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有限責任事業会社(UG)の払込み規制に関する近年の法状況 利用統計を見る

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(1)

の法状況

その他(別言語等)

のタイトル

Die Rechtslage uber die Einzahlung des

Stammkapitals bei der UG

著者

丸山 秀平

著者別名

Shuhei MARUYAMA

雑誌名

東洋法学

62

3

ページ

183-201

発行年

2019-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00010347/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

(2)

《 論  説 》

有限責任事業会社(UG)の払込み規制に関する

近年の法状況

丸山 秀平

1  はじめに  本稿は、従来から継続してきたドイツ有限会社法に関する研究の一環とし て、有限責任事業会社(Unternehmergesellschaft)( 1 ) と通常の有限会社(GmbH) との関係について、「全額払込み(Volleinzahlung)」・「現物出資(Sacheinlage)」 および「半額払込み(Halbeinzahlung)」に関するドイツ有限会社法の規制に係 る法状況を考察するものである。  前記の規制に関しては、既に拙著( 2 ) において論じてきた部分もあるが、本稿 では拙著で論じ足りなかったと思われる学説の状況および有限責任事業会社の 通常の有限会社への移行を取り扱った最近の決定を素材として論ずることにし たい。 2  全額払込み規制・現物出資禁止規制  周知のように、ドイツ有限会社法(以下「有限会社法」とする)上、有限責 任事業会社を設立する場合の出資は、金銭出資に限定されており、現物出資は 認められていない(有限会社法 5 a 条 2 項 2 文、以下「現物出資禁止規制」と

( 1 ) 2008年ドイツ有限会社法改正法(Gesetz zur Modernisierung des GmbH –Rechts und zur Bekämpfung von Missbräuchen (MoMiG), BGBl, I 2008, 2026ff.)によって、同法 5 a 条に、有限責任事業会社に 関する特則規定が設けられた。

( 2 ) 丸山秀平『ドイツ有限責任事業会社(UG)』(日本比較法研究所研究叢書103)、中央大学出版 部2015年。

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する。)。この現物出資禁止規制に関する同法 5 a 条 2 項 2 文は、同項 1 文を前 提としていることに注意しなければならない。  すなわち、同項 1 文によれば、有限会社法 7 条 2 項の規定にかかわらず、登 記申請は、基本資本が全額払い込まれている場合に初めてなすべきものとされ ている。同法 7 条 2 項については、後記 2 において詳述するが、この規定は、 通常の有限会社について、同項 1 文では、 4 分の 1 払込み、同項 2 文では、半 額払込みで、登記申請が受理されるとしている。これに対して、有限責任事業 会社においては、全額の払込みが必要とされており(以下「全額払込み規制」 とする。)、そのことを前提として、さらに現物ではなく金銭による払込みのみ が認められているのである。  これらの規制の理由として示されているのは、(全額払込み規制について) 有限責任事業会社では、通常の有限会社の最低基本資本金額である 2 万5000 ユーロに達するのでなければ、発起人は自由に基本資本を選択し、定めること ができるので、そもそも半額出資を定める必要はないし、(現物出資禁止規制 について)有限責任事業会社においては、会社が創業時に一定の資金を必要と しており、それが発起人によって最低資本金として選択され、現金で払い込ま れなければならないことから、現物出資の必要はないし、従って認められない ということである( 3 ) 。  以上の規制は、英国の非上場株式会社(Limited)( 4 ) に対し競争能力を有する代 替物を有限責任事業会社という形式で打ち立てるための簡易化(Vereinfachtung)、 すなわち、迅速で、費用として有利な条件で、かつ簡単に設立ができるように するという目的を求めるものである( 5 ) 。

( 3 ) 2007年 5 月23日「有限会社法改正法政府草案(Entwurf eines Gesetzes zur Modernisierung des GmbH-Rechts und zur Bekämpfung von Missbrauchen (MoMiG))」に係る「理由書 (Begründung(Reg- Begr., MoMiG))」(BT-Drs.16/6140 S.32.)。

( 4 ) イギリスの非上場株式会社(Private Company Limited by Shares (Ltd.))は、ドイツの通常の有 限会社と人的会社(合名会社・合資会社)の隙間に在るものと位置づけられ、その隙間を埋める ものとして、導入されたのが有限責任事業会社であったとされている(Gehb/Drange/Hecklmann, Gesellschaftlicher Typenzwang als Zwang zu neuem Gesellschaftstyp, NZG 2006, S.88ff.)。

