降積雪時における自動車系道路の横断歩行環境
著者 寺内 義典, 三村 泰広, 本多 義明
雑誌名 福井大学地域環境研究教育センター研究紀要 「日
本海地域の自然と環境」
巻 8
ページ 39‑44
発行年 2001‑11‑01
URL http://hdl.handle.net/10098/7779
福井大学地域環境研究教育センター研究紀要
「日本海地域の自然と環境j No.8, 39-44, 2∞ l
降積雪時における自動車系道路の横断歩行環境
Walking Environrnent at Intersection Facilities in Snowy Season
寺内義典ホ (国士舘大学工学部) 三村泰広T
(福井大学大学院) 本多義明主
(福井大学工学部) 1.はじめに
地方都市中心部では自動車と歩行者の交通集中が避けられず、歩行者の自動車系道路の横断におい て問題を抱えている。この問題は、 降積雪時において一層深刻となる。今後の超高齢社会の到来を考 えると、あらゆる人々の社会参加を実現するまちづくりをなすためにも、歩行の大きなバリアのひと つである自動車系道路の横断環境の改善が必要である。
このような問題意識に基づき、地方都市中心部の信号交差点を対象に、降積雪時における横断歩道 や地下道といった横断施設の歩行者特性調査と、その利用状況についての意識調査をおこなった。以 下にその成果を報告する。
2. 横断歩行特性の調査 (1) 調査方法
降積雪地域にある福井市の中心市街地に位置する大名町交差点において、特にその東方向の駅前大 通を横断する歩行者を対象に横断歩行特性調査を行った。この道路は横断歩道と地下道が併設されて おり、平面横断と立体横断それぞれの横断施設の選好を比較することが可能である。大名町交差点の 周辺には駅前商店街などの商業施設や地下駐車場 ・路面電車の停留所等の交通施設が集中しており、
歩行者交通量の多い交差点、である。 一方で、自動車交通量も多く、多車線広幅員の道路が交差してい ることから横断距離も長いなどの問題を有している。図 1 に調査対象とした横断箇所を示す。
横断歩行の歩行特性調査は横断歩道と地下道のそれぞれで行った。横断歩道の歩行特性調査では、
歩行速度を計測し、個人属性(性別・高齢/非高齢)、青点滅時、右左折車接近時などで集計した。な お、歩行速度の計測にはビデオ撮影を用いる。地下道では、歩行速度は調査せず横断時に利用した出 入り口と個人属性(性別・高齢/非高齢)を目視により記録した。なお、ここでは高齢者を 60 歳以上
としている。
(キーワード:歩行環境、横断施設、バリアフリー、冬期道路)
*
Yoshinori TERAUCHI, Faculty of Engineering, Kokushikan University, 154‑8515 JAPAN t Yasuhiro MlMURA, Graduate School of Engineering, Fukui University, 910‑8507 JAPAN t Yoshiaki HONDA, Faculty of Engineering, Fukui Universit y, 910‑8507 JAPAN寺内義典・ 三村 泰広・本多義明
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地下道入り口
織協ビル
図 1 調査対象横断箇所
降積雪時 972
| ロ非高齢・高齢 [
95%
自
83%
0% 50% 100%
両市齢・ ~ti副
無雪時 348
。 500 1000 [人]
図 2 高齢/非高齢別横断者数 図 3 横断者に占める高齢者の割合
|
ロ地下道図横断歩道
|降積雪時 475
無雪時
。 200 400 600 800 1000 [人]
図 4 横断施設別の横断者数
以上の項目を平成 13 年 1 月 14 日(日) 13:00----17:00 と 1 月 15 日(月) 7:30----9:00 の両日において 調査した。調査時間は、歩行者交通量がピークとなる時間を選んでいる。また、降積雪のなかった平 成 13 年 3 月 9 日 13:∞ ----15:00 に降積雪時との比較データを採取した。歩行速度は図 1 に示す No. 1 ----2、 2----3 、 3----4 の 3 区間で測定している。ここでは特に左折車接近の影響をみることができる No.1 ----2区間で採取したデータを用いている。
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降積雪時における自動車系道路の横断歩行環境
