Title
特定位置応力を用いた各種応力集中部の疲労強度・寿命予
測法( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
MUHAMMAD AMIRUDDIN BIN AB WAHAB
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 工博甲第507号
Issue Date
2016-09-30
Type
博士論文
Version
ETD
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/55516
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。別紙様式第15号(論文内容の要旨及び論文審査の結果の要旨) 氏 名 ( 本 籍 ) 学 位 の 種 類 学 位 授 与 番 号 学 位 授 与 日 付 専 攻 学 位 論 文 題 目 学位論文審査委員
MUHAMMAD AMIRUDDIN BIN AB WAHAB(マレーシア) 博 士(工学)
甲第507号
平成28年9月30日 生産開発システム工学専攻
特定位置応力を用いた各種応力集中部の疲労強度・寿命予測法 (Fatigue Strength / Life Estimation Method Using Critical-Distance-Stress Theory) (主 査)教授 植松 美彦 (副 査)教授 屋代 如月 教授 山下 実 論 文 内 容 の 要 旨 機械部品や構造物は,孔,切欠き,段などの急激に形状が変化する部分を持つことが多い.このよ うな形状変化部分では周囲より応力の高くなる応力集中が起こり,部品の破損や破壊の原因になって いる.このような応力集中部位の強度評価として,円孔,段,溝などに対しては「材料力学的強度評 価法」が,き裂や鋭い切欠きなどに対しては「破壊力学的強度評価法」が用いられているのが現状で, 機械技術者が設計現場で使いやすいものが切望されている. 本研究ではこのような背景から,応力集中部を持つ機械部品・構造物,微小き裂材にも適用可能な 統一的強度評価法の確立を目的とした.平滑材の疲労限とき裂進展下限界応力拡大係数範囲から定ま る疲労限に対する特定位置,および破断強度と,破壊靭性値から定まる静的強度に対する特定位置の 両点を直線で結び,低繰返し数領域の疲労強度はこの直線上にあると仮定し,有限要素法で得た応力 分布を利用する特定位置応力による強度評価法を提案し,その適用性を実験結果と比較し検証した. はじめに応力集中部位の低サイクル疲労に対する特定位置強度評価法の適用性を検討した.代表的 な一般圧延鋼材SS400 を供試材として,平滑材試験片と同試験片に V 字切欠きを両側に付与したもの, 円孔を中央に付与したものの疲労試験結果と特定位置応力法による強度予測結果を比較した.さらに 低繰返し数領域のフレッティング疲労強度予測に対する特定位置応力法の適用性についても,その精 度を検証した. オーダーが103 ~ 105の低サイクル域疲労強度に関しては,V 字切欠き付き試験片に対する予測値 は実験値よりもやや高めになった.実験値との差は比較的小さいため,予測精度としてはほぼ十分と 言えるが,実際の設計に適用する場合,危険側の応力を示しているという点を考慮して適用すべきで ある.同じく低サイクル域の疲労強度について,円孔のある試験片においては,予測応力値は実験値 よりもやや低く,その差も10 %以内であった.強度を安全側に予測できているという点では,V 字切 欠き形状に比べて良好な予測結果が得られた.さらに低繰返し数領域のフレッティング疲労強度に対 する特定位置応力法の適用性については,実験結果と接触端近傍の応力分布を用いて,ほぼ定量的に 予測できることが分かった. つぎに,微小き裂部に対して同様な強度評価法の適用性を検討した.まず有限要素法で得た応力分 布と線形破壊力学によるものを比較し,長さが0.1 mm 以下の微小き裂の場合,線形破壊力学による 予測応力はき裂先端から離れるとかなり低い値になり,定量的に予測法の問題点を再確認した.機械 部品や構造物に頻用される材料として,破壊靭性値やS-N 特性が異なる構造用圧延鋼板 SS400 および 合金工具鋼SKS93 を供試材とした.代表的な従来予測法である El Haddad 法と予測精度の比較も行っ た. これらの鉄鋼材料について,0.1 ~ 1 mm のき裂材の疲労限を実測した結果は,本法で提案する特 定位置応力による予測法とよく一致し,有効性を確認した.また従来のEl Haddad 法と比べて,特に き裂長さが0.1 mm オーダーのものについては本予測法に優位性が認められた.すなわち,0.1 mm 以 下の微小き裂から線形破壊力学によって予測可能な1 mm 以上の大きさのき裂に対する強度評価法と して従来法よりも精度が向上している.
