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密教文化 Vol. 1958 No. 41-42 002宮坂 宥勝「密教仮名法語の資料 (一) P23-42」

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一)

は し が き 中 世 鎌 倉 時 代 に お け る 新 仏 教 運 動 に 呼 応 し て、 奈 良 平 安 以 来 の 仏 教 諸 派 は い か な る 教 団 的 動 ぎ と 教 理 的 変 容 を と げ、 そ れ が さ ら に 中 世 社 会 に い か な る 影 響 を 及 ぼ し た で あ ろ う か。 こ の 問 題 は 種 々 な る 角 度 か ら の 考 察 を 必 要 と す る が、 従 来 の 教 団 に 属 す る 仏 教 者 達 が 時 代 の 趨 勢 に し た が つ て 仮 名 法 語 を 著 わ す よ う に な つ た こ と は、 そ の も つ と も 著 し い 時 代 的 な 特 徴 の 一 つ で あ ろ う。 鎌 倉 以 降 近 世 江 戸 末 期 に 至 る ま で に、 民 衆 教 化 の 一 環 と し て、 密 教 の 場 合 に は い か な る 仮 名 法 語 の 著 作 活 動 が つ づ け ら れ た の で あ ろ う か。 密 教 仮 名 法 語 の 思 想 内 容 に つ い て、 昭 和 三 十 二 年 秋 の 同 学 会 で ﹁ 近 世 密 教 の 職 業 倫 理 ﹂ と い う 題 で、 そ の 一 端 を 発 表 さ せ て い た だ い た (﹁ 高 野 山 時 報 ﹂ 昭 和 三 十 三 年 一 月 一 四 九 二 号 参 照 )。 こ こ で は、 そ れ と 関 連 し て、 し か も 十 分 に 言 及 出 来 な か つ た 資 料 紹 介 を 中 心 に、 眺 め て い き た い と 思 う。 本 稿 執 筆 中 に、 本 学 加 地 先 生 か ら 慈 雲 に つ い て 示 唆 に 富 ん だ 指 月 の 労 を い た だ い た。 衷 心 よ り 感 謝 す る 次 第 で あ る。 一、 中 世 -近 世 初 期 の 密 教 仮 名 法 語 き よ う よ う 最 初 期 の 密 教 関 係 の 邦 文 に、 ﹃ 孝 養 集 ﹄ が あ る。 こ れ は 覚 鍍 の 作 と な つ て い る が、 今 日 で は だ い た い 否 定 的 な 見 解 が と ら れ て い る。 し か し 鎌 倉 期 の 作 品 と 見 な し て よ い だ ろ う。 と り わ け、 本 書 を 真 言 念 仏 の 先 駆 者 に 仮 託 し て い る 点 を 注 意 す べ き で あ る。 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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-23-密 教 文 化 鎌 倉 時 代 の 戒 律 復 興 者 で あ る 貞 慶 ( 解 脱 上 人 )、 明 恵、 叡 尊 ( 興 正 菩 薩 ) が、 い ず れ も 平 俗 な ( カ ナ ) 法 語 類 を 残 し て い る の は、 か れ ら が 庶 民 大 衆 の 教 化 に 専 念 し た 事 実 を 語 つ て い る も の と し て、 興 味 深 い。 そ れ ら の 典 籍 は、 思 想 的 に は 全 く 密 教 系 統 に 属 す る も の で あ る。 ま ず、 解 脱 に は ﹃。 臨 終 用 意 事 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き、 写 本 ) が あ る ゆ こ れ と 同 類 の も の に 中 ノ 川 の 実 範 の 著 ﹃。 病 中 修 行 記 ﹄ 一 巻 ( 漢 文、 長 承 三 年 ︹ 一 二 二 四 ︺ 十 一 月、 写 豊 山 蔵 ) 及 び 高 野 山 正 智 院 の 道 範 の ﹃ 臨 終 用 心 事 ﹄ 一 巻 ( 漢 文、 貞 永 二 年 ︹ 一 二 三 三 ︺ 正 月 二 十 一 日 抄 之、 古 写 本 ) が あ る。 後 者 は 同 じ 道 ( 1) 範 の ﹃。 秘 密 宗 念 仏 紗 ﹄ 巻 ノ 下 の 一 節 を 別 出 し た も の で あ る。 右 の 諸 書 は 必 ら ず し も 在 俗 の 信 者 の た め に 書 か れ た も の で は な い が、 当 時 の 真 言 行 入 が 同 時 に 半 僧 半 俗 的 な 験 者 的 念 仏 行 者 で あ る も の が 多 か つ た 事 実 を 想 起 す れ ば、 こ れ ら の 著 作 の 仮 名 書 き の 意 義 が 理 解 出 来 る よ う な 気 も す る。 明 恵 に は、 ﹃。 土 砂 勧 信 記 ﹄ 二 巻 ( 仮 名 書 き ) ﹃。 土 砂 勧 信 別 記 ﹄ 一 巻 ( 同 ) が あ る。 後 者 は 別 称 ﹃。 光 明 真 言 加 持 土 砂 別 記 ﹄ と も い い、 ﹁ 安 貞 二 年 ( 一 二 二 八 ) 極 月 二 十 六 日 忍 時 於 二 {局 山 寺 禅 堂 院 草 庵 一 記 レ之 真 言 行 入 高 辮 ﹂ の 奥 書 が あ る。 さ ら に 明 恵 に は ﹃。 都 率 西 方 往 生 難 易 法 談 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き ) が あ り、 こ の 奥 書 は ﹁ 寛 喜 元 年 ( 一 二 二 九 ) 六 月 十 日 明 恵 説 隆 辮 記 聴 二 聞 之 噌即 時 記 レ 入 ﹂ と あ る。 明 恵 に は、 こ の ほ か に ﹃。 光 明 真 言 句 義 釈 ﹄ 一 巻 ( 漢 文 ) と ﹃。 光 明 真 言 加 持 土 沙 義 ﹄ 一 巻 ( 漢 文 ) が あ る。 類 似 の も の に 道 範 の ﹃。 光 明 真 言 四 重 釈 ﹄ 一 巻 ( 漢 文 ) が あ る。 こ の 書 は 江 戸 時 代 に 光 明 真 言 信 仰 を 説 い た 多 く の 密 教 仮 名 法 語 の 基 調 を な す も の と し て 重 要 視 し て よ い も の で あ る。 明 恵、 道 範 ら が 光 明 真 言 思 想 を 鼓 吹 し た の は、 明 遍 が 入 寂 ( 一 二 二 四 ) 後、 近 々 十 年 内 外 の 出 来 事 で あ つ た。 そ し て 一 遍 の 踊 り 念 仏 は、 ま だ 流 行 し て い な い。 叡 尊 ( 一 二 〇 一-一 二 九 〇 ) は、 か れ が 生 涯 か け て 戒 を 授 け た も の 九 万 七 千 六 百 人 と 記 録 さ れ、 ま た 貧 民 救 済 の 聖 者 と 仰 が れ た の で あ る が、 そ の よ う に 民 衆 達 と 絶 え ず 接 触 を 保 つ て い た か れ に、 ﹃。 光 明 真 言 和 讃 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 ) ﹃。 真 言 安 心 和 讃 ﹄ 一 巻 ( 同、 と も に 天 保 九 年 秋 に 密 厳 が 開 版 ) が 帰 せ ら れ て い る の も、 格 別 不 思 議 で は な い。 そ し て 叡 尊 も

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ま た 光 明 真 言 の 普 及 に つ と め て い る 点 に 注 目 し た い。 そ の 一 節 を み る と、 次 の よ う な こ と ば が 認 め ら れ る。 ﹃ 光 は 仏 の 智 恵 な れ ば 無 明 す な は ち 明 と な る 凡 そ 光 明 め ぐ ま ず ば 西 も 東 も わ け か ね て 無 始 の 迷 闇 能 く 破 り 智 恵 ぞ ま こ と の 光 な る 我 等 が た ぐ い い か が せ ん 只 常 闇 に ぞ 迷 は ま し ﹄ ( ﹃ 光 明 真 言 和 讃 ﹄ ) 覚 鍍 の 真 言 念 仏 思 想 を 受 継 い だ 道 範 に は 仮 名 法 語 こ そ な い が、 後 世 の 多 く の 密 教 仮 名 法 語 の 著 者 達 に 及 ぼ し た 信 仰 的 思 ( 2) 想 的 影 響 は、 絶 大 で あ る。 そ の 著 ﹃ 秘 密 ( 宗 ) 念 仏 紗 ﹄ 三 巻 は 貞 応 二 年 ( 一 二 二 二 ) 二 月 二 十 一 日 に 擱 筆 し て い る。 ま た 道 範 が 讃 岐 に 配 流 さ れ て い た と き に 書 い た ﹃ 南 海 流 浪 記 ﹄ も 密 教 々 化 史 上、 看 過 し え な い 資 料 で あ る。 道 範 門 下 の 覚 海 に は (3) ﹃。 覚 海 法 橋 法 語 ﹄ ( ま た は ﹃ 南 勝 坊 法 語 ﹄ ) 一 巻 ( 仮 名 書 ぎ ) が 存 す る。 覚 海 は 建 保 五 年 ( 一 二 一 七 ) に 金 剛 峯 寺 の 検 校 職 に つ い た 人。 右 の 法 語 は 道 範 の 秘 密 念 仏 を 基 調 と し、 そ の 中 で、 ﹃ 裟 婆 世 界 は 五 濁 の 境 な れ ど も、 西 方 浄 土 あ る な り。 心 浄 け れ ば、 即 ち 仏 法 土 と 云 う。 是 レ 也。 転 ニセ バ 凡 心 一ヲ 業 縛 の 依 身 即 ち 所 依 住 の 正 報 の 浄 土 也。 其 ノ住 処 も 亦 如 レ シ 此 ノ。 ﹄ と の べ て い る。 法 然 の ﹃ 撰 択 集 ﹄ を 真 言 密 教 の 立 場 か ら 批 判 し た も の に、 ( 4) ﹃ 真 言 宗 欣 求 安 養 砂 ﹄ 一 巻 ( 漢 文、 上 巻 の み 現 存、 古 写 本 ) が あ り、 作 者 は 不 明 で あ る。 同 じ 傾 向 の も の に 戦 国 の 頃、 高 野 い ん に ゆ う 山 無 量 光 院 の 印 融 が 著 わ し た ﹃ 安 養 紗 ﹄ ( 漢 文 ) が あ る。 醍 醐 の 覚 済 に は、 次 の も の が あ る。 ﹃。 迷 悟 抄 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き ) 文 永 九 年 ( 一 二 七 二 ) の 作 で あ る。 