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改良新案の夢 利用統計を見る

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(1)

改良新案の夢

著者名(日)

井上 円了

雑誌名

井上円了選集

19

ページ

479-545

発行年

2000-03-20

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00004714/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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(3)

夢・iぴ癌頴iぷ改 −樫羅簸良新案、の夢  馨懲、茶灘蔑庵蚕式醤藻選灘室竈・頴灘欝織 ぷ第、ご笹用書翰紙・

−監麟蹴難難難購聯

  

@ 一ぼξ壱ξ凛暮憲⋮㌢璽Wゾ

   三.暫肇貢ガ灘ゑ鷲孜爆紙蟻灘ぼダ翫嬢漬褒r         ムエソ      に用事を商め、之を灘するに騰発っーの磯凝 類⊇ ■塑湿田・ 、        、 ・  ご、 = (巻頭) 5、その他  『妖怪叢書』第2編として発行。 6.発行所  哲学館 1.サイズ(タテ×ヨコ) 222×152mm 2.ページ 総数:107  緒言・目録:8  本文:99 3.刊行年月口  底本:初版 明治37年1月19日 4.句読点  あり

細灘

蝸リ継灘○壕灘㌣麟

驚藁灘鰹轟錨羅

  

@撫繋轍麟纒隷融

     、r:−﹁究、Vvー 、ー

..嚢蘇灘蕪騨難=無

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 本書に記載せるもののほかに、なお種々工夫したりしことあれども、後日さらにこれを集めて、別に発行せん とする予定なり。かつまた、工夫の錯雑せるものは、その道専門の士にはかり、実地につきて試みざるを得ざれ ば、世に発表し難し。ゆえにかくのごときは、ことさらに、本書中にこれを省くこととなせり。  本書中に述ぶるところの項目は、全く余が専門たる哲学にはなんらの関係なきことのみなるが、こは余の意見 の存するところにして、哲学者はひとり宇宙の空理のみを講ぜず、いやしくも世に生存せる以上は、万般のこと につき、実用、実益を計らざるべからず。けだし、余の平素の持論は、哲学をして応用海に新航路を開かしめよ というにありて、その応用は必ずしも教育、宗教のごとき、人の精神界に関することに限るにあらず。社会、日 用のことに至るまで、その応用の効果を示さんとするにあれば、本書中に述ぶるもののごときは、もとより新案 の名称を付するまでのものにあらずといえども、他日、この方針をもって、大いに工夫を凝らさんとするつもり なり。  本書は余の妖怪学には全然関係なきものなるに、これを﹃妖怪叢書﹄の一つに加えたるは、なにびとも必ず大 いに怪しむところならん。しかるに、これを﹃妖怪叢書﹄に加えたる理由は、第一に、先年妖怪研究の結果、世 に心理療法と心理経済との二種あることを思い付き、心理経済実行の一端を示すために本書を発行するに至りた れば、妖怪学の付録の一種なるによる。第二に、余のごとき日用上の器械等のことに盲目なるものが、工夫新案 などを試むるは、世間より必ず一種の妖怪なりの批評を招くならんと予期せるによる。第三に、その新案は余が 一場の夢語に等しきものにして、実際上応用すべからざるもの多かるべく、また、たとい応用しても、なんらの 便益なきもの多かるべしと予想し、本書に題するに﹃改良新案の夢﹄というをもってせるによるなり。 480

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第一編 第二編 第三編 第四編 第五編 哲学うらない 改良新案の夢 天狗論 真怪談 心理療法 以下これを略す。 明治三十六年十二月 近 近 刊 刊 A     A       既 既 既 刊 刊 刊 著 者 誌 481

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改良新案の夢

482       第一 徳用書翰紙      しよかんし      のり  いずれの書翰紙も、封筒すなわち状袋がなくては発送することができぬ。また、状袋がありても、糊がなくて は封ずることができぬ。しかるに、余はこの二つの不便を避けんと思い、一枚の紙あれば、状袋も糊も用いずし        て、発送することのできるように工夫せり。旅行先などにては、すこぶる便        利ならんと思うなり。       ︵図解︶ 上図のごとき一枚の紙ありとするに、その表に用事をしたため、        これを封ずるには、まずーの所より右へ折り込み、2、3、4、5、6と次        第次第に折り込みて、7の所に至らばこれを内側に折り入れ、8の所は外へ        出だし、その上に三銭郵券一枚を張り付くれば、決して開封することはでき       とうかん        ぬ。よって、状袋も糊も用いずに投函して差し支えなし。       ︵筆者曰く︶ 図解のみにては解し難き恐れあれば、望みの者は左の宛名に        て郵券三銭寄送あれば、その見本を発送すべし。       東京小石川原町哲学館構内  妖怪研究会 3 1 2 5 6

787

4

(8)
(9)

土 金 木 水 火 月 日 七曜 二二 P・十十 ェ一四七 二二 ¥1’十 オ 三六 二十十・卜 Z九二五 一’ ¥十1・ ワ八一・四 三∴ ¥・{十十一四七 三 三二¥十1・ O六九二 .二二 ¥十十 纉 五八一・

一1’十十 ワ八一四 一・’ ¥十十 l七 三 二十十 O六九二 二二 ¥十一十 纉 五八一 .二二. ¥十十 ェ一一四七 二二 ¥卜十 オ 三六 二1一十十六九二五 二月 二1・十十 ワ八一1几1 三二 ¥一日’十一四ヒ 三 三二P一十十 O六九二 二二 o一卜十 縺謖ワ八・ 二二 ¥十’十 ェ一四七 二二. ¥十十 オ 三六 二十十1’ Z九二五 三月 二・二 D卜十十 纉 五八一 二二 E日’十 ェ一四七 二二 ¥十十 オ 三六 二1’十・1’ Z九二五 二十十十 ワ八一四 二十十十 l七 三 三二 ¥十十 O六九二 四月 二二. P・十十 オ 三六 二. m川一 Z九二五 二. ¥十1’ ワ八一四 三二 P十十]一 c四七 三 三ニー日・十 @三六九二 二二 ¥十十 纉 五八一 二二 ¥十1一 ェ一四七 五月 二十十十 l七 三 三二 ¥十卜 六九二 二二. ¥十十 纉 五八一 二二 ¥十十 ェ一四七 二二 m十十 オ 三六 二十十十六九二五 二十十十 ワ八一一四 六月 二二 ¥十十 纉 五八一 二二 D日一十 ェ一四七 二二 ¥十}・ オ 三六 二十十十 Z九二五 二十十十 ワ八一四 三二 ¥十・1・十一四七 三 三二m十十 O六九二 七月 二十十十 Z九二五 二. 冝f十 ワ八一四 三二 ¥十{’十一四七 三 三二・1’十十三六九二 二二 ¥十十 纉 五八一・ 二ニ [ト十・十 ェ一一四七 二二 ¥十十 オ 三六 八月 三二 ¥十十三六九二 二二¥十{一 纉 五八一一 二二 ¥{・十 ェ一四七 二二. ¥十}・ オ 三六 二}’十十 Z九二五 二十十十 ワ八一一四 二十十}’ l七 二 九月 二二 ¥十十 ェ一四七 二二 ¥卜十 オ 三六 二十十十 Z九二五 二1十十 ワ八一四 三二 ¥十十十一四七 三 三二 ¥十十三六九二 二二¥十十 纉 五八一 十月 二十十十 ワ八一四 二十卜十 l七 三 三二、 ¥十十三六九二 二二¥十十 纉 五八一 二二 ¥十十 ェ一四七 二二 ¥十十 オ 三六 二十十十 Z九二五 ±月 三二 ¥1十三六九二 二二¥十十 纉 五八一一 二二 ¥十十 ェ一’四七 二二 ¥十十 オ 三六 、二 ¥十十 Z九二五 二十十十 ワ八一四 三二 ¥十十十一四七 三 十二.月 484

