災害時における訪日外国人旅行者への
情報提供のあり方に関する提言
内容
1. はじめに ... 3 1.1 検討の背景と訪日外国人旅行者に対する災害時の情報提供の必要性 ... 3 1.2 東日本大震災時における、訪日外国人旅行者及び旅行者に対応した関係機関の状況 の整理 ... 4 1.2.1 各関係機関の情報提供の状況 ... 4 1.2.2 海外事例調査 ... 10 2. 訪日外国人旅行者が必要とする情報の整理 ... 13 2.1 訪日外国人旅行者の類型 ... 13 2.2 訪日外国人旅行者が必要とする情報の整理 ... 13 3. 効果的な情報提供を可能とする災害時情報提供ポータルサイトの設定と 活用方法 ... 21 3.1 効果的な情報提供について ... 21 3.2 災害時情報提供ポータルサイトの位置づけ ... 22 3.3 災害時情報提供ポータルサイトに盛り込む情報とその用途 ... 243.4 災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の運用方法 ... 36
3.5 災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)で用いる言語について ... 36
4. 災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の運営における関係機関 の協力と連携 ... 38
4.1 災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の運営における関係機関 の協力 ... 38
4.2 訪日外国人旅行者への情報提供における関係機関の連携 ... 38
5. 今後必要となる取組 ... 40
5.1 災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の周知について ... 40
5.2 災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の運営における関係者の 協力 ... 40
5.3 災害時における初動対応のあり方 ... 41
1.
はじめに
1.1
検討の背景と訪日外国人旅行者に対する災害時の情報提供の必要性 観光立国実現のためには、自然災害の多い日本においても訪日外国人旅行者が安心して旅 行することのできる環境を整え、訪日外国人旅行者の受入体制を世界に向けてアピールする ことが重要である。 特に東日本大震災等の大規模な災害が発生した際には、正確な情報を迅速に提供すること が重要であるが、訪日外国人旅行者に対しては、言語面での障害や利用可能なメディアに制 約があるため、正確な情報を迅速に提供することが難しいという課題がある。震災発生時に は、外国人観光案内所(TIC)への電話での問合せが非常に多く、情報提供における外国人 旅行者への対応の必要性が明確となった。このため、自然災害等緊急時において訪日外国人 旅行者が情報難民となるリスクを軽減するため、情報提供体制を整え、安全・安心の信頼を 提供することで、今後の訪日旅行需要の維持・拡大を図る必要がある。 このような状況に対応するため、観光庁では、「災害時における訪日外国人旅行者への情 報提供のあり方に関するワーキング・グループ(WG)」を、「訪日外国人旅行者の受入環境 整備に関する検討会」に設置し、本提言を取りまとめた。 本提言のとりまとめに際しては、上記 WG に合わせて、災害時における訪日外国人旅行 者への情報提供に関する国内外の情報提供事例調査(訪日外国人旅行者、及び旅行者に対応 する関係機関へのインタビュー等)を実施した。調査の結果、実際に訪日旅行中に東日本大 震災を経験した訪日外国人旅行者の多くが、情報提供が不足していたと感じていたこと、ま た、災害発生直後に様々な情報を必要としており、自ら携帯端末等を利用して情報を入手し ようとしていたことなどが明らかとなった。 本提言では、これらの調査結果を踏まえ、災害時における情報提供のあり方を示すととも に、今後必要となる取組としての課題整理を行う。 なお、本提言では、今後発生する可能性が高いとされている大規模地震を主に想定して策 定しているが、風水害、火山噴火等の地震以外の災害に関しても本提言を参考に、情報提供 をしていくことが有効と想定される。1.2
東日本大震災時における、訪日外国人旅行者及び旅行者に対応した関係機関の状況 の整理 1.2.1 各関係機関の情報提供の状況 今回の調査では、以下の調査を実施した。 国内事例調査 (1) 1)関係機関ヒアリング調査 a. 調査概要 東日本大震災発生時に、訪日外国人旅行者に対応した関係機関が感じた課題や今後の期待 についてヒアリングにより調査した。調査概要を以下に示す。 z 調査対象 9 旅行会社等 5 機関、 通訳ガイド 3 名 9 交通機関(航空会社、鉄道会社等) 11 機関 9 大使館等 8 か国・地域 9 行政機関(気象庁、自治体) 3 機関 9 Web ポータル 2 社 z 調査実施期間 9 2012 年 6 月~11 月 z 調査項目 9 震災時の状況 9 訪日外国人旅行者向け情報提供の対応状況 (平常時、地震発生当日、発生時から2・3日間、発生時から1 週間。) - 実際に訪日外国人旅行者に提供していた情報について。 - 訪日外国人旅行者から求められた情報について。 - 訪日外国人旅行者への情報提供に際して困ったこと、もしくは役立った ことについて。 9 災害時情報提供ポータルサイトへの期待 9 その他課題 b. 各関係機関の情報提供の状況 東日本大震災発生時における各関係機関の情報提供は、以下に示す状況となっている。(ア) 旅行会社等 多くの旅行会社は震災時に、予め定められた手順にしたがい、訪日外国人旅行者への対応 を行っていた。具体的には、まず訪日外国人旅行者本人の安否確認を行い、次に、滞在ある いは帰国について個別に旅行者の意向を確認し、宿泊先の確保や航空便の手配を行った。さ らに、旅行者の母国の旅行会社を通じて海外にいる家族へ連絡を取り、本人の安否情報及び 旅程変更等を伝えるなどの対応も行った。 (イ) 交通機関 航空会社は、個人旅客に対し、Web サイトやメールを通じた情報連絡を積極的に推進し ており、震災時にもWeb サイトのトップページにアナウンス等を掲載し、またメールでフ ライトの状況を配信するなどの対応を行っていた。一方で、鉄道会社は、駅や電車内に滞留 する不特定多数の顧客を相手にすることから、駅のディスプレイや手書きの表示、車内での 放送等の対応を中心に行っていた。駅や空港など一般の帰宅困難者が多く滞留する場所では、 日本語での情報提供も限界がある中で、多言語での情報提供は不足していたとの認識があっ た。 (ウ) 大使館 各国大使館の多くは、海外からもスタッフを集めて対応の人員を増員し、被災地や空港(成 田・羽田)に職員を派遣していた。また、いずれの大使館も Web サイトや SNS を使って 情報を積極的に発信し、災害時の自国民の行動方針(日本国内に滞在もしくは帰国等)に応 じた総合的な情報提供を行うとともに、コールセンターで個別の相談対応も行っていた。ま た、米国、韓国、オーストラリア等においては、海外に滞在する自国民むけの任意の登録制 度を設定しており、旅行者がインターネット上で事前にメールアドレスを登録したり、スマ ートフォンにアプリを入れたりしておくことで、災害等発生時にはメール等で直接母国政府 からの情報を受け取ることができる仕組みを構築している。 (エ) 行政機関 日本国内の行政機関については、東日本大震災の際には、一般の帰宅困難者が多数おり、 また行政機関自身も被災していたことから、訪日外国人旅行者への対応は十分にはできなか ったとの状況認識があった。また、外国語で避難や安全確保の方法を伝える際も、言葉がス ムーズに通じない、そもそも訪日外国人旅行者の中には地震の知識が不足している場合があ るなど、コミュニケーションに困難が生じた状況も認識されている。
