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Kan 拡張

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(1)

Kan 拡張

alg-d

http://alg-d.com/math/kan_extension/

2021 年 4 月 2 日

目次

1 定義 1

2 各点Kan拡張 3

3 米田埋込とKan拡張 15

4 普遍随伴 30

1 定義

関手F: C →Dと圏U に対して,関手F1: UD →UCF1(S) :=S◦F により 定まるのであった(第1章「自然変換・関手圏」のPDFを参照.).

定義. C, D, U を圏,F: C →DE: C →U を関手とする.F に沿ったE の左Kan拡 張とは,E からF1への普遍射hFE, ηiのことをいう.

E FE◦F FE

S◦F S

η

θ τF τ

即ち,以下の条件を満たすhFE, ηiのことである.

(2)

(1) FE は関手D→U で,ηは自然変換E ⇒FE◦F である.

D

C U

η =

F

E FE

(2) 組hS, θiが同じ条件を満たす(即ち S: D U は関手でθ: E S ◦F は自然変 換) ならば,自然変換τ: FE ⇒S が一意に存在してθ = τF ◦ηとなる.即ち次 の等式が成り立つ.

D

Cη = U

F

E FE

S

τ =

D

C U

=

F θ

E S

自然変換ηを左Kan拡張hFE, ηiunitと呼ぶ.また,F に沿ったE の右Kan拡張 hFE, εiが自然変換の向きを逆にして得られる.

D

C ε = U

F

E FE

S

τ =

D

C U

=

F θ

E S

左Kan拡張FE をLanFE,右Kan拡張FE をRanFE と書くこともある*1. 普遍射の性質(第1章「極限」のPDFを参照) から次の命題が分かる.

命題 1. F: C →DE: C →U に対して関手HomUC(E, F1()) : UD Setが得ら れる.このとき

HomUC(E, F1())が表現可能関手⇐⇒FE が存在する

が成り立つ.またこのときHomUC(E, F1()) = HomUD(FE,−)が成り立つ.これ から得られる同型HomUC(E, F1(FE)) = HomUD(FE, FE)で右辺のidFE に対 応する左辺のη: E ⇒F−1(FE)が,左Kan拡張FEのunitである.

*1というか,大抵の本・論文ではLanRanが使われている.

(3)

命題 2.E UC に対して,F に沿った左 Kan拡張FE UD が存在するとする.

このときFは関手F−1: UD UC の左随伴関手を定める.随伴F a F−1 のunitを η: idUC F1◦F とするとき,E UC に対してηEFE のunitとなる.同様 に右Kan拡張F: UC UDF1 の右随伴関手である.即ちF aF1 a F とな る.

3. 関手E: J →U に対して余極限colimE とはE から対角関手∆ : U →UJ への普 遍射E ∆(colimE)であった.一方1 ={∗}を一点圏としてF: J 1を唯一の関手 とすれば,∆とはF1: U1 = U →UJ のことである.F に沿ったE の左Kan拡張は 普遍射E ∆(FE)であるから,普遍射の一意性からFE = colimE が分かる.

1

J = U

F

E

FE= colimE

即ち,余極限は左Kan拡張である.同様にして,極限は右Kan拡張である.

2 各点 Kan 拡張

余極限(極限)が左Kan拡張(右Kan拡張)であることを使うと,「各点Kan拡張」と いう方法でKan拡張を計算することができる.C, D, U を圏,F: C DE: C U を関手として,左Kan拡張FE: D→U が存在するとする.

D

C = U

F

E FE

d ∈Dに対してFE(d)を計算したい.dd(∗) = dとなる関手d: 1 Dとみなして コンマ圏F ↓dを考えれば次の図式を得る.

1 D

= F = FE d

P1

(4)

自然変換を合成すれば次の図式を得る.

1

F ↓d = U

FE(d) P1

EP0

P1 に沿った左Kan拡張は余極限になるから,もしこれが左Kan拡張であれば(実は一般 にはそうなるとは限らない)FE(d) = colim(E ◦P0)となり,左Kan拡張が余極限に 帰着できる.

以上を踏まえてC, D, U を圏,F: C →DE: C →U を関手とする.

D

C U

F

E

d∈Dに対してコンマ圏F ↓dを考えれば次の図式を得る.

