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成年年齢の引き下げと教育扶養

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(1)

名経法学 第43号 (2019年) 研究ノー卜

成年年齢の引き下げと教育扶養

演 口 弘 太 郎

はじめに

大学生の扶養に関する法状況は,昨今,急速に変わってきている。 成 年 年 齢 が

1

8

歳 に 引 き 下 げ ら れ , 大 学 生 は ほ ぼ 全 員 成 年 に な る こ と になった10一方,

I

大 学 等 に お け る 修 学 の 支 援 に 関 す る 法 律

J

(~、わ ゆ る 大 学 無 償 化 法') が 成 立 し , 高 等 教 育 を 受 け て い る こ と を 理 由 と して,公的扶助が認められることとなった。 これまでも,高等教育における親の扶養が議論されてきたが,そこ では,未成熟子か成熟子か,生活保持義務か生活扶助義務かが主とし て争われてきたように思われる3(扶養義務二分説)。大学を初めとす る高等教育においては, しばしば教育費・生活費が高額となることは よく知られているが,果たして,扶養義務二分説が今日の高等教育に も妥当するのか,また,成年子を前提に,扶養義務二分説を展開でき るかというのが本稿の問題意識である。本稿では,高等教育を受けて

l なお,いわゆる飛び級の場合は,例外的に

1

7

歳以下の大学生が誕生する こととなる(学校教育法90条2項参照)が,ここでは検討対象としなL、。 2

I

大学無償化法」と通称されているので,本稿もこれにならうこととする。 もっとも, I無償化」の対象となる学生の世帯の所得制限は厳格であり, 大学の全面的な無償化を定めたものではないことには留意する必要があ る。 3 例えば,大学生に対する扶養を検討したものとして,早野俊明 「大学在 籍中の成年子に対する親の扶養義務」白鴎法学21巻2号295頁 (2015 (平成27)年)があるが,私的扶養に関しては,従来の議論の枠組みで行 われている。

(2)

いる聞に必要な私的扶養(授業料等の教育資金の拠出だけでなく,生 活費の負担も含む。)を 「教育扶養」とよぶこととし,今後の 「教育 扶養」について,従来の議論,最近の立法及び比較法の紹介を行うこ とを通じて,若干の考察を加えるら 本稿の流れは次の通りである。 2においては,従来の議論の枠組み である扶養義務二分説と裁判実務について概観する。3においては, 教育扶養に大学無償化法が与える影響について検討する。4において は, ドイツ法における専門教育扶養について概観する。これらを踏ま えて,

5

において,今後の 「教育扶養」について考察する。

2

扶 養 義 務 二 分 説 と 裁 判 実 務 (1)扶養義務二分説とは,扶養義務には,夫婦問や未成熟子に対す る「生活保持義務」と,それ以外の親族 (成熟子は,これに含まれる。) に対する 「生活扶助義務」の質の異なる

2

種類の義務が存在するとす るものである。二分説は,

1

9

2

8

(昭和

3

)

年に,中川善之助によって 提唱された50

I

未成熟子」という言葉は,中川の造語であるが,中川 は未成年者とは別の概念として 「実質的に,親の監護なしには生存し えない乳児・幼児・少年を含める意味で未成熟子といった」と説明し ている6。本 稿 と の 関係では, 子 供 の 年 齢 が 問 題となるが,中川は 「成熟したかどうかは,人によって違いうる。大体において, 15, 6 歳というようなことは,いえるかも知れないが, ドイツ民法のように, 4 公的扶助の必要性を軽視する趣旨ではないが,本稿では,基本的に私的 扶養に限定した検討を行う。 5 中川善之助 「親族的扶養義務の本質」法学新報 38巻 6号1頁, 同巻 7号

4

8

頁 (ともに,

1

9

2

8

(昭和

3

)

年)。 同「扶養義務の二つの原型について」 同『家族法研究の諸問題J(1

9

6

9

(昭和

4

4

)

年,効草書房)

2

2

8

頁。 6 前掲注 (5)・中川 「扶養義務の二つの原型についてJ238頁。

(3)

成年年齢の引き下げと教育扶養 (演口) 16歳で一線を劃するというような形式的な区別は,身分法の性質に 合わないと考えて私は採らなかったJ

7

として,人によって違いが生 じることを認めている。 一 方で,中川は 119歳の息子なら自分で十 分働らくこともできる年齢であるから,原則的には既に保持義務の範 囲を脱していると思う

J

8

として, 19歳は原則として,未成熟子に該 当しない旨を述べている。 この扶養義務二分説に対しては批判もあったものの,

1

後の学説は, 二分説を基本的に支持しつつも,扶養請求関係にある当事者の有責性 や同居性を加味するなど修正を試みているJ9とされる100 実務においても,多数の裁判は,この扶養義務二分説に依拠してき たようである110 たとえば,大学生の扶養が問題となった事案におい て,さいたま家越谷支決平成 22年 3月 19日は,次のようにいう。 さいたま家越谷支決平成 22年 3月 19日家月 63巻2号 153頁 「一般に,未成年の子に対する親の扶養義務は,いわゆる生活保 持義務(自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義 務)であるのに対し,子が成人した後は,親族問の扶養としての 生活扶助義務(自分の生活を犠牲にしない限度で,被扶養者の最 低限の生活扶助を行う義務)となるといわれている。そして,通 常,親が支出する子の大学教育のための費用は,本来,生活保持 義務の範囲を超えている ・・・ しかしながら,成年に達した子で 7 前掲注 (5)・中川「扶養義務の二つの原型について

