• 検索結果がありません。

こと と記載されている しかし T P N 製剤と脂肪乳剤の一定時間の接触が 製剤学的な面で脂肪粒子の粗大化という現象にどこまで影響するのかは明らかではない これまで検討されてきた脂肪乳剤の安定性の指標としては 外観変化の観察と脂肪粒子の平均粒子径の変化を主体とした評価法であった その後 脂肪乳剤の

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "こと と記載されている しかし T P N 製剤と脂肪乳剤の一定時間の接触が 製剤学的な面で脂肪粒子の粗大化という現象にどこまで影響するのかは明らかではない これまで検討されてきた脂肪乳剤の安定性の指標としては 外観変化の観察と脂肪粒子の平均粒子径の変化を主体とした評価法であった その後 脂肪乳剤の"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

【緒言】

 三大栄養素の一つである脂肪は、中心静脈栄養法 (Total Parenteral Nutrition;以下、TPNと略)にお いて必須の栄養素である。本邦においては、必須脂肪酸 補給あるいはエネルギー源として、ダイズ油を乳化した静 注用脂肪乳剤が使用されている。その投与経路としては、 ① TPN製剤に脂肪乳剤を混合する(ワンパック方式)、 ② TPN製剤との混合を避けるために TPN製剤投与ラ インのほかに脂肪乳剤投与用に末梢静脈投与経路を作 成する、③ TPN製剤投与ラインに脂肪乳剤を側管投与 する、の3経路が用いられている。① TPN製剤に脂肪 乳剤を混合するという方法は製剤学的な問題、すなわち 一定時間混合すると脂肪粒子が粗大化することは既に 証明されている1)。また、②末梢静脈投与経路を新たに作 成して脂肪乳剤を投与するという方法は、静脈投与経路 作成という手間がかかる、患者の苦痛を増す、静脈炎等 の合併症対策が必要になる、などの問題があり、脂肪乳 剤の投与を躊躇するという傾向の原因ともなっている。  一方、③ TPN製剤投与ラインに脂肪乳剤を側管投与 する方法は、簡便さ、という点では優れているが、TPN 製剤と脂肪乳剤が一定時間接触することになるという問 題がある。TPN製剤と脂肪乳剤が接触すれば、製剤学 的に脂肪粒子が粗大化し2)、肺塞栓という重大な合併症 が発生する可能性があるからである3)。確かに、添付文書 の『重要な基本的注意』に『本剤に他の薬剤を混合しない

原著

脂肪乳剤を中心静脈栄養投与ラインに側管投与する方法の

安全性-脂肪粒子径からの検討*

keywords:

TPN製剤、脂肪乳剤、側管投与

井上善文1) Yoshifumi INOUE 桂 利幸2) Toshiyuki KATSURA 國場幸史2) Yukifumi KOKUBA

藤牧巳央3) Mio FUJIMAKI 梶原賢太4) Kenta KAJIWARA

◆大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 栄養ディバイス未来医工学共同研究部門1) 

 エイワイファーマ株式会社製品技術センター2) 味の素製薬株式会社創薬研究所3) 味の素製薬株式会社臨床開発部4)

Center for Advanced Medical Engineering and Informatics, Division of Nutrition & Medical Engineering, Osaka University1),

Production Technology Center AY Pharmaceuticals Co. Ltd. 2), Research Laboratory Ajinomoto Pharmaceuticals Co. Ltd. 3),

Clinical Development Department Ajinomoto Pharmaceuticals Co. Ltd. 4)

