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男子大学生の料理教室参加が食生活習慣に及ぼす影響

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(1)

1. はじめに

近年、先進国の多くが過剰栄養とそれに誘発さ れる生活習慣病という新たな健康問題と向き合っ ている。日本でも食の欧米化と、生活が便利にな り日常の運動量が少なくなったことから、生活習 慣病の増加とその低年齢化が急速に進んでおり、

医療費の増大による財政負担の問題が深刻化して いる1)。このような背景から、日本でも国レベル で食教育や運動の機会の提供などの取り組みが行 われはじめた。2005 年7月に食育基本法が施行 されたことを一つの契機として、食育に関する社 会的な関心がさらに高まった。これまでの食育

は、家庭教育の一部として行われていたが、一人 暮らしの増加、女性の社会進出の増加、食の外部 化を受け、家庭内での親から子に伝えるという食 育の機会が減少し、学校をはじめとした外部から のサポートが必要になってきている2)。さらに、

学童期までの食習慣が生涯の食生活を左右するこ とから、学校栄養教諭の配置が進められ、専門知 識を要する教育を学校教育においてサポートする 体制が整えられつつある。しかしながら、依然と して、朝食の欠食率が若い年齢で高く、脂質の摂 取過剰者の割合の増加などが報告がされている

3)。これまでも、家庭科の食物分野において食教 育については取り扱われてきたが、これらの結果

男子大学生の料理教室参加が食生活習慣に及ぼす影響

明神 千穂

・秋山 円香

・本土 未望里

・村井 吾郎

・川西 正子

近畿大学農学部食品栄養学科

Influences on the eating habits of male university students taking  cookery classes

Chiho MYOJIN

, Madoka AKIYAMA

, Midori HONDO

, Goro MURAI

 and Masako KAWANISHI

Synopsis

The purpose of this study is to investigate the influences on the eating habits of male university students taking cookery classes. 

Data was provided by a sample of 20 participants. The male university students were 18-25 years of age, with 8 students living  alone and 12 students living with their parents. 

The following results were obtained: 

1) After taking cookery classes, the amount of cooking for breakfast and dinner slightly increased. 

2)  Seven out of the 16 cooking techniques (peeling by a kitchen knife, chopping, minced slicing, slicing into wedges and filleting a  fish) were improved significantly (p<0.05). 

3) It was shown that the dietary habits and communication with family of the male university students were improved. 

The results of this study suggest that the students who took the cookery class tend not to cook more frequently at home, but  tend to become more interested in food. Cookery classes can improve eating enjoyment and decrease unhealthy bad habits.

Keywords: cookery classes., cooking skill, male university students eating habits, dietary behavior, shokuiku

(2)

から、教えられた知識が実生活に十分活かされて いないように思われる。また、男女等しく食に関 する教育がされるようになったにもかかわらず、

男性の食への無関心は改善されず、健康の維持増 進のための食生活におけるコントロール能力は、

女子に比べて低いと感じられる。これらのことか ら、授業時間に限りのある学校教育の枠の中だけ では、男性の食意識を改革することはかなり難し いと考える。また今の大学生や社会人は、食育基 本法が施行される前に義務教育を終えているた め、「食育」の授業を受けておらず、食の知識や 基本的な調理技術もあまり身につけていないと思 われる。そのことが外食や中食を高頻度に利用す るような食生活の乱れに繋がっていると考える。

そのような中、大学生において調理技術が高いほ ど自炊の頻度が多くなるという報告もあることか ら4)、調理技術を向上させることが、自炊の頻度 を増やし食生活の改善に繋がると期待される。男 性は元々調理が不得意かというとそうではなく、

プロの料理人やパティシエに男性が多いことをみ ても、調理をすることに性差が無いことは明らか である。男性が調理から遠ざかる傾向は、家庭で の幼少期からの食教育や、手伝いなどを通して実 際に調理に携わる機会が少ないことに原因の一端 があると考えられる4)

一方、男性の若年層では「基本的な料理」につ いて知りたいと答える人が多く、食品や栄養およ び調理に対する関心や意識、知識が高いほど、健 康的な食行動が増加する傾向がある5)6)。さらに 調理の学習と実践が、調理技術を向上させ、食に 対する意識の向上を促し、外食や欠食、即席ラー メン類などの加工食品利用の頻度を下げるとの報 告もある7)