1 D

F ↓d C U

= F E d

P1

P0

今,左Kan拡張hP1(E ◦P0), µdi,即ち余極限colim(F ↓d −→P0 C −→E U)が存在すると 仮定しよう.これを使ってT(d) := colim(F ↓d −→P0 C −→E U)と定義する.

1

F ↓d C U

=

µd

E T(d) P1

P0

次に射f: d→d0 に対してT f を定める.f: d →d0は自然変換 1 f D

d0 d

(5)

と同一視できることに注意する.コンマ圏F ↓dF ↓d0を考える.

1 D

F ↓d C

=

θ F

d

P1

P0

1 D

F ↓d0 C

=

θ0 F

d0

P10

P00

左の図式とf を組み合わせて,次の図式が得られる.

1 D

F ↓d C

=

θ

f F d0

d P1

P0

コンマ圏F ↓d0 の普遍性(「コンマ圏」のPDFを参照)により関手H: F ↓d F ↓d0 が存在し次の等号が成り立つ.

1 D

F ↓d0 C F ↓d

=

θ0

=

=

F d0

P10

P00 P1

P0

H

=

1 D

C F ↓d

=

θ

f F d0

d P1

P0

今,余極限T(d) = colim(F ↓d−→P0 C −→E U),T(d0) = colim(F ↓d0 P

0

−→0 C −→E U)が存 在するのであった.

1

C U

F ↓d

=

µd

E T(d) P1

P0

1

F ↓d0 C U

F ↓d

=

µd0

=

= E

T(d0) P10

P00 P1

P0

H

故に左Kan拡張hT(d), µdiの普遍性により射T f: T(d) →T(d0)が存在して次の等式が

(6)

成り立つ.

1

C U

F ↓d

=

µd

T f

E T(d) P1

P0

T(d0)

=

1

F ↓d0 C U

F ↓d

=

µd0

=

= E

T(d0) P10

P00 P1

P0

H

このときT は関手T: D U となり,TF に沿ったE の左 Kan拡張となることが 分かる.このことは後で証明することにして認めてしまえば,次の定理が得られる.

定理 4. C, D, U を圏,F: C DE: C →U を関手とする.各d ∈D に対して余極 限colim(F ↓d−→P0 C −→E U)が存在するならば,F に沿ったE の左Kan拡張FE が存 在してFE(d)∼= colim(F ↓d−→P0 C −→E U)となる.

C が小圏ならばF ↓dも小圏となる.故に次の系が得られる.

5. C, D, U を圏,F: C →Dを関手とする.U が余完備で,C が小圏ならば,任意の 関手E: C U に対して左Kan拡張FE が存在する.故にこの場合F1 は左随伴を 持ちF aF1: UC →UD となる.

Setは余完備であったから次の系を得る.

6. C, D を小圏,F: C →D を関手とする.任意の関手E: Cop Setに対して左 Kan拡張FE: Dop Setが存在する.

Dop

Cop = Set

F

E FE

故に随伴FaF1: Cb→Db が成り立つ*2

右Kan拡張に関しても,同様にして次の定理が得られる.

定理 7. C, D, U を圏として,F: C DE: C U を関手とする.各d Dに対し て極限lim(d↓F C −→E U)が存在するならば,F に沿ったE の右Kan拡張FE

*2正確には(Fop)a(Fop)−1であるが,単にFaF−1と書いている.

(7)

存在してFE(d)∼= lim(d↓F →C −→E U)となる.

1 D

d↓F C U

=

= F

E FE d

故にU が完備でC が小圏ならばFE は存在し,特にF1 aF: Db →Cbである.

8. X, Y を集合,f: X →Y を写像とし,逆像を考える写像f1: P(Y)→ P(X)を 考える.これは(P(X),P(Y)を包含関係による順序で圏とみなしたとき)関手である.

2 ={0 1}を考えれば圏同型P(X) =2X が成り立つが,このとき今考えている 関手f12Y 3A7→A◦f 2X で与えられる.

Y

X 2

f

f−1(A) A

つまりこのf1は,写像f (離散圏X, Y の間の)関手f: X →Y とみなしたときに得 られる関手f1: 2Y 2X と一致している.

2は余完備だから,系5より関手f1: P(Y)→ P(X)の左随伴関手が存在し,それは 左Kan拡張fである.これを各点左Kan拡張で計算してみよう.

A: X 2に対してfAを求めるため,d∈Y を取りコンマ圏f ↓dを考える.

