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距離尺度を用いた空間, 植生, 環境物理化学性, 土壌生物要因とトビムシ群集 の関係 菱拓雄 ( 演習林 ) 前田由香 ( エコニクス ) 田代直明 ( 演習林 ) 1. はじめにトビムシは熱帯から極域まで広く分布し, 温帯森林土壌ではその密度は数万 / m2に達する. また, 林分あたりの発見種数

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第 18 回演習林研究発表会 (2016 年 1 月 13 日)

口頭発表 13:05-14:05,14:40-15:40 01.距離尺度を用いた空間,植生,環境物理化学性,土壌生物要因とトビムシ群集の関係 13:05-13:20 ○菱拓雄1,前田由香2,田代直明11九州大学農学研究院,2エコニクス) 02.モウソウチク稈における呼吸の変動と組織学的解析 13:20-13:35 ○内田詠子メガン1,片山歩美1,内海泰弘1,大槻恭一11九州大学演習林) 03.1993 年豪雨時に宮崎演習林大藪川流域で発生した表層崩壊と地上部バイオマスの関係 13:35-13:50 ○矢野敦久1,篠原慶規2,久保田哲也21九州大学農学部,2九州大学農学研究院) 04.ヒノキ人工林におけるスプラッシュカップを用いた雨滴観測 13:50-14:05 ○市野瀬桐香1,篠原慶規2,久保田哲也21九州大学農学部,2九州大学農学研究院) 05.2015 年度北海道演習林研究実施概要 14:40-14:55 ○内海泰弘,智和正明,久保田勝義,南木大祐,中村琢磨,村田秀介(九州大学農学部附属北海道演習林) 06.北海道演習林における落葉広葉樹林の長期動態-モニタリングサイト 1000 の 10 年間- 14:55-15:10 ○中村琢磨1,田代直明2,久保田勝義1,南木大祐1,村田秀介1,井上幸子3,緒方健人4,長慶一郎4,山内康平4,馬渕哲也1,内海泰弘2 (1:北海道演習林,2九州大学農学研究院,3福岡演習林,4宮崎演習林) 07.宮崎演習林における長期森林動態モニタリング-これまでの実施状況と今後の 100 年に向けて- 15:10-15:25 ○緒方健人1,鍜治清弘1,長慶一郎1,山内康平1,久保田勝義1,壁村勇二1,井上幸子1,菱拓雄2,田代直明2,榎木勉2,内海泰弘21九州大 学農学部附属演習林,2九州大学農学研究院) 08.九州北部の広葉樹二次林の森林構造―九州大学福岡演習林里山試験地での調査結果― 15:25-15:40 ○扇大輔,壁村勇二,井上一信,大崎繁,浦正一,大東且人,中江透,柳池定,内海泰弘,古賀信也,榎木勉(九州大学農学部附属演習林) ポスター発表 14:05-14:40 09.140 年生スギ造林地の地上部一次生産量と窒素利用-広葉樹が天然更新した不成績造林地との比較- ○榎木勉(九州大学農学研究院) 10.九州大学宮崎演習林におけるニホンジカの生息調査結果-2006 年~2015 年のスポットライトセンサスの結果から- ○長慶一郎1,鍜治清弘1,山内康平1,緒方健人1,佐々木寛和1,久保田勝義1,壁村勇二1,井上幸子1,椎葉康喜1,馬渕哲也1,宮島裕子1,内 海泰弘2,菱拓雄2,榎木勉2,矢部恒晶3,村田育恵41九州大学演習林,2九州大学農学研究院,3森林総合研究所,4九州大学生物資源環境科府) 11.九州大学演習林の研究利用件数の推移 ○大崎繁1,川嶋弘美1,古賀信也21九州大学農学部附属演習林,2九州大学農学研究院) 12.宮崎演習林の研究プロジェクト ○菱拓雄,田代直明,長慶一郎,山内康平,緒方健人,佐々木寛和,鍜治清弘(宮崎演習林) 13.新建川上流域における有機物分解速度の縦断的変動 ○李彦達1,笠原玉青2,大槻恭一21九州大学生物資源環境科学府,2九州大学農学研究院) 14.福岡演習林の研究モニタリング活動 ○榎木勉,古賀信也,片山歩美,内海泰弘,壁村勇二,扇大輔,井上幸子,大崎繁(九州大学農学部附属演習林)

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距離尺度を用いた空間,植生,環境物理化学性,土壌生物要因とトビムシ群集

の関係

菱拓雄(演習林)・前田由香(エコニクス)・田代直明(演習林) 1. はじめに トビムシは熱帯から極域まで広く分布し,温帯森林土壌ではその密度は数万/㎡に達する.ま た,林分あたりの発見種数も数十種となる.こうしたことから陸域,あるいは森林環境の違いに 応じた動物群集の多様性に関する研究がトビムシでは容易に行うことができる.土壌性のトビム シは,落葉の腐植段階や分解基質の違いによって同所的な共存や,異所的な棲み分けを行ってい るといわれている.また,様々な環境条件は,土壌深度によって受ける反応が異なるため,土壌 深度に応じた機能群によって,環境と群集間の関係性は異なる可能性がある. 環境への種多様性には,局所的な多様性(α多様性)に加え,場所間の群集構造の違い(β多 様性)に起因し,これらと環境条件の関係を解明することは,近年の群集生態学の大きなトピッ クとなっている.近年,環境要因の傾度に対するトビムシのβ多様性の反応の解明は,多変量距 離を用いた群集の座標付けの解析方法の発達によって容易になってきている.β多様性には,群 集サイズが小さくなり,種の欠損が生じるために起こる入れ子構造,あるいは個体数傾度による 違い(Abundance gradient:右図上)と,群集内の種構成が入れ替わり, 種間個体数比が変化する違い(Balanced variation: 右図下)の二つ の側面がある(Baselga 2013). 本研究では,北海道演習林の林分環境の違いが,土壌の表層,腐植, 深層生活種群それぞれのトビムシ群集のβ多様性の各要素に与える 影響を空間距離,植生間距離,環境物理性距離,土壌化学環境距離, 土壌動物距離から明らかにすることを目的とした. 2. 方法 図.(ベソッカキ)トビムシ 北海道演習林の自然林保全区および,約 50 年生のカラマツ人工林において,南斜面上部,下部, 北斜面上部,下部と谷部と異なる地形上に各 5 つの地点を選び,20m 四方の植生プロットを作成 した.各プロットにおいて,樹種と GBH を計測した.また,リターフォールを種ごとに,細根量 を針葉樹,広葉樹,ササ,シダ草本類に分けて測定した.植生の胸高断面積、下層を含めた葉の 現存量,細根量のそれぞれについて,プロット間の Bray-Curtis 非類似度を求めた。GIS の DEM データから各サンプリング地点間の座標から直線空間距離を求めた.また,各地点の積算日射量 指標(SRI),集水面積(WSA)を計算した.各地点において,O 層重量,表層土壌 pH,C/N 比,窒素 無機化速度を求めた.これらの値は全て標準化した後,地点間のユークリッド距離を求め,物理 sp1 sp2 sp3 sp4 sp1 sp2 sp3 sp4 図 .2 種 類 の 群 集 距 離 . 上 は BCgra=034,BCbal=0, 下 は BCgra=0, BCbal=0.6.

