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処分性拡大判例の系譜―土地利用計画関係の判例を中心に― 利用統計を見る

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(1)

処分性拡大判例の系譜―土地利用計画関係の判例を

中心に―

著者

高木 英行

著者別名

Takagi Hideyuki

雑誌名

東洋法学

56

2

ページ

25-79

発行年

2013-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00004084/

(2)

第一章   はじめに   行政訴訟の訴訟要件として、 「処分性」――行政事件訴訟法[以下「行訴法」 ]三条二項「行政庁の処分その他公 権 力 の 行 使 に 当 た る 行 為 」) ― ― と い う 要 件 が あ る 。 こ の 処 分 性 と は 、「 行 政 活 動 」 に 関 す る 抗 告 訴 訟 ' 対 象 適 格 性 ' を 問 う《訴 訟 要 件》 の こ と で あ 1) る 。 伝 統 的 に 裁 判 所 は、 こ の 処 分 性 の 有 無 に つ い て、 行 政 活 動 の う ち、 「直 接 国 民 の 権 利 義 務 を 形 成 し ま た は そ の 範 囲 を 確 定 す る こ と が 法 律 上 認 め ら れ て い る も の」 (最 判 昭 和 三 九 年 一 〇 月 二 九 日: 民 集 一 八 巻 八 号 一 八 〇 九 頁: 以 下「三 九 年 最 判」 ) で あ る か 否 か、 す な わ ち 行 政 法 総 論 で 言 う と こ ろ の「行 政 行 為 (行 政処分) 」に当たるか否かを念頭において判断してきた (以下「処分性公 ( 2) 式 」) 。   し か し な が ら、 平 成 一 六 年 行 訴 法 改 正 前 後 か ら、 最 高 裁 は、 「処 分 性」 を 拡 大 的 に 解 釈 し、 伝 統 的 に 行 政 行 為 と は み な さ れ て こ な か っ た 行 政 活 動 に 関 し て ま で も、 処 分 性 を 広 く 認 め る よ う に な っ て き て い る (以 下「処 分 性 拡 大 《 論    説 》

処分性拡大判例の系譜

――

土地利用計画関係の判例を中心に

 

  

 

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3) 例 」) 。 こ う い っ た 判 例 動 4) 向 に 対 し て は、 裁 判 所 が 従 来 か ら の 処 分 性 を め ぐ る 硬 直 的 な 解 釈 態 度 を 改 め、 「抗 告 訴 訟」を通じた市民の救済ニーズに柔軟に応えるものとして、積極的に評価する学説がある。もっとも他方で、裁判 所 は 無 理 に 処 分 性 を 拡 大 す る の で は な く、 む し ろ 平 成 一 六 年 行 訴 法 改 正 に よ っ て 強 調 さ れ た、 「当 事 者 訴 訟」 (行 訴 法四条) を通じた救済を活用すべきとして、消極的に評価する学説も根強い。   ところで、筆者はこれまで、処分性拡大判例に関して、その「判例法理」を解明するとともに、その判例法理の も つ、 「行 政 法 総 論」 に 関 わ る 理 論 的 含 意 を 探 る と い う 問 題 意 識 に 立 っ て、 一 連 の 研 究 を し て き た。 具 体 的 に は、 処分性拡大判例に関して、各判例の“解釈手法”がいかなるものであって、かつ、その解釈手法の背景には「行政 行為」をめぐるどのような“認識枠組み”があるのかといった点に関心を抱いて、研究を続けてき ( 5) た 。   なぜこのような研究を続けてきたかというと、そもそも処分性拡大判例をめぐって賛否両論をたたかわせる以前 の問題として、一連の処分性拡大判例が「解釈手法」としてどのようなかたちで「整合的」に理解することができ るの ( 6) か 、学説ではいまだ十分に議論が尽くされていないのではないかと考えたからであ ( 7) る 。もちろんこの点につい ては、不服のある行政活動に関して、行政訴訟を提起しようとする市民の「予測可能性」の保障という観点からし て も、 学 説 上 解 明 が 求 め ら れ て い る 解 釈 学 的 問 題 で あ る は ず で あ 8) る 。 と り わ け、 処 分 性 の あ る 行 政 活 動 (= 行 政 行 為) は、 取 消 訴 訟 の「排 他 的 管 轄」 (行 訴 法 三 条 二 項) や「出 訴 期 間」 (同 法 一 四 条) に 服 す る ―― 行 政 法 総 論 で 言 い 換えると「公定力」や「不可争力」の問題――とされていることからしても、その予測可能性の欠如が市民へとも たらす現実的な不利益 (裁判救済の拒絶) は、看過できないものがあろ ( 9) う 。   さらに筆者は、処分性拡大判例を通じても、最高裁は伝統的な「処分性公式」そのものについては放棄しておら ず、むしろその公式の範囲内で――すなわち係争行為を行政行為と認めた上で――処分性を肯定しているのではな

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い か と の 仮 説 に 立 っ て い 10) る 。 そ し て こ の 仮 説 に 立 つ と す る と、 処 分 性 拡 大 判 例 を め ぐ っ て は、 「行 政 行 為」 な る も の を い か に し て 認 識 す る の か と い う、 行 政 法 総 論 に 関 わ る 理 論 的 問 題 が 出 て く る よ う に 思 わ れ る。 し か し 学 説 で は、処分性拡大判例について、あくまでも行政救済法に関わる例外的な解釈問題として論ずるにとどまる議論がほ とんど ( 11) で 、少なくとも行政法総論の「認識枠組み」の変更を迫りうる問題として検討しようとする議論は――管見 の限りではあるが――見受けられな い ( 12) 。他の学問分野では、しばしば、従来の理論では説明できない事態が生じた ときに、その事態をも包摂して説明しうる新たな理論を構築しようとする試みが出てくる。処分性拡大判例が蓄積 してきた現在、行政法学においてもこの種の試みが必要となってきているのではないだろうか。   以上の問題意識から、筆者はこれまで処分性拡大判例研究を続けてきたのであるが、本稿では、従前の研究を踏 まえつつも、今度は眼を「過去」に転じて、処分性拡大判例の〈系譜〉をたどるという趣旨の研究をおこなうこと と し た い。 す な わ ち、 一 連 の 処 分 性 拡 大 判 例 が 出 さ れ る 以 前 に お い て も、 す で に 処 分 性 を 肯 定 す る 判 例 (以 下「処 分 性 肯 定 判 例」 ) が あ っ た と こ ろ で あ る。 本 稿 で は、 こ れ ら 処 分 性 肯 定 判 例 の な か に あ る、 処 分 性 拡 大 判 例 の「萌 芽」を確認することを目的とした考察をする。そしてこの考察を通じて、処分性拡大判例がどの程度まで、判例法 上「根付いた」現象であるのかを確認し、今後の処分性をめぐる判例動向を予測するに当たっての一助とすること としたい。   もっとも、一口に処分性肯定判例といっても、下級審裁判例を含めて数多く存在する。筆者の能力や紙幅の都合 からして、これらの判例を網羅的に、かつ、本稿のみでもって十分に検討し尽くせるものではない。それゆえ本稿 で は、 考 察 対 象 を 限 定 し て、 「土 地 利 用 計 画」 を め ぐ っ て 処 分 性 が 肯 定 さ れ た、 次 の 三 つ の「最 高 裁 判 決」 を 採 り 上げることとする。 すなわち、 「土地区画整理組合設立認可」 の処分性を肯定した最判昭和六〇年一二月一七日 (民

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集 三 九 巻 八 号 一 八 二 一 頁、 「六 〇 年 最 判」 ) 、「市 町 村 営 土 地 改 良 事 業 施 行 認 可」 の 処 分 性 を 肯 定 し た 最 判 昭 和 六 一 年 二 月 一 三 日 (民 集 四 〇 巻 一 号 一 頁、 「六 一 年 最 判」 ) 、「第 二 種 市 街 地 再 開 発 事 業 計 画 決 定」 の 処 分 性 を 肯 定 し た 最 判 平 成 四年一一月二六日 (民集四六巻八号二六五八頁、 「四年最判」 ) の三判決 (以下併せて「三最判」 ) である。   三最判を選んだ理由は、従来から学説上、これらの判例のなかに処分性拡大判例の「兆候」が見られるとの指 摘 ( 13) や、これらの判例をもって処分性拡大判例の「先駆的判断 ( 14) 例 」と評価する指摘があるところによる。もっともこれ らの指摘では、具体的にどのような点が兆候であり先駆であると言えるのかに関して、十分な議論が尽くされてい るとは思われない。それゆえ本稿を通じて、あらためて三最判について、処分性拡大判例との比較のもと、掘り下 げて考察していく意義があるように思われる。また別の理由として、三最判については、処分性拡大判例に比較的 に「近い」時期の処分性肯定判例であるので、処分性拡大判例の萌芽を確認しやすいのではないかといった見通し も あ る。 さ ら に、 三 最 判 い ず れ も、 「行 政 計 画 (土 地 利 用 計 15) 画 ) 」 を め ぐ っ て 処 分 性 が 争 わ れ て い る と こ ろ か ら、 相 互の判決内容につき比較分析をする作業が相対的に容易であり、その結果として、処分性肯定判例としての特徴を 引き出しやすいのではないかといった見込みもある。   以上、かなり便宜的な理由から、本稿では「三最判」を選ぶわけであるが、この対象選択の限界については、本 稿を締めくくる際にあらためて確認することとして、さしあたり本稿で三最判を分析する視角を提示しておこう。 本稿では、まずもって三最判相互間の判例法上の論理的な位置づけ、ないしは、相互関係がいかなるものであるの か と い う 視 角 (①) を 中 心 に 分 析 し て い く。 と い う の も、 処 分 性 を 肯 定 す る 三 最 判 の 議 論 は そ れ ぞ れ 異 な っ て お り、その論理的差異を「比較」を通じて浮き彫りにする作業が、処分性拡大判例の「萌芽」の確認という所期の考 察目的を達成するために役立ちうると思われるからである。