1 Y

f↓d X 2

= f A d

P1

P0

コンマ圏の定義からf↓d={x ∈X |f(x) =d}=f−1(d)は離散圏である.故に fA(d) = colim(f ↓d−→P0 X −→A 2) = a

xf1(d)

A(x) となるから

(8)

である.即ちA ∈ P(X)に対してfA = f(A)となる.従ってf1: P(Y)→ P(X)の 左随伴関手はf: P(X)3A7→f(A)∈ P(Y)である.

更に2は完備でもあるから,f1の右随伴関手(=右Kan拡張)も存在する.それを各 点右Kan拡張により同様に計算してみると

1 Y

d↓f X 2

= f

A d

fA(d) = lim(d↓f →X −→A 2) = Y

xf1(d)

A(x)

となるから

fA(d) =

0 (あるx∈f−1(d)が存在してA(x) = 0) 1 (そうでないとき)

であり,fA =Y \f(X\A) =:f!(A)となることが分かる*3 以上により,f1: P(Y)→ P(X)は左随伴,右随伴両方を持つ.

P(X) P(Y)

f

f1

f!

従ってf−1は余極限,極限両方と交換する.特に次の等式が成り立つ.

f1(A∪B) =f1(A)∪f1(B), f1(A∩B) =f1(A)∩f1(B).

一方f は左随伴を持たない.それはf と極限が交換しない(例えばf(A∩B) = f(A)∩ f(B)とは限らない)ことから分かる.

9. 位相空間X に対して,Xの開集合全体がなす順序集合OX を圏とみなす.X 上の (集合の)前層とは関手P: OopX Setのことであった.よってOdX := SetOopXX 上 の前層がなす圏である.

X, Y を位相空間,f: X →Y を連続写像とする.このとき,X 上の前層P に対して Y 上の前層fPfP(U) :=P(f1(U))により定まり,関手f: OdX →OdY を順像と

*3このf!(A)small imageと呼ぶ,らしい.

(9)

いうのであった.また関手f は左随伴関手f を持ち,これを逆像というのであった.さ て,F を関手OopY 3 U 7−→f−1(U)∈ OXop とすれば,定義からf = F−1: OdX →OdY

である.

OopX

OopY Set

F

f(P) P

故に左随伴の一意性からf =F が分かる.そこで前層P OdY の逆像FP =f(P) を各点左Kan拡張で計算してみる.

U ∈ OX を取りコンマ圏F ↓U を考える.

1 OXop

F ↓U OYop Set

= F P U

P1

P0

FP(U) = colim(F ↓U −→ OP0 opY −→P Set) = colim

hV,hi∈FUP(V)となる.コンマ圏の定義 から

hV, hi ∈F ↓U ⇐⇒h: F(V)→U in OXop

⇐⇒F(V)⊃U

⇐⇒f1(V)⊃U

⇐⇒V ⊃f(U) となるのでFP(U)= colim

Vf(U)P(V)となり,普段見る逆像の定義が現れる.

10. 各点左Kan拡張で書けない左 Kan拡張は存在する.C :=1 = {∗}D := 2 = {0 1}U = {a, b}とする.F: 1 2F() := 1E: 1 U E() := a で定 める.

2

1 {a, b}

1

a

(10)

関手2→U は∆aと∆bの2つしか存在しない.また自然変換a ∆b1は存在せず,

a ∆a1は唯一つ存在する.よって1a = ∆aである.一方,0 2 に対して各点左 Kan拡張を考えると

1 2

10 1 {a, b}

= 1 a 0

P1

P0

10 = 0だから,colim(10 −→P0 1−→a U)は始対象となるが,{a, b}は明らかに始対象 を持たない.

さて,残っていた証明を終わらせ,定理4の証明を完成させよう.

証明. まずT が関手となることは普遍性から容易に分かる.TEF に沿った左Kan 拡張になっていることを示すため,unitとなる自然変換η: E ⇒T F を定義する.

D

Cη = U

F

E T

c∈C とするとF c∈Dである.T F cは左Kan拡張 1

F ↓F c C U

=

µF c

E T F c P1

P0

で定義されるのであった.hc,idF ci ∈F ↓F cだから,µF chc,id

F ci: Ec T F cとなる.こ れを用いてηc: Ec→T F cηc :=µF chc,id

F ciで定める.このηは自然変換である.

...