2)訪日外国人旅行者に対する調査 a. 調査概要 (ア) 外国人調査(グループインタビュー) 東日本大震災発生時に、実際に日本にいた外国人が感じた情報ニーズと情報媒体の利用状 況、課題と今後の期待についてフォーカスグループインタビュー調査を行った。調査概要を 以下に示す。 z 調査対象:以下の条件で対象者を選定 9 韓国、中国、台湾、香港、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーラ ンド、カナダの国籍を持つ在日外国人。 9 2010 年 10 月以降に来日し、 東日本大震災発生時に日本に滞在。 9 震災発生時、日本語で十分なコミュニケーションができない語学レベル。(日本 語の標識が読めない、日本語のアナウンスが聴き取れない等) z 対象者の言語別構成 9 合計:36名 (・英語12名 ・北京語12名 ・広東語6名 ・韓国語6名) z 調査項目 9 基礎情報(職業、出身国、使用言語、震災発生時の日本語能力) 9 訪日前及び訪日中の日本に関する情報 - 訪日前に日本に関する情報収集のために利用した情報源及び媒体(書籍、 雑誌、Web サイト(ブログ、SNS 等)) - 訪日中のPC、携帯電話、スマートフォンの利用状況 - 震災発生前及び発生後の情報収集に利用した情報源 (検索エンジン、 ニュースサイト、行政機関・企業のサイト、口コミサイト、SNS 等) 9 震災発生時の状況・経験 - 震災発生時に滞在していた場所、震災発生直後に取った行動、必要とし た情報(入手できた情報、入手できなかった情報) - 実際に得た情報の情報源・媒体、情報収集で困難だった点・役立ったこ と 9 情報提供内容・方法に対する意見・要望 - 災害時に提供してほしい情報の内容、情報提供手段 - 災害時情報提供ポータルサイトへの意見、要望調査項目 (イ) 訪日外国人旅行者調査(メールインタビュー) 東日本大震災発生時に、実際に日本にいた訪日外国人旅行者が感じた情報ニーズと情報媒 体の利用状況、課題と今後の期待について、メールによるインタビュー調査を実施した。調 査概要を以下に示す。
z 調査対象: 9 「東日本大震災発生時に日本に滞在」していることを条件とし、ゲストハウスや ホテル、旅行会社等のネットワーク等を通じて募集 9 英語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓国語 (韓国) 各20 名 z 調査実施期間 9 2012 年 9 月~12 月 z 調査項目 9 基礎情報(年代、性別、職業、居住国、母国語、スマートフォンの所有状況) 9 震災発生時の訪日状況 - 入国日、出国日、滞在期間、同行者、訪日の主な目的、主な滞在場所、 日本国内で訪れた地域、滞在中の携帯電話・スマートフォンの利用、当 時の日本語レベル 9 震災発生時の状況 - 震災発生時(2011年3月11日午後)にいた地域、感じた地震の揺 れの程度、地震発生時に滞在していた場所 - 震災発生時に利用した情報源と必要としていた情報内容 9 災害発生時の情報提供方法に関する意見・要望 - 災害時に訪日外国人旅行者に提供すべき情報の内容、情報提供手段、使 用言語 (ウ) インターネット上の情報調査 a.、(イ).の調査によって言及された、東日本大震災発生時に日本にいた外国人の多くが利用 していたポータルサイトやメディアのサイトから提供されていた情報をインターネット検 索により調査した。調査概要を以下に示す。 z 調査対象 9 外国人グループインタビュー、訪日外国人旅行者メールインタビューで複数の被 験者から参照先として取り上げられていたポータルサイト、メディアのサイトの うち、現在も当時の記載内容が確認できたもので、2011 年 3 月 11 日~31 日に 掲載されたもの。 z 調査実施期間 9 2012 年 9 月~10 月 (エ) 訪日予定外国人旅行者Web アンケート調査 今後、訪日を予定している外国人を対象に、訪日中に災害が起こった場合に期待する情 報提供の方法・内容等をWEBアンケートで調査した。調査概要を以下に示す。
z 対象者 9 今後数年以内に日本への旅行を予定、又は検討している海外在住の外国人を対象 9 対象人数: 約200 人×7 か国・地域 (韓国、中国、台湾、香港、アメリカ、イギリス、ドイツ) z 調査実施時期 9 2012 年 10 月 z 調査項目 9 基礎情報 :年代・性別、言語(使用言語、日本語能力)、過去の訪日回数 9 訪日計画 :訪日予定の有無、訪日時期、訪日目的、同行者の有無(家族/友人 等)、形態(ツアー/個人旅行) 9 災害・防災に対する知識 :日本の災害形態についての知識(地震、津波、台風・ 豪雨、火山噴火等) 9 訪日前・訪日中の情報源・媒体 - 訪日前の情報収集に利用する情報源・媒体(書籍・雑誌、Web サイト (企業サイト、ブログ、SNS 等)) - 訪日中の情報収集のためのPC・携帯電話・スマートフォン・観光案内 所・ホテル等の利用予定 - 訪日中の情報収集に利用する予定の情報源(テレビ、ラジオ、検索エン ジン、ニュースサイト、ガイドブック、行政機関・企業サイト、口コミ サイト、SNS 等) 9 災害発生時の情報について - 日本の災害情報等に関する情報提供サイトを設定した場合に、必要と思 われるコンテンツ(天気予報、地震情報、交通機関運行情報、地図、ニ ュース、大使館連絡先、航空会社・鉄道機関等の連絡先等) - 災害にあった場合の対応の知識、医療機関の連絡先、コミュニケーショ ンカード等 - 災害発生時情報提供に関するアプリの利用希望 - 情報提供サイトが整備による、訪日旅行における安心感について b. 訪日外国人旅行者の状況 (ア)外国人調査(グループインタビュー)、(イ)訪日外国人調査(メールインタビュー) の両方の結果から、震災直後、多くの訪日外国人は、日本国内における母国語での情報提供 が不足していたために、現在起こっている災害の状況が把握できず、携帯で母国の知人等か ら情報収集を行っていたことが明らかとなった。さらに(ア)外国人調査(グループインタ ビュー)では、災害時の情報提供については、英語以外の言語も含めて多言語での情報提供 が望まれていること、広報車、無線の放送、ホテルや駅での案内など、インターネットやマ スメディアによらない、人を介した情報提供の充実も必要とされていることが指摘された。 また、(イ)訪日外国人調査(メールインタビュー)では、日本滞在中の携帯電話・スマ ートフォンの利用について、多くの旅行者が母国から持ってきた携帯電話またはスマートフ