(10)

日 一 日、 八 日、 十五 日、 二十二日、 二十九日 月 二 日、 九 日、 十六 日、 二十三日、 三十 日 火 三 日、 十 日、 十七 日、 二十四日、 三十一日 水 四 日、 十一日、 十八 日、 二十五日 木 五 日、 十二日、 十九 日、 二十六日 金 六 日、 十三日、 二十 日、 二十七日 土 七 日、 十四日、 二十一日、 二十八日       第三 電灯の縄索留め       じようさく 室内用の電灯は、必ず天井より縄索の垂るるありて、        85        4 日中はこれを巻き上ぐる必要あり。その目的にて世間

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多く使用するものには、縄索の上下に小球を貫きおき、この二個を引きかけて電灯を引き上ぐる方法なれば、縄       86 索が横に垂れ出して、はなはだ見にくきように覚ゆるなり。しかるに余の工夫にては、左図のごとき円形の車輪 4 のごときものを用い、イ点よりロ点まで小孔を貫き、その中に縄索を通しおくべし。もし、電灯を巻き上げんと するときは、あらかじめその器械の周囲に凹形の溝をほりおき、糸巻きのごとくに縄索を巻きつくるように造り        かいさく おき、また、ロよりハまでの間は内部を開馨して、中貫せる縄索のニロよりニハに自在に動き得るように造りお くべし。しかるときは、縄索を適意に、ハイホロの周囲に幾回となく巻きつくることを得るなり。もし、その巻       かぎ きつけたる縄索を留めんとするときには、ロ点に小鉤を付けて、これに引きかけおくべし。この器械の直径、一 イ ホ 口

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       常に大きくする工夫なり。その大きさ、およそ幅二       88        間、長さ二間半にするをよしとす。かくするとき 4        は、ぜひとも室外の地面を利用せざるを得ずと思       い、庭前に上図のごとき盤面を造ることを工夫せ       れんが        り。その盤面の界線はすべて煉瓦を用い、その他は        タタキ︹三和土︺にすべし。将棋の駒は、盤の大きさ       に相応するものを陶器にて造りおくべし。その厚さ        はなるべく高くし、両側に手をかけ得るように造        り、一度ごとに両手をもってこれを持ち上げ、思う        場所に運ぶようにすべし。盤面の大きさを幅二間、        長さ二間半とすれば、その一区画は幅一尺三寸余、 長さ一尺六寸余ずつになり、駒の大きさはその大なる方、幅一尺、長さ一尺二寸くらいより、その小なる方、幅 五寸、長さ六寸くらいとなるべし。しかして、駒を動かすときには、界線の煉瓦の上を歩して思う場所に運ぶべ し。ひとたび運びおわれば、盤面の前後両側に備えたる椅子に腰かけて、つぎの手を案出すべし。かくするとき には、知らず識らず身体の運動を助くることを得るなり。ゆえに余は、これを運動将棋と名づけんとす。  この将棋盤は、世間に広むる第一の手段として、浅草公園のごとき場所に造りて試みてはいかん。世間にて新 奇を好む人は、必ずここに入りて将棋を演ずるに至るべし。あるいはまた、将棋の妙手を集めて、勝敗を戦わし

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さじき

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い去る装置なり。すなわち、第二図のごとくイ、ロの両黒板を掛け、これをして自在に上下し得るように上方に 車を設け、イを下方に引き下ぐるときは、ロは自然にイの背面より上行し、イとロとその位置を転換するように なるべし。もし、さらにロをして下行せしめんと欲せば、車輪を回旋すると同時に、ロは前方に進むべし。この        ときロを下へ引けば、イはロの背面よ        り上行すべし。かくのごとく、両板互        いに交換して上下せしむるなり。しか        して、その都度この両板の背面にブラ        シを付けおけば、必ず互いにぬぐい去        ることを得、いちいち人の手をかりて        白墨の跡を払うに及ばず。かくするに       つるべ        は、上方の車は井戸釣瓶に用うるもの        と同様の仕掛けにし、自在に前後に回        旋し得るように造らざるべからず。か        つ、この車を動かすには別に装置を要        するも、その工夫のごときは容易なる        ことなり。ただ、ここには要点のみを        掲ぐるものと知るべし。 イ 図一第 490

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第二図

O  ︸ 一 「 ﹁    一 ’ 一    一 1 一 .    − . .    ﹁ . 「 . 「 一 .    . . . . . . . . .    . . . . . . .    一 . . .    . .   ︰ .イ・ ロ, … 一 一 ︵    一 . ’ ︵    . 水 . 一    ︵ ( 一 ’ 一    一 一 一 .    . ひ    一 . .    . . 、         ’ 一 .    . O  ︸       第七    そろばん 従来の算盤は加算、 算盤の改良 減算に便なるも、 乗算、除算に不便なり。その不便なる点は、第一に、          佃 位取りの間違いや

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上右位

縦界

ヒ左位

上背 界  背 横  下 ・ヒ背 界  背 横  下 下 右 位 縦界

下左位

すきこと、第二に、数の大なるものは非常の混雑をきた         はつさん  けんいち すこと、第三に、八算、見一の場合には、九九のほかに 種々の呼法を記憶せざるを得ざること等なり。余はこの 不便を避けんと欲して、上図のごとき算盤を工夫せり。 すなわち、従来の算盤を上下に重ね、左右上下四段に区       けた 画する方法なり。かくして上下左右の桁の位取りを同一 にするときは、洋算の乗算、除算の方法を、ただちに和 算の上に当てはむることを得るなり。  左に乗算と除算に関する一例を挙げて、説明を付記す べし。︵その詳細は、普及社発行の拙著﹃珠算改良案﹄ につきて見るべし︶    例えば、ここに甲乙二数ありて、甲数に乙数を乗   ぜんとするに、従来の算法にては、甲数を右位に置   き、乙数を左位に置き、左右相みて乗ずるなり。し   かるに、余の工夫せる改良算にては、甲数を上右位   に置き、乙数を下左位に置きて乗ずるなり。かくの   ごとき両数を配置して、その乗じたる数を下右位に 492

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第一図

  ・       ●       ● ¥万千百 {一一一   ・      ●       ●

¥万 千百十一

  ・       ● P’万 千百 十一 ・

卜万〒百

卜一一 ・ ・ 置くときは、数位の混ずることなく、筆算のとおり に乗ずることを得るなり。例えば、三千五百二十四 に七百二十六を乗ずると仮定せよ。しかるときは、 七百二十六を下左位に置き、三千五百二十四を上右 位に置くこと、第一図のごとし。  かくのごとく甲乙両数を配置して、その乗じたる ものは下右位に配列すべし。その乗法は筆算と同一 なるも、余の経験するところによるに、少数︵乙 数︶の方をもって多数︵甲数︶の方に乗ずるより、 多数の方をもって少数の方に乗ずる方、便利なるが ごとし。ゆえに、改良算においては、上右位に配置 せる甲数の一桁ずつ、下左位に配置せる乙数の方に 乗ずることに定む。かくして、一桁を乗じ終われ ば、その数を払い去り、全体乗じ終われば、上右位 の甲数はすべて払い去らるるに至るべし。すなわ ち、その数を払い去るは、乗じ終われるしるしな        螂 り。かくして、乗じ去りたる後には、その数︵甲