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  とはいえ、三最判の相互関係を確認するのみでは、これらの判例を理解するのに十分ではない。なぜなら、三最 判 に 先 立 っ て は、 「土 地 区 画 整 理 事 業 計 画 決 定」 の 処 分 性 を《否 定》 し た、 い わ ゆ る「青 写 真」 判 決 (最 判 昭 和 四 一 年 二 月 二 三 日: 民 集 二 〇 巻 二 号 二 七 一 頁、 「四 一 年 最 16) 判 」) が あ る。 ま た 三 最 判 の 後 に は、 四 一 年 最 判 を 明 示 的 に 判 例 変 更 し、 同 決 定 の 処 分 性 を《肯 定》 し た 最 高 裁 判 決 (最 判 平 成 二 〇 年 九 月 一 〇 日: 民 集 六 二 巻 八 号 二 〇 二 九 頁、 「二 〇 年 最 17) 判 」) が あ る。 そ れ ゆ え に、 三 最 判 の 判 例 法 上 の 意 義 を 理 解 す る に 当 た っ て は、 少 な く と も こ れ ら 前 後 の 判 例 と の 関 連 性 に つ い て も 視 野 に 入 れ た 上 で、 研 究 し て い か な け れ ば な ら な い だ ろ う。 そ こ で 本 稿 で は、 三 最 判 に つ き、 四 一 年 最 判 か ら 二 〇 年 最 判 へ と 到 る、 「土 地 利 用 計 画」 を め ぐ る 処 分 性 判 例 の な か で の 位 置 づ け と い う 分 析 視 角 (②) を も 適 宜 組 み 入 れ て 検 討 し て い く こ と と し た い。 さ ら に、 処 分 性 拡 大 判 例 の 萌 芽 の 確 認 と い う 本 稿 の 考 察 目 的 か ら す れ ば、 「行 政 計 画」 を め ぐ る 三 最 判 が、 行 政 計 画 以 外 の 行 為 形 式 を め ぐ っ て 処 分 性 が 争 点 と な っ た「処 分 性 拡 大 判 例 一 般」 と の 関 係 で、 ど の よ う に 位 置 づ け ら れ う る の か (③) と い う 分 析 視 角 を も 適 宜 織 り 交 ぜ て い く 必要がある。   以 上 の こ と か ら、 本 稿 で は、 三 最 判 に つ い て、 ① の 視 角 (い わ ば 内 在 的 な 視 角) を 中 心 に 据 え つ つ、 ② ③ の 視 角 (い わ ば 外 在 的 な 視 角) を も 適 宜 踏 ま え て 分 析 し て い く と い う こ と に な る。 な お 本 稿 で は、 こ れ ら 三 つ の 視 角 か ら 三 最判を分析するに当たり、従来からの筆者の処分性拡大判例研究を踏まえて、三最判の“解釈手法”と、その解釈 手 法 を 支 え る“認 識 枠 組 み” が い か な る も の か と い う、 「二 段 構 え」 の 分 析 方 法 を 用 い る こ と と す る。 と い う の も、この分析方法を用いることによって、処分性拡大判例をめぐる従前の筆者の考察内容と、処分性肯定判例をめ ぐる本稿の考察内容との'接続'が可能となり、その結果として、処分性肯定判例と処分性拡大判例との間にある 異同を、効率よく浮き彫りにすることができるようになると思われるからである。

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  以下本稿の具体的な構成であるが、第二章では三最判の概要を紹介した上で、それぞれの最判の解釈の筋道を考 察する。ついで第三章では、三最判をめぐる学説の議論を手掛かりに、それぞれの解釈手法の特徴を解明するとと もに、その解釈手法の背景にある認識枠組みにまで考察を展開していく。そして第三章では、これらの解釈手法・ 認識枠組みを踏まえながら、三最判につき、上掲①②③の分析視角を踏まえた考察をしていく。さいごに第四章で は、以上の考察結果を整理するとともに、今後の研究課題を述べる。 第二章   解釈の筋道   本章では三最判の事実の概要と判旨を整理す る ( 18) 。それとともに、各判決の解釈の筋道をたどることを通じて、次 章以下の考察に当たっての手掛かりとなるポイントを浮かび上がらせる。 第一節   六〇年最判   被 上 告 人 大 阪 市 長 (被 告、 被 控 訴 人) は、 土 地 区 画 整 理 組 合 (以 下「組 ( 19) 合 」) の 設 立 を 認 可 (以 下「設 立 認 可」 ) し た ( 20) 。 上 告 人 (原 告、 控 訴 人) は、 こ の「組 合 施 行」 の 土 地 区 画 整 理 事 業 (以 下「区 画 整 21) 理 」) の 施 行 地 区 内 の 宅 地 所 有者であって、 設立認可の結果、 組合員とされた者である。 上告人は、 組合設立が土地区画整理法 (以下 「整理法」 ) に違反して無効だか ら ( 22) 、それを前提とする設立認可も無効であると主張し、その無効確認訴訟等を提起し た ( 23) 。一、 二審判決とも、四一年最判の判断枠組みを踏襲し、設立認可の処分性を認めなかった が ( 24) 、上告を受けた最高裁はそ の処分性を認めた (ただし請求は認めず上告棄却) 。以下判旨。   ⑴ 設 立 認 可 は、 単 に 組 合 の 事 業 計 画 を 確 定 さ せ る (整 理 法 二 〇 条、 二 一 条 三 項) だ け で な く、 施 行 地 区 内 の 宅 地 所

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有 者 等 を す べ て 強 制 的 に そ の 組 合 員 と す る 公 法 上 の 法 人 た る 組 合 を 成 立 せ し め (同 法 二 一 条 四 項、 二 二 条、 二 五 条 一 項) 、これに区画整理の施行権限を付与する効力をもつものだから (同法三条二項、一四条二項) 、処分性を有する。   ⑵設立認可により組合が成立すると、組合の業務は組合役員たる理事により執行され (同法二八条) 、また重要事 項に関しては総会による議決を必要とするところ (同法三一条) 、組合員は、組合役員及び総代の選挙権、被選挙権 及びその解任請求権 (同法二七条三項、七項、三七条一項、四項) 、総会及びその部会の招集請求権 (同法三二条三項、 三 五 条 三 項) 、 総 会 及 び そ の 部 会 に お け る 議 決 権 (同 法 三 四 条 一 項、 三 五 条 三 項) 、 組 合 の 事 業 又 は 会 計 の 状 況 の 検 査 請 求 権 (同 法 一 二 五 条 二 項) 、 総 会、 そ の 部 会 及 び 総 代 会 に お け る 議 決 等 の 取 消 請 求 権 (同 条 八 項) 等 の 権 利 を 有 す るとともに、組合の事業経費の分担義務を負う (同法四〇条) 。このことから、組合設立に伴い、法律上当然に右の ような組合員たる地位を取得せしめられることになる宅地所有者等は、設立認可の効力を争うにつき「法律上の利 益」を有する。そして上告人は、みずからに対する換地処分等を否定しようとしている者であるから、設立認可無 効確認訴訟につき原告適格を有する。   ⑶四一年最判は、事業計画を確定させるにとどまる事案であって、そうではない本件とは事案を異にする。   解 釈 の 筋 道 を た ど ろ う。 ⑴ は、 「設 立 認 可」 が、 そ れ に よ っ て 宅 地 所 有 者 等 を 強 制 的 に そ の 組 合 員 と す る 組 合 を 成立させ、当該組合に対し区画整理の施行権限を付与する効力をもつゆえに、処分性があるとす る ( 25) 。また⑵は、設 立認可の効果が組合員に対して及ぼす影響を論じ、上告人につき無効確認訴訟の原告適格を肯定す る ( 26) 。ここで注目 すべきは⑴と⑵の関係である。判決理由からすると、⑴をもって処分性を裏付ける議論が終わっているようにも読 め、⑵はあくまでも原告適格を裏付ける議論にすぎないように読める。しかし⑵は、処分性を裏付けるための追加