こ れ は 賀 茂 氏 の 婦 人 某 の も と め に 応 じ て 書 い た も の で、 密 教 仮 名 法 語 の う ち で も、 と く に 女 性 の た め の 法 語 と い う 点 で 特 徴 が あ る。 恐 ら く 他 宗 派 で も こ の 時 代 以 降 を 通 じ て ほ と ん ど 類 例 が 稀 で は な か ろ う か。 密 教 修 行 に 男 女 の 差 別 が な い こ と を 強 調 し て、 次 の 如 く い つ て い る。 ﹃ 依 レ テ 之 二経 文 大 師 の 御 作 共 に 男 女 を 嫌 は ず 真 言 を 修 行 す べ き 旨 見 へ た る 也。 唐 土 の 灌 頂 の 血 派 に は 俗 人 多 く 列 ネ た り。 ﹄ コ マ カ ﹃ 父 母 共 に 子 を 憐 む と 云 . と も 何 の 細 な る 悲 は 母 に 過 ぎ ず。 偏 に 母 の 処 に 具 二 メ 大 悲 一ヲ 下 化 衆 生 の 謂 れ 有 る 故 也。 ﹄ か か る 思 惟 傾 向 は、 女 権 が 著 し く 伸 張 し た 鎌 倉 中 期 と い う 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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-25-密 教 文 化 時 代 を 反 映 し て い る。 本 書 は 高 山 寺 所 蔵 の 天 正 十 一 年 ( 一 五 八 三 ) 七 月 四 日 の 古 写 本 そ の 他 が あ る が、 同 じ く 高 山 寺 と 高 野 山 金 剛 三 昧 院 の 古 写 本 中 に、 ﹃。 真 言 内 証 義 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き ) が あ る。 中 ノ 院 入 道 准 后 覚-と あ る の み で あ る が、 作 者 は 明 ら か に 北 畠 親 房 で あ る。 格 調 の 高 い 法 語 で あ る。 と く に ﹁ 慈 悲 ﹂ を 強 調 し、 次 の よ う な こ と ば が 見 出 さ れ る。 ﹃ 他 方 に 浄 土 有 リ と 云 フ は 一 機 の 為 メ 也。如レク 実 ノ 知 二ヌ レ ハ自 心 一ヲ、 証 菩 提 門 是 れ 西 方 浄 土 な り ﹄ ﹃ 預 め 行 願 ノ菩 提 心 を 発 し て 十 方 の 含 識 を 観 る こ と 猶 し 己 身 の 如 し。 故 に 衆 生 無 辺 ナ リ 誓 願 シ テ 度 ス ヘ シ と 思 へ。 遂 に 浬 架 に 趣 か ず し て 大 悲 の 心 を 捨 つ べ か ら ず ﹄ イ カ デ ﹁ 争 か 済 生 の 願 を 捨 つ べ き や。 身 命 を 忘 れ 骨 髄 を 擢 キ て も 労 苦 を 顧 み ず、 彼 を 可 レキ 救 フ 計 を 可 レ 廻 也。 先 ず 世 間 の 法 に 於 て 正 路 を 以 て 民 の 苦 を や す め 覚 解 を 進 め て 遂 に 妙 道 に 令 レ ム ル 到 フ を 菩 薩 の 行 願 と 云。 也 ﹄ 鎌 倉 後 期 に 活 動 し た 知 道 に は ﹃。 仏 法 夢 物 語 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き、 石 山 寺 古 写 本 ) ﹃。 夢 知 識 物 語 ﹄ 一 巻 (仮 名、 広 隆 寺 古 写 本 ) の 二 巻 の 仮 名 法 語 が あ る。 ﹃ 仏 法 夢 物 語 ﹄ の 筋 書 き は、 草 庵 の 長 閑 な る 夜 に 一 入 の 客 が 訪 ず れ て、 主 人 と 仏 法 問 答 に 夜 を ケ リ 更 か し た が、 庵 主 が﹃加 様 に 申 し つ る も 只 夢 中 の 詞 に て 侍 り 髭 と 云 カ キ へ ば、 客 も 書 消 ス 様 に 失 せ、 主 人 も 其 , 時 失 せ ぬ。 怪 し き 柴 の 庵、 松 風 計 リ 也 矣 ﹄ と あ る。 ﹃ 夢 知 識 物 語 ﹄ も 同 じ 内 容 で あ る か ら、 異 本 あ る い は い ず れ か が 草 本 で あ る と 思 う。 文 体 は、 そ の 後 現 わ れ た 兼 好 の ﹃ 徒 然 草 ﹄ な ど に 通 じ る も の が あ る と、 考 え ら ( 6) れ る。 知 道 に は こ の ほ か ﹃。 病 中 用 心 抄 ﹄ 一 巻 ( 弘 安 七 年 ︹ 一 ( 7) 二 八 四 ︺ 建 黄 下 旬 ) 及 び ﹃。 好 夢 十 因 ﹄ 二 巻 ( 弘 安 九 年 ︹ 一 二 八 六 ︺ 正 月 九 日 ) が あ り、 そ れ ぞ れ 漢 文 で 書 い て あ る。 頼 宝 の 師、 自 性 上 入 我 宝 ( 一 三 一 二 頃 ) に ﹃。 密 教 修 行 念 諦 作 法 ﹄ 二 巻 ( 仮 名 書 き ) が あ る。 か れ は 宗 教 的 な 素 質 に つ い て ﹃ 密 教 は 大 海 の 如 く し て 一 切 の 機 根 を 漏 ら さ ず。 ﹄ と の べ、 次 の 如 く こ れ を 説 明 し て い る。 ﹃ 念 仏 宗 の 如 き は 一 向 易 行 道 を 本 意 と し て 難 行 の 旨 を 本 意 と せ ず。 是 故 に 難 行 を 好 む 者 は 易 行 を そ し り、 易 行 を 好 む 者 は 難 行 を き ら ふ。 真 言 は 大 海 の 如 く に し て 一 切 の 機 を 漏 ら さ ず と 者、 難 行 を 好 む 者 の 為 に は 難 行 を 説 き、 易 行 を 好 む 者 の 為 に は 易 行 を 説 き、 処 中 の 行 を 好 む 者 の 為 め に は 処 中 の 行 を 説 き、 万 行 の 機 根 す べ て

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漏 る る こ と な し ﹄ ( ﹃ 密 教 修 行 念 説 作 法 ﹄ ) 右 は、 ﹁ 今 日 世 間 の 相 み な 真 言 宗 の 法 門 な り ﹄ と い う 慈 雲 に 至 る ま で、 民 衆 教 化 に 際 し て 取 つ た 密 教 者 の 基 本 的 態 度 で も あ る。 我 宝 に は、 べ つ に ﹃。 安 養 都 率 本 来 胸 中 事 ﹄ 一 巻 ( 漢 文 ) お よ び ﹃ 深 秘 抄 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 ) が あ る。 以 上、 鎌 倉 期 の 約 一 世 紀 に わ た つ て か な り の 密 教 法 語 が 現 わ れ て い る が、 こ の ほ か に な お 相 当 の 数 量 の こ の 種 の 著 作 が あ つ た の で は な い か と 想 像 さ れ る。 仮 名 法 語 で は な い が、 密 教 徒 の 書 い た 邦 文 と し て、 覚 鍍 の 消 息 や ﹃ 高 野 春 秋 編 年 輯 録 ﹄ 所 収 の ﹃ 飛 行 三 鈷 帰 来 之 時 修 明 門 院 御 令 旨 ﹄ ( 建 長 五 年 十 一 月 八 日 ) な ど を、 こ め 際 附 記 し て お き た い。 次 の 南 北 朝 約 半 世 紀 間 に は 仮 名 法 語 の 著 作 は ほ と ん ど な い。 室 町 ・ 安 土 桃 山 期 に 入 る と、 庶 民 の た め の 密 教 法 語 が 再 び 現 わ れ る が、 そ の ほ と ん ど 全 部 が 漢 文 で 書 か れ て い る。 さ き の 印 融 の ﹃ 安 養 紗 ﹄ が そ う で あ る。 ま た 同 じ 著 者 に ﹃ 密 教 磐 説 拾 集 抄 ﹄ と ﹃ 法 讐 抄 ﹄ が あ る。 ﹃ 高 野 春 秋 ﹄ に 印 融 の 辞 世 が 載 つ て い る の で、 参 考 ま で に 挙 げ て お く。 生 ル ル モ 夷 字 ヨ リ 来 レ バ 死 ス ト テ モ 本 ノ 不 生 二 帰 リ コ ソ ス レ。 ( 大 日 本 仏 教 全 書 本、 二 五 六 頁。 永 正 十 六 年 己 卯 八 月 十 五 日 ノ 条 ) さ ら に、 任 遍 の ﹃。 一 期 安 心 記 ﹄ 一髄 巻 ( 明 応 三 年 ︹ 一 四 九 四 ︺ + 二 月、 高 野 山 宝 性 院 古 写 本 )、 同 じ く ﹃ 湯 山 抄 ﹄ ( 写 本、 高 野 山 大 学 図 書 館 保 管 ) も み な 漢 文 法 語 で あ る。 ま た 頼 慶 の ﹃。 光 明 真 言 妙 ﹄ 一 巻 ( 慶 長 九 年 ︹ 一 六 〇 四 ︺ 丙 辰 + 月 二 + 一 日 依 二 初 入 者 之 嘱 d注 金 剛 仏 子 頼 慶 ) も 同 断 で あ る。 ﹃。 一 期 安 心 記 ﹄ は、 恐 ら く 密 教 法 語 で ﹁ 安 心 ﹂ の 語 を 表 題 と し た 最 初 の も の で は な か ろ う か。 こ れ が 書 か れ た の は、 加 賀 に 一 向 一 揆 が 勃 発 し て か ら 実 に 八 年 目 の こ と で あ つ た。 こ の 際、 一 方 に お い て、 真 言 の 任 遍 が 定 散 二 種 安 心 説 を と つ て い る の も、 わ れ わ れ の 注 目 を 引 く と こ ろ で あ る。 二、 江 戸 時 代 の 密 教 仮 名 法 語 ( 一 ) 江 戸 初 期 に は 密 教 法 語 類 の 述 作 が な い 代 り に、 過 去 に 現 わ れ た 秘 密 念 仏 関 係 の 法 語 の 開 板 が し き り に お こ な わ れ て い る。 開 板 の め ぼ し い も の を 拾 つ て み る と、 次 の も の が 認 め ら れ る。 ( 9) ﹃ 孝 養 集 ﹄ ( 寛 永 癸 未 ︹ 一 六 四 三 ︺ 刊 ) ( 10) ﹃ 一 期 大 要 秘 密 集 ﹄ ( 正 保 二 年 ︹ 一 六 四 五 ︺ 刊 ) ﹃。 秘 密 念 仏 抄 ﹄ ( 正 保 二 年 刊 ) 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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密 教 文 化 ﹃ 四 十 九 院 紗 ﹄ ( 頼 慶 記、 承 応 二 年 ︹ 一 六 五 三 ︺ 刊 ) ﹃ 安 養 紗 ﹄ 二 巻 ( 明 暦 二 年 ︹ 一 六 五 六 ︺ 刊 ) ※ (11) ﹃ 往 生 兜 率 密 記 ﹄ 二 巻 ( 寛 文 十 一 年 ︹ 一 六 七 一 ︺ 六 月 刊 ) ※ 高 野 山 無 量 光 院 の 尊 海 の 著 作、 寛 文 十 一 年 春 彼 岸 擱 筆。 