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雑誌名 福井大学工学部研究報告

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(1)

マレイン酸の鉛塩に関する研究(第5報): ポリ塩化 ビニールの安定剤としての三塩基性マレイン酸鉛に ついて

著者 物延 一男, 山田 正盛, 小森 里見, 牧野 惇一, 豊 岡 正義

雑誌名 福井大学工学部研究報告

巻 8

号 1.2

ページ 98‑103

発行年 1960‑03

URL http://hdl.handle.net/10098/5217

(2)

98 

マ レ イ ン 酸 の 鉛 塩 に 関 す る 研 究 第 5 報 ポリ塩化ビニー)1,の安定剤としての三塩基性マレイン酸鉛について

物 延 一 男 , 山 田 正 盛 , 小 森 里 見 , 牧 野 惇 ー , 豊 岡 正 義

Studies on Lead Salts of Maleic Acid  (V)  Tribasic Lead Maleate as Stabilizer of Polyvinylchloride 

Kazuo MONOBE, Masamori YAMADA , Satomi KOMORI ,  Junichi MAKINO

, 

Masayosi TOYOOKA . 

The thermal decomposition of polyviny

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hloride  (P.  V. C) in the presence of tribasic lead  maleate (PbM3PbO) as stabilizer was studied in'comparison with various commercial stabilizers  systems.  The stabilizers can be classified from the decomposi tion curves into two groups. 

Organic tin compounds are the one which combine with the unstable radicals in the polymer  formed by the decomposion of P. V. C.. 

PbM3PbO and usual heavy metal basic salts are the other which catch the HCl evolved by  the decomposition of P. V. C. . 

It  may be contributed to the presence of maleic double bond that PbM3PbO is  more active  than PbS043bO as HCl acceptor. 

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著者等の二人はマレイシ酸の鉛塩に関する研究の第4報までに酸性マレイシ酸鉛,塩基性マV イシ酸鉛の生成条件,性質等について報告した。ここに報告する第5報は塩基性塩の反応p 応用に 関するものである。

三塩基性マ

ν

イシ酸鉛 (PbM3PbO)は以前からポリ塩化ビニーノレ (P.V.C.)の安定剤とし て使用されているが,その機構は第3報の PbM3PbOと稀HClとの反応に示された様にその塩基 性鉛塩は HClを容易に捕捉する力を持っているからである。従ってその反応によって生じた塩化 物等が P.V.C.の熱分解を促進しない限りにおいてHClacceptorとしての安定効果は可成り大き

いことが期待できるq

本実験は P.V.C.にその安定剤として PbM3PbOを混入したものと市販されている各種安定 剤を入れたものとの加熱試験を比較したものであるo安定剤の影響を主るために比較的多量に出ぜ て一一P.V.C.に対して 10%wt.一一試験を行い若干の興味深い結果を得たので報告する。

E  試 料 並 び に 実 験 方 法

PbM3PbOは先に報告した処法に従ってマνイY酸鉛 (PbM)より作ったo 各種安定剤は某 労福井大学工学部 時現在酒伊繊維工業K.K. 時長現在丸三染練K.K. 長時特現在小寺精練K.K.

(3)

マレイシ酸の鉛塩に関する研究(第5報)

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(1)  安定剤がない場合の P.V.C.

の熱分解並びに P.V.C.試料に よる変化

発 生HCl量を時間的に画いた分解 曲娘から1分聞に発生するHCl量即ち 脱HCl速 度dx/dt(xは 発 生HCl量〉

と時間との関係を求め,安定剤のない 場合の2例 を 第2図と第3図に示した。

第2図 は P.V.C. Bのお末試料 を使用し 170020Cに 加 熱 し た も の

でN2気流中(曲線3)では時間の増 第2図 P.V.C.脱 HCl速度の時間的変化 加と共に速度は僅かに減少する傾向にあるが, 一 方 空 気 な ら び に O2気 流 中 ( 曲 線1,2)では増 加しているD

この様に脱HCl反応速度が時間と共に増加するのは発生したHClの自己触媒的促進作用によ

E  実 験 結 果 並 び に 考 察

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(4)

100  福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第8巻 第1・2号

るものと以前から認められて きたが,近年Arlmanはそれ を否定して空気中, O2中で 速 度 が 増 加 す る の は 任 意 に terminationした点が O2に よって復活してくることによ るものだと説明している白又 最近では祖父江教授が赤外線 吸収スペクトJレによって P. V.C.の加熱変化の機構を明

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し O2の存在下ではHClが 触媒的に作用する"と考える べきだと述べている。第3図 はP.V.C.試料の Cを使用 し,空気中で粉末,硬軟両プ νートそれぞれについて試験 した結果であるo

