土浦ブロックリハビリテーション学術集会
(第 4 回新人症例検討会)
プログラム・抄録集
期日:2018 年 2 月 2 日(金)
会場:総合病院土浦協同病院
会議室(2 階カンファレンス室)
主催
公益社団法人茨城県理学療法士会
公益社団法人茨城県理学療法士会土浦ブロック
抄録集に関する資料やデータは、各自責任を持って破棄をお願いします。
2017 年度 土浦ブロックリハビリテーション学術集会(新人症例検討会)抄録集
1) 日時:2018 年 2 月 2 日 金曜日 19:00~20:10 2) 会場:総合病院土浦協同病院 会議室(2 階カンファレンス室) 3) スケジュール 17:30~ 会場準備 18:00~ 受付 (会場場所案内 C6 登録希望有無 発表者パソコン起動確認) 18:50~ 開会挨拶(各会場) 19:00~ 演題開始(1 演題移動も含めて 15 分 発表 7 分 質疑 8 分程度) A 会場;4 演題 19:00~20:00 B 会場;4 演題 19:00~20:00 20:00~ 閉会挨拶 (実行委員長 県南病院 根本浩史) 茨城県理学療法士会土浦ブロック活動・実績報告・予定 (土浦ブロック長 総合病院土浦協同病院 村野勇) 20:10~ 片付け・解散 20:20~ 茨城県理学療法士会土浦ブロック代表者会議 会議室(2 階カンファレンス室) 21:00 茨城県理学療法士会土浦ブロック代表者会議終了予定 4) 会場レイアウト(総合病院土浦協同病院ホームページより引用 2017 年) 住所:〒300-0028 茨城県土浦市おおつ野4丁目 1 番 1 号 電話:029-830-3711 (内線:3700)会場案内
7)演題 及び 座長 ●A 会場 : 司会・会場運営責任者 神立病院 石山健太 座長 総合病院土浦協同病院 千葉由華 石岡市医師会病院 糸川真奈美(タイムキーパー兼務) 演題: Ⅰ-1 右視床出血により右片麻痺を呈した 1 例 ~歩行能力改善を目指して~ 総合病院土浦協同病院 木村圭佑 Ⅰ-2 前頭葉梗塞により左片麻痺と前頭葉失調を呈した症例 -フィードフォワード障害に着目して- 総合病院土浦協同病院 牧野加奈 Ⅰ-3 2 型糖尿病合併高度肥満患者に対し多職種介入によって行動変容がみられた一例 国立病院機構霞ヶ浦医療センター 竹中勇輔 Ⅰ-4 呼吸筋麻痺が急速に進展した筋萎縮性側索硬化症に対して非侵襲的陽圧換気下での呼吸療法と 運動療法が有効であった一症例 総合病院土浦協同病院 遠藤拓見 ●B 会場 : 司会・会場運営責任者 山王台病院 飯村章 座長 つくば国際大学 永井智 総合病院土浦協同病院 實藤あすな(タイムキーパー兼務) 演題: Ⅱ-1 画像所見を基に筋の拘縮を予測した左踵骨骨折の一症例 総合病院土浦協同病院 山川駿平 Ⅱ-2 踵骨変形と腓骨筋短縮により歩行時痛を生じた患者に対する理学療法 筑波技術大学保健科学部附属 東西医学統合医療センター 能智 悠史 Ⅱ-3 左大腿骨骨幹部骨折を呈し歩行時に体幹動揺が著明に生じた症例 〜大殿筋・中殿筋の筋出力に着目して〜 神立病院 齊藤遙佳 Ⅱ-4 肩甲骨・胸椎に対する介入が肩峰下インピンジメントによる疼痛軽減に効果があった症例 神立病院 岩崎巧
Ⅰ-1 左視床出血により右片麻痺を呈した1 例 ~歩行能力改善を目指して~ 木村圭佑 實藤あすな 君山夏生 桜庭裕香 千葉由華 総合病院土浦協同病院 リハビリテーション部 キーワード:左視床出血、早期荷重、CPG 【はじめに】 左視床出血により、右片麻痺を呈した症例を経験した。本症例は歩行時、右立脚期の支持性低下と遊脚 期に骨盤右回旋による代償を認めた。早期からの歩行練習により歩行能力が改善したため報告する。 【症例紹介】 60 歳代女性で、仕事中に右片麻痺を認めた。CT 上、左視床出血と診断され当院にて保存的加療となっ た。発表の目的と意義について書面にて説明し、同意を得た。 【理学療法評価・経過】
