Kan 拡張
alg-d
http://alg-d.com/math/kan_extension/
2021 年 4 月 2 日
目次
1 定義 1
2 各点Kan拡張 3
3 米田埋込とKan拡張 15
4 普遍随伴 30
1 定義
関手F: C →Dと圏U に対して,関手F−1: UD →UC がF−1(S) :=S◦F により 定まるのであった(第1章「自然変換・関手圏」のPDFを参照.).
定義. C, D, U を圏,F: C →D,E: C →U を関手とする.F に沿ったE の左Kan拡 張とは,E からF−1への普遍射hF†E, ηiのことをいう.
E F†E◦F F†E
S◦F S
η
θ τF τ
即ち,以下の条件を満たすhF†E, ηiのことである.
(1) F†E は関手D→U で,ηは自然変換E ⇒F†E◦F である.
D
C U
η =⇒
F
E F†E
(2) 組hS, θiが同じ条件を満たす(即ち S: D → U は関手でθ: E ⇒ S ◦F は自然変 換) ならば,自然変換τ: F†E ⇒S が一意に存在してθ = τF ◦ηとなる.即ち次 の等式が成り立つ.
D
Cη =⇒ U
F
E F†E
S
τ =
D
C U
=⇒
F θ
E S
自然変換ηを左Kan拡張hF†E, ηiのunitと呼ぶ.また,F に沿ったE の右Kan拡張 hF‡E, εiが自然変換の向きを逆にして得られる.
D
C ε ⇐= U
F
E F‡E
S
τ =
D
C U
⇐=
F θ
E S
左Kan拡張F†E をLanFE,右Kan拡張F‡E をRanFE と書くこともある*1. 普遍射の性質(第1章「極限」のPDFを参照) から次の命題が分かる.
命題 1. F: C →D,E: C →U に対して関手HomUC(E, F−1(−)) : UD →Setが得ら れる.このとき
HomUC(E, F−1(−))が表現可能関手⇐⇒F†E が存在する
が成り立つ.またこのときHomUC(E, F−1(−)) ∼= HomUD(F†E,−)が成り立つ.これ から得られる同型HomUC(E, F−1(F†E)) ∼= HomUD(F†E, F†E)で右辺のidF†E に対 応する左辺のη: E ⇒F−1(F†E)が,左Kan拡張F†Eのunitである.
*1というか,大抵の本・論文ではLanやRanが使われている.
命題 2. 各E ∈ UC に対して,F に沿った左 Kan拡張F†E ∈ UD が存在するとする.
このときF†は関手F−1: UD → UC の左随伴関手を定める.随伴F† a F−1 のunitを η: idUC ⇒ F−1◦F† とするとき,E ∈ UC に対してηE がF†E のunitとなる.同様 に右Kan拡張F‡: UC → UD はF−1 の右随伴関手である.即ちF† aF−1 a F‡ とな る.
例 3. 関手E: J →U に対して余極限colimE とはE から対角関手∆ : U →UJ への普 遍射E ⇒∆(colimE)であった.一方1 ={∗}を一点圏としてF: J →1を唯一の関手 とすれば,∆とはF−1: U1 ∼= U →UJ のことである.F に沿ったE の左Kan拡張は 普遍射E ⇒∆(F†E)であるから,普遍射の一意性からF†E ∼= colimE が分かる.
1
J =⇒ U
F
E
F†E∼= colimE
即ち,余極限は左Kan拡張である.同様にして,極限は右Kan拡張である.
2 各点 Kan 拡張
余極限(極限)が左Kan拡張(右Kan拡張)であることを使うと,「各点Kan拡張」と いう方法でKan拡張を計算することができる.C, D, U を圏,F: C → D,E: C → U を関手として,左Kan拡張F†E: D→U が存在するとする.
D
C =⇒ U
F
E F†E
d ∈Dに対してF†E(d)を計算したい.dをd(∗) = dとなる関手d: 1→ Dとみなして コンマ圏F ↓dを考えれば次の図式を得る.