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数︶を乗ぜんとするも、盤中に見ることあたわざる不都合あれば、別に参考として、あらかじめ上左位に甲       刷 数を控え置くべし。  前図の算式にては、甲数は四桁、乙数は三桁なれば、第一回には、甲数の単位の桁を乙数の各桁に乗じ て、その結果を下右位に置き、これと同時に単位の甲数を払い去るべし。すなわち第二図のごとし。第二回 には、甲数の十位の桁を乙数に乗じて、これを下右位に前の数と合して置き、これと同時に十位の甲数を払 い去るべし。すなわち第三図のごとし。第三回には、甲数の百位の桁を乙数に乗じて、これを下右位にある 前数と合して配置し、これと同時に百位の甲数を払い去るべし。すなわち第四図のごとし。第四回には、甲 数の千位の桁を乙数に乗じて、これを下右位に置き、かつ甲数を払い去ること前のごとくすべし。すなわち 第五図のごとし。そのとき下右位にある数を見て、甲乙相乗の結果を知る。よろしく左の図︹次頁︺に照らし て乗法を了解すべし。   ︵注意︶ 第五図の上右位に一数の残るを見ざるは、全体乗じ終われるしるしなり。  すなわちその結果は、第五図の下右位に見るがごとく、二百五十五万八千四百二十四となる。︵図中、下 右位の桁の数不足につき、下左位の一桁を借りて二百万の数を記せり︶        この一例をもって他を準知すべし。かくのごとき方法によれば、従来の珠算に 24 Q6 35 V   21144   7048 24668 2558424 おける不便は、すべて除き去るを得べし。その上に、これを筆算に比して一層の 便利なるは、各数を乗じたる後、さらに加算によりて合計する手数を省くことを 得る]事なり。今、その比較を示さんために、上に筆算の式を挙ぐべし。

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第 二 図

第 三 図

(21)

第四図

第五図

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 かくのごとく、筆算にては各数相乗じたるだけにては答案を得ず、さらにその乗数を合計する必要あり。 これに反して、改良算にては乗じ終わればただちに答案を得るの便利あり。  前述のごとく、改良法の乗算における規則は、甲乙両数にありてその数量に相違あれば、数の多き方を甲 数と名づけて上右位に置き、これと同時に参考用として、同一の甲数を上左位にも置くべし。数の少なき方 は乙数と名づけ、これを下左位に置くべし。これより甲数の一桁ずつ︵単位より始むるをよしとす︶を乙数 の各桁に乗じ、その得たる数はすべて下右位に配置するなり。これと同時に、甲数のうちすでに乗じ終われ る桁は、毎度その数を払い去るべし。かくして、上右位の各桁に一数の残るところなきに至れば、下右位に 見るところの数、すなわち甲乙相乗の結果なりと知るべし。  除算の改良法は、すべて八算見一の呼法を廃し、筆算の除法をただちに珠算の上に当てはむる法なり。そ の法は、ここに甲乙両数ありて、甲数をもって乙数を除せんとする場合ありと定むべし。そのときには、甲 数を下左位に置き、乙数を下右位に置き、これを除して得たる数を上右位に置くべし。今、仮に前掲の乗法 の数にもとづき、   甲数を七百二十六と定め、   乙数を二百五十五万八千四百二十四と定む。  すなわち、七百二十六をもって二百五十五万八千四百二十四を除すれば、その答えなにほどなるやの一問 なり。これを算面に配置すること、左のごとし。        97        4  この算法は筆算のままを応用せるものなれば、別に説明の必要もなかるべしといえども、一言もってその

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第一図

いろはにほへとちり

いろはにほへとちり

順序を示すべし。        98  この除算式においては、甲数と乙数とを対比する 4 に、四回の手数を要するを知るべし。  第一回の除法は、下右位の千位︵は桁︶を単位とみ なして、二五五八の数を、乙数七二六をもって除する ことを考えざるべからず。しかるときは、その除し得 べき数は四にあらず、二にあらず、三なることを知る べし。よって、三を上右位の千位︵は桁︶に置き、こ の三を乙数の七二六に乗じつつ、これを下右位の二五 五八の中より減去するなり。その結果は三八〇となり て、第二図のごとくなるべし。  第二回の除法は、下右位の百位︵に桁︶を単位とみ なして、第二図の三八〇四の数を、乙数七二六をもっ て除することを考えざるべからず。しかるときは、除 し得べき数は五なることを知るべし。よって、五を上 右位の百位︵に桁︶に置き、この五を乙数の七二六に 乗じつつ、これを下右位の三八〇四の中より減去する

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二図

 いろはにほへとちり

いろはにほへとちり

三図

いろはにほへとちり

第 1一万〒 ピi  ・P’ ・ 白 1・ノ∫〒 }・ ., .   ・       ● ¥ 万 下一百 十 ・一 ・   ・       ● ¥万 千 1’∫ 1・一一

いろはにほへとちり

499

(25)

第四図

   いろはにほへとちり

卜万〒百1一 .’ .      . ¥万 千 百 十 ・A .    ■       ● 怐@千 百 丑’ ・ ・ 1一ノ」十rfl一 .       ・ f

いろはにほへとちり

なり。その結果は一七四となりて、第三図のごとくな るべし。  第三回の除法は、下右位の十位︵ほ桁︶を単位とみ なして、第三図の一七四二の数を、乙数七二六をもっ て除することを考えざるべからず。しかるときは、除 し得べき数は二なることを知るべし。よって、二を上 右位の十位︵ほ桁︶に置き、この二を乙数の七二六に 乗じつつ、これを下右位の一七四二の中より減去する なり。その結果は二九〇となりて、第四図のごとくな るべし。  第四回の除法は、下右位の一位︵へ桁︶を単位とし て、第四図の二九〇四の数を、乙数七二六をもって除 することを考えざるべからず。しかるときは、除し得 べき数は四なることを知るべし。よって、四を上右位 の 位に置き、この四を乙数の七二六に乗じつつ、こ れを下右位の二九〇四の中より除去するなり。その結 果、残数なくして、第五図のごとくなるべし。このと 500

(26)

いろはにほへとちり

五 第     ・       ・ ¥万千 百 卜一 ・     ●       ・ ¥ 万 千 百  f^ 一 .     . ¥ 万 千 r「 卜 : ’ . 卜万†・ 白’ 1・一 . . .

いろはにほへとちり

第六図

いろはにほへとちり 

いろはにほへとちり

いろはにほへとちり

501

(27)

いろはにほへとちり

七 第

いろはにほへとちり

いろはにほへとちり

いろはにほへとちり

八 第

いろはにほへとちり

いろはにほへとちり

502

(28)
(29)

畳めるようにするを便なりとす。       第八 算盤の上に言語を記する法 そろばん 算盤の上に言語を記する法は、先年工夫して、﹃記憶術﹄と題する拙著の巻末に掲げしことあり。その後、改       良算盤を案出して、より↓層の便利を得たり。

・十九八七六五四三ニー

一二三四五 アイウエオ カキクケコ サシスセソ タチツテト ナニヌネノ ハヒフヘホ マミムメモ ヤイユエヨ ラリルレロ ワヰウヱヲ  珠算の上に言語を記する法は、これを実行するに当たりて、第一に要するこ       ふた とあり。すなわち算盤の改良これなり。この改良とは、算盤の蓋の上面をガラ スにて作り、もって蓋をおおいあるも、上より珠を見らるるようにせざるべか らず。また、そのガラス板の内側に細き横木を付して、蓋をおおいしときは、 その盤を動かすも、珠の位を変ぜざるようになさざるべからず。かくしてその 方法は、まず五十音を数に配当し、五十音は十行五字ずつより成るをもって、 その十行を一より十までに配当し、その五字もまた一より五までに配当するな り。すなわち上図のごとく、ア行は一、力行は二、サ行は三、タ行は四、ない しワ行は十なり。また、アは一、イは二、ウは三、エは四、オは五なり。カは  、 Lは二、クは三、ケは四、コは五なり。その他はこれに準じて知るべし。 しかして、この行数を表示するところの数はこれを行位数といい、各行の字を 表するところの数はこれを字位数といい、すべて五十音中の一字を表するに、 504