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化学距離とした.ミミズ重量,大型腐植利用土壌動物個体数,捕食者数,トビムシと同サイズの 捕食者であるトゲダニ,ケダニ個体数,トビムシと同じ菌食節足動物であるササラダニの個体数 と種多様度を標準化し,地点間のユークリッド距離を求め,土壌動物距離とした.トビムシは, 2007 年秋と 2008 年夏の二回,各プロットでおよそ 10m ごとに 3 つずつ採取し,ツルグレン装置 (35℃)に 5 日間かけた後,種ごとに個体数を記録した.今回は各プロット 2 回,3 繰り返しで 採取した群集は全て一つのデータにプールした総和値を用いた.トビムシ群集間の距離は Bray-Curtis 非類似度(BC)およびこれを分解した個体数傾度非類似度 BCgra, 個体数比非類似度 BCbalを求めた.各空間,植生,土壌・地形,生物距離と,トビムシ群集距離の相関関係は,空 間距離を考慮した偏マンテル検定を用いて検定した. 3. 結果・考察 図.(キタフォルソム)トビムシ 調査で得られたトビムシの個体数は,4754 個体,92 種であった.この内,表層種は 26 種,腐植 種は 48 種,深層種は 21 種に分けられた.トビムシ群集の種多様性や多様度指数と環境要因の間 に相関はなく,立地間の違いも見られなかった.トビムシ群集全体および表層,腐植,深層生活 各機能群の群集構造と空間距離の間には有意な相関はみられなかった. 胸高断面積および葉の重量を元にした植生距離とトビムシ全体,深層種の BC には有意な相関 が見られたが,表層,腐植種との有意性は認められなかった.細根重量を元にした植生距離とは, 表層種の BC,BCbalanceのみに有意な相関が見られた.これまで落葉の質がトビムシ群集を決定し, 表層種ほど植物種構成の影響を受けると考えられていたが,深層種の方が植生から受ける影響が 大きかったことは興味深い.土壌や日射,集水面積などの条件を元にした物理環境距離および土 壌化学性とトビムシ全体および腐植種の BCbalには有意な相関が見られ,その他の群集距離には 有意な相関が見られなかった.ただし集水面積は深層種の BC に,含水率は表層種の BC, BCbal に影響した.日射量や水分環境は分解過程を通して腐植堆積様式に影響するため,腐植生活性の 種の生活条件が強く影響を受けて,種構成が変わったと考えられる.土壌動物条件を元にした土 壌動物距離とトビムシ全体,表層種,腐植種の BC,腐植種の BCbalの間に有意な相関が見られた. 特に腐植種はミミズ重量と強い関係があり,ミミズによる有機物の撹拌作用が腐植種の種構成に 大きく関わっていると考えられた. 今回の結果から,トビムシ群集は植生,土壌物理化学条件,および他の土壌動物からの影響を 強く受けるが,生活場所の違いにより環境から受ける影響が異なることが明らかにされた.特に, 植生の違いに最も反応していたのは深層種であり,根を経由した過程の種間差がトビムシ群集に 重要である可能性を示した.また,足寄のトビムシ群集の変化は,環境条件による個体数や種の 増減の変化よりも,地形に応じた種の入れ替わりが生じていることがわかった.

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モウソウチク稈における呼吸の変動と組織学的解析

内田詠子メガン1),片山歩美1),内海泰弘1),大槻恭一1)

1)九州大学演習林 1. はじめに

植物において呼吸は成長、植物体の維持、基質の輸送などに必要不可欠かつ複雑な代 謝過程である。したがって呼吸は植物の生産性を決定づける重要な要因であり、炭素循環 を把握するためには各部位における呼吸のプロセスを理解する必要がある。地上の炭素循 環に大きな影響を与えると考えられる樹木の呼吸については多くの研究がなされており、 なかでも幹呼吸は肥大成長や辺材幅によって変動することが知られている。一方で、近年 拡大が懸念されているタケに関しては呼吸、特に稈における呼吸の研究報告はほとんど存 在せず、季節変化や個体間の変動およびその要因については明らかとなっていない。タケ は肥大成長せず、稈は中空であることから、樹木とは異なる要因によって呼吸が変動する ことが予測できる。そこで日本の竹林の中で大きなバイオマスを占めるモウソウチクの稈 呼吸速度の季節変化とその経年変化を把握し、稈の組織構造と材質が稈呼吸速度に与える 影響を明らかにすることを本研究の目的とした。 2. 調査地・方法

2013 年に福岡演習林 10 林班のモウソウチク林に 10mx10m のプロットを設定した。2013 年より毎年プロット内に新規に発生する稈を記録した。2015 年現在で当年から 4 歳まで の稈が生じていた。0(当年),2,3,4 齢以上の稈を3本ずつ計 12 本を選択し、IRGA (Vaisala 社、フィンランド)と連結した自作チャンバーにより 2015 年 3 月から 12 月ま で毎月 1 回稈呼吸測定を行った。光合成や樹液流の稈呼吸への影響を避けるため(Teskey et al,2007)、呼吸測定は日の出前に行った。また、稈の組織構造と材質解析のために、6 月と 12 月の稈を採取した。これらの稈は、樹高・稈の厚さ・密度などを計測し、内部組 織観察用サンプルを作成し、組織を Coomassie Blue で染色し、を光学顕微鏡で解析した。

3. 結果と考察 稈呼吸は 3 月から 8 月にかけて増加し、その後減少した(図 1)。6 月から呼吸計測を始め た当年稈は他齢稈よりも呼吸速度が非常に高く、この傾向はすべての計測月で同様であっ た。稈呼吸の季節変動は気温と正の相関があった(当年稈平均 R2=0.75、P<0.05)。一方、 個体間の呼吸速度の変動は、DBH や材厚さ、材の窒素濃度などとは有意な相関関係は見ら れなかった。材密度は 6 月と 12 月の期間に当年は 0.23g/㎝3増加し、細胞の成長が確認 された。一方で、他齢稈は最大 0.030g/㎝3しか増加していなかった。また、生細胞染色 実験の結果、当年稈は細胞内腔に加えて細胞壁に強い染色が認められたが、2 年生以上の 稈で細胞壁にはほとんど染色が認められなかった。これらの結果により、当年稈では細胞 が形成中であり、また、細胞全体が生きた状態であったため、呼吸速度が高くなったこと が示唆された。 0   1   2   3   4   5  

Mar   Apr   May   July     Aug   Sep  

Oct   Nov   Dec  

稈呼吸速度

 (μmo

l/

/se

c)

  当年稈1   当年稈2   当年稈3   2齢稈1   2齢稈2   2齢稈3   3齢稈1   3齢稈2   3齢稈3   4齢稈1   4齢稈2   図1:各年齢稈における呼吸速度の季節変化 (線は各齢の平均値を示す)

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1993 年豪雨時に宮崎演習林大藪川流域で発生した

表層崩壊と地上部バイオマスの関係

矢野敦久*1、篠原慶規*2、久保田哲也*2 *1九州大学農学部、*2九州大学農学研究院 1. はじめに 近年、土砂災害の防止・軽減に加えて、山地から海岸までの景観や生態系の保全を目指した 総合的な土砂管理が求められている。また、予算規模を踏まえた砂防事業を行うためには、地 質や林況などを考慮した正確かつ効率的な生産土砂量の予測が欠かせない。森林は表層崩壊抑 制機能を有しており、これまでに崩壊面積率と植生との関係を統計的に解析した例は多数報告 されている。幼齢林が壮齢林よりも崩壊しやすいということは幅広く知られているが、林齢と 崩壊面積率の関係は、ばらつきが大きい。そのため、既往の砂防計画において林況は考慮され ていない(小山内ら, 2011)。近年、LIDAR 技術の発展によって広域的かつ高精度な地上部バイ オマス(現存量)の把握が可能になりつつある。地上部バイオマスは、森林の表層崩壊抑制機能 を発揮させる根系(地下部バイオマス)と密接に関連することが予想されるため、林齢よりも 地下部バイオマスをより正確に表現することができる。そこで本研究では、植生を表す因子と して地上部バイオマスを用いることで、表層崩壊の崩壊面積率の予測向上が可能かどうか検証 することを目的とした。 2. 対象地および方法 対象地は九州大学宮崎演習林大藪川流域に位置する 35 の小班である。1993 年 9 月に、台風 13 号によって 100mm/h を越す豪雨(演習林庁舎における観測史上最大)が発生し、表層崩壊が群 発した。地質は中生代四万十層群である。小班はすべて人工林で、当時の林齢が 0 から 53 年生 までばらついていることと、対象範囲が比較的狭く(約 1.8km2)、雨量分布の影響が小さいこと から、植生の影響を評価する上で最適であると考えられる。 崩壊地データは、1994 年撮影の航空写真を基に抽出し、ArcGIS 上でベクターデータとして作 成した。なお、小規模崩壊の見落としや裸地の抽出を避けるために、50m2以下の崩壊地は解析 に用いなかった。地上部バイオマスの算出には、宮崎演習林から提供を受けた 1996 年の森林調 査簿を用いた。また、国土地理院の 10m メッシュ DEM より ArcGIS 上で算出した斜面勾配、平 面・断面曲率、標高、起伏を地形情報として用いた。 まず、林小班界データと崩壊地データを重ねることで、各小班の地上部バイオマスと崩壊面 積率(小班面積に対する崩壊面積の比率)の関係を調べた。次に、崩壊の有無を目的変数、各要 因を説明変数としてロジスティック回帰分析を行った。なお、曲率は 0 を閾値とする離散変 数、その他の説明変数はすべて連続変数とした。地形要因のみ(モデル 1)、地形要因+地上部バ イオマス(モデル 2)、地形要因+林齢(モデル 3)の 3 タイプを比較した。