1 D
↓ ⇒ = F =⇒ F†E d
P1
自然変換を合成すれば次の図式を得る.
1
F ↓d =⇒ U
F†E(d) P1
E◦P0
P1 に沿った左Kan拡張は余極限になるから,もしこれが左Kan拡張であれば(実は一般 にはそうなるとは限らない),F†E(d) ∼= colim(E ◦P0)となり,左Kan拡張が余極限に 帰着できる.
以上を踏まえてC, D, U を圏,F: C →D,E: C →U を関手とする.
D
C U
F
E
d∈Dに対してコンマ圏F ↓dを考えれば次の図式を得る.
1 D
F ↓d C U
⇒ = F E d
P1
P0
今,左Kan拡張hP1†(E ◦P0), µdi,即ち余極限colim(F ↓d −→P0 C −→E U)が存在すると 仮定しよう.これを使ってT(d) := colim(F ↓d −→P0 C −→E U)と定義する.
1
F ↓d C U
=⇒
µd
E T(d) P1
P0
次に射f: d→d0 に対してT f を定める.f: d →d0は自然変換 1 f ⇒ D
d0 d
と同一視できることに注意する.コンマ圏F ↓d,F ↓d0を考える.
1 D
F ↓d C
⇒ =
θ F
d
P1
P0
1 D
F ↓d0 C
⇒ =
θ0 F
d0
P10
P00
左の図式とf を組み合わせて,次の図式が得られる.
1 D
F ↓d C
⇒ =
θ
⇒f F d0
d P1
P0
コンマ圏F ↓d0 の普遍性(「コンマ圏」のPDFを参照)により関手H: F ↓d → F ↓d0 が存在し次の等号が成り立つ.
1 D
F ↓d0 C F ↓d
⇒ =
θ0
=
=
F d0
P10
P00 P1
P0
H
=
1 D
C F ↓d
⇒ =
θ
⇒f F d0
d P1
P0
今,余極限T(d) = colim(F ↓d−→P0 C −→E U),T(d0) = colim(F ↓d0 P
0
−→0 C −→E U)が存 在するのであった.
1
C U
F ↓d
=⇒
µd
E T(d) P1
P0
1
F ↓d0 C U
F ↓d
=⇒
µd0
=
= E
T(d0) P10
P00 P1
P0
H
故に左Kan拡張hT(d), µdiの普遍性により射T f: T(d) →T(d0)が存在して次の等式が
成り立つ.
1
C U
F ↓d
=⇒
µd
⇒ T f
E T(d) P1
P0
T(d0)
=
1
F ↓d0 C U
F ↓d
=⇒
µd0
=
= E
T(d0) P10
P00 P1
P0
H
このときT は関手T: D → U となり,T がF に沿ったE の左 Kan拡張となることが 分かる.このことは後で証明することにして認めてしまえば,次の定理が得られる.
定理 4. C, D, U を圏,F: C → D,E: C →U を関手とする.各d ∈D に対して余極 限colim(F ↓d−→P0 C −→E U)が存在するならば,F に沿ったE の左Kan拡張F†E が存 在してF†E(d)∼= colim(F ↓d−→P0 C −→E U)となる.
C が小圏ならばF ↓dも小圏となる.故に次の系が得られる.
系 5. C, D, U を圏,F: C →Dを関手とする.U が余完備で,C が小圏ならば,任意の 関手E: C → U に対して左Kan拡張F†E が存在する.故にこの場合F−1 は左随伴を 持ちF† aF−1: UC →UD となる.
Setは余完備であったから次の系を得る.
系 6. C, D を小圏,F: C →D を関手とする.任意の関手E: Cop → Setに対して左 Kan拡張F†E: Dop →Setが存在する.
Dop
Cop =⇒ Set
F
E F†E
故に随伴F†aF−1: Cb→Db が成り立つ*2.
右Kan拡張に関しても,同様にして次の定理が得られる.