近年では父親の家事参加にも注目が集まってお り8)、父親が家事に参加することで子どもや家庭 に良い影響を及ぼすということが報告されてい る9)。調理担当を母親だけに依存することは、

「共食の雰囲気」を悪化させる可能性があり、週 1〜2回という限られた共食の機会であっても、

父親と母親が家庭の食事作りに積極的にかかわる ことによって、食卓で家族の会話を弾ませ、雰囲 気をよくするとのことである。

以上のことにより、男性の調理の学習及び実 践は、自分自身の健康の維持だけではなく、家 庭における育児参加、食育にとって必要である

と考える。

そこで本研究は、男子大学生を対象とした食育 プログラムの作成のための基礎的な情報の入手を 目的とする、男子大学生を対象とした料理教室を 実施し、料理教室の参加が調理技術の習得度や食 生活習慣、食意識にどのように影響するかについ て検討を行った。

2.調査方法

⑴ 対象者と調査方法

18 歳から 25 歳までの近畿大学農学部に在籍す る男子大学生 20 人(自宅生 12 人、下宿生 8 人)

を対象として、平成 21 年7月に構内でポスター 掲示及びリーフレットを配布し、料理教室参加者 を募った。その際、すでに調理学実習の授業を受 講している食品栄養学科の学生は対象外とした。

9月に事前に質問紙による調査(以下、事前調査 という)を行った後、近畿大学の調理学実習室内 で 10 月に週1回計4回の調理実習を行った。最 終の料理教室の直後または 1 週間後に事後の質問 紙調査(以下、事後調査という)を行った。質問 紙調査は、自己記入方式とし、調査対象者につい て充分に説明を行い、すべての対象者から同意を 得たうえで実施した。集計・解析には統計解析ソ フト SPSS for Windows 16.0 を使用し、Pearson のχ2検定、対応のある t 検定を行った。いずれ も有意水準は5% 未満とした。

事前事後共通で質問した内容は、以下の通りで ある。「朝、昼、晩の自宅での料理頻度」、「自炊 に対するイメージ」、「調理技術の内容」、「料理を 担当するのに適任と考える人」、「食生活」、「食意 識」、「生活習慣」などの設問に対して、それぞれ 選択肢を用いて調査した。また、事後アンケート では、さらに「今回の料理教室に関する満足度」、

「料理教室に参加してから、自炊への意欲は高 まったか」、「料理教室参加後、生活や身体で何か 変化したことはあるか」、「男子大学生にとって今 回のような料理教室は必要だと思うか」、「このよ うな料理教室に参加できる機会があればまた参加 したいと思うか」、「食生活に関する情報で欲しい ものはあるか」などについてそれぞれ選択肢を用 いて質問した。これらの質問は久保ら10)の方法 を参考にした。

(3)

⑵ 料理教室

4回の料理教室では、調理実習の前に 10 分程 度の講義を行った。その後師範台で実習のポイン トとなる調理をして見せた後(第4回は師範な し)、各自が自分1人分の材料を切り、仕上げの 操作を班の中で分担して行った。班分けは毎回く じ引きにより決定し、1班につき4人、計5班に 分け、お互いに自己紹介を行った後、実習を開始 した。師範は同一の指導者(男性)とし、各班に 指導員1人(女性)を配置した。表1に4回の料 理教室の献立を示す。食材は予め計量して配分し たものを用い、米の炊飯は主催者側で行ったが、

調味料の計量、器具や食器の準備、後片付けなど の一連の作業はすべて対象者が各自で行った。ま た献立の栄養バランスは食事摂取基準(2005 年 版)に準じ、和食、中華、洋食を取り入れた一汁 二菜を基本とした。さらに今回は、包丁の扱いに 慣れ、「切る」という調理操作の技術を高めるこ とを重要視したため、基本的な包丁技術を身につ けられるよう、包丁をよく使う料理を取り入れ た。調理器具は電子レンジ、オーブントースター

を利用できるように考えて作成した。第1回目は 包丁に慣れてもらうことに重点を置き、食材を刻 む量が多くなるものとした。第2回目は、引き続 き刻む作業を多くし、さらに市販の調味料を使っ て簡単に味付けができるレシピなどを取り入れ た。第3回目は、オーブントースターの利用法と 鰯の手開きが学習できるものとした。第4回目 は、対象者がレシピを見て調理するまでのすべて の流れを自分で考えて行った。実習時には実習内 容を説明したプリント(レシピ)を配布し、確認 してもらいながら実習を進めた。所要時間は1時 間〜1時間半であった。調理した料理は調理した 対象者が試食した。