【目的】脂肪乳剤をTPN(Total Parenteral Nutrition)製剤投与ラインに側管投与する 方法における脂肪粒子の安定性について検証する。【対象および方法】TPN製剤(ビ タミンおよび微量元素製剤添加)に脂肪乳剤を混合して100mL/時で投与する場合 と、脂肪乳剤をTPN製剤投与ライン(100mL/時で投与)に側管投与(100mL、50mL、 33mL、25mL、20mL、17mL/時で送液)する場合において、輸液の外観観察、平均粒 子径、5μmよりも大きい粗大粒子の体積の測定を行った。【結果】混合液では平均脂肪 粒子径に変化はなかったが、粗大粒子体積は投与後2時間より増加し、USP(United States Pharmacopia)基準の「5μmよりも大きい粒子の体積が全脂肪の0.05%未満」 を超えた。側管投与では外観にも変化はなく、平均粒子径、粗大粒子の体積にも変化は なく、基準値未満であった。【結論】脂肪乳剤をTPN製剤投与ラインの側管から投与す る方法は、平均脂肪粒子径の増大および脂肪粒子の粗大化は認められず、USP基準を 満たしており、安全に投与できると考えられた。

*Can lipid emulsion be administered as secondary piggyback infusion through primary TPN infusion line? – Studies for the Changes of Lipid Particle size.

(2)

こと』と記載されている。しかし、TPN製剤と脂肪乳剤 の一定時間の接触が、製剤学的な面で脂肪粒子の粗大 化という現象にどこまで影響するのかは明らかではない。  これまで検討されてきた脂肪乳剤の安定性の指標とし ては、外観変化の観察と脂肪粒子の平均粒子径の変化を 主体とした評価法であった。その後、脂肪乳剤の平均粒 子径よりも、混合製剤中における粗大粒子の大きさや割合 が、安全面での評価基準となった4)。本邦では、日本薬局 方における乳濁性注射剤の粒子は、通例、7μm以下とさ れ、米国では、2009年に脂肪乳剤の粒子径に関する基準 として、5μmよりも大きい粒子の体積が全脂肪の0.05% 未満であることが USP(United States Phamacopia) 32 General Chapters<729>で規定された5)  TPN施行時の脂肪乳剤の投与方法としては、TPN 製剤への脂肪乳剤の直接の混合を避け、TPN投与ライ ンの側管より脂肪乳剤を投与する方法が望ましいと考え られるが、投与ライン内での両者の混合による脂肪粒子 安定性に関する検討は行われていない。  今回、TPN施行時に脂肪乳剤を側管から投与した際 の脂肪乳剤の安定性を、USP基準「5μmよりも大きい 粒子の体積が全脂肪の0.05%未満であること」を評価 基準として経時的に検討した。

【実験方法】

1. 試料

 TPN製剤は、ピーエヌツインR2号1100mL(味の素製薬 株式会社)に、ビタミン製剤(マルタミンR注射用、味の素 製薬株式会社)と微量元素製剤(エレメンミックR注、味の 素製薬株式会社)の一日量を添加したものを用いた。脂肪 乳剤は、イントラリポスR輸液20%(100mL袋、大塚製薬 工場株式会社)およびイントラリピッドR輸液20%(100mL 袋、フレゼニウスカービジャパン株式会社)を用いた。

2. 輸液投与経路

 TPN製剤の投与ラインは、ニプロ輸液セット(ISA-200E00Z)とニプロ CPチャンバーセット(CPC-300)を 接続して用いた。側管投与は、ニプロ CPチャンバーセッ ト(CPC-301FCZYI)のY字管に、ニプロ輸液セット (ISA-200E00Z)、ニプロ CPチャンバーセット(CPC-300)、ニプロアイセット(IIS-IT30N)を接続して用いた。 また、輸液ポンプはニプロキャリカポンプ CP300を用い た。投与ラインの模式図を図1に示す。側管投与用 Y字 管から先端までのラインの長さ(脂肪乳剤とTPN製剤 が混合して流れる部分)は190cmであった。

3. 測定項目および測定機器

(1)外観観察  脂肪乳剤を TPN製剤に混合したバッグ内の薬液は、 経時的に肉眼で外観を観察した。また、投与ライン先端 部から流出する混合液を経時的に検体チューブに採取 し、肉眼で外観を観察した。 (2)平均粒子径の測定  脂肪粒子の平均粒子径を、レーザ回析/散乱式であ る粒度分布測定装置 LA-920(堀場製作所製)を用いて 測定した。 (3)粗大粒子の測定  脂肪粒子の粗大粒子を、光遮断方式であるAccuSizer 780(Particle Sizing Systems製)を用いて測定した。 粗大粒子の評価は、USP32 General Chapters<729