定理 7. C, D, U を圏として,F: C → D,E: C → U を関手とする.各d ∈ Dに対し て極限lim(d↓F → C −→E U)が存在するならば,F に沿ったE の右Kan拡張F‡E が
*2正確には(Fop)†a(Fop)−1であるが,単にF†aF−1と書いている.
存在してF‡E(d)∼= lim(d↓F →C −→E U)となる.
1 D
d↓F C U
=⇒
=⇒ F
E F‡E d
故にU が完備でC が小圏ならばF‡E は存在し,特にF−1 aF‡: Db →Cbである.
例 8. X, Y を集合,f: X →Y を写像とし,逆像を考える写像f−1: P(Y)→ P(X)を 考える.これは(P(X),P(Y)を包含関係による順序で圏とみなしたとき)関手である.
圏2 ={0→ 1}を考えれば圏同型P(X) ∼=2X が成り立つが,このとき今考えている 関手f−1 は2Y 3A7→A◦f ∈2X で与えられる.
Y
X 2
f
f−1(A) A
つまりこのf−1は,写像f を(離散圏X, Y の間の)関手f: X →Y とみなしたときに得 られる関手f−1: 2Y →2X と一致している.
2は余完備だから,系5より関手f−1: P(Y)→ P(X)の左随伴関手が存在し,それは 左Kan拡張f†である.これを各点左Kan拡張で計算してみよう.
A: X →2に対してf†Aを求めるため,d∈Y を取りコンマ圏f ↓dを考える.
1 Y
f↓d X 2
⇒ = f A d
P1
P0
コンマ圏の定義からf↓d={x ∈X |f(x) =d}=f−1(d)は離散圏である.故に f†A(d) = colim(f ↓d−→P0 X −→A 2) = a
x∈f−1(d)
A(x) となるから
−
である.即ちA ∈ P(X)に対してf†A = f(A)となる.従ってf−1: P(Y)→ P(X)の 左随伴関手はf: P(X)3A7→f(A)∈ P(Y)である.
更に2は完備でもあるから,f−1の右随伴関手(=右Kan拡張)も存在する.それを各 点右Kan拡張により同様に計算してみると
1 Y
d↓f X 2
=⇒ f
A d
f‡A(d) = lim(d↓f →X −→A 2) = Y
x∈f−1(d)
A(x)
となるから
f‡A(d) =
0 (あるx∈f−1(d)が存在してA(x) = 0) 1 (そうでないとき)
であり,f‡A =Y \f(X\A) =:f!(A)となることが分かる*3. 以上により,f−1: P(Y)→ P(X)は左随伴,右随伴両方を持つ.
P(X) P(Y)
f
⊥ f−1
⊥ f!
従ってf−1は余極限,極限両方と交換する.特に次の等式が成り立つ.
f−1(A∪B) =f−1(A)∪f−1(B), f−1(A∩B) =f−1(A)∩f−1(B).
一方f は左随伴を持たない.それはf と極限が交換しない(例えばf(A∩B) = f(A)∩ f(B)とは限らない)ことから分かる.
例 9. 位相空間X に対して,Xの開集合全体がなす順序集合OX を圏とみなす.X 上の (集合の)前層とは関手P: OopX → Setのことであった.よってOdX := SetOopX がX 上 の前層がなす圏である.
X, Y を位相空間,f: X →Y を連続写像とする.このとき,X 上の前層P に対して Y 上の前層f∗P がf∗P(U) :=P(f−1(U))により定まり,関手f∗: OdX →OdY を順像と
*3このf!(A)をsmall imageと呼ぶ,らしい.
いうのであった.また関手f∗ は左随伴関手f∗ を持ち,これを逆像というのであった.さ て,F を関手OopY 3 U 7−→f−1(U)∈ OXop とすれば,定義からf∗ = F−1: OdX →OdY
である.
OopX
OopY Set
F
f∗(P) P
故に左随伴の一意性からf∗ ∼=F† が分かる.そこで前層P ∈ OdY の逆像F†P ∼=f∗(P) を各点左Kan拡張で計算してみる.