(30)

甲 乙   算盤の二桁ずつを当つ。すなわち、二桁をもって一字を表する割   合なり。この二桁の左方を十位とし右方を一位となすときは、十   位の所に行位数を置き、一位の所に字位数を置き、二位相合して   一字を示す方法なり。例えば、﹁カミ﹂︵紙︶なる二字を算面に表   さんとするときは、四桁を用い、二一、七二となるがゆえに、甲   図のごとく、左方の端より一桁ずつ右方にかぞえ送るべし。ま   た、﹁ショモツ﹂︵書物︶なる四字を表さんとするときは、乙図の   ごとく、三二、八五、七五、四三となるをもって、八桁を用いざ        長語を表することを得べし。その他、なお注意すべき この場合には、字位数に上の五珠を加うるものとす。半濁音の場合も   につきて見るべし。

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りき。今、その要領を述ぶれば、漢字中に単字と複字の二種ありて、複字は二、三の単字を複合して成るものな        06 り。もし、単字のみの活字を用い、これを組み合わせて複字を作るに至らば、今日用いきたれる三千余の活字 5 は、たちまち五、六百字に減ずるを得べし。唯一の不便は、文字の形が見苦しくなるというにあり。余の工夫せ る方法種々あるうち、今その一法を挙ぐれば、和漢の文章は縦読み文にして、上より下へ読み下するように記す       へん るを常とす。ゆえに、複字はすべて上下に重ぬるようにせざるべからず。しかるときは、従来の﹁偏﹂と名つく る分は、すべて下方に置くことになるべし。例えば、﹁松﹂の字は活字の方にては﹁粂﹂となり、﹁海﹂の字は活 字の方にては﹁集﹂となるの類をいう。この方法によれば活字の数は非常に減ずるも、ただ従来の習慣上、形の 見苦しくなるために行われ難きのみ。        第一〇 漢字のタイプライターにつきて  欧米諸国にては、近来、タイプライター大いに流行せるも、わが国にてはその流行なきは、漢字のタイプライ ターなきによる。しかるに、漢字はその字数非常に多くして、タイプライターを作ること非常に困難なり。ゆえ に、余は漢字のタイプライターを工夫せんと欲し、種々の腹案あるも、元来器械学を知らざる上に、その工夫極 めて精巧なる器械を要するをもって、とうてい独力のなしあたわざるところなるを知れり。もし、その学にくわ しくかつ資産あるものあらば、ともにはかりて余の腹案を実地に試みたく思うなり。よって、ここにただ余の所 望を述べて、自ら世間にそのことを紹介するのみ。

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面 裏

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      ひも 縁と名づけて説明するに、額身を引き張るためには、その上下の両端に紐をつけ、上端の紐は上縁を貫き、下端 の紐は下縁を貫き、背後においてこの二者を交結しおくべし。なお、そのほかに風の予防と装飾の意味とを加       けんすい え、下縁を貫きたる紐に連続して、左右に二個の懸錘を付け、その下にフサを垂れしむる工夫を用うるをよしと す。すなわち、図面につきて見るべし。もし、これを巻かんとする場合には、まず紐を解き、上下の縁を軸とし て巻き付くるようにすべし。その見込みにて、あらかじめ上下の縁は円柱にし、これに左右両縁の柱を差し込む ように造りおくを便なりとす。よろしく図面に照らして考うべし。 508        第一二 長持の改良       ながもち       ふとん  いずれの家にても、一とおりの家具を有する者は、長持を所持せざるはなし。長持は、夜具、蒲団のごときも のを入るるに最も便利なるものなり。されど、ここに つの不便は、多く物を入れたる場合には、その底に何物       ふた がありしやを知ること難きにあり。そのほかに、蓋の上にいろいろの物を載せ置く場合に、いちいちこれを取り 除かざれば、箱の中の物を取り出だすことあたわざる不便あり。余はこの不便を避けんために、長持の側面に引 き違いの二枚戸をつけて、あたかも戸棚のごとき装置を設くることを思い出だせり。されば、いちいち蓋を開く を要せず、側面の戸を開けば箱の底にあるものを知るのみならず、自在に入用のものを取り出だすことを得るな り。もし、出だすことあたわずとするも、底にあるものをうかがい見ることを得ば、いくぶんの便利あるは明ら かなり。余は長持を見るごとに、この装置の必要を感ぜざるはなし。

(34)

へ葦賓を張る代わりに、蚊帳を張る工夫なり。かくするときは、風の流通よろしきのみならず、蚊の襲来を防ぐ 第一四 襖の改良 イ 口 ○ ハ 二        ふすま  夏戸の改良法により、余はさらに襖を改良して、冬夏共通 両便のものとなさんとす。この法は、襖の戸骨を上図のごとく に造り、イロハニの各段に額面体の襖張りをはさみ込み、これ を冬時に用うべし。しかして、夏時には襖張りの方を抜き取 り、その代わりに蚊帳張りの方をはさみ入るべし。つまり、イ ロハニに相当する額面体のもの各二とおり︵一とおりは襖張り       09       5 にて冬時用、一とおりは蚊帳張りにて夏時用︶ずつこしらえお

(35)

き、冬夏ごとに入れかうるなり。しかして、戸骨の方は一とおりにて足れり。        え       10  かくするときは、襖の模様あるいは張り画を、ときどき取りかうることを得るの便あり。例えば、吉事あると 5 きには吉事相当のものを用い、凶事あるときには凶事相当のものを用い得るなり。もしまた、額面体の襖張りを 幾とおりもこしらえおけば、吉凶に応じてのみならず、四季に応じて相当のものを用うることを得るの便あり。        第一五 ガラスを曇らする法  ガラス張りの障子を、ときにより曇らせたきことあり。しかるときは、なにびとの思い付きかは知らざれど、    のり 普通の糊をハケにてガラス板に塗りつくれば、たちまち曇りガラスに変ずるなり。余は糊の代わりにシャボンを 用うるに、同様の効力あり。しかしてシャボンの方は、これをふきとりてもとのままにするには、糊よりも容易 なり。        第一六 即座にろうそく立てを作る法       きようおう  あるとき哲学館内において、百名以上の来賓を洋食にて饗応せしことあり。その食事夜分にまたがり、点灯 の用意必要なりしも、ランプの準備なければ、やむをえず西洋ろうそくを用うることに定めたり。されど、ろう そく立ての用意なければ、余が工夫にてビールの空きびんを代用せんと思い、これを試みたるに、大いに喝采を 博せしことあり。西洋料理のテーブルには、ビールびんはその大きさも高さも、最も適しおるように覚ゆ。

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図) (甲 図) (乙 512 自在に掃除し得るなり。  甲図にても乙図にても、その天井の割り方は畳に相応するように造り、畳八枚敷きなれば天井も八区に分か ち、その 区は畳 枚に相対するものとし、各区ともに取りはずしのできるように造りおけば、いつにても天井 裏を掃除することを得る道理なり。かくするときは、各区の間にわたれる横木は通常よりもいくぶんか太くし、 それだけは動かぬようにいたしおくべし。  この構造法は、今後新築せる家屋にことごとく当てはむるに至らば、ペスト予防には最もよろしからんと思う なり。ひとりペストのみならず、一家の衛生に非常の効力あるべしと信ず。これまで民家にて行いきたれる冬夏