江 戸 時 代 に 最 初 に 現 わ れ た 密 教 仮 名 法 語 は、 時 代 的 に は 浄 も く じ き い く う 厳 と 相 前 後 し て 活 動 し て い る 木 食 以 空 上 入 の ﹃。 玉 鏡 ﹄ ( ま す ず き し よ う ざ ん た は ﹃ 玉 か が み ﹄ ) で あ ろ う。 し か し、 こ れ と て も 鈴 木 正 三 が ま だ 大 阪 城 番 を 務 め て い た 元 和 五 年 ︹ 一 六 一 九 ︺ に 述 作 し も う あ ん じ た う た ﹃ 盲 安 杖 ﹄ 一 巻 な ど に 較 べ る と、 そ れ か ら す で に 半 世 紀 も 過 ぎ て の こ と で あ る。 ﹃ 玉 鏡 ﹄ と い う 題 は、 寛 文 二 年 ⊃ 六 六 二 ) に 御 水 尾 法 皇 及 び 本 院 御 所 ( 後 西 天 皇 ) の た め、 以 空 が 光 明 真 言 を 講 じ、 一 書 を 編 ん で 献 上 し た と き、 勅 命 に よ つ て 名 づ け ら れ た も の で あ る。 本 書 は 漢 字 訳 の 仏 教 語 を 出 来 る 限 り カ ナ で 表 現 し て い る の が 特 徴 で あ る。 た と え ば、 ぼ さ つ、 ぼ だ い、 く ど く、 し ん こ ん、 な ど。 ま た そ の 叙 述 は 全 篇 を 通 し て、 た と え ば、 ﹁ 黒 か み は よ も ぎ が も と に ま と へ ど も、 た れ か 是 を は ら ん。 白 骨 は 草 む ら に よ こ た ゆ れ ど も、 こ れ を い だ く も の さ ら に な し。 ま こ と に 夏 の 夜 の 夢 に こ と な ら ず。 せ う じ や ひ つ め つ の こ と は り、 口 に い ひ て 身 に し ら れ ず。 ﹄ と い つ た 具 合 に、 こ の 種 の 法 語 類 と し て は 文 学 作 品 に 近 い 傾 向 を 示 し て い る。 密 教 に お け る カ ナ 文 字 運 動 に 従 事 し て 庶 民 大 衆 に 大 き な 感 化 を 及 ぼ し た 点 か ら す れ ば、 近 世 江 戸 時 代 で は、 ま ず 江 戸 湯 島 霊 巌 寺 の 浄 巌 和 上 に 指 を 屈 し な け れ ば な ら な い だ ろ う。 周 知 の 如 く、 か れ は 悉 曇 学 史 上 で は 慈 雲 尊 者 と と も に 燦 と し て 不 滅 の 光 芒 を 放 ち、 .ま た 如 法 真 言 律 の 創 始 者 で も あ る。 か れ か ら 菩 薩 戒 を 受 け た 者 は 一 万 五 千 人 と い わ れ る。 そ の 浄 厳 が 仮 名 法 語 を 著 わ し て い る の は、 あ た か も 鎌 倉 期 に 密 教 関 係 の 仮 名 法 語 を 著 わ し た 人 入 が 同 時 に 戒 律 復 興 者 で あ つ た こ と と 併 せ 考 え て 興 味 深 い。 し か し そ れ は ま た 密 教 の た て ま え か ら し て、 理 の 当 然 で あ る と い つ て よ い の か も 知 れ な い。 浄 厳 の ﹃。 光 明 真 言 観 諦 要 門 ﹄ 二 巻 ( 仮 名 書 ぎ ) は、 貞 享 三 年 ( ﹂ 六 八 六 )、 和 上 の 存 命 中 に 上 木 を み て い る。 書 中、 密 教 の 造 詣 の 程 を ひ ら め か せ、 ま た = 一 ー ラ ( n il a ) は 青 の 義。 即 チ 是 レ虚 空 の 本 色 ﹂ と い う よ う に 正 確 な 梵 語 の 知 識 を い た る と こ ろ 駆 使 し て い る。 浄 厳 の こ の 方 面 の 活 躍 は、 か れ の 最 高 弟 の 一 人 で あ る 蓮 体

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に お い て 見 事 に 結 実 し て い る。 和 尚 に は 次 の 仮 名 法 語 が あ る。 ﹃。 真 言 開 庫 集 ﹄ 二 巻 ( 仮 名 書 き ) こ れ は 貞 享 五 年 ( 一 六 八 八 ) に 開 板 し て い る。 ﹃。 秘 密 安 心 往 生 要 集 ﹄ 二 巻 ( 仮 名 書 き ) 序 は 享 保 三 年 ( 一 七 一 八 ) 八 月 十 五 日 脱 稿、 本 文 は 享 保 四 年 ( 一 七 一 九 ) 正 月 吉 日 脱 稿、 享 保 四 年 開 板。 ﹃。 光 明 真 言 金 壼 集 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き ) 享 保 六 年 ( 一 七 二 一 ) 六 月 十 五 日 脱 稿。 こ れ ら の 法 語 に 現 わ れ た 蓮 体 の 職 業 倫 理 に つ い て は、 他 で 若 干 触 れ た の で 省 略 す る。 蓮 体 の こ と ば に 次 の 如 き も の が あ る。 ﹃ 曼 茶 羅 の 諸 尊 は み な 到 於 実 際 の 聖 衆 な れ ば、 浅 深 高 下 あ る こ と 芒。 三 籍 応 す る 時 は、 終 に 些 門 よ り 一 切 法 界 門 黙 鶴 に 入 る が 故 に、 勝 劣 の お も ひ を 生 ず べ か ら ず ﹄ ( ﹃ 真 言 開 庫 集 ﹄) こ の 汎 仏 論 的 信 仰 の 表 明 は、 ひ と り 蓮 体 に 限 ら な い が、 江 戸 に お け る 初 期 の 仮 名 法 語 に 見 出 さ れ る も の と し て 挙 げ て み た。 大 乗 仏 教 の 諸 仏 信 仰 は、 わ が 国 で は シ ャ ー マ ニ ズ ム と 結 合 し て し ま つ た の で あ る が、 密 教 者 の こ の 根 本 理 念 の 理 解 の 仕 方 は、 全 く イ ソ ド 以 来 の も の で あ る。 因 み に 十 九 世 紀 の イ ソ ド の 聖 者 ラ ー マ ・ ク リ シ ュ ナ も こ れ と 全 く 同 じ こ と を 説 い て い る。 ﹃ 一 体 を な し て 分 割 さ れ ざ る 一 つ の 神 を 信 じ て、 そ の 性 質 の 無 限 に 多 様 な 様 相 を 思 は ぬ こ と は、 即 ち 抽 象 的 な 一 つ の 神 を 信 ず る こ と で あ る。 そ れ は 実 際 的 に は わ れ わ れ を 合 理 主 義 と 無 信 仰 に 導 く も の で あ る。 も し も わ れ わ れ が 神 を そ の す べ て の 表 は れ に お い て 崇 め よ う と 欲 す る な ら ば、 わ れ わ れ は そ の 表 は れ に 一 々 神 の 名 を つ け る で あ ら う ﹄ (12) こ の こ と ば を、 さ ら に ロ マ ソ ・ ロ ー ラ ン が 引 用 し て い る。 こ う し や く な お、 蓮 体 に は 享 保 十 年 前 に 著 わ し た カ ナ 書 き の ﹃ 鉱 石 集 ﹄ が あ る ら し い が、 私 は ま だ 披 見 の 機 会 に 恵 ま れ な い。 享 保 十 そ く こ う し や く 年 ( 一 七 二 五 ) 正 月 十 一 日 に ﹃ 続 鉱 石 集 ﹄ を 書 き 上 げ、 今 年 ( 13) 開 板。 こ れ は 当 時 語 り 伝 え ら れ て い た ほ と ん ど 全 国 の 民 間 仏 教 信 仰 に ま つ わ る 説 話 を 集 め た も の で、 こ ん な に 話 題 が 豊 富 な の は、 恐 ら く 高 野 聖 な ど が 荷 担、 伝 達 し て い た も の を 聞 い て 書 ぎ 留 め た か ら で は な か ろ う か。 蓮 体 は 三 根 安 心 説 の 立 場 を と り、 後 に 批 判 の 対 象 と な つ て い る が、 そ の 徳 化 の 普 ね き こ と は 比 類 が な い 程 で あ る。 同 じ 頃、 等 空 は 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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-29-密 教 文 化 ﹃。 発 心 不 退 章 ﹄ 二 巻 ( 仮 名 書 き、 享 和 二 年 ︹ 一 七 一 七 ︺ 十 一 リ コ ア ツ サ チ リ ハ 月 ) を 著 わ し た。 序 に . 重 て 請 フ ら く は 裡 語 を 綴 り、 梓 に 鍛 め て 世 ヅ ク カ タ イ ナ カ ワ ラ ペ に 流 へ ら れ ば、 辺 垂 の 童 蒙 ま で も、 其 益 に 需 ひ 勝 れ た る 法 施 な ら ん カ 歎 ﹄ と あ る。 仮 名 法 語 著 者 の 多 く が 類 似 の 序 を も の し て い る の で、 一 例 と し て 記 る し て み た が、 こ の 心 く ば り は 貴 い。 本 書 は 分 量 も 多 い が、 す ぐ 目 に つ く 点 は、 難 解 な 漢 字 訳 の 仏 教 用 語 の 左 ま た は 右 に 片 カ ナ の や さ し い 邦 語 を 添 え て い る こ と で あ る。 仏 教 術 語 の 現 代 語 化 は 今 日 わ れ わ れ に 課 せ ら れ た 急 務 で あ る が、 等 空 は す で に そ れ を 自 覚 し て い た の で あ る。 し か も そ こ に み ら れ る 漢 語 と 邦 語 の 概 念 的 一 致 の た く み さ は、 ス ク ヒ ト リ 驚 歎 に 価 い す る。 若 干 の 例 を 拾 つ て み よ う。 ﹁ 摂 取 ﹂ ﹁ 放 逸 ﹂ シ タ イ マ マ ア チ ホ ド コ シ ク セ ツ ケ ﹁ 正 因 ﹂ ﹁ 雑 染 の 垢 ﹂ ﹁ 布 施 ﹂ ﹁ 壊 劫 ﹂ ﹁ 空 見 ﹂ ﹁ 黒 習 ﹂ ﹁ 法 タ シ カ ナ タ ネ ム サ ク ロ シ セ カ マ ノ ソ フ レ ル ワ ル キ フ ン ベ ソ ジ 界 身 に 冥 会 し て ﹂ ﹁ 相 ﹂ ﹁ 梵 語 ﹂ ﹁ 無 常 迅 速 ﹂。 