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イネ培養細胞におけるエリシター応答発光のメカニズムに関する研究

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Academic year: 2021

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Title

イネ培養細胞におけるエリシター応答発光のメカニズムに

関する研究( 内容の要旨(Summary) )

Author(s)

影山, 智津子

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(農学) 乙第121号

Issue Date

2007-09-12

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/23500

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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氏 名(本個)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 影 山 智津子 (静岡県) 博士(農学) 農博乙第121号 平成19年9月12日 学位規則第3条第2項該当 イネ培養細胞におけるエリシター応答発光のメカニ ズムに関する研究 主査 岐阜大学 教 授 副査 静岡大学 教 授 副査 岐阜大学 教 授 副査 信州大学 准教授 朗二 之巧 満 慎 博 ゆ 町 無 山 我 百 露 小 久 論 文 の 内 容 の 要 旨 バイオフォトン放射は生物の生化学反応に付随して放出される極微弱な発光であ り,その発光量はストレスを受けると急上昇する。植物細胞へのエリシター処理によ ってバイオフォトン放射が急上昇するため,この放射は病害抵抗性の誘導と関連して いると考えられている。フォトンが放射される基本原理は,生化学反応によって生じ た励起分子が基底状態に戻るときに光を放出することにあるが,バイオフォトン放射 がどの生化学反応と結びついているのか,励起分子や発光分子は何かなど,基本的な メカニズムは未解明であるため,これらを明らかにするため本研究を実施した。 イネ(物∂∫∂とJ帽L.)の懸濁培養細胞を使用し,異なるエリシターによって誘 導されるバイオフォトン放射(ェリシター応答発光)の特性を調査した。4種類のエ リシターの発光強度や時間的推移はエリシターの種類や濃度により異なったが,エリ シター毎に特徴的な発光パターンを示した。発光スペクトルの解析結果は,これら4 種類のエリシターによって誘導されるバイオフォトンは波長の構成比が類似してい たことから,同質の反応に由来することを示唆した。さらに,抵抗性誘導物質の処理 により細胞に抵抗性が誘導されていると,誘導されていないときよりもバイオフォト ン放射が早く強く上昇する。これは,細胞に病害抵抗性が誘導されているときに起こ る病害応答のプライミング現象と同様に、エリシター応答発光もプライミングを受け ていることを示唆した。各種抵抗性誘導物質の前処理によるエリシター応答発光の増 強程度はほとんどの抵抗性誘導物質とエリシターの組み合わせで見られたことから, 本現象はエリシターにある程度共通した現象であると考えられた。 ェリシター応答発光は酸素のない状態では見られないことから何らかの酸化反応 と結びついていると考えられる。植物ではエリシターによる病害応答の初期反応とし てスーパーオキサイドの生成が見られることから,エリシター応答発光とROSとの関 与を調査した。イネにキチンを処理するとヒドロキシラジカルが生成されることから, この実験系ではスーパーオキサイド,過酸化水素,ヒドロキシラジカルが生成してい ると考えられる。実験の結果,エリシター応答発光の強度は細胞の培地中の過酸化水 素濃度と時間的推移が一致していた。スーパーオキサイドや過酸化水素を外生的に処

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-223-理すると,これらROSの処理のみでもフォトン放射が見られたが,細胞にこれらを処 理するとさらにフォトン放射が強く上昇した。ROSのスカベンジャーであるTironや ROSの生成に関与する阻害剤であるDPIやSHAMを細胞に処理するとエリシター応答発 光は完全かほとんど阻害された。これらの実験結果から,ROSがェリシター応答発光 に関与することが示された。 ェリシター応答発光と病害応答のシグナル伝達経路との関与を薬理学的に解析し た。イネにキチンを処理するとりん脂質代謝系が誘導される。この中でフォスファチ ジン酸(PA)はフォスフォリパーゼによりりん脂質から生成され,セカンドメッセン ジャーとしてROS生成系に伝達する。PAを外生的に処理するとバイオフォトン放射が 上昇し,タンパク質阻害剤により6量体キチンによるエリシター応答発光を阻害した 細胞にPAを処理すると,バイオフォトン放射が再上昇した。タンパク質のリン酸化 を阻害するK-252aやカルシウムシグナルの阻害剤であるランタンクロライドやEGTA を細胞に処理するとエリシター応答発光が部分的または完全に阻害された。これらの ことから,6量体キチンによるエリシター応答発光はりん脂質代謝系のPAを通って放 射されていると考えられた。 審 査 結 果 の 要 旨 本論文の公開学位論文発表会は、審査委員全員を含む関連教員や学生の出席者のもと、平成 19年8月7日(火)午後3時30分より岐阜大学連合大学院棟6F会議室において実施され た。本論文は,イネ培養細胞にエリシターを処理すると見られる極微弱な発光(バイオフォト ン放射)の急激な上昇が病害応答に関与していると考えられることから,このバイオフォトン 放射における化学的なメカニズムを解明したものである。 最初に,エリシター処理によって急激に上昇するバイオフォトン放射が,4種類のエリシタ ーと濃度の違いによって,どう変化するかを調査した。その結果,エリシターはそれぞれ独特 の発光パターンを持っており,同一ではないが,濃度依存的に放射が上昇した。また,抵抗性 誘導物質の前処理により,エリシター応答発光のプライミング現象,すなわち,抵抗性が誘導 されている状態では反応が早く強く起こることが,供試したほとんどのエリシターと抵抗性誘 導物質の組み合わせで見られた。このことから,エリシター応答発光のプライミング現象は, 抵抗性誘導において,共通した現象であることが示唆され,本現象を利用した新しい抵抗性誘 導剤の開発の可能性を示した。 次に,エリシター応答発光とROSとの関与について,イネにキチンを処理すると生成される と考えられるスーパーオキサイド及び過酸化水素を検討した。実験の結果,エリシター応答発 光の強度は細胞の培地中の過酸化水素濃度と時間的推移が一敦していた。スーパーオキサイド や過酸化水素を外生的に処理すると,これらROSの処理のみでもフォトン放射が見られたが, 細胞にこれらを処理するとさらにフォトン放射が強く上昇した。ROSのスカベンジャーである TironやROSの生成に関与するNADPHオキシダーゼの阻害剤DPIやペルオキシダーゼの阻害剤 SHAMを細胞に処理するとエリシター応答発光は完全かほとんど阻害された。これらの実験結果 から,ROSがエリシター応答発光に関与することが示された。 次に,エリシター応答発光と病害応答のシグナル伝達経路との関与を薬理学的に解析した。 イネにキチンを処理するとりん脂質代謝系が誘導されるが,この時,フォスファチジン酸(PA) はフォスフォリパーゼによりりん脂質から生成され,セカンドメッセンジャーとしてROS生成 系に伝達する。PAを外生的に処理するとバイオフォトン放射が上昇し,タンパク質合成阻害剤 を用いて6量体キチンによるエリシター応答発光を阻害した細胞にPAを処理すると,バイオ