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的な論拠としても読める可能性があ る ( 27) 。したがって、⑴と⑵を論理的にどのように理解するかは、本判決の解釈手 法の特徴を探る観点からも重要なポイントとなるのではないかと思われる。 第二節   六一年最判   訴 外 八 鹿 町 は、 町 営 の 土 地 改 良 事 業 (以 下「改 良 事 業」 ) を 計 画 し、 土 地 改 良 法 (以 下「土 改 法」 ) に 基 づ い て、 被 上 告 人 兵 庫 県 知 事 (被 告、 被 控 訴 人) に 対 し、 同 計 画 に 係 る 施 行 認 可 の 申 請 を し た ( 28) 。 被 上 告 人 は 申 請 を 適 当 と す る 旨 を 決 定 し 公 告 し た。 対 象 地 区 の 土 地 所 有 者 で あ る 上 告 人 (原 告、 控 訴 人) は、 こ の 決 定 に つ き、 土 改 法 に 基 づ く 異 議 の 申 出 を し た。 被 上 告 人 は 申 出 を 棄 却 す る 決 定 ( 29) を し た 後、 事 業 の 施 行 を 認 可 し (以 下「施 行 認 可」 ) 公 告 し た。 上 告 人 は、 事 業 の 違 法 を 主 張 し、 施 行 認 可 取 消 訴 訟 等 を 提 起 し た。 一、 二 審 判 決 と も、 四 一 年 最 判 の 判 断 枠 組 み を 踏襲し、施行認可の処分性を認めなかった。上告を受けた最高裁はその処分性を認め た ( 30) 。以下判旨。   ⑴ 土 改 法 は、 国 営 又 は 都 道 府 県 営 (以 下「国 県 営」 ) 改 良 事 業 の 事 業 計 画 決 定 (以 下「計 画 決 定」 ) に つ き、 事 業 計 画書縦覧期間満了日の翌日から起算して一五日以内の異議申立て期間を定めるとともに、その申立てに対し農林水 産大臣または都道府県知事は、同縦覧期間満了後六〇日以内に決定を出さねばならないとする (土改法八七条六項、 七 項) 。 さ ら に 計 画 決 定 に 不 服 が あ る 者 は、 こ の 異 議 申 立 て に つ い て の 決 定 に 関 し て の み、 取 消 訴 訟 を 提 起 し う る との規定もある (同法八七条一〇項) 。   ⑵ 計 画 決 定 が あ る と 事 業 施 行 が 決 定 さ れ 公 告 さ れ る (同 法 八 七 条 五 項) 、 公 告 後 で は 土 地 の 形 質 変 更 等 が あ っ て も 損 失 補 償 が 不 要 と な る (同 法 一 二 二 条 二 項) 、 事 業 計 画 が 異 議 申 立 手 続 を 経 て 確 定 し た と き は 工 事 着 手 の 運 び と な る (同 法 八 七 条 八 項) こ と に 照 ら せ ば、 計 画 決 定 は 行 政 処 分 と し て の 性 格 を 有 す る。 ⑴ の 異 議 申 立 て に 係 る 規 定 は、 計

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画 決 定 が 行 政 処 分 で あ り、 行 政 不 服 審 査 法 (以 下「行 審 法」 ) の 対 象 と な る こ と を 前 提 に、 同 法 の 特 則 を 定 め る も の である。また同じく取消訴訟に係る規定も、計画決定が行政処分であり、取消訴訟の対象となることを前提に、行 訴法一〇条二項でいう裁決主義を採用するものである。   ⑶ 改 良 事 業 は、 「国 県 営」 か「市 町 村 営」 か に よ っ て、 特 別 そ の 性 格 を 異 に し な い。 市 町 村 営 事 業 に お い て、 国 県営事業における「計画決定」に対応するのは、市町村の申請に基づき都道府県知事が行う「施行認可」である。 と い う の も、 施 行 認 可 が あ る と 事 業 施 行 が 認 可・ 公 告 さ れ (同 法 九 六 条 の 二 第 七 項) 、 公 告 後 で は 土 地 の 形 質 変 更 等 が あ っ て も 損 失 補 償 が 不 要 と な り (同 法 一 二 二 条 二 項) 、 さ ら に 施 行 認 可 が あ っ た と き は 工 事 着 手 の 運 び と な る か ら で あ る。 よ っ て「計 画 決 定」 と「施 行 認 可」 と は、 一 連 の 改 良 事 業 手 続 の 中 で 占 め る 位 置・ 役 割 を 同 じ く す る か ら、施行認可も計画決定同様、行政処分としての性格を有する。それゆえ、計画決定につき争訟規定を置く土改法 は、施行認可の処分性をも認めるものである。   ⑷ただし土改法上、施行認可については、計画決定とは異なり、明示の争訟規定が設けられていない。これは立 法政策上、施行認可の先行手続として、認可申請を適当とする旨の知事の決定について、利害関係人の異議の申出 を認める一方、施行認可については重ねて行審法による不服申立てをなしえないとした結果、施行認可に関する取 消訴訟については裁決主義を採用する余地がなくなったという趣旨であって、施行認可の処分性を否定する趣旨で はない。   ⑸四一年最判は、整理法に基づく計画決定に関するもので、本件とは事案を異にする。   解 釈 の 筋 道 を た ど る と、 ⑴ は 土 改 法 上、 「国 県 営」 の 改 良 事 業 に 関 す る 計 画 決 定 に つ い て、 異 議 申 立 て で あ れ 取

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消 訴 訟 で あ れ、 争 訟 を 認 め る 一 連 の 規 定 (以 下「争 訟 規 定」 ) が あ る こ と を 指 摘 す る ( 31) 。 つ い で ⑵ は、 計 画 決 定 が さ れ か つ 異 議 申 立 て も 退 け ら れ る と、 工 事 が 実 施 さ れ て し ま う こ と な ど を 理 由 に、 「計 画 決 定」 の 処 分 性 を 肯 定 し、 ⑴ の争訟規定の趣旨もこの点にあるとする。さらに⑶は、⑴⑵で述べてきた「国県営」であれ、あるいは、本件事案 で 問 題 と な っ た「市 町 村 営」 で あ れ、 い ず れ の 改 良 事 業 も そ の 性 格・ 手 続 が 同 じ こ と を 指 摘 す る ( 32) 。 そ し て、 「国 県 営」 事 業 に お け る「計 画 決 定」 と、 「市 町 村 営」 事 業 に お け る「施 行 認 可」 と で は、 改 良 事 業 を め ぐ る 一 連 の 手 続 の中で占める位置・役割が同じことを指摘する。それゆえに、 「計画決定」に処分性が肯定される以上は、 「施行認 可」にも処分性が肯定されるべきと結論づける。⑷は、施行認可に関して明示の争訟規定がないことをもって、施 行認可の処分性を否定しえないとする議論である。   ここで注目すべきは、全体の議論の流れである。すなわち、まずは⑴⑵で国営事業における「計画決定」の処分 性を肯定し A、つぎに⑶でこの「計画決定」と市町村営事業における「施行認可」とを同一視し、最終的に「施行 認可」の処分性を肯定する Bという流れである。六一年最判の解釈手法の特徴を理解するに当たっては、全体の流 れのなかで、 A Bそれぞれがもつ論理的な意義を解明することが必要となってこよう。また判決理由中、附随的と も読める⑷が、 A Bとの関連でどのような意義をもつのかについても確認しなければならない C。 第三節   四年最判   上 告 人 (被 告、 被 控 訴 人) 大 阪 市 は、 都 市 再 開 発 法 (以 下「都 開 法 ( 33) 」) に 基 づ き、 第 二 種 市 街 地 再 開 発 事 業 (以 下 「二種事 ( 34) 業 」) 計画を決定し (以下 「計画決定」 ) 公告した。 施行地区内の土地所有者らである被上告人 (原告、 控訴人) は、計画決定の違法を主張し、取消訴訟を提起し た ( 35) 。一審判決が、四一年最判の論理を踏襲して、計画決定の処分