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      第一一〇 水を用いずして火を消す法       14  ある地方にて、火災のときに水の代わりに砂を用いて火を消す所あり。余、これを試むるに、果たして効あ 5       ておけ り。よって、鎮火用心のために砂を蓄え置くをよしとす。世間にては平日手桶に水を入れて、これを戸外に置 き、もって鎮火の用に備うる所あれども、その水たちまち腐敗して衛生の害となる恐れあり。もし、水の代わり にバケツの類に砂を盛りて戸外に置かば、さらにその恐れなし。また、必ずしもバケツを用うるを要せず。屋敷 の一隅に砂を積み立てて置けば、火急の場合に、水を井戸よりくみ上ぐるよりもたやすく運ぶことを得べし。       第二一 船に酔わざる法  人の船に酔うは全く神経より起こることは明らかにして、無神経の小児や動物の知らざるところなり。ゆえ        ふなやまい に、精神を静止する方法を工夫すれば、船病を避くることを得べき理なり。すなわち、その要は精神をして不 動の地に置かしむるにあり。しかして、身体は船中にあるをもって船体とともに動揺せざるを得ざれば、なるべ       く身と心とを別所に置くことを努め、身は動揺の地位にあるも、心は不動の地       位にあるものと観念せざるべからず。よって、まず思想上に一大宇宙の大球円       の体ありと想定し、日月星辰、地球山川、みなその体中の一隅に現見せるもの   甲    乙・       に過ぎずと確執し、わが心はその中心なる不動の点にありて、諸星の運行、諸       物の動揺を局外より歴観するものと信念すべし。例えば上図につきて、甲を宇       宙全体とし、乙をその中心としてこれを論ずるに、船に乗り込みたるときはた

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便ならず。この不便を避けんためにビスケットの大形なるものを用うるも、腹にこたえる点においては、胡麻入       16 りの団子の方、かえって菓子パンより便ならんと思わるる。ゆえに、もしこの製法を研究して、これによりて菓 5 子パンのごときものを造るに至らば、軍事上大いに益するところあるべし。        第一一三 肺病を予防する法        まんえん  近来、肺病は一年増しに蔓延し、青年有為の士のこれがために倒るるもの、その数を知らず。ゆえに、これを        はらたんざん 予防する方法を工夫するは、実に今日の急務なり。先年、原坦山翁、余に語りて曰く、﹁肺病を医するは座禅に しくものなし﹂と。翁は惑病同源論の主唱者なれば、その言ことごとく信ずべからずといえども、いまだ肺病と 称するまでに至らざるものは、座禅によりて多少これを予防することを得るは疑いなきがごとし。その後、余は さらに一考し、禅家の座禅と、道家の調気と、儒家の静座とを折衷して、しかもこれに今日の衛生法を加え、も って一種の吸気養生法を案出するに至らば、肺病を防ぐの一助となるに相違なしと思い、自ら試みんと欲してい        ひつけん まだ果たさざるなり。されど余は、夜分深更まで読書あるいは筆硯に従事せるときには、必ず吸気運動を行って 寝に就くを常とす。その結果なるかいなやは知らざれど、先年ひとたび肺患の恐れありしも、昨今さらにその気 味なし。ゆえに、この法は青年書生をして一般に行わしめんと欲するなり。        たんでん       へそ  道家の調気法は、呼吸深く丹田に入るを要すとありて、丹田は下腹の膀下一寸三分の所なりという。すなわ       あんま ち、下腹に力を込めて深呼吸をなすなり。これに加うるに導引の法あり。導引とは独り按摩のことにて、自身に て按摩を行うなり。しかるに余は、導引の代わりに左右両肩および両腕を上下に運動せしめて、深呼吸を行う。

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(43)

いまだ金額を貸与せざるに、すでに二倍の利益を得べく、もし長命によりて卒業後数十年も存命しおらば、たと       18 い二倍の返金を得ても、利息を推算すれば多少の不利益となるべしといえども、貸し主は己の貸与したる学資の 5 成功を見たるものなれば、自然に無形上の利益のこれに伴うべきをもって、あながちに損失というにはあらざる べし。もとより、かかる場合の貸し主は、ただ有形の利益のみを見るべきにあらずして、一分慈善の意をもって 尽くさざるべからず。また、その補助を受けたる借り主は、貸し主の恩義に対して感謝の意を有せざるべから ず。ゆえに余は、かくのごとき貸借法を恩義貸借法と名づけ、その貸し主を恩貸主と呼ばんとす。  以上の方法は、実例を設けて説明するにあらざれば、了解し難き恐れあり。ゆえに余は、己の監督せる哲学館 につきてその例を示さん。哲学館は中学以上の学科を教授する学校なれば、年齢満十六、七、八歳より入学し、 在学三年間にてその専門部を卒業すべし。されば、一年間の東京留学費を百二十円ないし百五十円と定むれば、 三年間にて、三百六十円ないし四百五十円を要する割合なり。今、これを四百五十円と予定し、家貧にして父兄 の力よくその金を支出することあたわざれば、親戚、知己の力をかり、余がいわゆる恩義貸借法によりてこれを 支弁せんとするに、もし一人にて全額を出金するものなき場合には、仮に有志十二人ないし十三人に請うて毎月 一円ずつ出金せしめ、これに対して修学者自身の生命を保険し、その金高は学資金の二倍すなわち九百円と定 め、本人の死亡せる場合には、この九百円を恩貸・王の十二人もしくは十三人へ分配して、学資債を返済する方案 なり。  保険金九百円に対する保険料は、会社により一準ならずといえども、もし父兄が己の子弟を恩義貸借法により て教育せんと欲せば、十五歳のときより当人の生命を保険しおくを便なりとす。しかして、十五歳のときの保険

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      とうせん つることとし、第一回の当籔者は第二回のときにその金を得、第二回の当籔者は第三回に得るものとし、かくの       20 ごとく次回送りにするときは、最後の当籔者は現金を得ることあたわざるに至る理なり。しかるに、この当籔者 5 は、まさしく余がいわゆる恩貸主に当たるものにして、生命保険金の九百円を得るものなり。この方法によら ば、十五歳のとき、すでに学資金四百五十円を積み立つることを得。もし、この金を七分利に算すれば、二十一 歳卒業のときまでに、利息だけにても二百円となるべし。されば、毎年の保険料をその中より支払って、なお多 分の剰余金を積み立つることを得る割合なり。また、最後の当籔者は本人の死去をまつにあらざれば、己の手に 現金を受け取ることあたわざるも、もし有限掛け金の方法によらば、十年ないし十五年の後には、その保険証書 を抵当として、金円を借り入るることを得る方法ありという。あるいはまた、最初積み立てたる四百五十円に対 する利息は、最後の当籔者の所得とする規則を設くるも一策ならん。もし、無尽の満期に至らずして本人死亡す るときは、保険金九百円はこれを無尽の組合にて保管し、最後当籔者の所得に帰するものとすべし。かくすれ ば、最後当籔者に限りて不利益なるの恐れなかるべし。  以上の方法を約言すれば、左の三条に帰すべし。   一、子弟を教育するに当人の生命を保険すべし。   一、生命保険に伴って学資を貸与すべき有志者を募り、これに対する返済法は保険金をもってすべし。   一、もし、一時に学資金全額を積み立てんとするときは、生命保険のほかに無尽を組織し、しかして保険金     は無尽組合の所有とすべし。

(46)

くずゆ  わん

余、先年より遊戯の改良を計画し、種々工夫の結果、まず戦争将棋なるものを案出せり。これ、先年すでに世

(47)