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 このような理解に関して、Rieder は、有限責任事業会社の設立段階とその後 の通常の有限会社への移行段階とを区別すべきことを強調している( 6 ) 。  すなわち、Rieder によれば、問題となるのは、前記の簡易化の目的が設立段 階では該当するものの、「設立者が Limited のために構想された法的衣装を脱 ぎ去り、通常の有限会社に移行しようとする場合には」( 7 ) もはや該当しないこ とである。この点で、とりわけ現物出資禁止規制に関する立法者の意図は、債 権者の保護にあるのではなく、基本資本額が自由に選択できることから、その 必要性がないという点にあるにしか過ぎない。  Rieder は、(ⅰ)有限会社法 5 a 条 3 項 2 文 1 号( 8 ) により資本増加に同法57c 条以下の規定が適用されるべきことからすれば、通常の有限会社に移行する段 階では前記の簡易化の目的はもはや何の意味もないこと、(ⅱ)とりわけ、同 条 3 項による準備金の積み立て義務が、時間的にも金額的にも制限がないこ と( 9 ) から現れてくることは、有限責任事業会社を通常の有限会社へと強化しよ うとすることは当たり前のことであり、従って、その実際の理由付けを困難に してはならないということ、(ⅲ)通常の有限会社の設立よりも(有限責任事 業会社に対して)より厳格な要求をすることは以上の原理と相容れないこと、 以上(ⅰ)~(ⅲ)について言及しており、このうち(ⅱ)・(ⅲ)について、連 邦最高裁2011年 4 月19日決定(10) を指示している(11) 。右決定は、前記拙著で取り 扱っている通り(12) 、現物出資禁止規制は最低資本の限度に達する資本増加には ( 5 ) Vgl. Begründung, a.a.O. (Fn.3), S.32.

( 6 ) Markus Rieder in:Münchner Komm.zum GmbHG, Bd.1,3.Aufl. 2018 §5a, S.685, Rn.42. ( 7 ) Rieder, a.a.O. (Fn.6), S.685, Rn.42. ( 8 )  5 a 条 3 項 2 文 1 号は、同 1 文によって貸借対照表上の年次超過額の 4 分の 1 が法定準備金と して積み立てられなければならないとされているが、この準備金の組み換えがなされる場合とし て掲げられている三つの場合( 1 ~ 3 号)のうち「有限会社法57c 条を目的とする」場合である。 すなわち、会社資産による資本増加を目的とする場合は準備金を資本に転換することができる。 ( 9 ) この点について、丸山・前掲書(注 2 )12頁。

(10) Beschluss des BGH vom 19.04.2011 –II ZB 25/10; FS: BGHZ 189, 254-261;NJW 2011, 1881. (11) Rieder, a.a.O. (Fn.6), S.685, Rn.42.

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有限会社法 5 a 条 2 項 2 文は適用されないとする立場をとることを明らかにし たものである(13) 。  このように有限責任事業会社のための現物出資禁止規制が前記の簡易化の目 的に向けられたものであることを強調すれば、通常の有限会社への移行段階は 別として、設定段階では債権者保護の目的が直接的に問題とはならないという 見解に対して、別の観点から批判的に論じている見解がある。本稿では、 Klein の見解(14) を紹介したい。   す な わ ち、Klein は、 最 低 基 本 資 本 に 到 達 す る た め の 現 物 増 資 (Sachkapitalerhöhung)を認めることは、債権者の観点からも利益とされること であり、このような現物増資は有限会社法30条(15) の早期の資本拘束に影響を及 ぼすことになる、さらに金銭出資と比べて忘れてならないことは、金銭出資も 現 物 に 転 換 さ れ る こ と で あ る、 す な わ ち、 流 動 性(金 銭 債 務) の 保 護 (Liquiditätsschutz)の観念が展開されるのはほんの僅かな範囲にしか過ぎない と指摘している(16) 。従って、Klein によれば、立法者のように簡易化の目的だ けを強調して、金銭出資と現物出資とを厳格に峻別した規制を設けるという姿 勢は絶対化されてはならないことになる。 3  半額払込み規制  有限会社法 7 条 2 項は、通常の有限会社の設定(Errichtung)に関する手続 きのうち、登記申請と払込み(出資の履行)に関して次のように規定してい (13) 丸山・前掲書(注 2 )59頁、枠外番号⑬。

(14) Dennis Klein, Wenn die Unternehmergesellschaft (haftungsbeschränkt) erwachsen will ..., NZG 2011, 377. (15) 有限会社法30条は、同条 1 項について、2008年改正法(注 1 )により、同項 1 文(旧法 1 項) によって禁止されている「基本資本の維持に必要な会社財産の社員への支払」の適用除外として 株式法291条の支配契約または利益供与契約が存在する場合になされた給付等が前記有限会社法 30条 1 項 1 ・ 2 文で掲げられた点で、旧法とは異なるものの、同条 2 項 2 文の、追出資の払戻し の開始期限(払戻し決議の公示後 3 カ月は払い戻しができないこと)については、規制内容は、 旧法と異なるところはない。 (16) Klein, a.a.O. (Fn.14), S.379.

