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管理会計における国際的視点

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管理会計における国際的視点

頼 誠 1.序  会計における国際的問題は,いろいろな形で論ぜられてきているが,国際 会計という範疇は未だ明確にはなっていない。  たとえば,International Accountingには,以下のような定義がある。例え ば,1971年にWeirich, Avery and Andersonが次に示すような三つのアプロ ーチを提示している。 (1)万国共通のシステム,(2)すべての国々のすべての方法と標準を包 含する記述的及び説明的アプローチ,(3)在外子会社と親会社の会計実務。 (1)の概念のフレームワークでは,国際会計とは世界的に一般に受け入れ られた会計原則・実務を考える。(2)では,各国ごとの社会的,経済的,政 治的,および法律上の違いを考慮に入れて,別々の会計原則の存在を認め, それらを比較検討するのである。(3)の概念は,在外子会社と親会社の会計 実務について言及する。この場合,子会社の財務諸表の換算と調整が重要問    1) 題となる。  また,国際会計の分野として,(1)比較国際会計(Nobes and Parkerに よる),(2)標準国際会計(国際会計委貝会(IASC)による),(3)オペレ ーショナルな国際会計(MNCsの営業活動のための会計の特定の要求を含 む),(4)政治的国際会計(国際連合とOECDのような世界的政治機関によ 1) Choi, F.D.S. and G,G. Mueller, “lnternational Accounting”, Prentice−Hall, 1984, PP.17−18.各国の財務諸表については,サンワ・等松青木監査法人編『海外会計実務ハ ンドブック』同文舘参照。

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る)などがある。  以上の見解を踏まえて,Choi and Muellerは国際会計を(1)国際比較分 析,(2)多国籍事業取引に独自の会計測定および報告問題,(3)国際財務 市場の会計要求,(4)政治的,組織的,専門職的標準設定活動による世界的 な会計的および財務的報告書の多様性の調和という目的を志向する会計であ      2) るとしている。これらの諸見解を参考にして,本稿では,企業の活動範囲を 世界へ拡大する場合に,生じてくる管理会計上の問題は何かということを検 討する。特に,第II節では多国籍企業における業績評価を,第III節では国際 振替価格の問題を概観することにする。 II.多国籍企業における業績評価 (1)国境を越えるという意味 a.業績評価上の困難  宮本(1988)によれば,AAAの国際会計委員会の1974年の報告書に基づい て,多国籍企業の場合には,国内の場合に比較して業績評価上どのような困 難があるか,それらの困難の原因があげられている。  第一に,多国籍企業の在外子会社の置かれている環境の相違であり,政治 面,文化面,経済面での国ごとの相違である。  第二に,国境を越えて経済活動を行うために複数通貨単位を使用すること, 振替価格,集権管理方式の採用が,在外子会社の業績評価を困難にしている        3) という問題がある。 b.管理会計プロセスへの影響要因  Kollaritschのいう管理会計プPセスに影響する要因は,上述の業績評価上 の困難を生じる要因を包含しており,より多くの例があげられているのでこ こで取りあげることにする。 2) lbid., p. 18. 3)宮本寛爾著『国際管理会計の基礎』中央経済社,1988年,pp. 196−197.

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 これらの要因とは,文化的要因(習慣,態度,宗教,教育,言語等),経済 的要因(経済システム,経済的特性,経済状態),法的要因(税法,雇用法, 関税および慣行,投資規制等),政治的要因という外部要因と,報告,教育, 戦略等の内部要因である。  たとえば,個人の会計上の業績を比較的良く明示して報酬にリンクさせる 習慣をもつ国と,集団責任が習慣である国とでは,管理会計上の業績評価シ ステムの意味は異ならざるを得ない。(文化的要因の例)  上司が部下の失敗の責任を負うという態度をとることの多い日本と,労働 者と経営者が敵対関係にあるイタリアでは,後者の方がより厳しい監視,頻       4) 繁で詳細な報告が必要になる。(文化的要因の例〉  経済的要因の一つである経済的システムは,計画経済の場合は,マクロ情 報が主として必要とされ,自由経済の場合は,どちらかというとミクロ・コ ントロール,ミクロ・プランニングのための管理会計情報が必要とされる。 (経済的要因の例)  国家経済の特性は,特定の多国籍企業に対する態度や,その国の法律や政 治に反映する。例えば,資源の豊かな国では原油や穀物の輸出が奨励され, 労働力の豊富な国では市場に関する情報が強調され,技術的に豊かな国では 機械化や研究開発が強調される。(政治的要因の例)  その結果,情報や,管理と評価のアプローチもそれぞれの国の状態によっ て異なる。以上,羅列した文化的,経済的,および政治的要因は,法的要因 として表現される。  法的要因とは,税法,雇用法,関税と慣行,投資の規制,少数の利害,情 報プライバシー等であり,これらは意思決定,コントロール,業績評価に影 響する。  たとえば,税金の高い国では振替価格を低く抑えるインセンティブが働く 4) Kollaritsch, E.P., “Managerial Accounting Problems of Multinational Corpora− tions” in “lnternational Accounting” by Holzer, H.P. Harper and Row, 1984, pp. 174 −175.

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50  彦根論叢第265号 かもしれない。収益・費用のとらえ方や評価方法にも税法の規定が影響する。  雇用法については,日本やイタリアでは業績の振るわないことが即,解雇 にはつながらないという例があげられよう。このような国では,管理会計上 の業績評価システムでは,解雇という脅しは使用できず,むしろ満足な業績 に対するインセンティブを与えるという方法が利用される方がよいかもしれ ない。ところが,管理会計の伝統的モデルでは業績が悪ければ解雇されると いうペナルティーを仮定している。(法的要因の例)  管理上の情報システムは以上のような諸要因を考慮してデザインされなけ      5) ればならない。  以上の外部要因の管理会計プロセスへの影響は内部要因によって妨げられ る。  例えば,外部要因は会社経営上,リスクを増加させる。これは,イランに おけるような政情不安や政府による企業資産の没収,米国企業単位による対 日貿易上の輸入統制のリスクを考えてみればよいかと思う。しかし,これら のリスクは管理会計活動のような内部活動によって減少させられうる。現地 管理者による現地に関する親会社への情報伝達がリスクの減少に重大な役割 を果たすし,営業報告は,子会社の管理者,およびその情報の利用者に対し て動機づけ効果がある。  また,国内からのアカウンタントの雇用や,国際的事業取引に伴うリスク        6) に備えて保険をかけるという戦略があげられる。 (2)多国籍企業の業績評価基準 管理会計システムはさまざまな要因の影響を受ける。特に,業績評価シス テムに対してはどのような影響があるのだろうか。  この問題を考えるに際しては海外投資の行われる理由および目標を考察し, その達成度を測定するためにどういう業績測定基準が設定されるかという関 5) lbid., pp.176−179. 6) lbid., pp.179−181.

