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エコラベルの目的・成功要因・課題と ステークホルダーの意識・選好:文献レビュー

川 原 尚 子 ・ 入 江 賀 子

要旨 世界には多様なエコラベルが存在するが,エコラベルが消費者の購買行動を通じて環 境パフォーマンスの向上を図るような目的をうまく達成できるのか,エコラベルにどのよう な課題があるのかについては,様々な議論がある。一方,エコラベルは未だ発展途上でもあ る。そこで本研究では,エコラベルプログラムの成功要因や,ステークホルダーの意識と選 好を探るため,先行研究のレビューを行い,今後の研究の方向性を探っている。

 成功するエコラベルのデザインや普及戦略のためには,具体的な適用ケースごとに市場の 選好を分析し,当該選好にマッチしたエコラベルをデザインする必要がある。

Abstract Many types of ecolabels are used around the world. However, whether ecolabelling programs successfully achieve environmental performance improvement through consumer purchasing behaviour, and what are the challenges involved in ecolabelling, have been much debated, and related research is inconclusive. Ecolabels are still in their developing phase. Through reviews of previous studies, this study examines the determinants of ecolabelling programs’ success and stakeholderss’ at- titudes and preferences towards ecolabelling, offering directions for future research.

It is necessary to analyse market preferences and employ existing knowledge on fac- tors determining success of ecolabels to create concrete, specific, and successful eco- label designs and dissemination strategies.

Key words エコラベル(ecolabelling),消費者(consumer),選好(preferences),環 境情報(environmental information),企業の社会的責任(corporate social responsibility: CSR)

原稿受理日 2020年1月31日

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Ⅰ は じ め に

近年,世界で製品の環境パフォーマンスについての情報を消費者に伝達するエコラベル が増加しつつある。エコラベルの目的,成功要因,課題に関する様々な議論が先行研究に おいてなされてきた。ある文献は,エコラベルの有効性を積極的に支持し,別の文献はエ コラベルの有効性に限界があると主張している。また,エコラベルが社会のシステムとし て成功する重要な要因にはステークホルダーの意識や選好の存在があるが,それらの意識 や選好についての研究も,近年,多くなってきた。一方,昨今普及しつつある再生可能エ ネルギーに対するエコラベルが導入されるなど,エコラベルは未だ発展形でもある。

本稿は,エコラベルに関する文献研究を通じて,エコラベルに関する従来の研究と,意 識や選好などに関する最近の研究について整理し,今後の研究課題を明らかにしていく。

はじめに,エコラベルの歴史と定義,目的,発展と成功のための要因,課題について,従 来の研究の議論を整理する。次に,消費者,生産者,エコラベル提供者の選好や意識に関 する研究の議論を整理する。また,考察では,今後の研究課題について触れる。

本稿の構成は,次章で先行研究を吟味し,第3章で考察し,最終章で結論を述べる。

Ⅱ 先 行 研 究

1 エコラベルに関する従来の研究

 エコラベルの歴史と定義

エコラベルは製品の環境パフォーマンスと環境効率性の改善に関する情報を30年以上に わたり,消費者に提供してきた(Shen, 2008, p. 2)。ドイツで1977年に始まった Blue Angel が最も古いエコラベルとされるが,1998年以後特に増加し( Teisl, 2007, p. xv ),最近で は,全世界199か国,25産業の,463のエコラベルが確認されている(Big Room ウェブサ イト,2019年12月現在)。エコラベルは,当初,食品,日用品,紙・木材製品,電気製品 などにつけられたが,その後,建物,乗り物,花,潤滑油,海岸,観光地にまでつけられ ている( Teisl, 2007, p. xv )。最近の現象として,エネルギー効率あるいは持続可能性を 促進するためのエコラベルがある(Banerjee and Solomon, 2003, p. 109)。

エコラベルは製品が環境にやさしいものか,それとも従来のものかを識別させるラベル であり(Awan, 2011, p. 9),事業者と消費者の環境配慮行動を誘導するためのツールであ

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る(Delmas and Lessem, 2017, p. 318; Dietz and Stern, 2002)。国際標準化機構(ISO)

