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自閉症スペクトラム障害(ASD)児の感情理解に関する事例検討-グループワークでの経過をもとに

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Academic year: 2021

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- 81 - 自閉症スペクトラム障害仇SD)児の感情理解に関する事例検討 ーグループワークでの経過をもとに 人 間 教 育 専 攻 臨床心理土養成コース 伊 藤 希 1. 問題と目的 DSM-m以来、自閉症を代表とする生来の 社会性の発達障害を示すグループは、広汎性 発 達 障 害 (Pervasive Developmental

D

i

s

order)と呼ばれてきたが、 DSM-5への 改訂に伴い、これらの障害は重症度の差異は あるものの同質の社会性の障害を認め、連続 性をもった疾患概念であるため、自閉症スペ クトラム障害(AutismSpectrum

D

i

s

order ; 以下、 ASD)と、再び捉え産されることとな った(杉山・高貝・涌津, 2014)0 DSM-5 では、ASDの診断基準として,主に①社会的 コミュニケーションおよび相互関係における 持続的な欠陥、②限定された反復する様式の 行動、興味、活動の二つの領域で考えられて いる。 ASDは治癒することはできないため(竹田, 2010)、ASD児にとって自身の障害から生じ る対人関係の問題といかに対峠していくかは、 一生涯に渡る問題であると考えられる。また、 こうした問題への ASD児自身の認識は、発 達に伴い変容していくものと思われる。 ASD 児は,対人関係を構築していくにあたり、" 心の理論'の発達の不十分さから、自己と他者 の違いや、他者からのネガティプな関わりや 意図に気づくようになっても、具体的な違い や、差異の理由についての理解が難しいとい われている(別府, 2007)。そのため、自己 指導教員 小 倉 正 義 否定感や被害感、孤立感を不用意に大きくさ せ(別府, 2007)、不適応を起こすリスクが 高まると指摘されている(捺畑・加藤,2003)。 この不適応を予防する一つのアプローチと して,感情理解や劇育コントロールへの支援 が考えられる。 ASD児は、感情を喚起する場 面において、自身の感情を理解しにくいこと が示唆され、感情のコントロールの欠如に繋 がり、トラブルの引き金になり得ることが指 摘されている(吉橋・神谷・宮地・辻井,2009)。 また,感情コントロールの力の欠如について の理解を深めるにあたり、自己理解、他者理 解の能力が関係しているといわれている(吉 井・吉松, 2003)。特に思春期・青年期以降 には,自己理解,他者理解の視点が重要にな るのではなし功、 感情理解や感情コントロールへの支援方法 としては,わが国でもすでに ASDを対象と した感情コントロールのプログラムとその効 果についていくつかの報告がされている(神 谷ら, 2010など)。このようなプログラムの 実施に際しては、個々の能力やベースに合わ せることが重要であるが(神谷ら, 2010), 個別的な配慮の在り方については十分な蓄積 がない。そこで本研究では、感情理解や感情 コントロールのプログラムにおいて,個々の 特性に応じた個別的な支援のあり方について 検討することを目的とする。

(2)

- 82 - 2.方法

Z

大学の公開講座「自分の気持ちと上手に つきあうために」の参加児を対象とした。当 講座への参加者は,小学校4年生から中学生 までの7名であった。そのうち、思春期青年 期にあたる

3

名、

A

さん、

B

さん、

C

さんを 対象とした。 プログラムはX年6月から9月にかけての 全5回で、そのうち 6月は参加者の顔合わせ や保護者へのプログラム説明、 9月はプログ ラム内容についての報告会として位置づけら れていた。プログラムの内容は、 7月""'8月 にかけての3回で実施した。 1回目の内容は、ある場面において想起さ れる感情について、アンケートから得られた 回答の多かった上位5つを当てた。感情の種 類や、捉え方の違いについて学ぶことを目的 としている。 2回目では、うれしさと怒りの感情の程度 を理解することを目的とし、ジェスチャーゲ、 ーム、小芝居やワークシートを用いて、状況 と自分の感情の状態について考えた。 3回目では、不安の感情の程度を考えたあ と、いやな気持ちになったときに気持ちを落 ち着かせる方法や、切り替え方について考え た。 3. 結果と考察 感情理解に焦点をあてたワークでは、普段 の日常生活の中で感じている、他者と異なる 考え方についてや、自分を周囲と比較しての 発言、また、提示された場面に対する状況や 文脈の違いを意識した発言もみられた。しか しながら,その表われ方は, 3人の中でも違 いがあり,例えば, Aには感情を自己モニタ ーできるような配慮や関わりが, Bには他者 との共通点や異なる点を意識できるような, さらにやりとりの状況を細かく言葉にして説 明するといった配慮や関わりが求められた。 Cには、客観的に自己の状態についての理解 を深めるため、 Cの世界観を使いながら話し を進めるといった配慮や関わりが求められた。 感情コントロ}ルや怒りや不安を感じたと きの対処法に焦点を当てたワークでは,対処 法を自分で考え,カードを作るワークを行っ た。それぞれのカードには、どんな気持ちの ときに有効なものかや、効き目のレベルを書 く棟を設け、担当スタッフとともに、気持ち と付き合う方法を考えた。それぞれ、状況の 見通しがつくようになってきていたり、苦手 意識、対処法の捉え方といった点が課題とな り、"書かない"という共通の困難さもみられ た。しかしながら, Aでは,対処法の考え方 として、ギリギリセーフにできる方法と捉え 直して考えていくといった配慮や関わりが求 められた。 Bでは、「しょうもない」と思うこ とでも、役に立つことを伝えていく配慮や関 わりが求められた。 Cでは、 Cの表現する世 界観を理解しつつ、現実場面との繋がりをも てるよう配慮や関わりを求められた。 本研究のように,事例的に個別的な配慮の 在り方について検言すすることで,ASD児の一 見閉じようにみえる特性に対しても,一様の 関わりではなく,様々な関わりを考えること が重要であることが示唆された。このような 事例を蓄積することが,日々の感情理解や感 情コントロールへの一助となるだろう。

参照

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