J

239頁。 8 前掲注 (5)・中川「扶養義務の二つの原型について

J

240頁。 9 床谷文雄 「前注

(

s

S 877-811) J ~新版注釈民法 (25) 親族 (5) (改訂 版)J(2004(平成16)年,有斐閣)736頁。 10 例えば,深谷松男 「未成熟子扶養法の基礎的考察」金沢法学 27巻1・2 号199頁(1985(昭和60)年)。 11 多くの裁判例を取り上げて分析を行うものとして,早野俊明 「親の子に 対する学費負担をめぐる一考察」早稲田法学会誌42巻383頁 (1992(平 成 4)年)や, 前掲注 (3)・早野 「大学在籍中の成年子に対する親の扶養 義務」がある。

(4)

あっても,親の意向や経済的援助を前提に

4

年制大学に進学した ようなケースで, 学業を続けるため生活時間を優先的に勉学に充 てることは必要であり,その結果, 学費,生活費に不足が生じた 場合,親にその全部文は一部の負担をさせることが相当であると きは,生活扶助義務として,親に対する扶養料の請求を認めるこ とはありうる。

J

(結論として, 生活扶助義務の存在も否定し,子 の請求を棄却) この決定が,未成熟子ではなく,

I

未成年の子」として議論を進め ているのは,扶養義務二分説の立場からは問題がある。もっとも,裁 判官による論考にも 「現在の家裁実務に従い, 未成熟子とは, 一応二

O

歳未満の者であると考えた上で,この中から現に稼働して経済的に 自立し,あるいはそれが期待できる者を除くとするのが妥当である。 /その一方,成年に達した者については,原則として未成熟子には当 たらないとした上で ・・・親に養育費の負担を求めることがやむを得 ない事情がある場合に限り,例外的にこれを認めるのが相当である

J

'

2

とするものがある(引用中の/は改行を意味する。以下同じ。)。 これ に従えは, 多くの場合に未成熟子と未成年子は一致することになるか ら,先のさいたま家越谷支決を答める必要はないのかもしれな L、。 いずれにせよ, 当初は,

I

大体において, 15,

6

歳」までとされて きた未成熟子であるが, 実務では,成年を目安とする運用がなされて きたことが分かる。そうすると,大学生についても,若干成年を上回 るものの,その扶養を生活保持義務的に把握することも可能かもしれ ない九 しかし, 最近では,成年子の扶養に関する裁判実務に変化が 12 斎藤啓昭 「成年に達した未成熟子の養育費」判タ110号 167頁 (2002 (平成14)年)。 13前 掲注 (3)・早野「大学在籍中の成年子に対する親の扶養義務

J

302頁は, 東京高決平成12年12月5日家月53巻5号187頁までの裁判例は, 高等 教育費用の負担について,1"扶養法の平面で位置づけた上で,その性質に

(5)

成年年齢の引き下げと教育扶養 (演口) 見られる。

(

2

)

前掲さいたま家越谷支決平成

2

2

3

1

9

日の抗告審である東 京高決平成

2

2

7

3

0

日は,次のように述べて,子の請求を一部認 容した。 東京高決平成

2

2

7

3

0

日家月

6

3

2

1

4

5

頁 「一般に,成年に達した子は,その心身の状況に格別の問題がな い限り,自助を旨として自活すべきものであり,また,成年に達 した子に対する親の扶養義務は,生活扶助義務にとどまるもので あって,生活扶助義務としてはもとより生活保持義務としても, 親が成年に達した子が受ける大学教育のための費用を負担すべき であるとは直ちにはいいがたい。/ もっとも,現在,男女を問 わず,

4

年制大学への進学率が相当に高まっており(審問の全趣 旨。加えて,大学における高等教育を受けたかどうかが就職先の 選択や就職率,賃金の額等に差異をもたらす現実が存することも 否定しがたい。),こうした現状の下においては,子が

4

年制大学 に進学した上,勉学を優先し,その反面として学費や生活費が不 足することを余儀なくされる場合に,学費や生活費の不足をどの ように解消・軽減すべきかに関して,親子間で扶養義務の分担の 割合,すなわち,扶養の程度文は方法を協議する・・・協議が調 わないとき文は上記親子間で協議することができないときには, 子の需要,親の資力その他一切の事情を考慮して,家庭裁判所が これを定める」として,学校関係費用の不足額

9

1

6

6

円及び生活 費等の不足額のうち

3

万円を,大学を卒業する見込みである月ま で毎月支払うこととするのが相当であるとした。 この決定が東京高決平成

1

2

1

2

5

日家月

5

3

5

1

8

7

頁を踏 っき生活保持義務的に把握し,子の高等教育費用を親の負担とすること に積極的な姿勢を示してきた」という。

(6)