 えに、﹃戦争哲学 斑﹄の人数と体格とを合して兵士となし、知慮と謀略とを合して知謀となす。       22 第二条 すべて将棋は、盤と駒との二種より成る。今この将棋も、その二者をもって組み立て、盤は普通の 5  将棋に異なることなし。駒は黒赤の二色に分かち、これを黒票、赤票と名つく。これ、敵と味方とを区別  せんためなり。まず左に、黒赤両票の名称を示すべし。

有形÷⋮

無∴

天時︵天︶ 軍器︵器︶ 軍律︵律︶ 熱情︵熱︶ 明察︵明︶ 果断︵果︶ 二、運便︵運︶ 五、兵士︵兵︶ 八、資糧︵資︶ 二、服従︵服︶ 五、知謀︵知︶ 八、正義︵正︶

九六三九六三

、   、   、   、   、   、

親勇耐地習編

愛気忍利練制

      A  A      

親勇耐地習編

)  )  )  )  )  )   この有形と無形とを区別するため、票面の一隅に○と×との符を付記す。○符は無形を表し、×符は有  形を表するなり。 第三条 票数は有形無形合して十八個、これに黒赤二種あるをもって総計三十六個なり。その盤面に配置す  る順序、左図︹次頁︺のごとし。図中、固は黒票を示し、㊥は赤票を示すなり。   この諸票中、兵士は有形要素中の中心にして、知謀は無形要素中の根本なり。ゆえに、この二者は普通  の将棋の王将に当たる。また、軍器と資糧とは有形中の最も重要なるものにして、服従と勇気とは無形中  の最も大切なるものなり。ゆえに、この四者は普通将棋の金将、銀将に当たる。

(48)

図 第

⑧ ⇔ ⇔

 一

下園瓢璽

⇔ ㊦

(⑧

⇔ ⑳

㊥緬

常票は票の表面をもってこれを示し、文字そのものの黒く、

  例えばF内圃あるいは圃のごとし。

 第四条 左に︹第二図︺、盤面の各位に数   号を記入して後の説明に便にす。すな   わち、黒票は甲乙両段に配列し、赤票    しんじん   は辛壬両段に配列す。よろしく第一図   を参照すべし。

 第五条票に黒赤二種あるほかに、常

  票、変票、転票の三種あり。常票は最   初盤面に配列せるものをいい、変票は   機に臨み変に応じて票面の 変するを   いい、転票は進んで敵地の列内に達し   たるものをいう。 もしくは赤く出ずる面をいう。 変票は票の裏面をもってこれを示し、文字そのものの白く出ずる面をいう。   例えば■閤■あるいは価一幽のごとし。 転票は、二票を上下に重ねて複票となりたるものをもってこれを表す。       23

  例えば因劃を単票とすれば、転票はなににても己の手に取りたる票をその下に加えて、園の5

(49)

図 第    ごとく二重にしたるものをいう。   常票は、単に黒票、赤票と呼び、変  票は黒変票、赤変票と呼び、転票は黒  転票、赤転票と呼ぶ。もし、転票の変  票となりたるときは、これを黒転変  票、白転変票と呼ぶ。 第六条 これより、まず常票の運動を示  すべし。すべて票の運動を、運行ある  いは運票と名つく。   常票は、前一方、左右二方、都合三  方に向かいて一段ずつ運行することを  得るなり。その前に動くを進行と名づけ、左右に動くを横行と名つく。       こ つ      まシ    例えば、常票︵赤︶庚五にありとするときは、その動くや己五に進行するか、しからざれば庚四もし        てい      ぼ   くは庚六に横行することを得。あるいは、もし常票︵黒︶丁二にあるときは、戊二もしくは丁一もしく   は丁三に運行することを得るなり。しかして、常票は一変して転票とならざる間は、後方に向かいて却   行することを得ず。 第七条 かくして、黒赤両票各前方に向かいて相進み、互いに衝突するに至らば、敵票を一個ずつ飛び越す 524

(50)

 ことを得。これを票の飛行と名つく。ただし、左右両方に向かいて飛び越すを得ず。また、二個相連なれ  るを飛び越すを得ず。しかして、飛び越されたる票はこれを盤面より除き去るべし。    例えば、赤票進んで己五より戊五に達し、黒票動きて丙五より丁五に至るか、あるいは丁四より丁五   に移るときは、赤票は黒票一個を飛び越えて丙五に転じ、これと同時に、その飛び越えたる黒票を盤面   より除き去るなり。ただし、丙五の場所に他票の存するあれば飛び越すを得ず。しかるに、もしその場   合において丁五および乙五に黒票ありて、丙五と甲五とに無票なるときは、赤票は一度に甲五まで飛び   越えて、二個の黒票を同時に盤面より除き去るべし。以下、これに準じて知るべし。 第八条 つぎに変票は、戦争に常道、変道の二種あるの道理にもとづき、機に臨み変に応じて変計奇策を用  うる意を示すものなり。すなわち、その法は常票にて不利、不便を感ずるときに、票の裏面を出だして変  道を用うることを示すなり。   変票は前両隅に向かいて一段ずつ進むことを得。これを角行と名つく。ゆえに、常票変じて変票となれ  ば、正面および左右両方へ進行横行するを得ずして、前両隅に角行するを得るなり。    例えば、赤票進んで戊七に達するとき、丁七、丙七に黒票ありて、正面に向かいて進むを得ざるがご   とき場合には、赤票たちまちその裏面を翻して変票となり、もって丁六もしくは丁八に向かいて進むこ   とを得。かくして、すでにひとたび変票となれば、また丁七、戊六、戊八に向かいて動くを得ず。しか   るに、もしまた変票の不便を知るに至らば、さらに一変して常票となるを得るなり。 第九条 変票も、常票のごとく敵票を一個ずつ飛び越すを得。ただし、前両隅の角線に限る。 525

(51)

   例えば、赤変票の戊七の位置にあるとき、丁六もしくは丁八に黒票ありて、丙五もしくは丙九に無票        26   なるときは、その票は黒票一個を飛び越えて、丙五もしくは丙九に転じ、その飛び越えたる敵票を盤面 5   より除き去ること、すべて常票に異ならず。もしまた、これと同時に乙四および乙八に各黒票一個ずつ   ありて、甲三および甲七に無票なるときは、赤変票は一度に二個を飛び越えて、甲三もしくは甲七に達   することを得。しかるときは、その飛び越えたる二個を盤面より除去すること、常票の場合に同じ。 第十条 常票一転して変票となり、変票また一変して常票となるときは、そのとき一度、運票を休まざるべ  からず。    例えば、赤票庚 にあり、黒票己二にありて、戊三に無票なるときは、赤票は黒票を飛び越えんと欲   して、一変して変票となるも、ただちに戊三まで飛び越すを得ず。すなわち、赤票庚一の位にありて変   票となれば、運票の順番は黒票の手に移るなり。変票の常票に転ずるときも、これに準じて知るべし。 第十一条つぎに転票は、その運行大いに自在を得て、進行横行のほかに、また却行することを得。まず、  常票の転票となりたるものについてこれをいわば、前後左右の四面ともに、各一段ずつ進退運動すること  得るなり。    例えば、転票乙五の位にあれば、甲五、乙四、乙六、もしくは丙五に向かいて動くことを得。 第十二条 また転票の飛行は、左右前後の四面に向かいて敵票一個ずつ飛び越すことを得。    例えば、赤転票乙五の位にありて、丙五もしくは乙四に黒票あり、しかも丁五および乙三に無票なる   ときは、赤転票は丙五を飛び越えて丁五に至り、もしくは乙四を飛び越えて乙三に至ることを得。もし

