平成27年度
オリンピック・パラリンピック教育推進校の
実践報告
平成28年4月21日
ティアラ江東
平成28年4月26日
北とぴあ
東京都立三田高等学校
国際教育部主任
主任教諭 川口 直弘
国際理解シンポジウムとしての
取組の紹介
・対象・・・1年生
・実施日・・・平成28年3月23日
・形態・・・2名のパラリンピアンを講師に招いて、
シンポジウム・生徒との協議・実演
・内容・・・障害者スポーツへの理解
車椅子バスケットとアイスレッジ
パラリンピックの歴史と様々な種目
日本と世界の障害者理解の違い
時間
必要時間
内容
担当
備考
10:30
5
Introduction
先生
10:35
20 自己紹介 (各 10分)
根木・山本
根木さんは競技用バス
ケ車で少しバスケットを
披露 山本はビデオを使
用しスレッジホッケーの
紹介
10:55
20 パラリンピックとは
山本・根木
スライド・写真・ビデオを
使用しパラリンピックとは
何かを説明する
日本と外国、バリアフリーはどち
らが進んでいますか?
根木・山本
海外生活で一番大変なことは何
ですか?
山本
日本と外国人の接し方の違いは
ありますか?
根木・山本
日本は、車いすテニスやバスケ
など、障がい者スポーツが浸透
しているイメージがありますが、
外国はどうですか?
山本
11:55
20
12:15
10 障がいとは
根木・山本
障がいとは何かを生徒
に伝える
生徒からの質問受付 (その場で)
40
11:15
生徒の事前質問へ回答コーナー
≪ パネリスト ≫
根木 慎志氏
車椅子バスケットボール選手
シドニーパラリンピック
男子車椅子バスケットボール日本代表キャプテン
山本 恵理氏
元カナダ女子アイススレッジホッケーチーム代表
日本財団パラリンピックサポートセンター
推進戦略部プロジェクトマネージャー
オリパラ教育推進校報告 東京都立三田高校国際教育部主任 川口 直弘 1.概要 3月23日(水)10時半~12時50分 1学年7学級 校内の講堂と体育館で実施。 講師としてシドニーパラリンピック車いすバスケット日本代表キャプテン根木慎志氏 アイスレッジホッケー元カナダ代表 山本恵理氏による国際理解シンポジウム 事前にお伝えした質問にパネルディスカッション形式で答えていく全体講演に続き、体育 館での車椅子バスケット実演。 2.シンポジウムの目的 ①国家代表選手として世界のトップパラアスリートたちと交流してきた体験を知ることで、 国際理解を深める。 ②講師の対談を通じて、未来を切り拓き、自ら挑戦する生き方を学ぶキャリア教育の機会 とする。 ③障害について正しく理解し、すべての人が尊重され、共生できる住みよい社会(世界) について考える。 3.準備 事前に1学年国際理解委員14名で、シンポジウムで知りたいことを話し合い、質問を考 えさせて決まった内容を講師に伝え、当日の流れを決定した。委員会生徒が司会、お礼の 言葉、活動報告の壁新聞など役割分担を行い、パソコンや音響設備の準備は放送部生徒が 担当した。 生徒たちの質問 ・車いすバスケ(アイスレッジホッケー)をどこで知りましたか? ・それを始めて一番苦労したことは何ですか? ・外国や国内で、車いすに乗っていて周囲の人の対応で困ったことはありましたか? ・もし事故に合われなかったらやりたかったこと、高校生当時、夢はありましたか? ・日本と外国人の接し方の違いはありますか? ・日本と外国、バリアフリーはどちらが進んでいますか? ・日本は、車いすテニスやバスケなど、障がい者スポーツが浸透しているイメージが ありますが、外国はどうですか? ・海外生活で一番大変なことは何ですか? ・車いす生活になって得られたことはありますか?