が定義するエコラベルとは,製品または包装ラベル,製品資料,技術広報,広告または宣 伝での声明,シンボルまたは図表の形式をとるものであり,製品やサービスの環境側面に ついて示すものと定義される(ISO, 2000, 2. 1)。また,環境マネジメント・ツールの一つ に位置付けられている(ISO, 2000, 2. 1)。ISOでは,エコラベルを3つのタイプに分類す る。タイプⅠ(ISO14024)は一連の所定の基準を満たす製品に,任意の公的または民間機 関がラベルを授与し認証するラベル(ISO, 2018),タイプⅡ(ISO14021)は企業が製品の 環境に関して自己宣言するラベル(ISO, 2016),タイプⅢ(ISO14025)は製品のライフサ イクルに関する定量化された環境情報を提示し,同じ機能をもつ製品間の比較が可能なラ ベル(ISO, 2006)である。しかし,実際には,エコラベルには,この ISO による3分類 に必ずしも当てはまらないような多種多様なラベルがある。

 エコラベルの目的

エコラベルは,製品の使用段階において環境影響を避けるだけでなく( Shen, 2008, p. 2),製品生産から廃棄における環境影響がより少ないという,通常は消費者にとって観 察不可能な情報を伝えることで,消費者の環境に配慮した製品を購入するという選択行動 を促進させ(Reczkova et al., 2013, pp. 497498; Gallastegui, 2002; Shen, 2008, p. 2), 製品の全体的な環境負荷を下げることを目指している。製品提供側と消費者との間には,

情報の非対称性の問題(Akerlof, 1970)がある。例えば,電力消費の環境影響は必ずしも 直ちに正しく観察することができないし(Brckl et al., 2011, p. 34),電力消費までに複 数の取引がある場合が多いにもかかわらず,消費者側の電気の効用は変わらないため電源 を識別できない。これにより,消費者への説明と実態が乖離する懸念があり,米国におい て実際に問題が生じたことがあった(ISEP, 2005, p. 3)。再生可能エネルギーと非再生可 能エネルギーも信頼できる形で区別できない状況になる(Hulshof et al., 2019, p. 697)。 エコラベルは,そのような商品の環境性に関する情報の非対称性を解消する(Crespi and Marette, 2005; Delmas and Lessem, 2017, p. 319; Leire and Thidell, 2005)。

エコラベルは,既存の市場シェアを拡大したり,潜在的な市場へのアクセスを支援した りする点で(Reczkova et al., 2013, p. 498),市場ベースの手法であると考えられる(Baner- jee and Solomon, 2003, p. 109; Shen, 2008, p. 2; Truffer et al., 2001)。環境配慮製品の 供給者は,エコラベルが価格プレミアム(Roheim et al., 2011)を作り出す効果を期待す る( Reczkova et al., 2013, p. 498)。消費者が,製品の環境面での貢献に関するエコラベ

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ルの情報の価値を認めるならば,消費者はエコラベルの付いた製品を求め,エコラベルの ない製品から離れるであろうし,このことがエコラベル製品の,非エコラベル製品に対す る価格プレミアムを生み出すことになるためである(Gudmundsson and Wessells, 2000;

Roheim et al., 2011, p. 656; Sedjo and Swallow, 2002)。

エコラベルは,購入製品の品質の多様性と,消費者の選択の自由を保証する面での社会 的便益も認められる(Roosen and Marette, 2011, p. 365)。このため,政府機関も,エコ ラベルに対して,製品の環境基準の向上を促す効果を期待できる(Reczkova et al., 2013, p. 498)。

エコラベルは,環境面だけでなく,文化面や社会面も対象としている(Santoso et al., 2016, p. 811)。Golden ら(2010b, p. 7)の研究によると,繊維産業のエコラベルの認証

では,労働者の権利とともに健康と安全の問題も調べられており,調査した他の産業に比 べて最もよく成功している。

 エコラベルの成功要因

エコラベルは,消費者の環境意識の向上,市場のグローバリゼーション,環境規制,非 政府組織の活動,民間企業のレントシーキング,サプライチェーンマネジメント上の技術 的向上やコストの減少などがインセンティブとなり発展してきた(Teisl, 2007, p. xvi)。 Rubik ら(2007, pp. 183184)は,エコラベルが成功するための一般的要因として,1)