) f: c→dに対して

Ec T F c

Ed T F d

µF chc,idF ci

T F f Ef

µF dhd,idF di

(11)

が可換であることを示せばよい.

1

F ↓F d C U

F ↓F c

===

µF c µ=== F dT F f

=

= E

T F c P1

P0

H

T F d

T F f の定義からT F fP1 ◦µF c = µHF d である.故に hc,idF ci ∈ F ↓F c に対して T F f ◦µF chc,id

F ci =µF dhc,F fiとなる.ここでµF d が自然変換だから

F c Ec T F d

F d Ed T F d

F d

µF dhc,F fi

Ef id

µF dhd,id

F di

F f

idF d

F f

が可換である.故に T F f ◦µF chc,id

F ci = µF dhd,id

F di ◦Ef となり示したい可換性が示 せた.

普遍性を示すため,S: D→Uθ: E ⇒SF とする.

D

C U

η = =θ

F

E T

S

d∈Dを取りコンマ圏を考えて,θと合成すると次の図式を得る.

1 D

F ↓d C U

θ

=

=

σF

E d S

P1

P0

=

1

F ↓d C U

=θP0

E P1

P0

S(d)

(12)

余極限T dの普遍性によりτd: T d→Sdが一意に存在し可換となる.

1

F ↓d C U

=

µd

E T(d) P1

P0

S(d0) τd

=θP0

このτd が自然変換τ: T ⇒S を定める.

...

) f: d→d0に対して

T d Sd

T d0 Sd0

τd

Sf T f

τd0

が可換であることを示せばよい.これらの射は次の図式のようになっている.

1

F ↓d0 C U

F ↓d

===

µd ===

µd0

=

= E

P1

P0

H

T d T d0 Sd

Sd0

T f

Sf τd

τd0

よってSfP1 d)P1 ◦µd = (τd0)P1 ◦T fP1 ◦µd が示せれば,左Kan拡張 hT d, µdi の普遍性から SfP1 d)P1 = (τd0)P1 ◦T fP1 が分かる.そのためには,任意の hc, ki ∈F ↓dに対してSf ◦τd ◦µdhc,ki =τd0 ◦T f◦µdhc,ki を示せばよい.

まずT f の定義からT fP1◦µd =µdH0 である.故にT f ◦µdhc,ki =µdhc,f0 kiが成り立 つ.次にτd の定義から(τd)P1◦µd =Sσ◦θP0 だから,τd◦µdhc,ki =Sk◦θc となる.

(13)

よって

Sf ◦τd ◦µdhc,ki =Sf◦Sk◦θc

τd0 ◦T f ◦µdhc,ki =τd0 ◦µdhc,f0 ki

=S(f◦k)◦θc

=Sf◦Sk◦θc となり証明が終わった.

このときc∈Cに対してτF c◦ηc =τF c◦µF chc,id

F ci =θc となるからτF ◦η =θである.

左Kan拡張T d の普遍性により,このようなτ は一意だから,TF に沿ったE の左 Kan拡張である.

定理4の形で得られる左Kan拡張を各点左Kan拡張という.正確には次のように定義 する.

定義. F: C →DE: C →UT:D →U を関手,η: E ⇒T F を自然変換とする.

D

C U

η =

F

E T

hT, ηiF に沿ったE の各点左Kan拡張

⇐⇒ hT, ηi F に沿った E の左 Kan 拡張であり,任意の d D に対して余極限 colim(F ↓d −→P0 C −→E U) が存在する.(このとき定理 4 より T d = colim(F ↓d −→P0 C −→E U)である.)

定義. C, D, U, V を圏,F: C →DE: C →UK: U →V を関手として左Kan拡張 hFE, ηiが存在するとする.

D

C U V

η =

F

E FE

K

このときK が左Kan拡張hFE, ηiと交換するとは,K を合成して得られる次の図式も

(14)

左Kan拡張となることを言う.

D

C U V

=

F

E

K(FE)

K

(即ち,hK◦(FE), KηiF に沿ったKEの左Kan拡張になる.)

定理 11. F: C DE: C →U で各点左Kan拡張FE が存在し,関手K: U V は余極限と交換するとする.このときKFE と交換する.

証明. FE が各点左Kan拡張だから

K◦FE(d) =K(colim(E◦P0)) = colim(K ◦E◦P0) =F(K◦E)(d).