襲するものであることは,その判旨の構成・内容からも明らかである との指摘がなされている九最近の審判例及び決定例の傾向について, 「成年子への扶養を相対的に認めつつ,その程度は・・・生活保持義 務の程度でもなければ・・・生活扶助義務の程度とも異なる。」との 指摘もされている九 これらの裁判例においては,

I

親の意向や経済的援助を前提に

4

年 制大学に進学したようなケース

J

(前掲さいたま家越谷支決平成22年 3月 19日)や 「学費や生活費の不足をどのように解消・軽減すべき かに関して,親子間で扶養義務の分担の割合,すなわち,扶養の程度 文は方法を協議する

J

(前掲東京高決平成22年7月30日)との文言 があることには留意しておきたい。前者については,

I

大学進学(在 学継続)への親の了解がない限り,進学も在学継続も不可能となろ う

J

1

6

との批判があり, もちろん,そのような事態は不当であると考 える。しかし,特に高等教育のような費用も高額になりがちである上 に,選択の幅も広い状況で,親の意向を無視して,

I

子どもが大学に 進学することにしたからその費用は親が払え」といえるかは,また, 問題である。 この問題に対する検討は

5

で行うこととして,さしあたり,本稿の 目的との関係で重要と思われる点を確認しておく。扶養義務二分説は, 中川善之助によって提唱されたが,そこでは,大学生は未成熟子とは 考えられていなかった。裁判実務は,一時期は,扶養義務二分説に従 い,親に高等教育の学費について扶養義務を認めることに肯定的であっ たが,近時の裁判例は異なる傾向を示しており,そこでは,親の意向 や協議状況にも注意が払われている。 14 前掲注 (3)・早野 「大学在籍中の成年子に対する親の扶養義務J305頁。 15 冷水登紀代 「判批」民商144巻6号161頁。 16 前掲注 (3)・早野 「大学在籍中の成年子に対する親の扶養義務J306頁。

(7)

成年年齢の引き下げと教育扶養 (演口)

3

大学無償化法の影響

大 学 無 償 化 法 は , 一 定 の 大 学 等17に 在 学 す る 学 生 等 の う ち , 経 済 的 理 由 に よ り 修 学 が 困 難 な 者 に 対 す る① 学 資 支給 金 の 支 給 ( 同 法

4

条) と , ② 授 業 料 等 の 減 免 ( 同 法

8

l

項 ) を 行 う こ と を 規 定 し て い る。 特 に , ①学 資 支給 金 の 支 給 ま で 行 わ れ る こ と に な っ た の は 特筆に値す る。 学 資支 給 金 は , 給 付 型 奨 学 金 と し て 設 計 さ れ , 原 則 と し て 返 還 の 必要はなく18,また,文部科学省によれば,

I

学 生 等が学 業に専念する た め に 必 要 な 生 活 費 を 賄 え る よ う に す る た め に 支 給 す る も の」である が 「奨 学 金 の 使 途 に つ い て 個 別 に 具 体 的 な 確 認 を す る こ と は 考 え て い ません。

J

I

9

とされる。 大 学 無 償 化 に よ っ て , 高 等 教 育 の一般 化 が さ ら に 進 む こ と が 予 想 さ れる九 また,同法は 「社会で自立し,及び活躍することができる・.. 人 材 を 育 成 す る た め に 必 要 な 質 の 高 い 教 育 を 実 施 す る 大 学 等 に お け る 修 学 の 支 援

J

(同法1条 ) 等 を 行 う こ と と し て お り , 無 償 化 の 対 象 と なる大学等に 「社 会 で 自 立 ・ 活 躍 す る こ と が で き る 人 材 の 育 成」を求 17 授業料の減免等の対象となるのは,大学無償化法7条 1項の確認を受け た確認大学等である。 18 学業成績が著しく不良となった場合や学生等たるにふさわしくない行為 があったとき (独立行政法人日本学生支援機構法17条の 3),偽りその他 不正の手段により学資支給金の支給を受けたとき (同法17条の4)は, 学資支給金の返還を求められることがある。 19 1"高等教育の修学支援新制度に係る質問と回答 (Q&A)J(全体 版)(令和 元年 7月 3日版) Q260 文 部 科 学 省HPhttp://www.mext.go.jp/

a_menujkoutoujhutankeigenj1409388.htm (最終閲覧2019(令和元)

年9月 20日)。 20 学校基本調査(令和元年度。速報値)によれば, 平成31年 3月に高等学 校を卒業した者の大学等進学率は54.7%,専修学校(専門課程)進学率 は16.4%と,両者を合計すると 71%の者が進学している。また, 同様に, 中等教育学 校 (後期課程)の大学等進学率は77.6%,専修学校(専門課 程)進学率5.3%である。このように,現状においても,大多数の者が高 校等卒業後に進学を選択している。

(8)