図 2""4 に調査対象となった横断歩行者数を高齢者/非高齢者別、横断歩道/地下道別で示す。な お、割合でみると降積雪時において高齢者が減少しているが、降積雪によって高齢者の外出行動や対 象横断箇所での歩行が妨げられていることによるものかどうかは明らかでない。
ビデオ画像ならびに現場での目視による調査において高齢/非高齢を判別しているが、 これらの調 査と同時に 50 人程度の歩行者に対して年齢階層をヒアリシグしたところ、 78% の割合でヒアリング調 査と適合している。
(2) 横断歩道と地下道の選好
降積雪時と無雪時において、横断歩道と地下道の交通量の変化をみた。図 5 にその結果を示す。
全体でみると、降積雪時には地下道利用の割合が高く、 降積雪時では約半数に近い 46% であった。
そこで、この地下道を利用した人の割合を地下道選択率として、高齢者と非高齢者の差をみた。図 6 から、降積雪時の高齢者の地下道選択率が非高齢者に比べ若干低下している。
(3 )横断歩道の歩行速度
横断歩道利用者の歩行速度分布から歩行特性をみた。高齢/非高齢での違いを図 7、表 1 にまとめ る。高齢/非高齢に関わらず降積雪時では無雪時よりも歩行速度が増加する傾向が見られる。ただし
同時積雪時国知雪時l
46%
47%
全体 非高齢 高齢
|
ロ地下道 図横断歩道|
降積雪時
無雪時
60%
20% 40%
100% 0%
0% 50%
高齢/非高齢別の地下道選択率 図 6
高齢者 非高齢者
無 積降 無 積降 雪
雪 時
雪 雪時 時 時
人数 37 28 289
,
514平均値 1.14 1.17 [rn/s]
標準偏差 0.36 I 0.40
[m/s]
横断者の選好 図 5
一一一青点灯時 一一 膏点灯時 (無雪) (降積雪) 一一一膏点滅時 一一一ー膏点滅時
(無雪) (降積雪)
由.NI
守.N}‘
N. N3 t
0.NI
∞.Fi e‑ FE a
サFI
NF l
o ‑ ュ
∞01
由01
40% 30%
20% 10% 0%
高齢/非高齢別の歩行速度特性 高齢/非高齢別の歩行速度分布 表 1
図 7
寺内 義典・ 三村 泰広・本多義明
2.50
2.00 2.00
1.50 マー T 1.50 1.00 」ー 1.00
0.50 0.50
0.00 0.00
青
降 膏
青降 青
左降 左
左降 左
無点
積 宍
無点積 高
無折積折
無折積折
雪滅
雪滅
雪灯雪 灯
雪車雪 車
雪車雪 車
時 時 時 時 有 有 無 無
図 8 信号現示別の歩行速度特性 図 9 左折車の存在別の歩行速度特性
(平均値±標準偏差) (平均値±標準偏差)
標準偏差をみると高齢者は降積雪時において小さくなるのに対して、非高齢者は大きな値をとっている。
ただし、本調査だけでは、この原因が高齢者の歩行困難度の高さにあるとはいえない。
図 8、 9 はそれぞれ、歩行者信号の現示別、左折車の接近の有無別での歩行速度特性を平均値士標準偏差 で図イじしたものである。降積雪時におけるこのような状況下での歩行速度の分散が大きいが、この原因と
して、降積雪路面では早歩きなどの歩行能力の個人差がより大きくなることが考えられる。
無雪時に比べ路面状況の悪い降積雪時においては、歩行速度を上げることや変化させることは車副到の危 険性を増大させる。今後は、高齢/非高齢別で個々のデータごとにおける歩行速度の変佑を調査し、その
ような歩行の実態を明らかにしていく予定である。
3. 横断歩行者の意識調査 (1) アンケート調査の概要
歩行特性調査を行った大名町交差点、の調査対象横断部を通行する歩行者を対象にアンケート調査を行っ た。アンケート票の配布は平日(平成 13 年 6 月 28 日(木) 7:3cr--9:00) と休日 (7 月 8 日(日) 12必ト 13:30) の二回にわけで行い、後日郵送にて回収する方法をとった。配布票数 390 票に対して 109 票 (28~も)の有効 票を得た。図 10 にアンケート回答者の属性を示す。回答者の属性は男女ともほぼ同数で、 50 代が最も多い
ものの若年齢層から高齢層までの意見を集めることができた。
(2) 横断歩道と地下道の選好
歩行者は横断歩道と地下道のいずれかを望ましい歩行環境として選好する。その歩行環境は降積雪によ って変化することから、その選好の変イじをみた。なお、ここでも歩行特性調査にあわせて、高齢者を 60 歳 以上としている。