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3. 結果と考察 対象地内で 162 ヵ所、40,332m2の崩壊地が確認された。崩壊面積率は 2.23%、平均崩壊規模 は 249m2であった。 図 1(a),(b)に地上部バイオマスと崩壊面積率の関係を示す。地上部バイオマスが増加するに つれて、崩壊面積率が指数関数的に減少する傾向が見られた。決定係数が小さい原因として は、伐採後の根系腐朽の影響や地上部荷重の負の影響を考慮していないことに加えて、地形要 因の影響が大きいことが挙げられる。図 1(b)の白抜きは対象地の平均斜面勾配 27°を下回った 小班を示している。斜面勾配が緩やかな小班では、斜面勾配が急な小班と比較し崩壊面積率が 小さい傾向が見られた。 ロジスティック回帰分析の結果を表 1 に示 す。地形要因は AIC に基づくステップワイズ 法により、断面曲率が除かれた。小さいほど モデルの当てはまりが良いとする指標 AIC(赤 池情報量基準)は 1>2>3 の順に大きく、予測精 度を表す ROC 曲線の AUC(Area under the curve)は 3>2>1 の順に大きかった。このよう に、林齢の代わりに地上部バイオマスを用いることで精度が向上することはなかった。 林齢について着目し、20 年生以下を幼齢林、20 年生以上を壮齢林とすると、崩壊面積率は幼 齢林が壮齢林の約 2.5 倍であった。今後は、この値を他地域の事例と比較して、一般化を行う ことができるかどうか検証する予定である。 図 1(a),(b) 崩壊面積率と地上部バイオマスの関係 引用文献 小山内信智・桂 真也・冨田陽子・小川紀一朗・中田 慎 (2011) 森林の崩壊抑制効果を反映し た生産土砂量の推定に向けた一考察、砂防学会誌、Vol.63、No.5、p.22-32 謝辞:九州大学宮崎演習林には、気象・林班界・森林簿データを提供していただきました。あり がとうございました。 y = 3.1799e-0.019x R² = 0.44 0 2 4 6 8 10 12 0 40 80 120 160 崩壊面積率 (%) 地上部バイオマス量(t/ha) (a) 0 2 4 6 8 10 12 0 40 80 120 160 崩壊面積率 (%) 地上部バイオマス量(t/ha) (b) 27°以下の小班 27°以上の小班 表 1 ロジスティック回帰分析の結果 モデル パラメーター AIC AUC 1 slp,pc,he,hi 95437 0.600 2 slp,pc,he,hi,bio 94229 0.634 3 slp,pc,he,hi,age 93438 0.662 slp:斜面勾配, pc:平面曲率, he:標高, hi:起伏, bio:地上部バイオマス, age:林齢

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2015 年度北海道演習林研究実施概要

九州大学農学部附属北海道演習林 内海泰弘,智和正明,久保田勝義,南木大祐,中村琢磨,村田秀介 1.はじめに   九州大学農学部附属演習林北海道演習林では「北海道演習林第 7 次森林管理計画書」と「2014 年 度北海道演習林森林管理報告書および計画書」に従い,2015 年度に様々な試験を実施した.おもな 試験項目としてはカラマツ毎木調査,造林・育林試験,間伐試験 ,伐採試験,天然下種更新試験,獣 害調査,,カラマツ・グイマツ雑種 F1 比較調査,カラマツハラアカハバチ観察,細胞式舌状皆伐作 業法試験,モニタリング 1000,樹木の潜在的生活型観察,地形別植栽試験,カメラセンサス,ライ トセンサス,獣害防除試験,野鼠生息調査,樹木フェノロジー観察,林内定点撮影,気象観測,水質 モニタリングがあげられる.本報告ではカラマツ毎木調査, カラマツ・グイマツ雑種 F1 比較調査, カラマツ天然下種更新試験,カラマツハラアカハバチ観察,伐採試験,胞式舌状皆伐作業法試験, カ メラセンサス, ライトセンサス, 野鼠生息予察調査, 樹木フェノロジー観察,林内定点撮影,気象 観測,水質モニタリングについて概説する. 2.試験概要 ・カラマツ毎木調査  2 年後の伐採候補地について主伐と間伐の全域調査を継続的に実施している.全木調査が基本とさ れているが年間の調査面積が 20〜50ha と広いため,間伐調査については間伐木のみを調査した.調 査項目は,胸高直径,樹高,詳細(間伐,鼠,鹿,曲など 14 項目)で,全木調査を行うことで調査 時の蓄積や間伐率,動物の被害率が把握できるようになった.また,2014 年から調査野帳を紙から iPad に変更したことで,現場で値が確認できるほか,パソコンのデータ入力の必要がなく,データ ベースの管理が容易となり,大幅な業務の効率化を図ることができた. ・伐採試験  人工林施業試験区において,カラマツ人工林の主伐と間伐の施業試験を行っている.林齢が 50 年 生以上の林分を主伐対象とした.主伐候補地は斜面方位が異なるように選択し,立地条件の違いによ る樹木の成長の比較ができるように考慮している.間伐は林齢が 24,31,38,45 年生の林分が対象 で,全域調査の実施により間伐時の残存数量を確認することで林分の現況が把握できるようになった. また,無間伐区を設置することで施業履歴の違いによる林分の比較が可能としている. ・カラマツ・グイマツ雑種 F1 比較調査  2006 年に 28 林班において,1956 年植栽のカラマツ人工林が低気圧の風倒被害を受けたため,皆 伐作業を実施した. 2007 年にカラマツとスーパーF 1(グイマツ雑種F 1)を 1000 本/ha,2000 本/ha,3000 本/ha,4000 本/ha の密度で植栽した.カラマツとスーパーF 1 の比較調査を実施す るため,1000 本/ha と 3000 本/ha の植栽区に 8 ヶ所のプロットを設置した(25 m×25 m).調査 方法はプロット内の苗木の状態と標準木の直径と樹高を計測するもので,調査開始以来 9 年が経過し た.2015 年秋に台風と低気圧による風倒被害が生じたため,調査継続の可否を検討中である. ・カラマツ天然下種更新試験  2006 年の低気圧の風倒被害により皆伐跡地となった 10,13,30 林班において,2011 年にブル ドーザとパワーショベルを使って地掻き作業を実施した.地掻きはササや下層植生を剥ぎ取り黒土を 残した処理区と黒土も剥ぎ取り赤土を出した処理区,地掻きを行わない未処理区の 3 処理を実施した. 3 試験区それぞれの一部には,シカの採食を排除するための電気柵を設置した.各試験区に調査プ ロット(1 m×1 m)を計 164 個設定し,2015 年まで毎年発生したカラマツの実生数をカウントした. ・カラマツハラアカハバチ観察 北海道演習林では 2012 年 7 月に初めてカラマツハラアカハバチ(以下,ハバチとする)によるカラ マツ立木への食害が確認された.ハバチによる食害はカラマツを直ちに枯死させる事は無いため,特 に防除対策はしていない.2012 年より目視による広域での被害把握を実施している.また,2014 年 より十勝振興局の依頼により幹線林道から見える範囲のハバチの被害報告を提出している.