エコラベルを付与するためのコストとエコラベルの認証を取得するための料金,2)エコ ラベル自体の信頼性の2つを挙げている。

エコラベルへの信頼と認証については様々に議論されてきた。エコラベルが消費者に信 頼されるには,公平な第三者によって,エコラベルが確立され,検証されているかがポイ ントであり,このプロセスを経ることでエコラベル自体に対する消費者の信頼性が増すだ けでなく,環境基準の順守も高めることにつながるとされる(Brckl et al., 2011, pp. 34 35)。

消費者に信頼されるエコラベル製品は市場シェアを増加させるとの主張がある(Awan, 2011, p. 10; Thgersen, 2000)。Thgersen(2000)の西ドイツ,東ドイツ,英国,イタ

リア,アイルランドの消費者を対象とした研究では,いずれの地域の消費者のほとんどが,

少なくとも時々エコラベルに注意を払っているが,エコラベルに注意を払うかどうかは,

エコラベルが環境保護手段となるという信念と,ラベルへの信頼に強く影響されることが 明らかにされている。そして個人の環境保護態度と環境問題解決の有効性もエコラベルに

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注意を払うことに影響し,この影響は前の2つの概念,すなわちエコラベルが環境保護手 段となるという信念と,ラベルへの信頼によって媒介されること,環境保護態度がエコラ ベルに注意を払うことへの影響は,消費者がラベルを信頼するほど高くなることが示され ている(Thgersen, 2000, p. 305)。

Rubik ら(2007, pp. 183184)は,エコラベルが成功するための,製品特有の要因とし て,1)ライフサイクル上の主な環境影響を特定できるか否か,2)市場(品質,価格,

産業構造),3)ステークホルダー(役割と重要性,消費者意識),4)情報提供の形式と 基準を挙げている。エコラベルを伴う環境広告についていえば,環境問題に意識を強く個 人は広告に前向きな態度を示し,また消費者の環境広告に対する態度が購買意欲や持続可 能な消費行動に正の影響を及ぼす可能性が指摘されている(Chang et al., 2019)。

エコラベルの情報提供の形式については,単純な情報と詳細な情報のいずれか成功をも たらすかについて,意見が分かれている。消費者は簡潔で,分かりやすく,消費者の主な 価値に関連しているエコラベルを好むとする議論がある( Delmas and Lessem, 2017, p. 347)。単純な承認シールやラベルの方が,複雑な情報開示のラベルよりも,一般に,消 費者行動に影響を及ぼす(Banerjee and Solomon, 2003, p. 109)との主張である。一方,

簡素な開示より,環境貢献の内容を詳細に記したエコラベルの方が,消費者にとっても環 境配慮に敏感な事業者にとっても,より便益があり(Teisl, 2003, p. 678)消費者の手引き としてもっと使用される可能性があり,(Leire and Thidell, 2005, p. 1068)十分にデザイ ンされた健康と環境のラベルの方が,消費者や生産者の行動を変える可能性があるとする 主張もある( Teisl, 2003, p. 678)。大石ら(2010)は水産エコラベル制度の実効性を高め るには,水産資源の状況や生態系保全の管理方策のような水産エコラベルに関する情報を 消費者に適切に伝達する重要性を示唆している。

Banerjee および Solomon(2003, pp. 119120)は,エコラベルプログラムの成功にとっ て重要な要因は,特定の製品分野の絞り込み,立法上の義務,インセンティブ,パート ナーシップであると考えている。Santoso ら(2016, p. 812)は,政府の役割が重要とす る。Banerjee および Solomon(2003, p. 119)は,一般に,政府のエコラベルプログラム が民間のそれよりも成功しており,政府の支援はプログラムの信頼性,財務的安定性,長 期の実行可能性を支える上で重要であると主張している。Zhan ら(2011, pp. 23142315)

は,中国のエネルギーラベルの場合,政府側の持続可能なエネルギー消費に関する法規制 の改善やエネルギー効率基準の標準化,一般市民の側の環境保全やエネルギー不足につい ての意識向上や持続可能な消費パターンの形成,第三者機関や社会による企業や製品の監