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  また乙四、丙三、丁二、丙一に黒票ありて、乙三、丁三、丁一、乙一に無票なるときは、乙五の位にあ   る転票は一個ずつ飛び越えて、一度に乙一に至ることを得。かくして、一度に数個の敵票を盤面より除   き去ることを得るなり。 第十三条 もしまた、転票一変して変票となり、あるいは変票一転して転票となりたる場合には、前後左右  の四面に向かいて直線に運行および飛行することあたわざるも、四隅の角線に向かいて運行および飛行す  ることを得。    例えば、転変票丙五にあるときは、乙四、乙六、丁四、丁六の四隅中、いずれに運行するも随意な   り。もし、そのとき乙四、乙六もしくは丁四、丁六に敵票ありて、甲三、甲七もしくは戊三、戊七に無   票なるときは、丙五の転変票は甲三、甲七、戊三、戊七のうち、いずれに飛行するも随意なり。もしま   た、乙四、乙二、丁二に各敵票一個ずつありて、甲三、丙一、戊三に無票なるときは、丙五の転変票は   三個の敵票を飛び越えて、一度に戊三に達するを得るなり。 第十四条 つぎに、勝敗の分かるるは左の条件によりてこれを定む。  ︵一︶ 敵味方のうち、兵士と知謀との二票を失いたるものを敗とす。  ︵二︶ 兵士と知謀との二票なお存するも、軍器、資糧、勇気、服従の四票を失いたるものを敗とす。  ︵三︶ いまだ以上の諸票を失わざるも、有形の諸票︵九個︶もしくは無形の諸票︵九個︶をことごとく失     いたるものを敗とす。       田 第十五条 以上、すでに運行、飛行の方法および勝敗の結果を示したれば、これより、特殊の規則につきて

(53)

 述べざるべからず。その一例は、黒赤二票互いに進んで衝突する場合には、敵票を飛び越すか、しからざ       28  れば他方に向かいてこれを避けざるべからず。しかれども、もし飛び越すことものがるることもあたわざ 5  る場合には、その位置にとどまりて可なり。    例えば、丁九、丙九の両所に黒票あり、己九、庚九、辛九の三所に赤票ありて、ほかに余票なしと仮   定せよ。そのとき己九の赤票進んで戊九に至り、黒票と衝突するときは、丁九は戊九を飛び越すか、し   からざれば丁八に向かいてこれを避くるか、二道中の一を選ばざるべからず。決してその位置にとどま   るを許さず。かくして、黒票飛んで己九に至れば、庚九の赤票と衝突すべし。ゆえに、庚九の赤票は庚   八に向かいてこれを避くるか、己九を飛び越えて戊九に達するかを選ばざるべからず。もし、丁八もし        とんろ   くは庚八に余票あるときは、ほかに遁路なきをもって、ぜひとも前方に向かいて飛行せざるを得ず。あ   るいは、さらにこれを例するに、甲九、甲八に黒票二個あり、丙九、丁九、戊九に赤票三個ある場合に   黒票を取り除かんと欲するときは、丙九の赤票を進めて乙九に至らしむべし。しかるときは、甲九の黒   票はほかに遁路なきをもって、乙九を飛び越えて丙九に至り、ついに丁九の飛び越すところとなりて、   盤上より除去せらるるなり。あるいはまた、甲九に赤転票あり、丙七に赤票一個ありて、甲六、甲七、   甲八に黒票三個並列するときに、丙七の赤票を乙七に進むれば、甲七の黒票はほかに遁路なきをもっ   て、飛行して丙七に至り、ついに甲九の赤転票をして甲八、甲六の二個を飛び越えて甲五に至るを得し   むるなり。その他、変票の場合もこれに準じて知るべし。 第十六条 以上の規則の応用を示さんために、左に一、二例を掲げてこれを説明す。

(54)

 例えば、盤面に黒赤二種、左のごとく配列せりと仮定す。

黒票誘麗註賢㎎ロ㌧八丙七丁七丁八丁九にあ久

赤票㌶ロコ嘉読語バ⋮霞八にあ久

 このとき、赤票より敵陣を破らんとするには、まず丙二の赤変票をして乙三に進めしむべし。しかる ときは、前条の規則により、甲三の黒票は必ずこれを飛び越して丙三に至るべし。つぎに、丁五の赤票 は丙五に進めば、乙四の黒変票はまた前条の規則により、飛行して丁六に至る。このとき、己八の赤票 を戊八に進むれば、同↓の規則によりて、丁八の黒票は飛行して己八に至る。しかるときは、庚九の赤 変票は己八、丁六、乙六、乙八の四個の黒票を飛び越えて、丙九に至り転変票となるなり。  また、一例は左のごとく仮定す。

黒票誘髄い巽誤主駐鴨。

赤票籠駆語舗誘㌍パ鷹

 まず、黒票の方にて乙七の票を丙七に進めたるに、赤票の方にては丁八の票をして変票となさしむ。       29 このとき、黒票の方にて丙七の票を失わんことを恐れ、さらに進んで丁七に至る。ここにおいて、赤票 5

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 の方は丙四の変票を乙三に移せるに、甲二の黒変票はほかに遁路なきをもって、規則第十五条に従い、        30  飛行して丙四に至る。このとき丙三の赤転票は、丙四、丙六、丁七、己七の四票を飛び越えて庚七に至 5  るなり。 その他、いちいち例を挙げて示すにいとまあらざれば、よろしく以上の規則に照らして推考すべし。        第二八 遊戯改良第二、字合カルタ       じあわせ  また、余の工夫せるものに、字合カルタなるものあり。その目的は、従来の遊戯を改良して、教育上に適用 するにありて、その結果、人をして広く事物の名称を記し、文字の活用に通じ、知覚を進め記憶を助け、方言、 俗語の誤り、および字訓、仮名の誤りを正し、児童遊戯の間に、知らず識らず文字修習の便を得しむるものな り。左に、その仕方に関する規則を掲ぐ。       所用の票数四十八あり。一票の大きさ、縦八分、横七分とす。

    回固圓回回囚固固回回固固固囲国因困囹回困固回固固

    固回固口囹国回固口因国固国固回回固回園回固団団囚

       ぽ    今、仮に座中の人数を甲乙丙丁戊己の六名ありと定め、これに一組すなわち四十八票を分配するときは、   各人八票あて所持する割合なり。その所持せる票は、必ず各自の前に排列し置くべし。あたかも歌カルタを   各人に分配せるときのごとし。座中だれにても、回票を所持せるものより手始めをなすべし。その人を仮に

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甲と名つく。甲はまず、その所持せる票中より随意に一票を選び、これを座の中央に差し出だすべし。これ を題票と名つく。しかるときは、これに隣するものすなわち乙は、この題票の文字に、自身所有の票中より 二票もしくは二票以上を加えて、三字もしくは三字以上より成れる一語を組み立つることを思考すべし。そ の語は、おもに一個の名詞︵実物名詞もしくは普通名詞︶に限るべし。例えば、机、生徒、桜、鶏、空気、 書物、役所、アメリカ人の類をいう。︵ただし、時宜により固有名詞、形容詞等を用うるも勝手たるべし。        た び また、小児輩にして三字以上の語を組み立つることの難きを感ずるときは、紙、筆、足袋のごとき二字より 成れる語を用うるも、そのときのよろしきに従うべし︶かくして、乙は思考のうえ一語を組み立つることを 発見したるときは、その題票まで合わせて、みな乙の所有に帰す。しかして、さらにその所有中より随意に 一票を取り出だして、これを新題票となすべし。もし、思考のすえ一語を組み立つることあたわざるとき は、自ら一票を出だし前題票に合し、二票をもって新題票と定むべし。もし乙の思考中、他人︵例えば丁︶ ありて乙の所有中の票と題票とを合わせ、一語を組み立つることを発見したるときは、その票はことごとく 丁の所有に帰し、乙は数票を失いたる上に、さらに一票を出だして題票となさざるべからず。そのつぎに列 するものすなわち丙は、この題票と自身所有の票を合わせ、三字もしくは三字以上の一語を組み立つること を思考すべし。もし、幸いに組み立つることを得たるときは、その票はみな丙の所有に帰す。もし、組み立 つることを得ざるときは、さらに一票を自身の所有中より取り出だし、これを前題票に合わせて、ともに題 票と定むべし。もし、丙の思考中、他人︵例えば甲︶ありて一語を組み立つることを発見したるときは、そ       31 の票は甲の所有に帰し、丙はこれを失いたる上に、さらに一票を出だして題票となすこと前例のごとし。  5