1 D

F ↓d C U V

F

E FE d

P0

F(KE)

K

FE, F(KE)のunitをそれぞれη: E ⇒FE◦Fη0: KE⇒F(KE)◦F とする.

1

F ↓d C U

=

µd

E FE(d) P1

P0

1

F ↓d C U V

=

µ0d

E K

F(KE)(d) P1

P0

とすれば,ηc =µF chc,id

F ciη0c =µ0hc,idF c

F ciである.Kが余極限と交換するからF chc,id

F ci = µ0hF cc,id

F ciとなり,c =ηc0 である.

定理 12. 左随伴関手は左Kan拡張と交換する.

証明. F: C →DE: C →U を関手,LaR: U →V を随伴関手として,左Kan拡張 hFE, ηiが存在するとする.

D

C U V

η =

F

E FE

L R

(15)

La R: UC VCLa R: UD →VD となるのであった.このときS ∈VDに対して 自然に

HomVC(LE, F1(S)) = HomVC(LE, SF)

= HomUC(E, RSF)

= HomUC(E, F1(RS))

= HomUD(FE, RS)

= HomVD(L◦FE, S)

となるからHom(LE, F1()) は表現可能でF(LE) = L◦FE となる.F(LE) の unitは自然同型Hom(LE, F−1(L◦FE))∼= Hom(L◦FE, L◦FE)でidに対応する 自然変換η0: LE F(LE)◦F であった.一方,この同型でidに対応するのは,随伴 LaRのunitをαとすれば

id Hom(L◦FE, L◦FE) αFE Hom(FE, R◦L◦FE) αFEF ◦η Hom(E, R◦L◦FE◦F)

Hom(LE, L◦FE ◦F) D

C U V U

η =

F

E FE

α

L R

id

となるからη0 =である.

3 米田埋込と Kan 拡張

補題13. F: C →DE: C →U を関手としてd∈Dに対してK := (F↓d→C −→E U) と定める.このときu∈U について自然な同型

(16)

が成り立つ.

証明. まず互いに逆な写像

HomUFd(K,∆u) φu HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u))

ψu

を定義しよう.α: K ∆uに対して写像

φu(α)c: HomD(F c, d)HomU(Ec, u) をφu(α)c(f) :=αhc,fiで定義する.このφu(α)は自然変換である.

...

) g:c→c0C の射とする.次の左の図式が可換であることを示せばよい.

HomD(F c, d) HomU(Ec, u)

HomD(F c0, d) HomU(Ec0, u)

φu(α)c

−◦Eg

−◦F g

φu(α)c0

f0◦F g αhc,f0F gi

αhc0,f0i◦Eg f0 αhc0,f0i

φu(α)c

−◦F g −◦Eg

φu(α)c0

そこでf0 HomD(F c0, d)としてf :=f0◦F gと置く.このときコンマ圏の定義か らhc, fi ∈ F ↓dhc0, f0i ∈ F ↓dでありg: hc, fi → hc0, f0iF ↓d の射である.

よって,今α: K ∆u: F ↓d →U が自然変換だから,次の図式は可換である.

Ec u

Ec0 u

αhc,fi

Eg id

αhc0,f0i

即ちαhc0,f0i◦Eg =αhc,fi =αhc,f0F giとなり,示したい可換性が分かった.

故に φu は写像 φu: HomUF↓d(K,∆u) HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u)) を与 える.

次にβ: HomD(F−, d)⇒HomU(E−, u)に対してU の射 ψu(β)hc,fi: Khc, fi=Ec→u

ψu(β)hc,fi :=βc(f)で定める.これは自然変換ψu(β) : K ∆uを定める.

(17)

...

) g: hc, fi → hc0, f0iF↓dの射とする.即ちg: c→c0Cの射でf0◦F g=f となる.次の図式が可換であることを示せばよい.

Ec u

Ec0 u

βc(f)

Eg id

βc0(f0)

βが自然変換だから次が可換である.

HomD(F c, d) HomU(Ec, u)

HomD(F c0, d) HomU(Ec0, u)

βc

−◦Eg

−◦F g

βc0

f0◦F g=f βc(f) βc0(f0)◦Eg f0 βc0(f0)

βc

−◦Eg

−◦F g

βc0

故にβc0(f0)◦Eg =βc(f)である.

このときφu ◦ψu = id,ψu◦φu = idである.

...