図 11 に示すように、無雪時と比較して降積雪時には地下道利用者が増加している。降積雪時になると横 断歩道から地下道に利用を転換するとした回答が多く得られたことは、この横断歩道は降積雪による歩行 環境の悪化が著しいと考えられる。次にこの選好結果から「①常に横断歩道を利用 J í②普段は横断歩道だ が降積雪時には地下道に転換 J í③常に地下道を利用」の 3 グループに分類し属性との関係をみた。
図 12 はグループごとの高齢者の割合を示している。常に地下道を使うグループには高齢者の割合が少な いが、 降積雪時においては地下道に転換している高齢者も見られる。なお歩行の困難度や連続歩行可能距 離と選好との聞に優位な関係は見られなかった。次に横断歩道が好まれるような条件や地下道が好まれる
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降積雪時における自動車系道路の横断歩行環境
ような条件をいくつか提示し、 その選好の変化の様子をみた。その結果「交通量が多いとき」には歩行の 快適性だけでなく安全性も損なわれるが、 この条件下では無雪時と降積雪時との差が大きくあらわれてい
る。
(3 )横断歩行における問題
無雪時と降積雪時のそれぞれにおいて、横断歩道と地下道それぞれの問題点を指摘してもらった。
図 13 に示す横断歩道の問題指摘では、降積雪時に出現する問題のいずれも半数以上指摘されており、横
女
55%
性別 長距離
短距離 歩くと足 が痛い
2%
身体的困難点
30 代 17 九
年齢
10m 以内
1%
無雪時 降積雪時
図 10 アンケ一卜対象者の属性
横断歩道 地下道
図 11 無雪時と降積雪時の選好の変化
同時齢者白高齢者
|①常に 横断歩道
②降雪時 に転換
③常に 地下道
0弘 20九 40% 60九 80% 100% 図 12 選好パターン別での高齢者割合
寺内義典-三村泰広-本多義明
自動車との事故 自転車との事故 青信号短い 赤信号長い 段差 雨や雪で滑る 除雪による堆雪 融雪水溜まり 雪による凹凸 その他
O九 20% 40% 60% 80%
図 13 横断歩道に対する問題指摘
昇り降りつらい 階段が急 横断時間長い 荷物あるとつらい 幅狭い 滑りやすい 暗い その他
0% 20% 40% 60%
図 14 地下道に対する問題指摘
断歩道での雪による歩行環境の悪化を示している。これらの問題は現行の自動車交通のための雪対策によ ってもたらされているものもある。
また、図 14 に示す地下道の問題指摘では、降積雪時における「滑りやすし、」の指摘率が高いが、その他 の項目は雪の有無による差は小さい。地下道は直接、歩行する路面に雪が降り積もらないことから、滑り やすさを除けば降積雪時においても歩行環境は著しく損なわれてはいない。
4. おわりに
この調査から以下の結果を得た。
1) この調査箇所では、降積雪時では地下道を利用する横断者が 46% に増加していた。
2) 横断歩行者の歩行速度の分散は、高齢者で小さく、歩行者信号の現示、左折車の接近によって大きくな ることがわかった。降積雪時における信号の青点滅時や左折車の接近時などの早歩き行動は、個人差がよ
り大きくなると考えられる。
3) 横断施設の選好を調査したところ、この対象横断箇所では降積雪によって横断歩道から地下道への利用 に転換がみられることから、横断歩道の歩行環境の悪化がしていることが予測される。
4) 問題箇所指摘から、横断歩道上に降り積もる雪や雪対策がもたらす歩行環境の悪化が高い割合で指摘さ れている。なお、路面の凹凸、除雪による堆雪、融雪による水溜りといった項目は自動車にとって施され た雪対策であり、横断歩道部分には自動車の便だけでなく歩行者にも配慮した雪対策が必要である。
ここでは、降積雪時における横断歩行の現状と歩行環境悪イじのようすを、横断歩行特性調査と意識調査 から把握した。しかし、当初予想していた高齢/非高齢での差はあまり大きくあらわれなかった。実際に は、対象とした横断箇所を歩行経路として選択しない、あるいは、歩行以外の交通手段を使う、外出行動 を控えるといった回避行動をとることができる。その結果として、調査対象者は必然的に歩行困難度の低 い方々のデータとなっていることが予想される。
本報告は、限定された横断箇所において横断歩行に関する基礎的なデータを収集し集計したものにすぎ ない。今後は、降積雪時の横断歩行環境を含めた交差点の改善につながる成果が得られるように、今回収 集したデータの分析をさらにすすめる予定である。また、より多くの人の社会参加を実現することを考え ると、実際にまちに出かけることができない、出かけることが困難である、といった方々を対象とした追 加調査も必要と考えている。
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