論文審査結果の要旨 本研究は,応力集中部を持つ機械部品や構造物,微小き裂材にも適用可能な,機械技術者にとって 扱いやすい統一的な強度評価法の確立を目的としたものである.提案した方法は,平滑材の疲労限と き裂進展下限界応力拡大係数範囲から定まる疲労限に対する特定位置および破断強度と破壊靭性値か ら定まる静的強度における特定位置の両点を直線で結び,低繰返し数領域の疲労強度はこの直線上に あると仮定し,有限要素法による応力分布予測結果を利用するもので,新規性もあり設計現場への展 開も容易なものである. まず応力集中部位の低サイクル疲労に対する特定位置応力強度評価法の適用性を,一般圧延鋼材 SS400 を用いて調べている.平滑試験片と V 字切欠きを付与したもの,また円孔を中央に付与した試 験片を用意し,疲労試験結果を特定位置応力法による強度予測値と比較,103 ~ 105の低サイクル域 の疲労強度について,V 字切欠き付き試験片に対する予測値と実験値との差は比較的小さいといった 結果を得ている.またやや高めの予測値を示していることを述べ,実際の設計に適用する際の注意点 に言及している.一方,円孔のある試験片の低サイクル域の疲労強度については,予測応力値は実験 値よりもやや低く,その差も10 %以内になり良好な予測値を示している.またフレッティング疲労強 度予測においても,本評価法は低繰返し数領に対する適用性は良好であることを示し,汎用性の高い 強度評価法であることを裏付けている. つぎに微小き裂部を持つ部材に対して,この強度評価法の適用性が検討されている.長さが0.1 mm 以下の微小き裂について,有限要素法で計算した応力分布と線形破壊力学によるものを比較し,線形 破壊力学による予測応力はき裂先端から離れるとかなり低い値になり,定量的にこの予測法の問題点 を再確認している.機械部品や構造物に頻用される代表的材料として,破壊靭性値やS-N 特性が異な る構造用圧延鋼板SS400 と合金工具鋼 SKS93 を実験材料に選択したことは適切である. 長さが0.1 ~ 1 mm の予き裂を付与した試験片に対する疲労実験結果は,ここで提案した特定位置 応力法による予測値とほぼ同じであり,従来のEl Haddad 法と比較して特にき裂長さが 0.1 mm オーダ ーではより優位であることも実証している. 以上のように,本研究で提案した特定位置応力を用いる強度評価法は,実験結果をほぼ適切に予測 できている.この方法は応力集中部の形態に関わらず,そのプロセスは統一的なものであり,汎用的 強度予測法として設計現場の技術者にとっては形状に左右されない扱いやすい方法である.昨今の設 計現場におけるCAEの普及は目覚ましく,部品中の応力分布自体は容易に求めることができるため, 技術者にとっても扱いやすい強度評価方法であると言える.また多軸制御の工作機械や3Dプリンタ ーの普及は,複雑形状機械部品の使用の後押しをするものであり,本予測法の汎用性や適用の容易さ は,そうした複雑形状部品に対する部品設計の信頼性向上に寄与するものである. 以上,本論文は新たな知見を見出しており,優れた工業的な有用性を持つ点でも評価できることか ら,学位審査委員会は,この論文を学位論文に値するものと判断した. 最終試験結果の要旨 学位審査委員会は,提出論文の基礎となる査読付きの発表論文2 報の内容を確認し,平成 28 年 7 月28 日に開催された学位論文公聴会における論文提出者との質疑応答と口頭試問等に基づき審査し, 最終試験結果を合格と判定した.
1. Fatigue Strength and Life Estimation Methods Using Critical Distance Stress Theory: Muhammad Amiruddin Bin Ab Wahab, Niu Jie, Toshio Hattori and Minoru Yamashita, Advanced Materials Research, Vols. 694-697 (2013), pp. 853-863.
2. 特定位置応力を用いた微小き裂部材の疲労強度評価法: ムハマド アミルディン,山下 実,服部敏雄, 設計工学,Vol.51,No.6 (2016),pp. 409-418.