) まずα:K ∆u,hc, fi ∈F ↓dに対して ψu◦φu(α)

hc,fi=ψuu(α))hc,fi =φu(α)c(f) =αhc,fi

だからψu◦φu = idである.次にβ: HomD(F−, d)⇒HomU(E−, u)に対して φu◦ψu(β)

c(f) =φuu(β))c(f) =ψu(β)hc,fi =βc(f) だからψu◦φu = idである.

従ってφu は同型である.

後はφuuについて自然であることを示せばよい.そのためにはU の射k: u→vに 対して次の図式が可換であることを示せばよい.(ここでξ は次で定義される自然変換で ある: c∈Cに対してξc := (k◦ −) : HomU(Ec, u)HomU(Ec, v).)

HomUFd(K,∆u) HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u))

φu

ξ◦−

(∆k)◦−

(18)

即ちα HomUFd(K,∆u)に対して等式φv((∆k)◦α) =ξ◦φu(α)を示せばよい.それ はhc, fi ∈F ↓dに対して

φv((∆k)◦α)c(f) = ((∆k)◦α)hc,fi =k◦αhc,fi

ξ◦φu(α)

c(f) = ξc◦φu(α)c

(f) =ξcu(α)c(f)) =k◦αhc,fi となるから分かる.

補題 14. F: C →DE: C →UT, S: D→U を関手として,d ∈Du ∈U につい て自然な同型

φdu: HomU(T d, u)HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u)) が存在するとする.d∈Dに対してτd: T d→SdU の射として

ρd :=φd,Sdd) : HomD(F−, d)⇒HomU(E−, Sd) と置く.このとき

τddについて自然⇐⇒ρddについて自然

証明. f: d→ d0Dの射とする.自然変換ξ: HomU(E−, Sd)⇒ HomU(E−, Sd0)を c∈C に対して

ξc :=Sf ◦ −: HomU(Ec, Sd)HomU(Ec, Sd0) により定める.このときφduu∈U について自然だから

HomU(T d, Sd) HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, Sd))

HomU(T d, Sd0) HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, Sd0))

φd,Sd

ξ◦−

Sf◦−

φd,Sd0

は可換である.よってこの図式でのτd の行き先を考えればφd,Sd0(Sf◦τd) =ξ◦ρd が分 かる.同様にして自然変換ζ: HomD(F−, d)⇒HomD(F−, d0)c∈C に対して

ζc :=f◦ −: HomD(F c, d)HomD(F c, d0) により定めれば,φdud∈U について自然だから

HomU(T d0, Sd0) HomCb(HomD(F−, d0),HomU(E−, Sd0))

HomU(T d, Sd0) HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, Sd0))

φd0,Sd0

−◦ζ

−◦T f

φd,Sd0

(19)

が可換となり,τd0 の行き先を考えればφd,Sd0d0◦T f) =ρd0◦ζが分かる.ここでτddについて自然とは

T d Sd

T d0 Sd0

τd

Sf T f

τd0

が可換であること,即ちSf◦τd =τd0 ◦T f である.またρddについて自然とは HomD(F−, d) HomU(E−, Sd)

HomD(F−, d0) HomU(E−, Sd0)

ρd

ξ ζ

ρd0

が可換であること,即ちξ◦ρd =ρd0◦ζ である.今φd,Sd0 が全単射であるから Sf ◦τd =τd0◦T f ⇐⇒ξ◦ρd =ρd0◦ζ

となり「τddについて自然⇐⇒ρcddについて自然」が分かる.

定理 15. C, D, U を圏,F: C →DE: C →UT: D →U を関手とする.以下の条 件は同値である.

(1) あるη: E ⇒T F が存在してhT, ηiF に沿ったE の各点左Kan拡張になる.

(2) あるη: E T F が存在してhT, ηiF に沿ったE の左 Kan拡張になり,任意 のu∈U に対してHomU(−, u) : U SetophT, ηiと交換する.

(3) d∈Du∈U について自然な同型

HomU(T d, u)= HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u)) が存在する.

証明. (1 = 2)HomU(−, u) : U Setop が余極限と交換するから明らか.

(2 = 3) Kan拡張hT, ηiが存在し,HomU(−, u)がそれと交換するから F に沿っ たHomU(E−, u)の左Kan拡張も存在し,それはHomU(T−, u)である.

D

op F

T

F(Hom(E,u))

参照

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