めている。 もっとも,学校教育法は,

I

大学は,学術の中心として,広く知識 を授けるとともに,深く専門の学 芸を教授研究し,知的,道徳的及び 応用的能力を展開させることを目的とする。

J

(

8

3

l

項)と規定し, 大学教育においては,伝統的に職業訓練の要素は重視されてこなかっ たように思われる。これは,

I

高等専門学校は,深く専門の学芸を教 授し,職業に必要な能力を育成することを目的とする

J

(同法

1

1

5

条 l項 ) と し て , 職業 教 育 を 使 命 と す る 高 等 専 門 学 校 と は 対 照 的 で あ る九 大学無償化法が,大学に 「社会で自立・活躍することができる 人材の育成」を求めた点は,従米と異なる方向性を示しているように 思われる。 高等教育の一般化や,大学においても社会で自立・活躍する人材の 育成が求められるようになったことは,高等教育においても,無償化 の対象とならない世帯においてペ 親の扶養を肯定する方向に作用す るものと思われる。なぜなら,親は子供が自立することができるよう になるまでは手厚い扶養を行うべきであるというのが扶養義務二分 説 の基本的な発想であり23,一般的に高等教育を経て社会で自立・活躍 する人材に成長するとすれば, 高 等教育を受けている子供についても 手厚い扶養を認めた趣旨が妥当するからである。 もっとも, 高等教育は,大学院等も含めれば相当長期になりうるし, また, 学部レベルだけでも,編入学・留年等の影響により,当初の予 21 従来, 生活保護世帯の子供が大学・短大に進学すると,その子供は世帯 分離され,生活保護の対象から外されていた。一方, 子供が高等専門学 校に進学した場合は,卒業まで同一世帯として保護を受けることができ た。『生活保護手帳 別冊問答集 2018年度版J(中央法規, 2018年)69頁。 22 子供に充分な学費・生活費が支給されれば,親は子供を扶養する必要は ないであろう。 23 このことは 「自分で十分働らくこともできる年齢であるから,原則的に は既に保持義務の範囲を脱しているJ(前掲注 (5)・中川「扶養義務の二 つの原型について

J

240頁)という説明にも表れている。

(9)

成年年齢の引き下げと教育扶養 (演口) 定よりも長期になることもあり得る。 親の資力も限度があることは明らかであり,私的扶養の範囲で,高 等教育を受けている子供の学費・生活費の負担を検討する限り,その 扶養の限度を検討する必要があるように思われる。 なお,大学無償化法は,学費・生活費の支給期間につき,以下の制 限をおいている(大学等における修学の支援に関する法律施行令

3

条, 大学等における修学の支援に関する法律施行規則

1

0

l

項)。 ・支給期間は,原則として,正規の修業年限を満了するために必要な 期間とされている。 ・高校卒業後

2

年以内に,大学等に入学しない場合は対象とならない0 ・大学を卒業した場合は,学士入学等しでも対象とならなし、。また, それ以外で,編入学した場合も,通算して

6

年間を超える部分は対象 とならなL、。 これらの制限は,大学無償化法の立法目的から導かれたものであり, 当然ながら,そのまま私的扶養に妥当するものではない。もっとも, 次に述べるドイツ法における教育扶養でも,様々な制限が見られるの であり,大学無償化法の規定は, 日本法における教育扶養の限度を検 討する上でも考慮する余地がある。

4

ドイツ法における専 門教育扶養 (1)ここで, ドイツ法を取り上げる理由は次の

2

点である。 ①ドイ ツでは,

1

9

7

4

年に成年年齢をそれまでの

2

1

歳から,

1

8

歳に引き下げ た。

1

8

歳成年制導入の影響を確認することで, 日本法においても示 唆を得ることができる。 ②ドイツでは,

BGB

において,専門教育に ついても扶養を受ける権利があることが規定されている。2で述べた ように, 日本法においては, 高等教育について親の扶養義務が認めら れるかは不透明である。もっとも,大学無償化法の成立が高等教育に

(10)

ついての親の扶養を肯定する方向に作用することを考えれば,親の専 門教育扶養義務を前提する議論を確認しておく意義は大き L、。 しかしながら, 日本とドイツでは教育体系が大きく異なっている点 には留意が必要である。 ドイツの教育は職業と直結している。ドイツ の青少年の多くはデュアル・システムとよばれる職業教育を選択する が,これは高等教育へ進まない者が職業資格を取得するために聞かれ た進路である。さらに, ドイツにおいては, 高等教育でさえも「一般 大学や専門大学といった高等教育の修了資格は,単なる教育上の資格 だけでなく高度な専門職業資格と見なされている」九 これらの 「職業 資格を持たない者は,多くの場合,未熟練労働者として低賃金労働に 就くことになり,昇進の可能性もほとんど無い。また,失業した場合 にも,公的な資格を持っているかどうかによって,失業手当の給付額 も大きく違ってくる。J250 このように職業資格を有しない者は, ドイ ツにおいては極めて不利な地位に立たされる。 一方, 日本においては,一部の例外を除けば,学校教育は職業教育 とは直結するものと考えられてこなかったように思われる。職業訓練 の大半は就職後の OJTによって行われており,大卒・高卒といった 採用枠による違いはあるものの,学校の課程を卒業したか否かによっ て明確に職種の違いが生じるということはなかった。 このようにいうと, 日本とドイツでは教育体系があまりに異なって おり,両者を比較する意義に乏しいと思うかもしれない。しかし,昨 今は, 日本においても企業体力の低下によってOJTは減少し,企業 は即戦力となる社員を求める傾向にある。また,前述の通り,大学無 償化法は,大学に対して 「社会で自立・活躍することができる人材の 24 小松君代 「ドイツにおける学校教育と職業教育」四国大学経営情報研究 所年報第21号13頁 (2015年)。 25前掲注 (24)・小松 「ドイツにおける学校教育と職業教育

