Title
神岡におけるラドン観測と地震予知( はしがき )
Author(s)
田阪, 茂樹
Report No.
平成4年度-平成5年度年度科学研究費補助金 (一般研究(B)
課題番号04452026) 研究成果報告書
Issue Date
1993
Type
研究報告書
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/96
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。1.研究成果の概要 地下1000メートルの東京大学宇宙線研究所神岡地下観測所内にラドン観測網を設 置してラドン濃度の連続観測を行っている。 本研究の目的は、 (1).大型水タンク内の純水中に溶存しているラドンの除去方法の確立と、 (2).鉱内の断層湧水中のラドン濃度の連続観測による地震予知の基礎研究 である。 神岡鉱山内で運用されているラドン観測網は、3台のマイコンを基点として合計24 個の水中・気中ラドン検出器を設置し、マイコンーパソコンーワークステーション間を 坑内LANで接続して、観測データを10分間隔で取得するシステムである。このシス テムにょり鉱山内の数百メートル離れた地点でもラドン濃度の同時連続測定が可能と なっている。 大型水タンクを用いた地下実験では純水中に溶け込んでいるラドンがニュートリノ検 出の雑音となり、これを除去することが次期スーパーカミオカンデ実験に向けての非常 に重要な課題となっている。新たに水中ラドン濃度の直接測定を目的として、水は通さ ないがラドンガスを通す機能性ガス分維膜を用いた高感度水中ラドン検出器が開発され た。これについては、研究成果の論文1):「水中ラドン検出器の開発」で詳しく報告 されている。 新型水中ラドン検出器がタンク内の水中に設置されており、純水中のラドン濃度は 徐々に低下して約0.5(Bqm-1)となっている。水タンクには高ラドン濃度の約3000 (Bqm・3)の坑道内空気の侵入を防ぐために上面に蓋がかぶせてあり、また蓋と水面の間の 隙間へは常にラドン除去空気製造装置から低ラドン濃度0.05(Bqm-3)の空気が送り込ま れている。しかし蓋のわずかな隙間などからタンク内部ヘラドンが侵入しており、この 経路を遮断することが最も重要である。これに関連して鉱山内空気の挙動については研 究成果の論文2):「神岡鉱山坑道内の大気中ラドン濃度」で議論されている0 また,開発された静電捕集型ラドン検出器を使用して、カミオカンデの3000トン のタンク内に存在する物質からのラドンの散逸率の測定を行った。これらの散逸率を用 いてタンク円物質から放出されるラドンの総量は83(Bq)と見積もられた0純水中のラド ン濃度との比較については,研究成果の論文4):「カミオカンデのタンク内の物質か らのラドン散逸率の測定」で詳しく検討されている。 -1一
現在地震予知の基礎研究を目的として、鉱内にある北20号断層近傍の2箇所からの 湧水を配管して水中ラドン濃度を連続観測している。地球物理学的・地球化学的地震予 知研究の分野では、地震前あるいは地震時の歪の蓄積と解放に伴って、ラドン濃度が変 化する可能性が指摘され、各地で観測が実施されている。現在までの各地での観測から は、気温・気圧・降雨などの変化によっても影響を受ける事が調べられており、これら の環境要素の変化が少ない地下探部での観測は、S/N比を上げるためにも有効である事が 示されている。カミオカンデ近傍での観測は、これら環境条件が極めて良い辛が分かっ ており、既に報告されているように1991年2月の跡津川断層沿いの地震(マグニ チュード3.9)の前後にラドン濃度が30%程変化した事を確かめている。この地震に ついての研究成果は論文3):「岐阜県神岡鉱山における地下水中のラドン濃度の観測 (1)」で報告されている。 しかし、この数年間の地震発生とラドン濃度の観測結果からも、地震のマグニチュー ド(M)、震源距維、震源位置等によってその現れ方に規則性が認められるとは云えない 場合が多い事も知られてきている。すなわち、地震予知に関しては、まだ基礎的なデー ターーを集積しなければならない段階であると云う辛ができる。 1993年2月7日に能登半島沖でマグニチュード6.6の地震が発生して、マグニ チュード5・0以上の余震が6月までに合計4回発生している。これら一連の地震活動に 関係すると思われるラドン濃度の明確な変化は観測されなかった。 その後1993年9月までに下記のようなマグニチュード4.5以上の地震が発生し た。 (1).1993年4月23日に御岳山付近でM=5.1の地震が発生。 (2).1993年7月19日に槍が岳北部でM=4.7の地震が発生。 (3).1993年7月29日に岐阜県中部でM=4.7の地震が発生。 これらの地震とラドン濃度との関連については研究成果の論文5):「神岡鉱山にお ける地下水中のラドン濃度と地震活動」で詳細な報告がなされている。 (2)と(3)の地震に関連して、カウント数は7月19日頃から減少して、約25 日間で元のレベルまで回復している。特に(3)の地震はカウント数の減少した一番最 小の時に発生しており、このような変化の梯子は既に報告されている1991年2月の 跡津川断層沿いの地震の場合とかなり似ている。 ー 2