アメリカの漢語学習の環境と課題 : 南加州の大学
を中心として
著者
黄 名時
雑誌名
名古屋学院大学論集 言語・文化篇
巻
11
号
1・2
ページ
55-73
発行年
2000-03-31
URL
http://doi.org/10.15012/00000842
名古屋学院大学論集 言語 。文化篇 第11巻 第1・ 2号 (2000年 3月)
アメ リカの漢語学習の環境 と課題
一
南加州 の大学 を中心 と して
一
黄
名
時
は じ め に これ まで米国では,戦
後一貫 して台湾系華人 の勢力が圧倒的であったが,こ
こ十数年来,中
国本土勢が急激 に力をつけて きてお り,米
国華 入社会の勢力図に も異変が起 き,主
役が入れ替 わ りつつあると伝 えられ る。 十 年の文革 を経 た中国では,1978年
よ り改 革 。開放政策が実施 された後,実
質的 には 1980 年代 に入ってか ら海外へ積極的 に移民・ 留学す る者が年 々増 え,い
わゆ る出国熱が湧 き起 こっ た。1989年の天安門事件のため,一
時期 出国熱 が抑制 され鎮静化 した ものの,1990年
代 には再 度高 ま り,い
っそ う加速化 して現在 に至 ってい る。 多 くの中国人が海外へ出国 したが,そ
の渡 航 。移民・留学な どの行 き先の筆頭 に挙げ られ るのが `自由の国'ア メ リカであ り,ア メ リカヘ 行 くことが 多 くの海外出国希望組の夢であ り, 現在 もその ような状態がつづ いてい る。 アメ リカの幸人人 口は,過
去30年
間の統計 に よれば,1970年
43万
人,1980年
80万
人, 1990年 160万人であった。1997年時点の推計 で200万
人以上 とされ るが,こ
れは大 まかな数 字で あ り,米
国在住中国人 。中国系人の実数は これをはるかに上 回るもの と思われ る。十年毎 に倍増の勢いで伸びてお り,
また近年の激増の 様相 か ら,2000年
4月 に行われ る米人 口統計局 の調査で,或
いは幸人人 口が300万
人に達す る とい うことも予想 され よう。 米 国在住華 人は伝統的 に子弟教育 に熱心であ り,と りわけ漢語 と中国イ7:統文化 を授 けるため, 現地 開設の中国 人学校 で あ る`中華学校'へ子 女 を入れ る父母が 多い。近年の在米幸人の急増 により,華
人は中華学校 に対 し大 きな期待 を寄 せ てお り,そ
の存在意義は益 々大 きくなってい る。統計報告 によると,全
米の中華学校 の生徒 数 はすでに10万人近 くに まで増加 してい る。 とりわけ近年の特徴 として,中
日本t出
身の華 人が曝発的に増大 したことにより,ここ数年来, 大陸系幸人の設立す る中幸学校が急速 に増 えて お り,そ
の勢いはこれ までの台湾系の中華学校 に伍す るほどに拡大 している。 上述の如 く,20数
年来の改革 。開放政策の実 施 に よって多数の大陸系 中国人が米国へ渡 り, 華 人人11が激増 したが,一
方,こ
の政策の実施 に伴 い,中
日本土 におけるビジネスチ ャンスが 拡大 し,米
国企業の中国本土・ 台湾・ 香港 な ど 中国語圏市場への進 出がそれ までに比 して急激 に加速 した。 さらに,香
港・ マ カオの植民地 の 中国への返還 に ともない,こ
こ数年来,香
港・ マカオでは従来の英語な どにかわって漢語学習 の必要性 と重要性が認識 され,漢
語学習熱が高 まって きている。 これに呼応す るかの如 く,米
国在住華 人の間で も漢語共通語の学習熱がいっ そ う強 まっている。在米華人の激増,米
国企業 の中国進出によるビジネスチャンスの拡大,お
よび香港・ マカオの中国への返還 にともな う漢 語学習の必要性 な ど,
この ような要因により過 去数年来,米
国の大学 において も漢語の履修希 望学生の爆発的増加が見 られ る。その中で も特55
-名古屋学院大学論集 に華 入学生の履修希望者が多 く
,中
華学校 で漢 語教育を受 けた華人子弟が米国の大学 キャンパ ス内で大 きな影響力をもつに至 っている。今 日, 米国の大学の漢語教育プ ログラムは,こ
の新 た な情勢に対応す るべ く教育体制の調整が図 られ ている。 小稿では,筆
者の米国における学校調査お よ び現地入手の資料等 に基づ き,南
カ リフォルニ アにおける中華学校の近年の動向 を検討 し叱 つづ いて米国の大学 における漢語の学習環境 と その教育実情 お よび現有の課題 などを中心 にそ の具体的状況 を考察 し,以
って今後の米国の漢 語学習 を展望す るとともに,併
せ て我 々の漢語 教育 を考 える一助 としたい。 二 中文学校 の漢語 教 育 の動 向 米国の華人子弟の漢語教 育 は一般 に `華語教 育'と 称せ られ るが,中
華学校 は全米 各地 に広 く分布 してお り,漢
語教育のなかで も特殊 かつ 重要 な位置 を占めている。生徒 はそのほ とん ど が華僑・華人の子弟であ り,小
中学・ 高校や大 学お よび専門学校・社会入講座・語学教室 な ど の漢語教育 とは大 きく異なる。 東南ア ジア には `華文学校 'と 称せ られ る中 華学校が開設 されているが,こ
の種の幸文学校 の教育では漢語以外 に基礎教育科 目お よび英語 な どを合み,正
規の私立学校 に属す る。一方, 米国の中華学校 は`中文学校'と 称せ られっボラ ンテ ィア的性格 を有す る中国人学校 であ り,漢
語お よび中国文化の教育が主体 となってい る。 ① 米国の中文学校の2大
組織 現在,全
米 51州 のうち 48州 に中文学校が開 設され,そ
の数は総計700校
以上にのぼ り,今
後 ますます増加する傾向にある。中文学校は生 徒の漢語学習の場であるのみな らず,華
人父母 の ミーテ ィングの場 ともなっている。米国の中 文学校 は大 きく二系列 に分かれ る。一つは主 と して台湾系 を中心 とす る現地華人が運営す るも のであ│,孫齢哉として `全米 中文学校連合会'を 構成 している。 もう一つ は中国本土出身の留学 生 。研究者 によって開校 された もので,`全
米 中 文学校協会'を 組織 している。後者は改革。開放 後,大
陸系 中国人の渡米の急増 により,新
たに 発展 してで きた中国人学校である。両者の概況 は下記の如 くである(2)。 全米中文学校連合会 学校総数634校
分布州47州
生徒総数 82675人 学校規模最大 2750人 学校規模最小8人
週末 クラス2時
間55分(週平均) 放課後 クラス 8時間15分(週平均) 教師 人数5540人
全米中文学校協会 83校 32州 13000人 900人 20人 3時間 10時 間 1300人 米国における中文学校の2大
組織の概況は以 上 の如 くであるハ 次 に全米 中文学校連合会所 属の中文学校 の教育状況 を取 り上 げ る。 ここで は,筆
者の ロス現地 で取材調査 した中文学校の うちの一校 の教育内容 を具体的 に検討す る。7L
教 中華学校 'と 称す るこの学校 は,ロ
サ ンゼル スダウンタウンのオール ドチャイナタウンに位 置す る代表的中国人学校の一つである。学校 に 隣接 して託児所・ 幼稚 園,小
中学校 お よび漢語 書籍等 を多数蔵 す るチ ャイナ タウン公共図書館 な どがあ り,恵
まれた環境 にある。広東出身の 女性校 長の説明す る学校概 況 は次 の通 りで あ る。 孔教 中華学校 は,1945年
当時の教会 と私塾 と の併合により設立 された中文学校で,校
合 も旧 来の由緒 ある建物である。当校 は24の幸僑・華アメ リカの漢 語学習の環境 と課題 人団体の共同出資 によって設立 され
,華
人子弟 の民族教育,即