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係を調べればよい。 a.在外子会社の目標と業績測定基準 * Millerによる10の理由と目標  宮本教授は,Millerによる海外投資の行われる10の理由をあげ,これらを販 売量の維持あるいは拡大,原価の引き下げ,利益の増大,現地国の要請,の 4つにまとめ,目標としている。そして,教授は,在外子会社の価値はその 目標が販売量の維持・拡大の場合は市場占有率・売上高,原価引き下げの場 合は原価,利益増大の場合は利益・ROIで測定されると述べている。  他方,Choiらは, Stonehillらの研究をとりあげて,業績評価の主要な目標 は,「十分な収益性の保証」であるとしている。Choiらのあげている,「企業 が海外へ進出する理由」としては,「資源の獲得,生産コストの低減海外市 場での現在の地位の維持,新たな市場の創造,ビジネス・リスクの分散,多 くの生産単位問での共通費の配分等」がある。これら「海外へ進出する理由」       7)は,戦略的性格をもち,短期的利益ほど簡単に数量化されない。これらの諸 目標およびそれらを測定するための測定尺度には,財務的なものと非財務的 なものとが混合していると思われる。  そこで,次に財務的業績基準と非財務的業績基準,そして組織単位の業績 測定とその管理者の業績評価を区別して考察しているChoi, et al.(1984)の 見解を次に紹介しておこう。 * Choiらによる業績基準  まず,彼らの見解によれば,業績評価システムにおいては,財務的基準が       8) 非財務的基準よりも重視されているという。  また,彼らは事業単位の業績と管理者の業績とを区別する必要性を説いて 7) Choi, et al. op. cit., p. 405. 8) lbid., p.422. 9) lbid., p.421.

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     9) いるけれども,彼らの実態調査の結果によれば,両目的に利用される業績指       10) 標を特に区別することなく単一の評価尺度を使用する場合がしばしばある。 Choiらによれば,財務的基準についていえば, u.s. MNCs(アメリカ合衆国 の多国籍企業)とnon−U.S. MNCs(アメリカ合衆国以外の多国籍企業)は, 両方とも,海外の事業単位の業績評価のための最も重要な財務的基準として,       1!) 予算利益,その次に投資利益率をあげているといっ。一方,Kollaritschによ       12) れば,予算を利用している企業がほとんどで,その次が利益であるという。  表1によれば,財務的業績尺度として,重要な尺度は,実際利益,実際売 表1 海外事業単位およびその単位の管理者の業績評価のために使用される財務基準 項  目

US MNCs

N=64 平均* NonUS MNCs 回答総数

N=24 N=88

平均*    平均* 単位 管理者単位 管理者単位 管理者 投資利益率 持分利益率 資産利益率 売上利益率 一株当り利益への貢献 子会社への営業キャシュ・フロー 親会社への営業キャシュ・フロー一一 残余利益 実際売上高に比較される予算 実際利益に比較される予算 実際投資利益率に比較される予算 実際資産利益率に比較される予算 実際持分利益率に比較される予算

20414562835212322322311223

19295254944722221322311223

20312783644792322322311222

80328534053611322222321223

1.9 2.2 3.0 3.0 2.3 2.3 2.1 2.1 3.0 3.2 2.4 2.7 2.3 2.7 3.4 3.3 1.9 1.7 1.5 1.3 2.3 2.4 2.7 2.5 3.1 3.0 *1=最:も重要  2=重要  3=それほど重要でない  4=利用されない Choi, et aL (1983) p. 16 10) Choi, F.D.S, and J.J. Czechowicz, “MNCs’ Assessment of Foreign Subsidiary  Performance”, Management lnternational Review, Vol. 23, 1983, p. 14. 11) Choi, et al. (1984) p, 422. 12) Kollaritsch, op. cit., pp. 190−191.

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表2 海外事業単位およびその単位の管理者の業績評価のために使用される非財務的基準 項  目

US MNCs

N=64 平均* Non−US MNCs 回答総:数

N=24 N=88

平均*    平均* 単位 管理者単位 管理者単位 管理者 増加する市場占有率

品質管理

親会社や他の関連会社との協力 現地政府との関係 環境への適応 従業貝教育 従業貝移動率 海外事業単位における研究開発 生産性の改善 従業員の安全 社会へのサービス

5908305212811212223222

8241447!249

12222223222

1。

59093061027

k212223222

83414480049

L2。222223222

謁っ’12遵。2マ﹂渇3ゐ

12212222122

U罷鷺鷺習羅

*1=非常に重要  2=重要  3=それほど重要でない  4=重要でない Choi, et al. (1983) p. 17 上,売上利益率,および投資利益率のそれぞれに比較される予算である。そ       13) して,売上利益率,投資利益率,資産利益率であるという結果がでている。  他方,非財務的基準は,財務的基準ほど重要であると考えられていない。 その理由は測定上の困難1生にあるのだろう。いくつかの非財務的基準の中で も,市場占有率が最重要であるとみなされており,その他に,生産性の改善, 現地政府との関係,品質管理,従業員の啓発と安全が,多国籍企業全体によ って重要であるとみなされている。研究開発活動,地域社会への奉仕などは, それほど評価されない。以上の結果は,U.S., non−U.S, MNCs両方について   14) 言える。  こういつた非財務的基準は,長期的業績に重要な意味をもつ活動に関する     15) ものである。以上のように,論者により微妙な差はあるものの,財務的業績 13) Choi, et al., (1983) p. 16. 14) lbi d., p. 16.; Choi, et al., (1984) p. 422.

