Title
窒化ケイ素系硬質膜及び酸化ルテニウム系抵抗膜の合成と
応用に関する研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
倉増, 敬三郎
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 乙第005号
Issue Date
1997-09-03
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1677
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本 籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月日 専 攻 学位論文題目 学位論文審査委員 倉 増 敬三郎(山口県) 博 士(工学) 乙第 5 号 平成 9 年 9 月 3 日 物質工学専攻 窒化ケイ素系硬質膜及び酸イヒルテニウム系抵抗膜の合成と応用 に関する研究 (凱udyon thePrcpantiomandlpplicationofhrdFilAS
ぬsed on SiliのINitride and Thin Filn ResistorsIkrived fro血hthemitnOxide) (主査)教 授 高 橋 康 隆 (副査)教 授 仁 田 昌 二 教 授 塗 師 幸 夫 箕 浦 秀 樹
論文内容の要旨
サーマルヘッドにおいては、高画質の記録を行うために抵抗体の均一性とその発熱温度 分布の均一化が必要であり、さらに長期間の寿命を保証するためには抵抗体保護膜の耐摩 耗性また帯電防止能が充分大きいなどの条件が要求される。また、マルチチップモジュー ルでは、複数の半導体LSIを高密度に実装する機能モジュールの超小型化が必要とされて いる。このような要求に対して、廉価で高絶縁性あるいは帯電防止能を有する硬質膜及び抵抗膜の大面革基板への均一コーティングならびにそれらの微細パターン加工は重要な要
素技術となる。そこで、本研究では、化学的成膜方式の一つであるプラズマ気相反応げCVD) による硬質膜の作製、有機金属の熱分解(叫OD)による抵抗膜の合成、これら薄膜材料のデ バイス応用に向けたパターン形成加工(フォトリソグラフィー、グラビア印刷)及びこれ らのサーマルヘッドおよびマルチチップモジュール開発への具体的な応用に関して検討し た。本論文はその研究結果をまとめたものである。 耐摩耗保護膜合成には生産性のよいPCVDを用い、また材料として機械的強度が大きく、 また研究例が多いSiNy膜を基本物質として選択し、絶縁性保護膜としてはSiOxNy膜を、 また帯電防止を兼ねた保護膜としては導電性Si・B・N膜の合成を研究課題としている。原料 としてS辻Ⅰ4-N2-02あるいはSiE4・N2-N20の混合ガスを用いて、成膜条件および組成と膜 の機械的特性である硬度と応力との関係を主体に検討を行い、PCVDによる成険過程の解 明を試みている。これらの実験を通して、イオン衝撃が膜応力に大きな影響を及ぼすが、 N2ガス流量によりある範囲で制御可能であること、またある一定の条件の範囲では屈折率 を測定することにより膜の硬度が推定できることを見いだしている。Si・B・N険の作製とそ の特性については、導電性を付与するためのホウ素四)の添加による膜の構造と機械的特性-51-に関して検討し、抵抗率と光学バンドギャップとの間によい相関が存在することを認め一、 さらに硬度と険阻成との関係につい考察している。 抵抗膜形成については、微細加工が困難である従来のガラス粒子とRuO2粒子との混合 ペーストの代わりに、MODによるRuO2薄膜およびRuO2-TiO2混合薄膜(Ru-Ti-0薄膜) の合成を検討している。その結果、Ru-Ti-0系からは非常に微細で均一な粒径の薄膜が得 られること、その膜は熱安定性に優れ、抵抗値とその温度係数が容易に制御できることを 明らかにしている。特に、抵抗値の安定性について、基板材質および作製条件による影響 について検討を行い、RuO2とTiO2は固溶体を形成することにより熱安定性が改善される こと、同時に基板のガラス成分の拡散が大きな役割を果たしていることを見いだしている。 さらに、工業的な応用を目的として、抵抗材料の印刷用ペースト化の検討を行い、有機金 属材料の熱分解特性と印刷用ペーストの作製条件についても考察を加えている。 抵抗薄膜のパターン形成のためのドライエッチング、グラビアオフセット印刷方式によ るグレーズドアルミナ基板上への直接印刷パターン形成についても考察している。