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る。すなわち、各持分について、現物出資の取決めがなされていない限り、そ の券面額(Nennbtrag)の 4 分の 1 が払込まれたときに初めて登記申請をする ことができる(同項 1 文)、現物出資が給付されるべき持分の券面総額と払込 まれた金銭出資との総額とを合わせて、基本資本について少なくとも 5 条 1 項 の最低資本金額(25000ユーロ)の半額に達しているように払込まれていなけ ればならない(同項 2 文)。従って、例えば、25000ユーロで通常の有限会社を 設定するためには、 1 万2500ユーロを払込まなければならない。  このように払い込まれた金銭出資の額に現物出資として給付されるべき持分 の額を加えた総額が、基本出資額の半額(前記の例では12500ユーロ)に達す るように払い込まれていなければならないとの規制(以下「半額払込み規制」 とする。)が通常の有限会社に課せられている。  これに対して有限責任事業会社についてそのような規制は、条文上、課せら れていない。  半額払込み規制が有限責任事業会社に課せられない理由として立法者が述べ ていたことは、有限責任事業会社においては、有限会社一般の場合と異なり、 基本資本の全額が払込まれて初めて登記申請がなされるべきものとされ(有限 会社法 5 a 条 1 項)、発起人は自由に基本資本を選定し、決定することができ るので、(通常の有限会社に認められている)半額の払込みは必要とはされな いということである(17) 。  前記連邦最高裁2011年 4 月19日決定でも示唆されているように、有限会社法 56a 条が、資本増加について準用しているのは、有限会社法 7 条 2 項 1 文だけ であり、半額払込み規制に関する同項 2 文は準用されていない。同項 1 文のみ の準用を前提とすれば、資本増加の登記申請のために必要なことは各持分につ いて 4 分の 1 の払込みがなされるべきことであり、半額の払込みは必要とされ ない。従って、例えば、 1 ユーロで設立されていた有限責任事業会社が25000 ユーロに資本増加をする場合に必要とされる払込み金額は、6249ユーロ75セン ト(セント換算を切り上げると、6250ユーロ)となる(18) 。  このことから、前記の例で結果的に基本資本金額25000ユーロの通常の有限

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会社が登記されるための払込み金額は、最初から通常の有限会社を設定する場 合には 1 万2500ユーロとなるが、 1 ユーロの有限責任事業会社から出発して、 25000ユーロの通常の有限会社に達する資本増加を行う場合には、(当初の 1 ユーロは別として)6249ユーロ75セント(セント勘算を切り上げ、当初の 1 ユーロを足せば、6251ユーロ)でよいことになる(19) 。  このように通常の有限会社よりも有限責任事業会社の方が、払込み金額の点 でより優位な立場に立つという結果が生じる。この点をどのように評価するか について、以下の学説の対立が見受けられる。 ( 1 )優位性肯定説=有限会社法 7 条 2 項 2 文類推適用否定説  まず、有限会社法56a 条が同法 7 条 2 項 2 文を準用していないことを特に問 題としないか、もしくは、問題があるとしても、その状況を直ちに否定しよう としない見解がある。

(17) Begründung(Reg-Begr., MoMiG)),BT-Drs.16/6140. S.32. この点に関して、Joost は、金持ちでな い設立者のために半額払込みを制限する可能性は、基本資本が少なくなればなるほど意味を持た なくなるとしたうえ、例えば、最低基本資本額 1 万ユーロ以上の場合に半額払込みを認める一方 で、 1 万ユーロ未満については半額払い込みを認めないとしたところで、 1 万ユーロの有限会社 では5000ユーロの払込みで済むのに、9500ユーロの会社は全額の払込みをなさなければならない という問題点を指摘したうえ、設立者が設立段階で全額の払込みができるような基本資本額を自 由に設定できるようにすれば、半額払込み規制の意味はなくなると述べていた(Detlev Joost, Unternehmergesellschaft, Unterbilanz und Verlustanzeige, ZIP 48/2007 S.2242,2244.)。これに対して、 Spies は、たいていの場合、法規制は、それが一括化されていなくとも、結局のところ一定の抽 象化・統一化を求めているという点で、立法者の方策は認めざるを得ないとしている。すなわち、 ある法規制が、過度に一括化したものである(大雑把過ぎる)として個々の場合に部分的に不公 正であっても、全体として見れば、規範に適う統一性があると考えられるし、前記の法律上の段 階的な規制は、実際の適用例がそれ程多い訳ではないので、それ自体あまり意味はなく、社員は、 結局、自己の財産状況に適った最低資本を有する有限責任事業会社を設立するのか、それとも通 常の有限会社で、法定の半額払込みをしなければならないかの選択とすればよいとしている (Melanie Spies, Unternehmergesellschaft (haftungsbeschränkt), Dunker & Humblot 2009, S.148. )。 (18) Vgl. Antonio Miras, Die neue Unternehmergesellschaft 2.Aufl., C.H.Beck 2011, S.56, Rn.165 . (19) Vgl, Thomas Wachter, Sacheinlagen bei Unternehmergesellschaft (haftungsbeschränkt), NJW 2011,S.

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 例えば、Wachter は「(前記の)結果は、通常の有限会社の金銭設立の場合 の最低払込金額に関する一般規制とは直ちに一致しないように思われるが、こ のことは有限会社法56a 条の制限的解釈の必然的結果なのである。それどころ か、 2 万5000ユーロおよびそれを超える金銭資本増加に全額払込み原則を適用 せず、半額払込み原則を類推しようとすることは得心が行くものとは思われな い。」としている(20) 。もっとも、Wachter は、右の論述に続けて、「立法者は勿 論、有限会社法56a 条の指示が適合性を有するか否かを審査すべきであった」 としたうえ、有限会社法 5 a 条 5 項を「会社が基本資本を、同法 5 条 1 項の最 低基本金額に達するかそれを超える額に増加した場合には、本条 1 項から 4 項 までは適用されない」と改正すべきことを提案している(21) 。 ( 2 )優位性否定説=有限会社法 7 条 2 項 2 文類推適用肯定説 ① Miras  前記( 1 )に対し、有限会社法 7 条 2 項 2 文を、有限責任事業会社を通常の 有限会社とする資本増加についても(類推)適用すべきであるとする見解があ る。この見解の代表的な論者は Miras である(22) 。Miras によれば、有限責任事 業会社の優位性を示す前記の状況は「立法者によって明らかに望まれていない ものであったし、」前記の結果は「立法者の見落とし(Gesetzgebeberisches Versehen)としてしか評価することができない。有限会社法56条は MoMiG(同 時にまた有限責任事業会社の採用)以前に成立しており、従って、その前提と なっていたのは、既存の有限会社の設立の目的のため法定の最低基本出資の半 分が払い込まれていなければならないという以前の法状況であり、その結果、 MoMiG 以前に有限会社法56a 条において同法 7 条 2 項 2 文への指示は不要で あったのである。それ故、有限責任事業会社の通常の有限会社への転換の目的 (20) Wachter, a.a.O (Fn.19).S.2623. (21) Wachter, a.a.O.

