Q&A -堆肥編- Q:堆肥とは何ですか? A:堆肥とは、ワラ、落葉、野草などを堆積、発酵させたものの総称です。繰り返します が発酵産物です。しばしばきゅう肥(厩肥)と混同されますが、もともとは家畜の力を 借りずに生産されたものを言いました。しかし、現在では両者を区別して使うことは実 際には少なく、はっきり区別していないのが現実です。 現在では、畜産排泄物を起源とするものも含めて一般には堆肥と総称されています。 更に、生ごみや汚泥も、剪定枝も堆肥の原料です。コンポストと言われる物もこの範疇 に入ります。
2 Q:堆肥とは、ワラ、落葉、野草や家畜排泄物などを腐らせたものではないのですか? A:「腐らせる」は腐敗の意味でしょうが、腐敗とは有機物が分解され、有害な物質と悪臭 ある気体を生じることですから、堆肥化作用とは全く反対の意味です。 堆肥化とは、人間にとって有益な物質を作っているわけですから、むしろ発酵作用で す。強いて言えば、好気発酵です。良い堆肥は、作物にとっては有効であるばかりでな く、悪臭もありません。 製品の臭いをかいで、鼻を背けたくなるような堆肥は良い堆肥ではありません。良質 な堆肥の“におい”は、“臭い”でなく“匂い”と言う漢字を当てたいです。不良品に は“臭い”が適当です。
Q:発酵と腐敗の違いは何ですか? A:発酵と腐敗はともに微生物の分解作用ですが、学問的な規定はなく、人間にとって有 益な物質を作る場合を発酵と言い、硫化水素、メルカプタンやアンモニアなどの不快臭 を生じる過程を腐敗と呼んでいます。つまり、人間にとって都合の良いのが発酵、都合 の悪いのが腐敗です。発酵と腐敗の線引きは必ずしも明確ではありません。例えば、腐 敗については、生物遺骸を無機物に還元すると言う大きな生態系の循環作用に関与し、 人間は直接間接に腐敗の恩恵を受けています。腐敗作用は地球や人間への最大の貢献で す。
[発酵]
・醸 造 ・チーズ ・納 豆 -芳香-[腐敗]
・アンモニア ・メルカプタン 等の発生 -悪臭-4 Q:なぜ堆肥にしなければならないのですか? A:土壌中に稲ワラや牛ふん等をそのまま施用しても、土壌中の微生物等によって分解さ れて堆肥に近い肥効を示します。しかしながら、新鮮有機物を直接施用するより、微生 物の働きによって堆肥化したほうが間違いなく効果を発揮します。稲ワラ等は炭素率 (C/N 比)と言う数字が大きく、新鮮なままで田畑に施用すると、土壌中で窒素飢餓 と称する現象が起きて、植物が欲する窒素成分が不足します。一方、畜産廃棄物ではア ンモニア等のガス障害による生育障害や悪臭が問題になり、また扱うときの不潔感のみ ならず周囲への環境問題も発生します。あらかじめ微生物によって、これらの負の部分 を排除できるのが、堆肥の大きな特質です。
Q:堆肥化の「化」の意味は何ですか? A:堆肥化するには、ワラ、落葉、野草、家畜排泄物などを堆積し、60~70%程度の水分 を保たせることが重要です。その目的は、微生物の活動をし易くすることと後述する堆 肥の切り返しにも最適の水分と言われています。そして、発酵が開始され、徐々に堆積 物内部の温度が上昇し 70℃近くに達して堆肥化が最高潮に達します。微生物による好 気発酵ですから、堆積中も酸素が必要です。そのため、切り返しと称される攪拌作業を 行う必要があります。堆肥化促進には石灰窒素等の肥料が用いられることもあります。 良質の堆肥を作るには、60℃以上で 7 日以上とか 65℃以上では 48 時間以上が必要と 言われています。これによって、雑草種子を不活性化し、病害微生物や卵を死滅させま す。有機物分解が不完全な状態では田畑等に施用すると様々な問題が発生します。これ らの問題が解消されるまで分解を進めることが堆肥化の意味するところです。換言すれ ば、有機性廃棄物を安全に土壌還元可能なレベルまで分解することが堆肥化の大きな目 的です。従って、ワラ、落葉、野草、家畜排泄物などを機械的に 70℃に加熱しただけ のものは堆肥ではありません。例えば、生の鶏糞は乾燥すると堆肥と一見間違いがちで すが、堆肥ではありません。
6 Q:家畜排泄物から作る堆肥には、家畜の糞が持っている衛生細菌の問題はないのですか? A:家畜排泄物を直接触れたり、田畑等に散布すれば、衛生細菌等の問題が生じます。し かし、堆肥化が完全に行われていれば問題はありません。堆肥化過程では、発熱反応が あり、70℃以上の高温が数日続きますが、その間に衛生細菌、病虫卵、ウイルス等が 死滅します。例えば、O-157 は 75℃で 1 分間の加熱で死滅すると言われています。堆 肥化とは、有害微生物等は死滅し、有益微生物は生き残ると言う、自然界の絶妙な生態 系利活用と言えます。