すなわ ち、RuO2膜はCF4または02ガスを用いたリアクティブイオンエッチングが可能で、CF4 ではラジカルによるよりもCF8+などのオンの影響が大きいこと、それに対して02ではラ ジカルの影響も重要であることを見いだし、詳細な検討を加えている。さらに、Ru・Ti-0 膜では、CF4ガスのみで十分選択性のあるエッチングが可能であることを実験的に確認し ている。また、グラビアオフセット印刷では、最小ピッチ50〟mの金配線の印刷形成が 可能なことを示している。 これらの研究結果をサーマルヘッド試作に応用し、耐摩耗用膜としてファクシミリには SiOxNy薄膜が、熱転写記録用にはSi・B・N(上層膜、帯電防止用)/SiOxNy(下層膜)2層 構成薄膜が有効であること、またこれらとドライエッチングにより微細パターン化された Ru・Ti-0とを組み合わせることにより、従来の薄膜方式で作製されたものより良好なサー マルヘッドが実現できることを示している。 携帯機器の小型化、回路のデジタル化に対応して要望されているマルチチップ壷ジュー ル開発のために、本研究により達成された薄膜技術を高密度の配線基板に応用した。その 結果、PCVDによるSiOINy薄膜を層間絶縁膜とし、CuNi/Cr2層電極構成とすることに より、耐環境性に優れた配線構造を持ち、ガラスを基材とした新しいマルチチップモジュ ール用薄膜配線基板を実現している。
論文審査の結果の要旨
近年、情報機器の普及はめざましく、プリンターなどの記録機器や各種デバイス及びモ ジュールの高性能化、小型化及びそれらの経済的な製造プロセスの開発は情報産業にとっ て益々重要な研究課題となってきている。 熱転写式プリンターの基本モジュールであるサーマルヘッドにおいては、高画質の記録 を行うために抵抗体の均一性とその発熱温度分布の均一化が必要であり、さらに長期間の-52-寿命を保証するためには抵抗体保護膜の耐摩耗性や帯電防止能が充分大きいなどの条件が 要求される。また、マルチチップモジュールでは、複数の半導体LSIを高密度に実装する 機能モジュールの超小型化が必要とされている。このような要求に対して、廉価で高絶縁 性あるいは帯電防止能を有する硬質膜及び発熱体用抵抗膜の大面積基板への均一コーティ ングならびにそれらの微細パターン加工は重要な要素技術となる。 そこで、申請者は、それぞれの要素技術として、化学的成膜方式の一つであるプラズマ 気相反応(PECVDあるいはPCVD:但し本論文ではPCVDと略称)による硬質膜の作 製、有機金属の熱分解(MOD)による抵抗険の合成、これら薄膜材料のデバイス応用に向け たパターン形成加工(フォトリソグラフィー、グラビア印刷)について詳細に検討し、そ れらの成果を応用することにより、目的とした高性能サーマルヘッドおよびマルチチップ モジュールが安価に実現できることを明らかにしている。本論文はその研究過程と成果を まとめたものである。 本論文の主要部分はそれぞれ関係学術雑誌に12編の論文として公表されており、また その内の2編(既発表論文の3及び9)は、それぞれハイブリッドマイクロエレクトロニ クス協会の最優秀論文、優秀論文として表彰されている。 学位論文は全7章から構成されている。第1章では、この研究の背景と目的について述 べている。第2章では、窒化ケイ素を主成分とする硬質膜(SiOxNy)及び帯電防止膜 (SiBxNy)のPCVDと析出膜の物性について検討し、保護膜として適当な膜硬度、残留応 力や電気抵抗値をもつ膜が膜組成や析出条件によって制御できることを示している。第3 章では、酸化ルテニウム一酸化チタン混合酸化物抵抗薄膜がサーマルヘッド用抵抗膜とし て優れた特性(抵抗値及びその熱安定性)をもつこと、また経済的なMOD法によってこ の膜の均一コーティングが容易に実現できることを明らかにしている。第4章では、これ らの膜の微細パターン加工がフッ化物を用いるプラズマ気相エッチングで実現できること を実証している。これら各章にはそれぞれ学術的、工学的に興味ある成果が含まれている。 また、第5章及び6章では、前章までの成果を具体的に応用することにより、当初から研 究目的にしていた高性能サーマルヘッドおよびマルチチップモジュール(MCM)が安価に 実現できることを明らかにしている。第7章は、本論文のこれらの成果のまとめである。 このように、本論文は、基本的なプロセスに関する検討結果からそれらの具体的な応用 にわたる広範で学術的、工学的に重要な成果を含んでおり、博士論文として充分な内容を 有しているものと判定される。また、これらの成果は今後の技術開発に対する一つの指針 を提供するものと期待される。 -53一