(22) Antonio Miras in:Michalski (Hg.) GmbH-Gesetz Bd.1, 2.Aufl.C.H.Beck 2010,§5a Rn.113;ders.a.a.O. (Fn.18), S.57.

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のための資本増加に際しての有限会社法 7 条 2 項 2 文の類推適用において設け られなければならない更なる前提は、有限責任事業会社の当初の基本資本(有 限会社法 5 a 条 2 項 1 文により全額払い込まれなければならない)および資本 増加の目的のために払い込まれている額は、少なくとも法定の最低資本額の半 額(12500ユーロ)とならなければならないということである。この付加的前 提がなければ、立法者によって下限として定められた最低の払込みは通常の有 限会社の設立のために非常に簡単にかいくぐられてしまう」とされている(23) 。 ② Klose  前記①の Miras の論述中に、同様の場合に有限会社法 7 条 2 項 2 文の類推適 用を認めていた見解として引用されているのが Klose であった(24) 。Klose は右 類推適用を認めなければならない理由として、前記の結果は「有限会社法 7 条 2 項 2 文の潜脱になる。このような潜脱の可能性を回避するために有限会社法 7 条 2 項 2 文の類推適用が提案されなければならない。」と述べている(25) 。  Klose の論述は、前記連邦最高裁2011年 4 月19日決定でも、その理由の主要 な箇所で、引用されている(26) 。しかし、それは有限会社法 7 条 2 項 2 文の類推 適用に関する部分ではない(後記 6 参照)。  これに対して、前出の Rieder は、Klose の見解を引用して、有限会社法 7 条 2 項 2 文の類推適用を肯定しており、その理由として、そうしなければ有限会 社の設立に際しての法律上の最低資本金額限度が下げられてしまうと指摘して いる(27) 。 ③ Klein  Miras の前記①の帰結を引用して、同様の見解を述べているのは Klein であ (23) Miras, a.a.O. (Fn.22).

(24) Andreas Klose, Die Stammkapitalerhöhung bei der Unternehmergesellschaft (haftungsbeschränkt), GmbHR 2009, S.294.

(25) Klose, a.a.O. (Fn.24), S.297.

(26) Beschluss des BGH vom 19.04.2011 – II ZB 25/10; a.a.O. (Fn.10), Rn.18. (27) Rieder a.a.O. (Fn.6), S.684, Rn.40.

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る(28) 。Klein によれば「時間的に見れば、有限会社法56a 条は同法 5 a 条よりも 前に成立していた。有限会社法56a 条の起草に際して立法者が前提としたこと は、同条の適用範囲について、同法 7 条 2 項 2 文によって必要とされている最 低額が既に供給されていることである。何故ならば、それが供給されていなけ れば、当該有限会社は未だ商業登記簿に全く登記されないことになるからであ る。その後の有限会社法56a 条の組み入れに際して、以上の成り行きは誤って 見過ごされている(29) ――立法理由(30) ではこの点について何ら言及されていな い。有限責任事業会社が基本資本の増加によって通常の有限会社になり、そし てこのことが経済的には有限会社の新規設立と同視できるので、利益状況は比 較可能である」(31) とされる。 ④ Schwegmann  Schwegmann(32) は、Miras・Klein に続いて、有限責任事業会社の少なくとも 2 万5000ユーロへの資本増加に対して有限会社法 7 条 2 項 2 文の類推適用を肯定 すべきとしている。すなわち、Schwegmann は「 2 万4999ユーロを超える資本 増加に際して、法理として求められているのは(有限責任事業会社と通常の有 限会社という)両会社形式の同等性である」とし、「有限責任事業会社は有限 会社への入口となる一つの変形物(eine Einstiegsvariante)である。有限責任事 業会社が有限会社に移行するのが困難な条件でしか可能とされないとすれば、 それは右のことに矛盾することになる。従って、全額払込み規制は有限会社の 法定の最低基本資本への資本増加に際しては留め置かれるべきではない。この ことは・ ・ ・債権者保護の観点から求められるものではないが、しかし、こ の状況で有限責任事業会社の有利性は望むべきではない。従って、有限責任事 (28) Klein, a.a.O. (Fn.14), S.377.

(29) Klein , a.a.O. (Fn.14), S.378. 原文では “schlicht ubersehen” となっている。

(30) ここで、Klein は、前注 3 の Begründung (Reg-Begr., MoMiG)),BT-Drs.16/6140, S.31f. を引用し ている。

(31) Klein, a.a.O. (Fn.14), S.378.

(32) Ricarda Schwegmann, Die Gläubigerschutz in der Unternehmergesellschaft (haftungsbeschränkt), S.169.