3 病日では Brunnstrom recovery stage test(以下、Brs)で右上肢Ⅱ、手指Ⅴ、下肢Ⅱで感覚は表在、深 部共に軽度鈍麻、右下肢の荷重に対する感覚は重度鈍麻であった。 5 病日の歩行は右立脚期にて支持性低下し、右 Mst では反張膝を認めた。また、右 LR~Mst での重心 移動が不十分であり、右Tst の股関節伸展が消失していた。右遊脚期では骨盤右回旋による代償を認め、 揃え型歩行であった。 6 病日から長下肢装具を使用した歩行、12 病日から免荷式トレッドミル歩行を開始し、21 病日から下 肢Brs.Ⅳとなり長下肢装具の膝継手を解除した。 37 病日、右下肢の荷重に対する感覚は中等度鈍麻であった。右 Mst では重心移動が可能となり、右 Tst で股関節伸展を認めた。右遊脚期では骨盤右回旋による代償は残存したが、右股関節屈曲による振りだし を認め、交互型歩行が可能となった。 【考察】 本症例は右立脚期での支持性低下、右遊脚期での骨盤右回旋による代償を認めた。 高橋らは重度下肢麻痺であっても急性期から早期離床、長下肢装具などを用いた早期の下肢荷重、歩行 訓練が下肢機能障害、歩行機能の改善に有効と述べている。また、中澤は中枢パターン発生器 Central pattern generator(以下、CPG)賦活のためには歩行時のステッピングとステッピング時に加わる下肢への 荷重と股関節からの求心性入力が重要であり、Tst での股関節伸展は股関節屈筋群の活動を喚起するとし ている。また、左右脚が交互に動く場合に歩行様出力促通に効果があるとしている。 本症例においても早期荷重、CPG 賦活のため、随意性促通練習、起立練習、歩行練習を実施した。 歩行練習は股関節への荷重入力と力学的に有利なアライメントで歩行するため、長下肢装具を使用し、 右Tst において右股関節伸展が出現するよう介助した。また、随意性向上に伴い、右遊脚期に共同運動が 出現していたため、介助にて抑制をした。 早期からの歩行練習の介入の結果、右股関節周囲筋の筋出力が増加し、加えて、CPG が賦活されたこと で歩行能力の改善につながったと考えられる。
Ⅰ-2 前頭葉梗塞により左片麻痺と前頭葉失調を呈した症例 -フィードフォワード障害に着目して- 牧野加奈1) 大金容子1) 古田真実1) 益子架奈恵1) 1)総合病院土浦協同病院 リハビリテーション部 キーワード:前頭葉失調,大脳小脳神経回路,フィードフォワード障害 【はじめに】 今回, 前頭葉梗塞により運動麻痺と前頭葉失調を呈した症例を経験した. 本症例は,退院前に独歩を獲得 することができたが,運動失調により歩幅や歩行リズムの乱れが残存した.そのため,フィードフォワード障 害に着目し,介入したところ改善を認めたため以下に報告する. 【症例紹介】 本症例は,60 歳代前半の男性である.夜間に左上下肢の脱力感を認め,翌日,当院を受診.右前頭葉梗塞と診 断され保存療法目的で入院となった.3病日より理学療法介入.21病日に自宅退院となり外来にて介入,44病 日に介入終了となった.なお,本発表の目的と意義について口頭にて説明し,書面にて同意を得た. 【理学療法評価・経過】 初期時 Brunnstrom stage(BRS)は左上肢Ⅴ下肢Ⅳ手指Ⅴ.感覚障害・高次脳機能障害は認めなかっ た.Berg Balance Scale (BBS) 26 点.Foot Pat test は左側陽性.Mingazzini 試験は陰性であったが,同肢位に て左下肢に上下への動揺を認めた. 10m 歩行は 13.21 秒(18 歩),歩容はワイドベースで歩幅が一定せず歩行 リズムが乱れていた.治療として, 随意性促通運動, 左下肢振り出し反復練習を実施した.退院前は,BRS 下 肢Ⅵ,BBS54 点,Foot Pat test 左側陽性,Mingazzini 試験肢位での左下肢の動揺は残存した.10m 歩行は 7.46(15 歩)であり,歩隔は狭くなったが,歩幅や歩行リズムの乱れは残存した.