こ ん な と こ ネ ン ト ー タ イ ニ ナ ル テ ン ジ ク ノ コ ト パ デ ル イ キ イ ル イ キ ヲ マ タ ズ ろ ま で 細 か い 神 経 を 使 つ て い る 仮 名 法 語 は、 密 教 で は ほ か に な い。 他 の 宗 旨 の も の は 全 部 に わ た つ て 読 ん で い な い の で 断 言 出 来 な い が、 恐 ら く 類 例 が 見 当 ら な い か と 思 う 〇 本 書 は そ の 後 享 和 三 年 ( 一 八 〇 三 ) に 覚 憧 が 開 板 し て い る。 ﹁ 冥 途 へ も 行 か ず 此 世 に 住 み も せ ず 阿 字 の 都 に 遊 ぶ こ こ ろ ぞ、 ﹂ と い う の が 等 空 の 辞 世 で あ る と い わ れ る。 げ ん し ん 大 阪 北 野 不 動 寺 の 彦 峯 ( 無 等 々 翁 ) が、 正 徳 元 年 ( 一 七 一 一 ) に ﹃。 真 言 安 心 勧 善 義 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き ) を 著 わ し、 正 徳 三 年 ( 一 七 一 三 ) の 夏 に 大 阪 で 開 板 し て い る。 従 来 版 本 の 流 布 が 稀 だ つ た の で、 世 に 知 ら れ て い な か つ た も の で あ る。 四 国 の 大 師 の 旧 跡 を 巡 礼 す る お 遍 路 さ ん に み ら れ る 同 行 二 人 と い う 大 師 信 仰 が い つ 頃 か ら 一 般 化 さ れ る よ う に な つ た か 知 ら な い が、 彦 峯 は、 ﹃ 実 に は 大 師 の 真 身 は 法 界 に 偏 せ り。 虚 空 の 月 の 万 水 に 応 じ て 其 , 形 を 現 ず る が 如 し。 信 心 の 水 澄 め る 時 は、 常 に 必 ず 大 師 の 真 身 拝 ま れ 移 り ま し ま す ﹄ と 説 い て い る。 類 似 の 喩 説 は、 の ち の 法 住 の も の に も 見 ら れ る が、 直 接 的 な 源 流 は 弘 法 大 師 の ﹃ 即 身 成 仏 義 ﹄ に ﹃ 加 持 者 表 三 如 来 大 悲 与 二 衆 生 信 心 哨仏 日 之 影 現 二 衆 生 心 水 日 レ 加。 行 者 心 水 能 感 二 仏 日 一 名 レ持 ﹄ と あ る の に 求 め ら れ る。 こ れ は さ ら に ﹃ ブ ラ フ マ ・ ス ー ト ラ ﹄ ( B r a h m a -s u t r a II I -2-18 ) と 驚 く べ き 符 合 を 示 し て い る。 し か し、 大 乗 仏 教 論 書 で は 管 見 に よ る と、 M a h a y a n a s u t r a la m k a r a I X -1 6 ( ﹃ 大 乗 荘 厳 経

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論 ﹄ ﹁ 菩 提 品 ﹂ ) に 出 て い る の が、 古 い も の で は な い か と 思 う。 そ こ の 第 十 五 頒 で 仏 性 ( B u d d h a tv a ) の 自 性 の 遍 在 性 を 示 し た 後 に、 ﹃ ︹ 箪 が十 六 頚 ︺ ﹁ た と え ば、 水 器 が 破 壊 さ れ た な ら ば、 月 影 が 見 ら れ な い 如 く、 同 じ よ う に、 衆 生 が 悪 け れ ば 仏 陀 の 影 は 見 ら れ な い ﹂ こ の 第 五 の 頒 に よ つ て、 た と え 遍 在 性 の も の で あ る に し て も、 衆 ろ つ わ 生 が 器 た り 得 な い な ら ば、 仏 影 を 見 ざ る こ と を、 実 例 を も つ て 証 ( 14) 明 す る。 ﹄ と あ る。 享 保 よ り 元 文 の 交 に か け て、 智 山 の 曇 寂 は 二、 三 の 法 語 類 を 著 わ し て い る。 こ れ ら は す べ て 漢 文 で 書 か れ て い る が、 秘 密 念 仏 に 関 す る も つ と も 重 要 な 典 籍 で あ る か ら、 左 に 掲 げ て お こ う。 こ の う ち 後 三 著 は 写 本 の ま ま で 伝 わ り 未 出 版 で あ る。 ﹃。 秘 密 念 仏 私 記 ﹄ ( 享 保 十 五 年 ︹ 一 七 三 〇 ︺ 正 月 二 日 ) 天 保 十 四 年 九 月 十 三 日 に 智 山 の 隆 喩 が 書 い た 写 本 が 智 積 院 に あ る。 ﹃ 仏 説 阿 弥 陀 経 秘 釈 ﹄ 三 巻 ( 元 文 五 年 ︹ 一 七 四 〇 ︺ 七 月 十 七 日 擱 筆、 写 本、 智 積 院 蔵 ) ( 15) ﹃ 臨 終 大 事 私 記 ﹄ 一 巻 ( 奥 欠、 愛 知 県、 性 海 寺 蔵 ) ﹃ 一 期 大 要 略 出 私 記 ﹄ 一 巻 ( 享 保 十 九 年 ︹ 一 七 三 四 ︺ 正 月 初 七 ( 15) 日 擱 筆、 天 保 六 年 六 月 五 日 隆 喩 写、 智 積 院 蔵 ) こ の 時 代 の 密 教 法 語 類、 布 教 書 を 一 括 し て 左 に 掲 げ て お く。 蓮 貴 記 ﹃ 人 身 不 可 欠 義 ﹄ 一 冊 ( 写 本、 和 大 仮 綴 高 野 山 大 学 図 書 館 保 管 ) ﹃ 夢 中 妄 言 ﹄ 一 冊 ( 粘 帖、 光 台 院 蔵 ) ﹃ 光 厳 場 記 ﹄ 一 冊 ( 貞 享 四 年 ︹ 一 六 八 七 ︺ 刊、 光 台 院 蔵 ) ※ ﹃ 秘 密 律 筏 ﹄ 一 冊 ( 年 綴 大、 写 本 光 台 院 蔵 ) ※ 高 野 山 光 台 院 に は、 な お ﹃ 即 心 念 仏 安 心 決 義 談 義 ﹄ 享 保 十 三 年 刊 が あ る が、 こ れ は 天 台 念 仏 に 関 す る 仮 名 法 語 で あ る。 当 時、 近 松 の 浄 瑠 璃 文 学 及 び 西 鶴 の 町 人 物 な ど に 現 わ れ た お び た だ し い 仏 教 語 と そ の 用 例 は、 過 去 の 日 本 人 の 生 活 に 即 し た 宗 教 意 識 を 測 定 す る た め の 有 力 な バ ロ メ ー タ ー に な る が、 そ れ は 同 時 代 の 仮 名 法 語 類 の 思 想 ・ 用 語 と 対 比 し て み る 必 要 が あ る で あ ろ う。 徳 川 中 期 に お け る も つ と も す ぐ れ た 密 教 仮 名 法 語 の 一 つ に 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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-31-密 教 文 化 学 如 の ﹃。 対 賓 法 語 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き ) が あ る。 こ れ は 古 く か ら 注 目 せ ら れ、 す で に 明 治 十 八 年 に 旭 雅 和 上 が 校 訂 出 版 し て い る。 密 教 体 験 の 極 致 を、 学 如 は 次 の よ う に 披 渥 し て い る。 ﹃ 又 一 切 衆 生 と 同 体 に し て 唱 ふ る 故、 吾 ヵ 唱 フ る 所 が 即 チ 一 切 の 情 の 有 ル も の に 皆 徹 し て 利 益 を 得。 が 故 に、 居 な が ら 衆 生 を 済 度 す る 也。 山 川 草 木 も 一 体 と 念 じ て 唱 ふ る 故、 此 ノ 国 の 草 木 も 浄 土 の 草 木 に 替 り な し。 皆 草 木 の 形 を し た る 菩 薩 に て 真 言 を 唱 へ 説 法 す る 也。 浄 土 も 仏 も 吾 ヵ 一 心 と 観 ず る 故、 行 者 の 居 る 所 が 直 き に 都 率 也 極 楽 也。 然 レば 此 ノ 一 念 に 住 し ぬ れ ば、 身 は 此 ノ 裟 婆 に 有 リ な が ら 早 ヤ 往 生 の 人 也。 仏 也。 然 れ ば 往 生 せ ず し て 往 生 の 人 也。 か か る 道 理 な る 故 死 シ て 実 に 往 生 し た る 時 に 始 て 往 生 し た る に あ ら ず。 不 生 に し て 往 生 し た る 也。 過 去 も 不 生。 現 在 も 不 生。 未 来 も 不 生。 三 世 も 不 生 に し て 往 生 す。 此 ノ 事 疑 ふ べ か ら ず。 か い 取 て 申 さ ば 真 言 一 遍 唱 ふ る 時、 地 獄 餓 鬼 畜 生 修 羅 人 天 声 聞 縁 覚 菩 薩 如 来 天 地 草 木 と 一 度 オ ー ム に 唱 ふ る と 思 ふ べ し。 さ れ ば 掩 と 申 す 時、 法 界 が 動 く な り ﹄ ま た 世 に あ ま り 知 ら れ て い な い が、 周 海 の ﹃。 真 言 教 誠 義 ﹄ 三 巻 ( 仮 名 書 き ) も 当 代 を 代 表 す る 密 教 法 語 と い つ て よ い だ ろ う。 上 中 下 巻 に わ た る 大 部 な も の。 仏 事 の 際 の 禁 酒 を す す め、 ま た ﹃ 世 間 の 名 利 の 僧 は、 剃 髪 の 時 に 十 戒 を 受 ヶ た れ ど も、 專 .酒 を 好 む 不 如 法 の 僧 多 し。 此 は 汗 道 の 沙 門 に し て 真 実 の 釈 の 沙 門 に 非 ざ れ ば、 模 範 と す る こ と な か れ ﹄ と い う よ う に、 そ の 記 述 内 容 は 相 当 に 現 実 的 批 判 的 な も の が み う け ら れ る。 智 山 第 二 十 世 の 浄 空 に、 ﹃。 成 仏 示 心 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き。 宝 暦 十 年 ︹ 一 七 六 〇 ︺ ) が あ る。 こ れ は 阿 字 に つ い て 紀 州 黄 門 公 に 説 い た も の で、 巻 末 に 訓 義 を 附 す。 同 じ く 浄 空 に ﹃ 即 身 成 仏 安 心 決 定 ﹄ 一 巻 ( 高 野 山 光 台 院 蔵 ) が あ る が 同 本 異 題 で あ る。 前 者 は 明 治 十 二 年 三 月、 吉 堀 慈 恭 師 が 改 刻 本 を 出 し て い る。 後 者 は 世 に 知 ら れ て い な い。 三、 江 戸 時 代 の 密 教 仮 名 法 語 ( 二 ) 次 に、 豊 山 の 法 住 の 仮 名 法 語 数 篇 を 挙 げ な け れ ば な ら な い。 か れ は 長 谷 寺 第 二 十 三 世 能 化 職 に つ い た 人 で 著 書 は 有 名 な ﹃ 管 絃 相 承 義 ﹄ を は じ め 数 十 巻 に 及 ぶ。 そ の う ち で も ﹃ 金 七 十 論 疏 ﹄ は イ ー シ ュ ヴ ァ ラ ク リ シ ュ ナ の 複 註 と し て、 今 日 も つ と も 高 く 評 価 さ れ て い る。 ま た ﹃ 十 句 義 論 記 ﹄ な ど を み