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性 を 認 め な か っ た の に 対 し、 二 審 判 決 (大 阪 地 判 昭 和 六 一 年 三 月 二 六 日: 行 集 三 七 巻 三 号 四 九 九 頁) は、 そ の 処 分 性 を 認め た ( 36) 。ここでその理由を整理しておこう。   二審判決は、まず一般論として、処分性のある行政活動につき、特定の私人に対する即時最終的な権利変動の形 成を内容とする場合のほかにも、具体的な効果があり、かつ、救済する事件としての成熟性がある場合にも認めら れうるとして、処分性を柔軟に解釈すべきことを主張す る ( 37) 。その上で、本件事案につき、都開法上の計画決定は土 地 収 用 法 (以 下「収 用 法」 ) 上 の 事 業 認 定 の 場 合 と 同 様、 そ の 効 果 と し て 土 地 所 有 権 等 の 消 滅 が 成 就 す る こ と が ほ ぼ 確実であるから、具体的な効果――この「効果は私権の即時消滅という最終的変動ではないが、いわば収用裁決を 条 件 事 実 と す る 停 止 条 件 (付 款) の 設 定 に 似 た 法 律 効 果 の 発 生 で あ る と い う べ」 き で あ る と い う ―― が あ る と 言 え るとする。   また二審判決は、仮に「権利取得裁 ( 38) 決 」といった後続行政処分段階で、はじめて計画決定の違法を争わせること にすると、計画決定の違法を争わない土地所有者等の地域をめぐって、明渡しや取り毀し工事が大部分完了してし まうという事態が生じることとなるという。そしてこの事態が生じてしまうと、たとえ取消訴訟を通じて計画決定 の 違 法 が 認 め ら れ る 場 合 で あ っ て も、 「事 情 判 決」 (行 訴 法 三 一 条) に よ る 決 着 が な さ れ、 そ の 結 果、 違 法 を 主 張 す る土地所有者等の泣き寝入りを招いてしまうおそれがあるとい う ( 39) 。したがってこういった人権保障の欠如を踏まえ るなら、計画決定段階で争わせる事件としての成熟性もあるとす る ( 40) 。上告を受けた最高裁も計画決定の処分性を認 めた。以下判旨。   ⑴都開法 (五一条一項、五四条一項) は、市町村施行の二種事業の場合、設計の概要につき都道府県知事の認可を 受けて事業計画を決定し、これを公告せねばならないとする。そして二種事業については、収用法三条各号の一に

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規 定 す る 事 業 に 該 当 す る も の と み な し、 同 法 の 規 定 を 適 用 す る も の と し (都 開 法 六 条 一 項、 都 市 計 画 法(以 下「都 計 法」 ) 六 九 条) 、 設 計 の 概 要 の 認 可 を も っ て、 収 用 法 二 〇 条 に よ る 事 業 認 定 に 代 え る と と も に、 計 画 決 定 の 公 告 を も っ て、 同 法 二 六 条 一 項 に よ る 事 業 認 定 の 告 示 と み な す も の と す る (都 開 法 六 条 四 項、 同 法 施 行 令 一 条 の 六、 都 計 法 七〇条一項) 。   ⑵ し た が っ て 計 画 決 定 は、 そ の 公 告 日 か ら、 収 用 法 上 の 事 業 認 定 と 同 一 の 法 律 効 果 を 生 ず る の で (収 用 法 二 六 条 四 項) 、 市 町 村 は そ の 公 告 に よ り、 同 法 に 基 づ く 収 用 権 限 を 取 得 す る と と も に、 そ の 結 果 と し て、 施 行 地 区 内 の 土 地所有者等は、特段の事情のない限り、自己の所有地等につき収用されるべき地位に立たされることとなる。   ⑶ し か も こ の 場 合、 施 行 地 区 内 の 宅 地 所 有 者 等 は、 契 約 又 は 収 用 に よ り 施 行 者 (市 町 村) に 取 得 さ れ る 宅 地 等 に つき、公告日から起算して三〇日以内に、その対償の払渡しを受けることとするか又はこれに代えて建築施設部分 の譲受け希望の申出をするかの選択を余儀なくされる (都開法一一八条の二第一項一 ( 41) 号 ) 。   ⑷そうであるとすると、計画決定は、施行地区内の土地所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものであっ て、処分性を有する。   ⑸四一年最判は本件と事案を異にする。   解 釈 の 筋 道 を た ど ろ う。 ま ず ⑴ は、 都 開 法 上、 二 種 事 業 に 対 し て は 収 用 法 が 適 用 さ れ る こ と か ら、 都 開 法 上 の 「計 画 決 定」 と 収 用 法 上 の「事 業 認 定」 と を 同 一 視 す る ( 42) 。 つ い で ⑵ は、 こ の 同 一 視 を 根 拠 と し て、 同 一 の 法 律 効 果 が生じるとする。いわば、どちらの行為形式であれ、それがなされることによって、市町村をして「収用権限」を 取得せしめることとなり、また土地所有者等に対して、所有地等を「収用されるべき地位」に立たせる効果を生じ

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せ し め る こ と と な る と い う の で あ る。 さ ら に ⑶ は、 計 画 決 定 に よ っ て、 宅 地 所 有 者 等 が、 「対 償 の 払 渡 し」 か「建 築施設部分の譲受け」かの“選択を迫られる地位”に置かれることになるとする。以上のことから、⑷は、計画決 定には土地所有者等に対する法的効果があって、処分性が肯定されるとする。   ここで注目すべきは、やはり全体の議論の流れである。すなわち、まず⑴⑵では「計画決定」と「事業認定」と が同一視されて「収用権限」が導出され A、ついで⑵ではこの権限を媒介にして「収用されるべき地位」が導き出 される B。この点似たような解釈の筋道が六一年最判でも採られているところであり、またそれゆえにこそ、四年 最判でも、全体の流れのなかで、 A Bそれぞれがどのような意義をもち、また両者を媒介する論理がいかなるもの で あ る の か を 理 解 す る こ と が 重 要 な ポ イ ン ト と な ろ う。 さ ら に ⑶ ⑷ で は、 「収 用 さ れ る べ き 地 位」 と な ら ん で、 残 留転出の“選択を迫られる地位”を論拠に処分性が肯定されている Cところ、これら両地位論が互いにどのような 関係にあるのかについても問われなければならないだろう。 第四節   小括   以上、三最判を整理紹介した上で、それぞれの解釈の筋道をたどり、次章での考察に当たっての手掛かりとなる ポイントをいくつか挙げてきた。これらのポイントに関しては、次章でさらに詳しく検討していくこととして、こ こ で は 三 最 判 の 共 通 点 と し て、 「四 一 年 最 判 と の 関 連 性」 に 関 し て も 留 意 し て お き た い。 す な わ ち 三 最 判 が、 い ず れも四一年最判を堅持しつつも、しかしそれとは「事案が異なる」という論理でもって、処分性を肯定している点 であ る ( 43) 。それゆえに、三最判がどのような解釈手法を通じて、四一年最判とは異なった議論をしているのかという 点についても、あらためて検討せねばならないだろう。

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  また、そもそも三最判は、三九年最判の「処分性公式」の枠内で処分性を肯定している点でも共通している。言 い換えれば、土地区画整理法の「設立認可」であれ、土地改良法の「施行認可」であれ、都市再開発法の「計画決 定」 で あ れ、 い ず れ の 行 為 形 式 に 関 し て も、 「行 政 行 為」 ――「直 接 国 民 の 権 利 義 務 を 形 成 し ま た は そ の 範 囲 を 確 定することが法律上認められているもの」――と認められた上で、処分性が肯定されているのであ る ( 44) 。もっとも三 最 判 で は、 処 分 性 公 式 へ の 当 て は め に 至 る、 あ る い は、 行 政 行 為 と 認 め ら れ る に 至 る 論 証 過 程 が 異 な る の で あ っ て、この点の意義についても解明せねばならない。そのためには、これら三最判がどのような'解釈手法'を採用 し て い る の か と い う 観 点 か ら の み な ら ず 、 こ れ ら 三 最 判 が い か な る ' 認 識 枠 組 み ' の も と 、 係 争 行 為 を 「 行 政 行 為 」 と認めたのかという観点からも検討を進めていく必要がある。 第三章   認識枠組み   本章では、三最判それぞれの解釈手法としての特徴を分析するとともに、それらの解釈手法の背景にある認識枠 組みについても考察していく。なおこれらの検討に当たっては、三最判をめぐる従来の学説の議論を踏まえるとと もに、第一章でも指摘した三つの分析視角、すなわち①三最判間の相互分析、②四一年最判から二〇年最判へとい う流れのなかへの三最判の位置づけ、③三最判と処分性拡大判例との関連性に配慮することとしたい。 第一節   六〇年最判   まず原田尚 彦 ( 45) 氏は、 《組合施行》事業における「設立認可」が、 《行政庁・公共団体施行》事業における「計画決 定」と、ほぼ同次元にある手続であることを踏まえつ つ ( 46) 、四一年最判の論理に従うなら、六〇年最判の事案でも、