最終時は, Mingazzini 試験肢 位での左下肢の動揺は初期時に比べ改善を認め,Foot Pat test は陰性となり,歩幅や歩行リズムが安定した. 【考察】 本症例は,運動麻痺や前頭葉失調によりバランス能力が低下し,跛行を呈した.小坂は,前頭葉障害を呈し た症例の自立度は高いと報告しており,本症例も退院前には独歩を獲得した.しかし,運動麻痺の改善は認め たが,前頭葉失調による歩幅や歩行リズムの乱れが残存した. 前頭葉は小脳との神経回路があり,フィード フォワード制御の関与もある. フィードフォワード制御は,内部モデルの情報を利用し,軌道に見合った運 動指令の計算や逆に運動指令からの軌道の推定ができる.吉尾は,大脳小脳神経回路の障害によりフィード フォワードが障害されるため振り出す下肢の空間的コントロールが難しいと報告している. 本症例は,左 下肢振り出し反復練習で股関節の協調運動や足関節の反復拮抗運動を小脳が再学習することで新たな内部 モデルが構築されたと推察される.その結果,立脚期から遊脚期への移行が円滑になった.したがって,蹴り だしが出現し,振り出す下肢のコントロールも改善され,歩幅や歩行リズムが安定したと考える.
Ⅰ-3 2 型糖尿病合併高度肥満患者に対し多職種介入によって行動変容がみられた一例 竹中勇輔, 国立病院機構霞ヶ浦医療センター リハビリテーション科 キーワード 高度肥満・2型糖尿病・減量指導 【はじめに】 2 型糖尿病(2 型 DM)合併高度肥満患者に対し,多職種(医師,理学療法士,管理栄養士)による減量指導 を行うことで行動変容がみられ,良好な結果が得られたため報告する. 【症例紹介】 50 歳代女性.2013 年 3 月から 2 型 DM で当院かかりつけ患者.当時から高度肥満,高血圧を指摘され, 右膝関節痛もあり運動習慣はなかった.2017 年 6 月,食欲不振を認め当院外来受診し,体温 38.0℃, CRP28.5mg/dL,WBC13100/μL,尿中 WBC,尿中 RBC の上昇を認め,尿路感染と食事量低下に伴う ケトーシスで入院となる.本報告の主旨は本人の同意を得たものである. 【経過】 入院当日より抗生剤投与を開始し,入院4 病日より理学療法を開始した.入院時理学療法はトレッドミ ルを用い,修正Borg3〜4 の強度で有酸素運動を 3 回実施した. 14 病日で退院となるが,さらなる減量 と糖質代謝指標改善を目標に外来リハ継続となる.外来理学療法では,週1 回の頻度で有酸素運動,レジ スタンストレーニングを実施した.また2 週 1 回の頻度で,活動量計の歩数データから平均値を算出し, その歩数に応じて目標を提示する運動指導,自記式食事記録と写真から管理栄養士が算出した摂取熱量を グラフ化し,栄養面のアドバイスも含めたフィードバックを行った.結果は身体組成(入院 5 病日→139 病 日):体重 125.7kg→122.5kg,SMI9.7kg/m2→9.5kg/m2,代謝指標(入院 1 病日→91 病日):HbA1c7.2%→6.6%. 身体機能(入院 3 病日→132 病日):膝伸展筋力 20.7kgf(体重比 16.5%)→20.6kgf(体重比 16.8%),1 日平 均歩数(外来開始→外来開始 4 か月後)4923 歩→6514 歩となった. 【考察】 本症例では1 日平均歩数増加,食事記録の継続という行動変容がみられた。今回の変化は患者の準備性 が熟考期に達し,運動指導、食事記録から内発的動機付けができたこと,それに合わせて多職種で支援し たことが要因と考えられた.さらに行動変容による活動量の増加によって糖質代謝指標改善がみられたと 考える.また,理学療法継続によって筋力は保たれたが,体重減少はまだ十分でないため、引き続き介入 を継続していく.