U ∈ OX を取りコンマ圏F ↓U を考える.
1 OXop
F ↓U OYop Set
⇒ = F P U
P1
P0
F†P(U) ∼= colim(F ↓U −→ OP0 opY −→P Set) ∼= colim
hV,hi∈F↓UP(V)となる.コンマ圏の定義 から
hV, hi ∈F ↓U ⇐⇒h: F(V)→U in OXop
⇐⇒F(V)⊃U
⇐⇒f−1(V)⊃U
⇐⇒V ⊃f(U) となるのでF†P(U)∼= colim
V⊃f(U)P(V)となり,普段見る逆像の定義が現れる.
例 10. 各点左Kan拡張で書けない左 Kan拡張は存在する.C :=1 = {∗},D := 2 = {0 → 1},U = {a, b}とする.F: 1 → 2をF(∗) := 1,E: 1 → U をE(∗) := a で定 める.
2
1 {a, b}
1
a
関手2→U は∆aと∆bの2つしか存在しない.また自然変換a ⇒∆b◦1は存在せず,
a ⇒ ∆a◦1は唯一つ存在する.よって1†a = ∆aである.一方,0 ∈2 に対して各点左 Kan拡張を考えると
1 2
1↓0 1 {a, b}
⇒ = 1 a 0
P1
P0
1↓0 = 0だから,colim(1↓0 −→P0 1−→a U)は始対象となるが,{a, b}は明らかに始対象 を持たない.
さて,残っていた証明を終わらせ,定理4の証明を完成させよう.
証明. まずT が関手となることは普遍性から容易に分かる.T がE のF に沿った左Kan 拡張になっていることを示すため,unitとなる自然変換η: E ⇒T F を定義する.
D
Cη =⇒ U
F
E T
c∈C とするとF c∈Dである.T F cは左Kan拡張 1
F ↓F c C U
=⇒
µF c
E T F c P1
P0
で定義されるのであった.hc,idF ci ∈F ↓F cだから,µF chc,id
F ci: Ec → T F cとなる.こ れを用いてηc: Ec→T F cをηc :=µF chc,id
F ciで定める.このηは自然変換である.
...
) f: c→dに対して
Ec T F c
Ed T F d
µF chc,idF ci
T F f Ef
µF dhd,idF di
が可換であることを示せばよい.
1
F ↓F d C U
F ↓F c
===⇒
µF c µ===⇒ F d⇒T F f
=
= E
T F c P1
P0
H
T F d
T F f の定義からT F fP1 ◦µF c = µHF d である.故に hc,idF ci ∈ F ↓F c に対して T F f ◦µF chc,id
F ci =µF dhc,F fiとなる.ここでµF d が自然変換だから
F c Ec T F d
F d Ed T F d
F d
µF dhc,F fi
Ef id
µF dhd,id
F di
F f
idF d
F f
が可換である.故に T F f ◦µF chc,id
F ci = µF dhd,id
F di ◦Ef となり示したい可換性が示 せた.
普遍性を示すため,S: D→U,θ: E ⇒SF とする.
D
C U
η =⇒ =⇒θ
F
E T
S
d∈Dを取りコンマ圏を考えて,θと合成すると次の図式を得る.
1 D
F ↓d C U
θ
=⇒
⇒ =
σF
E d S
P1
P0
=
1
F ↓d C U
=⇒Sσ◦θP0
E P1
P0
S(d)
余極限T dの普遍性によりτd: T d→Sdが一意に存在し可換となる.
1
F ↓d C U
=⇒
µd
E T(d) P1
P0
S(d0) τd
=⇒Sσ◦θP0
このτd が自然変換τ: T ⇒S を定める.
...
) f: d→d0に対して
T d Sd
T d0 Sd0
τd
Sf T f
τd0
が可換であることを示せばよい.これらの射は次の図式のようになっている.