J

14頁。

(11)

成年年齢の引き下げと教育扶養 (演口) 育成」を要求しており,一定の実務経験を有する者による講義が必要 とされている。これらの傾向は, 日本の学校教育においても,職業訓 練の色彩が増していることを意味しており, ドイツの教育体系に接近 しているといえよう。 もっとも,現時点は,両者の教育体系の差異はなお大きいため,高 等教育はもっぱら日本について,専門教育はもっぱらドイツについて 用いることとし,用語上両者を区別する。 (2) さて, ドイツにおける大学生等の扶養に入っていくが, これに 関して,野沢紀雅による詳細な研究が存在するへ そのため,その研 究の概略を紹介するとともに,その後のドイツの法改正を取り上げる こととする。 前述の通り, ドイツは成年年齢を

1

8

歳に引き下げた。ところで,

BGB

は,扶養に関して未成年子と成年子を明確に区別し,未成年子 については,親に 「自己の処分可能な全ての資力を自己と子の扶養の ために均等に使用する義務」を課している。しかし,成年子に対して は原則として,

I

自己の適当な生計を危険に」しない限度で,扶養を すれば足りるのである。

BGB1603

条は次のように規定している(な お,

1

6

0

3

2

2

文は,後述の通り,

1

9

9

8

年に追加されたものであ る。)。

BGB

~

1

6

0

3

給付能力 (1)その他の負債を考慮し,自己の適当な生計を危険にするこ となく,扶養を給付することができない者は,扶養義務を負わな L

(2) 両親がその状態にある場合は,彼らは,その未成年で未婚 の子に対しては,自己の処分可能な全ての資力を自己と子の扶養

2

6

野沢紀雅 「ドイツにおける成年子の就学費用と親の扶養義務」法学新報

1

0

4

8

9

2

9

1

(

1

9

9

8

(平 成

1

0

)

年)。

(12)

のために均等に使用する義務を負う。 成年で,未婚の子供 は 満 21歳までは,両親または片親の世帯に属し,一般的な学校教育 を受けている限度において,未成年子とみなす。この義務は,他 に扶養義 務を負う親族がいる場合は生じない;この義 務は,その 財産の元本から扶養を賄うことができる子供に対しては生じない。 さらに,親の経済状況によっては,子全員を扶養することができな いということも生じうるが,その場合,成年子の扶養請求権は,原則 として,未成年子の弟妹より仇,後順位とされる(侶BGB1凶60ω9条1号)戸2幻7 このような状況下で,成年年齢の引き下げを行ったため,

I

経済的 自立を達成していない子にとって,成年到達は,場合によってきわめ て過酷な状況をもたらす

J

I

かような扶養法の過酷さに対しては,憲 法違反であるとの批判すら存在する」四事態となった。 (3)もっとも, BGBでは,成年子扶養が全く無視されているわけで はな L、。BGBは,就学費用に関する規定を有しており,そこには, 専門教育も含まれる。そのため,

I

現在では成年子の扶養はこの専門 教育扶養が中心となっている」目。 BGB1610条2項 「扶養は, ひ と つ の 適 当 な 職 業 の た め の 準 備 教 育 の費用 (die

Kosten einerangemessenen Vorbildung zu einem Beruf)を

含むすべての生活需要を包括し,教育(Erziehung)を必要とす 27 前掲注 (26)・野沢 「ドイツにおける成年子の就学費用と親の扶養義務」 298頁。 28 前掲注 (26)・野沢 「ドイツにおける成年子の就学費用と親の扶養義務」 298頁。 29 前掲注 (26)・里子沢 「ドイツにおける成年子の就学費用と親の扶養義務」 302頁。フライブルク大学名誉教授のライナー・フランクも, "1まずもっ て疑いのないことは,両親が成人した子に対して教育に対する扶養義務 を負うのが原則だということです」という(ライナー・フランク 「ドイ ツ法における親族扶養J(小西飛鳥訳)平成法政研究18巻2号196頁 (2014(平成26)年))。

(13)

成年年齢の引き下げと教育扶養 (演口) る者の場合には教育の費用をも包括するj30 ここでいう専門教育扶養とは,条文にあるとおり,職業のための準 備教育の意味である。ドイツでは,大学教育も 「高度な専門職業資格」 の取得に向けた教育と考えられている。前述の通り, ドイツにおいて は,職業資格を有しない者は,ほとんどの場合,未熟練労働者として 極めて不利な地位に立たされる。職業資格の取得と経済的自立は直結 しており,資格取得までは扶養する必要があるのである。 (4)ところで, ドイツでは,成年子が教育を受ける際の親の扶養義 務の存否をめぐる判決が多数報告されている。その原因は,