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業会社も、基本資本の 2 万5000ユーロへの資本増加に際しては少なくとも 1 万 2500ユーロを調達しなければならない。 4 分の 1 原則が適用されるのは、基本 資本が 2 万5000ユーロの場合からである。有限会社法56a 条が前提としている ことも資本増加した会社が既に少なくとも 1 万2500ユーロを保有していること である。何故ならば、右金額は、設立に際して既に有限会社の業務執行者が調 達していなければならないからである。それ故、有限会社法 7 条 2 項 2 文への 指示は必要とはされない。右規定の成立の際も指示は必要ではなかった。有限 責任事業会社について有限会社法 7 条 2 項 2 文は同法56a 条の中で読みとられ るべきである。そうでなければ、同法 5 条 1 項中に立法者によって定められ た、設立に際して少なくとも半額が調達されなければならない 2 万5000ユーロ の最低資本金は有限責任会社という中途段階で潜脱されてしまうことになる。」 としている(33) 。  前記 3 ( 2 )①~④の有限会社法 7 条 2 項 2 文類推適用肯定説は、その論争 の出発点である2008年有限会社法改正法の成立時点で見れば、前記( 1 )・( 2 ) で表題に掲げた通り、有限会社法56a 条が同法 7 条 2 項 2 文を準用していない ことから生ずる有限責任事業会社の優位性を認めるか否かの価値判断に結びつ いていたことは確かである。しかし、その後、既に指摘したように、連邦最高 裁2011年 4 月19日決定によって、有限責任事業会社として設立された会社が、 通常の有限会社に転換すべく、最低資本金額を 2 万5000ユーロかそれを超える 額にする資本増加を行う場合には、有限責任事業会社について適用される現物 出資禁止規制はもはや適用されないことを明らかにしたことから、それ以降、 右決定の帰結を前提として議論が進められている状況に至ったことに留意する 必要がある。 4  ツェレ上級地方裁判所2017年 7 月17日決定  本節では、前記 3 の半額払込み規制との関係で、通常の有限会社に移行する (33) Schwegmann, a.a.O. (Fn.32), S.175.,

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ための払込み金額及び業務執行者の保証金額が問題となった最近の決定とし て、ツェレ上級地方裁判所民事第 9 部2017年 7 月17日決定(34) を以下に紹介した い。  [主 文]  2017年 6 月13日の抗告に基づき2017年 5 月の区裁判所(登記裁判所)の決定 は、破棄され、2017年 1 月の資本増加並びに付属する定款変更に関する登記手 続きは、当部局の法律意見を考慮したうえで継続するために、登記裁判所に差 し戻される。 [理 由] Ⅰ. 1  当該会社は、単一持分のみ2000ユーロの基本資本を有する有限責任事業会 社として2013年に設立された。 2  2017年 2 月の社員総会で、23000ユーロの基本資本の増加を右価格を額面 額(Nominalbetrag)とする新たな持分の形成によって行うことが決議された。 従来の単独社員(同時に業務執行者)は、右持分の引受けを承認した(GA96)。 新たな持分に基づき(当該)出資者(der Inferent)は、資本増加決議に応じ 1 万500ユーロの払込み保証をなした(GA83)。 3  2017年 5 月の決定(GA34f.)並びに、その範囲を理由として関係付けら れる、同年 6 月のより詳細な棄却判決(GA47-58)によって、登記裁判所は、 資本増加の登記およびいわゆる完全有限会社への入口への到達を理由として付 随して決議された商号及び定款の変更を拒絶した。 4  その中心して考慮されていたことは、完全有限会社への変換のために合計 1 万2500ユーロの法定の最低出資が払込まれることに相応する業務執行者の保 証(Versicherung)がなかったことである。新たな持分に基づき 1 万500ユーロ の金額が給付されただけでは保証として充分とは云えない。それどころか、当

(34) OLG Celle, Beschluss vom 17.Juli 2017-9 W 70/17, .GmbHR 2017, 1034;DB 2017, 2409; NZG 2017, 1222.

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該保証は、有限責任事業会社の当初の出資に基づく2000ユーロ(少なくともそ れと同価値)が業務執行者の自由な処分に委ねられているということにまで及 ばなければならない。その限りで、2013年に提出された有限責任事業会社の設 立と関連した保証は拠り所とすることは出来ない。何故ならば、それはあまり にも古いものである(zu alt)からである。同じく、資本増加を原因としてな された 1 万500ユーロの調達に関する業務執行者の保証もあまりにも古いもの である。何故なら、保証は、登記裁判所も同様であるが、その登記を拒絶した 2017年 5 月の決定に対する抗告に伴い改めて提出されなければならなかったか らである。最低限、基本資本の半額は、有限責任会社の完全有限会社への強化 のために登記時点で少なくとも同価値のものが存在するか若しくは、それがも はや存在しなければ、社員により後払いがなされなければならない。(GA55f.) 5  以上の考慮に対し形式および期限に適った抗告が向けられている。 6  とりわけ同抗告が述べていることは、有限責任事業会社から完全有限会社 への資本増加に際して既に2013年に全額供給されていた有限責任事業会社の基 本資本が「なお存すること(Noch-Vorhandensein)」に関する保証を要求する規 定はないと云うことであった。 Ⅱ. 7  即時抗告は成功を収めた。 8  抗告人が登記裁判所に申請していたのは、有限会社法 5 a 条 5 項の意味に おける資本増加であった。それは当初、有限責任事業会社として設立された法 人の基本資本を完全有限会社の基本資本に到達させようとするものである。そ のような資本増加に対しては、それが有限会社法 5 a 条 1 項から 4 項までに含 まれるような有限責任事業会社に対する特則は適用されない(Vgl.BGH II ZB 25/10 Rn.16)。このことから逆に結果として明らかになることは、当該資本増 加のための必要条件(Anforderungen)は、有限会社法56条以下で定められて いると云うことである(Vgl.BGH II ZB 25/10 Rn.20)。 9  2.a) 従って、資本増加の登記を目的とした業務執行者の申請は、まず第一 に、有限会社法57条 2 項の要件を充たさなければならない。有限会社法が求め