Ⅰ-4 呼吸筋麻痺が急速に進展した筋萎縮性側索硬化症に対して非侵襲的陽圧換気下での呼吸療法と運動療法が 有効であった一症例 遠藤拓見¹) 宮阪隼人¹) 濱野一平¹) 尾池健児¹) 1) 総合病院土浦協同病院リハビリテーション部 キーワード:筋萎縮性側索硬化症、呼吸療法、運動療法 【はじめに】 呼吸筋麻痺が急速に進展する筋萎縮性側索硬化症(以下、呼吸筋麻痺型 ALS)は、従来の ALS よりも予 後が短いと報告されている。従来の ALS は呼吸療法と運動療法により症状の進行を遅延させると報告さ れているが、呼吸筋麻痺型ALS について検討した報告は乏しい。今回、呼吸筋麻痺型 ALS に対して、非 侵襲的陽圧換気(以下、NPPV)装着下で呼吸療法と運動療法を実施した結果、有効性が示唆されたため以 下に報告する。 【症例紹介】 症例は、60 代男性である。入院 3 ヶ月前に息切れで当院へ受診し、慢性呼吸不全、気管支喘息の疑いで 治療を開始した。しかし、月単位で呼吸機能が低下したため、NPPV 導入目的で当院へ入院した。入院中 の日常生活活動(以下、ADL)は入浴のみ一部介助であった。血液ガス中の動脈血二酸化炭素(以下、pCO2) は、入院初期が103.0mmHg であり、退院時は、66.1mmHg と減少し、息切れが軽快した。退院後の NPPV の設定はS/Tmode、IPAP:8、EPAP:4 とし、朝、昼、夜 1 時間装着となった。 本症例は病名が未告知であった。本発表の目的と意義について口頭にて説明し、書面で同意を得た。 【理学療法評価・経過】 入院翌日より理学療法介入し、入院37 日目で自宅退院となった。入院 6 日目の膝関節伸展筋力(右、左) は、μTas を使用し、4.0N/kg、3.4N/kg であり、握力(右、左)は、26.0kg、25.5kg であった。10m 歩行 テストは、0.95m/sec であり、持久性は 30-CS を使用し、5 回/30sec であった。入院 35 日目の膝関節伸 展筋力(右、左)は 3.3N/kg、3.1N/kg であり、握力(右、左)は、19.4kg、18.9kg であった。10m 歩行テス トは、0.96m/sec であり、30-CS は、6 回/30sec であった。 【理学療法内容】 入院6 日目から、NPPV 装着下で口すぼめ呼吸、シルベスター法、胸部圧迫式換気補助、呼吸筋強化(横 隔膜、重錘0.5kg)、上肢筋力強化(肩関節屈曲・外転、重錘 0.5kg)、下肢筋力強化・持久性向上練習(テラス エルゴ30W)、歩行練習(O2:1L/min、30m)を実施した。入院 20 日目から呼吸筋強化と上肢筋力強化の重 錘を1kg に増量した。入院 29 日目から、歩行練習の距離を 50m まで延長し、退院まで継続した。 【考察】 寄本は、NPPV 装着下で呼吸療法を実施した結果、pCO2 の排出量が増加し、息切れの改善が期待でき ると報告している。また、Drory VE らは、1 日 15 分間、中等度の運動を 2 回実施した結果、3 ヶ月間は 筋持久力改善があったと報告している。本症例も息切れが軽快し、ADL が維持された。そのため、呼吸筋 麻痺型ALS に対して、NPPV 装着下の呼吸療法と運動療法は有効であり、運動機能の低下を遅延させる ことが示唆された。
Ⅱ-1 画像所見を基に筋の拘縮を予測した左踵骨骨折の一症例 山川駿平1)色川沙織1)藤沢知佳1)長谷川勝哉1)伊野智美1)鈴木美咲1)高坂千恵1) 蛯原文吾1) 1)総合病院土浦協同病院リハビリテーション部 キーワード:踵骨骨折,画像所見,足関節背屈 【はじめに】 画像所見から骨折に伴い損傷している軟部組織を予測することは重要である.今回,画像所見より損傷 組織を予測して理学療法を実施したことで疼痛軽減・可動域改善に至った.そのため経過および,実施し た理学療法について考察を踏まえ報告する.なお,本発表の目的と意義について説明し,同意を得た. 【症例紹介】 本症例は 50 歳代女性で,脚立より転落し,左踵骨骨折(Essex-Lopresti 分類でⅡ度)を受傷し,踵骨隆起、 腓骨筋滑車に骨折を認めた.