図1 投与ラインの模式図 1群は、ビタミン(マルタミンR注射用)および微量元素(エレメンミッ クR注)を混合した TPN製剤(ピーエヌツインR2号)に、脂肪乳剤(イ ントラリポスR輸液20%)100mLを混合。100mL/ 時で滴下させ、 バッグ内輸液の外観観察、滴下した液の解析を行った。2〜8群はビ タミンおよび微量元素を混合した TPN 製剤を100mL/ 時で滴下さ せ、20%脂肪乳剤(イントラリポスR輸液20%およびイントラリピッ ドR輸液20%)を側管投与用 Y 字管部分から投与した。投与速度を 100mL/時から17mL/時まで変化させ、滴下した液を解析した。

(3)

>に準じて、各粒子径における体積と粒子数から5μmよ りも大きい粒子の総体積を求め、各検体の脂肪の総体積 に対する割合を算出した。なお、各検体の脂肪の総体積 は、各検体の脂肪濃度(w/v%)から比重0.924を用いて 算出した。

4. 試験方法

(1)TPN 製剤  ピーエヌツインR2号液1100mLに、マルタミンR注射用 1瓶およびエレメンミックR注2mLを混合して TPN製剤 とした。なお、混合作業はクリーンベンチ内で実施した。 (2)投与方法 1)バッグ内混合投与  TPN製剤に脂肪乳剤100mLを注入して、両者をよく 混合させた。輸液投与ラインを接続して、バッグ中の混 合液を100mL/時の速度(混合液を12時間持続投与)で 送液した。輸液投与ライン先端から流出する混合液を検 体とした。実験は、同一条件にて3回実施した。  なお、脂肪乳剤は最も汎用されているイントラリポスR を使用した。 2)側管投与  輸液投与ラインを用いて、バッグ中の TPN製剤を 100mL/時の速度で送液した。一方、投与ラインの側管か ら脂肪乳剤100mLを、1、2、3、4、5、6時間で投与する速 度(それぞれ100mL/時、50mL/時、33mL/時、25mL/ 時、20mL/時、17mL/時)で送液した。輸液投与ライン 先端から流出する混合液を検体として測定に供した。  なお、側管投与の実験には、最も汎用されているイント ラリポスRを使用し、イントラリピッドRは、最も投与時間 が長く、TPN製剤との混合時に影響を受けやすい条件 (検体7の条件)のみ検討した。  側管投与の実験も、同一条件下での比較試験を3回 行った。 (3)各検体の内容  TPN製剤と脂肪乳剤の混合液、側管投与のそれぞれ の投与速度につき、各3セットの実験を行い評価した。 各検体の内容を表1に示す。 (4)測定時点  各検体における測定時点を表2に示す。 (5)試験環境  試験は、室温散光下、室温(21.0~ 22.1℃)で実施した。 なお、TPN製剤は実験期間中、遮光カバーを装着した。

【結果】

1. 外観観察

 バッグ内の薬液の外観観察の結果を表3に示す。バッ グ内の薬液の外観観察では、TPN製剤に脂肪乳剤を混 合したバッグ(検体1)において、混合12時間後にバッグ の液面に軽微なクリーミングが認められた。側管投与を 行ったバッグ製剤(検体2~ 8:TPN製剤および脂肪乳 剤)では、いずれも変化は認められなかった。  混合投与あるいは側管投与後の混合液の外観観察で は、いずれの検体も均一な乳剤であり、変化は認められ なかった。 表1 脂肪乳剤と TPN製剤の混合液、側管投与検体の内容 検体1は脂肪乳剤と TPN 製剤の混合液を100mL/時で投与した。検 体1〜7はイントラリポスR輸液20%、検体8はイントラリピッドR輸液 20%である。脂肪乳剤としての投与速度は、検体1は混合液を100mL/ 時であるが、検体2〜 8は、側管より脂肪乳剤を1〜6時間で投与した。 表2 検体の測定時点 混合検体は0、2、4、6、12時間後に測定した。検体2〜 8は0、2、4、 6時間後に測定したが、投与終了時間にも測定した。