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・ミズナラ細胞式舌状皆伐作業法試験  1972 年に全試験面積 203.08ha,総皆伐予定面積 85.82ha の試験地を設置し,試験期間 150 年の 計画でミズナラの育林施業を行っている.施業法としては,収集した種子を林地に直まきし,植栽翌 年に植栽列間を列状に刈り取り,その翌年に植栽列を含む全面刈り取ることで,ミズナラ以外の植物 の繁茂を抑制しながらズナラ萌芽枝の成長を促している.2015 年度試験地を従来通りの細胞式舌状 皆伐作業試験区(0.1ha),北海道で一般的な施業を行う試験区(0.1ha),開設時に皆伐を行いミズナ ラの天然下種更新を期待する試験区(0.1ha 以上)の 3 つに区分し比較調査を開始した. ・カメラセンサス 2010 年 10 月より赤外線センサーカメラによる撮影を開始した.2015 年度は演習林内 9 箇所にカ メラを設置し 2 ヶ月に一度データを回収して画像を解析した.計測当初はエゾシカの個体群動態を調 査することを主目的にしていたが,現在は動物相の把握を試みている. ・ライトセンサス 2008 年秋より,春季と秋季に演習林内外の 3 路線においてセンサスを実施している.調査方法は 日没後,林道を時速 8km 前後で走行する車両から 2 名の調査員が左右にスポットライトを照射して エゾシカおよびその他の動物を探索する.発見した個体は,性別(オス・メス)と年齢(0 才・1 才・2 才以上)を肉眼及び双眼鏡で識別し,個体の位置を計測する.発見場所の位置は GPS で計測し, 発見時間および開始時点からの距離を記録する.2015 年度は春季調査を 5 月 18・20・21 日,秋季 調査を 11 月 12・13・16 日に実施した. ・ 野鼠生息調査  1991 年より 2013 年までは北海道が主導する野鼠生息予察調査の枠組みに沿って捕殺調査が行わ れてきた.2014 年からは 19 林班と 12 林班の 2 箇所で十勝振興局に鳥獣捕獲の許可申請をして生捕 調査を 6 月と 10 月に実施している. ・樹木フェノロジー観察  1999 年に庁舎構内の 9 樹種 10 個体の開芽・開葉・紅葉・落葉の観察と撮影を開始し,2010 年以 降は自動撮影カメラの導入により作業の効率化を試みた.2015 年の調査木は 8 樹種 8 個体であった が,大型化や腐朽により倒木や落枝の危険性が出てきたため,伐採を検討している.調査木のうちラ イラックにおいては、開花の観測結果をメーリングリストに送信し,道内の参加者たちと情報を共有 している.今年の開花日は 5 月 19 日,満開日は 5 月 31 日であった. ・林内定点撮影  森林の長期的な変化を捕捉するため,2009 年より毎年 5,8,11,2 月に林内の定点において撮影を 行っている.今年は,9 林班 A1-6 小班に新たに撮影台を設置し,単管式 13 地点の撮影と拓北タワー の固定式カメラのデータ回収を行った.なお 11 月と 2 月の撮影時は積雪のために徒歩での移動を強 いられる可能性があり,費用対効果を最大にする撮影時期等を検討中である. ・気象観測 林内の複数地点で継続的に気象観測が行われている.20 林班拓北タワー上では,気温,相対湿度, 風向・風速,日射量,降雨量,積雪深を観測している.森林内では 4 林班中矢ゲート,19 林班モニ 1000 サイト,20 林班南斜面の 3 箇所で気象観測を実施している.観測項目は地点によって違いがあ るが,気温,相対湿度,日射量,光量子数,降雨量等のセンサーを配備している.ただし,20 林班 南斜面ではヒグマのいたずらや台風による落枝で観測機器が破壊され,2015 年は暫定的に気温のみ を測定している.そのほか,19 林班と 20 林班では土壌深度別に地温を測定する熱電対を設置し,冬 季の土壌凍結深を連続計測している.同時に,自動撮影カメラと標尺を設置し積雪深の観測も行って いる.さらに,5 林班の通称「水源地」では沢に合計 6 箇所の水温の変化を観測している. ・水質モニタリング  拓北タワーにおける降雨等の大気沈着量(湿性沈着,バルク沈着)と拓北流域における河川水質の モニタリングを継続的に行っている.2015 年融雪期(4 月中旬)の河川水中硝酸イオン濃度は 154 μmol/l だった.北海道演習林の河川水で硝酸イオン濃度が 150 μmol/l を超えたのは 2006 年の観 測以降初めて.この原因について検討中である.大気沈着量については例年通りだった.

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ヒノキ人工林におけるスプラッシュカップを用いた雨滴観測

市野瀬桐香*1,篠原慶規*2, 久保田哲也*2 (*1 九州大学農学部, *2 九州大学農学研究院) 1.はじめに 近年,林業採算性の悪化のため,管理不足の人工林が増加し,森林の有する公益的機能の低下 が危惧されるようになった。実際に,日本各地で管理不足のヒノキ人工林における土壌侵食が深 刻な問題となっている。土壌侵食を評価する際,雨滴の運動エネルギー(以下,雨滴エネルギー) がその指標として広く用いられている(南光 2013)。雨滴エネルギーは,樹冠構造の空間的ばら つきなどに起因して,大きな空間的ばらつきを有していると想像されるが,雨滴エネルギーの計 測に一般的に用いられるレーザー雨滴計は,高価である,電源を必要とする等の理由から,森林 に大量に設置することが難しい。そこで,本研究では,安価で大量に雨滴エネルギーを計測可能 なスプラッシュカップを開発した。さらに,そのスプラッシュカップを用いて,ヒノキ人工林に おいて雨滴を観測し,雨滴エネルギーの空間的ばらつきを調べた。 2.方法 2.1.スプラッシュカップの開発 本研究は,Scholten et al.(2011)を参考に,スプラッシュカップを開発した。スプラッシュカ ップの上部には飽和した豊浦標準砂が詰めてあり,雨滴の衝撃により,砂がスプラッシュカップ の外へ飛散する。自然降雨下において,5 個のスプラッシュカップを設置し,減少した砂の量と, 降水量(mm)並びに,レーザー雨滴計で計測した雨滴の運動エネルギー(J m-2(以下,KE), 雨滴の運動量(kg m s-1 m-2)(以下,MD)の関係を調べた。観測は,農学部 2 号館屋上で,2015 年 8 月 16 日~12 月 11 日の間に 10 回行った。 2.2.スプラッシュカップを用いたヒノキ人工林での雨滴観測 九州大学福岡演習林 6,10 林班から,林齢の異なるヒノキ人工林 3 地点(13 年生,32 年生,61 年生)を選定し,観測を行った。各地点に一つのプロット(6×6m)を作成し,各プロットに 16 個のスプラッシュカップを格子状に設置した。各スプラッシュカップの近傍には,貯留式雨 量計を設置した。さらに,レーザー距離計を用いて,各スプラッシュカップからの枯枝下高を測 定した。観測は, 2015 年 9 月 24 日~12 月 14 日の間に 4 回行った。 3.結果と考察 3.1.スプラッシュカップの開発 砂の減少量は,雨滴による土壌剥離量と高い相関がある短時間(1 時間以下)の最大 KE,MD, 降水量と強い相関があった。また,設置した 5 個のスプラッシュカップ間で砂の減少量に大き

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な差は見られなかった。このように,雨滴エネルギーを評価可能なスプラッシュカップを開発す ることができた。 3.2.スプラッシュカップを用いたヒノキ人工林での雨滴観測 図 1 には第 1 回観測の各林分の砂の減少量とその標準偏差を示した。ほか 3 回の観測も同様の 結果が得られた。林分によって,その大きさは変わるものの,どの林分でも雨滴エネルギーに空 間的ばらつきが生じることがわかった。この要因として,林内雨量および雨滴の落下距離を決め る枯枝下高の空間的ばらつきが考えられる。枯枝下高と砂の減少量に相関が見られなかった一方, 林内雨量と砂の減少量には高い正の相関(図 2)が見られたため,雨滴エネルギーの空間的ばら つきは,林内雨量の空間的ばらつきの影響を強く受けるといえる。以上の結果から,林分に設置 した一つのレーザー雨滴計のデータを,その林分全体のデータとして使用することは,不確実性 を伴うことが示唆された。 引用文献 南光一樹 (2013) 日林誌 95: 234-239