⑶ 講義内容

講義は、料理教室の調理実習開始前に調理実習 室内で対象者の前に毎回同一の指導者が、食に関 する講義を 10 分程度行った。講義内容は表2に 示す。

表 1 料理教室献立

献立 実習風景

第1回目

・鶏ネギ塩焼き

・大根と水菜サラダ

・豚汁

第2回目

・チンジャオロース

・もやしのピリ辛サラダ

・卵スープ

・杏仁豆腐

第3回目

・いわしのカリカリパン粉焼き

・まろやかトマトソースパスタ

・簡単ミネストローネ

第4回目

・卵と野菜のチーズグリル

・じっくり煮込んだごくうまポトフ

・簡単ガーリックトースト

・マドレーヌ

(4)

表2 料理教室講義内容

第1回 包丁の種類と扱い方、切り方の名称 第2回 出汁の種類と試飲

第3回 レンジ、オーブン調理、冷凍庫の有効利用 第4回 近畿大学学食の定食と料理教室の献立の栄養価の比較

3.結果および考察

⑴ 料理教室参加後の自宅での料理頻度の変化 自宅生および下宿生の料理教室参加前後での

「自宅での料理頻度」を図1に示す。χ2検定の 結果、すべての項目で有意な差はなかった。しか し自宅生においては、「週に1〜2回」が若干増 加した。下宿生は料理教室参加以前から料理をす る頻度が高く、この傾向は料理教室後も変わらな かったが、若干自宅での料理頻度は減少がみられ た。内閣府の調査8)では、週1回以上料理をして いる人の割合は自宅生 39%、自宅外生 88%と なっており、今回の調査でも同様の傾向が得られ た。

0 2 4 6 8 10 12 14

事後 事前 事後 事前

毎日 週5~6 週3~4 週1~2 月1、2 ほとんどしない まったくしない

自宅生 n=12 下宿生 n= 8

宿

  P:   χ22検定

図1 料理教室参加前後の居住形態別料理頻度の比較 次に、料理頻度を「毎日」、「週5〜6回」、「週 3〜4回」と回答したものを『高頻度群』、「週1

〜2回」、「月1〜2回」と回答したものを『中頻 度群』、「ほとんどしない」、「まったくしない」と

回答したものを『低頻度群』と群分けを行い、朝 食、昼食、夕食それぞれの食事形態別による料理 教室参加前後の料理頻度結果を図2に示す。朝 食、夕食においては高頻度群、中頻度群が増加 し、また低頻度群に減少傾向がみられたことか ら、自宅で料理をするようになったと考える。し かし、昼食においてはあまり変化みられなかっ た。久保ら10)の報告では自宅で料理を作る人は 調理実習前後で増加していたが、本研究において

0 20 40 60 80 100

事後 事前

朝食時

0 20 40 60 80 100

事後 事前

夕食時

高頻度 中頻度 低頻度 n=20

0 20 40 60 80 100

事後 事前

昼食時

  :   χ2検定

図2  料理教室参加前後の食事形態別自宅での料理頻度の 変化

0 20 40 60 80 100

事後 事前

授業以外の勉強時間

30分以内 30分~1時間 1時間~2時間 2時間以上 ない

n=20

0 20 40 60 80 100

事後 事前

食事は3食とるか

常にとる 時々とる あまりとらない ほとんどとらない n=20

  :   χ2検定

図3  料理教室参加前後の生活習慣の変化

0 20 40 60 80 100

事後 事前

就寝時間

11時ごろ 12時ごろ 午前1時ごろ 午前2時ごろ 午前3時以降 n=20

0 2 4 6 8 10 12

事前 事後

欠食理由

n=20

(5)

は有意な増加はみられなかった。そこで、生活習 慣の結果を図3に示す。項目の中から、「授業以 外での勉強時間」、「就寝時間」、「食事は3食とる か」、「欠食する理由」をみたところ、χ2検定の 結果、有意な差はみられなかったが、事後調査で

「授業以外での勉強時間」に増加傾向が、「就寝時 間」は遅くなる傾向がみられた。さらに、「食事 は3食とるか」では欠食に増加傾向がみられた。

また、「欠食する理由」では、「時間が無い」と回 答した人に増加がみられた。男子大学生の1日の 摂食パターンは睡眠、運動の時間が関連すると報 告されている11)。そのことから、今回の料理教 室参加者は4年生や大学院生が含まれていたた め、料理教室前後で大学の授業、レポート提出、