受傷後 3 日に Westhues 法により踵骨の固定術が施行された. 【経過】 手術後 2 日より理学療法を開始した.手術後 14 日間はシーネ固定し,手術後 15 日で足関節の可動域(以 下 ROM)練習が開始となった.手術後 22 日で退院した.手術後 28 日より 1/2 荷重開始,手術後 36 日で全 荷重開始となり,手術後 43 日で抜釘した. 【理学療法評価】 手術後15日では足関節のROM(右/左)は膝屈曲位背屈30/-20,膝伸展位背屈25/-20,底屈65/25,内反40/25, 外反 15/-15 であった.長短腓骨筋筋腹,腓腹筋筋腹に数値評価スケール(以下 NRS)8 の圧痛,背屈時に長 短腓骨筋腱,アキレス腱停止部,術創部に NRS8 の疼痛を認めた.手術後 106 日で ROM は左膝屈曲位背 屈 25,膝伸展位背屈 20,底屈 60,内反 35,外反 15 となった.長短腓骨筋筋腹,腓腹筋筋腹の圧痛,術創 部の疼痛は消失した.背屈・歩行時の左立脚終期に長短腓骨筋腱,アキレス腱停止部に NRS3 の疼痛が残 存したが踵の補高により NRS1 と軽減を認めた. 【介入方法】 固定中は患部外トレーニングの他に長短腓骨筋・腓腹筋の等尺性収縮練習を実施した.ROM 練習開始 後は長短腓骨筋・腓腹筋の選択的収縮練習とストレッチを行いリラクセーション,滑走性改善を図った. また,歩行時のアキレス腱停止部・長短腓骨筋腱の疼痛軽減のため踵の補高を行った. 【考察】 浅野は骨折の形から損傷した軟部組織を推察できると報告している.本症例は骨折部位より長短腓骨筋 腱,アキレス腱停止部に着目し疼痛・滑走性低下等による背屈制限が生じると予測した.そのため,早期 より選択的収縮練習とストレッチを行なった結果,疼痛の軽減,可動域の改善を図ることができた.残存 している歩行時の疼痛は,腓腹筋・長短腓骨筋の短縮に伴う伸張性低下により立脚終期の背屈時に出現し, 踵の補高により疼痛の軽減を図ることができた.画像所見を利用し損傷組織を予測することでより効率的 に介入でき,疼痛の軽減・可動域の改善につながったと考える.
Ⅱ-2 踵骨変形と腓骨筋短縮により歩行時痛を生じた患者に対する理学療法 能智 悠史1)、佐久間 亨1)、杉田 洋介1)、井口 正樹2)、木下 裕光2) 1)筑波技術大学保健科学部附属 東西医学統合医療センター リハビリテーション科 2)筑波技術大学 保健科学部 保健学科 理学療法学専攻 Key word : 踵骨変形、腓骨筋短縮、歩行 【はじめに】 踵骨骨折で手術後の理学療法に関する報告は散見されるが、保存療法として理学療法のみを行った報告は 少ない。本症例では腓骨筋群の短縮に着目し理学療法を実施した。その結果、関節可動域、歩行時痛の改 善を確認したので報告する。 【症例】 今回の症例報告では本人の同意を得ている。70 歳代前半、女性。2015 年に高さ 1m 程の縁台から落下し 右踵骨を骨折した。受傷後の約2 年間、整骨院にて電気治療を受けていた。疼痛が軽減しないため 2017 年6 月 27 日、当センター整形外科を受診し右変形性足関節症と診断され、理学療法(以下、PT)を開始し た。主訴は歩行の右足底接地から踵離地で生じる右足関節外果下方の疼痛であった。単純X 線画像はベー ラー角が-10°と踵骨の高度変形がみられた。ROM(左/右)は足関節背屈 15°/10°、内反 50°/25°、そ の他のROM 制限は無かった。右下肢の MMT で下腿三頭筋は踵部痛のため実施できず、その他は 5 であ った。また、腓骨筋群は内反位の等尺性収縮により疼痛が生じた。10m 歩行テスト(以下、10m 歩行)は速 度0.69 m/sec、歩幅 0.41m、歩行率 1.67step/sec であった。 【理学療法経過】 PT は全 22 回で、頻度は週 1 回から 2 回、1 回につき 40 分間実施した。実施内容は徒手で腓骨筋群の筋 腹に対し緊張緩和を行った。その後、他動ROM訓練で腓骨筋群の伸張を行った。