ォンを利用していた。震災後に必要としていた情報内容と情報を必要とした時期を質問した ところ、「現在、起こっている災害の状況」、「自分は何をしなければならないのか」といっ た漠然とした情報が震災直後に必要とされており、2~3 日後には「放射能の状況」、「今後 の余震の可能性」、「国際航空便(帰国便)の運航情報」など具体的な情報が必要とされてい たことが分かった。 (ア)外国人調査(グループインタビュー)、(イ)訪日外国人調査(メールインタビュー) の両方の結果から、訪日外国人旅行者によるインターネットでの情報収集は、震災直後から 行われていたが、利用されていた手段は、各国でポピュラーなSNS やチャット、掲示板な どであり、日本国内の情報源はあまり活用されていなかったことが分かった。また、(ウ) インターネット上の情報調査によると訪日外国人が見ていた海外のメディアのサイトやポ ータルサイトに掲載されていた情報には、災害について正確でない情報も掲載されていた。 【日本滞在中の携帯電話・スマートフォンの利用】 (イ)訪日外国人旅行者調査(メールインタビュー)で東日本大震災当時の訪日旅行につ いて質問したところ、日本滞在中に「携帯電話もスマートフォンも利用しなかった」人は限 定されており、多くの人が何らかの形で携帯電話かスマートフォンを利用していた。 3 5 5 0 7 7 12 0 0 1 2 7 7 4 1 7 4 5 0 5 0 5 10 15 20 25 30 母国から持ってきた携帯電 話を利用した (n=19) 母国から持ってきたスマート フォンを利用した (n=28) 日本でレンタルした携帯電 話を利用した (n=17) 日本でレンタルしたスマート フォンを利用した (n=4) 携帯電話もスマートフォンも 利用しなかった (n=14) 英語 中国語(簡体) 中国語(繁体) 韓国語 (人数) Q 2011 年 3 月 11 日の震災発生時に日本を訪れていたときの状況について教えてください。 【滞在中の携帯電話・スマートフォンの利用(あてはまるものすべてを選んでください)】
【震災発生後に必要としていた情報内容と知りたかった時期】 (イ)訪日外国人旅行者調査(メールインタビュー)で東日本大震災当時に必要としてい た情報と情報を必要とした時期について質問したところ、全ての情報について震災直後の ニーズが最も高くなった。「今、何が起きているか」、「自分は何をしなければならない のか」といった漠然とした情報ニーズは特に震災後に高いが、2~3 日後には「放射能 の状況」、「今後、余震はどの程度起きるか」「国際航空便(帰国便)の運航情報」など 具体的な情報ニーズが相対的に高くなった。 95.0 83.8 86.3 81.3 76.3 65.0 62.5 65.0 77.5 56.3 32.5 48.8 25.0 30.0 40.0 38.8 41.3 38.8 55.0 32.5 18.8 17.5 10.0 10.0 12.5 13.8 13.8 10.0 33.8 15.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 今、何が起きているか 今後、余震はどの程度起きるか 自分は何をしなければならないのか 家族や知人の安否情報 国内交通機関の運行情報 帰国の手続き、方法 国際航空便(帰国便)の運航情報 空港までの経路 放射能の状況 母国大使館のメッセージ 震災当日 震災後2~3日間 震災後1週間以降 Q 震災発生後に必要としていた情報内容を必要とした時期について教えてください。 1.2.2 海外事例調査 調査概要 (1) 海外で発生した大規模災害のうち、外国人旅行者に対して効果的な情報提供が行われた事 例を取り上げ、提供した情報の内容、運用主体、運用に当たっての課題等について訪問調査 及び文献調査を行った。調査対象は、以下の通り。 1)タイ:洪水発生時におけるタイ国政府観光庁の情報提供体制(2011 年) 2)ニュージーランド:地震発生時の政府観光局の対応(2011 年) 3)アイスランド:火山噴火発生時の欧州における対応(2010 年)
4)米国:ハリケーン・カトリーナ発生時のニューオリンズ市の対応(2005 年) 5)韓国:気象庁のスマートフォンを利用した外国人観光客向け情報提供対応 6)米国:ハリケーン・サンディー発生時のニューヨーク市の対応(2012 年) 調査結果 (2) 1) 2) 3) 4) 5) タイ:洪水発生時におけるタイ国政府観光庁の情報提供体制(2011 年)
タイ政府観光庁は平時より運用しているWeb サイト(Thailand Tourism Update)にお いて、洪水時にも情報を旅行者向けに提供していた。更新頻度も高く、Google Map による 可視化や外部SNS の活用などの工夫も行いながら積極的に情報発信していた。ただし、本 WEB サイト自体の認知度が低く、広報・PR が課題となっていることが分かった。
ニュージーランド:地震発生時の政府観光局の対応(2011 年)
ニュージーランド政府観光局は、平時より運用しているWeb サイト(NEW ZEALAND TOURISM)において、発災当日から 4 日間、1 日 1~3 回、空港等交通インフラ情報を発信 した。クライストチャーチ内の観光客、その家族、訪問予定者向けに情報を整理し、観光 客の家族向けには、安否確認のための情報も提供していた。 アイスランド:火山噴火発生時の欧州における対応(2010 年) 航空運航状況を統括するユーロ・コントロールが、運航情報や火山灰情報をWeb やツイ ッターで情報提供した。ツイッターでは、乗客からの問い合わせに個別対応した。ツイッタ ーアカウントのフォロワーは、噴火の翌日の3500 から 1 週間で 7000 に倍増した。 米国:ハリケーン・カトリーナ発生時のニューオリンズ市の対応(2005 年) 電気、携帯電話、コンピューター、電話回線など通信インフラのほとんどが寸断された状 態になったため、コンベンション・ビジターズ・ビューローのWeb サイトのアップデート が唯一のコミュニケーション手段となった。ただし、カトリーナ発生時の観光客への情報提 供は円滑ではなかったとされ、その後、反省を踏まえて情報システムが刷新され、災害時に 住民だけでなく観光客の安全を確保するとともに、住民や観光客とのコミュニケーション手 段の確保にも万全を期す計画に改善した。 韓国:気象庁のスマートフォンを利用した外国人観光客向け情報提供対応 韓国気象庁では、2011 年、韓国在住外国人と外国人観光客向けに、スマートフォン向け にタイムリーかつ正確な気象情報や地震情報を英語及び韓国語で提供するサービスを開始 した。今後、日本語と中国語にも対応予定である。当該サービスでは、現在の天気や地域ご との天気予報、週間予報などの情報のほか、海の天気や山の天気、台風や黄砂、地震などの 自然災害の情報も合わせて提供している。
6)米国:ハリケーン・サンディー発生時のニューヨーク市の対応(2012 年) ニューヨーク市観光局は、Web サイトおよびツイッター、フェイスブックを通じて、市 の文化施設・宿泊施設・インフラ等の復旧状況に関する情報を提供した。ツイッターによる 情報提供は、主に知事、市長、市政府、市危機管理局、市公園レクリエーション局、地下鉄、 ブロードウェイリーグ等のツイートをリツイートする形で実施されていた。市観光局による リツイートは、1 日 10~20 回程度であった。
2.