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尺度としては,利益,および利益を分子とした比率であるROI, ROA,売上 利益率,そして各種の予算が使用されていることがわかる。  そして,非財務的基準を利用することにより,長期的業績にも管理者の眼 を向けさせる可能性がでてくる。だが,業績基準は多過ぎても管理者の注意 を散漫にさせるし,逆に少な過ぎても業績に偏りがでてくる。 * 短期的業績測定基準と長期的業績測定基準  例えば,「期間利益額」で評価される管理者は,利益の増加にのみ動機づけ        16) られる恐れがある。換言すれば,短期的利益極大化のみに執着し,長期的利 益極大化につながる努力を怠ることになるということである。  米国企業の管理者は短期的利益の極大化に執着する傾向があるといわれる。 その理由としては,第一に,米国企業の場合は,資本金の約半分を株式によ って調達するため,株主は毎年収益をあげるよう経営者に圧力をかけるため であろう。また,管理者も業績が悪いとすぐに降格,左遷される傾向がある のかもしれない。これに対し,日本企業の場合はどちらかというと,設備投 資を盛んに行い長期的利益を重視する傾向があるという。これは,日本企業        17) が資本金の大半を銀行からの借入れに頼ることができるという事情,株主が        18) 将来の株価の値上がりを選好することによるものであろう。  第二に,米国企業においては,トップ・マネジメントに対する報酬システ        19) ムの多くは短期的財務業績に基づいていると言われている。その上,地位と 給与によってのみ評価は表わされると考えられている。他方,ヴォーゲルに よれば,日本企業では,個人の昇進のために重要なのは協調性であり,グル 15) Choi, et al., (1984) p, 408. 16) Kollaritsch, op cit., p. 191. 17)ヴォLゲル・E.F.著,広中和歌子・木本影子訳『ジャパンアズナンバーワン』TBSブ  リタニカ,1979年,164頁,186頁。 18)日本の株主の発言力が小さい証拠としては,配当性向の小ささにも表れている。(日経  新聞1990年7月1日) 19)加登 豊稿「業績評価と利益情報」企業会計,第39巻第8号,1987年,85頁。

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一プメンバーの高い評価を受けることが最も重要であると考えられていると いう。したがって,同期生同士の給与や肩書きの差は米国企業ほどにはない          20) のが普通であるという。  個人の会計上の業績が個人の報酬に連動する部分が米国企業に比べて少な いといわれるのも,多分,日本企業の場合は,競争によるメリットよりも組 織への帰属意識と自尊心をもたせて人間関係のストレスを最小限にする方の メリットのほうが大きいと考えられているためであろう。  このことはまた,業績評価システムを処罰というよりは賞賛のシステムと して設計したり,集団責任制をとる点にも現れていると思われる。日本企業 では,業績評価システムを設置する場合に以上のことを考慮に入れる必要が あろう。  各国の状況と照らしあわせて,日本的経営の弊害とも関わらせて,管理会 計システム,特に業績評価システムとしてどういう方法が望ましいかという 問題は重要であると思われるが,この点に関しては別の機会に論じることに する。  その他,加登(1987)によれば,第三に,M&Aを防ぐため短期的財務業 績をあげておく必要のあること,第四に,四半期報告書作成の義務づけも短        21) 期的財務業績が重視される理由としてあげられている。  再臨すれば,設定される基準を単一にすると問題が生じうるし,逆に多過 ぎても注意が散漫になり基準問のコンフリクトがある。企業が置かれている 環境状況に応じて諸基準問にウェイトを付ける問題は未解決である。  次に,特に重要だと思われる基準について若干の解説を加えておきたい。 * 利益,ROI, ROS, SOA,予算について  Robbins and Stobaughによれば,多国籍企業においては,財務担当重役の 95%が在外子会社を国内子会社と同じ基準で評価していると回答しており, 20)ヴォーゲル,前掲書,171頁。 21)加登,前掲論文,85頁。

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      22) しかも,基本的業績測度として投資利益率(ROI)を使用しているという。  ROIは利益と投資額の関係を表現した指標である。ただし,利益として,税 引前利益,税引後利益,営業利益のどれを使用するのか,投資額として,持 分,減価償却後総資産のいずれを用いるのかによって,さまざまな組合せが     23) 考えられる。  Choiらによれば,例えば利益については, u.s. MNCsは,税引前利益を利 用す’る企業と税引後利益を利用する企業に分かれるのに対し,non−U.S.        24) MNCsは,税引前利益を選択している。一般に後述の管理可能性の観点から 子会社の業績評価には税引後利益が用いられ,管理者の評価には税引前利益      25) が利用される。  また,分母として持分(自己資本)を用いる場合は,減価償却後山資産を 用いる場合よりも管理者は現地でより多くの借り入れをするという効果が  26) ある。  在外子会社がインベストメント・センターである場合はROIを利用すれば,       27) 在外子会社の管理者をコストの減少,収益の増加へ動機づける可能性がある。  他方,ROIに関しては以下のような批判がある。 ROIは,1.短期的営業活 動の結果を強調しすぎる。2.その結果,非財務的業績を軽視することにな る。3.ROIは,首尾一貫しない意思決定を引き起こす。4.多国籍企業子会 社間の比較や国内子会社と在外子会社との比較のような子会社間の比較は不     28) 合理になる。  以上のようなROIの限界のためか, Robbinsらの研究によれば,在外子会社 22) Robbins, S.M. and R.B. Stobaugh, “The bent measuring stick for foreign subsidi−  aries”, Harvard Business Review, September−October 1973, p. 82. 23)宮本,前掲書,189頁。 24) Choi (1983) p. 17.; Choi (1984) p.422. 25) Kollaritsch, op. cit,, p 191. 26) Robbins and Stobaugh, op. cit, p. 82. 27) Kollaritsch, op. cit., p. 193. 28) Mueller G,G., H, Gernon, and G. Meek, “Accounting−An lnternational Perspec−  tive”, Richard D. lrwin lnc., 1987, p. 124,

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のほとんどは,ROIだけを業績尺度として用いるのではなく,補助的技法も用       29) いている。その中で最も重要なのは予算である。予算が重視されるのは,そ れが各子会社に特有の環境を考慮に入れるからである。例えば,現地の状況 にあわせて予算のタイトネスを決め,子会社の能力をしんしゃくして業績を        30) 評価するのである。また,予算が国際的事業において利点をもっているのは, 親会社の経営者による「例外による管理」が可能になる点にある。大きな差 異のみが本社へ報告されなければならないので,報告書の数を減らすことが     31) 可能になる。以上の理由から,Choiらの見解でも,予算は経営者の業績評価 に,より一層適切であり,ROIは資源配分を決定するために事業単位業績を測        32) 定するのに,より一層適切であるとされる。Robbinsらも同様の見解をもって いる。  ROIの他に,売上利益率(ROS)も広く利用されている。それは,管理者 が資産や投資に対してコントロールを行わないならば,ROIが利用できない ので,子会社管理者の業績の測定にはROSが適切であるという理由のためで ある。       33)  資産利益率(ROA)も子会社の業績測定に広く利用されている。        34)  ROAは,資産の利用が利益を生む効率性を表現している。国際的事業にお いても,粗資産と純資産のどちらを利用するか,特定のどの資産が含まれる か,あるいは排除されるか,資産評価が問題になる。  まず第一の点については,子会社が,財務的に親会社から独立でない場合 は,粗資産は比較的安定しているから,ROAの分母として利用されるべきで ある。.一方,減価償却によって得られる資金や他の現金支出のない費用が本 29) Robbins and Stobaugh, op. cit, p. 82. 30)Ibid., p.83.;宮本,前掲書,195頁。 31) Kollaritsch, op. cit., pp. 190−191. 32) Choi, et aL, (1984) p.408. 33) Kollaritsch, op. cit., p. 192. 34)資本は資産の源泉であるから,ROAはROIの一種であるという見解がある(増谷裕久  著『分析会計論』中央経済社,1986年,6章)。