自動ROM訓練はDYJOC ボードを使用し座位で足関節の底背屈及び内外反運動を行った。PT13 回目(79 病日)で ROM は背屈 15° /15°、内反 50°/45°で、10m 歩行は速度 0.82m/sec、歩幅 0.58m、歩行率 1.40step/sec で、右足底接地 から立脚中期の疼痛は緩和した。PT18 回目(118 病日)、10m 歩行では速度 0.94m/sec、歩幅 0.58m、歩行 率1.60step/sec であった。右踵離地における右外果下方の疼痛は残存したが、内反制限の装具及び杖歩行 指導を行い疼痛の軽減がみられた。 【考察】 踵骨骨折ではベーラー角が0°以下で手術適応とされている(河崎ら 1996)。踵骨骨折後の合併症として踵 骨体部外側壁の突出による腓骨筋腱炎、関節面の不整による関節症性変化がある(田邊ら,2005)。また、腓 骨筋群の短縮は足関節の背屈を制限する(大工谷,2006)。本症例では踵骨変形及び腓骨筋群が短縮したこと で歩行立脚期において腓骨筋腱が外果を圧迫し、疼痛が生じていたと考えられる。腓骨筋群の短縮改善に 伴い歩行時痛は軽減したが、右踵離地での疼痛は残存した。これは踵骨変形が顕著なので、足関節背屈位 からの腓骨筋群の収縮は外果圧迫を強めるためと考えられた。 )
Ⅱ-3 左大腿骨骨幹部骨折を呈し歩行時に体幹動揺が著明に生じた症例 〜大殿筋・中殿筋の筋出力に着目して〜 齊藤遙佳,浅川恭平,高橋大介 神立病院 リハビリテーション科 キーワード:殿筋群,筋出力,膝立ち位 【はじめに】
今回,左大腿骨骨幹部骨折の症例を担当する機会を得た.左 Initial contact(以下,IC)〜Loading response (以下,LR)にかけての体幹動揺に対し,膝立ち位での殿筋群出力向上を図った結果,体幹動揺の軽減を 認めたため以下に報告する. 【症例紹介】 60 歳代女性.診断名:左大腿骨骨幹部骨折.現病歴:自宅の風呂場にて転倒受傷し他院に入院,上記診断. 翌日に髄内釘挿入術施行.手術後 25 日に当院へ転院.手術後 42 日まで完全免荷.手術後 71 日に全荷重開 始.手術後 88 日に自宅退院.尚,発表に対し本症例に十分な説明をし同意を得た. 【理学療法評価:手術後 71 日】 主訴:身体のふらつきをなくしたい.ROM-t:体幹,両股関節共に著明な制限なし.MMT(右/左):腹直筋・ 内外腹斜筋 3/3.大殿筋 3/2.中殿筋・ハムストリングス 2/2.疼痛:なし.姿勢観察:①膝立ち位:上肢 支持にて安定.体幹・骨盤軽度前傾, 腰椎前弯, 両股関節・膝関節軽度屈曲位.大殿筋・中殿筋の収縮は 触知可能な程度.②立位:体幹正中位,骨盤軽度前傾,腰椎前弯,両股関節軽度屈曲位.大殿筋・中殿筋 の収縮は乏しい.歩行:T 字杖自立.左 IC〜LR にかけて体幹屈曲・右傾斜の動揺著明.大殿筋・中殿筋の 収縮は乏しい. 【理学療法評価:手術後 82 日】(変化点のみ記載) MMT(右/左):大殿筋 3/3.姿勢観察:①膝立ち位:上肢支持なしで安定.体幹正中位.両股関節伸展活動 は高まり,中間位に近づいた膝立ち位保持が可能.大殿筋・中殿筋の出力向上.歩行:左 IC〜LR にかけて 体幹屈曲・右傾斜軽減.大殿筋・中殿筋の出力向上. 【考察】 本症例の問題点として,左 IC〜LR にかけての体幹屈曲と右傾斜の出現が挙げられる.原因として,体幹の 筋力低下と左大殿筋・中殿筋の筋出力低下から歩行時の筋収縮も得られにくくなっていると考えた.中村 らは大殿筋の筋活動を高めるには主に腹直筋を働かせた体幹筋の協調性を誘導することが有効であると報 告している.アプローチとして,正座からの膝立ちや膝立ち位での重心移動,膝歩きを実施した.結果と して,左 IC〜LR にかけての大殿筋・中殿筋の収縮が得られやすくなり,筋出力の向上が認められた.筋出 力が向上したことから,歩行時の大殿筋・中殿筋の収縮も可能となり,股関節伸展活動が獲得された.そ のため,前足部への重心移動が円滑となり,体幹屈曲・右傾斜の動揺が軽減されたと考える.