訪日外国人旅行者が必要とする情報の整理
2.1
訪日外国人旅行者の類型 災害時における訪日外国人旅行者への情報提供体制を整備するにあたり、災害発生直後に 適切な安全確保対策を取った後の、旅行者の行動パターンを把握することが必要となる。今 回の調査結果を踏まえ、大規模災害のあった場合の旅行者の行動方針は以下のように類型化 することができる。 z 帰国する z 旅行を継続する z 旅行を中断し、当地で滞在する また災害発生時に、訪日外国人旅行者が滞在している場所は、以下のとおり区分すること ができる。 z 観光地に滞在している場合 z 路上を移動中の場合 z 宿泊施設に滞在している場合 z 交通機関(バス、鉄道、船等)で移動中の場合 「旅行者の選択する行動」と「旅行者が置かれている状況」によって、災害発生時に訪日 外国人旅行者が、どのような情報提供を期待するかに留意し、情報の必要性について整理を する。2.2
訪日外国人旅行者が必要とする情報の整理 関係機関のヒアリング調査や訪日外国人旅行者調査(メールインタビュー)によると、東 日本大震災の当時、地震発生時の初動についての知識がなかったり、地震の経験が不足した りするために、非常に動揺した訪日外国人がいたとの指摘があった。また、訪日外国人旅行 者の多くは、日本語による情報収集能力についても限定されており、情報収集は海外の情報 源に依存する状況にある。さらに、個人旅行者に関しては、パッケージツアー参加者のよう に添乗員からの情報提供もなされない場合、災害時の情報収集が非常に困難になるケースが 多くなると予想される。 このような訪日外国人旅行者の災害時の不安を軽減するため、また、日本国内の正確な情 報源からの情報収集を可能にするためには、旅行者が必要とする情報を把握したうえで関係 機関が必要な情報を発信することが重要となる。災害時には、関係機関自身も被災しており、 十分な対応ができない場合もあるが、あらかじめ訪日外国人旅行者の行動方針を理解し、そ れに応じた情報提供を行うことが、結果的に円滑なコミュニケーションを実現し、災害時に 関係機関でリソースがひっ迫している状況においても、効率的な対応が期待できると考えられる。 2.1 そこで、災害時に旅行者が必要とする情報について、 で類型化した訪日外国人旅行 者の区分別に、また災害発生時の旅行者の状況別に整理し、それぞれの情報について、主な 提供主体となる関係機関を以下にまとめた。 表 2-1 訪日外国人旅行者が必要とする情報 訪 日 外 国 人 旅 行者の類型 必要とする情報 主な情報提供主体 訪日外国人旅行者と接触 安全確保の方法 のあるすべての関係機関 災害の実際の状況、 政府、地方自治体、その他関 係行政機関、国内マスメディ ア 今後の見通し等正確な災害の実情 に関する情報 すべて 滞在場所から宿泊先まで戻るため の手段 公共交通機関 大使館への連絡窓口 大使館 (母国家族への安否情報提供) (旅行者本人) 滞在場所から空港までの交通状況 公共交通機関 帰国する 航空便の運航状況 航空会社 目的地までの交通状況 公共交通機関 政府、地方自治体、その他関 係行政機関、国内マスメディ ア 旅行を継続 目的地の状況 宿泊施設の空室情報、予約方法 宿泊施設 目 的 地 が 被 災 したため、旅行 を中断し、当地 で滞在 政府、地方自治体、その他関 係行政機関、国内マスメディ ア 当地の状況
(1) すべての訪日外国人旅行者 訪日外国人旅行者の多くは、地震発生時の安全確保のための十分な知識を持ち合わせてい ない。また、今回の調査では、災害時にはほとんどの情報提供は一般には日本語で行われる ことから、災害が発生した直後、訪日外国人の多くは何が発生したのかの事実もわからず、 自分が何をすべきかもわからない状況にあることが指摘されている。そのため、全ての訪日 外国人旅行者に対し、能動的に提供すべき情報として以下の情報が考えられる。 z 安全確保の方法 z 災害の実際の状況、今後の見通し等の正確な災害の実情に関する情報 z 滞在場所から宿泊先まで戻るための手段 z 大使館への連絡窓口 (母国家族への安否情報の提供) 以下にそれぞれの情報の必要性について、記載する。 z 安全確保の方法 関係機関のヒアリング調査においては、地震の基礎知識を持たない訪日外国人旅行 者に避難を呼びかける際、言葉が通じず対応が困難であったとの指摘があった。また、 訪日外国人調査(メールインタビュー)においても、地震の基礎知識を持たない旅行 者が非常に動揺して混乱したとの指摘があった。 大規模地震を想定した場合、こういった発災直後の安全確保に関する情報は非常に 重要である。その際、以下のような情報を提供することが望まれる。これらの情報は、 発災直後に必要となるものであることから、平時から多言語で準備しておくこと、ま た、訪日外国人旅行者と接触のあるすべての関係機関がそれぞれ、自らの役割、立場、 状況の範囲において、提供することが期待される。 <屋内にいる場合> 9 丈夫な机やテーブルなどの下にもぐり、机などの脚をしっかりと握ること。 9 棚や棚に乗せてあるもの、テレビなどが落ちてきたりするので、離れて揺れが収 まるのを待つこと。 9 あわてて戸外に飛び出さないこと。 <屋外にいる場合> 9 中高層ビルが建ち並ぶオフィス街や繁華街では、窓ガラスや外壁、看板などが落 下してくる危険性があるため、鞄などで頭を保護し、できるだけ建物から離れる こと。 z 災害の実際の状況、今後の見通し等正確な災害の実情に関する情報 (主な提供主体:政府、地方自治体、その他関係行政機関、国内マスメディア)
訪日外国人旅行者調査(メールインタビュー)では、「現在、起こっている災害の 状況」、「自分は何をしなければならないのか」といった漠然とした情報が震災直後に 必要とされており、2~3 日後には「放射能の状況」、「今後の余震の可能性」、「国際 航空便(帰国便)の運航情報」など具体的な情報が必要とされていたことが分かった。 また、これらの情報をインターネット等により実際に収集したとする意見が多く挙げ られた。 その一方で、訪日外国人旅行者は、言語の問題などから、自国のメディア、ポータ ルサイト、SNS 等を中心に情報収集していたという実態も明らかになった。ただし SNS については、災害情報の迅速な共有といったメリットも認められるところであ るが、そうした情報の中には、誤った情報や、部分的に不安を誇張した情報があるほ か、特にインターネットでは、一般人の憶測に基づく情報が掲載されていることもあ ったことが調査から判明している。 災害の状況や今後の見通しについては、日本国内の公的機関の発表および国内マス メディアの報道が信頼できる情報源であり、訪日外国人旅行者に対し、確実に提供さ れることが望まれる。そのため、マスメディアやその他の関係行政機関においても、 正確な情報を多言語で提供できるようにしておくことが期待される。 z 滞在場所から宿泊先まで戻るための手段(主な提供主体:公共交通機関) 大規模地震を想定した場合、発災後の鉄道の運行停止やバスの混雑等、公共交通機 関の混乱は不可避である。その際、街中や観光地に出ていた訪日外国人旅行者は、自 分の宿泊先に戻る場合に、利用する交通手段の状況を把握する必要がある。 各公共交通機関においては、可能な限り、自社の交通機関の運行状況を外国語で提 供するとともに、係員対応や電話といった旅行者個別の対応においては、当地域まで 帰るための公共交通機関の状況を伝える体制を整えることが望まれる。 z 大使館への連絡窓口(主な提供主体:大使館) 関係機関ヒアリング調査において、東日本大震災発生時には、各国大使館が被災地 に滞在する訪日外国人旅行者の安否確認に苦慮したことがわかっている。特に個人の 旅行者の場合、被災地に滞在している旅行者がいるかどうかについても把握する手段 がなく、非常に苦労したとの意見が複数の大使館からあった。また、多くの大使館で は被災地から自国民を移動させるためのバスの手配や帰国させるための臨時の航空 便の調整等も行っており、安全を確保するための情報を多く提供していた。 大使館の安否確認の業務を円滑にするとともに、安全確保の情報を大使館から入手 できるようにするため、訪日外国人旅行者に直接対応する宿泊施設や自治体等の関係 機関においては、特に被災地における訪日外国人旅行者に対して大使館への連絡窓口 を案内することが重要となる。