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仮換地指定や換地処分等の具体的な行政処分段階で争えばよいということ で ( 47) 、設立認可を争うのは時期尚早とみる の が 自 然 な 解 釈 で は な か っ た か と い う ( 48) 。 実 際 に も、 一、 二 審 判 決 で は こ の「自 然 な」 解 釈 が 採 ら れ た わ け だ が、 そ れにもかかわらず、最高裁で設立認可の処分性が認められた論拠について、原田氏は次のように論ずる。六〇年最 判は、四一年最判を正面から否定する論拠、すなわち設立認可段階で紛争が成熟しており、その段階で訴訟を通じ て争わせるべきという論拠を採ったのではなく、むしろ設立認可によって強制的に組合員とされ、組合費負担をは じめとする様々な権利義務を負わされるという意味での法的地位の変動が生ずるという論拠を採った、と。   つ ぎ に 石 川 善 則 ( 49) 氏 も、 設 立 認 可 が 計 画 決 定 と ほ ぼ 同 じ 手 続 段 階 で あ る の に、 そ の 処 分 性 が 肯 定 さ れ た 理 由 と し て、設立認可の場合は権限をもった「施行主体」が成立するとともに、権利とされつつも――その行使を怠ること により生ずる不利益の甘受を余儀なくされるという意味では――義務の側面をも持つ、組合員たる「法的地位」が 強制的に生じてしまうことに着目する。そしてこれらのことから、設立認可により個人の具体的な権利義務が変動 していると結論づけ る ( 50) 。もっとも、設立認可によって特定の組合員に不利益が生じるとしても、それが具体化され るのは仮換地指定や換地処分等の段階であるから、これら後続行政処分段階で争えばよいとの指摘もあるが、石川 氏は、組合員の諸権利を定めることにより組合員の地位を保護しようとした整理法の趣旨に沿わないとして反論す る。   以上の原田・石川両氏の議論、さらには前章で指摘したポイントを踏まえながら、六〇年最判の解釈手法の特徴 を検討していこう。思うに、判決理由⑵は原告適格の一環としてのみ議論しているようにも読める が ( 51) 、やはり間接 的にではあれ、処分性にも関わる判示部分とも理解すべきではないだろう か ( 52) 。というのも、強制的にその組合員と さ せ ら れ て し ま う と は い え ( 53) 施 行 主 体 た る 組 合 の 成 立 の み を も っ て、 ま た 設 立 認 可 の 法 的 性 質 が 形 成 的 な「設 権 処

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分」 と 言 え る と は い え ( 54) 施 行 権 限 の 付 与 の み を も っ て ―― さ ら に は こ れ ら 組 合 の 設 立 及 び 権 限 の 付 与 の 両 者 の み を もって――宅地所有者等の法的地位の変動を裏付けるという議論は、あまりにも一般的・抽象的な権利義務の変動 要素に着目して処分性を肯定してしまっているように思われるからである。それゆえ、本判決が四一年最判や三九 年最判を変更していないことを踏まえると、組合役員選挙権や組合経費分担義務等の個別具体的な権利義務の変動 が生じることをも、文脈上黙示的・先取り的に踏まえた上で、宅地所有者等に係る法的地位の変動を認めているも のとみるのが妥当であると思う。   さらに、以上を踏まえた上で、六〇年最判があくまでも「設立認可」という一つの行為形式に着目して、かつ、 その根拠となった法律規定を素材としながら、法的地位の変動、すなわち行政行為としての法的効果を認めようと する解釈手法を採用していることにも留意すべきだと考え る ( 55) 。というのも、理論上、本判決の事案で処分性を肯定 す る と し て も、 後 に 紹 介 す る 六 一 年 最 判 や 四 年 最 判 の 解 釈 手 法 の よ う に、 《後 続 す る》 行 政 処 分 ―― 例 え ば「仮 換 地指定」や「換地処分」――を待つまでもなく、設立認可段階で紛争が成熟しているという論拠でもって も ( 56) 、ある い は 、《 類 似 す る 》 行 政 処 分 ― ― 例 え ば 収 用 法 上 の 「 事 業 認 定 」 ― ― と の 間 に お い て 、 紛 争 の 形 態 が 変 換 可 能 に な っ て い る と い う 論 拠 で も っ て も ( 57) 、 そ の「肯 定」 と い う 結 論 を 引 き 出 し 得 る 余 地 ( 58) が あ っ た は ず だ か ら で あ る ( 59) 。 そ れ ゆ え、 こ の よ う な か た ち で「他 の 行 政 行 為 と の 関 係」 を 踏 ま え て 処 分 性 を 肯 定 せ ず に、 む し ろ 係 争 行 為“そ の も の” の問題として処分性を肯定したという点にこそ、六〇年最判の判例法理としての意義、すなわち伝統的な「行為形 式準拠主義」の認識枠組みに基づいて処分性を解釈しようとする最高裁の姿勢を見て取るべきではなかろう か ( 60) 。

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第二節   六一年最判   本節では、前章で確認した、 A争訟規定の存在等を理由に「計画決定」の処分性を肯定したこと、 B計画決定と 施行認可との類似性を理由に「施行認可」の処分性を肯定したこと、 C施行認可の処分性肯定に対する想定反論に 応答したことの三点を手掛かりとして、六一年最判の解釈手法の特徴を分析するとともに、その背景にある認識枠 組みを探っていきたい。 第一項   学説の理解   例えば島田清次郎 氏 ( 61) は、六〇年最判が公法上の法人を設立させ、それに区画整理の施行権限を付与することを根 拠に処分性を肯定するのに対し、六一年最判が土改法八七条六項、七項及び一〇項にみられる法の規定のしかたを 根拠として処分性を肯定したものと指摘する。また泉德治氏 ( 62) も 、六一年最判と四一年最判との事案の相違にふれる 文脈で、六一年最判ではそれらの明文規定があることが決め手になっていると指摘す る ( 63) 。そのほか学説では、六一 年最判につき、制定法の規定に準拠して処分性を認めたことに力点を置き理解し、しかも「過度の関係条文探 し ( 64) 」 であれ「制定法準拠主 義 ( 65) 」であれ、批判的に論評する例が多 い ( 66) 。もっとも土改法八七条六項、七項及び一〇項は、 あ く ま で も“国 県 営” 事 業 に 係 る「計 画 決 定」 に 関 す る 争 訟 規 定 を 認 め る に 過 ぎ ず、 “市 町 村 営” 事 業 に 係 る「施 行認可」の争訟規定を認めるものではな い ( 67) 。   この点判決理由では、計画決定の処分性が肯定された上で、計画決定と施行認可とが改良事業の一連の手続の中 で占める位置・役割を同じくするがゆえに、後者の処分性も肯定されるとして正当化してい る ( 68) 。すなわち宮崎良 夫 ( 69) 氏によると、六一年最判は、土改法八七条六項、七項及び一〇項という実定法の規定上、国県営事業に係る「計画

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決定」につき処分性が承認されていることを確認した上で、その計画決定と、市町村営事業に係る「施行認可」と が同様の法的性質をもつとの論法でもって、後者の処分性を肯定したと理解しうるのであ る ( 70) 。もっともそうは言っ て も、 一、 二 審 判 決 は、 四 一 年 最 判 を 踏 ま え て、 後 続 行 政 処 分 段 階 で 紛 争 が 成 熟 す る こ と を 論 じ て い た わ け で ( 71) 、 こ の後続行政処分論に関する六一年最判のスタンスをどのように理解するかが問題とな る ( 72) 。   この点中本敏 嗣 ( 73) 氏は、 六一年最判をめぐって、 次のような見方を示す。 まず法的効果について、 ⑴賦課金 (経費) 支 払 義 務 は、 別 途 な さ れ る 賦 課 処 分 の 法 的 効 果 と し て 発 生 す る も の で (土 改 法 九 六 条 の 四、 三 六 条 一 項) 、 施 行 認 可 の 法的効果ではない、⑵施行認可があれば直ちに換地処分が可能となるのではなく、別途の換地計画の策定認可と換 地 処 分 が 必 要 で あ る、 ⑶ 損 失 補 償 が 受 け ら れ な く な る (同 法 一 二 二 条 一 項) 法 的 効 果 は、 具 体 的 に は 県 知 事 の 不 許 可 に よ っ て 発 生 す る の で あ っ て (同 法 一 二 二 条 二 項 但 書) 、 施 行 認 可 の 法 的 効 果 で は な い。 ま た 権 利 救 済 に つ い て も、施行認可の違法を主張する者は、後日手続が進められ、個人の具体的な権利義務に直接変動を与える一時利用 地 指 定 地 処 分 (同 法 五 三 条 の 三) ―― 整 理 法 に お け る「仮 換 地 処 分」 に 対 応 ( 74) ――、 経 費 の 賦 課 処 分 (法 三 六 条) 、 損 失 補 償 に 係 る 不 許 可 処 分 (同 法 一 二 二 条 二 項 但 書) と い っ た 後 続 行 政 処 分 が な さ れ た 段 階 で 争 え る 余 地 が あ る。 し たがって、施行認可段階での取消訴訟というかたちでの権利救済の必要性はないともいえる。もっとも以上の議論 に も か か わ ら ず、 結 論 と し て 中 本 氏 は、 土 改 法 の 規 定 の 仕 方 (同 法 八 七 条 六 項、 七 項 及 び 一 〇 項) か ら す れ ば、 施 行 認可が取消訴訟で争うに足りるものとして処分性が与えられていることは確かなことであるとし、上記の議論は立 法論にとどまる事柄であるとす る ( 75) 。