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ー224-フォトン放射が再び上昇した。また,タンパク質のりん酸化を阻害するE-252aやカルシウム シグナルの阻害剤であるランタンクロライドやEGTAを細胞に処理するとエリシター応答発光 が部分的または完全に阻害されたことから,6量体キチンによるエリシター応答発光はりん脂 質代謝系を通って,PAをセカンドメッセンジャーとして伝達されていると考えられた。 バイオフォトン放射は,非破壊的にリアルタイムに測定できることから,生物の状態を把握 する方法として極めて有用である。しかし,メカニズムの解明などの詳細な研究は少なく,病 害応答との関与についても始まったばかりである。今後,病害応答だけでなく他のストレス反 応との関与についても研究が進み,実用的な利用が図られることが期待される。また,抵抗性 誘導物質によるエリシタ.一応答発光のプライミング現象を利用した抵抗性誘導剤の新規なス クリーニング方法は,従来法に比べ効率的であることから成果が期待される。 以上について、審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論文とし て十分価値あるものと認めた。 【基礎となる学術論文】 1.Kagevama,C.,Kato,K,Iyozumi,H.,Inagaki,H.,%maguchi,A.,FuruSe,KandBaba,K(2006).photon emisionsfromriceceuselicitedbyNacetylchitooligosaccharidearegeneratedthroughpho8Pholipid signalinginclo昏eaSSOCiationwiththeproductionofreactiveoxygenspecie$・PlantPhysiol.Biochem. 44:901・909. 2.影山智津子,加藤公彦,稲垣栄洋,伊代住浩幸,古瀬勝美,馬場康司(2007)・病害抵抗性誘導物質の前処 理により増強される各種エリシター応答発光の特性.日本植物病理学会報73,15-20. 3.影山智津も加藤公彦,稲垣栄洋,伊代住浩幸(2007)・イネ培養細胞からのエリシター応答発光に対する 過酸化水素の関与について.日本植物病理学会報73 印刷中. 【既発表学術論文】 1.Kagevana.C..Komat8uda,TlandNaknjina,K(1990).EJkct$Ofsucro8eCOnCentrationonmorphology ofsomaticembryofrominnatwe80ybeancotyledon8.PlantTi88ueCultnreLetters,7,108・110. 2.Iyozumi,H.,Eato,K,Eagevama.C‥Inagaki,H.,1hmaguchi,A・,Ftuuse,K,Baba,KandTsuchiya, H.(2005).Plantdefenseactivatorspotentiatethegenerationofelicitor・reSpOnSivephotonemisionin rice.Physiol.Mol.PlantPath01.,66,68-74. 3.KagevamaC..Ohta,T.nraoka,K,Suzuki,M.,Okamoto,T.andOhishiK(2005).Chlorinatedahphatic hydrocarbon・induceddegradationoftrichloroethyleneinI鞄zLtemLbnztLZZa血eDS由sp.nov」A托hives OfMicTObiolog沸183,56・65. 4.Ybshinaga,N.,Kato,K,Eagevama.C..F両isaki,K,Nishida,R.andMori,N.也006).ultraweakphoton emissionfromherbivory・inju托dmaizeplantB.Naturwissen8Chaaen,93,38,41. 5.伊代住浩幸,加藤公彦,影山智津子,稲垣栄洋,古瀬勝美,馬場康軋 土屋広司(2006).イネ培養細胞に おける病害抵抗性誘導物質の違いによるプライミング効果の差異.日本植物病理学会報.72,195・199.

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