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視が必要としている。

 エコラベルの課題

エコラベルには上述した様々な効果が期待されているが,一方で,エコラベルに対する 批判的な見解もある。まず,エコラベルの種類が多すぎて内容の違いがわからないこと,

エコラベル間の比較ができないことなどが問題とされる(中庭, 2008, p. 64)。また,エコ ラベルの表示に消費者や利用者が気付かなければエコラベルの目的はそもそも達成されな い(中庭, 2008, p. 64)が,消費者や利用者がエコラベルの存在に気が付いていない場合 がある(中庭, 2008, p. 64)。エコラベルの認証の役割が今後期待されている分野がある。

現在,認証は電力市場で主に利用されているが、他のエネルギー市場で再生可能エネルギー の生産(天然ガス,水素など)が本格化すれば認証がますます重要な役割を果たすことが 期待されている(Hulshof et al., 2019, p. 707)。ただし,現状,多様なエコラベルやその 認証の関係性や効果についての包括的な評価はほとんどないと主張されている( Golden et al., 2010b, p. 8)点が課題といえる。

認証システムの課題もある。単一基準ラベル全体の認証までかかる平均時間は4.33か月 である一方で,認証時間は個々に異なることや,一部のエコラベルのプログラムの透明性 について疑問を呈する文献もある(Golden et al., 2010b, p. 6)。

一方,エコラベルに内在するより本質的な課題も挙げられている。消費者に完全な情報 を伝えることは実際には非常に難しく(Roosen and Marette, 2011, p. 375),環境性とは 関係ない,消費者を混乱させるような,有害ですらある情報を消費者に送っている場合も あると指摘されている( Delmas and Lessem, 2017, p. 345)。例えば,Delmas および Lessem(2017, p. 346)による離散選択実験では,価格が低く,ワインが低品質の地域か らのものである場合,回答者は,他の点では同一の従来の同等品とエコラベルワインの両 方を選好したが,ワインが高品質の地域からのものである場合,従来のより高価なワイン を選好したことが示された。Delmas および Lessem(2017, p. 346)は,回答者はエコラ ベルワインを選好することで利他的行為から得られる満足度を得る一方で,エコラベルを 低品質のシグナルとして解釈した可能性があると主張している。

Leire および Thidell(2005, p. 1061)は消費者はエコラベル製品を購入することを過大 に強調する傾向があり,エコラベルによる消費者行動の変化が限定的であるとの示唆を主 張した。

エコラベルにより市場の価格プレミアが生じないと,生産者にとってのインセンティブ

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となり得ないが,市場の価格プレミアムが発生するかは,ラベル付き製品の市場ボリュー ムの大きさにもよる( Golden et al., 2010b, p. 7)ため,一部消費者がエコラベルに対し て正の追加的な支払意思を持っていても,ラベルの市場への浸透の度合いによっては,市 場の価格プレミアは存在しないため,市場ベースの手法となり得ないことが十分にありえ る。食品および農業産業のエコラベルのように,強力なマーケティングにより,市場の価 格プレミアムが存在しているが,そうでないケースも多いといえる。エコラベルが適用さ れても,市場シェアをより確保できるわけではないことを示した文献もある(Golden et al., 2010b, p. 22)。

エコラベルが,実際の環境性や社会的便益にどの程度寄与しているかが本質的に重要な 反面,現実には,それらが実証できていないという議論( Golden et al., 2010b, p. 6)も ある。Golden ら(2010b, pp. 1920)による世界の150のエコラベルを対象とした調査に よれば,単一基準で付与されるエコラベルの44%だけが,環境影響調査を実施しており,

また,調査対象のエコラベル提供組織の3分の1がエコラベルプログラムの環境的および 社会的便益を監視または評価しようとしておらず,そのつもりもないことが明らかにされ ている。

2 エコラベルに対する意識や選好に関する最近の文献

エコラベルについての先行研究では,前述の通り,従来,エコラベルの有効性の検証や,

それを規定する要因などが研究されてきたが(Teisl, 2007, p. xix),エコラベルのデザイ ンについての体系的な研究は未だ限られてはいるが(Golden et al., 2010b, p. 10; Gallas- tegui, 2002),少しずつ厚みが増している。以下,ステークホルダーの選好や意識に関す る先行研究での議論をまとめる。