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第二項   検討   以 上 学 説 が、 六 一 年 最 判 の 理 解 を め ぐ っ て、 全 般 的 に 実 定 法 上 の 明 示 の 争 訟 規 定 (土 改 法 八 七 条 六 項、 七 項 及 び 一 〇 項) の 存 在 を 重 視 し て い る こ と を 明 ら か に し て き た ( 76) 。 そ れ と と も に、 A「計 画 決 定」 段 階 で の 紛 争 の 成 熟 性 の 議論と、 B「計画決定」と「施行認可」との類似性の議論についても重視されている。しかしここで問題は、前章 でも指摘したように、 A Bがどのような関連性をもつのか、また Cの想定反論をどのように理解するのかという点 であろう。いわば、六一年最判の意義を理解するに当たっては、個別部分の解釈の特徴をピックアップするのみで はなく、むしろそれら解釈が全体としてどのような解釈手法によって有機的に組み合わされているのかを理解する 必要があ る ( 77) 。そこで手はじめに、判決理由中に登場してくる各《行為形式》が、判決理由全体のなかでどのように 機能しているのかという点に着目してみたい。   まず紛争の成熟性を問題とする Aでは、行為形式として「計画決定」のみに注目されているように思われるが、 一、 二 審 判 決 で 明 確 に 指 摘 さ れ て い た よ う に、 か つ、 学 説 の な か で も 意 識 さ れ て い る よ う に、 こ こ で は 計 画 決 定 と の 対 応 で、 「一 時 利 用 地 指 定 処 分」 等 の 後 続 行 政 処 分 の 存 在 が 念 頭 に 置 か れ て い る も の と 読 む べ き で あ ろ う。 す な わ ち、 従 来 か ら の 研 究 で 筆 者 が も ち い て き た 用 語 で 言 え ば、 「計 画 決 定」 と「一 時 利 用 地 指 定 処 分 ( 78) 」 等 と の 間 で の 「連 辞 関 係」 が 踏 ま え ら れ、 解 釈 が な さ れ て い る と い う こ と で あ る (以 下「連 辞 的 解 釈 ( 79) 」) 。 こ れ に 対 し て Bで は、 判 決 理 由 か ら も 明 ら か な よ う に、 か つ、 学 説 が 力 点 を 置 い て 理 解 し て い る よ う に、 「計 画 決 定」 と「施 行 認 可」 と の 間 で の 関 係 が 問 題 と な っ て い る。 同 じ く 従 来 か ら の 筆 者 の 用 語 を も ち い て 言 う と、 「計 画 決 定」 と「施 行 認 可」 と の間での「連合関係」が踏まえられ、解釈がなされているということになる (以下「連合的解釈」 ) 。   も っ と も 判 決 理 由 で は、 「連 辞 的 解 釈」 で あ れ「連 合 的 解 釈」 で あ れ、 行 為 形 式 間 の 関 係 の み に 着 目 し て い る わ

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けではない。むしろ連辞的解釈を通じて「計画決定」の処分性を肯定するに当たっては、土改法の争訟規定につい て、 綿 密 に そ の 手 続 の 意 義 が 分 析 さ れ て い る。 ま た、 連 合 的 解 釈 を 通 じ て「施 行 認 可」 の 処 分 性 を 肯 定 す る に 当 た っ て も、 「国 県 営」 事 業 と「市 町 村 営」 事 業 と の 間 で の、 改 良 事 業 と し て の 手 続 の 類 似 性 が、 関 連 法 規 定 を 手 掛 かりに論証されるとともに、この論証に対する反証の余地、施行認可につき争訟規定がないことをめぐっても、あ らかじめ関連法規定に照らして反論されている C。   こ の よ う に 六 一 年 最 判 を め ぐ っ て は、 「連 辞 的 解 釈」 ・「連 合 的 解 釈」 が な さ れ て い る わ け で あ る が、 し か し そ れ ら を 通 じ て 処 分 性 を 肯 定 す る に 当 た っ て は、 行 政 主 体 と 関 係 市 民 と の 間 で の《紛 争》 を め ぐ る「制 度 的 な 関 係 性 (= 仕 組 み) 」 が 問 題 と な っ て い る も の と 言 え よ う。 す な わ ち、 連 辞 的 解 釈 に よ る 処 分 性 肯 定 の 背 景 に は、 一 時 利 用 地 指 定 処 分 等 の 段 階 に 至 る ま で も な く、 計 画 決 定 段 階 で 紛 争 が 成 熟 し て し ま っ て い る「仕 組 み」 (以 下「紛 争 の 早 期 成 熟」 ) が、 連 合 的 解 釈 に よ る 処 分 性 肯 定 の 背 景 に は、 施 行 認 可 (市 町 村 営) を め ぐ る 紛 争 形 態 が 計 画 決 定 (国 県 営) を め ぐ る 紛 争 形 態 へ と 変 換 し う る も の と な っ て い る「仕 組 み」 (以 下「紛 争 の 形 態 変 換 ( 80) 」) が 問 題 と な っ て い る と 言 えよう。   も っ と も、 こ れ ら の「仕 組 み」 の 意 義 を 理 解 す る に 当 た っ て は、 上 に 述 べ た よ う に、 あ く ま で も「法 令 上 の 定 め」から導き出された仕組みであるという点に留意せねばならない。それゆえに、この点をも踏まえると、六一年 最 判 が「実 定 法」 を 重 視 し て 解 釈 し て い る と の 学 説 の 理 解 に 関 し て は、 【土 改 法 八 七 条 六 項、 七 項 及 び 一 〇 項】 と いった処分性を認める手掛かりとなる争訟規定があるといった、個別の法規定に係る《解釈論》の問題としてでは なく、むしろ「紛争の早期成熟」であれ「紛争の形態変換」であれ、それら法規定を含む関連法規定の分析を通じ て見いだしうる、 「手続をめぐる法令上の仕組み」を介在させながら処分性が肯定されているとい う ( 81) 、《認識論》の

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問題として把握し直される必要があるのではない か ( 82) 。 第三節   四年最判   本 節 で は、 前 章 で 確 認 し た、 A「計 画 決 定」 と「事 業 認 定」 と の 同 一 視 論 か ら「収 用 権 限」 を 導 出、 つ い で B 「収 用 権 限」 を 媒 介 に「収 用 さ れ る べ き 地 位」 を 導 出、 さ ら に C残 留 転 出 の“選 択 を 迫 ら れ る 地 位” を も 踏 ま え て 処分性を肯定という一連の議論の流れを手掛かりとして、四年最判の解釈手法の特徴を検討するとともに、その背 景にある認識枠組みを探っていきたい。検討の便宜上、以下第一節で A Bの議論に関して「収用されるべき地位」 として扱い、第二節で Cの議論に関して“選択を迫られる地位”として扱いたい。 第一項   収用されるべき地位 一.学説の理解   例えば荏原明 則 ( 83) 氏は、事業認定の処分性肯定が確立しているという理由を強調する限りにおいては、土地所有者 等が「収用されるべき地位」に立たされるという理由は、前者の理由の具体化ではあるものの、付け足しともみら れうるとして、本判決での計画決定と事業認定との同一視論の重要性に着目する。これに対し安本典 夫 ( 84) 氏は、計画 決定段階で再開発事業を進めることが確定され、その目的のための収用権が設定され、地区内権利者が「収用され るべき地位」におかれる点では、都開法上の「計画決定」も収用法上の「事業認 定 ( 85) 」も基本的な相違はないとする と と も に、 四 年 最 判 が 個 々 の 財 産 権 等 に 対 す る 具 体 的 な 変 動 で は な く、 「そ れ を 必 然 的 に 迎 え る 地 位 に 現 に お か れ た」ということをもって処分性を肯定したことを重視す る ( 86) 。