ち伝統的中国文化 を授 けること を目的 として建て られた。生徒 は広束人子弟が 大半である。幼稚部・ 小学部・ 中学部があ り, 高等部 は設置 されていない。華人子弟に倫理道 徳 と中国伝統文化 を教 え授 けることを学校の特 色 とし,規
模 の大 きい正規の学校で あって,い
わゆ る語学教室ではない。遠隔地か ら通 う華 人 子 弟が 多 く,チ
ャイナ タウ ン居住 の生徒 はか えって少ない。子弟教育に熱心なエ リー ト新華 人など知識層の家庭が子弟を送迎 している。 授業 は,中
文 クラス(漢語の共通語 と広東語) お よび中国文化 クラスのみである。特 に書道 に 力 を入れ,常
時 コンクール を行 い,父
兄の学校 に対す る評価が高い。水泳 な どスポーツその他 の課外活動 も行われている。就学前の幼稚部で は遊戯や歌 と踊 りな どを中心 に聞 くことと話す ことを主体 とした教育が施 され,児
童の漢語 に 対す る興味 と感性 を育む ことに重 きが置かれて いる。 当校 の漢語教育の大 きな特色は,低
学年生 に 対 して広東語で授業 を行 うことである。幼稚園 か ら小学6年
生 までの生徒 につ いては広東語 で,中
学1年
生 か ら3年
生の生徒 に対 しては漢 語共通語で授業 を行 っている。授業時間帯は平 日放課後3時
か らと週末全 日の2体
制か らなっ てい る。生徒数は低学年が多 く,高
学年 は少な く,幼
稚部 。小 中学部 を併せ て例年 700∼800名 程度である。 また,小
学3年
か らは広東語音だけでな く国 語音の教育 も開始 されるが,両
者 とも台湾出版 の同一の国語教科書 を使用す るため,問
題が起 きている。漢語共通語 と広東語 とは発音体系が 異 な るため,学
習上生徒 に混乱 をもたらし,今
に至 るも未解決の課題 として残 されている。 ② 中文学校 における2系
統 の教育方式 カ リフォルニアにおいて,従
来,中
文学校 は 台湾出身者の創設にかか るものが多 く,台
湾の 教科書や注音符号・繁体字 を用いた漢語教育が 行われて きた。少数の大陸系 中文学校では ピン インや簡体字が用い られている。高校や大学で も一部 を除いて,
ピンインや簡体字が使用 され てい るため,進
学後 に台湾系華 人子弟の遭遇す る矛盾 は大 きい。このため台湾系中文学校では, 高学年の一部 に ピンインを指導す るクラスを設 けるようになって きている。 ピンインクラスの 開設は米国の大学の漢語教育体制 に対応 した措 置であ り,華
人 自身の直接的要望 に基づ いてい る。 また従来は東部 に多 く見 られた中国本土系 の中文学校が,こ
こ数年来西部で も数多 く開設 され るようになって きてお り,カ
リフ ォルニア では近年,教
育体系 をピンイ ンや簡体字に切 り 替 えるこ とに積極的な姿勢 を示す中文学校 も出 て きている。 ③ 中文学校の単位取得 クラス 南加州地域の高校の教育課程 で は20単位 の 外国語科 目を修得す ることが定め られ,各
学期5単
位 で, 2年
間学習す る。生徒 は漢語 を選択 で きるが,高
校 では華人生徒 の中文学校での学 習内容 に照 ら し,高
校 の単位 に振 り替 えるこ と を認めている。即 ち,中
文学校の「単位取得 ク ラス」で漢語 を習得 した華人生徒 は,各
高校規 定の外国語科 目単位 を修得 した もの と認定 され る。振替単位数については,10単
位 もしくは 20 単位,な
か には40単位 を認め る ところ もあ る が,20単
位以上 の認定が あれば外国語の履修が 免除 され る。高校 における単位振替認定は,中
文学校に通 う華人子弟に とって極めて有利 な制 度である と言える。 次節では,米
国の大学漢語教 育プ ログラムの57
-名古屋学院大学論集 実情 を検討 してい くこととしたい。 三
UCLAに
お ける漢語 教 育 プ ログ ラム ここでは,南
カ リフォルニアの重点大学であ る カ リフォル ニ ア 大 学 ロ サ ンゼ ル ス 校(UCLA)の
漢語教育プログラムの現状 と課題 を中心に取 り上げ,問題点を検討 していきたい。 ① 漢語 プ ログラムの概況 漢語プ ログラム は東 ア ジア言語文化 (EastAsian Languages and Cultures)寺響郭に属 し,
現代漢語科 目はその中の中国学カ リキュラムの 一部 に位置付 けられ る。同学部 には中国学のほ か,日 本学
,朝
鮮学および印度学の各学科・コー スが設け られ,専門の授業が多数開講 されいる。 30名にのぼ る教員が教 育 。研究 に携 わってお り,学
部 レベルのみな らず,大
学院の修十お よ び博士言新呈が設置 されてい る。中国学関係 では, 社会学,歴
史学,考
古学,芸
術 史学,民
族音楽 学,言
語学,政
治学,ア
ジア系アメ リカ人研究, 東ア ジア研究等の他学部 。他学オ斗の中に も関連 の授業があ り,教
員が複数の学部 。学科 の科 目 を兼担 している場合 もある。 東 ア ジア言語 文化 学部 開講 の 中国学科 目に は,現
代漢語 (初 。中 。上級)以
外 に,中国文化 概論,現
代漢語講読,古
代漢語概論,中
国語学 概論,中
国当代文学,中
国現代文学,中
国古典 文学,中
国仏教概論,中
国哲学講読,中
国考古 学,中
国文字学等 々があ り,さ
らに大学院の授 業科 目があ る。現代漢語の授業計画 は,中
国北 京出身の王綺華氏 (1辟交言語学専攻)が
1旦当 し てお り,プ ログラム編成の責任者 となっている。 現代漢語担 当の専任教員 は王氏のほか,中
国本 土 出身者1名の合計2名のみである。 ② 漢語の履修者の激増UCLAの
東アジア言語文化学部の漢語プ ロ グラムは 1947年 に設立 された。当時,学生は10 人足 らずであったが,80年
代以降,学
生数が激 増 した。過去14年
間の履修者数は次の通 りで ある。 大学年度 85 86 87 88 89 90 91 1年生 59 85 86 101 120 120 150 2年生 25 42 43 54 50 45 61 92 93 94 95 96 97 98 170 225 240 330 340 325 310 63 85 100 140 145 140 122 表 に見 るように,現
代漢語履修生 は年 々増 え 続 け,そ
の増加率 には見 るべ きものがある。空 前の大盛況であ り,履
修者数 は数年前 に 日本語 を追い抜 き,ア ジア言語のなかで トップ とな り, 漢語 は最 も人気のある語学授業の一つ として首 位 にランクされて きた。上表 にみ る如 く,89年
の漢語履修者 は85年
に比べ 1・2年
生 とも2倍
増,
また94年
には,1・2年
生 ともに85年
の4 倍増 と急増 してい る。希望者が大幅 に増 えるな かで大学予算 には限度があ り,96年
に入るや大 学 も許 容 の限 界 に達 し,財
政 もパ ンク状態 に 陥 った。 ここ数年来,受
講者 を1年∼4年
合 わ せ て500名程度 に制限 してい るが,実
際の漢語 履修希望者 は例年上記の受講者数 を逢かに超 え てい る。すでに88年
よ り,履修希望者 は漢語担 当教員の面接 を受 け,署
名入 り許可書 を得 ては じめて漢語の履修登録がで きるというシステム が導入されたが,毎
年学期初め に教員研究室の 前 に数百名が待機 し,89年
以降は履修希望者全 員の需要 を満 たす こ とので きない状況が続 いてアメ リカの漢語学習の環境 と課題 い る。履修希望の急増 に
,当
該学研斗お よび人文 学部では過去 に しば しば予算追加の措置が とら れ,教
育助手のTAの
