はじめに
本書は,大学初年級の学生を対象にした「微分積分」の入門書です.入 門書ではありますが,解析学を学ぶための基礎付けとなることを目指して います.高等学校における「数学Ⅱ」,「数学B」の続きとして,無理なく 読み進められるようにしました.ただし,「解析学の基礎付け」ということ もあり,「ε(イプシロン)- δ(デルタ)」論法を扱い,それに関連した部分は 目立つように枠で囲んだり*印を付けたりしています.これは最初の段階 では,慣れるまで,一種の「コラム」として,「そんなものか」という程度 に読み飛ばしやすくするためのものです.「ε - δ」形式で述べているのは, 定義の言い換えや一部の証明のみですから,読み飛ばしたとしてもそのま ま読み進むことが可能です. 第1章では,実数および数列について述べます.いわゆる実数論の展開 はしていませんが,いくつかの代表的な実数の性質を述べています.参考 文献として挙げている本の中では,それらのうちの1つを仮定し,それを 用いて他の性質を導き出しているもの[2]や,いくつかの性質を公理とし て述べ,後にそれらが同値であることを示しているもの[4]があります. 読み返すときには,それらを参考にしてこの本で述べている,または述べ ていない実数の性質も含め,それらの性質の関係を明らかにしながら読み 進めれば,より理解が深まるものと思います. 第2章では,関数について述べます.「関数とはいかなるものか」から 始まり,高等学校でも学んできた多項式,有理式,無理式,指数関数,対 数関数および三角関数などについて,また連続関数についても述べます.ii はじめに 第3章では,微分について述べます.一般論を述べた後で,第2章で出 てきた関数の微分法について述べます. 第4章では,積分について述べます.高校数学では,まず不定積分から 学んだと思いますが,ここでは定積分から入ります.積分とは,区分求積 法から始まる面積を求めるという目的で考えられたものと思うからです. もちろん話の順番が変わっても,本質的に同じことをしているのですが, 積分を考える意味付けができるものと思います. 各章の途中にある問題や章末の練習問題を解き,理解を深めてください. この本を書くにあたって,高校の教科書・参考書を含む多くの図書を参 考にしました.また,対象と考えている読者が似通っていることもあり, 前著[7]を多くの部分で使いました.その他,ノートに書き出していて, 元々どこから書いたものかが不明なものも使いました.その意味で,前著 で参考にさせてもらった図書を含めて多くの図書を参考にしたことになり ます.ここで,すべてを参考図書として挙げ,それらの著者の方々に謝意 を表すべきですが,勝手ながら,今回,特に参考にさせていただき,また, 現在も入手可能なもののいくつかを,末尾に「参考文献」として挙げてお きます. この本を書くことを勧めていただき,お世話になった仏教大学の黒田恭 史氏および通信教育部の方々に,また本書の出版にあたって,校正などで お世話になった共立出版㈱の赤城圭さんはじめ皆様に感謝いたします.