Scholten et al. (2011) J. Plant Nutr. Soil Sci. 174, 596–601

0 5 10 15 20 25 13年生 32年生 61年生 砂の 減少量の平 均値( g ) 図 1 第 1 回観測における各林分の砂の減少量 (エラーバーは各林分の標準偏差を示す) R² = 0.5583 15 17 19 21 23 25 40 60 80 砂の減少量 ( g) 林内雨量 (mm) p<0.001

(c)

R² = 0.8709 5 10 15 20 25 30 50 70 砂の減少量 ( g) 林内雨量 (mm) p<0.001

(b)

R² = 0.7634 0 5 10 15 20 25 30 35 0 50 100 砂の減少量 ( g) 林内雨量 (mm) p<0.001

(a)

図 2 各林分の砂の減少量と林内雨量の関係(a:13 年生,b:32 年生,c:61 年生)

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北海道演習林における落葉広葉樹林の長期動態

-モニタリングサイト 1000 の 10 年間- ○中村琢磨1,田代直明2,久保田勝義1,南木大祐1,村田秀介1,井上幸子3 緒方健人4,長慶一郎4,山内康平4,馬渕哲也1,内海泰弘2 1:北海道演習林,2:九州大学農学研究院,3:福岡演習林,4:宮崎演習林, 1.はじめに 北海道演習林では,2005 年から環境省のモニタリングサイト 10001)のサイトとして3 林 班のミズナラの優占する森林(1ha)にプロットが設定された.その後,2006 年に 19 林班の オオバボダイジュやエゾイタヤの優占するプロット(1ha),2007 年に 7 林班のミズナラが 優占するプロット(0.6ha)が追加された.これらのプロットでは毎木調査,落葉落枝・落下 種子調査,地表徘徊性甲虫調査,陸生鳥類調査などを定期的に実施している.19 林班のプ ロットはコアサイト,3 林班,7 林班のプロットは準コアサイトに指定されている.コアサ イトでは上記の全ての調査を毎年,準コアサイトでは毎木調査を 5 年に 1 度行うこととさ れている.本発表では毎木調査と落葉落枝・落下種子調査の結果に基づき,北海道演習林 の3つの落葉広葉樹林プロットにおける設定当初から2015年までの長期動態を報告する. 2.方法 a. 毎木調査 調査方法はモニタリング1000 サイトのマニュアル2)に従い,胸高周囲長が15cm 以上の 樹木個体を対象として全ての幹にアルミタグで標識し,調査の度に個体の生死と幹の胸高 周囲長を記録した.19 林班のプロットでは 2006 年から 2015 年まで毎年,3 林班では 2005 年と2010 年以降 2015 年まで毎年,7 林班では 2007 年と 2011 年以降 2015 年まで毎年調 査を実施した. b. 落葉落枝・落下種子調査 19 林班と 3 林班のプロットではリタートラップをそれぞれ 25 個設置し,生物多様性セ ンターのマニュアル3)に従って4 月下旬から 11 月下旬まで毎月リターを回収した.また, 冬季は積雪に耐えられる形状の冬トラップに換装し,4 月の無雪期用トラップ交換の際に まとめて回収している.19 林班では 2006 年 6 月以降の毎年,3 林班では 2005 年の 8 月か ら毎年,2015年までリターを回収した.ただし,冬トラップは19,3 林班ともに 2007 年冬から実装された.回収したリターは葉,枝,繁殖器官,その他に分類して計量し,さ らに種子は散布母植物を同定して計数,計量を行った. 3.結果 a. 毎木調査 3 つの林分は種組成,個体サイズ,生活形に違いが見られた.まず,19 林班では構成種

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が32 種と最も多かった,続いて 7 林班では 21 種,3 林班では 18 種の順となった.19 林 班のプロットの胸高断面積合計の百分率を比べると,オオバボダイジュ,アサダ,シナノ キ,ハリギリ等を主体とした林相であるのに対し,3,7 林班のプロットでは胸高断面積合 計の8 割弱をミズナラが占めていた(図 1).19 林班では 2006 年の幹数が 620 本,個体 数496 本だったが,2015 年には幹数 601 本,個体数 483 本とわずかに減少した.7 林班で は2007 年に幹数 1293 本,個体数 697 本あったが,2015 年に幹数 966 本,個体数 536 本 に減少した.3 林班では 2005 年に幹数 531 本,個体数 489 本あったが,2015 年には幹数 572 本,個体数 525 個体にやや増加した.同じミズナラが優占する林でも 3 林班は単幹の ミズナラが多いのに対し,7 林班は株立ちの個体が多かった. b. 落葉落枝・落下種子調査 19 林班と 3 林班のどちらもリター全量の変化に明瞭な傾向は認められなかった.一方, ミズナラ堅果等の種子の落下量は年によって大きく増減した.表1はミズナラの優占する 3 林班におけるミズナラ堅果の落下数をまとめたものである.健全堅果では 2012 年に 171 個,2014 年に 235 個と多かったが,未熟堅果は 2006 年から 2008 年にかけて 445-988 個 と大量に落下していた. 引用 1)環境省(2003)モニタリングサイト 1000 ウェブページ http://www.biodic.go.jp/moni1000/index.html 2)生物多様性センター(2010) モニタリングサイト 1000 森林・草原調査コアサイト設定・毎木調査マニュ アルVer.2 2010 年 10 月 改訂 ウェブページ http://www.biodic.go.jp/moni1000/manual/tree_ver2.pdf 3)生物多様性センター(2015) モニタリングサイト 1000 森林・草原調査落葉落枝・落下種子調査マニュア ルVer.3 2015 年 9 月 改訂 ウェブページ http://www.biodic.go.jp/moni1000/manual/litter_ver3.pdf 図 1. 各プロットの胸高断面積合計の百分率 19 林班 7 林班 3 林班 ミズナラ ミズナラ 個数 絶乾重(g) 個数 絶乾重(g) 個数 絶乾重(g) 個数 絶乾重(g) 個数 絶乾重(g) 2005 1 0.7 56 14.0 0 0.0 0 0.0 10 3.8 2006 6 3.2 601 88.0 0 0.0 0 0.0 4 2.1 2007 16 20.4 445 112.3 92 50.7 0 0.0 0 0.0 2008 3 1.2 988 29.9 9 2.5 0 0.0 0 0.0 2009 0 0.0 33 0.6 0 0.0 0 0.0 0 0.0 2010 0 0.0 1 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 2011 3 1.1 21 5.9 1 0.1 0 0.0 0 0.0 2012 171 259.5 56 34.2 32 33.0 2 0.0 0 0.0 2013 11 5.6 279 37.3 5 2.0 0 0.0 0 0.0 2014 235 385.7 48 25.4 43 41.0 0 0.0 0 0.0 健全 未熟 虫 かけら しいな 表 1. 3林班におけるミズナラ堅果の落下量

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宮崎演習林における長期森林動態モニタリング

-これまでの実施状況と今後の 100 年に向けて- 九州大学農学部附属演習林 緒方健人,鍜治清弘,長慶一郎,山内康平, 久保田勝義,壁村勇二,井上幸子, 九州大学農学研究院 菱拓雄,田代直明,榎木勉,内海泰弘 1. はじめに 森林の個体群や群集の動態メカニズムを解明するためには,長期間,継続して観測を行うこ とが必要である.九州大学宮崎演習林では森林の動態を把握するための基礎データを得ること を目的として,100m×100m のモニタリングプロットが異なる林相の 3 ヵ所に設置され,5 年 毎の調査が計画されている1).2015 年度現在,各プロットで第 3 回目の調査まで実施された. また,調査を継続して行ったことによって,データの管理のあり方について課題が表面化し た.今回は,これまでのモニタリングの実施状況とそのデータ管理の問題について報告する. 2. 調査地の概要 2004 年 11 月から随時,後述する 3 つのプロットが設置された.それぞれ第 3 回目の調査ま で実施されており,調査の間隔が第1 回目と第 2 回目が 3 年,第 2 回目と第 3 回目が 5 年の期 間で実施されている.調査地として設置される以前の森林の状況は次の通りである. 合戦原プロットは,2006 年 12 月,津野岳団地の第 6 林班内に設置された.冷温帯性気候下 の針広混交林で,林床にはスズタケが覆っている.2009 年に環境省生物多様性センター「モニ タリングサイト1000」の準コアサイトに登録された.丸十プロットは,2006 年 3 月,三方岳 団地の第35 林班に設置された.合戦原プロットと同様に針広混交林であるが,ニホンジカの 摂食により林床のスズタケは消滅している.広野プロットは,2004 年 11 月,三方岳団地の第 24 林班内に設置された.アカマツが優占する二次林で,丸十プロットと同様に林床のスズタケ は消滅している.隣接する林班では昭和初期まで銅が採掘されており,人為の影響を強く受け ている2) 3. 調査方法及びデータ管理 毎木調査の方法は「モニタリングサイト1000 森林調査 コアサイト設定・毎木調査マニュ アル」に準拠した.調査したデータはデータベース化され,FileMaker で入力・管理を行って いる. 4. 調査結果 各プロットの第1 回目と第 3 回目の調査の結果及び,第 2 回目と第 3 回目の新規個体と死亡 個体の合計を表1 に示す.第 3 回目の調査にて,合戦原プロットでは 50 樹種 1366 個体.丸十 プロットでは41 樹種 854 個体.広野プロットでは 27 樹種 1037 個体が確認された.胸高直径