Ⅱ-4 肩甲骨・胸椎に対する介入が肩峰下インピンジメントによる疼痛軽減に効果があった症例 岩崎巧,小栗陵太,加藤行一 神立病院 リハビリテーション科 キーワード:肩峰下インピンジメント,肩甲骨アライメント,胸椎伸展 【はじめに】今回,右肩インピンジメント症候群の症例を担当する機会を得た.肩甲骨周囲筋,胸椎可動 性に対し介入を行い,肩関節挙上時の疼痛軽減を認めたため以下に報告する. 【症例紹介】60 歳代女性.診断名:右肩インピンジメント症候群.現病歴:受診1ヶ月程前より、挙上時 痛が出現.上記診断後,週 2 回の外来リハビリ実施.既往歴:左乳癌.発表にあたり本症例に十分な説明 をし,同意を得た. 【初期評価:~6 病日】アライメント:ベッド-右肩峰距離 4.5 横指,胸椎後彎増強位.疼痛:最終挙上域 で肩峰下 NRS5.圧痛:大・小胸筋強度.ROM-T(自動):右肩関節挙上 130°(疼痛 90°以上)1st 外旋 40° 水平外転 5°,肩甲骨内転-5°,胸椎伸展 0°.MMT:僧帽筋中・下部 2,腱板筋 3-4.その他:挙上時に 肩甲骨後傾を介助すると疼痛消失.肩甲骨固定により腱板筋出力向上. 【最終評価:33 病日(変化点を記載)】アライメント:ベッド-右肩峰距離 3.5 横指.疼痛:最終挙上域で 肩峰下 NRS1.圧痛:大・小胸筋軽度.ROM-T:右肩関節挙上 135°(疼痛 120°以上)1st 外旋 55°水平外転 10°,肩甲骨内転 5°,胸椎伸展 5°.MMT:僧帽筋中・下部筋出力向上.その他:最終挙上域での胸椎伸 展,肩甲骨後傾が改善. 【考察】佐藤,塚本らは過度の胸椎後彎や肩甲骨後傾の制限が肩峰下インピンジメントの原因となること を報告している.本症例も胸椎後彎増強位を呈し,大・小胸筋の伸張性低下,僧帽筋中・下部の筋力低下 も認められた.右肩関節挙上時の肩甲骨後傾・内転が制限されると共に,肩甲骨固定力低下が腱板筋によ る骨頭求心位保持を阻害し,インピンジメントが生じたと推察された.介入として大・小胸筋に対するリ ラクセーション及びストレッチ,僧帽筋に対し側臥位にて肩関節挙上 90°から 120°で肩甲骨内転・後傾 運動を実施した.また小胸筋リラクセーションと胸椎伸展を目的とした自主トレーニングを指導した.結 果,短期間で肩甲骨,胸椎の可動性や挙上時アライメントが改善し肩峰下腔の拡大が図れたことが,疼痛 の出現範囲狭小化と軽減に繋がったと考える.
【問い合わせ】 当日 17:00 まで 〒300-0841 茨城県土浦市中村町 1087-3 電話:029-841-1148 県南病院 根本浩史 当日 17:00 以降 〒300-0028 茨城県土浦市おおつ野4丁目 1 番 1 号 電話:029830-3711(内線:3700) 総合病院土浦協同病院 村野 勇