研究および学校行事などが影響し、時間のゆとり が少なくなり、欠食が増加したことで料理頻度に 変化が出なかったと考える。

⑵  料理教室参加後の調理操作および調理技術の 変化

16 種類の調理操作および調理技術について質 問した結果を図4に示す。χ2検定の結果、料理 教室で実習した項目のうち事前調査で、「簡単に できる」「できる」が低かった「野菜を刻む」「皮

をむく」、「千切りができる」、「みじん切りができ る」、「小口切りができる」、「くし切りができる」、

「魚をおろす」などの主に包丁を使った調理操作 7項目で有意な上昇がみられた。しかし、実習中 に行った調理操作の項目の中で、実習後に全員が

「できる」以上の回答をした項目は、「野菜を刻 む」、「せん切りができる」、「ゆで卵をつくる」、

「焼く」、「炒める」と、13 項目中の6項目にとど まり、その他の項目には実習後もできないと回答 する人がいたことが課題として残った。一方、今 回の実習では体験しなかった、「だしをとる」、

「蒸す」、「揚げる」といった項目にも上昇傾向が みられたことから、料理教室による調理実習体験 で調理に対する興味が増し、「自分にもできる」

という自信を持つことができたと考えられる。

また、「レシピを見て頭の中に調理工程を浮か べることができるか」の結果を図5に示す。料理 教室参加前後で「簡単にできる」、「できる」が増 加した。自宅での調理の実践に向けて、レシピが 読めることは重要なファクターとなるため、今後 の教育課題として検討していく必要があると考え る。

図5  レシピを見て調理工程がイメージできるか

0 20 40 60 80 100

簡単にできる できる 少しできる わからない できない

n=20

⑶  料理教室参加後の食生活、食意識、食行動に 対する変化

料理教室を体験することで食に対する関心や意 識がどのように変わったのかを知るために「食生 活の変化」14 項目、「食意識の変化」5項目、「食 行動の変化」3項目の計 22 項目について「よく あてはまる」、「あてはまる」、「どちらでもない」、

「あまりあてはまらない」、「全くあてはまらない」

の5つの選択肢から選んでもらった。その結果を 上記選択肢の記述順に1点、2点、3点、4点、

5点を配し、平均点を計算し料理教室前後で比較 図4  料理教室参加前後の調理操作および調理技術の変化

包丁で野菜を刻む1) 包丁で皮をむく1)

千切りができる1) みじん切りができる1) 小口切りができる1) くし切りができる1) ピーラーで皮をむく だしをとる

**

**

***

1) :実習中 1) :実習中 1) に行った調理操作

p:χ2検定   *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 0 0 1

% 0 5

% 0 ゆで卵を作る1)

味噌汁をつくる1) 焼く1)

炒める1)

煮る1)

蒸す

揚げる

魚をおろす1)

簡単にできる できる できない 知らない上段:事前

下段:事後

(6)

した結果を表3に示す。得点が低いほど、食生 活、食意識、食行動に気をつけているとみなす。

対応のあるt検定の結果「健康のために栄養バラ ンスを考えている」、「外食時に栄養バランスに気 をつけている」、「中食を利用する」、「食品を選ぶ ときに栄養成分表示を気にする」、「規則正しい時 間に食事をする」、「食事内容や食生活を振り返っ て考えることがある」、「献立を考える」、の7項 目で得点に有意な低下がみられた。これらの結果 から、調理行動には変化があまり現れなかった

が、食生活、食意識、食行動の面では興味・関心 を持ち、好ましい方向に変化したと考えられる。

また、「自炊に対するイメージ」を 16 項目から複 数回答してもらった結果を図6に示す。χ2検定 の結果、有意な差はみられなかったが、「片づけ が面倒」、「時間がかかる」といった負のイメージ に減少傾向がみられ、「調理が楽しい」、「美味し い」といった正のイメージに増加傾向がみられ た。これは実際に自炊を始める際の抵抗を下げる ことに繋がると考えられる。

次に、「食生活に関する欲しい情報」を9項目 から複数回答してもらった結果を図7に示す。

「基礎的な料理法」、「簡単に作れるレシピ」など、

料理教室で行ったものに関しては減少傾向がみら れた。また、「1日にどれだけ食べればよいか」

では有意な上昇がみられ、「食材の上手な使いま 表3  料理教室参加前後の食生活、食意識、食行動の

変化 (複数回答)