採用 を増や して漢語 クラ スの増設を行い,こ
れに よって各学年 とも収容 定員の拡大 を図って きた。それに もかかわ らず 履修 希望者数 は増加の一途 をた ど り,門
前払 い を受 ける者 は依然多数に及んでいる。希望の叶 わない学生 が例年 多数 に及ぶ なかで,91年
よ り,履
修 にあたって漢語選択理 由を書かせ,そ
の切実性や必要性 を検討 して受講許可 を出す と い う方式 を採用 した。 これは履修の公平 を図 る ための苦肉の策であ り,漢
語学習 を最 も必要 と す る学生 に配慮 した ものである。大学予算の関 係 か ら履修制限 を設けたため,漢
語担 当教員が 学生一人一 人の面接選考 に追われ,苦
慮 してい るのが実情である。 クラス拡大措置のなかで, 漢語の基礎学力がすでにあ り,い
わゆる漢語教 育プ ログラムの募集規定 に適合 しない華 入学生 の履修 は認め られていない。 ③ 履修者の激増の背景 漢語 の履修 者 が大 幅 に増 加 した原因の一 つ は,学
生の出身構成 と関係がある。95年
時の統 計 で も,新
人生 の うちア ジア系学生 の比率 は38%強
で,こ
の うち中国系学生が多数 を占め, 華人子弟の数が急増 している。過去 において漢 語 を履修す る者 は,多
くが中国や台湾のバ ック グラウン ドを もった華人子弟 と米国生 まれの中 国系学生であったが,今
日, シンガポール・マ レーシアさらにはパナマなど世界各地か ら渡米 した中国系学生 も漢語学習の列 に加わるように なって きている。 このため,大
学の漢語教育プ ログラムは新 たな情勢に対応す るべ く現在調整 が行われている。 二つめの原因 として,ア
ジア大平洋地域が政 治 。経済 お よび文化 方面 において益々重要 に なって きていることが挙 げられ る。近年,中
国 と台湾の経済が急速 に発展 したことにより,多
くの学生 は漢語の修得力羽平来就職 に有利 になる だ ろ うと考 えて い る。特 に米 産業界の 中国本 土・ 台湾地域な ど中国語圏市場への積極的参入 によってビジネス 。チャンスが拡大 し,そ
れが 多 くの学生の漢語学習 を希望す る重要な理由の 一つ になっている。 第二の要因 として97年
の香港 と,99年
のマ カオの中国への返還がある。従来,イ
ギ リス統 治下 の香港 で は英 語 と広 東 語 で事足 りて いた が,中 国への返還前後 より事情が大 きく転換 し, 漢語共通語の必要性 がいっそ う認識 され,現
に 香港 市民 の間で漢語共 通 語 の学 習熟 が 湧 き起 こっている。 この ような背景か ら米国華人の間 で も漢語の重要性が再認識 され,
とりわけ華人 学生 の間で外 国語履修 に漢語 を選択 す る者 が 益 々増 えている。 ④80年
代以降の履修生の特徴(1)専
攻 東ア ジア言語文化専攻生は少数であ り
,90%
以上 がそれ以外の学部 。学 科,す
なわちビジネ ス経済学,国
際 ビジネス,政
治学,社
会学,国
際地域研究,生
物学,心
理学,数
学,音
楽,美
術芸術,演
劇,コ ンピューター科学,技
術工学, 医学,等
々の学生である。 この うち,ビ
ジネス 経済学お よび国際 ビジネス専攻生 は総数の約3 分の 1を 占め る。(2)民
族 系 自人,メ
キシヨ系お よびその他の非アジア系 学生 は学生 全体の4分
の1のみである。アジア 系学生 は約4分
の 3を 占める。米国生 まれの華 人お よび幼少時 に中国や台湾,香
港 な どか ら移 住 して きた幸人子弟 は,ア
ジア系学生全体の約 半分 を占め る。 また,近
年の特徴 としてベ トナ59
-名古屋学 院大学論集 ム華人数が急増 している。
(3)言
語 背 景 以前,広
東語や 台湾語 。福建語 な ど南方方 言 話者数が北方方言語者数 を上回っていたが,昨
今 は北方方言 を話す学生数が年 々増 え,
また流 暢 に話す者 もその数 を増 してい る。(4)既
習者の激増 中文学校 に通学 した学生や,高
校で漢語 を学 習 した学生が殺到 している。 ⑤ 漢語の必修の現状UCLA関
係部 門の行 った学生へ の ア ンケー ト調査 によると,漢
語 を選択履修す る理 由は, それぞれ各自の専攻 と密接 な関係がある。例 え ば,ア
ジア研究,中
国研究,ア
ジア・ アメ リカ 研究の 各専攻 の学生 に とって漢語 は必修 で あ る。また国際 ビジネス学,経
済学,国
際政治学, 言語学な どの専攻学生 も,そ
の専攻領域が東ア ジアに関連す るな らば,や
は り東アジア言語の なかか ら一つ を選択す ることとなってお り,そ
の場合,多
くの学生が漢語 を選んでいる。特 に, 国際 ビジネス学,法
学,歴
史学の諸専攻の学生 で中国事情 を専攻す る者,あ
るいは中国・ アジ ア研究,東
ア ジア学 を専攻す る学生 は,い
ずれ もまず1∼2年
間の漢語の履修 が必須 となって いる。 また,大
学履修規定では卒業時 まで に1 年間の外国語の必修 を定めているため,何
年間 も漢語の履修登録か襦忍め られなかった外国語未 修得の一部の4年
生 については,優
先的 に漢語 の受講が看午可 され る。 このほか,学
内の海外学習プ ログラムに参加 を希望す る学生 は,留
学先の外国語 を事前 に1 年間受講す ることが定め られている。そのため, 中国 。台湾等への留学 を計画 している学生 に対 して通常,漢
語の履1多が優先的 に認め られ る。 この他,文
学,考
古学,社
会学,芸
術学,映
画製作,建
築学,医
学 な どの専攻学生のなか に も,個
人的関心或 いは専攻領域が東アジア (と くに中国)と
関連が あるこ とか ら漢語 を選択 す る者が多い。 また,学
科 の履修規定では必ず し も東ア ジア言語の履修 を定めていないが,大
学 履修規定で外国語1科
目の必修 を定めているた め,学
生の中には各 自の専門の将来 を考えて漢 語 を選択 す る学生 も多数いる。 この ようなケー ス も,通
常,学
生の希望 はかなえられ る。 ⑥ 履修許可 を得 られない華人学生 漢語履修希望の学生のなかには相 当数の中国 系子弟が いる。.また,学
生のなかには,家
族(華 人の父母や配偶者)の
要望か ら,或
いは自己の ルーツを求め或 いは民族意識 にめ ざめ,漢
語の 学習 を望 むに至 った者 も少な くない。華 入学生 の履修 目的や動機 は様 々であるが,例
えば具体 例 を挙 げ る と次 の ようなケースが 多々み られ る。(1)一
言 も漢語が話せず,社
会の中で奇異な 眼差 しを向け られ,羞
恥 の末 に漢語の学習 を望 む に至 るケース。(2)中
国 または台湾のバ ックグラウン ドを も ち,イ和限に中国や台湾 に里帰 りし,親
類 を 訪ね る必要性か ら,漢 語 を学習す るケース。(3)漢
語が理解で きないゆえに両親 との意思 疎通が喫任しく,感
情の疎通 を願 って漢語 を 学習す るケース。(4)中
国人 と結婚 したアメ リカ入学生が,
よ り良 い意思疎通 を計 るため,漢
語の履修 を 希望 す るケース。 上記の ようなケースは前記の⑤ とは異な り, 差 し迫 った必要性 に乏 しいため,学
部予算の関 係 か ら履修希望のすべ てが認め られ るわけでは な く,む
しろ不許可 となるケースが多い。また, 台湾等で就職 を希望す る中国系学生 も,卒
業後アメ リカの漢語学習の環境 と課題 に漢語の補習が可能 との理由で履修許可を得 ら れない。 一定の人数枠の履修 と受講 しか認められない 状況下では
,漢
語プ ログラムの担当教員は学生 の履修要望を検討 し,そ