1

連邦専 門教育助成法

J

(

B

u

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a

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z

)

による仮払 L、給付と扶養請求権の移転である。これは教育の機会均等を目的とす る奨学金制度であるが,子がこの制度の適用を申請すると,親の扶養 部分についても仮払 L、が行われ,子の親に対する扶養請求権が国に移 転する。国は親に対して,移転した扶養請求権に基づき,提供した資 金を請求するわけである310 この制度の結果, 118歳で成年に達して親の身上配慮を離れた子は 自分自身で専門教育を選択し,単独での助成申請一仮払い一扶養請求 権移転 助成実施機関からの求償請求という形で, ~親に勘定を頼む』 ことができるj3

'

o

専門教育扶養に関する訴訟が,このように親子関係が疎遠であるこ とを前提とし, しかも,助成実施機関対親という形で提起されること が通常であるとすれば,その争いは自然と激化するであろう。専門教 30 訳は,前掲注 (26)・野沢 「ドイツにおける成年子の就学費用と親の扶養 義務J302頁によった。 31 前掲注 (26)・野沢 「ドイツにおける成年子の就学費用と親の扶養義務」 304頁。前掲注 (29)・ライナー・フランク 「ドイツ法における親族扶養」 196頁。 32 前掲注 (26)・野沢 「ドイツにおける成年子の就学費用と親の扶養義務」 305頁。

(14)

育扶養の要否につき,連邦通常裁判所は,次のように判断している問。

1

I

ひとつの職業のための適当な準備教育として理解されるべきは, 子の才能と能力,実行意欲,および尊重に値する意向に最も見合い, そ の 限 り で は 親 ( 扶 養義 務 者 ) の 職 業 と 社 会 的 な 地 位

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は重要ではないが,親の経済的給付能 力の限度内にとどまる職業訓練であるj34

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親が適正に専門教育を与える義務を履行し,子が専門教育を終了 すれば,原則として,親はそれ以上,またはそれ以外の専門教育を 与える義務は負担しない。もっとも,次のような特別の場合は,継 続的な専門教育や二度目の専門教育のための扶養義務が認められる。 ア 健康上の理由や最初に習得した専門教育が予測不可能な理由に より充分な生計基盤を提供しないなどの理由で,職業変更が不可 避である場合。 イ 最初の専門教育が子の素質に対する明らかな評価違いによって 選択された場合や,親が子の素質を充分に考慮せずに職業を押し つけた場合。 3 大学入学資格を取得しながら,専門教育に進み,そのまま就職し たが,その後,大学へ進学した場合は,そのような行動が, 一体的 な専門教育経路と評価できるのであれば,大学教育も扶養義務の対 象となる。もっとも,専門教育経路の個々の部分が密接な実質的・ 時間的関連性を保っていなければならない。この実質的関連性は厳 格に理解されている。 33 前掲注 (26)・野沢 「ドイツにおける成年子の就学費用と親の扶養義務」 306頁。1と 2は, BGH29.6.1977BGHZ69, 1900 3は, BGH7.6.1989 BGHZ 107,3760

3

4

訳は, 前 掲 注 (26)・野沢 「ドイツにおける成年子の就学費用と親の扶養 義務

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306頁によった。

(15)

成年年齢の引き下げと教育扶養 (演口) (5) ところで,成年子扶養については, 1998年に改正が行われてい る。同年6

4日の児童扶養法 (Kindesunterhal tsgesetz) により, 同年

7

1

日から親の世帯に属し(つまり,親の扶養を受け)かっ未 婚であり, 21歳未満で,一般的な学校教育を受けている子について, 未成年子と同様に親の高度化された扶養義務,つまり,親の生活水準 を下げてでも子供を扶養しなければならない義務が妥当することとなっ た (BGB1603条 2項の改正戸。 また,そのような子供の扶養請求権 は未成年子と同順位とされた (BGB1609条の改正)。 この21歳という年齢は,社会法典第8編 18条 4項, 41条 l項, 59 条

1

1

文に対応したものとされる九 未成年子並みの扶養となるための主要な要件は,一般的な学校教育 を受けていることと, 21歳未満であることである。その他の要件 (親の扶養や未婚であること)は,通常は満たされるものと思われる。 このうち,

I

一般的な学校教育

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(allgemeine Schulausbildung) に は , 法 定 の 就 学 義 務 の み な ら ず , 中 間 資 格 や ア ビ ト ゥ ー ア (Abitur) までの通常の過程を包含する。一度学校を中退し,その後, 高等科国民学校 (Hauptschule) に復帰した子供も,

I

一般的な学校 教育」に該当する370年齢については, 21歳までとされているが,こ れは,それまでに通常は 「一般的な学校教育」を終了しているか,い ずれにせよ,終了させることができるからとされる九 (6) ドイツの教育は日本とは異なる点が多く,示唆を得るには慎重 にならざるを得ないが,概ね次のことは言えようか。 まず, 18歳成年制の影響である。18歳成年制を採用すると,成年 でありながら,