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て も、 印 度 哲 学 に 対 す る か れ の な み な み な ら ぬ 学 識 は 驚 歎 す べ き も の が あ る。 こ の 法 住 が 一 方 で 多 数 の 法 語 を 著 わ し、 民 衆 教 育 に 生 涯 を か け て い る 事 実 は、 十 分 注 目 し て よ い と 思 わ れ る。 ﹃。 秘 密 安 心 往 生 法 語 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き ) 奥 書 に ﹁ 寛 政 十 二 年 冷 一 八 〇 〇 ) 庚 甲 閏 四 月 二 十 八 日 根 嶺 安 禅 老 僧 法 住 撰、 学 頭 蓮 花 権 僧 正 法 恕 記 ﹂ と あ る。 法 住 が 入 寂 し た の は 寛 政 十 ご 年 五 月 十 日 で あ る か ら 最 晩 年 の 著 作 で あ る。 ま た、 ﹃。 秘 密 安 心 略 章 ﹄ (仮 名 書 き ) が あ る。 奥 書 に ﹁ 享 和 二 年 ( 一 八 〇 二 ) 壬 戌 秋 七 月 根 嶺 八 十 老 人 艸 一 派 有 信 道 俗 衆 ﹂ ( 写 本 ) と あ る。 明 治 九 年 に 大 崎 行 智 師 が 開 板 し て い る。 本 書 に お け る く だ け た も の い い は、 白 隠 禅 師 慧 鶴 の 諸 法 語 ほ ど に 低 俗 化 さ れ て は い な い が、 や や そ れ に 近 い も の を 感 じ さ せ る。 た と え ば、 次 の 如 く い う。 ﹃ 第 一 四 度 の 加 行 護 摩 灌 頂。 懇 惣 丁 寧 な ら ざ り し を 見 る に、 後 に い ろ い ろ 障 , 有 て、 出 世 多 く は 遂 ヶ が た し。 経 論 と や ら 学 問 と や ら、 道 ヒ ト キ キ ト メ ヤ カ ラ 草 が ち の 出 離 三 界。 入 聞 ば か り の 大 香 象 は、 兎 馬 の 族 も 笑 は れ ん。 キ ン ク ン エ ン チ キ フ ク ク ワ ン ヤ ク 惣 じ で 腹 の 痛 む に は、 金 丹 円 で も 万 金 丹 で も 直 服 丸 薬 教 へ に 任 せ、 コ ハ ウ シ ヨ ツ ツ ミ 夫 で 事 の 足 ル こ と を、 小 し や く な 猿 が 先 キ へ 出 で、 ま ず 方 書 を と 包 繰 騰 消 ユ れ ば 火 う ち か ち か ち 油 が な い は 燈 心 よ と。 狸 読 で も 心 ハ ウ シ ョ は あ と さ き、 隙 ど る う ち に 痛 み は ま し、 方 書 還 て 身 を 終 る 〇 他 の 恥 カ キ ハ ナ よ り も 書 恥 ま さ る。 趾 を 耽 と し 恥 チ 玉 へ ﹄ こ の 口 調 は 明 ら か に 白 隠 ( 一 五 八 五 -一 七 六 八 ) の 法 語 の 影 響 を 受 け て い る。 さ ら に、 右 の 書 を 略 説 し た も の に、 ﹃。 秘 密 安 心 又 略 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き ) が あ る。 一 右 法 住 僧 正 御 著 也 珍 重 珍 重 ﹂ ( 写 本 ) の 書 込 が あ る の み で、 著 作 年 代 は 不 明 .、 法 住 に は ほ か に ﹃ 秘 密 安 心 往 生 法 語 ﹄ 以 前 の 作 と 推 想 さ れ る 仮 名 法 語 が 二 部 伝 え ら れ て い る。 ﹃。 秘 密 念 仏 広 話 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き、 豊 山 蔵 ) ﹃。 秘 密 念 仏 略 話 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き、 同 ) ﹃。 広 話 ﹄ は、 ﹃ 一 切 智 々 の 同 一 鍼 味、 所 謂 如 来 解 脱 味 な れ ば 法 に 是 非 な し。 機 の 勝 劣、 根 の 熟 不 を よ く 知 て、 教 へ 施 し 玉 ふ こ そ、 仏 大 医 王 の 御 使 と は 称 す べ け れ ば、 我 . む か し、 春 日 野 の 里 に 仮 居 せ し 頃、 人 に 誘 は れ て 焼 木 の 能 と や ら ん 物 見 し に、 宗 論 と い う 戯 れ 事 し 侍 る に 法 華 も 浄 土 も 隔 て は あ ら じ と 舞 ヒ納 め つ る こ と、 あ は れ い み じ く も 聞、 兄 侍 り し ﹄ と 結 ん で い る。 法 住 は 無 相 に 即 す る 安 心 を 強 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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-33-密 教 文 化 調 す る。 有 形 ・ 有 限 な る も の に お い て 無 形 ・ 無 限 な る も の の 表 現 を 見 出 す こ と は、 今 日 で は 一 般 に 東 洋 の 宗 教 的 直 観 と し て 受 取 ら れ て い る が、 し か し 法 住 の い う 無 相 の 思 想 的 根 拠 は、 無 論 ﹃ 大 日 経 ﹄ に あ る。 か れ の 職 業 倫 理 観 は 別 稿 で 考 察 し た の で 省 略 す る が、 一 般 に 過 去 の 仏 教 が わ が 国 の 社 会 経 済 思 想 に 及 ぼ し た 影 響 と い う 問 題 は、 重 要 で あ る。 し か し、 R. H. T a w n e y の R e li g io n a n d t h e R i s e o f C a p it a li s m の 如 き 名 著 や M a x W e h e r の 諸 論 文 に 匹 敵 す る 研 究 は、 ま だ 現 わ れ て い な い。 と ま れ、 法 住 の 説 く 社 会 な い し 職 業 の 倫 理 は 確 か に 近 世 社 会 思 想 史 に 一 つ の 課 題 を 提 起 し て い る、 と い え よ う。 前 述 の 曇 寂 の 法 脈 は、 豊 山 の 法 住 に 流 れ こ み、 他 方 で は 寂 厳 と 慈 雲 に 引 つ が れ て い る こ と を 忘 れ え な い。 安 永 元 年 ( 一 七 七 二 ) 正 月 田 沼 意 次 が 老 中 職 に 就 い た。 田 沼 政 治 の 腐 敗 糾 弾 は、 反 面 当 時 の 一 般 庶 民 の 倫 理 的 自 覚 を 物 語 る も の で も あ ろ う。 ま た 安 永 年 闇 に は ﹃ 柳 多 留 ﹄ の 続 刊 を み て い る。 か か る 時 代 的 背 景 の 下 に 慈 雲 は、 仮 名 法 語 を 書 い て 衆 庶 に 十 善 業 道 を 力 説 強 調 し た の で あ つ た。 そ の う ち、 ( 16) ﹃ 十 善 法 語 ﹄ 十 二 巻 ( 安 永 二-三 年 ︹ 一 七 七 三-一 七 七 四 ︺ ) は、 近 世 に お け る 仏 教 仮 名 法 語 の 一 大 雄 篇 で あ る。 こ れ を 略 説 し た も の が、 ﹃。 人 と な る 道 ﹄ ( ﹃ 十 善 略 記 ﹄ ) 一 巻 ( 安 永 元 年 ︹ 一 七 七 二 ︺ ) で あ る。 当 時 す で に、 ﹁ 小 釈 迦 ﹂ と よ ば れ て 衆 庶 に 敬 慕 さ れ た 慈 雲 尊 者 の 法 語 に つ い て は、 今 更 に 贅 言 を 要 し な い。 そ の 文 中 の 行 間 に あ ふ れ る 激 し い 迫 力 は、 全 く 他 の 法 語 に 絶 し て い る と い え よ う。 ﹃ 仏 界 を 知 ラ ん と 思 は ば、 衆 生 界 に 入 リ て 見 よ。 大 道 徹 底 の 処 を 尋 ね ん に は 迷 の 源 底 を 窮 め 看 よ。 唯 知 ら ぬ 者 が 知 一フ ぬ も の ば か り。 解 せ ぬ 者 が 解 せ ぬ ば か り ぞ ﹄ ( ﹃ 十 善 法 語 ﹄ ) ﹃ 此 衆 生 あ る 処 と し て 法 性 な ら ぬ は な く、 此 国 土 あ る 処 と し て 法 性 な ら ぬ は な し。 法 々 自 爾、 心 念 を 絶 す。 思 惟 せ ば 禅 定 相 応 じ や ﹄ ( 前 掲 書 ) ち よ う ど 当 時、 蘭 学 者 に し て 画 家 の 司 馬 江 漢 が ﹃ 春 波 楼 筆 記 ﹄ を 著 わ し、 洋 学 こ と に 自 然 科 学 的 立 場 か ら 人 類 平 等 の 思 想 を 説 い て い る。 慈 雲 は そ れ と は 思 想 系 譜 を 異 に す る が、 同 じ 様 な 考 え を 大 胆 卒 直 に 表 明 し て い る。 そ の 一 例 と も な る こ と ば に、 次 の 如 き も の が あ る。 か れ 慈 雲 は、 い わ ば 永 遠 の 視 点 に 立 つ て も の を い つ て い る。