1
F ↓d0 C U
F ↓d
===⇒
µd ===⇒
µd0
=
= E
P1
P0
H
T d T d0 Sd
Sd0
⇒T f
⇒Sf τd
τd0
よってSfP1 ◦(τd)P1 ◦µd = (τd0)P1 ◦T fP1 ◦µd が示せれば,左Kan拡張 hT d, µdi の普遍性から SfP1 ◦ (τd)P1 = (τd0)P1 ◦T fP1 が分かる.そのためには,任意の hc, ki ∈F ↓dに対してSf ◦τd ◦µdhc,ki =τd0 ◦T f◦µdhc,ki を示せばよい.
まずT f の定義からT fP1◦µd =µdH0 である.故にT f ◦µdhc,ki =µdhc,f0 ◦kiが成り立 つ.次にτd の定義から(τd)P1◦µd =Sσ◦θP0 だから,τd◦µdhc,ki =Sk◦θc となる.
よって
Sf ◦τd ◦µdhc,ki =Sf◦Sk◦θc
τd0 ◦T f ◦µdhc,ki =τd0 ◦µdhc,f0 ◦ki
=S(f◦k)◦θc
=Sf◦Sk◦θc となり証明が終わった.
このときc∈Cに対してτF c◦ηc =τF c◦µF chc,id
F ci =θc となるからτF ◦η =θである.
左Kan拡張T d の普遍性により,このようなτ は一意だから,T はF に沿ったE の左 Kan拡張である.
定理4の形で得られる左Kan拡張を各点左Kan拡張という.正確には次のように定義 する.
定義. F: C →D,E: C →U,T:D →U を関手,η: E ⇒T F を自然変換とする.
D
C U
η =⇒
F
E T
hT, ηiがF に沿ったE の各点左Kan拡張
⇐⇒ hT, ηi が F に沿った E の左 Kan 拡張であり,任意の d ∈ D に対して余極限 colim(F ↓d −→P0 C −→E U) が存在する.(このとき定理 4 より T d ∼= colim(F ↓d −→P0 C −→E U)である.)
定義. C, D, U, V を圏,F: C →D,E: C →U,K: U →V を関手として左Kan拡張 hF†E, ηiが存在するとする.
D
C U V
η =⇒
F
E F†E
K
このときK が左Kan拡張hF†E, ηiと交換するとは,K を合成して得られる次の図式も
左Kan拡張となることを言う.
D
C U V
Kη =⇒
F
E
K◦(F†E)
K
(即ち,hK◦(F†E), KηiがF に沿ったKEの左Kan拡張になる.)
定理 11. F: C → D,E: C →U で各点左Kan拡張F†E が存在し,関手K: U → V は余極限と交換するとする.このときK はF†E と交換する.
証明. F†E が各点左Kan拡張だから
K◦F†E(d) =K(colim(E◦P0)) = colim(K ◦E◦P0) =F†(K◦E)(d).
1 D
F ↓d C U V
F
E F†E d
P0
F†(K◦E)
K
F†E, F†(KE)のunitをそれぞれη: E ⇒F†E◦F,η0: KE⇒F†(KE)◦F とする.
1
F ↓d C U
=⇒
µd
E F†E(d) P1
P0
1
F ↓d C U V
=⇒
µ0d
E K
F†(KE)(d) P1
P0
とすれば,ηc =µF chc,id
F ci,η0c =µ0hc,idF c
F ciである.Kが余極限と交換するからKµF chc,id
F ci = µ0hF cc,id
F ciとなり,Kηc =ηc0 である.
定理 12. 左随伴関手は左Kan拡張と交換する.
証明. F: C →D,E: C →U を関手,LaR: U →V を随伴関手として,左Kan拡張 hF†E, ηiが存在するとする.