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社によって左右されるであろうがために純資産は年々小幅に増加する傾向を もつであろう。  第二の点は,例えば,ある余分の資産についてある管理者が管理可能なら ば,その資産を排除する責任は彼にあり,業績測定基準にその資産を含むべ きである。しかし,子会社の収益性測定やその潜在力の決定のためには,余        35) 剰資産(excess assets)は排除されるべきである。  第三の問題は,時々,年100%を超えるインフレーションのあるブラジル, アルゼンチンのような国において重大な問題になる。すなわち,取得原価に        36> よる資産の評価は無意味になる。売上原価の過小表示と使用資本の過小表示        37) はROIの過大表示も招くことになる。その結果,インフレーションの程度の異 なる国家間において,子会社業績を比較する場合や,業績の期間比較が無意          38) 味になる可能性がある。  なお,多国籍企業が目標整合性の面からみてより優れている残余利益(RI)        39) を比較的利用していないのは意外である。 b.在外子会社の業績測定とその管理者の業績評価との区別  業績測定を考える上で,一つのポイントは,在外子会社の業績測定(その 子会社の親会社およびその他の子会社をあわせた全体業績に対する貢献度の 測定)と在外子会社の管理者の業績評価を区別すべきかという議論である。  両者を区別するという見解では,在外子会社管理者の業績評価の場合も, 管理者に対して委譲されている権限と,負わされている責任を明らかにする ことが重要になる。というのは,業績尺度となる原価・収益・利益,ROIの分 35) Kollaritsch, op. cit., p. 192. 36) lbid., p.193, 37) Choi, et al. (1984) p.411. 38) lbid. 39)ROIを使用すると,子会社は全社的には採用すべき資本コスト率を上回るROIの投資  案を,その子会社のROIが悪化するという理由で採用しない場合がある。けれども, RI  は資本コストを上回る利益がでるならばその投資案を採用するよう動機づける。数値例  は,岡本清著「原価計算』国元書房,1990年,669−670頁参照。

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子・分母について,どれくらいの期間について誰にとって管理可能かという 点について検討し,原則として管理可能な範囲についてのみ責任を負わすの が公平であるとみなされるからである。  Muellerらが,管理者は,利子,税金,為替差損益などを控除する前に評価        40) されるべきであるとしているのもこの考えに基づいている。そして,Choiら によれば海外事業単位の業績評価システムの主要目的は,十分な収益性の保       41) 証であり,海外事業単位の管理者の評価は二次的に重要であるとされる。  ところが,管理者の業績評価と海外事業単位の業績測定の区別の重要性に 気づいているにもかかわらず,いくつかの企業では,この区別が曖昧なもの         42) になっているという。  そこで,多国籍企業について,この問題を考えるにあたって,宮本教授は, パールミュッターの見解に従い,多国籍企業を(1)本国志向型,(2)現地 志向型,(3)世界志向型の三つに分けている。Choiらも同様の分類を行っ ている。  本国志向型では,子会社は多国籍システムの戦略的構成要素である。海外 の事業単位は,本社による密接なコントロール下に置かれており,自律性は   43) 少ない。この立場をとれば,海外と国内で使用される情報システムは大差が ない。  現地志向型では,在外子会社は現地の状況に応じて行動すべきであるとし て,かなりの意思決定権限が在外子会社の管理者に委譲されている。この場 合は,現地国の目的を考慮して経営が行われる。したがって,情報システム をデザインするに際しては,現地の特性をもったデータを組み入れることに なる。  世界志向型では,在外子会社の管理者は,全世界的目的の達成のために努 40) Mueller, et al., op. cit., pp. 133−134. 41) Choi, et al., (1983) p. 15. 42) Choi, et al. (1984) p.422. 43)宮本,前掲書,203頁;Choi, et al.,(1984)p.395. p.42!.

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      44) 訂するよう動機づけられる。  以上の分類から,子会社と管理者の業績を区別しない場合というのは,お そらく,子会杜がプロフィット・センターとして存在している現地志向型の 企業であろう。  ところが,国際的に経営活動の範囲を拡大することによって,振替価格の 決定,投資政策,外部からの金融など,在外子会社の管理者にとって重大な       45) 意思決定の多くはしばしば本社によって行われる。次節で述べるような振替 価格の設定による節税は,本社による決定に依存し,政府による投資規制は 一部の子会社のみに影響し,さらに為替相場の変動も会社の業績に重大な影     46) 響を与える。  すなわち,子会社は委譲されている権限の幅は狭く,また管理不能な要因 も多い状況にあるので,プロフィット・センターとして扱い難い場合が多く あり,そのようなケースでは管理者の業績と子会社の業績は区別する必要が ある。  また,海外子会社は国内子会社に比較して経済的,政治的,社会的諸条件 はさらに複雑になる。けれども,トップ・マネジメントは各環境の特性のす べてを理解していないことが多いので,管理者の業績を正しく評価できない 恐れがある。多国籍企業全体に対する子会社の貢献を認識するのも,グロー        47) バルな営業活動のもとでは,より一層困難になる。それでも,現実には国内 と国外の子会社について,同じベースで評価が行われているとChoiは述べて  48) いる。 44)宮本(1988),203頁:Choi, et al.,(1984)p. 395. 45) Choi, F.D.S. “Multinational Challenges for Managerial Accountants”, Journal of  Contemporary Business, Autumn 1975, p.63.;宮本寛爾稿「多国籍企業管理会計の基  本的課題」企業会計,Vol. 39 No.11,1987年3頂。 46) Mueller et al. op. cit., p. 120.; Choi (1975) p. 63. 47) Mueller et al. ibid., p. 127. 48) Choi, op. cit., (1975) p.64.