I

一般的な学校教育」を終了していない者が発生する

35 Staudinger-Komm (Frank Klinkhammer), 2018, S 1603BGB Rn352. 36 Staudinger, a.a.O.(Fn.35)Rn352.

37Staudinger, a.a.O.(Fn.35)Rn353

(16)

ことになる。このような者に対しては, ドイツは法改正を行い,

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1

歳までは,未成年子と同様に高度化された扶養義務を適用することと した。次に,親に専門教育扶養義務が課されていることについてであ る。ドイツにおいては,職業資格の取得は経済的自立と直結している 以上, 資格取得に至るまで扶養を継続する必要がある。一方,

1

8

歳 成年制とこの義務が合わさったことにより,成年となった子が親の意 向と異なる進路を選択し,そのための費用が求償という形で,親に請 求されるという問題が生じた。これについては,成年子の自己決定を 尊重しつつも,裁判所は二度目の専門教育についての扶養義務を限定 的に理解することなどで対応しているように思われる。

5

考察

(1)これまで見てきたところを元に若干の考察を行う。 扶養義務二分説の下では,未成熟子概念が生活保持義務と結びつい ているために,高等教育を受けている子が未成熟子といえるかが問題 となる。そして,裁判実務も一時期は,積極的に大学生を未成熟子と 認める傾向にあった。しかし,近時の裁判例は,高等教育の学費につ いて,扶養義務二分説を適用しないという傾向を示しており,そこで は,親の意向や協議状況にも注意が払われている。

(

2

)

このような状況において,わが国で,

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歳成年制が導入される ことが決まった。

1

8

歳成年は,大学生に対する親の扶養義務を否定 する方向に働く可能性がある事情である(一般的に,成年子に対し, 未成熟子であるから生活保持義務を負えというのは,不可能ではない にせよ,そのような評価が可能か疑義が生じる可能性がある。)。しか し,大学無償化法は,高等教育においても,親が子供の学費・生活費 について扶養する方向に作用するものと思われる。そうすると,今後 の教育扶養について,どのように考えるか問題となる。

(17)

成年年齢の引き下げと教育扶養 (演口) (3)一つの解決策は, ドイツ法を参考にすることであろう。ドイツ 法は,

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1

歳までで一般的な学校教育が終了していない成年子は未成 年子と同様に扱い,その後は,専門教育扶養の問題として処理してい る。日本においても,高校はほぼ全入となっている却現状を踏まえれ ば,高校卒業までは, 18歳に達したとしても,原則として,なお未 成熟子として,生活保持義務が妥当するものと考えてよいのではない か。また,それ以降の高等教育については,扶養二分説とは切り離し て,いわば高等教育支援義務とでもいうべき独立した教育扶養の問題 として検討した方が議論が明確になるように思われる400

(

4

)

ここで,教育扶養を分離すべきというのは, ドイツ法における 専門教育扶養の存在に加えて,今日の高等教育は当初の扶養二分説が 想定したものとは大きく異なる状況にあると思われるからである。私 は,未成熟子の範囲等の問題はあるものの,未成熟子には生活保持義 務という高度の義務を負うという扶養二分説の考え方は今日において も妥当するように思う。しかし,今から述べるように,今日の教育扶 養を扶養二分説の枠組みで把握することはできないと考える。 まず, 18歳成年制が施行されることにより,大学 生は親の監護か ら外れ,自ら意思決定を行い,行動する立場になる。 一方,大学無償 化法の検討で見たように,今日,むしろ,高等教育においても親が子 供を扶養する必要性は高まっている。しかし,中川は未成熟子につい 39 学校基本調査(令和元年度。速報値)によれば,平成31年 3月に中学校 を卒業した者1,112,070人中,高等学校等進学者は1,098,877人であり, 約99%は高等学校等に進学している。なお,高等学校等には,高等学校 の他,中等教育学校後期課程,高等専門学校及び特別支援学校高等部を 含む。

4

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生活保持義務は,最後の一片の肉, 一粒の米までをも分け食らふべき義 務

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(前 掲注 (5)・中川 「親族的扶養義務の本質

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5頁)というのである が,私には,大学の授業料を負担することがそのような義務になじむと は思えない。

(18)

て 「親の監護なしには生存しえない乳児・幼児・少年

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4

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と述べてお り,親の監護から外れた成年子を生活保持義務の対象とは考えていな

次に,教育扶養においては,授業料等学費の負担が大きいが,学費 が生存するために必要な費用かどうかは疑問が残る。もちろん,子供 が社会で自立・活躍するための費用である,それなしには,子供は社 会で自立・活躍できないと考えれば,広い意味で生存に必要といえる かもしれない。しかし,当面生存するために大学の授業料は不要であ る。まさに,その日の食費に困っているという状況を考えれば,やは り,高額の学費の優先順位は低いものといわざるを得ないのではなか ろうか。また,大学においては,親元を離れて