本実験ではこの

O

2の存在下〈空 気中)での脱HCl反応が安定剤の存 在によって如何に変化するかをみよ

うとするものである。

安定剤の存在しない場合の P. V.C.の試料による差異を第 1表 に

示しておいたo ~o

第1表 よ り み て 試 料 Cが最も 熱安定性のいい試料で,これは最近 塩化ピニノレの重合法 D研究が進み,

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る様になって不純物の量が少くなっ

調。 ているためと考えられるo

(2)  安定剤の存在する場合の P. 句、明

V.C.の加熱分解

P.V.C.の熱分解に及ぼす安定 剤の影響をみるために安定剤の混入 率は比較的大きくし, P.V.C.に対 して 10%(wt.;;百)にした。先づ始 めに市販せられている普通の重金属 塩安定剤を試料

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の粉末に混入して 1800Cで加熱した。その発生HCl量

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第4図

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重金属塩安定剤の脱HCl反応に及ぼす影響

(5)

マレイン酸の鉛塩に関する研究(第5報) 101 

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と時間との関係を第4図 に 示 し たo図 に み ら れ る 様 に そ の 分 解 曲 線 は 若 干 の 誘 導 期 間 (HClを捕捉 す る 期 間 ) を 経 た 後 の 脱HCl速度は安定剤のない場合に比べて, 大まかにいって, 略々同じ位の 速度で進行して行き, 時 間 と 共 に 増 加 し て い るo (分解曲線は上方に凹) こ れ は こ れ ら の 安 定 剤 が HClacceptorと し て 働 き 誘 導 期 間 中 は HCIの 触 媒 作 用 を 完 全 に 抑 制 し て い る も の と 考 え ら れ

o図中PbM3PbOの場合

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しかしながら Arlman も三塩基性硫酸鉛1‑2箔 の 場 合 に 示 し て い る 様 に 誘 導 期 間 中 に 発 生 し たHClは 安 定 剤 に 捕 捉 さ れ て い る わ け で P.V.C.自 身 は あ る 程 度 分 解 し て HClを 発 生

している筈である白このこ とは又最近Hartmannも述 べ て い る こ と で あ る が 次 に 示 す 有 機 錫 化 合 物 を 安 定 剤 として混入した場合の分解 曲線と著しい相違を示して いるロ即ち,第5図PbM3 PbOの場合は, 安定剤が ない時の曲線と大体平行し て い る に も か か わ ら ず 有 機 錫 化 合 物 を 主 成 分 と す る 安 定 剤 の 場 合 ( 曲 線c,d, e,  f ) に は 曲 線 が 著 し く ね て

くるロ曲線 c,d, e, fの 使 用 安 定 剤 の 成 分 は 次 の 如 きものである C : Advance  52 (ジプチノレ錫ジラウレー

トを主成分とする)0d:KS 

‑20 (主成分はAdvance52 と同様0)e:KS‑18 (ジプチ ノレ錫ジラウレートとマレエ ートの混合物を主成分とす る口)f:KS‑15 (ジプナノレ錫 マ レ エ ー ト を 主 成 分 と す る

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九.) 第6図 脱 HCl速 度 の 時 間 的 変 化

(6)

福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第8巻 第1・2号

速度と時間との関係を画けば一層明瞭になるD 第6図 に1700C, 180Cの場合の結果を示し たo それによると PbM3PbO(曲線br b2) は脱 HCl速度の時間的勾配が安定剤のない時に比較 して(曲線a)僅かに減少しているとはいえ依然として正であるのに対し,有機錫化合物を主成分 とする安定剤(曲線Cをもって代表しておいたがd,e, 

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も同じ傾向)ではそれが負に変化してい るo このことは有機錫化合物はHCl捕捉よりもむしろ P.v.C.の分解によって生じた高分子中の 不安定なラジカノレに結合して安定化させる効果が大きいためと考えられる。

(3)  三塩基性マレイン酸鉛と三塩基性硫酸鉛との比較

粉末試料CにPbM3PbOとPbSO.t3PbOH20との両安定剤をそれぞれ混入した場合には170

Cでの加熱試験では分解曲線に殆んど差異がみとめられなかった。しかしプレートにした場合に は両者の聞に可成り著しい

差異が与えとめられた。プレ ート試料はその表面積の違 いで脱HCl量に違いが生ず るかど

5

か予め試験した結 果殆んど差異がみとめられ な い 。 し か し こ こ で は 10 mmx5mmの一定の長方形 の試験片 5gで試験した0

50猪可塑剤ジプナノレプタレ ート (D.B. P.)が 入 っ た 軟質プVートの場合には前 に記した織にその脱HCl量 はP.V.C. 5g当 り に 換 算 した。 1800C :t:2. 0Cの 結 果を示せば第7図の如くな