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c.換算の問題  国際的事業が避けて通れないのが換算の問題である。宮本(1989)による 米国多国籍企業における1969年から1982年までの業績評価システムの研究の レビューによれば,海外子会社の業績評価には,(1)1969年と1970年の調査 では,米国ドルに換算後の財務情報を利用している多国籍企業がほとんどで, (2)1973年の調査では,米国ドルに換算後の財務情報を使用している企業と 現地通貨の財務情報を利用している企業が同数で,(3)1978年の調査では, 米国ドルの財務情報を利用している企業の方が多かったという。(4)さら に,1982年の調査では,米国多国籍企業では本国通貨を利用している方が多       49) く,ヨーUッパ多国籍企業では現地通貨を利用している方が多い。  なぜこういう結果になっているのかは明らかではない。米国ドルの利用が 多かった時期について考えられうる一つの理由は,本国主義がとられていた       50) ためであろうか。  現地通貨を使用する企業は現地主義の立場をとっている。この立場は,親 会社との間に,資金の調達や財の売買の代金のやりとり等の相互依存関係が 少ない場合にとられると思われる。  また,Muellerらによれば,ある子会社が通貨の安定した国において営業し ている場合には,現地通貨,米国ドルのどちらを使用しても子会社の業績測 定は意味がある。ところが,通貨が不安定な場合には,現地通貨情報の方が 有用であるという。これは,換算によって情報が歪曲される恐れが少ないか らであろう。  また,活動している環境が異なる子会社間では,米ドル・現地通貨のどち        51) らを使用しても単純な財務諸表の比較は有用ではない。  なお,管理者の業績評価に関しては,管理者の管理不能な項目である利子, 49)宮本寛爾著『多国籍企業管理会計』中央経済社,1989年,87頁。 50)嶺 輝子稿「アメリカにおける1970年代前半の外貨換算会計の実態と問題点」会計,  第137巻軸2号,1990年,174−177頁,184頁参照。 51) Mueller et al. op. cit., p. 130.

(16)

62  彦根論叢第265号 税金,為替差損益などの控除前に現地通貨による評価が行われるべきである というのが原則である。これは,前に述べた管理可能性原則の考え方に基づ いている。そして,子会社の業績測定はそれらの管理不能費の配賦後,米ド       52) ルで評価される。  さて,業績測定値は次節で述べる振替価格によっても重大な影響を受ける。 そこで次に,換算の問題も含めて国際振替価格の問題に移りたい。 III.国際振替価格  振替価格とは,財貨・用役が組織単位問で振り替えられる場合に設定され る価値である。内部振替価格の場合,振替価格の機能としては,意思決定機 能,業績評価機能,および収益性評価機能があげられる。  中間生産物の振替をめぐって,供給事業部と受入事業部の意思決定が組織 全体の目標を達成するような決定となるように,振替価格が設定されなけれ ばならない。これが意思決定機能である。これに対して,振替価格は供給事 業部にとっては収益,受入事業部にとっては費用の計算要素である。すなわ ち,振替価格をどう設定するかにより組織単位の利益は左右される。この利 益は管理者の業績評価および組織単位の収益性評価に利用される。振替価格 の業績評価機能は管理者の業績を正確に評価しうるような振替価格を設定し ようとする機能であり,収益性評価機能は,組織単位へ投資した収益性を測          53) 定するという機能である。  内部振替価格の場合に比較して,国際振替価格の機能ないし目的には,以 下のように,内部振替価格の場合には存在しなかったものも含まれる。これ らのうち,9.h. i.は内部振替価格の機能でもある。 a.所得税の減額 b.関税の減額,c.海外の為替リスクの最小化, d. 52) lbid., p.130, p.134. 53)谷 武幸稿「1970年代における内部振替価格論の展開」国民経済雑誌,第141巻,第2  号,1980年,85−86頁。

(17)

(400/.) A       管理会計における国際的視点 図1 低税率の国への振替による節税  (200 , OOO一 140 , OOO) × O . 4 = 24 , OOO       ¥200,000

B

  ¥15 (150,000一 ×O.4 =4, ,ooo −150,000) ooo       (leo/.) c 現地国政府とのコンフリクトの回避,e.キャシュ・フローの管理, f.競        54) 争,9.業績評価,h.動機づけ, i.目標整合性  以下では,主としてこのうち,a. b. e.9.をとりあげる。 a.節税効果        55) 振替価格設定目的としては,まず税金の削減がある。 (例1)低い税率の国への振替による節税  例えば,A, B, Cの3社があり,親会社Aから,在外子会社Bへ取得原 価14万円の財を20万円で売ると(200,000−140,000)×0.4=24,000円の税金 がかかるところ,税率が10%と安い国にあるC社へ認められうる限り安い価 格15万円で一旦売ったことにして,その後B社へ認められうる限り高い価格 20万円で売ると,税金は,(150,000−140,000)×0.4=4,000円と(200,000 −150,000)×O.1=5,000円の合計9,000円となる。つまり,24,000−9,000= 54) Abdallah, W.M., “lnternational Transfer Pricing Policies”, Quorum Books, 1989,  p. 48. 55)安田順一稿『監視強まる国際移転価格』日本経済新聞,1989年3月23日参照。

(18)

15,000円の節税効果があったとみなされるわけである。        56)  例1は,振替価格の操作により税率の高い国から低い国へ利益をシフトさ せ,換言すれば,低税率の国へ低い振替価格で,低税率の国からは高い振替 価格で財を振り替えることにより,全体としての税金負担額を最低にしょう とするケースである。次の例2は,所得税のみならず輸入関税も考慮に入れ る場合の振替価格操作による節税効果の例である。 (例2)所得税と関税の節税効果  在外子会社Aは,生産物を$5(低い振替価格の場合)あるいは$6(高 い振替価格の場合)で20,000単位生産し,子会社Bへ16,000単位販売する。 B社はさらに$12でこれを販売する。所得税率はA国,B国それぞれ30%, 50%であるとしよう。  振替価格が$5の場合,輸入税はB社への売上高の15%$12,000である。       表3 純利益に対する振替価格,所得税,関税の効果        A       B     全  体 低い振替価格: 売上高   16,000@$ 5.00   16,000@ $ 12.00 差引:売上原価    輸入税    @150/o 粗利益 差引:販売費・一般管理費 税引前利益 差引:所得税    (30%&50%) 純利益 $80,000 (68,000) 12,000 (10,300)  1,700 (510) 1,190 $ 192,000  (80,000) (12,000) 100,000 (75,000) 25,000 (12,500) 12,500 $ 192,000  (68,000) (12,000) 112,000 (85,300) 26,700 (13,010) 13,690 Abdallah (1989) P. 35 56)多国籍企業による振替価格の操作に関する研究ついてはいくつかの実証研究がある。  ラグマン・AM.著,江夏健一国訳,『多国籍企業と内部化理論」ミネルヴァ書房,1985  年参照。