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﹃ お な じ 世 に い で て、 お な じ 国 土 に 生 ず。 四 海 み な 兄 弟 な り と い う も 虚 忌.口 に は あ ら ず、 縁 来 て 会 遇 す。 縁 去 て 離 散 す。 順 縁 に 相 し た し み 違 縁 に 相 そ む く。 世 相 か く の 如 し ﹄ ( ﹃ 為 人 の 道 ﹄ ) ﹃ 今 此 三 界 皆 是 我 有 其 中 衆 生、 悉 ク 是 レ 吾 子 な る に 其 子 共 が 互 に い さ か ひ せ り あ ひ す る じ や ﹄ ( ﹃ 十 善 法 語 ﹄ ) 因 み に ペ リ ー が 浦 賀 に 来 航 し、 国 の 上 下 を 挙 げ て 尊 皇 穣 夷 論 が 沸 騰 し た の は、 こ れ よ り 実 に 八 十 年 も 後 の こ と で あ る。 な お、 慈 雲 に は、 ﹃ 十 善 戒 相 ﹄ 一 巻 ( 安 永 三 年 ︹ 一 七 七 四 ︺ ) ﹃ 蔓 龍 大 和 上 垂 示 ﹄ 二 巻 ( 寛 政 五 十 一 年 間 に 説 示 ) が あ る。 ま た、 ﹃。 真 言 宗 安 心 ﹄ 一 巻 ( 写 本 ) は 短 篇 で は あ る が、 あ る 意 味 で 尊 者 の 密 教 擬 の 真 髄 に 触 れ う る も の と い え よ う。 慈 雲 は ﹃ 梵 学 津 梁 ﹄ 一 千 巻 と い う 前 人 未 踏 の 学 業 を 完 成 し、 ナ ン ス ク リ ッ ト の 近 代 的 研 究 の 端 を 開 い た。 の み な ら ず あ ら ゆ る 方 面 で 超 人 的 な 宗 教 活 動 を 続 け た の で あ る が、 と く に 民 衆 密 教 運 動 の 方 面 で、 高 足 に 天 盧 懐 円 が 出 現 し た こ と は、 わ れ わ れ の 感 謝 し な く て は な ら な い こ と で あ る。 そ れ は 蓮 体 が 浄 厳 の 宗 教 活 動 を 一 段 と 光 彩 あ ら し め て い る の に、 事 情 が よ く 似 て い る。 わ れ わ れ は、 近 代 的 批 判 精 神 の 持 主 で も あ つ た 懐 円 の 存 在 を み の が し え な い。 そ の 著 作 の 大 部 分 は 未 刊 で あ る が、 ( 17) ﹃。 真 言 安 心 小 鏡 ﹄ 四 巻 ( 仮 名 書 き ) は 幾 回 か 版 を 重 ね て い る。 こ の 書 は 正 宗 上 中 下 巻 ( 春 )、 初 訓 上 中 下 巻 ( 夏 )、 或 問 十 五 ケ 条 ( 秋 )、 禅 要 四 ケ 条 ( 冬 ) よ り 成 る。 寛 政 乙 夘 ( 一 七 九 五 ) 五 月 阿 国 宮 島 山 蔵 版。 文 化 辛 未 ( 一 八 一 一 ) 三 月 再 び 開 板。 な お 春 巻 は 寛 政 八 年 ( 一 七 九 山ハ ) に 開 板、 ム 土 帽 闘 巻 を ゴ人 保 十 一 一加 十 ( 一 八 四 一 ) に 開 板。 正 宗 之 巻 に は 坂 東 豊 岡 居 士 が 本 書 成 立 の 因 由 を 記 る し た 序 を 付 す。 懐 円 は 終 生、 郷 里 の 阿 波 宮 島 を 離 れ な か つ た の で、 一 般 に 知 ら れ ず、 ま さ に 理 れ た 民 衆 密 教 者 と な つ て い る。 し か し 在 家 信 者 は、 か れ を 天 慮 長 老 と よ び、 尊 崇 を 一 身 に あ つ め て い た ら し い。 懐 円 の 学 問 に 対 す る 根 本 的 批 判、 学 問 観、 哲 理 批 判、 他 宗 尊 重 の 念、 仏 教 信 仰 の 自 由 の 問 題、 封 建 道 徳 へ の 厳 し い 反 省 な ど は 他 で 述 べ て お い た の で 省 略 す る が、 か れ の 若 干 の こ と ば に 触 れ て お き た い。 懐 円 は つ ね の 修 行 こ そ 大 切 で あ る と し て、 ﹃ 必 ズ し も 山 を 買 ふ て 隠 遁 し、 縄 床 に 僑 て 阿 字 に 対 す る を の み 修 行 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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-35-密 教 文 化 と せ ん や。 修 行 は 唯 行 住 坐 臥 の 心 が け に あ れ ば、 閑 暇 な る 時 は 閑 暇 な る 様 に 修 行 し、 繁 多 な る 時 は 繁 多 な る 様 に 修 行 す べ き の み ﹄ と 説 ぎ、 密 教 の 堂 奥 に 参 入 し た ひ と が ﹁ 阿 字 に ま か せ る ﹂ の と、 ま だ さ と り え な い ひ と が ﹁ 阿 字 に す が る ﹂ の と で は、 安 心 に 相 違 が あ る こ と を 指 摘 す る。 ま た か れ は 諸 思 想 の 差 別 に 執 わ れ、 宗 教 に お け る 教 理 的 優 越 性 を 誇 る こ と は、 実 践 の 領 域 に お い て は、 愚 に も つ か ぬ こ と だ、 と ぎ め つ け て い る。 ﹃ 山 海 上 人 は 阿 字 観 の 達 悟 の 阿 閣 梨 な り。 自 証 の 境 界 を 詠 じ 給 ふ 歌 に、 楽 々 と 思 へ ば も と の 物 を た だ、 し ば し 仏 に た ぶ ら か さ れ て。 修 タ ブ ラ カ キ リ 行 地 は 随 分 凝 漢 に な つ て 仏 に 証 さ る べ し。 証 さ れ 切 た る 時、 船 然 ヤ ツ コ と し て 自 己 の 心 月 法 界 を 照 し て、 釈 迦 弥 勒 も 他 の 奴 と な る な り。 必 カ ン コ ダ テ ホ コ リ ホ ン マ ノ ラ ら ず 賢 達 を し て 思 案 分 別 を 雑 ゆ べ か ら ず。 真 言 の 表 徳 誇、 本 有 惰。 ノ ラ ノ ラ 禅 宗 の 見 性 誇 り 本 分 惰。 念 仏 宗 の 本 願 誇 り 他 力 惰 等。 諸 宗 皆 此 . 地 獄 あ り。 恐 れ 慎 ま ず ん ば、 あ る べ か ら ず ﹄ こ れ に よ る と、 確 か に 宗 派 を 超 越 し 仏 教 そ の も の を 突 破 し て い る の で あ る。 か れ が 二 根 安 心 説 を と る と い う の は 宗 学 上 の 事 柄 で あ つ て、 師 の 慈 雲 の 厳 し い 実 践 主 義 が 生 々 と 波 打 つ て 再 現 さ れ て い る こ と を 忘 れ る こ と が 出 来 な い。 ま た、 懐 円 は あ ら ゆ る 宗 教 問 題 の 中 核 を 突 い て、 次 の 如 く の べ て い る。 ﹃ さ れ ば ま た 密 観 修 行 の 眼 目 は 唯 阿 字 の 活 キ 物 を 徹 見 す る に あ り。 此 ノ活 キ 物 を 徹 見 し て 本 不 生 際 を 見 る を 実 の 如 く 自 心 を 知 る と 云 ふ。 此 ノ活、 丁物 を 徹 見 せ ざ る 内 は 設 ひ 顕 密 禅、 八 宗 九 宗 の 旨 を 究 め 乃 至 神 ( 子 ) ク ラ ゲ 道 儒 道、 諸 史 百 家 の 言 を 尽 す と も 徒 に 是 . 生 死 海 中、 海 月 の 水 遊 ヒ の み。 宗 門 の 円 頗 方 抱 た ら ん 者、 得 不 得 は 二 段 の 事、 先 ツ 志 し を 立 テ て 阿 字 を 観 習 し、 心 性 を 練 リ 磨 ヵ ず ん ば あ る べ か ら ず ﹄ 行 法 に お け る 無 相 と 有 相 は 阿 字 観 に つ い て も い え る の で あ る が、 次 の こ と ば は 密 教 と い う だ け で な し に、 阿 字 に 托 し て 深 く 宗 教 の 極 意 を 余 纏 な く 示 し て い る も の で あ る と い わ な け れ ば な ら な い。 ﹃ 又 夫 レ 阿 字 に 広 略 の 観 行 あ り。 十 方 世 界 の 天 地 万 物、 有 情 非 情、 皆 是 れ 阿 字 な り と 観 じ て、 月 を 見 れ ば 月 ば か り に な り、 花 を 見 れ ば 花 ば か り な り、 鳥 の 声 を 聞 ヶ ば 鳥 の こ え ば か り。 風 の 音 を 聞 ヶ ば 風 の 音 ば か り。 筆 を 執 れ ば 筆 ば か り。 箒 を 持 て ば 箒 ば か り。 森 羅 万 象 耳 口 の 触 ル る と こ ろ 唯 其 物 ば か り に な り て 余 念 な き 様 に 修 行 す る。 こ れ を 広 観 と 謂 ふ。 又 座 す る 時 臥 ス と き、 道 行 ク、 時、 茶 を 喫 み 飯 を 喫 フ 時、 喜 ぶ 時 も 怒 る 時 も 衰 し む 時 も 楽 し む 時 も、 只 一 箇 の 阿 字 を 挙 げ て 念 底 し、 一 切 時 中 に こ れ を 取 り 放 た ざ る 様 に 修 行 す る。 こ れ を 略 観 と い ふ。 さ れ ば 顯 沸 に も 造 次 に も 是 の 如 く 心 を 用 ひ て 一 箇 の 阿 字 を 使 ひ 得 る 時 は 万 境 に 於 て 自 由 自 在 な り。 是 レ を 解 脱 と 謂 ふ ﹄

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﹃。 禅 要 余 稿 之 余 ﹄ ( 仮 名 書 ぎ ) こ れ は 明 治 四 十 一 年 に 服 部 鍍 海 師 が 開 版 し て い る。 本 書 で は 主 に 学 問 に 対 す る 根 本 批 判 を お こ な つ て い る。 そ し て 自 作 の 次 の 如 き 頗 を 掲 げ て い る。 勧 学 ノ 頒 二日。 ク 勧 学 二有 ニ リ 其 ノ 道 一。 学 道 及ヒ 学 文 ナ リ。 観 レ スル ハ 心 ヲ 是 レ 学 道。 読 レム ハ 書 ヲ 是 レ 学 文 ナ リ。 知 レ ル ハ本 ヲ 在 ニ リ 学 道 一 二。 知 レ ル ハ末 ヲ 在 ニ リ 学 文 二 一。 弦 二先 ゾ 勧 二 仏 学 道 一ヲ。 本 ト 立 テ 当 ニ ニ学 文 一。 又 観 心 ノ 要 訓 二 日 ク 寅 二 起 キ 亥 二 坐 シ。 観 心ス ル ハ 自 証 ナ リ。 共 レ ニ 日 ト 化 レ シ 他 ヲ。 呼 吸 二 続 修セ コ。 懐 円 に し て こ そ、 い い う る こ と ば で あ ろ う。 か れ は 恐 ら く 心 学 及 び 自 隠 の 禅 の 影 響 も 受 け て い る よ う で あ る。 ﹃ 安 心 雑 記 ﹄ ﹃ 古 徳 法 訓 ﹄ ﹃ 安 心 小 鏡 ﹄ な ど は、 本 書 以 前 の 述 作 で あ る が、 前 二 著 は ま だ 世 に 現 わ れ て い な い。 慈 雲 の 高 弟、 雲 照 律 師 の 仮 名 法 語 は 明 治 に 入 る の で 略 す。 高 野 山 三 宝 院 に ( 18) ﹃ 消 息 ﹄ ( 無 題 ) ( 仮 名 書 き ) が あ る。 