る白

図に主られる様に安定 剤のない時には硬質,軟質 の違い(曲線an,as)は3

時間以後の分解曲線の違いとして現れているにすぎないが,安定剤が入った場合には最初から著し い違いが現れているo (曲線

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s,cs)明らかに可塑剤の入った方が安定剤の効果は 著しい。これは可塑剤の入った一方が分子の運動牲がよく安定な形をとり易いためと考えられるo

曲線 bRCi, 曲線'} bsCsとをみれば,硬軟何れのプレートの場合も明らかに PbS043PbO に比べて PbM3PbOの方の安定効果(脱HCl量よりみた)が秀れていることがわかるo添字Hは 硬質,

s

は軟質を表わす。

PbM3PbO (分子量990.9)とPbS043PbO

H20 (分子量990.8)とは分子量も等しく構造的 にもよく似た塩基性塩であるにもかかわらずこの様な違いが生ずるのは前者の方は脱HClによっ て生じた P.v.C.の共担二重結合に附加しうるマレイ γ酸の二重結合を有するためと思われるo

従ってその安定効果は大きくなるo特に粉末試料よりもプレートにした場合に現れてくるのはプレ ートにする際の加熱処理の影響と思われるo(第3図に示した様に安定剤のない時には明らかに粉 末の時よりもプレートの方が比較的初期 (2時間以内)では脱HCl初速度も脱HCl量も大きい。〉

次にプレート試料についてこれらの安定剤(曲線bn,Cn, bs, cs)と有機錫化合物を主成分

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第7図

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(7)

マレイン酸の鉛塩に関する研究(第 5報) 103 

とする安定剤(曲線dR,en, ds, es)との比較は第5図,第6図に示した粉末試料の場合と同じ 傾向を示している。しかし特に可塑剤の入った軟質の場合には上記2つの三塩基性鉛塩の脱HCl 量 の み よ り み た 安 定 効 果 は 著 し し 有 機 錫 化 合 物 の 入 っ た も の よ り 遥 か に 秀 れ て い るo

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P.V.C.に安定剤として三塩基性マレイ y酸鉛を混入し,粉末状,硬軟プレート状にして加熱 試験を行い,イ也の安定剤を入れた場合と比較検討した白

その結果,三塩基性マレイ Y酸鉛を始めとして従来の重金属塩安定剤と液状の有機錫化合物と では著しく異った脱HCl曲線が得られた口このことは前者の安定剤が主として HClacceptorとし て働くのに対し,後者は HCl捕捉よりもむしろ P.V.C.の分解によって生じた高分子中の不安定 なラジカノレを安定化させる働きをもっていることを示しているものと考えた。三塩基性マレイシ酸 鉛はその塩基性部分が比較的容易にHClを捕捉するといラことは第3報の結果からみて明らかであ り,本実験においても P.V.C.の脱HClacceptorと し て の 能 力 は 試 験 さ れ た 安 定 剤 中 最 大 で あ るoこのことは単に脱HCl量 の み か ら 安 定 剤 の 安 定 性 能 を 云 々 す る こ と は で き な い け れ ど も 注 目 に値する事実であるロ

三 塩 基 性 硫 酸 鉛 と 比 較 し て よ り 秀 れ て い る の は マ レ イ ン 酸 の 二 重 結 合 が 関 与 (Diels‑Alder反 応による)しているものと推測されるD

文 献

1)  物延,山岡;福井大学了.研究報骨 3 No.2 77 (1954) 4 No.1 86 (1955) 5 No.1 15  (1956)  5 No.1 24  (1956) 

2)  J. G. Hendrick, E. L. White; Ind.  Eng. Chem. 43 2335  (1951)吉田;有機合成 1129 (953)  3)  太田;工化 5531  (1952),太田,井本i工化 544iO (1951)古川,木村;工化55133 (1952)  最近では

Drusedow, Gibbs ; Modern Plastics 30  123 (1953)  4)  E. J.  Arlman; J.  Polym̲ sci.  12 543, 547 (1954)  5)  祖父江,田畑,但馬;工化 61 106 (1958) 

6)  A. Hartmann ; Kolloid Z. 149 67 (1956) 

附記 P.V.C.試料ならびに各種安定剤を寄贈された福井ピニーノレ株式会社に深甚なる謝患を表する。

(昭和33年11月 高分子北陸支部会講演〉

(受理年月日 昭和34年9月28日)

参照

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