Q:堆肥に必要な条件は何ですか? A:安定な作物生産には堆肥施用が求められますが、そのためには次の事項は最低限でも 守って欲しいものです。 ① 作物に障害が出ないこと:堆肥に用いる素材によっては有機酸やフェノール性酸 等の種子の発芽や作物の生育に有害な成分を含むことがありますので注意が必 要です。また雑草の種子が含まれていてもいけません。 ② 有害成分を含まないこと:有害な重金属、ヒ素、カドミウム、水銀では、それぞ れ堆肥キログラム当たり50mg、5mg、2mg を超えることは法律で禁じられてい ます。亜鉛でも基準があります。 ③ 製品が安定していること:今日では堆肥の素材が多岐にわたるため、その種類に よって肥料成分や施用効果が異なります。販売には特性の明示が必要です。また、 製造ロットごとに成分が異なるようでは、利用上問題が多いため、製造管理をき ちんと行い、成分の安定化が求められます。 ④ 悪臭がないこと:完熟堆肥では悪臭は発生しませんが、未熟な堆肥に見られます。 完熟堆肥はかすかに縁の下の土の匂いがすると言う人もあります。言い得て妙で す。 ⑤ 取り扱いやすいこと:堆肥を農地に散布する場合は、一般に 10 アール当たり 1 トンは必要と言われています。重くてかさばりますから、取り扱いやすく、作業 が効率的に進められることが大切です。いわゆる散布問題です。粒状化やペレッ ト化技術が進んでいます。 堆肥は化学肥料と違って、施用すると次年度以降に残存することが多く、特に重金属 等の有害成分が一度入り込むと、その除去には大変な労力が必要とされますので、注
8 Q:堆肥づくりのポイントは何ですか? A:堆肥は、稲ワラや家畜排泄物等の有機物が微生物の働きによって分解され、完熟され たものです。すなわち、微生物の反応産物です。従って、醸造等と同じで、①温度、② 水分、③酸素が必須です。他に堆肥製造に独特の項目として④炭素と窒素の割合(炭素 率、C/N 比)が加わります。 ① 温度については、原料を加熱するのではなく、堆積して酸素を与えれば(切り返 しを行えば)、原料中の微生物の増殖によって 60~70℃に上昇するのが、堆肥化 の特徴です。 ② 水分については、人為的に60%前後に調節したいものです。 ③ 酸素については、堆積したままにおかないで、いわゆる攪拌する必要があります。 切り返しと言います。 ④ 炭素と窒素の割合(炭素率、C/N 比)については、有機物の分解と密接な関係に あり、一般的には、稲ワラのように堆肥の原料となる有機物C/N 比が高いと、微 生物のからだを作るもとになる窒素が不足するので、窒素を補うことがあります。
Q:堆肥の原料は様々のようですが、それぞれ注意すべき点を教えてください。 A:従来は、稲ワラや麦ワラ等の作物残渣、落葉、野草などの植物系と家畜排泄物系が主 たる原料でしたが、最近では家庭からの生ごみ、都市ゴミ、下水汚泥、水産物を含む食 品産業系廃棄物、剪定枝を始めとする林産系廃棄物等、極めて多岐にわたります。 これらの原料を堆肥化する際には、固有の物差しがあり、便利です。堆肥化の方法が 異なります。それが原料の炭素と窒素の割合(炭素率、C/N 比)です。 (1) C/N 比が 30 以下の場合 家畜糞や下水汚泥は窒素含量が高く、C/N 比も 30 以下で、極めて分解しやすい 資材です。しかし、新鮮な家畜糞は水分含量が高く、通気性も悪いため、生の状態で は分解は進みにくい欠点があります。そのためオガクズやモミガラ、ワラ等の副資材 を添加し、水分の調整と通気性の改善を図る必要性があります。 (2) C/N 比が 30~100 の場合 稲ワラやモミガラは、C/N 比が 70 以上あるので、微生物のからだをつくるもと になる窒素が不足します。稲ワラを堆積するときは、C/N 比が 30~40 前後になるよ うに速効性の窒素を添加し、空気が入るように、また水分を 60%程度に調整します。 これにより有機物の分解が進み、効率よく堆肥化できます。他に麦ワラ、野草、落葉 が相当します。 (3) C/N 比が 100 以上の場合 オガクズやバーク(樹皮)のようにC/N 比の極めて大きい原料は、窒素を補給し ても稲ワラのように分解は進みません。これはリグニン、タンニンやワックスなど分 解しにくい成分を多く含んでいるためです。市販されているバーク堆肥は原料を2~3 年間野外に堆積して、古い物から順次粉砕し、鶏糞や尿素または硫安などの窒素源を 混 合 し 、 水 分 を お お よ そ 60~65%に調整して、発熱分解させたいものです。