事前 事後 食生活の変化

健康のために栄養バランスを考えている 3.4 3.0 *

外食を利用する 1.9 1.9

外食時に栄養バランスに気をつけている 4.1 3.7 *

中食1)を利用する 3.3 2.6 *

食品を選ぶときに栄養成分表示を気に

する 4.0 3.7 *

食品を選ぶときに産地表示を気にする 3.6 3.6

規則正しい時間に食事をする 4.2 3.7 *

食べ過ぎたり飲みすぎたりすることが

ない 1.9 1.8

インスタント食品を利用する 2.1 1.8

間食をする 2.0 2.2

塩分を控えめにしている 3.5 3.5

家族そろって食事をする 3.9 3.6

家族の健康に気をつけている 3.7 3.6

調理担当者に感謝の気持ちを伝えている 2.5 2.5 食意識の変化

食べることが楽しい 1.7 1.7

食事について考えるのが楽しい 2.5 2.1

食事内容や食生活を振り返って考える

ことがある 3.5 2.7 *

食と健康に関する情報を積極的に入手

しようとする 3.2 2.9

メディアの情報の信憑性を考える 2.7 2.9 食行動の変化

食料品の買出しをする 2.8 2.5

献立を考える 3.8 3.1 *

食事後、後片付けをする 2.9 2.6

1) 家庭外で調理された食品を持ち帰り、家庭で食べる食事形態 のこと

:対応のある t 検定

*: <0.05

0 3 6 9 12 15 18

事前 事後

調

使

  :   χ2検定

図6  自炊に対するイメージの変化 (複数回答)

  : χ2検定

図7  食生活に関する欲しい情報(複数回答) :  <0.05

使

0

4 8 12 16

事前 事後

*

(7)

わし」、「安い食材で作れるレシピ」、「各食材の栄 養の知識」、「食材の保存方法」においては上昇傾 向がみられた。これは、食意識が好ましい方向に 向いているだけでなく、実際に自宅で調理をしよ うとしていることの表れとみることができる。さ らに、「料理を担当するのに適任と考える人」の 結果を図8に示す。「性別は関係ない」で有意な 上昇がみられ、「得意な人」は減少傾向がみられ た。これは、潜在的な女性(得意な人)が担当す るべきという考えから料理教室参加を通して性差 に関係なく担当するべき(自身を含んでいる)で あるという考えに変化していると考えられる。

よって、男性の調理行動を引き起こす上で「調理 実習の経験」は大変重要な意味を持つと考える。

0 4 8 12 16

事前 事後

*

  : χ2検定

図8  料理を担当するのに適任と考える人  :  <0.05    (複数回答)

「料理教室に参加してからの変化」を9項目か ら複数回答してもらった結果を図9に示す。半数 の人が「食べることに興味がでた」と回答し、

「手先が器用になった」、「楽しみが増えた」、「自 信を持てた」、「家族との会話が増えた」と回答す る人もみられた。これは、料理教室参加が、直接 食に関係すること以外にもストレスの軽減や、家 族でのコミュニケーションの増加といった生活習 慣にも影響を与えていることを示唆している。

またデータには示していないが、料理教室の参 加に対する満足度に関しては、ほとんどすべての 人が、「大変満足」、「満足」という回答をした。理 由としては、「料理は楽しいものだと思えた」、「仲 間との会話をすることが楽しかった」、「包丁を 使っていろいろな切り方を学ぶことができた」、

「料理のレパートリーが増えた」という回答があっ た。また「料理教室に参加してから、自炊の意欲 は高まったか」という問いには、すべての人が

「とても高まった」、「少し高まった」と回答した。

最後に、「男子大学生にとって料理教室は必要だと 思うか」、「機会があればまた参加したいか」とい う問いに対しては、参加した全ての人から、「とて も思う」、「思う」という回答が得られた。

0 2 4 6 8 10 12

図9  料理教室に参加してからの変化  (複数回答)

今回の料理教室参加による調理技術や知識の習 得は、自宅での料理頻度に大きく影響を与えるも のではないが、意識の面に与える影響は大きく、

これからの動機付けには一定の効果を発揮するも のになると考える。また、料理教室参加は大学生 においても家族との会話が増えるといった生活面 にも変化が現れることが明らかとなり、今後父親 となり子どもを育てる可能性がある彼らの、家庭 におけるわが子に対する食育にも期待が持てる。