文 化 二 年 十 月 写。 一 四 葉 と 一 九 葉 よ り 成 る 粘 帖。 現 観 (一 理 智 門 ) と い う 人 が 紀 州 和 歌 山 城 主 松 平 中 納 言 の 家 来 三 浦 長 門 守 の 姉 に あ た る 妙 周 尼 宛 に 消 息 文 の か た ち で し た た め た も の で、 密 教 の 要 諦 を 平 明 に 説 き つ く し て い る。 写 本 で 伝 わ り 未 出 版 で あ る。 慈 雲 は 文 化 元 年 ( 一 八 〇 四 ) 十 二 月 二 十 二 日 八 十 七 才 で 入 寂 し て い る が、 そ の 後 は 一、 二 の 密 教 仮 名 法 語 が 現 わ れ た に と、 ど ま る。 ﹃。 光 明 真 言 袖 鑑 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き ) こ れ は 密 厳 が 天 保 九 年 ( 一 八 一 二 ) 九 月 に 書 い た も の で あ る。 ﹃。 機 教 相 応 門 安 心 消 息 ﹄ 一 巻 ( 仮 名 書 き、 写 本 ) ﹃。 教 益 甚 深 門 安 心 消 息 ﹄ 一 巻 ( 同、 写 本 ) と も に 高 野 出 宜 然 の 著 作 で あ る が、 著 者 の 伝 記 の 詳 細 は 不 明。 文 政 へ 一 八 一 八-一 八 三 四 ) の 頃 の 人 で あ る。 宜 然 は 封 建 的 身 分 制 度 に 反 対 し、 人 間 平 等 の 理 想 を 説 い て い る。 ﹃ 一 切 衆 生 は 仏 性 常 住 の 体 に し て、 同 一 解 脱 の 床 に 住 す れ ば、 高 下 尊 卑 の 差 別 あ る こ と な き も の に 候。 然 る を 衆 生 念 念 に 高 下 尊 卑 の 相 に 依 て、 怨 親 隔 歴 の 執 を 結 び、 常 に 生 死 造 作 の 業 を 作 し 候 ﹂ ( ﹁機 教 相 応 門 安 心 消 息 ﹄ ) 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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-37-密 教 文 化 か か る 法 語 が い か な る 歴 史 的 事 情 の 下 に 説 か れ た も の で あ る か は、 凡 そ 想 像 出 来 る こ と で あ る。 そ れ は 現 実 的 に 果 し て ど れ だ け の 力 と な り え た か は、 と も か く の こ と、 封 建 体 制 の 末 期 社 会 に お い て 明 示 さ れ た 伝 統 的 な 大 乗 仏 教 思 想 と し て、 と く に 注 目 す べ き 意 義 を も つ と 思 う。 こ れ に つ い て、 客 観 的 社 会 状 況 は 全 く 異 ハな る が、 マ ハ ト マ ・ ガ ー ン デ ィ ー が 不 可 触 制 度 排 除 に 関 し て の べ た 次 の 類 句 が あ る。 ﹃ そ も そ も 人 間 は 唯 一 聖 火 の 火 花 で あ る か ら、 ど ん な 人 で も 不 可 触 ( 19 ) で は な い ﹄ ﹃ 他 よ り 優 位 で あ り、 或 い は 下 位 で あ る と 思 う 限 り、 平 等 は あ り え (20 ) な い ﹄ 宜 然 以 後、 幕 末 に 至 る 三 十 年 間 に は 密 教 仮 名 法 語 は 何 も な い。 四、 補 説、 密 教 仮 名 法 語 述 作 の 意 義 次 に、 上 述 の 補 足 と し て 若 干 つ け 加 え て お ぎ た い 〇 こ れ は 広 い 意 味 で 法 語 す な わ ち 民 衆 教 育 の 資 料 と な る 部 類 に 含 め て よ い も の で あ る が、 覚 鍍 の ﹃ 伊 呂 波 並 略 釈 ﹄ 一 冊 ( 写 本、 光 台 院 蔵 ) に 関 す る 著 述、 出 版 が 江 戸 時 代 に し ば し ば お こ な わ れ て い る こ と で あ る。 た と え ば 次 の も の が あ る。 重 誉 作、 良 鍍 撰 出 ﹃ イ ロ ハ 天 理 紗 ﹄ ( 延 宝 六 戌 午 天 夷 則、 和 大、 二 冊 上 下 二 巻 ) ﹃ 科 伊 呂 波 略 紗 ﹄ ( 和 大、 一 冊、 元 禄 三 年 刊、 持 明 院 蔵 ) ﹃ 伊 呂 波 歌 伝 ﹄ ( 仮 綴 大、 一 冊、 文 化 九 壬 申 年 義 湛 写、 光 台 院 蔵 ) 高 野 山 に は こ の 種 の 民 衆 教 化 に 関 す る 著 作、 写 本、 出 版 物 が も つ と 残 さ れ て い て よ い は ず で あ る。 そ し て 精 査 す れ ば、 こ の ほ か に も ま だ ま だ 発 見 の 可 能 性 が あ る。 な か に は 度 々 の ( 21) 山 上 の 災 厄 で 鳥 有 に 帰 し た も の も 少 な く な い だ ろ う が。 江 戸 中 期 の 法 語 類 は ほ と ん ど 全 部 邦 文 で あ る か ら、 月 海 ( 寛 延 三 年 寂 ) の ﹃。 都 率 往 生 問 答 訣 ﹄ 一 巻 及 び 高 野 山 の 龍 海 の ﹃。 密 宗 安 心 頒 ﹄ 一 巻 ( 天 明 八 年 等 空 の 嘱 を 受 け て 丹 後 松 尾 寺 を 薫 す る 以 前 の 作 ) の 如 ぎ 漢 文 法 語 は、 む し ろ 当 時 と し て は 異 例 に 属 す る と い つ て よ い で あ ろ う。

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い ず れ に し て も、 近 世 に お け る 密 教 仮 名 法 語 の 著 述 活 動 に は、 一 つ の う ね り が あ つ た こ と が 分 る。 年 代 的 に い う と、 貞 享 よ り 享 和 末 年 ま で の 約 百 二 十 年 間 す な わ ち 江 戸 中 期、 人 物 本 位 で い う と、 浄 厳 よ り 慈 雲 ま で、 あ ざ や か に 一 線 を 引 く こ と が 出 来 る。 そ し て 慈 雲 の 入 寂 を も つ て 一 応 こ の 種 の 宗 教 活 、 動 が 終 焉 を 告 げ た か た ち に な つ て い る の は、 近 世 密 教 史 を 甚 だ 象 徴 的 に 語 つ て い る よ う で あ る。 明 治 に 入 つ て 慈 雲 の 正 法 律 が 雲 照 に よ つ て 復 興 せ ら れ、 一 方 カ ナ 法 語 も 追 々 著 わ さ れ る よ う に な る が、 明 治 十 年 代 に は ま だ 江 戸 時、 代 の 法 語 出 版 が な さ れ て い る。 そ れ は 前 述 の 江 戸 初 期 の 状 態 に 酷 似 し て い る。 し か し、 や が て 近 代 と い う 時 代 的 背 景 と 社 会 的 基 盤、 と く に 封 建 的 政 治 機 構 が 崩 壊 し 近 代 資 本 導 入 下 の わ が 国 に お い て、 密 教 が 果 し た 民 衆 教 化 活 動 が、 社 会 に 対 し て い か な る 意 義 を 有 し、 い か な る 作 用 を 及 ぼ し た か は、 改 め て 問 わ れ な け れ ば な ら な い で あ ろ う。 以 上、 密 教 仮 名 法 語 の 系 譜 を ひ と わ た り 辿 つ て み て 感 じ る こ と は、 ま ず そ こ に 時 代 相 が あ ざ や か に 映 し 出 さ れ て い る と い う こ と で あ る。 聖 職 者 と 在 俗 信 者 と の 入 格 的 接 触 に お け る 信 仰 伝 達 の 具 と し て 形 成 さ れ た こ の 種 の 思 想 書 は、 そ れ だ け に 歴 史 の 流 れ と 社 会 の 激 し い 動 き に 敏 感 に 左 右 さ れ 易 か つ た た め で も あ ろ う。 こ の 点、 教 団 内 部 に あ つ て 外 部 社 会 と の 交 渉 を ほ と ん ど も た ず、 た だ 反 覆 的 に お こ な わ れ て き た 保 守 的 伝 統 的 な 宗 ・ 余 乗 の 研 鐙 が、 時 代 に 影 響 さ れ る と こ ろ が 比 較 的 少 な か つ た の に 較 べ て、 著 し い 相 違 で あ る。 ま た 鎌 倉 期 の 密 教 仮 名 法 語 は 江 戸 中 期 に 復 活 し た が、 そ の 法 語 著 者 達 の 多 く が 著 述 の 中 で 必 ら ず と い つ て い い ほ ど、 覚 鍍 と 道 範 に 言 及 し て い る。 し た が つ て、 江 戸 時 代 の 仮 名 法 語 が 秘 密 念 仏 思 想 を 源 流 と し て い る こ と が、 い よ い よ 明 ら か で あ る。 な お、 西 国 三 十 三 カ 所 の 詠 歌 ・ 和 讃 に 関 す る も の な ど は、 中 村 元 博 士 の 資 料 整 理 と 紹 介 が あ る の で、 す べ て 省 略 さ せ て い た だ く ( ﹃ 東 方 の 言 葉 ﹄ 一 六 四-一 六 五 頁 参 照 )。 ま た、 ﹁ 弘 法 大 師 伝 ﹂ は 江 戸 時 代 以 前 に、 す で に 百 種 に 達 す る も の が 編 ( 22) 述 さ れ て い る、 と い う。 こ れ ら の も の も、 真 言 宗 に お け る 民 衆 教 化 ・ 教 育 の 活 動 を 示 す 大 き な 文 化 的 所 産 で あ る こ と は、 改 め て い う ま で も な い。 ( 未 完 ) 1、 臨 終 に お け る 行 者 用 心 に 関 す る も の で、 な お 管 見 に 触 れ た も の に、 次 の も の が あ る。 ﹃ 菩 提 院 流 臨 終 大 事﹄(写 本、 折 本、 高 野 山 真 別 処 蔵 ) 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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-39-密 教 文 化 ﹃ 青 龍 阿 閣 梨 臨 終 観 行﹄(粘 帖 小、 写 本 延 宝 三 年 宗 撮 写、 真 別 処 蔵 ) 2、 高 野 山 宝 城 院 に 慶 長 十 一 年 越 州 宗 賢 写 の 古 写 本 を 存 す。 