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まえがき(pdf)

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Academic year: 2021

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「ソボレフ空間」という名称は,この空間の研究で大きな貢献をしたロシアの 数学者 S.L.ソボレフ(1908–1989) にちなんでいる.S.L.ソボレフの原語での 表記はS.L. Sobolevであるが,以後ソボレフ空間を「Sobolev空間」と表記 することにする. さて,Sobolev 空間とは何かと一口で言えば,Cn 級関数のような古典的な 微積分の対象を少し拡張して,Lebesgue 積分論の枠組みで微分可能な関数を 取り扱うための関数空間(関数からなる Banach空間)であると言えよう.こ のようなものを考える理由は,枠組みの拡張により解析的な議論(極限の存在, 連続性の詳しい評価など)がやりやすくなるということが第一である.(この点 については本書第10章の序にも説明がある.)同様な考えから,現在は種々の 関数方程式を扱うために,重み(weight) 付きのSobolev空間をはじめとして,

Besov空間,Triebel–Lizorkin空間等々,Sobolev空間と関連する様々な関数空 間が使用されている.そのため関数方程式についての書物では,関数空間に関 することは予備知識として最小限のページ数で紹介されることが多い.しかし, ある程度知識のある読者にとってはコンパクトで要領がよい記述は非常に役に 立つが,初学者にとってはイメージがつかみにくく,「よくわかった」というと ころまで行きにくい. これに対して,本書はSobolev空間の基礎と応用を初学者向けに丁寧に述べ たものであり,英語の書物でときおり見かける表現で言えば“leisurely course” (ゆったりした教程)を提供しようとするものである.関数空間の一ユーザーと して著者が本書で心がけたことは,本格的な「Sobolev空間論」あるいは「関 数空間論」は望むべくもない代わりに,できるだけわかりやすく自己完結的に 記述することと,初歩的な段階に閉じこもらないようにすることである.その ために注釈も多くなったが,本書の先への案内として役に立てば幸いである. 本書を読むための予備知識としては微分積分学の確実な知識の他は,ユーク リッド空間RN の位相,Lebesgue積分,ノルム空間,Banach空間の定義や位 相に関するごく初歩的な知識で十分なように配慮してある.Lebesgue積分につ いては,Lebesgueの収束定理やFubiniの定理などの一般的知識を越える部分 で必要なものは本書において大体証明を述べておいた.唯一の例外はRadon– Nikodymの定理であるが,とばしても全体の理解にはほとんど支障はない.

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ii まえがき 本書では線分条件をみたす境界を持つ領域や,Gagliardo–Nirenberg の不等 式を扱うなど,単純な微積分学と積分論の手法で得られる結果の限界に近いと ころまで広く丁寧に述べている.しかし,単純な微積分以外の手段を用いた結 果や文献もところどころで簡単に紹介し,巻末の「あとがきに代えて」では実 解析的手法の一端として,最大関数のLp有界性やHardy–Littlewood–Sobolev の不等式などを証明付きで述べた.これらが読者にとって,これからの勉学の 参考となることを期待したい.また,初読の際はとばしてもよいと思われる少 し詳しい結果を述べてある節または小節には星印‘∗’をつけておいた.(これら の節では一部の結果の証明は参考文献を明記するだけとなっている.)本書では 一般の結果を述べる前に易しい場合の証明をしているので,これらをとばして もSobolev空間の初歩をひととおり学ぶには差し支えないと思う. 本書では初学者向けに易から難へと同様な結果を重ねて述べているところが ある一方,ポテンシャル論による精細な議論や補間空間論など述べられていな いことも多く,応用面についてもごく基本的なことしか触れられなかった.本 書より進んだ話題については,たとえば和書では田辺広城氏の『関数解析』[46] (巻末文献番号,以下同様)が Sobolev空間およびその応用について大変詳し

い.また洋書ではAdams and Fournier [2]やMaz’ja [19], Ziemer [32]のような

関数空間についての専門書もたくさんある.本書ではSobolev空間(と関連す るH¨older空間)しか扱っていないが,本書が読者にとって,Sobolev空間を自 信を持って使いこなし,専門的な書物や解析学の現場へ進む一助となるならば, 著者としては無上の喜びである.また,望みを言わしていただけるなら,その ような読者のために,現代的関数空間論のわかりやすく本格的な和書の出現を 期待したい. 本書の出版にあたっては,東京理科大学の同僚である宮岡悦良氏をはじめ,多 くの方にお世話になったが,中でも共立出版株式会社の小山 透氏にはたいへん お力添えをいただき,厚く感謝申し上げる.小山氏と編集部の吉村修司氏には 編集面でも多数の有益なご指摘をいただき,衷心よりお礼を申し上げる.また, 同僚の岡澤登先生には“Kondrashov”氏本来のキリル文字での綴りをご教示い ただき,大変ありがたく存じます.最後になったが,本書の原稿を精読された 理学博士 田中視英子氏の注意により,多くのミスを正すことができたことをこ こに記し感謝したい. 2006年7月6日 著者識す

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