消費者の選好

消費者選好や支払意思額に関する先行研究の多くは,商品のエコラベルの情報により消 費者の態度が変化するという結果が得られている。海外の先行研究では,消費者が,様々 なエコラベル製品に対して比較的高い金額を支払う意思があることを強く示唆されている

( Bjrner et al., 2004; Cason and Gangaharan, 2002; Disdier et al., 2013; Johnston et al., 2001; Loureiro and Hine, 2002; Loureiro et al., 2002; Moon et al., 2002; Roe et al., 2001; Roheim et al.,2011; Shen and Saijo, 2007; Teisl et al., 2002)。

Roheim ら(2011, pp. 663664)のロンドン市内で行った水産製品のエコラベルを対象

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とした調査では,14.2%の価格プレミアムが認められている。エコラベルの価格プレミア ム は,水産物のエコラベルプログラムにおいて認証される持続可能な漁業に取り組むた めに必要な追加的コストを相殺する直接的手段となった(Roheim et al., 2011, p. 665)。 Disdier ら(2013)のパームオイルを使った食品に関する支払意思額の研究では,パーム オイルがもたらす負の影響の情報が消費者に与えられた時に,統計的に有意な影響を及ぼ し,とりわけパームオイルを使用しない商品よりも使用している商品の方が,よりその影 響が大きいことが明らかになっている(Disdier et al., 2013, p. 181)。

一方,消費者の支払意思額の決定要因を分析した文献は少ない( Shen, 2008, p. 2)。

Shen(2008)の中国でのウェブベースでの調査では,中国環境ラベルが付与された7種類 の製品の中国の消費者の支払意思の決定要因を分析し,環境ラベルまたはエコラベルの製 品に対する支払意思の決定要因は,価値感・ライフスタイル・社会的属性・製品の環境性 であるとした。価値観・ライフスタイルとしては, 生活の利便性よりも環境保全の方がよ り重要であると思う人,エコラベル製品を購入することが環境によいと考える人,エコラ ベル製品を購入した経験のある人の支払意思額高かった。一方,社会的属性としては,性 別,年齢,教育,所得が,支払意思額の重要な要因であり,製品の環境性が高いほど支払 意思が高くなった。また,これらの結果を踏まえて,同論文は環境ラベルが付与された 製品範囲の拡大が提案されていた。Cai および Aguilar(2013)は,企業の社会的責任

(Corporate social responsibility: CSR)を格付けした仮想のラベルを用いた選択実験の 手法を用いて,CSR 各付けに対する消費者選好を分析した。はじめに,参加者は,企業の CSR レベルが独立した第三者機関によって評価されたこと,商品提供企業がこのプログラ ムに自発的に参加したこと,また独立した第三者機関が,経済的パフォーマンス,環境保 全プログラムへの参加,顧客サービス,従業員の労働条件と賃金,慈善寄付などの CSR 評価項目に従って企業評価したことを知らされた,( Cai and Aguilar, 2013, p. 120)。結 果として,消費者の支払意思額は,CSR の格付けが高い商品に対して高く,教育レベルが 高い参加者ほど,CSR の格付けの高い商品を選ぶ傾向が認められた( Cai and Aguilar,

 支払意思額の存在と,市場プレミアムは別の問題であるとする文献もある。Sedjo および Swallow

(2002, p. 282)は,ある割合の消費者が価格プレミアムに対する支払意思があったとしても,そ れが市場の価格プレミアムを生まない,すなわち市場におけるプレミアムを生み出す条件として 十分ではないとしている。自主的なエコラベルシステムでは,認証製品の需要が全体の需要に比 べて少ない場合,認証のコストが一部の生産者にとって取るに足りない場合,および認証によっ て生み出される新しい需要の量が控えめな場合には,たとえプレミアムを支払う意思のある消費 者がかなりの数いる場合であっても,市場は認定製品の価格プレミアムを生み出しにくい(Sedjo and Swallow, 2002, p. 282)。