の必要性の緩急によっ て優先順位を決めるという厳 しい環境にある。 漢語の学習を認め られず意気消沈 した学生に対 し,担
当教員は日本語その他の外国語の履修 を ア ドバイスするが,漢
語のみを希望 している者 も多い。履修選考の選に漏れた学生の中には“優 先的に考慮すべ き対象者"が
含 まれる場合 も 多々あり,未
解決の課題 として残 されているの が現状である。 ⑦ 漢語履修者のクラス分 けUCLA漢
語プ ログラムで は漢語能力の養成 と して,発
音,文
法,語
彙,漢
字の修得 お よび, リスニ ング,ス
ピーキング,
リーデ ィング,ラ
イテ ィングの総合能力の養成 を目標 においてい る。この うち1・2年
次 については聴解 と国語の トレーニ ングが 重 視 され,主
と して コ ミュニ ケーシ ョン能力の育成に主眼 を置いた教育内容 となっている。入門の受講生 に対 し,ま
ず発音 指導 そ して同時 に,漢
語・漢字について概説が な され,基
礎 的な発音 と漢字の修得が学生 に求 め られ る。初級段階の発音 トレーニ ング,漢
字 の習得 お よび会話練 習 な どの指 導 は主 にTA
が1旦当 し,プ
ログラム専任教員は主 として漢語 語法 と中国文化の概説お よび高学年の授業 を担 当す る。 教 育体制 と して,89年
よ り1年
生 に対 し2 コース制が実施 された。学生 を漢語既習者 と未 経験者 とに分 け,別
々に授業が行われ る。漢語 既習者 に対 しては “クラス分 けテス ト''を受 け ることが義務づ けられ,
それ に よって レベル に 応 じたクラス編成が導入された。 コース1(初級者対象,漢
語 1-2-3)は 漢語学 習未経験の学生,
コース2(初
級者上級 を対象, 漢語la-2a-3a)は
学習経験が い くらかある学 生が対象である。96年
か らこれは 3コ ース制に改編 され,ま た 初級者上級 を二 つ に分 けて授 業時 間数 を減 ら し,集
中クラス とした。現在, 1年
生の授業 は 3コ ースか らな り,以
下の条件 を もつ学生 を対 象 としてい る。 コース1
漢語1-2-3(1年
間, 3学
期):漢
語のバ ックグラウン ドを もたない。 コース2
漢語la-2a(2学
期のみ):漢
語 の方言 もしくは漢語共通語が い くらか話せ る が,読
み書 きがで きない。 コース3
漢語3R(漢
語の読み書 きの授業,1学
期のみ):漢
語 を流暢 に話すが,漢 字の読み 書 きがで きない (或いは若千読めて書 ける)。 統計 に よると,コ
ース 2と コース3の半数の 学生 は中文学校 もしくは高校 の漢語学習経験者 であった。彼 らは割合 しっか りした漢語の基礎 力があるので, 1学
期 もしくは2学
期で3学
期(1学
年)分
の授業内容 を学習 し終 えて大学規 定の外国語の単位 を修得で きるため,空
いた時 間 を専門その他の学習に充てることがで きる。 また,中
文学校で優秀 な学業成績 を収めた学生 は,前
述の クラス分 けテス トで高得点 を得 るこ とで,す
でに大学1年
生の外国語 レベル に到達 してい るこ とが租:明されっ免除措置が とられ る。 彼等 は外国語 を履修 しな くて もよいが,学
習意 欲がある場合 には直接2年
生の授業 を受 けるこ とがで きる。2年
生 につ いては95年
か ら2コース制が導 入 され,さ
らに96年
か ら3コース制 に改め ら れた。3年
生では,「 文学選讀」のテーマで文学作品 の講読 の授業が行 われてお り,受
講者 数 は 30-61-名古屋学院大学論集 名前後である。
4年
生は「文学選讀」 と「商務漢語」の 2つ の授業に分かれる。「商務漢語」は中国の改革・ 開放の情勢の中で新 たに設定 された授業科 目 で,実
用会話力の養成 とともに商業用語の修得 に重 きが置かれてお り,学
生に人気がある。受 講者数は現在 45名 であ り,こ
の科 目の開講 に よって,カ
リキュラムが よ り充実 した もの と なっている。商務漢語の授業では教材 として「新 民晩報」などの新聞記事が用いられている。 以上のほか,「古典文学」の受講生 も大幅に増 加 したことが挙 げ られ る。例年の受講者数は 70∼90名 で,いずれ も殆 どが漢語を話す幸人子 弟である。教材は米国出版のテキス トが使用さ れ,講
読形式で授業が行われている。 ③ 漢語プログラムの基礎教材 現在UCLAで
使用 されている教科書は中国 出版の『費用漢語課本』(全4冊
,北
京語言文化 大学編,商
務印書館)で
あり,こ
れは米国の大 学で もっとも広 く用いられている漢語テキス ト である。これは 1年 次で前半2冊
, 2年
次で後 半2冊
を教授する設定になってお り,UCLAは
他のUCB・ UCSD・
スタンフォー ド大学などの 諸大学 と同様,い
ずれ も1年
次に第1・ 第2冊
を仕上げ,漢
字を800字
程度習得 させている。 他大学同様,UCLAで
もセ ット副教材力斗来用さ れてお り,そ
れには文法書・録音テープ 。ビデ オテープ。CD ROMが
含 まれるが,ほ
かに閲読 練習・漢英語法対照・宿題等を合んだ学習ハ ン ドブック『費 用 漢 語 学 習 手 冊』(PracticalChinese Reader Companion)も
あり,テ
キスト内容の不足 を補っている。なお
,ボ
ス トンのCheng&Tsui Companyか
ら『費用漢語課本』 の繁体字版 と繁体字練習帳が出版 された後,こ
の『費用漢語課本』は最 も整ったテキス トとし て米国では評判が高い。 ⑨ 課外のチ ャイニーズ 。テーブル (中文菓子) 前述の履修者統計表 に見 る如 く,85年
以降のUCLAに
おけ る漢語履修者 は年 々増加 してい る。89年
の天安門事件で履修者の増加率が一時 期停滞 したことがあったが,85年
度の1・2年
生 総 数 が84名で あったの に対 し,94年
度 で は 340名に まで膨れ上が り,漢
語プ ログラムは米 国の大学の中で最大規模 にまで発展 した。履修 者数の急増 に もかかわ らず,漢
語担 当教員数 は 極 めて少 な く,負
担が非常 に大 き くな り,深
刻 な問題 となっている。UCLAで
は4学
年合計 の 学生 数約500名に対 し専任講 師2名
十TA 18
名 とい う厳 しい状況 にある。 米国では語学教育 は他の授業 と異な り,教
員 と学生 との連係 が極 め て重要 で あ る と言われ る。UCLAの
漢語教育担 当者の言 によれば,オ フ ィス・アワー (週 1∼2度
,研
究室での学生相 談の時間)に
は受講生が教員研究室 を訪れ,授
業 に対す る意見 を述べ,発
音の指導 を仰 ぎ,学
習上 の難題 の解決 を求め,毎
回長蛇の列 にな る とい う。 現地教員の考えでは,漢
語 は習得の難 しい科 目であるため,授
業時間以外 に学生 に有機的な 語学練習の場 を与 えることが極めて大切 である と認識 されている。教室 を離れて,学
生 は漢語 の学習上の悩 みを自由に話 し,雑
談のなかで語 学や 中国文化 に対す る知識 を得 るこ とがで き, それ によって学習意欲 を高め ることがで きるの である。UCLAで
は同様の 日的で“チャイニー ズ 。テーブル"の
時間が設定 され,漢
語の課外 活動が行われて きた。毎週水。本の午後1∼2時
の “中文菓子"の
時間帯 には少な くとも助手2 名が北 キャンパ スの野外カフェ 。テーブルで学 生 を待ち,教
員 もよ く参加す る。ア メ リカの漢語学習の環境 と課題 チ ャイニーズ・ テーブルでは漢語 クラスの受 講生 たちが教員 と助手 を取 り囲み
,漢