しかし、自宅での料理頻度にあまり改善がみら れないことは課題であり、今回の調査で示された ように時間のゆとりがなく欠食をしてしまうこと は健康の維持・増進にとってマイナスである。そ のことから、男子大学生に対する食育プログラム としてまず最初に「料理の楽しさを知る」ための 調理実習から始め、調理に対する興味が高まり、

食べることや自分の健康に興味を抱かせる。さら に短時間で簡単に作ることのできる電子レンジレ シピや、冷凍食品を有効に利用したプログラムを 作成する必要があることが示唆された。本研究で は料理教室終了後の追跡調査はおこなっておら ず、一定期間後の変化はみていないが、久保 ら10)の調査では時間の経過により、上昇した調 理頻度は介入前に戻ることが報告されている。そ

(8)

こで、上昇した食への興味・関心またはその他の 行動を定着させ実行させるために、料理教室の継 続、定期的なメールによるレシピ紹介、食に関す る情報を提供するなどの追加支援が必要と考えら れる。

4.要約

男子大学生を対象とした食育プログラム作成の 一環として、調理実習を含むプログラムが食生活 習慣にどのような影響を与えるのかを明らかにし た。

1)自宅での料理頻度は、自宅生では「週に1〜

2回」が若干増加し、参加前よりも上昇し た。下宿生は料理教室参加以前から料理をす る頻度が高く、この傾向は料理教室後も変わ らなかったが、若干減少がみられた。これ は、大学の授業、研究、行事などが影響し時 間のゆとりが少なくなり欠食が増加したこと が原因と考えられる。

2)料理教室で実習した調理技術の7項目で有意 な上昇がみられ、実習中に体験しなかった3 項目にも上昇傾向がみられた。このことか ら、調理に対して興味が出て、自分にもでき るという自信が持てたと考える。

3)料理教室参加後の食意識、食行動では、有意 な改善がみられた。また、ストレス、コミュ ニケーションなどの生活習慣にも好ましい影 響を与えることが示唆された。

4)料理教室参加による食生活の向上を定着させ るためには、追加支援が必要である。

5.謝辞

本研究を遂行するにあたり、調理実習および質 問紙調査にご協力いただきました皆様に深く感謝 いたします。また、研究を進める上でご助言をい ただきました元近畿大学教授 樋口寿先生及び調 理実習の際に調味料を提供していただきました味 の素株式会社に深謝致します。

6.引用文献

1) 吉池信男 (2005) 日本における肥満の現状と 推移 . 食の科学, 325, 4-7

2) 西川陽子(2005)食生活は「わたし」の問 題?(社会化されている食生活).農業と経済,  71 (12), 5-15 

3) 厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室

(2008)平成 20 年国民健康・栄養調査  4) 磯部由香・宮園愛・成田美代(2008)男子大

学生の調理技術と食生活との関連,三重大学 教育学部研究紀要, 59, 101-105

5) 増澤康男・岸田恵津・久保香織・堀越昌子・

中西洋子・成瀬明子(2002)学習者の視点を 取り入れた食物教育に向けてのアンケート調 査―学校教育にのぞまれているもの―,日本 家政学会誌, 53 (1), 66-77

6) 健やか親子 21 検討会 2000 健やか親子 21 検 討会報告書―母子保健の 2010  年までの国民 運動計画― 厚生省児童家庭局 

7) 久保香織・堀越昌子・岸田恵津・増澤康男・

細谷圭助・中西洋子・成瀬明子(2007)調理 技術教育プログラムの構築に向けてのアンケー ト調査,日本調理科学会誌, 40 (6), 449-455  8) 細谷圭助・岸田恵津・増澤康男・堀越昌子・

久保香織・中西洋子・成瀬明子(2004)生涯 における食生活に対する関心・意識・知識が 健康的な食行動に及ぼす影響、和歌山大学教 育学部紀要(自然科学), 54, 53-62 

9) 松島悦子 (2007) 母親と父親の調理態度が、

家族の共食と中学生の調理態度に与える影 響,日本家政学雑誌, 58, 743-752 

10) 久保香織・竹本真理子・堀越昌子(2009) 

男子大学生に対する調理実習体験の食育効 果,日本食育学会誌,3 (4), 307-316 

11) 辻忠(1990) 男子学生の摂食回数と睡眠・

健康状態について(第 2 報),大阪外国語大学 紀要, 1, 365-374 

参照

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