Title
Attenuated phosphorylation of heat shock protein 27 correlates
with tumor progression in patients with hepatocellular carcinoma(
内容の要旨(Summary) )
Author(s)
安田, 鋭介
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第669号
Issue Date
2006-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14470
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 安 田 鋭 介(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 669 号 平成18 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当
Attenuated phosphorylation of heat shock protein27correlates with
tumor progressionin patients with hepatoce‖ular carcinoma
(主査)教授 小 澤 修 (副査)教授 森 秀 樹 教授 森 脇 久 隆 論文内容の要旨 <目的> 近年,種々の検査により初期の肝細胞がんが発見されるようになってきている。しかし,初回治療後も肝細胞 がんは高率に再発することが知られており,その予後は必ずしも良好ではない。肝細胞がんの根治のためにはそ のメカニズムを解明し,病態・予後を推測するためのさらに良い指標と新たな治療法の確立が求められている。 一方,種々のストレスに対する生体反応をストレス反応と呼んでおり,環境の変化に対し生体は迅速に反応する。
Heat shock protein(以下,HSP)は,熱や化学物質などのストレスにより誘導される一群のタンパク質の総
称で,分子量が70kDaのHSP70,90kDaのHSP90および110kDaのHSPllOなどの高分子量HSPとHSP27,qBク リスタリンやHSP20などの分子量が10kDaから30kDaの低分子量HSPに大きく分類されている。高分子量HSP は,ストレス応答に際し,蛋白質のfolding,01igomerization,tranSlocationなどにおいて分子シャペロンとし て作用することが知られ,これに対して低分子量HSPの機能は十分に解明されていない。また低分子量HSPは, 非刺激時には重合体として存在するがストレスに対する応答としてリン酸化され,重合体から二量体に変化する ことが知られている。HSP27の活性は,リン酸化のような転写後の修飾により調節され,ヒトHSP27では,セ リン(Ser)-15,Ser-78およびSer-82の3ヶ所のセリン残基がリン酸化されることが報告されているが,リン酸化 HSP27の機能の詳細は明らかではなく,特にがん細胞における具体的な解析はほとんど行われていない。 そこで今回私共は,ヒト肝細胞がん標本を用いて,がん組織中のTotalHSP27のタンパク質発現レベルおよ び3ヶ所のセリン残基(Ser-15,Ser-78およびSer-82)のリン酸化HSP27のレベルを解析し,肝細胞がんの分化 度および腫瘍の進展との関係を検討した。 <対象> 2002年9月から2005年3月までに大垣市民病院消化器科で肝細胞がんと診断され,肝切除術を施行した48例であ る。内訳は,慢性肝炎23例,肝硬変25例,病因はB型肝炎ウィルス12例,C型肝炎ウィルス33例,アルコール3例, 組織学的分化度は,Wel18例,mOderate33例,POOr7例,TNM分類による腫瘍病期は,StageI9例,Stage Ⅱ22例,StageⅢ10例,StageIVA7例であった。また,男性42例,女性6例で,平均年齢は67.4±8.2才であっ た。 <方法> TotalHSP27の発現レベル及びそのリン酸化レベルは,Western blot解析で行い,肝細胞がん患者の年齢, 性別,背景肝,病因及び予後因子として,腫瘍数,腫瘍径,被膜浸潤の有無,脈管浸潤の有無,組織学的分化度, TNM分類による腫瘍病期および血清AFP値,血清PIVKA-II値と比較した。また,一部の症例で免疫組織化 学的解析を行った。Westernblot解析は,HSP27抗体およびHSP27のSer-15,Ser-78およびSer-82の各セリン 残基の特異的リン酸化抗体とβ-aCtin抗体とを用いて行い,NIHimage softwareを用いて定量化し,測定値は β-aCtinの値で標準化した。免疫組織化学的解析は,StrePtaVidin-biotincomplex法で行い,肝細胞がんの分化 度は,InternationalWorkingPartyの分類に従い,Well,mOderate,pOOrとし,また脈管浸潤と被膜浸潤は
