不飽和二塩基酸誘導体の重合に関する研究 (第2報) マレイン酸およびフマル酸のメチルピニルエステル の合成,重合について
著者 山田 正盛, 高瀬 巌
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 10
号 1.2
ページ 109‑116
発行年 1962‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/5090
不飽和二塩基酸誘導体の重合に関する研究
( 第 2 報)
マレイン酸およびフマ
Jl,酸のメチルピニ
Jl,エステルの合成,重合について
山 田 正 盛 ・ 高 瀬 巌Polymerizations of U nsaturated Dibasic Acid Derivatives (11) Synthesis and Polymerizations of Methylvinylmaleate and fumarate
By Masamori Yamada and Iwao Takase
109
Methylvinylmaleate and fumarate were synthesized by Vinyl Interchange Reaction of vinylacetate with monomethylmaleate or fumarate and their physical properties were de‑ termined
The cyclization polymerizations of above monomers with radical initiator were studied and the initial rate of polymerization of fumarate was about thirtytimes as large as that of maleate
Residual double bond in polymers and infrared spectra of polymers indicated the for‑ mation of 5‑membered lactone ring in both polymers and 4・membered lactone ring in polymaleate. The difference of percent cyclization between two polymers was discussed.
1 .
緒1個の分子中lこ2個の二重結合をもっモノマーの合成およびその分子内,分子間重合については 最近多くの研究が発表されている11 不飽和二塩基酸のモノ不飽和アノレキノレエステノレも上のモノマ ーに入る可きものである。著者らはこの種のモノマーとしてマνイン酸およびブマノレ酸のメチルピ ニノレエステノレの合成および重合の研究を行った。乙の方面の研究としては一昨年Barnett氏2)らの 報告が発表せられた口氏らはマレイン酸モノメチノレエスエノレと不飽和アノレコーノレとのエステノレ化反 応および転位反応によりマレイン酸およびプマノレ酸のアリノレおよびプテニノレエステノレを合成し,そ れらの環化重合を行ったが氏らの合成法ではピニノレエステノレは得られないわけであるO
著者らは Adelman氏3】のピニノレ交換反応にならってマレイン酸及びプマノレ酸のモノメチノレエス テノレと酢酸ピニノレ(以下酢ピと略称〉とを触媒の存在において反応せしめて新化合物である上記モ ノマーを合成した。つぎにその環化重合を行ない最もでき易い 5員環のほかにマレエートの場合,
特に4員環の生成を認めた。よって乙れを報告しBarnett氏らの結果と併せて,同じ系列のモノマ ーの重合データの充実に寄与しようとするものであるD
2 .
実 験 2・
1試 料酢ピは市販品を数回蒸溜して貯え,使用直前さらに蒸溜したD
モノメチノレマレエートの合成法は第 l報41と同じであるD
モノメチノレプマレートの合成法はジメチノレマレエートに微量の臭素を添加し, 日光にあててUメ チノレプマレートに転位せしめる Mayo氏らの方法引をモノメチノレマレエートに適用した口転位は急
保 福 井 大 学 教 授 保持文部技官(福井大学)
福井大学工学部研究報告第10在 第1・2号
速に定量的に進んだ口生じたモノブマレートはテトラヒドロフランを溶媒として再結品により精製 した。融点 1430Cは H Erlenmeyer氏6)らの値と一致し酸価,ケシ化価も理論値にほぼ一致し
110
式 こO
アセナーノレ硫酸水銀は無水酢酸と濃硫酸を 40Cをこえない温度で徐々に混合して先ずアセチー ノレ硫酸をつくり,乙れの酢酸溶液に酢酸水銀を加え,生じた白色沈澱をグラスフィルターでロ過し たものをそのまま用いたO
イ也の試薬は市販一級品を使用した。
2 ・ 2
モノマーの合成( i ) メチノレピニノレマレエートの合成法は Adelman氏3)にならいモノメチノレマレエートと酢 ピとを室温または加温において反応せしめた。触媒はいずれの場合も酢酸水銀ー硫酸またはアセナ ーノレ硫酸水銀を使用した。
(a) 室温,酢酸水銀‑硫酸触媒の実験法をのべると酢ピ 258g (3モル) .モノメチルマレ エート 65g (0.5モノレ) .酢酸水銀1.25gを三ツロプラスコに取り激しくかきまぜながら濃硫酸 0.32 mlを滴下した口被温を 300C以下に保った。かきまぜを約5hrs継続した後止め,そのまま 65 hrs放置したQ つぎに反応物質を7 %炭酸ソーダ水溶液及び飽和食塩水で酸性のなくなるまで洗 い,塩化カノレ V ワムで脱水,減圧蒸溜に付した口 6‑‑‑‑8mm Hgで 65,,‑,73oCの溜分56gを得,