(母国家族への安否情報の提供(主な提供主体:旅行者本人)) 訪日外国人旅行者調査(メールインタビュー)、外国人調査(グループインタビュ ー)の両方において、東日本大震災発生時に日本に滞在していた訪日外国人旅行者の 多くが、母国の家族等と震災後すぐに連絡を取り合っていたことがわかっている。ま た、関係機関のヒアリング調査では、母国にいる家族が旅行者の安否を気遣い、大使 館や旅行会社に問い合わせが殺到したことがわかっている。旅行者の家族が安心でき るよう、母国にいる家族に対して旅行者本人の安否確認情報を伝達することは重要で ある。 また、災害による影響を受けない地域にいる旅行者本人には安否情報を家族に伝達 することの意識が低いこともあるため、旅行者に対応する大使館や宿泊施設等の関係 機関においては、本人に対して、母国家族に安否情報を伝達するように促すことが望 まれる。 安否情報の伝達においては、一般のポータルサイト等の安否確認サービスを使うこ とで海外からもインターネット上で安否確認ができるようになるため、旅行者にこう したサービスを紹介することも有効である。 【災害時、訪日外国人旅行者に提供すべき情報内容】 訪日外国人旅行者調査(メールインタビュー)で災害時に訪日外国人旅行者に提供すべき 情報を質問したところ、災害時、訪日外国人に提供すべき情報の内容として「災害の規模、 発生場所などの情報」と「各種交通の運行状況」という意見が多かった。 18 20 11 14 3 20 19 18 6 0 20 12 11 6 0 20 17 12 14 0 0 20 40 60 災害の規模、発生場所な どの情報 (n=78) 各種交通の運行状況 (n=68) 家族・友人の安否情報 (n=52) 母国大使館のメッセージ (n=40) その他 (n=3) 80 英語 中国語(簡体) 中国語(繁体) 韓国語 (人数) Q 災害時、訪日外国人に提供すべき情報の内容(あてはまるものをすべて選んでください)
(2) 帰国しようとする旅行者 災害発生時 宿泊場所 駅・交通拠点 空港 帰国 大規模地震を想定した場合、訪日外国人旅行者の中には、日本での観光を取りやめ、母国 への帰国を選択する旅行者もいる。今回の調査においても、多くの訪日外国人旅行者が震災 直後に出国しようと考えていたことがわかっている。そうした旅行者は、「滞在地から空港 へ移動し、帰国便に搭乗する」ために、以下の情報を必要とすることが予想される。 z 滞在場所から空港までの交通状況(主な提供主体:公共交通機関) 今回の調査では、訪日外国人旅行者が災害時に必要な情報として交通機関の運行情 報が多く指摘されている。発災後の鉄道の運行停止やバスの混雑等、公共交通機関の 混乱は不可避となり、空港へのアクセスに関する情報は、帰国しようとする訪日外国 人旅行者が最も必要とする情報のひとつである。各公共交通機関においては、可能な 限り、自社の交通機関の運行状況を外国語でも提供するとともに、係員対応や電話と いった旅行者個別の対応においては、滞在場所(宿泊先等)と出国する空港を聴取し、 空港までの公共交通機関の状況を伝えることが求められる。 なお、一次的な情報提供主体は当該交通機関となるが、災害発生時に訪日外国人旅 行者が滞在していた場所によっては、宿泊施設や外国人観光案内所(直接、災害の影 響を受けていない場合)等においても、交通機関に関する情報の提供が望まれる。 z 航空便の運航状況(主な提供主体:航空会社) 帰国を選択する旅行者は、搭乗予定の航空便の状況を把握するため、もしくは緊急 帰国便の航空券を手配するため、航空会社への問合せを行うこととなる。航空会社に おいては、平常時より外国語(主に英語)での情報提供を実施している場合が多いが、 災害時においても、自社がオペレーションする便の運航状況、及び空席情報を正確に 外国語で提供することが求められる。 なお、一次的な情報提供主体は航空会社であるが、災害発生時に訪日外国人旅行者 が滞在していた場所によっては、宿泊施設や航空会社以外の交通機関、外国人観光案 内所(直接、災害の影響を受けていない場合)等においても、交通機関が提供する一 次情報に基づいた情報提供が望まれる。
(3) 旅行を継続しようとする旅行者 滞在場所 宿泊場所 駅・交通拠点 次の滞在場所 災害による影響を受けない場所に滞在している訪日外国人旅行者の中には、計画通り旅行 を継続するという判断をする旅行者もいると考えられる。これらの訪日外国人旅行者は災害 発生後の状況に関して、以下のような情報を必要とすることが予想される。 z 目的地までの交通状況(主な提供主体:公共交通機関) 災害発生による被害が少なく、旅行を継続しようとする訪日外国人旅行者がいる場 合には、安全に観光を続けるための支援を行うことが求められる。 各公共交通機関においては、自社の交通機関の運行状況を外国語で提供するととも に、係員対応や電話といった旅行者個別の対応においては、目的地を聴取し、当地域 までの公共交通機関の運行状況を伝えることが求められる。 また、運行停止等により公共交通機関の利用が困難な場合には、宿泊先までのおお よその距離等、旅行者が徒歩で帰るか否かを判断するための情報を提供することも望 まれる。 なお、一次的な情報提供主体は交通機関であるが、災害発生時に訪日外国人旅行者 が滞在する場所によっては、宿泊施設や外国人観光案内所(直接、災害の影響を受け ていない場合)等においても、交通機関が提供する一次情報に基づいた情報提供が望 まれる。 z 目的地の状況 (主な提供主体:政府、地方自治体、その他関係行政機関、国内マスメディア) 災害時情報提供ポータルサイトのデモ画面に対するアンケート調査において、旅行 を継続しようとしたときに目的地の被災状況の情報を必要とする回答が複数あった。 土地勘が十分にない訪日外国人旅行者が旅行を継続する場合、旅行者は、目的地にお ける被害の状況を把握したうえで、旅行を継続するか否かを判断することが必要とな る。 そのため、状況によっては、交通状況の提供とあわせて、目的地での地震影響など の安全情報等も踏まえたアドバイスを提供することが望まれる。 各国大使館でも滞在する場合の安全情報を出していることがあり、これらの情報を 参考に訪日外国人旅行者に情報提供することも必要となる。 なお、一次的な情報提供主体は政府・地方自治体や大使館であるが、災害発生時に 訪日外国人旅行者が滞在する場所によっては、宿泊施設や外国人観光案内所(直接、 災害の影響を受けていない場合)等においても、一次情報に基づいた情報提供が望ま
れる。 (4) 目的地が被災したため、旅行を中断し、当地で滞在しようとする旅行者 滞在場所 宿泊場所 一部の訪日外国人旅行者は、災害による影響から当初計画していた旅程を変更し、災害発 生時に訪問していた先にとどまることを決めることも考えられる。そうした訪日外国人旅行 者は以下のような情報を必要とすることが予想される。 z 宿泊施設の空室情報、予約方法 (主な提供主体:宿泊施設) 宿泊先地域が甚大な被害を受けている場合、または訪問を予定していた観光地が被 災した場合はもちろん、様々な事情により訪日外国人旅行者は、宿泊予定を変更する 必要がある場合がある。また、宿泊施設の被害が少ない場合には、避難者が移動して くることにより、宿泊予約がとりにくくなる可能性もある。そのため、各宿泊施設に おいても、Web サイト等で外国語による空室情報、予約方法を明記することが望ま れる。 z 当地の状況 (主な提供主体:政府、地方自治体、その他関係行政機関、国内マスメディア) 訪日外国人旅行者が旅行を中断し、当地に滞在する場合、当地の安全情報や滞在す る上でのアドバイスを必要とする可能性がある。 各国大使館でも滞在する場合の安全情報を出していることがあり、これらの情報を 参考に訪日外国人旅行者に情報提供することも必要となる。 なお、一次的な情報提供主体は政府・地方自治体や大使館であるが、訪日外国人旅 行者と直接コミュニケーションする立場にある宿泊施設や外国人観光案内所(直接、 災害の影響を受けていない場合)等においても、これら行政機関が提供する一次情報 に基づいた情報提供が必要となる。
3.