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ているのは、出資がもたらされたことに関する保証は「新たな」基本資本に関 してのみであることである。本件で業務執行者は、直ちに支払わなければなら なかった 1 万500ユーロの部分に関して前記の要件を充たす保証を、2017年 2 月27日、すなわち2017年 3 月 8 日の登記申請の数日前に提出しており、これに ついて登記裁判所も疑いを差し挟んではいなかった。 10 b) 増資の決定以前に既に完全有限会社であった有限会社の資本増加につ いては、元々の基本資本が維持されているので、有限会社法は何らの保証も求 めてはいない。それにも拘わらず、本件で登記裁判所は更に新たなその種の保 証を求めている。しかしながらこのような要求は限度を超したものである。当 部局は右要求を自己のものとはしない。それによって登記裁判所は、職務上、 有限責任事業会社の場合、資本増加の決定時点で万が一でも支払不能の原因が 提示されていないかを審査することになる(すなわち、これまでの基本資本が 減少されているかあるいは費消されているか)。しかしながらそのような審査 が示すのは、正当な理由なく有限責任事業会社から完全有限会社への移行を困 難にする措置であり、連邦最高裁の判決の基準と矛盾するものである。 11 c) 登記裁判所が、従前の基本資本を資本増加の時点でもなお存在すべき ものとしている保険の必要性のために、有限責任事業会社の完全有限会社への 建て増しは、有限会社法 7 条 2 文による基本資本の半分の調達の原則が潜脱さ れるように進捗されるべきではないと述べている限りで、登記裁判所が誤解し ていることは、本事件では半分の調達の原則の潜脱は何ら認識できなかったと 云うことである。有限責任事業会社の設立と資本増加の時間的に接近した関連 性は何ら存していない。それどころか、当該有限責任事業会社は2013年以降自 身で経営を行ってきた。当初の資本の全額の調達はその時点で保証がなされて いた。支払不能に陥ったことについては何ら明らかにされていない。それ以外 の半分の調達の原則に関する潜脱の抽象的な危険も、認識可能なものとして提 示されていない。 12 今や、更なる 1 万500ユーロの調達によって有限会社法 7 条 2 項の半分の 調達の原則は金額上充足されている。調達された基本資本部分の付加はなされ

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る必要はないので、登記裁判所が拠り所とすべきところは何もなく、考えられ る回避シナリオも示されていない。その端緒として有限会社法57条 2 項が相応 するといえる、有限責任事業会社の資本増加に際して増加額に関する一部支払 いに制限する規制は、有限責任事業会社を採用した2008年有限会社法改正法の 立法者が定めたものではない。基本法 2 条 1 項を考慮すれば、そのような規制 は事後的な制限として付加さるべきではない。 13  3 .差し出された保証が現実性を欠いていると登記裁判所が考えた限りに おいて、当部局はそれに同意することは出来ない。 14 有限責任事業会社の当初の基本資本の調達に関する保証は、以上の説明に よれば、問題にならない。 15 資本増加額に関する保証は、資本増加の決定の申請に際しては、現実的で あった。(既に詳しく考慮したように)登記裁判所の求めによって申請後に生 じた申請手続きの遅延は申請者を支持するものではなかった。 5  Cramer によるツェレ上級地方裁判所決定の評価  本節では、前記 4 のツェレ上級地方裁判所民事第 9 部2017年 7 月17日決定に 対して Cramer が行った論評(35) を紹介し、適宜コメントを加えて行きたい。  Cramer がまず触れていることは、理由のⅡ、枠外番号 8 の部分で本決定が、 連邦最高裁2011年 4 月19日決定を引用して(36) 、有限会社法 5 a 条 2 項 1 文の全 額払込み規制は基本資本を 2 万5000ユーロに増加する資本増加には、同法 5 条 5 項を理由として、もはや適用されないとしたことである。

(35) Carsten Cramer, EWiR 2017, S.589.