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  さらに福岡右 武 ( 87) 氏は、四一年最判の事業計画と四年最判の事業計画とでは、計画の具体性という観点からは基本 的には同程度のものとしつつも、後者の計画決定の公告には、前者のそれとは異なって、収用法上の事業認定の告 示 と し て の 効 果 が 伴 う 点 で 大 き な 相 違 が あ る と す る ( 88) 。 ま た こ の 効 果 は、 管 理 処 分 手 続 の 手 法 (全 面 買 収 方 式) と 本 質的に結びつくものであって、付随的効果ではないとして、四一年最判の射程距離外にあることを強調す る ( 89) 。その 上で福岡氏は、四年最判が、 「計画決定」と「事業認定」とで同一の法律効果が生ずることを理由として、 「計画決 定」 の 処 分 性 を 肯 定 し て い る こ と ( 90) を 確 認 す る。 そ こ で、 四 年 最 判 が「事 業 認 定」 の 処 分 性 を 肯 定 す る 理 由 で あ る が、福岡氏は、起業地内の土地所有者等が、特段の事情のない限り、自己の所有地等を「収用されるべき地位」に 立たされることになるという、事業認定がもたらす「包括的な法的地位の変動」にあるものと理解する。ただし、 以上の事業認定・計画決定同一視論には疑問の余地もあるとこ ろ ( 91) 、福岡氏は、譲受け希望の申出者に対し給付され る 建 築 施 設 部 分 が、 法 律 上 あ く ま で 収 用 の「対 償」 (都 開 法 一 一 八 条 一 一) で あ っ て、 基 本 的 に は 一 般 の 場 合 と 同 じ 土地収用手続が適用される建前が採られていること、また任意買 収 ( 92) といっても、土地収用手続の適用を免れないと いう拘束の下で行なわれるものであることなどからすれば、事業認定と計画決定とは実質的にみても共通の位置づ けであると反論する。 二.検討   以 上 代 表 的 な 学 説 の 論 評 を と り 上 げ た が、 四 年 最 判 の 特 徴 に つ き、 A計 画 決 定 と 事 業 認 定 と が 同 一 視 で き る こ と、 ま た そ れ を 受 け て B計 画 決 定 ( ≒事 業 認 定) 段 階 で 紛 争 が 成 熟 し て い る こ と に ( 93) 求 め て い る も の と い え よ う。 た だし学説では、 A B両者の含意が深められていないように思われるほか、両者が互いに論理的にどのような関係に あるのかが明確に把握されているとは言えないように思われる。そこで以下では、あらためて A B両議論を整理し

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た上で、解釈手法・認識枠組みという分析方法に基づいて検討していこう。   まずは判決理由中の「収用権限」取得をめぐる議論に着目しよう。もともとこの議論は六〇年最判でも処分性肯 定に当たっての根拠となっていたが、四年最判ではこの議論が A Bの両議論の媒介的役割を果たしている。すなわ ち、 「事 業 認 定」 と「計 画 決 定」 と が 同 一 視 さ れ、 収 用 権 限 が 認 め ら れ る と と も に、 こ の 収 用 権 限 取 得 の 結 果 と し て、 土 地 所 有 者 が「収 用 さ れ る べ き 地 位」 に 立 た さ れ る と い う 論 理 で あ る。 こ こ で 注 意 せ ね ば な ら な い の は、 「収 用権限」取得前後で議論が二つに分かれることである。   一 方 で、 「事 業 認 定」 と「計 画 決 定」 と い う 二 つ の 行 為 形 式 に 着 目 し て、 両 行 為 形 式 を め ぐ る 紛 争 形 態 が 実 定 法 令 に 照 ら し て 等 し い も の と さ れ る 議 論 が あ る。 こ の 点 に 関 し て は、 判 決 理 由 か ら 明 ら か で あ ろ う。 他 方 で、 (事 業 認 定 と 等 し い) 計 画 決 定 に よ る 収 用 権 限 取 得 が な さ れ る と、 「収 用 裁 決 (と く に 権 利 取 得 裁 決 ( 94) ) 」 段 階 を 待 つ ま で も な く「計 画 決 定」 段 階 で、 紛 争 が 成 熟 し て し ま う と い う 議 論 が あ る。 も っ と も、 「収 用 裁 決」 と い う 行 為 形 式 に つ い て、 判 決 理 由 が 明 示 的 に 指 摘 し て い る わ け で は な い。 た だ し 二 審 判 決 で は、 計 画 決 定 の 効 果 に つ き、 「効 果 は 私 権 の 即 時 消 滅 と い う 最 終 的 変 動 で は な い が、 い わ ば 収 用 裁 決 を 条 件 事 実 と す る 停 止 条 件 (付 款) の 設 定 に 似 た 法 律 効 果の発生であるというべく」として明示的に指摘されていたこと、また同じく二審判決では「権利取得裁決」を引 き 合 い に 出 し て 紛 争 の 成 熟 性 を 議 論 し て い る こ と か ら し て も、 計 画 決 定 後 に 収 用 裁 決 (権 利 取 得 裁 決) が 後 続 す る ことについて は ( 95) 、四年最判も「収用権限」取得への言及するなかで、暗黙のうちに当然のこととして踏まえていた であろう。   そ し て そ う で あ る な ら ば、 こ こ で 四 年 最 判 は、 計 画 決 定 ( ≒事 業 認 定) と 収 用 裁 決 と に 着 目 し て、 後 者 を 待 つ ま でもなく、前者の段階で紛争が成熟してしまっているという議論をしていることになる。もっともこの成熟論は、

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学説の「収用されるべき地位」論への着目にみられるように、実定法令の直接の効果としてよりは、むしろ二種事 業 の 実 際 の プ ロ セ ス か ら 生 じ る「事 実 的 効 果」 の 承 認 を 媒 介 と し て、 「法 的 効 果」 を 認 定 し た と 言 え る の で は な い か ( 96) 。この点からすると、四年最判については、争訟規定を中心とした実定法令の仕組みに照らし、紛争の早期成熟 を 正 当 化 し て い た 六 一 年 最 判 と 異 な る と と も に、 本 文 後 に 指 摘 す る、 行 政 過 程 の 仕 組 み (構 造) に 照 ら し て 紛 争 の 早期成熟を正当化した二〇年最判との共通性を見いだしうるように思われ る ( 97) 。   こ こ で あ ら た め て、 六 一 年 最 判 と の 比 較 の も と で、 四 年 最 判 の 議 論 を 整 理 し よ う。 四 年 最 判 は、 「収 用 さ れ る べ き 地 位」 論 へ 至 る に 当 た っ て、 六 一 年 最 判 の よ う に、 「連 合 的 解 釈」 ――「計 画 決 定」 と「事 業 認 定」 ―― の 解 釈 手法を採用するとともに、その認識枠組みとして、二種事業と収用事業との間での「紛争の形態変換」という「手 続 を め ぐ る 法 令 上 の 仕 組 み」 に 立 脚 す る ( 98) 。 ま た 四 年 最 判 は、 六 一 年 最 判 の よ う に、 「連 辞 的 解 釈」 ――「計 画 決 定 ( ≒事 業 認 定) 」 と「収 用 裁 決」 ―― の 解 釈 手 法 を 採 用 す る と と も に、 そ の 認 識 枠 組 み と し て、 収 用 裁 決 を 待 つ ま で もなく、計画決定段階で紛争が早期に成熟してしまっているという「紛争の早期成熟」に立脚する。もっとも六一 年最判は、この「紛争の早期成熟」の仕組みを「法令上の仕組み」として認めるのに対し、四年最判はその仕組み を二〇年最判のように、 「行政過程の構造」として認める。 第二項   選択を迫られる地位 一.学説の理解   例えば安本 氏 ( 99) によると、四年最判は、二種事業が実施されてしまうと、対償を得て地区外に転出せざるをえない 者が、事業実施そのものの違法を主張する法的な場が、事業計画を争う訴えを認める以外にはないという問題を正

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面からとらえて、これをもって「法的地位に直接影響を及ぼす」ものとして、処分性を肯定したと理解す る ( 100) 。また 福 岡 氏 ( 101) も、 四 一 年 最 判 の 計 画 決 定 (区 画 整 理) に 関 し て は、 公 告 さ れ た 段 階 で あ っ て も、 換 地 処 分 が さ れ る ま で は、 土 地 所 有 者 等 に ど の よ う な 影 響 が あ る の か 分 か ら な い 面 が あ る (現 地 換 地 の 可 能 性) の に 対 し、 四 年 最 判 の 計 画 決 定 (二 種 事 業) に 関 し て は、 公 告 さ れ る と、 土 地 所 有 者 等 は、 収 用 又 は 任 意 買 収 に よ る 対 償 を 得 て 地 区 外 に 転 出するか、又は、譲受け希望の申出をすることで建築施設部分につき権利を取得するかの去就の選択を迫られるの であって、この選択を通じて、計画決定がもたらす効果はより具体的なものとして特定されることになるという。 そして、この選択をすべき負担を負わされるということ自体をもって、土地所有者等の法的地位に対する一種の変 動要素としてとらえる余地があるという。 二.検討   以上の論評にみられるように、学説では、四年最判における“選択を迫られる地位”論の重要性に着目する点で 共通しているわけであるが、しかしこの議論と「収用されるべき地位」論との論理的な関係については、次のよう に 理 解 が 分 か れ て い る。 一 方 で、 福 岡 氏 の よ う に、 処 分 性 肯 定 に 当 た っ て、 「収 用 さ れ る べ き 地 位」 論 が《主》 で、 “選択を迫られる地位”論が《従》との趣旨の理解があ る ( 102) 。他方で、 “選択を迫られる地位”論のみで処分性が 肯定されうることを示唆したとの理 解 ( 103) もみられる。そこで以下では、 C“選択を迫られる地位”論に関して、 A B との関連を踏まえながら、かつ、解釈手法・認識枠組みという分析方法に基づいて検討していこう。   まず“選択を迫られる地位”が、計画決定段階で残留か転出かの意思決定をせねばならないこと、しかもそれは 収用権力を背景としたものであって強制的性質をもつことを重視せねばならない。その意味で Cは、もっぱら A B 両 議 論 の う ち の、 「連 辞 的 解 釈」 の 背 景 に あ る「紛 争 の 早 期 成 熟」 の 仕 組 み と 共 通 す る 問 題 関 心 を 持 っ た 議 論 で あ