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10cm 毎の頻度分布では,合戦原プロットは 0-10cm のサイズで最大(647 個体)となる L 字 型の分布を呈した.これに対して,丸十プロットと広野プロットは0-10cm のサイズは少な く,10-20cm のサイズで最大(各 305 個体・340 個体)となった.この理由として,丸十プロ ットと広野プロットは合戦原プロットよりも,シカの進入した時期が早く摂食による生育の阻 害が生じたと考えられる.8 年間の変化を見ると,全てのプロットにおいて死亡個体に対して 新規加入した個体が少なく,個体数が減少した.一方で,胸高断面積合計は増加した.また, 樹種数は合戦原プロットと広野プロットで,それぞれ2 樹種減少した.第 1 回目の出現個体数 に占める第2・3 回目の死亡個体数の割合(死亡率)は,合戦原プロットが最も高く 13.4% で,続いて広野プロットが9.2%,広野プロットが 8.1%であった.特に合戦原プロットは死亡 率に加え,死亡個体の絶対数も突出して多く現れている(表1).これらの結果から,合戦原プ ロットは他のプロットに比べシカの進入と摂食による影響が遅かったものの,その影響が現れ 始めた可能性が考えられる.この影響により、今後合戦原プロットは,丸十プロットや広野プ ロットと同様に,主に胸高直径10cm 以下の個体数の減少が予想される. 表 1 各プロットの第 1 回目と第 3 回目の調査にて出現した木本樹種,個体数,胸高断面積合,新規個体数 合計,死亡個体数合計,死亡個体の胸高断面積合計.樹種の内訳は胸高断面積合計の上位 5 種を掲載. 5. データ管理の問題について 今回の集計において,計測ミス,入力ミス,備考欄記入の不備,作業履歴の説明の不足等が 見られた.これにより,データの整合性の確認に労力を要した.これらの問題は,データの入 力方法の記述が不足しているためデータ入力者によって異なる判断で記録されていること.そ して,入力されたデータが集計されていないので入力項目の正誤が検証されていないこと.こ の二つが主な要因として考えられる.演習林では森林の動態を把握するための「長期」の調査 は,少なくとも100 年以上継続する計画となっている.先に述べた問題を解決し,蓄積される 情報の正確性を保証するためには,データ管理の仕組みを策定して明記することが大変重要で ある. 参考文献 1) 井上晋ら(2006) 九州大学農学部附属演習林宮崎演習林第 6 次森林管理計画書,椎葉 2) 榎木勉ら(2013) 九州大学農学部演習林報告 94:40-47

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九州北部の広葉樹二次林の森林構造

九州大学福岡演習林里山試験地での調査結果 扇大輔,壁村勇二,井上一信,大崎繁,浦正一,大東且人,中江透,柳池定 内海泰弘,古賀信也,榎木勉(九州大学農学部附属演習林) はじめに 集落や農地に隣接した広葉樹二次林は,1960 年代までは主に薪炭林として人間活動の 影響をうけてきた.しかし,これらの森林の多くは燃料供給形態の変革とともに利用価値 が低下し,放置されて現在にいたる.一方で近年,奥地の山地森林から連続した半自然, 即ち里山とよばれ,農地やため池,そして人間の生活空間および人工的な緑地へと連続す る風景と生物の多様性を形成する一部として見直されつつある. 広葉樹二次林に関する研究は数多あるが,伐採によって裸地となった森林の再生過程を 調べた事例は少ない.九州大学福岡演習林では,里山に相当する林地で植生を調べた後に 皆伐を行い,里山試験地として長期モニタリングを行っている.本発表では里山試験地の 皆伐前の森林構造について報告する. 方法 2013 年 8 月~ 2014 年 1 月に福岡演習林 10 林班い,は小班内の広葉樹二次林に 10 m四 方の調査プロットを 30 箇所(0.30ha)設置した.調査地は福岡県北部の日本海沿岸から やや内陸部に位置し,ヤブツバキクラス域の照葉樹林帯に属する 1).プロット内の胸高周 囲 15cm 以上の個体について,樹種,周囲長,個体位置を記録した.調査地の地形につい ては,東西に延びる丘陵の尾根と作業道に挟まれた狭隘な区域で,標高75 ~ 90 m,南~ 東向き斜面,平均傾斜23° である. 結果と考察 調査プロット全体での出現種数は 33 樹種,株立ちを含めた幹数は 686 本,胸高断面積 合計は 49.61 ㎡/ha であった.今回の調査では植生域を代表する高木層のタブノキやモチ ノキの出現は僅少で,高木層はコナラ,ハゼノキ,ヤマモモ,アラカシの4 種が胸高断面 積全体の 57 %を占めた.一方,本林分では上記 4 種以外では出現割合は低いものの,多 くの樹種が均等に存在しており,比較的多様性の高い森林と考えた. 一般にコナラに代表される薪炭林施業では,樹木の萌芽再生能力を利用することが知ら れている 2).今回の調査では,複数の萌芽幹が 1 個体を構成する株立ちを 21 樹種で認め た.このことから,本林分が主に萌芽再生によって成立した森林であると考えられる. 引用文献 1)山本紀久(2012)造園植栽術 50-53 2)真鍋徹・山本進一・千葉喬三(1991)伐採当年のヒサカキ(Eurya japonica)の萌芽更新 日本緑化工学会誌 第 16 巻第 4 号 1-9

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樹  種

合計(㎡/ha)胸高断面積 優占度(%) 幹 数 (本) 個体数 (本)