4.当日の流れ シンポジウムタイトル「パラスポーツを通じた国際理解」 時間 必要時間 内容 担当 備考 10:40 5 Introduction 司会生徒 10:45 15 自己紹介 (各 7-8 分) 根木・山本 根木さんは競技用バス ケ車で少しバスケットを 披露 山本はビデオを 使用しスレッジホッケー の紹介 11:00 20 パラリンピックとは 山本・根木 スライド・写真・ビデオを 使用しパラリンピックと は何かを説明する 11:20 40 生徒の事前質問へ回答コーナー (生徒が司会進行を担当) 日本と外国、バリアフリーはど ちらが進んでいますか? 根木・山本 海外生活で一番大変なことは 何ですか? 山本 日本と外国人の接し方の違い はありますか? 根木・山本 日本は、車いすテニスやバスケ など、障がい者スポーツが浸透 しているイメージがありますが、 外国はどうですか? 山本 12:00 15 生徒からの質問受付 (その場で) 12:15 10 障がいとは 根木・山本 障がいとは何かを生徒 に伝える 12:25 5 お礼の言葉 司会生徒 12:30 10 体育館への移動と実演準備 12:40 10 根木さんによる車いすバスケ実演 応援が持つ力を体験。 会場が一体に。 13:00 60 教員向け研修会
5.シンポジウム詳細 ①パラリンピックとは カナダのアルバータ大学大学院障害者スポーツ専攻で発表した英語によるスライドでパラ リンピックの競技数などクイズを出しながら山本さんが発表。競技の映像も見る。 ②日本と外国、バリアフリーはどっちが進んでいる? カナダと比べると、日本の方が遅れている。日本は障がい者を特別扱いする。カナダは、 障がい者が自分でできるような工夫が社会で進んでいる。自分でボタンを押せば電車に乗 れるとか。 ③海外で一番大変だったことは。 英語。英語が通じない。マクドナルドの注文さえちゃんとできなかった。スーパーの買い 物。なにかいわれてとにかく NO と言ったら、大量の商品を自分で抱えて泣きながら帰る ことになった。 ④障がい者に対する接し方の違いは 日本は、並んでいると車いすを先に入れてくれたり、定員が気を使ってくれたりする。 でも、駅のエレベーターではわれ先にとビジネスマンが押し入って何度も待たされたりも する。自分の郵便をなぜか自分ではなく夫に渡そうとする。自分のものなのに。カナダで は、店で「ちゃんと並べ!」と怒鳴られ、自分の番が来たところで「ちょっと待ってろ」 と言われ待っていると、陳列棚の高いところにあるものをわざわざ見えるようにプレート に並べて見せてくれた。カナダの方が当たり前の人間として扱われ、ちょっとした優しさ を感じられる機会が多い。 ⑤日本と海外、どちらが障がい者スポーツが進んでいるか 小学校の体育の授業では、心配されて、配慮という言葉のもとにやりたいことをさせても らえなかった。障がい者の自分が障がい者について研究する必要があるとは思っていなか った。障がい者について周りの人が理解してくれたらいいと思っていたが、カナダへ渡っ たとき、教授が「経験してきたあなたしかわからないことがたくさんある。あなたしか発 信できないことが沢山ある。」と言われ、障がい者について、障がいスポーツについて研究 を始めた。日本は、アイスレッジホッケーをできる環境がない。チームもない。スケート リンクが傷つくという理由で使わせてもらえない。それならアイスホッケーは傷つかない のか。偏見だと感じている。 ⑥ 障がいとは何か 障がいとはただの行政用語に過ぎない。舞台の上で話をしている私たちを見て、不自由だ と思いましたか?何の不自由もありません。では、この会場に登場してから、今までの時 間で不自由だと思った人はいましたか?はい。壇に上がるときに、スロープがありません でした。4人の生徒に助けてもらって、上がることができました。そういう意味で、スロ
ープがないことが私にとっては障がいになりました。障がいは、障がい者にとってその人 にあるのではなく、段差や、電車に乗るまでの隙間が障がいになります。 ⑦ 質問:高3で交通事故に遭い、車いすを強いられ、それからバスケットを始め、日本 代表に選ばれるまでどうやって困難を乗り越えたのですか? 夢を叶えるには2つの方法しかない。夢を見ること。そして、その夢を信じることだ。パ ラリンピック選考にもれたとき、バスケを半年辞めた。でもパラリンピックの開会式で仲 間の笑顔を見たとき、涙が流れて、もう一度やろうと決心した。トレーニングで気絶した こともあった。でも、苦しいときも笑って乗り越えてきたのは、夢があったから。必ず行 く、そう宣言してからは努力は苦痛ではなくなった。 6.生徒感想抜粋 ・障がいについての考えが変わった。今まではかわいそうだと思っていたけれど、今日の 講演を聞いてかっこいいと思った。 ・カナダと日本の違いを聞いて思いやりの方向が今の日本は間違っていると思った。 ・障がいとは、健常者と違っている部分と思っていたけれど、そうではなく生活する上で 障害となるものだということがわかった。 ・スポーツは観戦していてやっぱり楽しい。 ・今まで聞いた講演の中で一番感動して、共感できる内容だった。 ・「信じたら夢は叶う。」根木さんが言うから本当にそうなんだと思えた。一番になれる人 は、信じることができる人なんだとわかった。 ・「パラリンピックが終わったその日、4年後、出ますからよろしく、と代表コーチに電話 した。ゴールが決まっているから、がんばれる。」という言葉が胸に響いた。 7.まとめ 今回のシンポジウムは「国際理解」「障がい者理解」「オリンピック・パラリンピック理 解」「進路キャリア教育」という4つの側面を持つ非常に充実した行事となった。その中で も特に、ほとんどの生徒が障がいについての認識が変えられたと振り返っていると共に、 自分の進路について奮い立たされるような勇気を与えられている。休み時間無しの2時間 のパネルディスカッションに続く体育館の実演でも、車椅子を使ってコートを縦横無尽に 駆け回る自由な姿に釘づけとなり、多くの女子生徒から「かっこいい」という憧れの声が 聞こえた。みんなが信じればこのボールがリングに吸い込まれていく、と語りながら3ポ イントシュートが決まるその瞬間を共有したとき、根木さんを中心に会場が一体となった。 その時の感覚は応援する側にとっても、される側にとっても忘れられない、「出あった人と 友達になる」をモットーとしている根木さんの言葉を実感させるものだった。