D
C U V
η =⇒
F
E F†E
L R
La R: UC → VC,La R: UD →VD となるのであった.このときS ∈VDに対して 自然に
HomVC(LE, F−1(S)) = HomVC(LE, SF)
∼= HomUC(E, RSF)
= HomUC(E, F−1(RS))
∼= HomUD(F†E, RS)
∼= HomVD(L◦F†E, S)
となるからHom(LE, F−1(−)) は表現可能でF†(LE) ∼= L◦F†E となる.F†(LE) の unitは自然同型Hom(LE, F−1(L◦F†E))∼= Hom(L◦F†E, L◦F†E)でidに対応する 自然変換η0: LE ⇒ F†(LE)◦F であった.一方,この同型でidに対応するのは,随伴 LaRのunitをαとすれば
id ∈ Hom(L◦F†E, L◦F†E) αF†E ∈ Hom(F†E, R◦L◦F†E) αF†E◦F ◦η ∈ Hom(E, R◦L◦F†E◦F)
Lη ∈ Hom(LE, L◦F†E ◦F) D
C U V U
η =⇒
F
E F†E
⇒α
L R
id
となるからη0 =Lηである.
3 米田埋込と Kan 拡張
補題13. F: C →D,E: C →U を関手としてd∈Dに対してK := (F↓d→C −→E U) と定める.このときu∈U について自然な同型
が成り立つ.
証明. まず互いに逆な写像
HomUF↓d(K,∆u) φu HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u))
ψu
を定義しよう.α: K ⇒∆uに対して写像
φu(α)c: HomD(F c, d)→HomU(Ec, u) をφu(α)c(f) :=αhc,fiで定義する.このφu(α)は自然変換である.
...
) g:c→c0をC の射とする.次の左の図式が可換であることを示せばよい.
HomD(F c, d) HomU(Ec, u)
HomD(F c0, d) HomU(Ec0, u)
φu(α)c
−◦Eg
−◦F g
φu(α)c0
f0◦F g αhc,f0◦F gi
αhc0,f0i◦Eg f0 αhc0,f0i
φu(α)c
−◦F g −◦Eg
φu(α)c0
そこでf0 ∈ HomD(F c0, d)としてf :=f0◦F gと置く.このときコンマ圏の定義か らhc, fi ∈ F ↓d,hc0, f0i ∈ F ↓dでありg: hc, fi → hc0, f0iはF ↓d の射である.
よって,今α: K ⇒∆u: F ↓d →U が自然変換だから,次の図式は可換である.
Ec u
Ec0 u
αhc,fi
Eg id
αhc0,f0i
即ちαhc0,f0i◦Eg =αhc,fi =αhc,f0◦F giとなり,示したい可換性が分かった.
故に φu は写像 φu: HomUF↓d(K,∆u) → HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u)) を与 える.
次にβ: HomD(F−, d)⇒HomU(E−, u)に対してU の射 ψu(β)hc,fi: Khc, fi=Ec→u
をψu(β)hc,fi :=βc(f)で定める.これは自然変換ψu(β) : K ⇒∆uを定める.
...
) g: hc, fi → hc0, f0iをF↓dの射とする.即ちg: c→c0はCの射でf0◦F g=f となる.次の図式が可換であることを示せばよい.
Ec u
Ec0 u
βc(f)
Eg id
βc0(f0)
βが自然変換だから次が可換である.
HomD(F c, d) HomU(Ec, u)
HomD(F c0, d) HomU(Ec0, u)
βc
−◦Eg
−◦F g
βc0
f0◦F g=f βc(f) βc0(f0)◦Eg f0 βc0(f0)
βc
−◦Eg
−◦F g
βc0
故にβc0(f0)◦Eg =βc(f)である.
このときφu ◦ψu = id,ψu◦φu = idである.
...
) まずα:K ⇒∆u,hc, fi ∈F ↓dに対して ψu◦φu(α)
hc,fi=ψu(φu(α))hc,fi =φu(α)c(f) =αhc,fi
だからψu◦φu = idである.次にβ: HomD(F−, d)⇒HomU(E−, u)に対して φu◦ψu(β)
c(f) =φu(ψu(β))c(f) =ψu(β)hc,fi =βc(f) だからψu◦φu = idである.
従ってφu は同型である.