(4)

基準内で推移した。検体7が、側管投与の中で最もTPN 製剤と脂肪乳剤の接触時間が長いので、検体1および7 の粗大粒子(5μmより大きい粒子体積の割合(%))の経 時的変化の比較を図2に示す。

【考察】

 脂肪乳剤には乳化剤として両性界面活性剤であるレ シチンが用いられているため、脂肪粒子の表面は弱く陰 性に荷電している。このため、特に2価以上の陽イオンが 存在すると、脂肪粒子相互間の電気的反発力が弱まり、 脂肪粒子が凝集からクリーミング、油滴分離と進行し、エ マルジョンの破壊が起こることになる6)。また、同様にイ オン化した物質であるアミノ酸と共存させたときに脂肪 粒子の不安定化が起こることも報告されている7)

2. 平均粒子径の評価

 各検体の平均粒子径の経時変 化を表4に示す。脂肪粒子の平均 粒子径は、混合投与(検体1)しても、 側管投与(検体2~ 8)しても、有 意な経時的な変化は認めなかった。 また、脂肪乳剤の種類(検体7と8) により、脂肪粒子の平均粒子径は 異なったが、いずれも有意な経時 的変化は認めなかった。

3. 粗大粒子の評価

 各検体の脂肪の全体積に対す る5μmより大きい粒子の体積の 割合(%)を表5に示す。バッグ内 混合投与を行った検体1では、粗 大粒子の割合が経時的に上昇し、 混合2時間後より、USP General chapters<729>の基準である 0.05%以上となった。一方、側管 投与を行った検体2~ 8は、USP 表3 バッグ内の薬液の外観観察 検体2〜8は、それぞれ TPN 製剤と脂肪乳剤が混合前で単体なので、 外観の変化はなかった。混合した検体1は、12時間後に3検体とも表 面に軽微なクリーミングを認めた。 表4 平均粒子径の変化 検体1〜 8のいずれにおいても、平均粒子径には変化はみられなかった。製剤として、イントラリポスR 輸液20%よりもイントラリピッドR輸液20%の方が平均粒子径は大きかった。 表5 各検体の脂肪の体積に対する5μmより大きいの粒子の体積の割合 検体2〜 7はいずれも、0.05%未満であり、時間経過に影響されなかった。検体1は混合後2時間で 0.05%を超え、時間経過とともに粗大粒子の割合が上昇し、12時間後には0.181%まで上昇した。

(5)