語 と中国 文化の学習の苦楽 を語 り合 う。学生 は教室に比 べ より活発 にな り,語
学力の乏 しい学生 はこの 機 とばか り会話練習 を試み る。 この ような課外 活動がUCLAの
漢語授業の一環 として十年以 上 もイ1精売されて きた。以下 に,チ
ャイニーズ・ テーブル を囲む常連学生の顔 をい くつか紹介す る。(1)中
国新彊 の地理 を研究す る自入学生。 中国 文化 に興味 をいだ き新彊 を訪れ,帰
国後,新
彊 の山々にまつわ る幾 多の故事伝説 を発掘す るべ く再度の訪中を計画 し,機
会 をとらえて 漢語の特訓 を行 っている。(2)ア
ジア研究専攻の修士号 を取得 した自入学 生。断続的に7・8年
間漢語 を学習 し,後
にビ ジネス経営 を専攻,香
港 の株式市場 に も興味 を もち,米
国内発刊の華字新聞 『世界 日報』 を購読。漢語の トレーニ ングにこの課外活動 が非常に役立つ という。(3)8才
で台湾 より渡米 した映画製作専攻の華 入学生。漢語 は話せ るが書 けない。漢語学習 の主 目的は台湾の映画や芝居に関す る資料 を 読むためであ り,チ
ャイニーズ 。テーブルの 傍 らで助手の助 けを借 りている。(4)自
人の学生。両親が長年台湾で宣教師 を し ていた。家族が漢語の既習者であ り,兄
姉 も 漢語 を学習 している。(5)銀
行でアルバ イ トの自入学生。人員整理の なか,中
国人客 と漢語で会話がで きるため解 雇 を免れた とい う。 助手は学生 にとって身近 な存在であ り,学
生 たち と打 ち溶 けやすい。家庭で漢語 を話す華人 学生 に対 し,`自 人の クラスメー トをみ くび るな かれ/'と
助手が よ く注意す る。幸入学生の中 には幾分基礎があるものの,努
力 しなければ逆 にプ レッシャーになる場合 もある。最 も良 くで きる二人の学生が黒人 と自人であった というク ラス もある。 チ ャイニーズ 。テーブル に よって教師 (教員 お よび助手)と
学生 との連係 が密接 にな り,学
生 に学習意欲が出て くる。 この こ とがUCLA
の漢語 クラスが数年の うちに急速 に拡大 。発展 し,全
米の大学で最大規模の漢語教育プ ログラ ム にまで成長 した要 因の一つ で あ る と言 われ る。 四 南加州 の他 の大学漢語 プ ログ ラム ①UCSDの
漢語教育プ ログラム カ リフォル ニ ア 大 学 分 校 の 一 つ で あ るUCSD(カ
リフ ォルニア大学サ ンデ ィエ ゴ校) は人文系お よび理工系の全5学
部 を擁 し,外
国 語科 目では 日本語 と漢語が中心 となっている。 近年,中
国 との ビジネスの拡大 。発展 によ り漢 語の履修者が増加 し続 け,現
在,外
国語科 日で は 日本語 を抜いて第一位 になっている。 漢語の専任教員は,台
湾 出身者 お よび中国本 土 出身者の各2名合計4名で,UCLAの
中国出 身者2名に比 して教員数が充実 している。主任 教員 は台湾出身者である。 現代漢語の履修者数は2000年
2月 現在, 1
年生 155名(3学
期 にわたって受講),2年
生 70 名, 3年
生20名, 4年
生が10名である。 上述の4名の教員以外 に,古
代漢語・古典 を 教授す る専任教員および,中
国言語文化学オ斗の チ ャイニーズ・ ス タデ ィに所属 す る20名の教 員 スタ ッフがいる。同学科の主専攻の学生 は 40 名,副
専攻学生 は63名である。 履修生 には,異
なるバ ックグラウン ドを もっ た華人のほか,自
人・ フ ィリピン人・ベ トナム 人等がいる。中国系の学生の出身別では主 に台63
-名古屋学 院大学論 集 湾・香港・ 広東 な どが挙げ られ るが
,ベ
トナム 華 人の割合 も大 きい。ベ トナム出身の華 入学生 の話す漢語の特徴 としては,声
調が嗜忍、め られな いことである,
とは漢語担 当教員の指摘す ると ころである。 これ まで,米
国の大学 における漢語教育の課 題 の一つが,
レベルの不揃 な学生 をいかに教 え るか とい うことであった。近年,
日本の大学で も,少
数であるが中国人留学生,華
僑,高
校 の 中国語既習者,海
外帰 国 子女,中
国残留 日本人 の三世などが中国語学科への入学や第二外国語 に中国語 を履修す るケースが増 えてお り,規
模 は異なるが同様の問題が 日本の中国語教育現場 において次第に大 きな課題 としてクローズア ッ プ されて きている。 日本以上 に,米
国の大学で は学生の出身背景や漢語の レベルカ淋目当にまち まちで,い
わば質の異なる学生 を相手 に同一 ク ラスで授業 をす るため,非
常にや りづ らい もの があった。例 えば,華
人子弟に限ってみて も, それぞれのバ ックグラウン ドが異なることか ら その漢語の力はまちまちで,い
わば レベルの違 う学生同士が同一授業 を受講す る しかない とい う状況であった。UCSDは
全米で他の大学 に先駆 けて,学
生の 出身背景 (バックグラウ ン ド)や
学習経験 に照 らして レベル別に漢語の クラス分けを行 った最 初の大学である。 これは10年以上 も前か ら実 施 され てお り,当
時 と して は画期 的 な もので あった。現在,UCLAも
同様 の クラス分 けを実 施 してい る。 現在,UCSDで
は学生の出身背景お よび家庭 環境,な
らび に漢語の レベル等 に したがって下 記の5種
類 の クラス設定 を している。(1)漢
語のバ ックグラウン ドがな く,基
礎の 発音か らス ター トす るクラス。 白人系の米 国人が中心 となるが,
日本人や韓国人 もこ の クラスに入 る。(2)マ
ンダ リンの漢語 を少 し話せ るが,発
音 が不正確 な者。 また,漢
語 を聞いて理解 で きるが,読
み書 きがで きない者。5才
前後 に台湾や上海な どか ら来た華入学生 も受講 している。(3)家
庭環境 か ら,漢
語が聞けて話せ るが, 文章の読み書 きがで きない学生。(4)家
庭環境 か ら,広 東語 。台湾語(福建語)・ 上海語など各出身地域の漢語方言は聞けて 話せ るが,読 み書 きがで きない という学生。(5)中
国や台湾 で小学校の教育 を受 け,聞
け て話せ るが,読
み書 きがで きない学生。 こ の クラスには,小
学校の高学年時 に北京や 台湾 な どか ら渡米 した華 人が受講 してい る。UCSDで
は以上 の5段
階 を設定 して漢 語教 育 を実施 しているが,た
だ し原則 として中国・ 台湾等の小学校 に4年
以上在学 した者など,力
のある漢語既習者 に対 しては履修の免除措置が とられ る。 これ らの学生 に対 しては古典 。古代 漢語 クラスや 日本語 クラスその他の授業 を受講 す るよう指導が`な され る。UCSDの
漢語 の授 業 は発音練習 に重点が置 かれている。1年
次の最初の3週
間が1寺に重要 とされ,随
時,発
音のチ ェックとテス トが行わ れてい る。 日本の学生 と同様,米
国で も初級者 に とって半二声 。三声が1寺に難 しく,二
声の習 得 も難 しい様子 であ る。未経験 者が3∼5週
間 で中国の南方出身者 より発音が よくなるよう基 礎 固め を しっか り行 っている,
とい う。自人系 の アメ リカ入学生の30%は 2年
次 にはすで に 発音が完成 されてい るとい う。 1年生の漢語 (現代漢語)は
併せ て5単
位で あ り,UCLAの
4単
位 よ りも多い。毎週月・水 。 金 に語学の実践練習,火
。本 に講義が行われ,ア メ リカの漢語学習の環境 と課題 学生 の負担 は相 当大 きい。だが
2年
次 には授業 数が減少 し,三