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2013, p. 126)。Ward ら(2011, p. 1450)の米国の環境保護庁によるエコラベルである Energy Star を対象にした研究では,このラベルのある冷蔵庫について,調査対象の国内 の成人消費者の追加的支払意思額は平均249.82ドルから349.30ドルと算定されている。こ の調査において,女性よりも男性の方が,年齢がより若い方がより支払意思額が高く,ま た回答者は個人的な費用節約と公的な環境便益の両方によって動機づけられていることが 明らかにされている(Ward et al., 2011, p. 1457)。

Leire および Thidell(2005, p. 1061)は製品関連の環境情報の利用に関するノルウェー の研究分野の文献レビューを通して,大多数の消費者が主なエコラベルを認識し,理解し,

十分に信頼して,エコラベルを利用していることを示す一方で,製品関連の環境情報が市 場でどのように機能するかは,購入の瞬間の多くの決定要因に依存するとした。個人の購 買意思決定は,利用可能な時間と資金,キャンペーンや情報などの外部刺激,エコラベル 製品の入手可能性,提供された情報の信頼,様々な製品選択の関連性に対する動機付けと 理解に影響される可能性があるとした(Leire and Thidell, 2005, p. 1068)。

日本の先行研究を見ると,岩本(2004)は,札幌市で普通牛乳を対象として,食品安全 性および環境負荷情報が適切に提供された牛乳に対する消費者の追加的支払意思を,選択 型コンジョイント分析(Choice Based Conjoint Analysis)により明らかにしている。岩 本(2004)の研究は,加工段階の食品安全性表示としての HACCP ラベルよりも生産段階 の環境負荷情報を表わすエコラベルの方が消費者の評価が高かった,またエコラベル牛乳 を高く評価する消費者の属性として,週当たりの牛乳購入量が多い消費者,高所得者層ま たは子供がいる消費者,エコラベルの必要性を認識する消費者であったとの結果を示して いる。

大石ら(2010)は,水産エコラベル製品に対する東京都内ならびに大阪府内の一般住民 を対象としたアンケート調査により得られた資料をもとにコンジョイント分析を行い,消 費者の潜在的需要を明らかにしている。大石ら(2010, p. 26)は水産資源管理や生態系保 全のための取り組みを行う漁業を通じた生産物を,消費者が選択して購買する行動が潜在 的に存在することを確認している。この調査における属性は,4つの水準が設けられた産 地,エコラベルの有無,4つの水準が設けられた価格という3属性とされ,回答者の属性 については,性別,年齢,世帯員数,世帯の1か月分の食費という4属性とされた(大石 ら, 2010, p. 27)。大石ら(2010, p. 33)は,国内産ラベルや水産エコラベルつきの水産物 ほど選択確率が高くなるとの結果や,エコラベルに対する限界支払意思額は産地属性の

「国内産」に対する限界支払意思額に次いで高い値を示す結果を示して,水産エコラベル

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製品の潜在的需要の存在を示唆している。なお,この分野の研究課題には,水産エコラベ ル制度に関する情報提供と支払意思額との関係性,水産エコラベル製品の流通拡大に伴う 消費者行動の変化,地域間での選好の差異の検証がある(大石ら, 2010, p. 33)。

消費者選好の文献では,調査参加者がそもそもエコラベルを意識するか否かによらず,

調査参加者にエコラベルへの選好を尋ねている仮想性や,情報発信源の内容や数,その他 の要因が選好に影響を与える(中庭, 2008, p. 64)。このため,できるだけ実際の購入に近 い状況で(Leire and Thidell, 2005, p. 1068),多様な条件設定の下での研究の蓄積が必要 といえる。

生産者の選好

生産者のエコラベルに対する選好に少しでも関係した先行研究は,筆者が知る限り,

Santoso ら(2016)のみである。Santoso ら(2016, p. 815)のインドネシアの家具業界 関係者を対象とした調査によれば,エコラベルは,産業界のより良いイメージを作るのに 役立つため,市場シェアや利益を増加させると認識されている( Santoso et al., 2016, p.

