117 学 会 〔東女医大誌 第62巻 第3号頁297∼298平成4年3月〕
東京女子医科大学学会第289回例会
日時平成4年2月20日(木)午後3時より
会場 東京女子医科大学 弥生記念講堂 挨 拶 第3回(1990年度)山川寿子研究奨励金受賞者研究発表 1.免疫電顕法による神経細胞の伝達物質の同定と放出機構について 2.温度眼振反応の3次元分析 3.難治性心室頻拍に対するカテーテル・アブレーショソ 一至適アブレーション部位の検討一 4,ループス腎炎と抗カルジオリピソ抗体の臨床病理学的意義 5.急性骨髄性白血病細胞に対するレチノイン酸の増殖抑制作用と 臨床応用可能性の検討 第4回(1991年度)授賞者発表 選考経過 奨励金授与 第4回受賞者 1.サルおよびヒト網膜青色光情報処理系の機能形態学的研究 2.副腎機能調節におけるエンドセリンの役割 3.糖尿病性神経障害に関する研究 一特にインポテンスの病態について一 4.Epstein−Barrウイルスの眼感染に対する基礎的研究 特別講演 「医療の中の生と死一臨床仏教学の提言一」 司会 幹事 会長 座長 幹事 (実験動物中央施設) (第二病院耳鼻咽喉科) 土方 浩美 吉岡 守正 出村 博 植木キク子 新井 寧子 (循環器内科学) 大西 哲 (第4内科学) 湯村 和子 (血液内科学) 泉二登志子 選考委員 大森 安恵 学長 吉岡 守正 (第1生理学) 神山 暢夫 (第2内科学) 成瀬 光栄 (第3内科学) 高橋 良当 (第二病院眼科) 亀井 裕子 講師 西来 武治 先生 座長 副会長 小幡 裕 1.免疫電顕法による神経細胞の伝達物質の同定と 放出機構について (実験動物中央施設) 植木キク子 アミノ酸のような小分子に対する抗体を作製する手 法が開発されて以来,アミノ酸性の伝達物質を免疫組 織化学的に同定することが可能になってきた.本研究 では,大脳皮質神経細胞における興奮性伝達物質であ るグルタミン酸と抑制性伝達物質であるGABAの分 布について,免疫電顕的に検索した.その結果から, 細胞の異常発火時にみられる形態的変化は,過剰なグ ルタミン酸放出とGABAの不足によることが示唆さ れた.一方,神経伝達調節物質と考えられているタウ リソについても同様な検索をした結果,神経終末部位 でのタウリン様免疫陽性反応が認められたので,タウ リンも伝達物質の一つであると考えることができる. ただし,タウリン陽性シナプスの形態が非対称性を示 すことから,タウリンがニューロン活動に抑制性の作 用を及ぼすことの機序については更に検討を加える必 要がある. 2.温度眼振反応の3次元分析 (第二病院耳鼻咽喉科) 新井 寧子 温度眼振反応は,1906年Baranyによってそのメカ ニズムが明らかになって以来85年,現在もなお一側の 内耳半規管機能を調べる唯一の検査法である.眼振緩 徐相速度および持続時間を,左右または健康者群と比 較することによって,半定量的に判定するが,このと 一297一118 き比較されるのは右左方向への眼の動きのみである. 眼は元々3次元の回転運動軸を有し,迷路を刺激し たときに生じる眼の動きは3次元である.そこで,温 度眼振を,サーチコイルを使って3次元に記録し,眼 または地球に固定した温度眼振ベクトルとして,com− puter graphicで表現した,その結果,背臥位または腹 臥位で,外側半規管が鉛直面にあるとき,温度眼振ベ クトルははじめは水平で,外側半規管の内リンパ対流 (1906Baraney)で説明できる.しかし,これは減衰し ながら重力方向に起き,反転して第2相になると,もっ とも重力方向に近づくことがわかった. すなわち,半規管の興奮性を示すとしか考えられて いなかった温度眼振反応に重力センサーすなわち耳石 器の関与の大きいことが示されたのである.これは同 時に,温度眼振検査が,耳石器機能検査法としての応 用の可能性を示唆する. 3.難治性心室頻拍に対するカテーテル・アブレー ションー至適アブレーション部位の検討一 (循環器内科学) 大西 哲 近年,難治性頻脈性不整脈に対してカテーテルを用 いて不整脈の原因となる組織を破壊し根治する治療法 としてカテーテルアブレーショソ(EA)が行われてい るが,その成績は必ずしも良好とは言えず,ショック, 穿孔などの重篤な合併症の報告もみられる.EA成功 の鍵は至適アブレーション部位の選択にあり,本研究. の目的は,難治性心室頻拍(VT)に対するEAの至適 アブレーション部位を検討することである. 対象・方法:対象は,難治性VTに対して低エネル ギー直流通電によりEAを施行した29症例(58種類の VT)である,基礎心疾患を有する症例が23例で,他の 6例は明らかな基礎心疾患は無かった.EA部位は,カ テーテルによる心内電位マッピングとペースマッピン グにより決定した. 結果:VTの根治率は77%であった.基礎心疾患を 有する症例では,VTのりエントリー回路に関与する 緩徐伝導部位(critical pathway of slow conduction zone:C−SCZ)は52VT中39VT(75%)で同定可能で あり,同部位でのEAの成功率は100%であったが, C−SCZが同定できなかった13VTでは, EAは不成功 であった.左室起源特発性VT4例では, C・SCZは同定 できなかったが,ペースマッピングにより決定した部 位でのEAでVTの根治が可能であった.