅳ 政策提言 「プロジェクト進行中に評価基準を定める」 上記の分析結果から、PR プロジェクトは結果がみえにくい(観察可能性が低い)ためにコ ントロール・コスト、シグナリングコストが高いということがわかった。本来ならば結果 を透明化させるための提案をしたいところであるが、数多くの文献からも明らかになって いるように、広告やプロモーションが人間の購買行動に与える影響を完全に数値化して明 らかにすることは非常に困難である。そこで、プロジェクト進行途中に評価基準を定める 方法を提案する。オーストらリアの評価専門家である、ジム・マクナマラは、マーケティ ング学者である、フィリップ・コトラーの、企業活動のマクロ環境にちなんで、「マクロ・ コミュニケーション」と名づけたモデルを開発した。このモデルは、インプットの段階か ら評価を開始し、アウトプット、結果にわたるまでの一連の流れを時系列にそって評価し ていくというものである。 ※ ジム・マクナマラ提唱 マクロ・モデル このモデルを PR 会社のプロジェクト進行に取り入れ、プロジェクト進行と平行して評価を 行うことにより、プリンシパルのコントロール・コストが削減され、エージェントにおい ても、プロジェクト進行と同時に「小分け」して評価をしていくことができるので、負担 が軽減され、シグナリングコストは低くなるのではないかと考える。 Ⅴ.まとめ PR 会社のビジネスが現在の消費者行動モデルにおいて有望であるということを「SIPS」の

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モデルにあてはめ述べた。そしてそれでもなお業績が向上しない理由を、PR 会社とクライ アントとの2者関係を、プリンシパル=エージェント理論にあてはめ明らかにした。そし てその結果、2者間における評価の方法を変化させることが情報の非対称性を緩めるため に必要であると考え、ジム・マクナマラ提唱のマクロ・モデルを PR 会社の評価方法に加え た新しい評価モデルを提案した。 おわりに 本稿を完成させることができたのも、指導がご鞭撻いただいた丹沢先生、丹沢ゼミナール の学生のおかげです。心より感謝申し上げます。

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参考文献 デイビッド・べサンコ、デイビッド・ドライブ、マーク・シャンリー[2002]『戦略の経済 学』東京:ダイヤモンド社 アーノルド・ピコー、ヘルムート・ディードル、エゴン・フランク[2007]『新制度派経済 学による組織入門 市場・組織・組織間関係へのアプローチ』東京:白桃書房 スイッツェ・ダウマ、ヘイン・スクルーダー[2007]『組織の経済学入門』東京:文眞堂 トム・ワトソン、ポール・ノーブル[2007]『広報・PR の効果は本当に測れないのか?』東 京:ダイヤモンド社 和田充夫、恩蔵直人、三浦俊彦[1996]『マーケティング戦略』東京:有斐堂 矢島尚[2006]『PR 会社の時代』東京:東洋経済新報社 矢島尚[2006]『好かれる方法 戦略的 PR の発想』佐藤尚之[2008]『明日の広告』東京:ア スキー新書 株式会社プラップジャパン『有価証券報告書 第 40 期(2009 年 9 月 1 日 ‐ 2010 年 8 月 31 日)』 財団法人日本パブリックリレーションズ協会 プレスリリース『PR 業界の市場規模は 推計741億円。2年で13%の伸び。』(2009 年 5 月 21 日) 株式会社電通『日本の広告費』(2009 年) 株式会社プラップジャパンホームページ http://www.prap.co.jp/ (最終閲覧年月日 2011/1/12) 株式会社共同ピーアールホームページ http://www.kyodo-pr.co.jp/ (最終閲覧年月日 2011/1/12)

参照

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