(19)

 表4 A       B     全  体 高い振替価格: 売上高   16,000@$ 6.00   16,000@ $ 12.00 差引:売上原価    輸入税    @150/o 粗利益 差引:販売費・一般管理費 税引前利益 差引:輸入税    (300/.&soo/.) 純利益 $ 96,000        $ 192,000 (68,000) (96,000)         (14,400)

28,000 81,600

(10,300) (75,000)

17,700 6,600

 (5,3/0) (3,300)

 12,390 3,300

$ 192,000  (68,000)  (14,400) 109,600  (85,300)  24,300  (8,610)  15,690 Abdallah (1989) P. 35 高い振替価格: 売上高   16,000@$ 7.00   16,000@$12.00 差引:売上原価    輸入税    150/o 粗利益 差引:販売費・一般管理費 税引前純利益 差引:所得税    (300/.&soo/.) 純利益  表5 A       B     全  体 $ 112,000  (68,000) 44,000 (10,300) 33,700 (10,110) 23,590 $ 192,000 (112,000) (16,800)  63,200  (75,000) (11,800)  一〇一 (11,800) $ 192,000  (68,000)  (16,800) 107,200  (85,300)  21,900 (10,110)  11,790 Abdallah (1989) P.37 この輸入税はB国において所得税控除前に控除されるから,輸入税が増加す るほど所得税は減少する。振替価格が$6の場合は,$5の場合に比べて輸

(20)

入税が$2,400増加した代わりに所得税が全体で$4,400減少する。結局,全        57) 体としては税金は$25,010から$23,010へ減少する。  さらに,振替価格が$7に設定された場合,$5の時に比較して,B社に ついては,一振替価格の増加額$32,000一輸入税の増加額$4,800+所得税の 減少額$12,500=(一$24,300),A社に関しては,振替価格の増加額$32, 000一所得税の増加額$9,600=$22,400,全体としての純利益は$1,900減  58),59) 少する。 b.業績評価に対する振替価格設定の効果 * 子会社の価値評価  宮本教授は,在外子会社の価値の評価のための国際振替価格は,本国通貨 によって設定される方が有効であるという。なぜならば,在外子会社の価値 の評価は,本社の意思決定に役立つことを意図しているからである。  さらに,利益を「為替相場の変動のために生ずる転換差損益や換算差損益, 各国で異なる支払利息等の財務費用および税金,そして各国政府の課してい る規制による支出や収入をすべて加減した後の本国通貨に換算」することが 57) Abdallah, op. cit., pp. 34−35. 58) lbid., p.36−37. 59)振替…価格T,A社の所得税率t1, B社の所得税率t、, B社の輸入税率1とする。   (A)t,= 30%,t2=50%,1=15%である場合, Aの純利益は,(16,000T−78,300>  (1−0.3)=11,200T−54,810, Bの純利益は,[192,000一{16,000T(1十〇.15)十75,  ooo}] × a−e.s) =ss,soo−g,200T  所得税は税引前利益が正の時のみとられるから, [・]==117,000−18,400T〈0の場  合,すなわちT>6.358の場合,(11,200T−54,810)+(58,500−9,200T)=2,000T  十3,690,T≦6,358の場合・,(11,200T−54,810)十(117,000−18,400T)=62,190−  7,200Tとなる。   (B)T=5の場合,Aの純利益=1,700(1−t、), Bの純利益={192,000−80,000(1  +1)一75,000}(1−t2)=(37,000−80,0001)(1−t2)であるから,全体的純利益R  は,R=1,700(1−t、)十(37,000−80,0001)(1−t2)となる。(37,000−80,0001)  は,1>0。4625の場合に正であるから,Rはtl, t、が小さいほどRは大きくなる。逆に,  1<O.4625の場合は,(37,000−80,0001)は負となり,tlが小さいほど, t2が大きいほ  ど,Rは大きくなる。

(21)

    60) 必要になる。 * 管理者の業績評価  これに対し,在外子会社の管理者の業績評価のための国際振替価格は,利 益,あるいはROIがその管理者とって管理可能なものとなるように設定する ことが必要である。すなわち,在外子会社の管理者が国際振替価格の設定に 参加し交渉するといった形で関与することがどの程度可能かによって,在外 子会社をプロフィット・センターとして利益責任を負わすことができるかど うかが決まる。この場合の国際振替価格は,宮本教授は市価に近い原価加算       61) 法,標準原価プラス資本コストで設定される価格がよいとしている。  さらに,プロフィット・センターとしての在外子会社の管理者に転換差損 益あるいは換算差損益についての管理責任が課されている場合について,宮 本教授は振替価格が本国通貨で設定されること,予定された為替相場と現実 の為替相場とに非常に大きな差が出た場合に例えば以下のような計算を行う ことが提案されている。 新しい振替価格=古い振替価格×現在の為替相場/予定された為替相場  この方法は,ハニウェル会社の用いている方法をMillerが紹介したものに 基づいているが,Abdallahによって紹介されているMalmstromによる方法 もこの方法と実質的に同じである。

 NTP=OTP×CER/PER

   NTP=新振替価格    OTP=旧振替価格    CER=現在の為替相場  PER=計画為替相場 (例3)為替相場の変動にあわせた振替価格調整の効果 表6は,英国の子会社Aからスイスの子会社Bへ振替を行う際の業績評価 に対する振替価格設定の効果を示している。表7は,英国,スイスの通貨の 60)宮本(1988)208−209頁。 61>宮本,前掲書,209頁。

(22)