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る ( 104) 。 そ れ で は つ ぎ に、 「収 用 さ れ る べ き 地 位」 論 と“選 択 を 迫 ら れ る 地 位” 論 と の 間 の 相 互 関 係 は い か な る も の で あろうか。   思 う に、 最 高 裁 は、 「収 用 さ れ る べ き 地 位」 論 に 依 拠 し つ つ も、 そ れ の み で は、 紛 争 が 早 期 に 成 熟 し て し ま う 「行 政 過 程 の 手 続 構 造」 に つ い て、 十 分 な 論 証 が 尽 く さ れ て い な い と 考 え た の で は な か ろ う か。 と く に 計 画 決 定・ 事業認定同一視論 Aに関しては、上告理由等を通じて疑問の余地も投げかけられてきたとこ ろ ( 105) 、判決理由の中では そ れ ほ ど 議 論 が 尽 く さ れ な い ま ま に、 こ の 議 論 を 決 定 的 な 根 拠 と し て、 「収 用 さ れ る べ き 地 位」 Bを 導 き だ し て い る。 そ れ ゆ え 最 高 裁 は、 こ の Aか ら Bに 至 る 論 証 の 内 在 的 な 不 十 分 さ を 外 在 的 に 埋 め 合 わ せ る た め に、 “選 択 を 迫 ら れ る 地 位” 論 を 追 加 的 に 持 ち 出 し た の で は な か ろ う か。 し た が っ て こ の 見 方 か ら す る と、 四 年 最 判 が、 “選 択 を 迫られる地位”のみで処分性を肯定することまでをも意識していたとの理解には疑問がある。   さいごに、本節の検討を終えるに当たって、四年最判全体の理解についてまとめておこう。まず⑴⑵では「計画 決 定」 と「事 業 認 定」 と の 間 で、 「連 合 的 解 釈」 が さ れ て い る。 そ こ で は、 都 開 法 や 都 計 法、 収 用 法 等 の 関 連 規 定 が 分 析 さ れ、 「手 続 を め ぐ る 法 令 上 の 仕 組 み」 と し て の「紛 争 の 形 態 変 換」 が 認 め ら れ た 上 で、 市 町 村 の「収 用 権 限」 取 得 が 認 め ら れ て い る。 つ ぎ に ⑵ ⑶ で は、 こ の「収 用 権 限」 取 得 を 媒 介 に、 “計 画 決 定 ( ≒事 業 認 定) ” と“収 用 裁 決” と の 間 で、 “連 辞 的 解 釈” が さ れ て い る。 そ こ で は、 “行 政 過 程 の 手 続 構 造” と し て の“紛 争 の 早 期 成 熟” が認められた上で、処分性が肯定されている。もっとも、この紛争の早期成熟を論証するための解釈論的な裏付け として、 《収用されるべき地位》論のみならず、 《選択を迫られる地位》論にも依拠している。

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第四節   小括   以 上、 六 〇 年 最 判、 六 一 年 最 判、 四 年 最 判 と い う、 土 地 利 用 計 画 の 処 分 性 に 関 し て、 三 九 年 最 判 の「処 分 性 公 式」の枠内 で ( 106) 、かつ、四一年最判を覆すことな く ( 107) 肯定した三つの最判について、それぞれの解釈手法と認識枠組み を考察してきた。あらためて三最判全体の考察結果をまとめると、まず六〇年最判は、係争行為である土地区画整 理組合の「設立認可」そのものに着目し、それが「行政行為」としての法的効果を有するかという点に関して、根 拠 と な っ た 法 規 定 の あ り よ う を 中 心 に 探 究 す る と い っ た 解 釈 手 法 を 採 用 し て い る。 そ の 限 り で は 六 〇 年 最 判 は、 オーソドックスな「行為形式準拠主義」の認識枠組みに立っていた。   他 方 で、 六 一 年 最 判 と 四 年 最 判 は、 《係 争 行 為 と 他 の 行 政 行 為 と の 関 係》 を 踏 ま え て 処 分 性 を 肯 定 し て い た。 一 方 で 六 一 年 最 判 は、 ま ず「国 県 営」 事 業 の 流 れ の な か で、 「計 画 決 定」 と「一 時 利 用 地 指 定 処 分」 と の 間 で の《連 辞的解釈》をして、計画決定の処分性を肯定する。その上で、この国県営事業における「計画決定」と、係争行為 たる「市町村営」事業の「施行認可」との間での《連合的解釈》をして、施行認可の処分性を肯定する。他方で四 年最判は、係争行為である二種事業における「計画決定」と、土地収用手続における「事業認定」との間での《連 合 的 解 釈》 を す る。 そ の 上 で、 「計 画 決 定」 ( ≒事 業 認 定) と「収 用 裁 決」 と の 間 で の《連 辞 的 解 釈》 を し て、 計 画 決定の処分性を肯定す る ( 108) 。   このように両最判では、係争行為の処分性を認定するに当たって、その論理的な順序はともかくとして、どちら も「連辞的解釈」ないし「連合的解釈」を採用していることに留意せねばならない。もっとも、両最判で処分性の 肯定にいたるに当たっては、これら行為形式間の関係といった'形式的な'側面が決め手となったわけではない。 む し ろ、 両 最 判 そ れ ぞ れ の《連 合 的 解 釈》 に お い て は、 行 政 主 体 と 関 係 市 民 と の 間 で、 「施 行 認 可」 を め ぐ る 紛 争

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形 態 (市 町 村 営) が「計 画 決 定」 を め ぐ る 紛 争 形 態 (国 県 営) 【六 一 年 最 判】 へ と、 あ る い は、 「計 画 決 定」 を め ぐ る 紛 争 形 態 (二 種 事 業) が「事 業 認 定」 を め ぐ る 紛 争 形 態 (土 地 収 用 手 続) 【四 年 最 判】 へ と、 相 互 に 変 換 し う る 「制 度 的 な 関 係 性」 に あ る と い う こ と が“実 質 的 な” 根 拠 と な っ て い る も の と 解 し う る。 ま た、 両 最 判 そ れ ぞ れ の 《連辞的解釈》においても、行政主体と関係市民との間での紛争が、 「一時利用地指定処分」を待つまでもなく「計 画 決 定」 段 階【六 一 年 最 判】 で、 あ る い は、 「収 用 裁 決」 を 待 つ ま で も な く「計 画 決 定」 ( ≒事 業 認 定) 段 階【四 年 最 判】 で、 早 期 に 成 熟 す る「制 度 的 な 関 係 性」 に あ る と い う こ と が“実 質 的 な” 根 拠 と な っ て い る も の と 解 し う る。   かくして両最判では、連合的解釈であれ連辞的解釈であれ、この種の解釈手法に基づき処分性を「肯定」するに 当 た っ て は、 「紛 争 の 形 態 変 換」 で あ れ「紛 争 の 早 期 成 熟」 で あ れ、 認 識 枠 組 み と し て、 行 政 主 体 と 関 係 市 民 間 で の 手 続 を め ぐ る「制 度 的 な 関 係 性 (= 仕 組 み) 」 が 念 頭 に 置 か れ て い る も の と い え よ う ( 109) 。 し た が っ て そ の 限 り で、 両 最 判 は、 認 識 枠 組 み と し て、 も っ ぱ ら 係 争 行 為 の 行 為 形 式 の 性 質 に 着 目 す る 六 〇 年 最 判 と は 大 き く 異 な っ て い る。もっとも六一年最判が、あくまでも実定法令における制度的な関係性を探究する「手続をめぐる法令上の仕組 み」にとどまる認識枠組みを採って処分性を肯定するのに対し、四年最判は、実定法令が行政実務において実際に 用いられる、その運用段階での制度的な関係性をも探究する「行政過程の手続構造」にまで踏み込んだ認識枠組み を採っている点では異なる。   そ し て、 こ の 後 者 の 点 に 関 わ っ て で あ る が、 別 稿 で も 詳 し く 検 討 し た よ う に ( 110) 、 二 〇 年 最 判 は、 「計 画 決 定」 と 「換地処分」との間での「連辞的解釈」という解釈手法を採用し、その際には、 「紛争の早期成熟」という「行政過 程の手続構造」を基礎として、処分性を肯定している。したがって四年最判は、解釈手法のみならず認識枠組みレ

参照

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