コナラ

8.15

16.4

41

39

ハゼノキ

6.98

14.1

95

61

ヤマモモ

6.63

13.4

72

24

アラカシ

6.60

13.3

48

24

クスノキ

3.19

6.4

13

13

ヤマザクラ

2.66

5.4

14

5

クリ

2.65

5.3

26

17

クロキ

2.58

5.2

70

57

ハリギリ

1.83

3.7

10

9

カクレミノ

1.47

3.0

20

12

ヒサカキ

1.44

2.9

103

66

ネズミモチ

1.10

2.2

86

62

タブノキ

0.67

1.3

5

3

シロダモ

0.62

1.2

5

4

クロガネモチ

0.57

1.1

12

8

ナナメノキ

0.36

0.7

5

4

カラスザンショウ

0.31

0.6

1

1

ネジキ

0.27

0.5

22

14

アカシデ

0.25

0.5

2

1

トベラ

0.24

0.5

7

4

カゴノキ

0.21

0.4

4

3

イイギリ

0.21

0.4

3

3

モチノキ

0.17

0.4

1

1

モッコク

0.11

0.2

3

1

カキノキ

0.10

0.2

2

2

ミズキ

0.08

0.2

1

1

ゴンズイ

0.05

0.1

4

4

シャシャンポ

0.03

0.1

3

1

マダケ

0.02

0.0

3

3

リョウブ

0.02

0.0

1

1

アカメガシワ

0.02

0.0

2

2

イヌビワ

0.01

0.0

1

1

ナワシログミ

0.01

0.0

1

1

合  計

49.61

100.0

686

452

注)伐採後の伐根数を個体数とした

表-1 樹種による株立ちの状況

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140 年生スギ造林地の地上部一次生産量と窒素利用

-広葉樹が天然更新した不成績造林地との比較- 九州大学農学研究院・榎木勉 1.はじめに 近年,日本の人工林では,管理放棄人工林の増加や,施業の長伐期化,針葉樹人工林の複層林 化などの動きが広がっている.今後は人工林の高齢級化,広葉樹林化した針葉樹人工林が増加 することが予想される.将来的に人工林の管理や取り扱いを考える上で,高齢級化,広葉樹が 混交した人工林の実態を把握する必要がある. 森林は時間経過に伴い林分の成長量は減少する (1,2,3,4) が,老齢林でも炭素は吸収している (5).一方で,樹木サイズの増加に伴う炭素蓄積能の増加(6)や老齢林における純生態系生産量の 値が負になることを示した研究結果もある.日本のスギ人工林においても林齢に伴うリターフ ォール量の減少(7)や増加(8)など様々結果が報告されており,高齢林の機能を議論するために充 分なデータが蓄積されている状況ではない. そこで,九州大学福岡演習林に生育する 140 年生のスギ造林地において,地上部成長量およ びリターフォール量の測定し,地上部一次生産量を推定した.また,リターフォールによる窒 素循環量を測定し,スギ林の窒素利用様式を検討した.このスギ造林地に隣接する 2 次林は広 葉樹が優占する不成績造林地と比較し,生産性の違いを考察する. 2.方法 福岡県久山町に位置する九州大学福岡演習林 14 林班に生育する約 140 年生のスギ人工林にはそ の造林が不成績に終わり現在では広葉樹が優占する二次林が隣接する.このスギ人工林および 二次林それぞれに 30mx60m の調査プロットを設置し,地上部一次生産量(ANPP)を測定した.各 プロットは 18 個の 10mx10m のセルに分割し,各セルには開口面積 0.25m2のリタートラップを一 つずつ設置した.ANPP は,2 度の毎木調査により測定した胸高周囲長 15cm 以上の樹木の胸高直 径成長量からアロメトリー式により求めた地上部バイオマス増加量とリターフォール量の和と した.また,リターフォール中の窒素濃度を測定し,リターフォールによる林地への窒素供給 量を算出した.他のスギ人工林と比較するために,これらの値を文献から収集し,林齢で近似 したモデルを作成した. 3.結果と考察 人工林のスギの立木密度は 194 本/ha,胸高断面積合計は 59.7m2であった.最大樹高および最大

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胸高直径は 36.7m,100.9cm であった.アロメトリー式により算出した地上部現存量は 390Mg/ha であった.地上部成長量は 2.6Mg/ha/yr,リターフォール量は 6.2Mg/ha/yr,これらの和である ANPP は 8.8Mg/ha/yr であ っ た .リ タ ーフ ォー ル中 の 窒 素濃 度は 1.2% で, 窒 素 含有 量は 72.2kg/ha/yr であった.日本のスギ人工林のこれらの値を林齢で回帰すると,140 年生で地上 部バイオマスは 418Mg/ha と同程度であった.成長量の回帰モデルによる推定値は 5.8Mg/ha/yr で,本調査地はやや低い値となった.リターフォール量やリターフォール中の窒素濃度は null モデルが選択され,平均値はそれぞれ 5.1Mg/ha/yr,0.91%であった.本調査地ではリターフォ ール量が多く,光合成生産物の葉への配分が大きい事が示唆された.ただし,リターフォール や窒素濃度のデータは非常に少なく,林齢との関係についてはさらなるデータの蓄積が必要で あろう. 二 次 林 の 胸 高 断 面 積 合 計 は 47.5m2/ha , 地 上 部 現 存 量 は 290Mg/ha , 地 上 部 成 長 量 は

-0.6Mg/ha/yr,リターフォール量は 5.1Mg/ha/yr,ANPP は 4.5Mg/ha/yr であった.二次林では 残存木の成長量は人工林よりも大きかったが,樹木の枯死が多く地上部成長量は負の値を示し た.枯死要因は幹折れ,根返り,被圧など様々であった.幹折れや根返りは降雪や強風により 直接的に生じたものに加えて,大径木の倒壊により間接的に生じたものも見られた.隣接した 人工林ではこの様な樹木枯死は見られず,種組成,森林構造の違いがこの様な地上部成長量の 違いが生じた一因と考えられる. 引用文献

(1) Kira & Shidei. 1967. Jpn J Ecol 17: 70-87 (2) Gower et al, 1996. TREE 11: 378-382 (3) Ryan et al. 2004. Ecol Mon 74: 393-414 (4) Tang et al. 2014. PNAS 111: 8856-8860 (5) Luyssaert et al. 2008. Nature 455: 213-215 (6) Stephenson et al. 2014. Nature 507: 90-93 (7)市川ら. 2006. 日林誌 88: 525-533

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九州大学宮崎演習林におけるニホンジカの生息調査結果

-2006 年~2015 年のスポットライトセンサスの結果から-

長慶一郎1,鍜治清弘1,山内康平1,緒方健人1,佐々木寛和1,久保田勝義1,壁村勇二1,井上幸子1, 椎葉康喜1,馬渕哲也1,宮島裕子1 ,内海泰弘2,菱拓雄2,榎木勉2,矢部恒晶3,村田育恵4 1九州大学演習林 2九州大学農学研究院 3森林総合研究所4九州大学生物資源環境科学府 1.はじめに 近年,全国的にニホンジカ Cervus nippon(以下 シカ)の個体数増加に伴う森林の顕著な変化 が観察されている(植生学会企画委員会 2011). 九州大学宮崎演習林(以下 演習林)においても シカによる人工林での食害(櫻木ら,1999)や天然林においても 30 年ほど前からスズタケをはじ めとする下層植生への食害が顕著になっている(猿木ら,2004;村田ら,2009).演習林では団地間 でシカによる下層植生の食害の時期が異なる.三方岳団地では 10 年前からスズタケ群落がすで に消滅していたが,津野岳団地では 10 年前には広い範囲で残っていた.しかし津野岳団地におい てこの 10 年で急速にスズタケ群落が衰退した (長ら,2014). 本発表では,植生被害の顕在化した時期が異なる二つの団地において,2006年から2015年にか けてのシカ生息密度の推移がどのように異なるかを調査した. 2.調査地と方法 調査地は三方岳団地内の林道(探照面積 は 0.441km2)と津野岳団地内の林道(探照面 積は 2006 年から 0.108km2,2011 年から 0.168 km2)である.夜間に林道を車両で低速走行 しながら,車両の荷台からスポットライト を照射することで目撃されるシカの姿およ び目の反射により個体数を調べた.可視範 囲の測定により,探照面積を算出した.各 調査日の個体数を探照面積で除し,これら の平均から相対的な生息密度指標値を得た. 併せて性別の判定および齢判定(0 歳,1 歳,Ad※2 歳以上)をおこなった.また,目 撃された群の位置を計測した. 2006 年 5 月~2015 年 11 月までの年 2 回,春(5 月)・秋(11 月) にそれぞれ 3 日間の調査を行った(図-1).ただし,津野岳団地内においては 2014 年の春・秋とも に実施しなかった. 図-1 調査位置図

(20)