815)。このことは,製造者がエコラベルを選好している事例といえる。一方,森林破壊の 責任はないと考える家具業界の関係者においては,エコラベルは環境マネジメント・ツー ルとしてよりもむしろ先進国による不公平な貿易を生み出すものであり,途上国にとって 貿易障壁となっており,関税と貿易に関する一般協定(GATT)や世界貿易機関(WTO)

とは整合しないものであると認識している。すなわち,そのような関係者にとって,エコ ラベルに負の選好が存在しているということになる

エコラベル提供組織の意識

エコラベルの認証を提供する側にとってはエコラベルがもたらす市場への影響にあまり 関心がないとの実証結果が示されている。Golden ら(2010b, p. 6)による世界の150のエ コラベルを対象とした調査によれば,エコラベル提供組織のほとんどがエコラベルを付け た製品・サービス・組織の市場シェアを認識しておらず,またエコラベルを付けた製品の 市場シェアを評価した研究を知っていたのは,エコラベル提供組織の25%だけであった。

 Santoso ら(2016, p. 813)は,これがエコラベルの認証取得の進度が緩やかである理由とす る。

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Ⅲ 考     察

エコラベルの成功要因は,当該エコラベルの推進体制,適用国・地域,適用製品・サー ビス,認証など多様な要因が関係しており,ケース・バイ・ケースである。このため,成 功するエコラベルのデザインや普及戦略の検討のためには,具体的な適用ケースごとに,

検討されるべきである。政府や国際機関がエコラベルをどの程度推進するかが,エコラベ ルの中心的な成功要因となっている場合には,環境問題に関する国際的な世論の進展が重 要であろう。しかし,エコラベルを,市場ベースの手法として,民間ベースの努力でより 成功させるためには,市場の選好を分析し,当該選好にマッチしたエコラベルをデザイン することが有用だろう。

現状では,そのようなエコラベルのデザインの視点から比較した文献については,ラベ ルへの記載情報量の過多,認証の有無などの研究があるが,個別事例(個別の対象地域・

製品)での研究蓄積はまだ不足しているといえる。エコラベルに関する入手可能な統計 データが不足している状況にあれば,エコラベルの成功要因や選好に関する先行研究の知 見を生かしつつ,できるだけ実際の購入に近い状況での仮想市場での研究なども有用かも しれない。また,複数の仮想的な条件での結果を蓄積し比較する研究も,個別のエコラベ ルのデザイン戦略を分析するために,今後必要であるといえる。

Ⅳ 結     論

世界には多様なエコラベルが存在するが,どのようなエコラベルプログラムが消費者の 購買行動を通じて環境パフォーマンスの向上を図るような目的をうまく達成できるのか,

どのような課題があるのかについては,様々に議論がなされている。一方,昨今普及しつ つある再生可能エネルギーに対するエコラベルが導入されるなど,エコラベルは未だ発展 形でもある。そこで本研究では,エコラベルプログラムの成功要因や,ステークホルダー の意識と選好を探るため,先行研究のレビューを通じて,今後の研究の方向性を探ってき た。

エコラベルの歴史と定義,目的,発展と成功のための要因,課題について,従来の研究 の議論を整理し,消費者,生産者,エコラベル提供者の選好や意識に関する研究の議論を 整理した。エコラベルの成功要因には,ラベルに対する信頼性や,それを担保するための

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認証システム,消費者のエコ意識,エコラベルの情報提供の形式,政府のサポートなどが ある。また,エコラベルの課題としては,消費者や利用者のエコラベルに対する認識不足,

エコラベルが多様すぎて違いがわからないこと,エコラベルシステムや認証システムの透 明性などの問題がある。さらに,より本質的課題ともいえる情報非対称性の解消や消費者 心理の問題,市場ベース手法がうまく機能しないケース,実際の環境性や社会的便益への 寄与の程度が不明瞭なケースなどの問題があげられた。また,多くのケースでは,消費者 はエコラベルに対して,価格プレミアムを感じていること,生産者は,エコラベルに対し てメリットとデメリットの両方を感じていること,エコラベル提供者は,市場の反応を注 視していない状況などが議論された。

考察では,成功するエコラベルのデザインや普及戦略の検討のためには,具体的な適用 ケースごとに,検討されるべきであること,市場の選好を分析し,当該選好にマッチした エコラベルをデザインすることが有用であると述べた。また,エコラベルのデザインの個 別事例での研究蓄積が不足しており,今後の研究課題であると述べた。

謝     辞

 本研究は,独立行政法人日本学術振興会の科研費15K03801の助成を受けたものです。

参考文献および参照ウェブサイト

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