効果的な情報提供を可能とする災害時情報提供ポータルサイトの設定と
活用方法
3.1
効果的な情報提供について 東日本大震災発生時に日本に滞在していた外国人旅行者へのインタビュー調査によると、 災害時、訪日外国人への情報提供に使うべき手段として、パソコンやスマートフォンでの情 報提供について非常に期待が高くなっている。また、今回実施した訪日予定外国人旅行者 Web アンケート調査の結果でも、近年、世界的にスマートフォンが普及しつつあることを 反映し、訪日中に利用予定の媒体としてスマートフォン、パソコン、タブレット端末とする 回答が多かった。 また、今回の調査では、東日本大震災当時、日本国内での外国語での情報提供が不足して いたことが指摘されている。こうした状況の中、旅行者の多くが一般のポータルサイトやメ ディアのサイトなど、インターネットを通じて主に母国語で情報を入手しようとしていたこ ともわかっている。 多くの訪日外国人旅行者がインターネットを有効な情報入手の手段としているにもかか わらず、旅行者の多くは日本語での情報収集が困難であり、また、外国語での情報提供を行 っている日本国内の情報源についての知識が不足していると考えられる。このため、正確な 情報源にたどり着けず、情報不足の原因の一つになっているとも考えられる。したがって、 あらかじめ多言語で情報提供しているインターネット上の日本国内の情報源を知っていれ ば、より効率的に情報収集を行うことが可能になると想定される。これらの状況を踏まえ、 情報提供手段の一つとして、災害時に外国語で情報提供を行う情報源をまとめて提供する災 害時情報提供ポータルサイトを設定することが有効と考えられる。【情報提供に使うべき手段】 訪日外国人旅行者調査(メールインタビュー)で災害時に訪日外国人旅行者への情報提供 に使うべき手段を質問したところ、「テレビ・ラジオ等のマスメディア」が最も多くなっ ており、次いで、「Web サイト(PC)」、「Web サイト(携帯・スマートフォン)」となっ ていた。 20 17 15 12 4 19 16 7 2 0 19 13 8 7 0 15 7 15 11 0 0 20 40 60 8 テレビ・ラジオ等のマスメ ディア (n=73) WEBサイト(PC) (n=53) WEBサイト(携帯・スマート フォン) (n=45) SNS(twitter、facebook) (n=32) その他 (n=4) 0 英語 中国語(簡体) 中国語(繁体) 韓国語 (人数) Q 災害時、訪日外国人への情報提供に使うべき手段(あてはまるものをすべて選んでください)
3.2
災害時情報提供ポータルサイトの位置づけ 災害時情報提供ポータルサイトは、災害等の緊急時において訪日外国人旅行者に活用され ることを目的としているが、当該サイトが、平常時から災害発生時に役立つ情報(防災知識、 外国語での情報提供を行う各関係機関サイトへのリンク等)を提供するお役立ちサイトして 開設されていることで、訪日旅行に対する安心感の向上にもつながると考えられる。また、 大規模震災のみならず、台風等の比較的頻繁に起こり得る自然災害時においても有効な情報 が提供されるサイトとして位置づけられることで、より多くの訪日外国人旅行者に対して活 用されるものと考えられる。 さらに、関係機関ヒアリング調査においては、災害時には関係機関内において外国語での 情報源が不足し、情報提供を行う側にとっても困難な状況であったとの指摘があった。災害 時においては関係機関同士の情報共有も困難であることから、訪日外国人旅行者に有用な情 報源を災害時情報提供ポータルサイトに集めておくことは、宿泊機関や交通機関の窓口、大 使館など対面で訪日外国人旅行者に対応する関係機関が、旅行者に迅速にかつ正確な情報提 供をする際にも有効と考えられる。【訪日中に利用予定の媒体】 訪日予定外国人旅行者 Web アンケート調査結果では、訪日中に利用予定の媒体として、PC/タ ブレット型 PC、スマートフォン、観光案内所、宿泊先の利用予定率が高くなっている。 Q 訪日中の情報収集のための PC・携帯電話・スマートフォン・観光案内所・ホテル等の利用予定について お答えください。 【訪日中に最も役立つ媒体】 訪日予定外国人 Web アンケート調査結果では、訪日中に最も役立つ媒体として、PC/タブレット 型 PC とスマートフォンとの答えが全ての国・地域で7割を超えた。 Q 訪日中の情報収集のための PC・携帯電話・スマートフォン・観光案内所・ホテル等の利用予定あるもの の中で最も役立つ/役立つと考えている媒体を一つお選びください。
3.3
災害時情報提供ポータルサイトに盛り込む情報とその用途 (1) 災害時情報提供ポータルサイトに盛り込む情報 外国人調査(グループインタビュー)では、東日本大震災発生時に必要とされていた情報 として、「今、何が起きているか」、「今後、余震はどの程度起きるか」、「自分は何をしなけ ればならないのか」、「家族や知人の安否情報」、「国内交通機関の運行情報」、「放射能の状況」 等が挙げられた。また、訪日外国人旅行者調査では、「今、何が起きているか」「自分は何を しなければならないのか」といった漠然とした情報ニーズは震災直後に高く、2~3日後に は「放射能の状況」、「今後、余震はどの程度起きるか」、「国際航空便(帰国便)の運航情報」 など具体的な情報ニーズが上位となる。さらに、訪日予定外国人調査では、災害時に提供さ れる有効なコンテンツとして、特に、天気予報、地震情報、交通機関の運行情報および地図 (ナビゲーション付)を希望する回答が多かった。また、関係機関に対するヒアリング調査 や訪日外国人調査(メールインタビュー)では、東日本大震災発生当時に地震の基礎知識を 持たない訪日外国人に混乱が見られたとの指摘があった。 以上の結果から、災害時情報提供ポータルサイトに盛り込むべき情報としては、主に以下 のものが重要と考えられる。 z 天気予報(警報・注意報等) z 地震情報 z 交通機関の運行情報 z 地図(ナビゲーション付) z 地震に関する基礎知識 z 災害が起こった際の対応行動 z 家族や知人の安否情報【災害時に有効なコンテンツ】 訪日予定外国人 Web アンケート調査結果では、災害時に提供される有効なコンテンツと して、特に、天気予報、地震情報、交通機関の運行情報および地図(ナビゲーション付)を 希望する意見が多かった。 Q 訪日外国人旅行者のために、日本の災害情報等に関する情報提供サイトがあった場合、 どのようなコンテンツがあればよいと思いますか。 災害時情報提供ポータルサイトの全体構成 (2)
以上の結果を踏まえ、災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)のデモ 画面を作成した。現在の災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)は、災 害時において訪日外国人旅行者に必要と思われるコンテンツを以下に示す構成で掲載して いる。サイトにはパソコンで閲覧するものとスマートフォンで閲覧するものの 2 種類があ る。
表 3-1 災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の構成 スマートフォンサ イト※ 項目 内容 ホーム Information ○ ① Weather Information 天気予報(気象庁サイトへのリンク) ○ ② News NHK WORLD へのリンク ○
③ Weather Warnings and Advisories
現在、発表されている警報・注意報(気象 庁サイトへのリンク)
○ ④ My location from Google