分の一 になる。 学生 は漢語 を履修 す るにあたって,そ
れぞれ はっ きりした目的意識 を もっている。興味本意 ではや らず,
自己の将 来を考 え,通
常, ビジネ ス と結びつけて考えている。前述の如 く,数
年 前 までは 日本語が注 目されていたが,近
年,米
国 と中国 との ビジネス関係の発展 に より漢語の 履修者が大量 に増 えた。学生 は明確 な目的意識 を もち,実
利 を念頭 に入れて履修 している。 また,卒
業後の就職先 は,中
国言語文化専攻 の卒業だけでは職 は探 しに くいため,就
職 に有 利 にな るようダブル専攻 をす る学生が多い。中 国言語文化主専攻の学生の多 くは大学院 に進学 し,主
に国際関係や大平洋関係の研究 を志す者 が多い。修 了後は,連
邦政府・州政府 または民 間の大企業や中小企業・各種の会社等 に勤務す るな ど,就
職 先は多様である。②
その他の大学の漢語プログラム
UCLAや UCSD以
外 の大 学 で も漢 語 ク ラ スが開設 されている。 ロサ ンゼルス地域では, 例 えばUC Irvine校
やUSC(南
カ リフ ォルニ ア大学)な
どい くつかの大学があ り,ま
たサ ン デ ィエ ゴ地域ではSDSU(サ
ンデ ィエ ゴ州立大 学)とUSD(サ
ンデ ィエ ゴ大学)に
漢語 クラス が開設 されている。 これ ら諸大学で も同様 に漢語履修希望の学生 数が飛躍的 に増 えている。例 えばUC Irvine校 の漢語プ ログラムでは,大
学 内規で1年
生 は1 クラス最大21名に制限 されて きたが,漢
語履 修希望者の急激 な増大 に対 して,教
員は学生の 希望 を叶 えるべ く自己の負担増 を覚悟 で, 1年
生 6ク ラスにつ いて 1ク ラス30名まで増員 し てい る。漢語の基礎が幾分 あるために漢語プ ロ グラムに参加で きない華入学生 には次学期 に再 登録するよう指導が行われ,
また3年
生に対 し ては大教室に変更 しより多 くの学生が受講でき るよう配慮 している。種々の取 り計 らいにもか かわらず例年 70名 以上 もの学生が希望 を満た せないでお り,漢
語プログラム担当の教員は学 外の資金援助による規模の拡大 も考えている。 五 米 国 の漢語 学 習の環境 と課題 上;」iの中文学校やUCLA等
の漢語教育の状 況か らも察せ られるように,米
国における漢語 学習はここ十数年来あらゆる領域でその規模が 拡大 し,
ますます盛んになる傾向にあるが,一
方では解決の待たれ る切実な問題 も散見 され る。ここでは,中
文学校や大学などで現在如何 なる課題が存在するのかを再度整理 し,米
国の 漢語教育の今後を展望することとしたい。 ① 中文学校 と高校 。大学間の教育体系の不整 近年,米
国の中国系住民の間では漢語を学ぶ 者が益々増える傾向にあるが,一
日に漢語学習 と言っても,こ
れには台湾出身者の話す「台湾 国語」の学習 と大陸出身者の共通語である「漢 語普通話」の学習の2系
統がある。両者の間に は,大
きくは字体の不統一 と表音方式の違いが あり,更
に個別の表現,語
彙,語
音,文
のスタ イルなどにも,両
者間で少なか らぬ異同が存在 する。学習者にとっては甚だ不都合であ リー元 化が強 く期待される所以である。 政治的要因があるとはいえ,米
国でイ可万人 も の華人や学生が中文学校 。高校 。大学で2種
の 発音表記 と,繁
体字・簡体字を習 うことの煩わ しさ及びその労力を,教
育関係者は深 く認識す べ きである。中文学校,高
校 と大学間の学習上 のスイッチングの問題は特に華人生徒にとって65
-名古屋学院大学論集 は切実な問題であるが
,現
段階では調整役 とし て中文学校の高学年 クラスの一部 と,高
校 の漢 語教育がわずか に建設的役割 を担 っているのみ である。中文学校の現場では依然賛否両論があ る ものの,大
学の漢語学習 との接続 をスムーズ に行 うためには,表
音方式や字体 などの統一使 用が どう して も必要である。 さらに,中
文学校 は,共
通の教育大綱 をもた ないため,そ
れぞれの漢語教育内容や レベルが 不明確であ り,今
後 は,高
校 。大学 ともスムー ズな移行がで きるように,有
機的教育体系 を整 えることがヽ求め られ る。 ② ピンインと注音符号の問題 米国の漢語表音 システムは,今
で こそ全米の ほ とん どの大学で中国の ピンインが■又り入れ ら れている ものの,従来大学 によってウェー ド式, ユール式,趙
(趙元任)式,
ピンイン方式等 々, それぞれが独 自の システム を使用 していたこ と を考 えると,米
国の漢語教育現場がいかに混乱 した環境 で あったかが想像 で きよう。今 日に 至 って も米国会図書館 は じめ大学図書館の漢語 書籍 目録が十 九世紀末以来のウェー ド式 に基づ いているという状況には驚 きを禁 じ得ない。米 国内における漢語表音 システムの一元化が まず 大 きな課題 としてクローズア ップ され る。 現在 ほ とん どの大学で ピンイ ンと簡体字 (も しくは繁体字)を
採 用 した漢語教 育 を行 うよう になったに もかかわ らず,多
数の中文学校では 依然注音符号 と繁体字 を用 いた教育方式 を継 続 している。 このため一部の大学では簡体字 と繁 体字の2種
が揃 うテキス トを採用 しているが, 漢語の発音表記 については全て ピンインを使用 し,注
音符号 は大学 では用 い られていない。大 学では中文学校 に対 し,生
徒 に ピンインを指導 し,教
材の中では台湾の国語注音符号以外 にピ ンインを書 き加えるよう提案 している。 ピンインに も問題点があるため,中
文学校で は表音方式の選択 について長年 にわたって議論 を沸騰 させて きた。 しか し上述の如 く,
ピンイ ンはすでに大学の漢語教育の主流 になっている ことに変わ りはな く,加
えて学会 。国連・官公 庁 。マ スコ ミな どで もピンインが使用 され,今
後 いっそ う広範 に用い られ る情勢 にある。 今や 中文学校 の中には,
ピンイン教材 と担 当 教師 を確保 で きるな らば ピンイ ンの導入 にやぶ さかではない と考 えるところ も増 えている。中 文学校の発音表記 システムは,い
ずれ ピンイン に移行す ることになろ う。 ③ 簡体字 と繁体字の問題 簡体字 と繁体字の2種
類の漢字 をどの ように 扱 うかの問題 も米国の漢語教育において長 きに 互 って言錆義されて きた問題 である。 中文学校 の 統計資料 によると,全
米 中文学校連合会所属 の634校
の 中文学校 の うち94%が
繁体 字 を教 え, もう一方の全米 中文学校協 会では83校
の うち97%の
学校が簡体字 を教 え, 2年
生 に入 ってか ら繁体字 を習わせている。米国では繁体字が漢 字教育のなかで依然 として大 きな位置 を占めて い ることが窺われ よう。現在,中
国本土以外で 出版 され る華字新聞・ 雑誌等 はほ とん どすべて が繁体字であるため,繁
体字 を習得 しなければ 生徒 は現地発行の華字新聞 を読むことさえ困難 になる。 この ような事情か ら,漢
語教育の推進 には,簡
体字 を学ぶ とともに繁体字 も知 ること が必要であると認識 されている。 高校 の漢語教育の現場 を見 ると, 1年
生 に先 ず繁体字 を教 えるのか簡体字 を教 えるのか とい う問題 については,通
常,各
高校 の教師が生徒 の要望 に基づ いて決めている。 また,2・3年
生 は2種
の字体力編売めて1種の字体が書けるべ きア メ リカの漢語学習の環境 と課題 であるという共通認識が存在す る。 しか し
,高