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人暮らしするという ことも多いであろう。このような学費や下宿費などが発生することこ そ,教育扶養の特徴である。その義務の程度を考えても,生活保持義 務というほど高いようには思われないが,生活扶助義務ほど低くもな いように思われる(前述の通り,既に裁判例は,そのような傾向を示 しているとの指摘がある九。) そもそも,大人が世話を焼かなければ死んでしまう乳児や幼児と, 重要な契約すら l人でなし得る成年子を同ーの枠組みで処理すること には無理があるように思われる。また,教育扶養は,教育を受けてい るという事実によって基礎づけられるのであり,例えば,大学生が大 学を退学すれば要扶養性を喪失する。一方で,大学等に在籍し続ける 限り,親は教育扶養の義務を負うというのでは,親の負担が無制限に 拡大する恐れもある。その特性を考慮、し,妥当な範囲で教育扶養を限 定することも必要である。 これらをまとめると,次のようになろう。高等教育においても親は 41 前掲注 (5)・中川 「扶養義務の二つの原型についてJ238頁。 42前掲注 (15)・冷水 「判批

J1

61頁。

(19)

成年年齢の引き下げと教育扶養 (演口) 子を扶養する必要があるが, もはや子は親の監護下になく,子供の自 己 決 定 を 尊 重 す る 必 要 が あ る 。 ま た , 教 育 扶 養 特 有 の 高 額 の 学 費 や 下 宿 費 等 も 発 生 し , さ ら に , 拡 大 す る 可 能 性 も あ る 。 こ れ は , 従 来 の 扶 養 二 分 説 が 想 定 し て い な か っ た 事 態 で あ る 。 既 に 裁 判 例 の 傾 向 と し て 指 摘 さ れ て い る よ う に , 教 育 扶 養 に つ い て の 義 務 の 程 度 は , 生 活 保 持 義務とも生活扶助義務とも異なるように思われる。 (5)こ れ を , 上 記 の よ う に , 生 活 保 持 義 務 と も 生 活 扶 助 義 務 と も 異 な る 第三の 類 型 , 中 間 に 位 置 す る も の と し て , 仮 に , 高 等 教 育 支 援 義 務 と 呼 ぶ な ら ば , そ の 義 務 の 内 容 に つ い て は , 親 に 合 理 的 な 範 囲 で 負 担を求めるため,一定の限定を加える必要がある。これについて, ド イ ツ 法 の 議 論 , 例 え ば , 専 門 教 育 に 関 す る 扶 養 は 原 則 と し て

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固 に 限 ら れ る こ と や 専 門 教 育 扶 養 は 親 の 適 当 な 生 計 を 危 険 に し な い 限 度 で 認 め ら れ る と い っ た こ と が , 参 考 に な る よ う に 思 わ れ る九 日本におい て も , 高 等 教 育 に お け る 扶 養 を 教 育 終 了 後 の 経 済 的 自 立 に 向 け ら れ た も の と 考 え れ ば , 高 等 教 育 に 関 す る 扶 養 は 原 則 と し て

1

回に限定でき る の で は な か ろ う か九 また, ド イ ツ 法 に お い て , 成 年 年 齢 引 き 下 げ により,専門教育扶養に関する多数の紛争が生じたことを考えれば, 43 高等教育における扶養は,親の適当な生計を危険にしない限度で認めら れるとしても,これは,親の扶養義務を事実上免除する趣旨ではない。 従来, 生活保持義務か生活扶助義務かとの議論は,単に親の経済的余裕 の問題にととまるものではなし事実上,扶養が認められるかどうかと いう問題に直結していたように思われる。本文中で取り上げた,さいた ま家越谷支決平成22年3月19日にも現れているが,生活保持義務であ れば親の資力がなくても扶養が認められるのに対して,生活扶助義務で あると判断されると(特に調査能力の問題から)親に資力があると認定 されず,結果的に扶養義務が否定される結果になるという発想があった のではなかろうか。しかし,これは,法律論の問題というより, "1扶養請 求を不当に逃れようとする親」にどのように対応するかという問題であ る(前掲注(10)・深谷 「未成熟子扶養法の基礎的考察

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224頁も,未成 熟子について同旨。)。子の調査能力を強化することや公的機関が一度扶 養を立て替えて,後に,親に求償することなどが考えられる。 44 もちろん,例外的に 2度目の高等教育扶養を認める余地を排除する趣旨 ではない。

(20)

親と子の協議を重視することも必要であろう。大学等へ進学しようと する子も成年となるのであるから,自ら意思決定を行い,積極的に協 議を行うことが要求されるように思われる。そして, 最終的には,前 掲東京高決平成

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2

5

日がいうように,親子聞で扶養の程度文 は方法について協議が整わないとき又は協議することができないとき には,子の需要,親の資力その他一切の事情を考慮、して,家庭裁判所 がこれを定めることになる。 (6) これまで,大学生への私的扶養について検討してきたが,公的 扶助についても若干言及しておく。当然であるが,私的扶養への過度 の依存が続く限り,貧困問題は解決できない。これは法律論の問題で はなく資力の問題である。そこで,公的扶助についても,教育扶養に 関する議論を前提に,例えば,第一義的な教育扶養の義務は親が負担 するものの,親の資力によってそれを果たすことができない場合は国 費で負担するといった発想が求められるように思われる。 本研究は

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科研費

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の助成を受けたものである。

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