(36) 当該引用部分(BGH II ZB 25/10 Rn.16)は、連邦最高裁が「(原審)の見解とは異なり、有限 会社法 5 a 条 1 項から 4 項の有限責任事業会社に妥当する特別規定は、少なくとも25000ユーロ の基本資本が金銭で払い込まれ、商業登記簿に登記されたときに初めて適用されなくなると言う ことは、上記の規定(有限会社法 5 a 条 5 項)の法文からは引き出せない。それどころか「(erreicht)」 という言語表現は、特別規定は最低資本の限度に達する資本増加に既に適用すべきではないとの 解釈も許容し得る」として多数の文献を引用して判示している部分(丸山・前掲書(注 2 )60頁 枠外番号⑯)である。

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 この点について、Cramer は、ツェレ上級地方裁判所が対象としたのは、金 銭による資本増加の事案であるのに対し、前記連邦最高裁決定は現物出資によ る資本増加を対象としていたが(37) 、前掲連邦最高裁による考慮は、現金による 資本増加の場合にも及ぶとしている(38)  Cramer は、さらに「基本資本の 2 万5000ユーロへの増加に際して基本資本 が完全に調達されるべきものとされるのであれば、そのことは、有限会社の新 規設立に比べて、有限責任事業会社の損失を正当化するものとはならない」と して、このことは、今日の支配説(39) に妥当するとしている。  続いて、Cramer は、半額支払い規制に関して、ツェレ上級地方裁判所が前 提としていることは、社員が有限責任事業会社の基本資本を 2 万5000ユーロに 増加する場合、右資本増加の過程で新たな持分について払込まれなければなら ないのは、現在の基本資本に既に払い込まれていることを考慮し、総計して、 最低資本金の半額に見合う額となる(有限会社法 7 条 2 項 2 文参照)という理 解であるとしている。これに関して、本稿でも述べたように、有限会社法56a 条が指示しているのは、有限会社法 7 条 2 項 1 文だけであって、同法 7 条 2 項 2 文ではないので、法文に厳格に方向づけられた解釈をすれば、最低資本金の 半額をカヴァーする額が払込まれていない場合には、その場合でも各持分の 4 分の 1 の払込みで十分としなければならないが、Cramer は、このことで有限 会社の設立と比べ有限責任事業会社をより良い地位に置くことはできず、全額 (37) 連邦最高裁決定の事案では、設立された有限責任事業会社の単独社員が有していた他社の持分 を出資の目的としていた(丸山・前掲書(注 2 )56頁、枠外番号①参照)。 (38) Cramer, a.a.O. (Fn.35), S590..

(39) Cramer が支配説の代表的見解として掲げているものとして、Kleindiek, in: Lutter/Hommelhoff, 19.Auf., 2016, §5a Rz.25. Kleindiek. は「それが実施されることで会社の基本資本が 2 万5000ユー ロに達するか若しくはそれを超える資本増加に対してはもはや 5 a 条 2 項 2 文は適用されない。 ここでも考慮されることは、有限責任事業会社から「完全有限会社」への移行の場合には社員は 害されるべきではないことである」として、本稿で「優位性否定説=有限会社法 7 条 2 項 2 文類 推適用肯定説」の一つとして紹介した Klose の見解(前記 2 ( 2 )②)を引用する2011年 4 月19 日の連邦最高裁決定の枠外番号18(丸山・前掲書(注 2 )61頁)以下を指示している(Kleindiek, a.a.O.Rn24.)。

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支払いの原則の適用による差別化に関する対応策と同様、有限会社法 7 条 2 項 2 文を類推適用すべきであるとしている(40) 。この限りで、Cramer は、前記 3 ( 2 )の「優位性否定説=有限会社法 7 条 2 項 2 文類推適用肯定説」の立場に 立っているものと言える。  最後に、Cramer は、ツェレ上級地方裁判所決定で問題となった業務執行者 による保証について述べている。  まず、保証に関する規定を見ると、有限会社法 8 条 2 項は、業務執行者によ る保証を要請している。すなわち、申請においては、有限会社法 7 条 2 ・ 3 項 で記された持分に基づく給付がなされており、当該給付の目的物が最終的に取 締役の自由な処分の下にあることが保証されなければならない(有限会社法 8 条 2 項 1 文)。この規定は、通常の有限会社の設定に関するものである。  これと並んで、同趣旨の規定が、通常の有限会社の資本増加に関し定められ ている。すなわち、有限会社法57条 2 項 1 文によれば、申請においては、同法 7 条 2 項 1 文および 3 項による新たな基本資本に基づく出資がなされており、 当該給付の目的物が最終的に業務執行者の自由な処分の下にあることが保証さ れなければならない。  これに対して、有限責任事業会社については、このような保証に関する明文 の規定はない。しかし、学説上は、有限責任事業社の設定の登記に際して、取 締役は、有限会社法 8 条に掲げられている保証をしなければならないとされて いる(41) 。その理由として掲げられていることは、有限会社法 5 a 条 2 項の全額 払込みの要請の趣旨(42) である。  以上のことを前提に、ツェレ上級地方裁判所決定との関係で、Cramer は、 有限責任事業会社の業務執行者は、有限会社法57条 2 項 1 文、 7 条 2 項 1 文に より資本増加の申請において、各持分について券面額の 4 分の 1 が払込まれて (40) Cramer, a.a.O (Fn.35), S.590.

(41) Füller in: Ensthaler/Füller/Schmidt,a.a.O. (Fn.3), S.104(Rdn.8), Lutter in: Lutter/Hommelhoff, a.a.O. (Fn.14),S.237 (Rdn.8), .