68  彦根論叢第265号 ドルに対する為替相場の変動に伴い,振替価格NTP=$5×SF2.00/SF1. 49=$6.71に設定した場合の効果を示している。このように,Malmstromの システムを利用すると,為替相場の変動にかかわらず,売上利益率は変化し ない。しかし,ドルに換算した世界的利益は$43,700から$58,652となり, いわゆる換算差益$14,952がでてくる。この差益は,A社が$2,266, B社が $12,686受け取ることになる。したがって,為替相場の変動により,ドルに 換算された利益額で表現される財務的業績が歪められていることには変わり   62) がない。 C.為替相場の変動と節税  例3では,為替相場の変動が業績評価に与える影響と振替価格の調整によ る効果を考察した。例1,例2では為替相場の変動を考慮していなかったの で,例4では,為替相場の変動を考慮に入れた節税効果について述べる。 (例4)利益のシフトによる節税効果  課税年度の最終日に優勢な為替相場が外国税負担額を決定するために利用 される予定であるけれども,為替相場がU.S.税の支払日に異なっているなら ば,再評価が行われるためにU.S親会社の税負担額は変動する。         表6 業績評価に対する振替価格の効果          子会社A       (売手) 売上高      US$    UK  16,000@$ 5.00 $80,000 £49,080 差、囎欝2’00(68,。。。)41,718 粗利益      12,000   7,362 差聾販売費・一般管理費  (5,300)   (3,252> 税引前純利益       6,700   4,110 売上利益率         8%     8% 子会社B       全体的利益  (買手)

 US$ SF US$

$19i:8バ糠 $}翻1)

112,000 75,168 124,000 (75,eOO) (50,336) (8e,300)  37,000 24,832 43,700  19% 190/o 22.80/o      Abdallah(ユ989)P.44 62) Abdallah (1989) pp.42−45.

(23)

表7 売上高  16,000@$6.71 差引:売上原価 粗利益

純利益 売上利益率 為替相場:       管理会計における国際的視点 為替相場の変動に応じて調整された振替価格の効果 販売費・一般管理費 子会社A  us$ $ 107,360  〈91,279)  16,081  (7,115)  8,966  8%

 UK

£49,068 (41,718)  7,350  (3,253)  4,098  8% 子会社B

 US$ SF

$257,718 SF 128,859 〈107,360) (53,691) 150,358 75,168 (100,672) (50,336)  49,686 24,832

 19% 190/o

£ 1.00=$2.188(US$) sF 1.oo=:$2.oe (us$) (外国通貨の変動に応じて調整された)新振替価格=$6.71 全体的利益  us$ $ 257,718  (91,279)  166,439 (107,787)  58,652  22.80/o Abdallah, (1989) P. 45  そこで,以下の例では振替価格設定を通じて利益をB国の子会社からA国 の子会社へ500FC($250)シフトさせることによって,$504から$378へ全 体的税負担額が減少するという節税効果のあることが示されている。  すなわち,利益のシフトがない場合,A国, B国では$!=2FC,であると する。現地通貨で現された利益はドルに換算:するとA国,B国それぞれ $500,$1,000である。税率が両国共に30%であるとすると,税金は$150, $300で,純利益は$350,$700。U.S.の税率は48%であるから,$168,$336 である。  次にA国においてドル高になると期待される場合である。Coburnらは,振 替価格設定メカニズムを通じて利益をシフトすると述べているだけで,その 具体的説明はない。  例えば今,振替価格設定基準として全部標準原価基準を採用し,財がBか らAへ一単位振り替えられる場合に,その振替価格(TP)は, TP=cost十2 FCであるとする。すなわち, B国の子会社利益は2FC×1,000=2,000FCであ る。A国の子会社は, TP+販売費・一般管理費にさらに一単位あたり1FCの 利益がでるように上乗せして販売するので,A国の子’会社利益は1FC×1,000 =1,000FCである。  次に,振替価格がTP=cost十1.5FCと低く設定されることにより,1.5FC

(24)

×1,000=1,500FC, A国の子会社についても,一単位あたり1.5FCの利益が でるように上乗せして販売するので,A国の子会社利益は1,500FCである。       63),64)  以下,利益のシフトがない場合と同様に計算される。  ここで,注意するべきことは,国際振替価格というものは内部政策といつ よりも,「外国政府の影響」(所得税・関税による)や「国際市場において決 まる価格」,「現地政府の安定性」等の影響を受けるという点である。たとえ ば,経済的に発展途上にある国ほど振替価格は財貨を受け取る国の経済に効        65) 果を与えるという点で規制の行われる可能性は大きい。  それでも,規制に対して企業は抵抗するかもしれない。たとえば,送金手 段としての振替価格の利用は,配当や利益が送金を規制されている場合に有 効となる。また,ある現地政府が一定金額の上限を定めて輸入規制を行って 63) Coburn, D.L., J.K. Ellis and D.R. Milano, “Dilemmas in MNC Transfer Pricing”,  Management Accounting/November 1981, pp. 57−58. 64) P=税引前利益    t、=現地国の所得税率    te=U.S.の所得税率  とすれば,U.S親会社への送金額(P−Pt、)に対し, t。の税率で税金がかかり, U.S.での  純税額は,(P−Pt、)t。一Pti=Pt,一Pt,(t。+1)であるから,0≦t。, tiく1より,0〈Pな  らば,全社的には{(P−Ptl)t,一Pt【}+Pt、=(P−Pt,)t,=P(1−ti)t,である。したが  って,P, t,,が大きくなるほど, tlが小さくなるほど,全社的税金負担額は大きくな  る。   これとよく似た例であるが,宮本(1988)の例は,本国が課税するのは子会社から実  際に送金された金額に対するものであるという点でCoburnらの例とは若干異なる。   宮本(1988)pp. 162−163.の例では,税制が若干異なることで, ti, t。の間にti=t。/  2の関係がある時,全社的税負担額は最小になることが証明されている。これは,Coburn  らの例が現地国と本国の税金負担額の合計がいつも一定であるのとは異なる。すなわち,  U.S.での純税額は,  Pti十 (P−Pt,)t,一 (P−Ptl) ×Pt【/P=Pti2−Ptite十Pt。  となり,これをFとおく。   dF/dti=2Pti−Pte=O, ti=te/2   d2F/dt,2=2P>0,よりti=t,/2の場合に全社的税負担額は最小となる。すなわち,選  択が可能ならば,このような関係にある税率の国に出資するのが節税の観点からは望ま  しいといえよう。 65) Coburn et al, op. cit., p. 58.