 TPN製剤中における脂肪粒子の粗大化は、共存する 2価の陽イオンやアミノ酸(特に塩基性アミノ酸)の濃度 に強く影響されると推測されることより、脂肪乳剤の側 管投与に際しても、投与ライン中での TPN製剤と脂肪 乳剤の混合割合を正確に調整して評価する必要がある。  そこで、本試験では、臨床使用実態に即した輸液投与 方法と脂肪乳剤の投与時間を考慮して実験を行った。す なわち、用いた1100mLの TPN製剤を12時間で投与す る条件下に、汎用濃度の20%脂肪乳剤100mLが投与ラ イン内で、臨床使用時間(6時間が上限)内で接触するよ うに輸液ポンプを用いて混合した。また、投与ライン先 端から流出する混合液を静止状態で泡立てないように 注意しながら、経時的に検体チューブに採取して、肉眼 での外観観察と平均粒子径および粗大粒子の割合を評 価した。  本試験の陽性対照として、TPN製剤に脂肪乳剤を混 合した製剤(ワンパック方式)を作成し、バッグ中での外 観変化と投与ラインの先端から流出する混合液を評価し、 実験系の検証を行った。その結果、脂肪乳剤を混合した TPN製剤では混合後12時間でバッグの液面に軽微なク リーミングが認められた。また、脂肪乳剤の平均粒子径 はいずれの時点においても変化はみられなかったが、粗 大粒子の体積の割合は混合後2時間目よりUSP基準値 の0.05%を超え、経時的に上昇し、混合後12時間目で 0.181%となった。  馬庭らは、本試験と同様に、ピーエヌツインR2号 1100mLにイントラリポスR 輸液20% 100mLを混合す ると、外観上、3時間後より乳剤粒子の凝集、6時間後よ り油滴の分離を認め、光学顕微鏡的観察でも脂肪粒子 は経時的に粗大化したと報告している8)。外観変化の経 時的な推移は異なるが、ワンパック方式の TPN製剤に おいて脂肪粒子が不安定になることについては同様の結 果であったことからも、本試験系は脂肪粒子の変化を検 出できる評価系であることが確認された。経時的な推移 の違いは、本試験では高カロリー輸液用総合ビタミン剤 を混合しているのに対し、馬庭らの検討ではピーエヌツ インR2号に総合ビタミン剤が混合されていないためであ ろうと推察される。TPN製剤に配合したビタミンの脂肪 乳剤の安定化に及ぼす影響については、山岡らが総合ビ タミン剤の配合により脂肪粒子の凝集化が抑えられるこ とを示し、これは脂溶性ビタミンの可溶化剤として含まれ ているHCO-60やプロピレングリコールが影響している と報告している9)。患者の良好な栄養状態の維持および 回復という栄養学的観点から、13種類のビタミンの添加 も必須であり、同時に、微量元素の不足も補う必要があ る。本試験においても、基本の TPN製剤は13種のビタ ミンと5種の微量元素を配合した組成として脂肪粒子径 の変化を検討した。  一般に、ある程度以上大きな粒子である粗大粒子は、 生体内で毛細血管への塞栓などが懸念され、乳化破壊に よって粗大粒子が増大することは安全性の面で大きな問 題となる。粒子径の測定法に関しては、従来、光散乱法が 用いられてきた。しかし、脂肪乳剤の粒子径やワンパック 輸液処方の安定性を論じる際には、光散乱法では1μm 以上のコロイド粒子の検出に難点があることが報告され ている。近年、米国では、脂肪乳剤の粒子に関する基準 は5μmより大きな粒子の体積が全脂肪体積の0.05%未 満であることが USP32 General Chapters<729>に記 載され、規定された。また USP32 General Chapters <729>の METHOD Ⅱには粗大粒子の測定法も記載 されている。本試験でも、脂肪粒子の粗大粒子の測定法 は、本測定法と同じ、光遮断方式であるAccuSizer 780 (Particle Sizing Systems製)を用いて測定した。

 TPN製剤(ピーエヌツインR2号輸液、マルタミンR注射 用、エレメンミックR注)に脂肪乳剤(イントラリポスR 図2 滴下液中の5μm以上の粗大粒子の割合 光遮断方式である AccuSizer780を用いて粒子径を測定し、5μmよ り大きい粗大粒子の割合を求めた。TPN製剤に脂肪乳剤を混合した 検体1では、時間経過とともに粗大粒子の割合が上昇し、2時間後に は USP基準値を超えた。脂肪乳剤を側管投与した検体7(最も脂肪 乳剤と TPN製剤の接触時間が長い)では、観察期間中、粗大粒子の 割合に変化はなく、USP基準値未満であった。

(6)

(0.28mL/分+1.67mL/分)〕と計算すると1.44分となる。 すなわち、TPN製剤と脂肪乳剤の接触時間は1.44分、 という計算される。一方、最も早い場合の脂肪乳剤の投 与速度は100mL/ 時で、これは1.67mL/分に相当し、 TPN製剤と脂肪乳剤の接触時間は0.84分となる。この ように、TPN製剤への脂肪乳剤の混合とは異なり、側管 から投与する場合には TPN製剤と脂肪乳剤の接触時 間が非常に短いため、脂肪粒子の粗大化が起こらないの ではないかと考えられる。なお、本検討条件における脂 肪負荷量は、成人体重60㎏において脂肪乳剤の投与速 度により0.33~ 0.057g/kg/時となる。