な お、 正 保 二 年、 貞 享 三 年 (京 都 )、 明 治 四 十 年 に そ れ ぞ れ 開 板。 真 安 全 書 所 収。 3、 古 写 本 の 由 来 に つ い て は、 真 安 全 書 参 照。 高 野 山 三 宝 院 に 写 本 一 帖 ( 仮、 小 ) を 存 す る。 4、 京 都 東 寺 の 宝 菩 提 院 に 文 和 五 年 の 古 写 本 を 存 す る。 5、 三 宝 院 所 蔵。 明 暦 二 年 初 冬 吉 日 中 野 氏 小 左 衛 門 開 板。 た だ し、 下 巻 の み し か 現 存 し な い。 そ の 目 録 は 次 の よ う で あ る。 一、 浄 土 受 生 四 生 所 摂 歎 事。 二、 西 方 極 楽 楽 唯 無 苦 事。 三、 西 方 極 楽 通 浄 機 二 土 欺 事。 四、 小 乗 人 往 生 浄 土 事。 五、 誹 誘 大 乗 人 往 生 勲 事。 六、 往 生 極 楽 後 修 念 仏 三 昧 事。 七、 若 観 彼 仏 指 上 阿 弥 陀 事。 6、 嘉 永 三 年 六 月 開 板 某。 高 野 山 光 台 院 及 び 同 金 剛 三 昧 院 蔵。 7、 瑞 瞳 が 文 政 四 年 五 月 開 板。 高 野 山 宝 城 院 蔵。 刊 本 二 冊 (和、 大 ) 上 下。 8、 安 政 六 年 瑞 泉 院 心 雄 写。 高 野 山 三 宝 院 蔵。 9、 高 野 山 宝 城 院 蔵。 10、 高 野 山 三 宝 院 に 天 正 二 十 年 の 古 写 本 を 存 す。 享 保 四 年 乙 亥 年 大 阪 刊。 な お、 高 野 山 光 台 院 に 正 保 乙 酉 年 ( 仮、 中 ) の 刊 本 を 存 す る。 11、 和 大、 各 上、 下 二 冊、 高 野 山 持 明 院 及 び 同 真 別 処 蔵。 な お、 こ の 時 代 の も の に、 ﹃ 境 心 房 玉 印 此 土 説 法 ﹄ 寛 永 廿 一 年 無 神 月 七 日 写、 仮 綴、 三 宝 院 蔵。 ﹃ 向 鏡 浮 像 刊 文 ﹄ 寛 永 二 年 写、 仮 大、 一 冊 三 宝 院 蔵 が あ る。 12、 宮 本 正 清 訳 ﹃ ラ ー マ ク リ シ ュ ナ の 生 涯 ﹄ 一 二 九 頁 参 照。 前 掲 訳 は 本 書 に よ る。 13、 和 大、 五 冊 ( 現 存 四 冊、 第 五 冊 目 欠 ) 享 保 十 年 正 月 十 一 日 の 序 を 付 す。 刊 本 は 高 野 山 光 台 院 蔵。 14、 M a h a y a n a -s u tr a la m k a ra e d it e p a r S y lv a in L ev i. p a r is 1 90 7 p. 3 6. 15、 ﹃ 智 山 学 匠 著 書 目 録 ﹄ 参 照。 16、 版 本 の 種 類 に つ い て は 中 村 元 博 士 の ﹃ 東 方 の こ と ば ﹄ 参 照。 な お、 明 治 廿 八 年 二 月 に 法 蔵 館 が 初 版 本 を 出 し て い る。 17、 高 野 山 に 現 存 の 刊 本 に、 次 の も の が あ る。 ﹃安 心 小 鏡 或 問 ﹄ 一 帖 光 台 院 蔵。 ﹃ 安 心 小 鏡 或 問 ﹄ ﹃ 同 初 訓 ﹄ ﹃ 同 正 宗 ﹄ 各 一 冊、 金 剛 三 昧 院 蔵。 18、 延 宝 三 乙 夘 年 六 月 十 九 日 増 栄 四 十 一 才。 文 化 二 乙 丑 歳 十 月 於 但

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州 朝 来 郡 御 真 筆 拝 写 之 沙 門 恵 雲 の 奥 書 が あ る。 本 書 は 写 本 の ま ま で 未 刊。 19、 ﹃ ガ ー ン デ ィ ー 聖 書 ﹄ (岩 波 文 庫 ) 四 三 頁。 20、 前 掲 書 八 八 頁。 21。 以 上、 拙 稿 で 指 摘 し た 法 語 の 表 題 冠 頭 に 〇印 を 付 し た も の は、 長 谷 宝 秀 師 の ﹃ 真 言 宗 安 心 全 書 ﹄ 所 収 の も の で あ る。 本 全 集 に は ま だ 多 く の 法 語 類 が 洩 れ て い る こ と は 上 述 し た 通 り で あ る が、 都 率 往 生 思 想 に 関 す る 二、 三 の 重 要 な 写 本 な ど が、 真 別 処 に 存 す る の で、 左 に 一 括 し て 掲 げ て お く。 ﹃ 弥 勒 菩 薩 偶 顛 玄 意﹄和 中、 一 冊、 享 保 六 年 写。 逸 山 編 ﹃ 兜 率 上 生 縁 ﹄ 和 中、 一 冊、 写 本。 儒 胤 ﹃ 歓 兜 率 記 ﹄ 仮、 中、 写 本 一 冊、 寛 永 三 年 写。 最 後 の も の は、 天 台 系 の も の で、 写 本 に せ よ、 こ れ が 真 別 処 に あ る の は 珍 し い。 光 台 院 に は ﹃ 即 心 念 仏 談 義 ﹄ (仮 名 書 き、 享 保 十 三 戌 申 年 六 月 刊 京 都 ) の よ う な 天 台 念 仏 の 刊 本 が あ る。 高 野 山 に 入 つ て き た 天 台 念 仏 の 法 語 に つ い て は 他 日 筆 を 改 め た い。 22、 五 来 重 博 士 ぼ、 弘 法 大 師 伝 説 の 精 ,神 史 的 意 義 ﹄ ( ﹁ 密 教 研 究 ﹂ 第 七 十 八 号 一 六 頁 ) (付 記 ) 覚 鐵 に つ い て は 富 田 ﹃ 興 教 大 師 全 集 ﹄ 上、 下 二 巻、 慈 雲 に つ い て は ﹃ 慈 雲 尊 者 全 集 ﹄ ﹃ 同 補 遺 ﹄ ( 全 十 九 巻 )、 主 要 な 密 教 法 語 は 長 谷 ﹃ 真 安 全 書 ﹄ 上、 下 二 巻 参 照。 全 書 に 洩 れ て い る 法 語 も 多 い の で、 懐 円 の 遺 稿 を 含 め て、 将 来 何 人 か 識 者 が 世 に 出 さ れ る こ と を 心 か ら 念 願 し て や ま な い も の で あ る。 終 り に、 密 教 カ ナ 法 語 の 中 で、 最 も 重 要 で 著 作 年 代 も 比 較 的 明 確 に 分 つ て い る も の を 年 表 に し て 示 し て み よ う。 鎌 倉 期 の 法 語 は と く に 他 宗 派 と の 連 関 を 顧 慮 し て、 主 要 事 項 を 参 考 ま で に 挿 入 し て み た。 西 紀 ︹ 項 目 中、 傍 点 を 付 し た も の は、 和 文 の 密 教 法 語 を 示 す ︺ 一 一 二 四 良 忍 の 融 通 念 仏 宗。 一 一 三 四 ﹃ 病 中 修 行 記 ﹄ 一 一 三 六 覚 鍍、 離 山、 一 一 六 八 重 源、 栄 西 帰 朝。 一 一 七 五 浄 土 宗 成 立。 一 一 九 一 臨 済 宗 成 立。 一 一 九 二 鎌 倉 幕 府 成 立。 一 一 二 七 頃 ﹃ 南 勝 坊 法 語 ﹄ 一 二 二 二 道 範 ﹃ 秘 密 宗 念 仏 紗 ﹄ に お い て 覚 鍍、 実 範 ら を 援 引 す。 一 二 二 四 頃 親 鶯 ﹃ 教 行 信 証 ﹄ の 執 筆 開 始。 一 二 二 四 六 月 明 遍 入 寂、 八 十 三 才 o 密 教 仮 名 法 語 の 資 料

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-41-密 教 文 化 一 二 二 七 道 元 宋 よ り 帰 朝 ( 曹 洞 宗 )。 一 二 二 八 ﹃ 土 砂 勧 信 別 記 ﹄ 一 二 二 九 ﹃ 都 率 西 方 往 生 難 易 法 談 ﹄ 一 二 三 三 道 範 ﹃ 臨 終 用 心 事 ﹄ 一 二 五 一 京 都 に お い て、 日 蓮、 覚 鑛 著 ﹃ 五 輪 九 字 秘 釈 ﹄ を 筆 写。 一 二 七 二 ﹃ 迷 悟 抄 ﹄ 一 二 七 六 一 遍、 踊 り 念 仏 を は じ め る。 一 二 八 〇 頃 叡 尊 ( 興 正 菩 薩 ) ﹃ 光 明 真 言 和 讃﹄﹃ 真 言 安 心 和 讃 ﹄ 一 二 八 〇 頃 ﹃ 仏 法 夢 物 語 ﹄ ﹃夢 知 識 物 語 ﹄ 二 一二 二 頃 ﹃ 密 教 修 行 念 説 作 法 ﹄ 一 三 四 五 ﹃ 真 言 内 証 義 ﹄ 一 六 一 九 鈴 木 正 三 ﹃ 盲 安 杖 ﹄ 一 六 三 九 鎖 国 令。 一 六 八 一 宇 治 黄 漿 版、 一 切 経。 一 六 八 六 ﹃ 光 明 真 言 観 論 要 門 ﹄ 一 六 八 八 ﹃ 真 言 開 庫 集 ﹄ 一 七 〇 二 六 月 廿 七 日、 浄 厳 入 寂、 六 十 四 才。 一 九 一 三 ﹃ 真 言 安 心 勧 善 義 ﹄ 一 七 一 七 ﹃ 発 心 不 退 章 ﹄ 一 七 一 九 ﹃ 秘 密 安 心 往 生 要 集 ﹄ 一 七 二 一 ﹃ 光 明 真 言 金 壺 集 ﹄ 一 七 二 五 ﹃ 続 鉱 石 集 ﹄ 一 七 三 〇 ﹁ 超 海 通 性 ﹃ 瑞 応 塵 露 集 ﹄ 一 七 四 二 二 月、 曇 寂 入 寂。 一 七 四 四 慈 雲、 正 法 律 を 創 唱 す る。 一 七 六 〇 ﹃ 成 仏 示 心 ﹄ 一 七 七 二 ﹃ 人 と な る 道 ﹄ こ の 頃、 慈 雲 ﹃ 真 言 宗 安 心 ﹄ を 作 る。 一 七 七 四 ﹃ 十 善 法 語 ﹄ ﹁ 十 善 戒 相 ﹄ 一 七 八 〇-九 〇 頃 ﹃対 賓 法 語 ﹄ ﹃ 真 言 教 誠 義 ﹄ 一 七 九 五 頃 ﹃ 災 龍 大 和 上 垂 示 ﹄ ﹃ 秘 密 念 仏 広 話 ﹄ ﹃ 同 署 話 ﹄ 霜 一 七 九 五 ﹃ 真 言 安 心 小 鏡 ﹄ 一 七 八 〇 頃 ﹃ 禅 要 余 稿 之 余 ﹄ 一 七 八 〇 ﹃ 秘 密 安 心 往 生 法 語 ﹄ ﹁ 秘 密 安 心 署 章 ﹄ ﹁ 秘 密 安 心 又 暑 ﹄ 五 月 十 日 法 住 入 寂、 七 十 八 才。 一 八 〇 四 十 二 月 十 二 日 慈 雲 入 寂、 八 十 七 才。 一 八 一 二 ﹃ 光 明 真 言 袖 鑑 ﹄ 一 八 一 六-二 〇 頃 ﹃ 機 教 相 応 門 安 心 消 息 ﹄ ﹃ 教 益 甚 深 門 安 心 消 息 ﹄ 一 八 二 五 十 二 月 十 九 日、 天 盧 懐 円 入 寂、 八 十 才。 一 八 六 七 王 政 復 古。 ( 昭 和 三 十 二 年 二 月 稿 ) ( 昭 和 三 十 三 年 三 月 十 六 日 治 稿 )

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