(25)

表8 為替相場の変動が所与の場合に課税額を減らすために利益をシフトする効果         利益のシフトがない場’合    A国への利益のシフトがある場合        A国   B国   合計    A国   B国   合計 為替相場 利益   現地通貨   ドル 税金   現地通貨   ドル 純利益   現地通貨   ドル 税金一ドル   U.S.税@48%  外国税負担額  US.への税金支払額  課税額合計 $1=2FC $1=2FC 1,000  500

00

0=﹂

31

00

0匿﹂

73

168 150 18 168

OnU

OOOO

り乙−

0000

6りD 1,400  700 336 300 36 336 1,500 450 1,050 ら04 450 54 504 $1=4FC $1=2FC 0﹁9

07

=﹂3 1 450 112.5

1,500 一

 750 1,125 0に﹂

5242

1,050 1,050  262.5 525 126 112.5 13.5 126 252 225 27 252 337.5 787.5 378 337.5 40.5 378 Coburn et al. (1981) P. 58. いる場合,振替価格を低く抑えることによって輸入量を増加させることもで きる。  また,たとえ操作が可能であったとしても,振替価格設定上の操作のコス トは,それによって受けるベネフィットを越える可能性が大きい。たとえば, 振替価格操作が頻繁に行われると子会社利益は影響され,管理者のインセン ティブを失わせることになるかもしれない。  結局,振替価格を利用して「企業全体としての税金負担の最小化」を考え るとしても,所得税・輸入税のレベル,為替リスク,政府の政策,内部振替 価格設定の諸目標等のバランスが達成されなければならない。振替価格設定 の特定の目標を優先する場合には,他の目標をある程度犠牲にしなくてはな       66) らないのである。 66) lbid., p.55.

(26)

72  彦根論叢第265号 IV.結  び  本稿では,1.グv一バルなレベルへ経営活動が拡張されることによって 管理会計システムはどのような要因の影響を受けるか,2.国際会計におい て,管理会計上の問題としてはどのようなものが考えられるか,という問い に一応の解答を与えるために,多国籍企業の業績評価基準と国際振替価格を とりあげた。  国境を越えることにより,各国の政治面,文化面,経済面での相違が管理 会計システムに影響すると思われる。  例えば,節税効果をねらって,税率の高い国では低い振替価格を,税率の 低い国では高い振替価格を設定するような振替価格システムが構築されるか もしれない。また,本国への所得の送金が規制される国では,費用の名目で 送金を行ったり,振替価格を高めに設定するという手段がとられることがあ る。  また,国境を越えることによって,複数の通貨を使用することになり,換        67) 算の問題が生じる。為替相場の変動が業績評価に与える影響を除去する方法 を探求する問題は重要である。  業績評価システムの設計については,集団責任が慣行になっている国と個 人の業績を強調する国とでは責任会計システムの相違があるだろう。  業績は,為替相場の変動や,本社による権限の行使(例えば振替価格の設 定)や各国政府による税率の操作によって影響される。  以上,若干列挙した問題は,すべてグローバルな経営活動に伴い発生して くる問題の例である。そこでこれらについて第II節,特に第III節で議論した。  第II節で特にとりあげたのは,多国籍企業の業績測定基準の問題である。 近年の研究をレビューしてみると,以下のことが仮説としてあげられよう。 67)ビジネス・ブレイン太田昭和(BBS)では複数の国の言語や通貨で同時に処理できる  国際会計システムをこの秋に商品化する(日経新聞1990年7月11日)。これは近年,本稿  で述べた問題のいくつかが解決されつつあることを示しているのであろう。

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 (a)国内と国外の子会社で使用される業績基準は必ずしも区別されていな い。  (b)在外子会社の業績測定とその管理者の業績評価とを区別するべきだと いう見解がある。けれども,現実には子会社が大幅な権限委譲によりプロフ ィット・センターあるいはインベストメント・センターとして存在している 場合に,両者の区別が曖昧になっていることがある。グU一バルなレベルで は,管理不能要因も複雑になり,管理可能性原則の適用は一層困難になると 思われる。そのためか,多国籍企業の業績評価のために管理可能性原則を適 用する有用性を多くのアカウンタントは疑問視している。  (c)使用される業績測定基準には財務的基準と非財務的基準があり,後者 の測定上の困難のためか,どちらかというと財務的基準が重視されている。 そして,非財務的基準は長期的業績に重大な意味をもつとされている。  (d)米国企業では,日本企業におけるよりも短期的利益が重視される傾向 がある。その理由は,株主の力の強いこと,短期的財務業績と報酬との問に 強い関係があること等にある。  (e)財務的業績としては,売上利益率,投資利益率,資産利益率,そして, これらや実際利益や実際売上高に比較される予算が比較的よく使用される。  (f)財務的尺度としては,市場占有率,現地政府との関係,品質管理,生 産性の改善,従業員教育と安全が重要であるとみなされている。  (9)ROIは,在外子会社がインベストメント・センターの場合に在外子会社 やその子会社の管理者の業績測定尺度として適切である。しかし,ROIの限界 のためか,海外子会社のほとんどは予算も用いている。どちらかというと, ROIは事業単位の業績測定に,予算は管理者の業績評価に適切であるとされ る。予算は特有の環境について知識をもっている子会社の管理者が予算編成 プロセスに参加することにより現地国の特性を反映できるからである。  (h)ROSやROAも多国籍企業の業績測定に広く利用されている。 RIは比 較的利用されていない。  (i)在外子会社の業績測定に現地通貨を使用するのは,親会社との間に相

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74  彦根論叢第265号 互依存関係が少ない場合,通貨が不安定な国に子会社がある場合であろう。  第III節では,国際振替価格の機能のうち,特に減税,業績評価の問題を, 国際的企業活動が回避することのできない為替相場の変動の効果を絡ませな がら簡単な数値例を用いて説明した。  国際振替価格の設定は親会社の管理者による場合が多く,交渉による方法 は距離と言語の相違という障害を伴う。  振替価格設定基準として何を使用するかという点については本稿では議論 していないが,これは重要なテーマである。市価基準が最重要だとする見解 があるが,少なくとも在外子会社がプロフィット・センターでないならば, 市価基準は適用し難い。  国際振替価格の場合は,内部振替価格のような公平性以外の観点から,一 層広い目標を達成しなくてはならない。また,現地政府の規制を受けること が多く,操作の余地のない場合も多い。  最も重要なことは,国際振替価格の諸目標のトレード・オフをどう調整し て振替価格を設定するかというメカニズムの解明であろう。  さて,以上,国際会計の若干の問題を概説的に述べたにすぎないが,最後 に管理会計の国際会計的考察を行う視点を二つあげて結語としたい。 ①多国籍企業における管理会計上の諸問題(例えば,為替換算の問題,親会 社の費用を在外子会社へ配賦する問題,国際振替価格の設定等)という形で 研究を進めるか, ②管理会計技法上の国際比較(例えば,日米予算管理実務の比較,共通費配 賦方法の日米比較)という形で研究を行うことが考えられよう。  いつれにしても,企業活動が国境を越えることによって各国のどのような 要因によって管理会計情報システムが影響され,その結果どのような問題が 発生してくるのかといった問題意識をもつことになる。

参照

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