10 Q:堆肥を施用すると、ミミズなどの小動物がたくさん動いていて気持ちが悪いのですが、 この堆肥づくりは失敗しているのですよね? A:とんでもない。むしろ成功しているのですよ。例えば、ミミズ等が土壌を食べて糞を 排泄することで、土壌の団粒化が促進され、通気性や保水性の良い土壌を作っているの ですよ。
Q:堆肥の原料から見た良質堆肥の選び方や特徴を教えてください。 A:堆肥の原料や素材は多種多様ですが、大きく分けると、生ごみ系、家畜排泄物系、木 質系があり、それぞれ特徴があります。販売される堆肥には、肥料取締法で「種類」、 「原料」「成分」などの表示が義務づけられていますので、購入時に確かめることが賢 明です。 生ごみ系は、養分が多く含まれ分解も早いので「肥料効果」が高いのが特徴です。木 質系は窒素が少なく繊維などが多く、ゆっくりと分解されて土壌腐植となるため、保水 性や通気性をよくする「物理性改善効果」が高いと言う特長があります。家畜排泄物系 は両者の中間的な性格ですが、家畜排泄物単独では生ごみ系のように肥料効果が高く、 おがくずやバークなどの混合量が多いと、木質系に近い性質になります。 家畜排泄物系の中では、一般に肥料効果は鶏糞が最も高く、豚糞、牛糞の順です。一 方土壌の物理性改善効果はその逆の順序になります。 生ごみ系堆肥や家畜排泄物系堆肥(中でも鶏糞堆肥)は窒素成分が多く、C/N 比が低 く、木質系の多く入った堆肥は逆に窒素成分が少なくC/N 比が高くなります。 これらの特徴が見方を変えれば欠点となります。それぞれの欠点は未熟な堆肥ほど強 いことに注意してください。
12 Q:堆肥と肥料はどう違うのでしょうか? A:堆肥と肥料はともに作物にとって必要なものですが、肥料は、窒素、リン酸、カリウ ムなどの無機質の化合物そのものを粒状にしたもので、多くが水溶性で、直ぐに植物に 吸収されます。一方、堆肥は直ぐに肥料として働きませんが、何ヶ月も経ってから、じ わじわと栄養分が出てくると言う特性を持っています。肥料にも有機質肥料と言うもの があり、緩効性で栄養分が出てくるものもありますし、堆肥でも尿素を多く含む鶏糞を 原料とする堆肥のように速効性に近いものもあります。 肥料は多くが速効性と言うこともあって、一作期間で作物にほとんど吸収されてしま いますが、堆肥は緩効性のゆえに効果が徐々に現れるとともに、連年施用するとその効 果が累積する特長があります。いわゆる地力増強資材と言ってよろしいでしょう。
Q:堆肥の熟度を、分析値でなく、感覚的に分かる方法がありますか? A:あくまで簡便法です。堆肥の色や感触からは、未熟堆肥では原料の形や色が残ってい ますが、完熟堆肥ではさらさらで黒っぽい色を示します。堆肥に水を加えて混ぜて握っ て見ると、未熟堆肥はべったりと手に付きますが、完熟堆肥では、握ると塊になり、振 ると手から容易に離れます。匂いは、未熟堆肥ではアンモニア臭等が残りますが、完熟 堆肥ではかすかに田舎の神社の縁の下の匂いと言う人があるくらい懐かしさを覚える 匂いです。
14 Q:C/N 比とは何ですか? A:堆肥によっては施用すると作物の葉が黄化することがあります。これは施用する堆肥 の種類によっては C/N 比が高く、土壌中の微生物が自身の増殖過程で大量の窒素を消 費してしまい、植物に必要な窒素が不足してしまうからです。窒素飢餓とも言います。 換言すれば、植物と土壌中の微生物とで窒素の奪い合いになり、C/N 比が高い場合に は植物側が負けて、窒素を吸収できなくなり、葉が黄化するわけです。 その理屈は以下のように考えられています。微生物体のC/N 比は 5~10 です。すなわ ち、微生物は自身の体の形成には炭素の1/5~1/10 の窒素を必要とします。堆肥の C/N 比が大きいと微生物の窒素の全てを自身の体を形成するために取り込んでしまいます。 それでも足りない場合は土壌や堆肥中の窒素まで取り込もうとして、植物と窒素の奪い 合いが起きてしまいます。この結果起きるのが、窒素飢餓です。 各種有機物のC/N 比(吉田、2012) 有機物 C/N 比 有機物 C/N 比 微生物菌体 5~10 牛ふん ~20~ 鶏ふん 5 完熟堆肥 15~20 ダイズ粕 5~6 落ち葉 20~120 エンドウ 10 稲ワラ 60~70 アルファルファ 13 麦ワラ 90~110 豚ぷん 15 おがくず ~400~