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       ぼ  そのつぎに列するもの、すなわち丁、戊、己、各相継ぎてさらに甲、乙、丙に及ぼし、数回手を移してあ       32 るいは得、あるいは失い、その結果、座中の一人全票を失いて、題票を出だすことあたわざるに至りてや 5 む。そのとき、各人所有の票数を検し、最多数を所持せる者を勝とし、一票だも所持せざるものを敗とす。      ︵付  則︶    題票三個以上あるに当たり、三字もしくは三字以上より成れる 語を組み立てんとするときは、題票   一個に自身所有の数個を合するは当然なるも、自票一個と題票数個とを合するも、決して規則に反する   にあらず。    座中だれにても、題票中より三個もしくは三個以上を合わせ、さらに自票を用いずして一語を組み立   つることを発見するも、もちろん差し支えなし。もし、他人にてこれを発見したるときは、その票は他   人の所有となるべし。例えば、丁の番に当たりその思考中、丙ありて題票のみにて一語を組み立つるこ   とを発見したるときは、その票はみな丙の所有に帰し、丁は別に一票を出だして座中に残れる題票に加   え、戊の手に移すべし。座中だれにても︵例えば乙︶、その番に当たり自ら一語を組み立つることあた   わざるを知り、すでに一票を出だして題票に加えたる後、他人︵例えば丁︶ありて乙の票と題票とを合   わせて一語を組み立つることを発見するも、無効に属するなり。    だれにても自身所有の票は、これをその前に排列して衆人に示し置くは当然なるも、自身の番にきた   らざる間は、手をもってその票をおおい隠すも差し支えなし。ただし、自身の番にきたるときは、必ず   その所有の全票を衆人に示し置かざるべからず。座中だれにても、ひとたび用いたる語は、その勝敗の

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  終わらざる間に再び用うるを許さず。      変則一法  総票ことごとく座の中央に集め、あらかじめその中より二票もしくは三票以上を取り合わせて、地名、人       さけ  からす 名、もしくは動物、植物の名、もしくは器械、物品の名等︵例えば、動物なれば猫、鮭、鴉、松虫の類を いう︶を組み立つることを約し、各人だれにても、順次を立てず、随意に諸票を取り合わせて一語を組み立 つることを思考すべし。幸いに組み立てたるときは、その票を当人の所有となし、自身の前に排列し置くべ し。しかして、さらに座上に残りおる票中より一語を組み立つることを思考し、題票ようやく減じて、だれ にても一語を組み立つることあたわざるに至りてやむ。そのとき、各人の前に排列せる票数をかぞえて、最 多数を有するものを勝とし、最少数を有するものを敗とす。その他、種々の取り方あれども、いま煩をいと いてこれを略す。よろしくほかのカルタの仕方に準知すべし。

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      さぼう   第]面には、漢字の左芳となる部分を記入すべし。       34    イ、そ、女、木、→、う、才、7、禾、日の類      5   第二面には、右労となる部分を記入すべし。     乙、り、多、月、斤、欠、文、β、圭、頁の類         せつ   第三面には、上載︵冠︶となるものを記入すべし。    ﹁、︷、﹁、 、穴、﹁、竹、什、W、門の類   第四面には、下裁となるものを記入すべし。     几、心、︹、皿、走、定、臼、衣、題、鬼の類   第五面には、中体となるものを記入すべし。     天、白、古、各、毎、青、有、昔、音、皆の類   第六面は、文字を記入せざるをよしとす。あるいは、中体となる文字を記入しおくも妨げなし。  かくのごとき費、数十個を作り、これを座中の人々に分かち、その仕方は全く字合カルタの方法により、己の 所持せる費をもって、座中の餐に合して文字を組み立つることを工夫すべし。幸いに組み立つることを得れば、 その養を己の所有とするなり。      第三〇 室内遊びの新案 わが国の室内遊びは碁、将棋、カルタ等あるも、 いずれも身体の運動を助くるものにあらず。西洋のいわゆる

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甲 丙○ 乙 戊 いくぶんか興味あるべしと思うなり。    たま   ﹁球つき﹂に代用すべきものは、わが国にあらざるなり。この﹁球つき﹂にも種々あり   て、日本の室内にてたやすく行い得る軽便のものなきにあらず。また、普通にいうとこ   ろのピンポンなども、日本の室内運動に適すべし。さなくとも、余は日本の室内にて   は、畳を利用して 種の﹁球つき﹂を工夫するをよしとす。例えば、畳一枚︵甲︶を仮       あ   に球つき台と定め、乙点に親球を置き、丙点においてほかの球をもってこれに中つるよ   うにし、その球の畳の外に出ずるといなとにつきて得点の規則を設け、勝敗をかぞうる       ぼ      ひばし   ようにすべし。あるいはまた、戊側の界線に添って火箸を二、三カ所に立て、親球もし   くは子球のいずれの火箸の間を通過せしやにつきて、得点の規則を設くるも可なり。し   て まり       もし、その規則を設けんと欲せば、﹁球つき﹂などにくわしき人 その法たるや、あまり簡便すぎて興味少なかるべきも、座り相撲の殺風景なるものよりは、 いに簡便ならんとあれば、余はその工夫を賛成するも、これを実行するには、押入の襖の改良を要するなり。

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案あり。すなわち、床の間を寝台に利用する方法なり。押入は諸品を入るる用あれども、床の間は室の装飾の一       36 部にほかならず。ゆえに、昼間は装飾の一種としてその用あるも、夜間は不用なり。よって余は、床の間を普通 5       ふたいた      あんが のものより一段高くし、その中に寝台の装置を設け、これに蓋板を加え、夜間はその板を取りて、これに安臥す るように構造せんとす。これまた一新案なり。       第三二 書棚の改良  和漢書は虫の付く恐れありて、毎年夏時には虫払いをなさざるべからず。余はその不便を除かんと欲し、書棚 の改良を実行したれば、さらに虫の生じたることなし。けだしその法は、従来の書籍箱を廃し、すべて書棚に造 り、その左右、前後、上下ともに風の自在に流通するようにし、書冊は﹁とじ目﹂の所を下方に置き、丁数の入 りたる所を上方に向け、毎冊横に立てかくるように並ぶるなり。また、書籍箱もこの工夫にて改造し、外囲の板 を﹁こうし﹂にして風の流通をよくし、かつ書冊を上下に積みかさねずして、横に立てかくるようにすれば、同 じく虫の付く恐れなし。        第三三 鉛筆の改良        しん  従来の鉛筆は多く木にて造りたるものなれば、これを削ること容易ならず。ときどき、削るために鉛筆の心の 折るることあり。よって余は、木よりも一段削りやすきものを用うる方よからんと考え、近ごろ黒板に用うる白 墨を木に代用してはいかんと思い付きたり。つまり、白墨の中心に鉛筆の心を入れて造るなり。白墨は木よりも

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