後はφuがuについて自然であることを示せばよい.そのためにはU の射k: u→vに 対して次の図式が可換であることを示せばよい.(ここでξ は次で定義される自然変換で ある: c∈Cに対してξc := (k◦ −) : HomU(Ec, u)→HomU(Ec, v).)
HomUF↓d(K,∆u) HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u))
− −
φu
ξ◦−
(∆k)◦−
即ちα ∈HomUF↓d(K,∆u)に対して等式φv((∆k)◦α) =ξ◦φu(α)を示せばよい.それ はhc, fi ∈F ↓dに対して
φv((∆k)◦α)c(f) = ((∆k)◦α)hc,fi =k◦αhc,fi
ξ◦φu(α)
c(f) = ξc◦φu(α)c
(f) =ξc(φu(α)c(f)) =k◦αhc,fi となるから分かる.
補題 14. F: C →D,E: C →U,T, S: D→U を関手として,d ∈D,u ∈U につい て自然な同型
φdu: HomU(T d, u)→HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u)) が存在するとする.d∈Dに対してτd: T d→SdをU の射として
ρd :=φd,Sd(τd) : HomD(F−, d)⇒HomU(E−, Sd) と置く.このとき
τd がdについて自然⇐⇒ρd がdについて自然
証明. f: d→ d0 をDの射とする.自然変換ξ: HomU(E−, Sd)⇒ HomU(E−, Sd0)を c∈C に対して
ξc :=Sf ◦ −: HomU(Ec, Sd)→HomU(Ec, Sd0) により定める.このときφdu がu∈U について自然だから
HomU(T d, Sd) HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, Sd))
HomU(T d, Sd0) HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, Sd0))
φd,Sd
ξ◦−
Sf◦−
φd,Sd0
は可換である.よってこの図式でのτd の行き先を考えればφd,Sd0(Sf◦τd) =ξ◦ρd が分 かる.同様にして自然変換ζ: HomD(F−, d)⇒HomD(F−, d0)をc∈C に対して
ζc :=f◦ −: HomD(F c, d)→HomD(F c, d0) により定めれば,φdu がd∈U について自然だから
HomU(T d0, Sd0) HomCb(HomD(F−, d0),HomU(E−, Sd0))
HomU(T d, Sd0) HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, Sd0))
φd0,Sd0
−◦ζ
−◦T f
φd,Sd0
が可換となり,τd0 の行き先を考えればφd,Sd0(τd0◦T f) =ρd0◦ζが分かる.ここでτd が dについて自然とは
T d Sd
T d0 Sd0
τd
Sf T f
τd0
が可換であること,即ちSf◦τd =τd0 ◦T f である.またρd がdについて自然とは HomD(F−, d) HomU(E−, Sd)
HomD(F−, d0) HomU(E−, Sd0)
ρd
ξ ζ
ρd0
が可換であること,即ちξ◦ρd =ρd0◦ζ である.今φd,Sd0 が全単射であるから Sf ◦τd =τd0◦T f ⇐⇒ξ◦ρd =ρd0◦ζ
となり「τd がdについて自然⇐⇒ρcdがdについて自然」が分かる.
定理 15. C, D, U を圏,F: C →D,E: C →U,T: D →U を関手とする.以下の条 件は同値である.
(1) あるη: E ⇒T F が存在してhT, ηiがF に沿ったE の各点左Kan拡張になる.
(2) あるη: E ⇒ T F が存在してhT, ηiがF に沿ったE の左 Kan拡張になり,任意 のu∈U に対してHomU(−, u) : U →SetopがhT, ηiと交換する.
(3) d∈D,u∈U について自然な同型
HomU(T d, u)∼= HomCb(HomD(F−, d),HomU(E−, u)) が存在する.
証明. (1 =⇒ 2)HomU(−, u) : U →Setop が余極限と交換するから明らか.
(2 =⇒ 3) 左Kan拡張hT, ηiが存在し,HomU(−, u)がそれと交換するから F に沿っ たHomU(E−, u)の左Kan拡張も存在し,それはHomU(T−, u)である.
D
op F
T
F†(Hom(E−,u))