【結論】

 TPN施行時、脂肪乳剤を TPN製剤投与ルートの側 管から投与しても、脂肪粒子の粒子径に大きな変化は認 められず、安全に投与できるものと推察される。

【謝辞】

 本試験において、実験実施に多大なご協力と指導をい ただきました、ニプロ株式会社松尾浩氏、味の素製薬株 式会社 梅田篤氏、エイワイファーマ株式会社鈴木茂幸 氏に深謝いたします。 液20%)を直接混合すると、混合後12時間でバッグ内の 液面に軽微のクリーミングが認められた。輸液投与ライ ンからの流出液の評価において、脂肪粒子の平均粒子径 には大きな変化は認められないものの、USP32 General Chapters<729>の基準による脂肪の体積に 対する粗大粒子(5μmより大きい)の割合は経時的に上 昇し、混合後2時間目より基準値を超えた。この方法で 脂肪乳剤を投与すれば、粗大粒子による塞栓という合併 症が発生する危険があることを示唆していると考えられ る10)。また、脂肪粒子の粗大化とともに、ワンパック輸液 における塞栓が危惧される重要な原因として、リン酸カ ルシウムの沈殿の問題がある11)。ワンパック輸液中に沈 殿が生じた場合、脂肪乳剤の濁度により沈殿が可視でき ないことが最も問題となる点であり、1994年の FDA safety alertにおいて、脂肪乳剤を混合したワンパック 高カロリー輸液における肺塞栓の危険性12)を回避するた めに、脂肪配合 TPN施行時には1.2μmの輸液フィル ターを使用するように勧告されている13)。TPN施行症例 に脂肪乳剤を投与する場合には、この点に関する注意も 必要である。  一方、今回の実験において、脂肪乳剤(イントラリポスR 輸液20%)を TPN製剤投与ラインの側管より投与した 場合、脂肪乳剤の投与速度(投与時間)にかかわらず、脂 肪粒子の平均粒子径に大きな変化は認められず、USP 基準値を超える粗大粒子の増加も認められなかった。ま た、異なる脂肪乳剤(イントラリピッドR輸液20%)を側 管から投与した場合も、同様の傾向であった。脂肪乳剤 の側管からの投与方法は、脂肪粒子の粗大化という問題 を起こすことなく、安全に実施可能であることを意味し ている。  脂肪乳剤を TPN製剤投与ラインに側管から投与する 場合の両者の接触時間は、非常に短い。本研究で用いた 投与ラインの側管投与用 Y字管から先端までの長さは 190cmで、その容量は2.8mLであった。TPN製剤の投 与速度は100mL/時、1.67mL/分である。脂肪乳剤の 投与速度が遅くなればなるほど脂肪乳剤とTPN製剤の 接触時間は長くなる。本研究において最も遅い脂肪乳剤 の投与速度は17mL/時で、これは0.28mL/分に相当す る。TPN製剤と脂肪乳剤の液量の和が投与ライン内容 量を満たすことになるので、脂肪乳剤は〔2.8mL÷

(7)

参考文献

1) 山岡桂子,中島康雄,山岸義史ほか.脂肪乳剤と高カロリー輸液剤との配合変化.JJSHP 21:139-142,1985. 2) 村瀬由紀子,藤目光良ほか.ワンパック方式高カロリー輸液の検討.新薬と臨床36:15-29,1987.

3) Food and Drug Administration. Safety alert: Hazards of precipitation associated with parenteral nutrition. Am J Hosp Pharm 51: 1427-1428, 1994.