Maps ・Google 現在地機能を活用して、近くの観 光案内所を提示 ・⑧へのリンク ○ ⑤ Contact List 大使館、⑨、⑮へのリンク - ⑥ Transportation Transportation へのリンク ○ ⑦ Communication cards ⑯へのリンク ○ ⑧ Get directions Google 現在地機能を活用した、目的地まで
のルート検索 ○ ⑨ News media 主要報道機関へのリンク ○ Transportation ⑩ Transportation 主要交通機関(鉄道、空港、地下鉄等)の ページへのリンク ○ ⑪ Airline 航空会社のページヘのリンク ○ ⑫ Train route finder 鉄道の乗換え検索サイトへのリンク - In the event of an emergency
⑬ Emergencies during daily life
地震発生時の対処フロー ○
⑭ Useful tips to protect yourself
災害時の基礎知識(緊急地震速報、避難所 などについて)
○ from a disaster
⑮ Useful tools and information to protect yourself 災害発生時に有用な情報を得られるサイト の紹介 ○ from a disaster ⑯ Communication cards 周辺の日本人に質問する際に使用できるコ ミュニケーションカード(4ヶ国語) ○
For hospitality staff (Japanese Only) ⑰ 災害時の訪日外国人支援に 役立つリンク集 災害発生時、訪日外国人に情報提供する際 に有用な情報を得られるサイトの紹介 - ⑱ コミュニケーションカード 周辺の外国人とコミュニケーションを取る 際に使用できるコミュニケーションカード (4ヶ国語) - ※○:スマートフォンサイト有、-:PC サイトへのリンク
(3)
1)
ページ構成
災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の具体的なページ構成とその 用途は以下の通りである。 赤で網掛けしている吹き出しは、手動でアップデートする部分である。その他は、他機関 のサイトへのリンクとなっている。 トップページ トップページでは、「今何が起きているか」、「自分は何をすべきか」という震災直後の 漠然としたニーズに対応できるよう、ニュースや気象情報について掲載している。また、 アンケートで情報ニーズが高かった地図情報や交通機関、コミュニケーションカードへの リンクについても掲載している。 サイト内検索窓、自動翻訳の機能 をすべてのページに設置 Contact us 本サイトの趣旨と、リン ク先の情報は情報提供主 体の責任であることを明 示 を削除 Information 公的機関からの情報を 入手するように促すメ ッセージを記載(手動で 更新可能) ③ Weather Warnings and Advisories ② News NHK WORLD へのリ ンク 現在、発表されている警 報・注意報 (気象庁サイトへのリ ンク) 過度に不安を抱かれな いよう、地図は小さく表 示 ① Weather Information 天気予報 (気象庁サイトへの リンク)
⑤ Contact List 大使館(外務省へのリ ンク)、⑨、⑮へのリ ンク ④ My location from Google maps ⑥ Transportation 近くの観光案内所を提示 Transportation への リンク ⑧へのリンク ⑦Communication cards ⑯へのリンク
●Get directions
トップページのMy location from Google Maps からリンクされているページである。こ のページでは、交通機関の運行が停止している状況でも、徒歩で移動できるよう、地図上で のナビゲーションを行う。 ⑧ Get Directions Google 現在地機能を活用 した、目的地までのルート 検索 ●News media トップページのContact List からリンクされているページである。国内主要報道機関の 英語サイトの紹介を行う。 ⑨ News media 国内主要報道機関の英語サ イトへのリンク
2)Transportation 交通機関のリンク集のページである。移動や出国のニーズに対応できるよう、主要航空会 社、及び地域ごとの国内主要鉄道会社のサイト、路線検索サイトにリンクを設定している。 ⑪ Airline 航空会社のページヘ のリンク ⑩ Transportation 主要交通機関(鉄道、空 港、地下鉄等)のページ へのリンク 日本地図で該当する地方 をクリックすると、その 地方の交通機関一覧(英 語ページの有無等記載及 び鉄道機関については主 要エリア)を表示 地震の際には交通機 関は止まる可能性が あること、コードシェ ア便については運航 会社のページをチェ ックすることの注意 喚起を明示 英語で的確な情報が得ら れない場合は、各地の TIC に問い合わせるよう 誘導
⑫ Train route finder 鉄道の乗換え検索サ イトへのリンク 最新の情報について は各交通機関のHP を 直接確認するように 促すメッセージを記 載
3)In the event of an emergency 訪日旅行時に災害に遭遇した場合に知っておくと便利な知識等について、解説するページ である。 日本における自然災害の基礎知識及び地震発生時の基本的な対処フローについて紹介し ている。地震の基本知識がほとんどない訪日外国人旅行者にもわかりやすく説明することを 意図している。 また、コミュニケーションカードについては、災害時に必要になると思われる主な会話の 例について主要 4 言語(英語・中国語(繁体字)・中国語(簡体字)・韓国語)で翻訳した ものを載せている。画面上で見せたり、印刷してコミュニケーションを支援したりすること を意図している。 ⑬ Emergencies during daily life 地震発生時の対処フロー
⑮ Useful tools and information to protect yourself from a disaster 災害発生時に有用な 情報を得られるサイ トの紹介
⑭ Useful tips to protect yourself
from a disaster
災害時の基礎知識(緊急地 震速報、避難所などについ て)
⑯ Communication cards 周辺の日本人に質問す る際に使用できるコミ ュニケーションカード (4ヶ国語)
4) For hospitality staff (日本語) 日本の関係機関向けのページである。関係機関が災害発生時に訪日外国人旅行者に対して 情報を提供する際に役立つと思われるマニュアル等を掲載している。 また、コミュニケーションカードについては、災害時に必要になると思われる主な会話の 例を、主要 4 言語(英語・中国語(繁体字)・中国語(簡体字)・韓国語)で翻訳したもの を掲載している。画面上での表示もしくは印刷によって、コミュニケーションを支援するこ とを意図している。 ⑰ 災害時の外国人支援に 役立つリンク集 災害発生時、外国人に情報 提供する際に有用な情報を 得られるサイトの紹介 (平成24 年度に東京都の 事業で作成予定の災害時初 動対応マニュアルへのリン ク設定も予定)
⑱ コミュニケーションカ ード 周辺の外国人とコミュニケ ーションをとる際に使用で きるコミュニケーションカ ード(4ヶ国語)
3.4