3.結果と考察 津野岳団地では 2006 年から 2007 年 において三方岳団地に比べて低い生息 密度を示していたが,2008 年から急激 に増加し,その後,一旦は低下したが おおむね三方岳団地よりも高かった. 一方,三方岳団地の生息密度は比較的 一定であった(図-2).津野岳団地にお いて,この 10 年間で三方岳団地よりも 急激な増加と高い密度での推移がみら れたことは,三方岳団地では観測開始 時よりスズタケ群落が消失していた のに対し,津野岳団地では,繁茂して いたスズタケ群落がこの 10 年間で衰 退してきている事実と合致する.一方, 三方岳団地では 2003 年時点ではすで にスズタケ群落が衰退していること から,生息密度が安定していることが 考えられた.春の生息密度が両団地と も秋のそれより高かった.また津野岳 団地の方が季節間の変動が大きかっ た(図-3).春の生息密度が高かったことの要因としては,出産時期や繁殖時期との関係が考え られた. 引用文献 長慶一郎ら(2014) ニホンジカの摂食によるスズタケ群落の衰退 -九州大学宮崎演習林におけ る 11 年間の変化-.第 17 回九州大学演習林研究発表会.第 17 回演習林研究発表会要旨集 村田育恵ら(2009) 九州大学宮崎演習林におけるニホンジカの生息密度と下層植生の変遷. 九 州大学農学部演習林報告. 90:13-24 櫻木まゆみら(1999):樹木年代学的手法による山地流域のニホンジカ生息密度・分布域の時間 的変化の再現.日本林学会誌81:147-152 猿木重文ら (2004):九州大学宮崎演習林においてキュウシュウジカの摂食被害を受けたスズタ ケ群落分布と生育状況 2003年調査結果.九州大学演習林報告85:47-57 植生学会企画委員会 (2011) ニホンジカによる日本の植生への影響―シカ影響アンケート調査 (2009-2010)結果―,植生情報,15: 9-96. 図-3 年別団地別季節別の生息密度指標の推移 図-2 年別団地別の生息密度指標の推移

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九州大学演習林の研究利用件数の推移

九州大学農学部附属演習林 大崎 繁、川嶋弘美 九州大学農学研究院 古賀信也 1.はじめに 九州大学農学部附属演習林は、1912(大正元)年に創設され、それ以降今日まで森林に関する 様々な教育利用・研究利用がなされてきた。かつて研究利用については統一的な規定がなく、利 用状況の把握、試験地の管理・調整等が十分に行われているとは言えない状況にあったが、1986 年の試験地委員会の設置に続き、1995 年に「演習林利用の手引き(初版)」が発刊されことで、 「固定試験地利用」、「調査利用」、「試料採取利用」、「データ利用」、「宿舎利用」といった利用形 態が整理され、管理下のもとで利用が進められている。1995 年に発刊された「演習林利用の手 引き」は、その後、二版(2001 年)、三版(2009 年)、四版(2015 年)と随時改訂され現在に至 っている。 今後の演習林における研究利用の促進のための資料として、「演習林利用の手引き」初版(1995 年)から三版(2014 年)までの 20 年間について固定試験地数、研究資材提供数等についてまと めたので報告する。 2.資料 各演習林の森林管理計画書、各年度の演習林年報、管理運営委員会資料、森林管理委員会(試 験地委員会)資料を基に固定試験地新設数、研究資材提供数、デ-タ提供数、短期調査数につい て収集した。 3.結果 2015 年 3 月 31 日現在の固定試験地数は、福岡演習林 33 箇所、宮崎演習林 53 箇所、北海道演 習林 36 箇所であり、新設は年平均7箇所でここ数年は 10 件以上と増加している。研究資材提供 数は年平均 17 件で、2006 年度から急激に増加している。データ提供数は年平均 9 件で、2002 年度から徐々に増加している。とくに宮崎演習林からのデータ提供数の増加が著しい。短期調査 は年平均 14 件で年変動が大きいが、2009 年度からやや増加している。全体的には利用件数は増 加傾向にあるが、さらに利用者を増やすためには、演習林内に設置された森林管理委員会や情報 管理委員会で検討し、方策を講じていく必要がある。 図1 1995 年から 2014 年までの 3 演習林の研究利用件数の推移 0 10 20 30 40 50 1995 年 1996 年 1997 年 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 初版 二版 三版 固定試験地新設 研究資材提供(大型・小型) デ-タ提供 短期調査(1年未満) 件

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宮崎演習林の研究プロジェクト

菱拓雄,田代直明,長慶一郎,山内康平,緒方健人,佐々木寛和,鍜治清弘(宮崎演習林) 1. 宮崎演習林の特徴〜環境条件の多様な山岳森林帯 宮崎演習林は九州脊梁山地の中央部に位置し,林地は標高 650 から 1607m に位置する(上図)。 標高 600m の庁舎付近での年平均気温は 13.1℃,林地の多くを含む 1000m 付近での平均気温は 11℃前後である。植生は低標高域 でシイカシ類を含む暖温帯林,広 範にモミツガを中心とする中間温 帯林,高標高で出現するブナを中 心とした冷温帯林といった広い植 生帯をカバーしていることを特徴 とする。また,貫入花崗岩が広く 分布する津野岳団地,堆積岩を中 心とした四万十層群を基盤とする 三方岳団地,およびこれらの地質 帯の境界に当たる萱原山団地と,多様な地質を有している(下図)。加えて 30°以上の傾斜が 30% を占めており,微地形は複雑である。すなわち宮崎演習林は,気候,地質,地形および植生にお いて多様な条件を内在する山岳森林生態系と定義できよう。 造林樹種はスギ,ヒノキを中心としており,天然林率は 8 割ほどである。多様な自然条件に 加え,演習林の敷地では,奥山にもかかわらず古くから人間の利用があり,森林を利用した暮ら しに関する民族学的な研究も行っている。また,本演習林はニホンジカ激害地でもあり,下層植 生の消失と森林の更新不全が大きな問題となっている。シカ被害の履歴は団地間で大きく異なり, 更新木の空間分布の違いも生じて いる。このため,森林へのシカによ る被害と再生に関する研究にも力 を入れている。宮崎演習林の研究プ ロジェクトの当面の大きな目標は, 「地勢的な環境や人間の利用,動物 による撹乱履歴に関する環境や,そ こに生息する生物種の多様性とそ の幅を示すこと」に集約される。

(23)

2. 研究プロジェクト ・気 象 観 測 :気象条件は生物の生息を規定する最も重要な環境条件である。宮崎演習林では現 在,標高 600m の事務所構内,また,三方岳,矢立の標高約 1000m 付近に気温,湿度,日射,風 向,風速,雨量について気象観測を行っている。さらに 2015 年 10 月より,宮崎演習林の最高標 高となる津野岳山頂に温度ロガーを設置し,観測を開始した。これにより,標高 600m から 1607m までの宮崎演習林の気象条件の幅を示すことが可能になった。 ・生物データベース:種リストはその場所の自然を理解する第一歩である。演習林全域 2915ha を対象に,生物種の記録をしており,植物 447 種,菌類 94 種,動物 1393 種が記録されている。 ・全 域 植 生 調 査 :標高,地質,地形の多様な環境に恵まれた宮演の生物的特徴を把握し,最大 限に活用するため,演習林全域を 54 ブロックに分割し,天然生林内 270 地点での環境条件と植 生との関係を明らかにする研究を 2016 年度から本格的に開始する。 ・森林動態調査:3 つの 1ha 大プロットと,特徴の異なる天然生林,人工林において,0.04ha の学術参考保護林 15,見本林 6 つを設置し,5 年おきに長期間の植生変化の調査を行っている. ・渓流調査:水質観測やヤマメ個体群構造を中心とした水生生物の長期動態調査を行っている. ・野 生 動 物 調 査 :ニホンジカを中心に,様々な動物の目視,カメラセンサス等を行っている. 同時に動物による植生への被害調査,排除効果の研究調査などを行っている. ・比較ネットワーク研究:九州の高標高域に位置する宮崎演習林は,地理的に多くの落葉樹の 南限に近く,緯度帯比較における重要な位置を占めている。こうした気候的特徴から,長期森林 動態のモニタリング,造林木品種交換試験をはじめ,他サイトとの比較研究に用いられている. ・しいば樹木園:宮崎演習林に分布している樹木を一同に展示するための展示林を造成中. 3. 研究活動の成果発信 ・ しいば資料館:演習林内や関連地域で採取された動植物標本の展示を行っている. ・ホ ー ム ペ ー ジ :演習林の概要,施設,データ利用案内のほか,生物データベースの公開や, 日々の宮崎演習林内での出来事をブログ形式で発信している. 4. 参考 ・ホームページアドレス: http://www.forest.kyushu-u.ac.jp/miyazaki/index.php

参照

関連したドキュメント

・生物多様性の損失も著しい。世界の脊椎動物の個体数は 1970 年から 2014 年ま での間に 60% 減少した。また、世界の天然林は 2010 年から 2015 年までに年平 均 650

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