(18)

いることを保証(versichern)しなければならないとしつつも、現存の基本資 本が価額通り(wertmäßig)にカヴァーされていることの保証は、法規から推 論されるべきではなく、当初の基本資本が未だ保証されていないままで置かれ ているか否かは、大したことではない(irrevant)としている(43)。それ故、有 限責任事業会社がそのような要求を放棄したところで有限会社よりも何ら良く なる訳ではないので、結果として有限責任事業会社の業務執行者がしなければ ならないのは、時間的にそれぞれ異なった時点での最低基本資本の半額の払込 みだけでよいとして、ツェレ上級地方裁判所決定の見解を基本的に支持してい る。  一方、全額払込まれた現存の基本資本と新たな基本資本の 4 分の 1 の合計額 が最低基本資本の半額に達していない場合、各持分の券面額の 4 分の 1 の保証 で済ませることはないことは勿論であるとして、Cramer は、以前の払込み金 額を考慮して、最低資本金額の半額をカヴァーする金額が新たな持分について 払込まれなければならないことからして、業務執行者はこの場合に新たな持分 について必要とされるより高額の払込みを登記に当たって保証しなければなら ないとしている(44) 。

(43) Cramer, a.a.O (Fn.35), S.590. ここで、Cramer が引用しているのは、Fastrich, in: Baumbach/Hueck, GmbHG, 21. Aufl., C.H.Beck 2017, §5a Rz.32, である。Fastrich によれば、重要なことは、有限会 社法 5 a 条によって制限されている有限会社の変形(Variante)から制限のない有限会社となるこ とであって、必要なことは、有効な資本増加もしくは法定準備金の資本組み入れによって基本資 本が少なくとも同法 5 条 1 項の額に達するように増加されることであり、元々の基本資本が損な われないままで置かれているかは問題とならないとされ、Miras, a.a.O. (Fn.18), S.58, Fn.168, が引 用されている。相応箇所で Miras は、前記のような移転のために「有限責任事業会社の設立のた めに払込まれた元々の基本資本がなお存在しているかまたは相応に補填されているかは必要なこ とではない」としており、脚注(ders., a.a.O, Fn.323)で、Lüdemann (HFR 2008, S.26) を参照し つつ、元々の資本の欠損は、同法30条(資本維持)・31条(払戻し禁止)による保護がなされて いる限りで、存しないとしている。

(19)

6  まとめに代えて  これまでの考察から明らかなように、連邦最高裁2011年 4 月19日決定によっ て、有限責任事業会社として設立された会社が、通常の有限会社に移行するた めに、その最低資本金額を 2 万5000ユーロかそれを超える額にする資本増加を 行う場合、有限責任事業会社について適用される現物出資禁止規制は適用され ないことが明らかにされたことによって、前記連邦最高裁決定以前から学説に おいて主張されていた、全額払込み規制および現物出資規制に係る2008年有限 会社法改正法の立法者意思が、少なくとも有限責任事業会社の設定の範囲内で は、債権者保護よりも設立手続きの簡易化の目的にあったこと、逆に、有限責 任事業会社が通常の有限会社に移行する結果を生ずる資本増加の段階では、も はや簡易化の目的を考慮する必要がなくなり、当該資本増加については簡易化 の目的に結びついた現物出資禁止規制は適用されないと考察する方向性が打ち 出され、それが徐々に定着しつつあると云えよう。このように前記連邦最高裁 決定で述べられていた(45) 方向性が定着しつつあることは、本稿で取り扱った ツェレ上級地方裁判所決定が、理由Ⅱ枠外番号 8 の部分で、前記連邦最高裁決 定を引用し、それに基づく結論を導いていること、すなわち、理由Ⅱ枠外番号 9 で有限会社法57条 2 項の適用を認めていることからも裏付けることができ る。  しかし、同時に注意しなければならないことは、前記連邦最高裁決定は、本 稿で論じた払込みに関する規制のうち、専ら現物出資禁止規制を軸足としつ つ、立法趣旨との関係に言及し、前記の方向性を導いていることである。逆に いえば、前記連邦最高裁決定は、全額出資規制および半額出資規制と前記の立 法趣旨との関係を必ずしも明らかにしていないとも云えよう。  もっとも、本稿で指摘したように、前記連邦最高裁決定は、前記 3 ( 2 )② で優位性否定説=有限会社法 7 条 2 項 2 文類推適用肯定説をとる Klose の見 (45) 丸山・前掲書(注 2 )62頁、枠外番号21

(20)

解を引用しているが、これは現物出資禁止規制を通常の有限会社への移行に適 用すべきでないことに関する Klose の論述を引用しているに過ぎず、有限会社 法 7 条 2 項 2 文類推適用を肯定するための理由付けとして引用している訳では ない。  連邦最高裁決定による前記の方向性を前提とすると、有限責任事業会社の設 立に際して適用される規制と通常の有限会社への移行に際して適用される規制 との不一致が生じ、関与者の利益の均等化が図られない場合が生ずることか ら、本稿で示したような優位性に関する論議が必然的に生ずることになる。そ の点で、学説上、前記連邦最高裁決定以降も引き続き、利益の均等化と云う視 点から、有限会社法 7 条 2 項 2 文の類推胃適用を認めるべきであるか否か、さ らには、ツェレ上級地方裁判所決定で取り扱われた同法 8 条 2 項の保証の時 的・量的適用範囲はどこまで及ぶかというような議論はなお継続せざるを得な い。この点は、なお判例・学説の議論の更なる展開に委ねなければならない。 ―まるやま しゅうへい・中央大学法科大学院教授―

参照

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