災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の運用方法災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)は、災害等の緊急時に活用さ れることを念頭に作成されているが、旅行者の認知度を向上させ、より利便性を上げるため には、平常時から運用されている必要がある。また、緊急時にサイトを立ち上げる場合には、 緊急時の混乱の中で立ち上げの作業が必要となり、運用上の負担が課題となる恐れもある。 したがって、本サイトは、平常時からJNTO が運用するものとする。 また運用上の負担を軽減させるため、コンテンツについては、原則として、情報提供主体 として位置づけられる関係機関が多言語で提供する情報そのものを掲載し、情報提供元のサ イトに対してリンクを設定することで、詳細情報をリンク先から入手できる構成とする。
3.5
災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)で用いる言語について 本調査の結果によると、災害時に必要な情報は旅行者の母国語で提供してもらいたいとい う声が多くなっている。特に、災害時に不安を多く抱える中では、情報収集は母国語による 場合が多い。一方で、災害時には多くの関係機関が日本語で情報提供を行っている中で、迅 速かつ正確に情報を発信しようとすると、翻訳のために要する時間や誤訳のリスクなどを考 慮せざるを得ず、対応する言語を絞ることが必要になる。今回の調査の結果、訪日外国人旅 行者の多い主要国・地域では、英語での情報提供でも理解できるとする声が多く存在するこ とが判明した。また、日本の関係機関も英語での情報発信は比較的対応が容易であり、既に 実施している機関も多数ある。したがって、当初、災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)で使用する言語は英語とするが、運用状況をみて多言語での対応も視野 に入れていくこととしている。【災害時の情報提供に使うべき言語】 訪日外国人旅行者調査(メールインタビュー)では、災害時、訪日外国人への情報提供に 使うべき言語として、母国語での情報提供を望む声が多かった。一方で、どの地域において も、英語を希望する声が一定程度存在することも分かった。 20 6 5 6 17 15 0 0 4 16 0 0 6 0 18 0 0 10 20 30 40 50 英語を希望 中国語を希望 韓国語を希望 その他の言語を希望 英語 中国語(簡体) 中国語(繁体) 韓国語 (人数) Q 災害時、訪日外国人への情報提供に使うべき言語であてはまるものをすべて選んでください。 (注:回答者区分は、回答した言語となっている。例:英語=英語がネイティブレベルの回答者) 【使える言語】 訪日予定外国人旅行者 Web アンケート調査結果では、使用可能な言語について、7つの 国・地域全ての回答者から、「英語は使用可能」との回答が多くなった。 Q 日本語以外であなたが読み書きできる言語をお答えください。(複数回答)
4.
災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の運営における
関係機関の協力と連携
4.1
災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の運営における関係機関 の協力災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)は災害等の緊急時に活用され ることを目的としつつも、旅行者の認知度を向上させるため、平常時から運用するものとし ている。
また本ポータルサイトは、情報提供主体として位置づけられる関係機関のサイトに対して リンクしている。災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の有効性を高 めるために、リンク先の関係機関のサイトにおいても、適切な情報提供を行う準備をするこ とが望まれる。
4.2
訪日外国人旅行者への情報提供における関係機関の連携 災害時における訪日外国人旅行者への情報提供にあたり、必要とする情報は旅行者ごとに 異なるため、情報提供主体が提供する情報を、旅行者自らが行動し入手することが原則とな る。一方、訪日外国人旅行者がスマートフォン等で情報を入手する場合、公衆無線LAN 等 を通じてWeb 環境にアクセスする必要があるが、わが国ではの公衆無線 LAN のサービス 提供が十分ではなく、まずはその整備と普及が求められる。 他方、そうした普及には時間を要することから、各情報提供主体においても、災害時情報 提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)の活用等により、訪日外国人旅行者が情報 を入手しやすい環境整備を行うとともに、関係機関同士が連携して、訪日外国人旅行者に対 し適切、かつ確実に情報を伝達する体制の構築が望まれる。 以下に関係機関が効果的に連携するための留意点を示す。 宿泊施設 (1) (2) 災害時に、訪日外国人旅行者が帰国する場合においても、旅行を継続する場合において も、宿泊施設での対面での情報提供は、非常に有効となる。 公共交通機関の運行状況、出国便の運航状況や空席情報、旅行を継続する場合の目的地 の安全情報等を、各機関のWeb サイト等から取得し、対面で情報提供することが、宿泊 施設に対して望まれる。この際、災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)を活用して、効率的な情報収集が可能となる。他方、訪日外国人旅行者を受け入れるための体制や空室状況について旅行会社等と連 携・調整することも期待される。
旅行会社
国判断等に関する在日大使館への相談、出国便の運航状況や空席状況、訪日外国人旅行者 の滞在先周辺での避難所や宿泊先の確認等のため、公共交通機関や自治体、宿泊施設等と の連携が必要となる。 訪日外国人旅行者の安全確保のため、これらの機関が連携した情報提供が期待される。 また、旅行会社が訪日外国人旅行者に対して提供すべき情報の収集においても、災害時 情報提供ポータルサイトを活用することができる。 自治体 (3) (4) (5) 本調査では、訪日外国人旅行者が必要とする情報として「避難所に関する情報」という 指摘が複数あった。地震等災害発生時には、通常の帰宅困難者と同様、訪日外国人旅行者 も街中に滞留する可能性がある。避難所を運営する自治体においては、訪日外国人旅行者 に対してどのように対応するのか、事前に検討を行っておく必要がある。
災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)では、代表的なコミュニケ ーションの文例や訪日外国人旅行者が必要とする情報収集に役立つリンク集を掲載して おり、訪日外国人旅行者の対応においても活用することができる。
各国大使館
本調査では、特に旅行会社を経由せずに訪日している個人の訪日外国人旅行者への対応 が、課題として各国大使館等から指摘があった。
災害時情報提供ポータルサイト(Safety tips for travelers)では、こうした個人の訪日 外国人旅行者が、効率的に情報を入手できる環境を提供する。各国大使館では災害時に自 国の国民向けにWeb サイトで様々な情報提供を行うことになるが、災害時情報提供ポー タルサイト(Safety tips for travelers)にもリンクすることで、より効率的な対応が可能 になると考えられる。 マスメディア 今回の調査結果において、訪日外国人旅行者に対し、災害時に利用すべき情報提供手段 として、「テレビ・ラジオ等のマスメディア」という回答が多数得られたことからもわか るように、災害時におけるメディアの役割は非常に重要である。 気象庁が発表する地震の状況や今後の見通し等に関する情報のほか、各行政機関が発表 する情報、公共交通機関の運行状況等については、それぞれの組織が各々に情報提供を行 う。一方で、マスメディアがそれらの機関と連携し、情報を収集・整理した上で、多言語 による情報発信を行うことができれば、訪日外国人旅行者や諸外国に対し、正確な情報提 供を行う上で、非常に有効である。