校生の学習 レベル を考慮 した教育体制が整備 さ れ るこ とが重要であろう。一部の大学では学生 の便 を考え両者2種
が揃 ったテキス トや, 2種
の字体 を併記 した試験問題,宿 題 などを用意 し, 学生 に不利 にな らない ように配慮 している。イ旦 し,高
学年 においては繁体字 と簡体字2種
の漢 字が疇売め るこ とが学生 に求め られている。 一般 に米国では,中
文学校や高校,大
学 を聞 わず依然 として繁体字のテキス トの採用が主流 になってお り,漢
語教育 における簡体字の全面 的導入はまだ まだ先のことであると思われ る。 ④ 資格教師 と人材育成 漢語教育の人材養成はこれ まで一部で積極的 に行われて きたが,多
くは甚だ不十分であ り切 実 な課題の一つ となっている。近年の爆 発的な 漢語学習者の急増のため,有 資格教員が不足 し, 教員の養成が間に合わず,こ
の こ とが充実 した 漢語教育の発展 を阻害 して きた。 現在,米
国の中文学校や高校 。大学で漢語教 育 に携 わ る教師 は,大
き く三つのパ ター ンに分 け られ る。一つは米国で漢語教育を専攻 した専 門教員,二
つ は中国 。台湾 。香港 より渡米 した 漢語教育専門の教員,三
つ は中国 。台湾・香港 か ら来た漢語の専門でない留学生 。研究者が教 師 になっている場合 である。 この うち前二者の 漢語専門教員 は現状 では極めて少数 にとどまっ ている。 ここに,米
国の中文学校の調査 に基づ く統計資料 を示そ う(3)。 調 査項 目 教 師 人数 博十 号I「k得 者 修 士 号取 得 者 学 士 号ユ1又得 者 教 員養 成校 卒 その他 全米中文学校連合会 5540人42%
30.8% 49.7% 9.6%57%
全米中文学校協会 1300人9%
30% 50% 15%以上が元中国 の一級・特級教師 表 を見 るか ぎり,米
国の中文学校の大 多数の 教 員は1辟交的高学歴 であるこ とが窺 えるが,各
教員の専門が漢 語関係 であるか否かは不明であ る。筆者の現地調査で も,現
実 に中文学校の漢 語教員の中には専門の教育を受 けていない者が 多数お り,い
わゆ る中国語 。中国文学出身者は 甚だ少 ない。南加州 の台湾系 中文学校の状況 を 見 ると,
ピンインに通 じた教員は少な く,漢
語 も標準的でない教師がいる。 また,台
湾・香港 か ら渡米 した教師 と中国本土 より渡来 した教師 とでは,
国語表現か ら発音お よび教室用語な ど に至 るまで上騨交的大 きな違いがみ られ るため, 生徒 は学習上判断 にとまどうというのが実態で あ る。99年
夏 に台湾の教育部 は,漢字の発音表記 を 従来の注音符号 に替 えて中国の ピンイン方式 を 採用す る方針 を決定 し,近
々小学校で ピンイン 教育 をスター トさせ るこ とを発表 した。現在, 台湾の地 名・道路名お よびマスコ ミの一部 には すでに ピンインが導入 されている。 しか し米国 カ リフォルニアの中文学校で教鞭 をとる教師は 前述の ご とく大 多数が台湾 出身者であるため, 現実問題 として ピンイン指導の教員が不足 して いる。教師 と学校 自身が ピンインの導入に否定 的であ り,こ
の ことが ピンイン教育 を中文学校 で推進で きない要因の一つになっている。 よっ て南加州の大半の中文学校 は今なお伝統的繁体 字 と注音符号 を用いた漢語教育 を主体 としてお り,一
部の中国本土出身者開設の中文学校のみ が本格的に簡体字 とピンインを用いた教育体制 を とっている。 中文学校 においては ピンインを 教 える教師の育成が今後の課題 であ り,米
国内 の新 たな情勢に対応で きる漢語教師 を養成 。採 用 しては じめて,教
育法 の改善や教材の開発な どを意欲的に進め ることがで きよう。 米国の学校のなかには,漢
語教育において教67
-名古屋学院大学論集 員の資質がいかに重要であるか を認識 し
,人
材 の育成に着手 しているところ もある。例 えば米 インデ ィアナ州では,す
でに高校4校
,中
学4 校,小
学校 10校において漢語教育 を外国語教 育プ ログラムの一環 として組み入れてお り,
と りわけ,教
員養成が漢語教育 を発展 させ る上 で 重要な方策であると認識 されている。1986年以 来,イ
ンデ ィアナ州の小 。中 。高校漢語教員養 成セ ンターではすでに5期
にわたって80人
近 くの中学・ 高校の教員を育成 して きたことが報 告 されてい る(4)。 ⑤TA制
度 とその問題点UCLAの
漢語教育プ ログラムの教員不足 は 実 に深刻 な ものが ある。全学で500名もの漢語 履修者 に対 し現代漢語プ ログラムの専任教員は わずかに中国本土出身者2名であ り,こ
のため 教 育助手のTAを
多数採 用す るこ とに よって 漢語 クラスを維持 している。漢語プ ログラムに は,学
外か らのいわゆ る非常勤講師の制度 はな く,早
急 な人材の確保 (も しくは採用)が
課題 である。 米国の大学院在籍 の外国人留学生 は一般 に奨 学金 を受 け取 る力ヽ 大学の方針 として生活費 を 援助す る目的で教育助手や研究助手 (も しくは 共同研究者)と
して彼等 を採用 し,手
当を支給 している。UCLAの
漢語教育プ ログラムで も上 述 の如 く積極 的 にTAを
採 用 した教 育体 制 を とってい る。今 日日本において も一部の大学で 大学院生 をTAに
起 用す る状況が見 られ るが, 米 国の ようにTAが
単独 で授業 を受 け持 つ例 は極めて少ない。米国のTAの
授業形態 は,非
常勤講師 として 日本の大学院生 な どが中国語の 授業 を担 当す る状況に似 るが,但
し米国では成 績や クラス管理 な どはTAが
独 自に行 うので はな く,常
に漢語教育プ ログラムの専任教員の 指導の下に置かれてお り,TAは
成績評価や単 位 認定 につ いて独立 した決 定権 を もたない。UCLAの
状況 をみ ると,教育助手 として採用 さ れたTA 18名
(2000年2月 現在)は 学内いずれ かの研究科 。専攻 に在籍す る中国人の大学院生 であ り(5),現代漢語の主任教員の指導計画の も とに1∼4年
生の授業 を担 当 してい る。基礎 の 発音練習や漢字指導お よび会話 トレーニ ングな どの実践がTAの
主な役割である。だが,TA
制度 による語学教育システムには矛盾 も見 られ る。漢語教育プ ログラムでは文系 。理系の どの 研究科 。専攻 の在籍 かにかかわ らず中国人留学 生 を対象 にTAを
採用 してお り,そ
の場合,漢
語専攻歴 が必ず しもTAの
採 用要件 にはなっ ていない。これは外国人留学生 をTAと
して起 用す ることが大学の慣例 となっているためであ るが,学
内の外国人留学生への手厚 いサポー ト 精神の余 り,TAの
漢語教師 としての資質 を問 わず,結
果的 に教育内容が疎かになるケース も まま見 られる。TAの
資質の不足 を克服 し人材 を養成す るために,UCLAで
はTAと
して採 用す る中国人留学生全員に対 し,東
ア ジア言語 文化部門開設の大学院科 目「大学漢語教育法」 の受講 を義務づ けている。TAの
資質養成が重 要 な課題 であるため,こ
の漢語教育法 の講義 は 例年,主
任教員が1日当 している。 ⑥ 中文学校 の漢語教材 と大学の漢語 テキス ト 中文学校 で は複数 の教材 を用 い るこ とが 多 い。南加州の大 多数の中文学校では従来台湾政 府僑務委員会編纂の無料の漢語テキス ト『華語』 全12冊
もしくは何景賢主編『児童幸言利 が主 に 用 い られて きたが,近