-87-組織学的所見により評価した。なお,統計解析はSPSS software programを用いて解析し,P<0.05を統計学 的に有意とした。 <結果> 1)TotalHSP27の発現レベルは,脈管浸潤でのみ有意差を認め,脈管浸潤の有るものは,無いものに比して 有意に低下していた(P=0.028)。しかし,その他の予後因子とは有意な相関を認めなかった。 2)3ヶ所のセリン残基のすべてにおいて,リン酸化HSP27のレベルは,腫瘍径,脈管浸潤,TNM分類による 腫瘍病期で有意差を認めた(Ser-15:P=0.003,P=0.002,P=0.001,Ser-78:P=0.002,P=0.008,P=0.003, Ser-82:P=0.004,P=0.029,P=0.008)。すなわち,上記因子においては肝細胞がんが進展したものはどリン酸 化HSP27のレベルは低下していた。しかし,腫瘍数,被膜浸潤,組織学的分化度,血清AFP値および血清 PIVKA一Ⅱ値とは相関を認めなかった。 3)免疫組織化学的解析では,TotalHSP27の発現レベルは腫瘍病期ⅠとⅠVAのいずれにおいても細胞質に同 程度の発現を認めたのに対して,Ser-15のリン酸化HSP27のレベルは,腫瘍病期Iに比し,IVAでは著しく低 下していた。これは,Westernblot解析の結果と一致していた。 <考察> がん組織中のTotalHSP27の発現に関して,胃がんと前立腺がんではHSP27の発現レベルの元進は予後不良 と報告されているが,その他のがん種においては予後との明確な相関の報告はない。肝細胞がんに関して, Kingらは組織学的分化度が低く,予後不良な症例ではTotalHSP27の発現レベルが克進していると報告してい るのに対して,Limらは組織学的分化度を含む予後因子とHSP27の発現レベルとの間には関連がなかったと報 告している。今回私共の研究においては,脈管浸潤を除いてTotalHSP27の発現レベルと肝細胞がんの進展と の問に相関はなかった。 一方,リン酸化HSP27の役割に関しては,HSP27の重合・解離がリン酸化により調節されていることが知ら れ,リン酸化により脱重合したHSP27はシャペロン機能が低下することが報告されている。また,柴沼らは骨 芽細胞で,HSP27のリン酸化の増加が増殖抑制と相関することを報告している。がんに関しての報告ははとん ど見られないが,Spectorらは,レチノイン酸によるヒト白血病細胞の分化誘導に伴って,HSP27のリン酸化レ ベルが増加することを報告している。今回私共は,肝細胞がんの腫瘍病期の進展に伴って3ヶ所のセリン残基 (Ser-15,Ser-78およびSer-82)のいずれにおいても,リン酸化HSP27のレベルが減少することを初めて見出し た。 <結論> 肝細胞がんの腫瘍病期の進展に伴い,3ヶ所のセリン残基(Ser-15,Ser-78およびSer-82)におけるリン酸化 HSP27のレベルは減少していた。この知見から,肝細胞がん組織中におけるリン酸化HSP27が,肝がん細胞の 進展に対し抑制的な役割を果たす可能性が示唆された。 論文審査の結果の要旨 申請者 安田鋭介は,ヒト肝細胞がんにおいて腫瘍病期の進展に伴い,3ヶ所のセリン残基におけるリン酸化 HSP27のレベルが減少することを明らかにした。この知見は肝細胞がんにおいてリン酸化HSP27が,がん細胞 の進展に対し抑制的な役割を果たす可能性を示唆した。本研究は肝臓病学の発展に少なからず寄与するものと認 める。 「主論文公表誌」
Attenuated phosphorylation of heat shock protein27correlates with tumor progressionin patients
with hepatocellular carcinoma
Biochemicaland BiophysicalResearCh Communications337,337-342(2005).