4) 山岡桂子、中島康雄、山岡尚世:市販脂肪乳剤の粗大粒子評価-光遮蔽法による粗大粒子測定の検討-.外科と代 謝・栄養 43:135-141、2009

5) USP 32, General Chapters<729>GLOBLE SIZE DISTRIBUTION IN LIPID INJECTABLE EMULSIONS. The United States Pharmacopeial Convention, Maryland, 2009.

6) 野呂俊一、高村 彰、石井文由、ほか:脂肪乳剤と他輸液との混合時におけるエマルジョンの安定性評価.薬剤学 42:17-24、1982 7) 伊夫伎文雄、遠山敏弘、中島忍、ほか:脂肪乳剤配合ワンパック混合輸液の検討(第1報)-製剤学的安定性-.新薬 と臨床 32:146-153、1983 8) 馬庭芳郎、谷村弘、嶋本哲也、ほか:ワンパック高カロリー輸液の再考.外科と代謝・栄養31:17-21、1997 9) 山岡桂子、中島康雄、長谷部正晴、ほか:脂肪乳剤と高カロリー輸液製剤との配合変化(第2報).病院薬学 12:429-435、1986

10) Puntis JWL, Wilkins KM, Ball PA, et al. Hazards of parenteral treatment: do particles count? Arch Dis Child 67: 1475-1477, 1992.

11) MacKay MW, Fitzgerald KA, Jackson D. The stability of calcium and phosphate in two specialty amino acid solutions. JPEN 20: 63-66, 1996.

12) Hill SE, Heldman LS, Goo ED, et al. Fatal microvascular pulmonary emboli from precipitation of a total nutrient admixture solution. JPEN 20: 81-87, 1996.

13) McKinnon BT. FDA safety alert: harzards of precipitation associated with parenteral nutrition. Nutr Clin Pract 11: 59-65, 1996.

(8)

Can lipid emulsion be administered as secondary

piggyback infusion through primary TPN

infusion line? – Studies for the Changes of Lipid

Particle size.

Keywords:TPN, Lipid emulsion, Piggyback administration

Yoshifumi INOUE1) Toshiyuki KATSURA2) Yukifumi KOKUBA2)

Mio FUJIMAKI3) Kenta KAJIWARA4)

Purpose: The purpose of this study is to examine the stability of lipid particles in a lipid emulsion administered as a secondary piggyback infusion through primary TPN infusion line.

Methods: Gross-and-micro observation was performed, and the mean droplet size and large diameter tail (over 5 µm) were evaluated in a mixture of lipid emulsion and TPN fluid (supplemented with vitamins and minerals) administered at 100 mL/h, and in a lipid emulsion given by piggyback administration (at 100, 50, 33, 25, 20, and 17 mL/h) through TPN infusion line (at 100 mL/h).

Results: In the mixture, the mean particle size was not changed, but the volume of the large diameter tail increased after 2 h and exceeded the USP reference standard that percentage lipid over 5 µm should not exceed 0.05% of the total lipid. However, piggy administration of the lipid emulsion did not cause changes in the appearance, mean particle size of droplets, and extent of large diameter tails, enabling it to be kept under the reference value. Conclusion: The results of the study showed that piggyback administration of lipid emulsion through primary TPN infusion line did not significantly change the mean particle size or coarsen the lipid particles, suggesting that the lipid emulsion meets the proposed USP standard and can be safely administered by this method.

Center for Advanced Medical Engineering and Informatics, Division of Nutrition & Medical Engineering, Osaka University1), Production Technology Center AY Pharmaceuticals Co. Ltd. 2),

Research Laboratory Ajinomoto Pharmaceuticals Co. Ltd. 3),

参照

関連したドキュメント

突然そのようなところに現れたことに驚いたので す。しかも、密教儀礼であればマンダラ制作儀礼

仏像に対する知識は、これまでの学校教育では必

子どもたちは、全5回のプログラムで学習したこと を思い出しながら、 「昔の人は霧ヶ峰に何をしにきてい

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として決定するも

生活環境別の身体的特徴である身長、体重、体

となってしまうが故に︑

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から