年 これ と同時 に米国出版 の新 しい副教材 も併用 されている。新教材の内 容 はいずれ も現地 に促 した実用性 が ポイン トに なってい る。アメ リカの漢語学習の環境 と課題 もともと中国や台湾で編纂 された対外漢語教 材は
,内
容が米国の教育事情や生徒の生活環境 を十分考慮に入れておらず,ワ
ンパ ターンで, ピントがずれ,教
授法 と教育精神 も時代遅れで ある,
との指摘が従来中文学校の教師から出さ れてきた。教師は種々のサブテキス トを利用 し 工夫 を行っているが,米
国の社会環境や生活事 情などを視野に入れた教材の編纂が強 く求めら れている。 低学年では,相
応 しいピンイン教材が極めて 不足 しているため,中
文学校によっては単位取 得クラスや ピンイン指導クラスで大胆に北京語 言文化大学編『費用漢語課本』(商務印書館)を 教材 として採用 している学校が少な くない。 し か し,こ
の中国の対外漢語教材は元来大学用の テキス トであ り,必
ず しも中文学校の生徒に適 していない。これはピンインと簡体字によるも のであるが,東
部 ポス トンのC&T出
版社 に よって繁体字版が出版 されてか らは,米
国の大 学漢語教育で広 く採用されるようになった。こ の情勢に呼応 して出版 されたサブテキス トが,UCLA漢
語教育プ ログラム担当の王綺華編纂 の『費用漢語学習手冊』(全3冊
,C&T出
版社1996)で
あり,繁
体字 と簡体字の2種
の版本が 用意されている。これは王氏が,学
生のレベル と教育計画に基づ いて自ら編纂 した教材であ り,それには現代的実用的内容が一部加筆 され, また文型・語法 。文化事項 について漢語 と英語 の比較対照が強調 されている。『費用漢語課本』 の教材を採用 している中文学校の単位取得クラ スでは,こ
の『費用漢語学習手冊』に対する評 価が高い。また前述の如 く,UCLAの
漢語プロ グラムでは1,2年
生用のテキス トとして『費用 漢語課本』が用いられ,『費用漢語学習手冊』が 副教材 として併用されている。米国では近年, この種の補充教材が多数出版 されるようになっ た。 中国で も北米 向けの漢語教材が不十分である ことに鑑 み,近
年 い くつかの新教材が編纂 され た。中国国家対外漢語教学指導 グループの資金 援 助 と内容審査 を受 けて,讐
南大学 の主筆 に よって編纂 された北米版『中文』教材が96年
8 月に出版 されている。現在,こ
の教材 は全米 中 文学校協会系の多数の中文学校で次々に採用 さ れてお り,高
い評価 を得ている。 この教材 は6 年制の計48冊
編成であ り,テ
キス ト12冊
,練
習帳24冊
(A,B2巻
)お よび指導用参考書 12 冊か らなっている。 ピンインと簡体字が採 用 さ れ,新
出漢字表 には簡体字 と繁体字 を併記 し, 合理的配列 と段階的学習に配慮 し,
また本文は 中国 とアメ リカの対照 になってお り,豊
富 多彩 な内容 になっている。各テキス トには教室用お よび家庭用練習ノー ト各一冊が付 け られ,生
徒 の体系的な漢語学習に配慮 している。 この教材 は,適
切 な ピンイン教科書 として現在各中文学 校 で注 目されている。 この ように近年,米
国の各学校 。大学でそれ ぞれの教育内容 と教育 レベル に基づ き多 くの教 材が編纂 され,
また中国本土か らも新教材が出 版 され好評 を博 しているが,内
容の充実 した漢 語教材 は依然不足 している。 とりわけ小中高校 や 中文学校 レベルの生徒 に相応 しい教材の不足 は深刻であ り,漢
語教 育の新 たな構想 を具現化 した低学年用の教科書 と指導参考書お よび`課外 用教材の早急な編纂が強 く求め られている。 ま た,大
学用の ビジネス漢語や上級会話お よび ビ ジュアル漢語 な どの教材 も極 めて不足 してお り,今
後取 り組むべ き課題 は少な くない と言え よう。⑦
中国・台湾への留学制度
米国には 200万 人以上 もの華人が居住 し
,中
69
-名古屋学 院大学論集 文学校 に通 う華 人生徒 は10万人近 くに も上 り
,大
都市 には巨大 な中華街 な どがあって,居
なが らに して漢語や 中国の伝統文化に直に触れ 体 験で きる環境 が存在 してい る。 に もかかわ ら ず,華
人のなかには子女 を中文学校 に通わせず に中国 または台湾 に送 り返 し,直
接本国の学校 に入れて漢語 と中国文化 を学習 させ る父母がい る。 また,華
人子女 自身 も大学 または大学院に 入学後,漢
語学習の場 として中国本土 。台湾・ 香港への帰国留学 または進学 を希望す る者が少 な くない。従来,中
国では海外華僑 と深 いつな が りのある華僑大学,呼
南大学,原
門大学,集
美中国語言文化学校 などご く一部の学校のみが 海外華 人の帰 国留学 を受 け入れて いたが,改
革 。開放が進 むなかで広 く一般大学で も漢語研 修 コースな どを設置 し,華
入学生 (合台湾・香 港等の生徒)の
みな らず外国人留学生 を も受 け 入れ るようになった。 また,台
湾 ではこれ まで 主 として「國立皇湾師範大學國語教學中心」,「中 華語文研習所」,「國語 日報語文 中心」,「美國史丹 佛聯合語文 中心」等で集 中的 に外国人学生 お よ び華入学生 に対 し「台湾国語」の漢語教育 を行 っ て きた。UCLAの
海外留学プ ログラムでは,主 として 外国語の会話力 と聴解 力の向上 お よび外国事情 の理解 を目的に,海
外諸大学への留学制度 を設 けている。それ を受けて,漢
語教 育プ ログラム では,中
国語圏諸国 。地域 お よび漢語 。中国文 化 に関心のある学生 に対 し中国・台湾 な どへの 語学留学 プ ログ ラム を用意 して い る。 これ はUCLA独
自の海外留学プ ログラムであ り,中 国 各地 の 大 学 と協 定 関係 を結 ん で い る。 またUCLAス
タ ッフが一名中国に常駐 してお り,随 時留学生 の現地相談 にあた る教育体制 を とって いる。 ③HSKに
対 する米国の評価 検定試験 は,学
習面では学習状況 をチェック し,成
績 を評価 し,
また教育面では教育効果 を 評定 し,問
題 を発見 し,さ
らに教育法の改善 を 促進 させ る重要 な手段の一つである。学習者 と 教師の積極性 を引 き出すことがで きるため,漢
語の学習・教育向上 のバ ロメーターの一つ とし て,`中 国の トーフル'と も言われ るHSK(漢
語 レベル検定試験)が
米国で も広 く利用 されて き た。 北京語言文化大学の漢語水準試験セ ンターに よって開発 されたHSKテ
ス トは,漢
語 を母語 としない者 (合外国人,華
僑,中
国少数民族) の漢語 レベル を測定す るために制定 された一種 の標準化国家試験である。HSKテ
ス トは現在, 「HSK(基
礎)」 。「HSK(初
。中等)」 と「HSK
(高等)」の3種
に分かれ,例
年 中国 と海外で定 期的に行われている。 レベル到達の証明 として 発行 され る「漢語水準証書」 は,中
国の大学入 学や大学 院受験 に必要 な漢 語 能 力 を有 す る証 明,或
いは漢語水準が一定の レベル に到達 し相 応 の レベル の漢 語 カ リキュラムの修 得 免 除の 証,
さらには漢語の人材登用の際の依拠 として 役立 て られ る。 米国では従来 より4種
の漢語能カテス トが実 施 されて きた。即 ち,初
級漢語能力試験 (Pre‐CPT),漢
語能 力試験(CPT),漢
語 口語試験(CST)お
よび米国大学理事会推進の漢言蕎吾音試験
(SATⅡ
Chinese)で あ り,この うちSATⅡ
Chineseは今や米 国の大学の入学試験 の一部 と して正式 に認め られている。以上の