乙れを粗ジエステノレとした口
(b) 触媒としてアセチーノレ硫酸水銀を用いる場合には酢ピ 258g (3モノレ) .モノメチノレマ
ν
エート 65g(0.5モル) .アセチーノレ硫酸水銀1.88gを三ツロフラスコに取り前同様に反応せ しめた。その結果6""'"'7 m m Hgで63‑‑‑720Cの溜分約50gを得た口(c) 加温の場合はくa)と同じく試料を取った反応プラスコの上部空間をまず炭酸ガスまた は窒素で置換した後,硫酸を徐々に滴下し,上記の不活性ガスをわずかに通じながら温度を 700
C
にあげ3hrs保った口かきまぜは終始 第1表メチルピニノレマレエー卜の合成 行った。反応物質の中和,洗糠,脱水 一 一 一 一 一 ←‑‑←
を (a)と同様に行った後,常圧で酢 ピを回収し次に5mmHgで63‑‑‑‑730C の溜分35gを得た口
(a) 加温でアセチーノレ硫酸水銀 触 媒 を 用 い る 場 合 は (b)• (c)を組 合せた条件で行った。試みに触媒を 2
倍用いた場合も結果にほとんど違いは d I なかったo
反応条件ならびに結果を一括して第 1表に示したD
アセチーノレ硫酸水銀を触媒とした場合は酸価の低いものが得られた。
(ii) メチノレピニノレプマレートは固体であるから酢ピとの反応には溶媒としてアセトンを用い た口前のマ
ν
エートと同量の反応物質に対しアセチール硫酸水銀を3.6g取り,かきまぜながら 70 oC に 5hrs保った。つぎにアセトン及び未反応酢ピを減圧下に除き残りを 10%炭酸ソーダ水溶 液で中和した後,石油エーテノレで可溶物を抽出した。この溶液から溶媒を蒸発し残澄を 1回石油エーテルから再結品して,白色結品状のメチノレピニノレプマレートを収率約 38%で得た。
( i ) の生成物は減圧蒸溜. (ii )は再結品により精製したものについて測定した定数を第2 表に示した口
一4一 物一価
一ム世
V A d
吐 一 一 軍 同 月 内
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‑
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1 1 1 1
一
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一 一 媒 一 レ レ
↑ 一 一 一 水 リ
; 水 サ 一
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一件一触一酸
H Y一 酸 吋
7ノ 一 一
一 一 酢 硫 ア 酸 酢 硫 ア 酸 一 条 一
│
│ 一 一 一 柑 仏 一 一 応 干
│ 一
反一度)
pu
一祖 (
8A 3.5
2.4 65
3 3 宗 祖 ( 約30)
70
/1 庁
Exp.
a b c
不飽和二塩基酸誘導体の重合に関する研究 (第 2報) 111
第2表 メチルピニノレーマレエート及びーフマレート白諸定数 試 料 ( 沸 点 (OC) │融点I ,.‑,.... I比 重
i
I
(OC)メチノレヒーニルフマレート 1 82.5‑83.0 (10 m m Hg) 1 ‑ 11. 1268 (n!O) 1
メチノレヒVニJレマレエート
! 一
13211.1052(n~5)1屈 折 率
l ーザ子町仁
実 測
i
計 算 37. 27 I 36. 90 38. 51 I 36. 90 1. 4504 n~o1.4575 n;5
炭 議 ( 労 ) I ‑;比率(労) I
│ ← 一卜一一 I一一一一│ 蒸 気 圧 計 算 │ 水 へ の 椿 解 度
竺d{1J計芋
j実一九里算
I ... ‑‑‑‑.. ̲. I日 311 53.84 1 5.26 1 5.16 I 0.25 m m Hg (200C) 11. 69 g/100 ml H20 (11 OC) 53.88 I 53.84 I 5.23 I 5.16 I
第1‑‑‑2図にモノマーの赤外線吸収スベクトノレを示した司
100‑ i l
‑
‑ r D O S E 7
正¥
60 50 40
,
020 10
3600 3200 2&00 ]~OO 2000 1 QOO 刊 凹 17仰 1600 1500 1400 IJOO 1200 1100 1000 900 &00 700
WAVE NUMBER r (m')
第l図 メチJレピニノレマレエートの赤外線吸収スベクトJレ
70 帥
50
ハ r n ,~nf~r[V
40 30 20 10
3600 3200 1800 ]400 2000 1900 1800 17
∞
1600 1500 1400口00 1100 1100 1000 900 800 100WAVE NU叫BER(Cm‑1)
第2図 メチJレピニJレブマレートの赤外線吸収スペクトノレ
3 .
重3 ・ 1
塊 状 重 合空間を窒素で置換した封管中でアプピスイソプチロニトリノレ (A1 BN)を 開 始 剤 と し て 塊 状 重 合を行った。未反応モノマーは石油エーテノレで拍出したD 実 験 結 果 を 第3‑‑‑4表 , 第3‑‑4図 に 示
A ~
した。
第3表 メチルピニルマレエートの塊状重合 試 料 5,5786g (0.03日mol) 窒 素 中 重 合 温 度 750C I AI B N I 重合時間 │ 重 合 率 k ' ,', IL‑ ポ リ マ ‑ Exp. .n.
e
箔)│
(min)l
(猪) │ ゲノレ化l
の 着 色B1 2・
o
30 8.8 な しl
徴 黄 色 B 2 " 60 17.9 あ りl
黄 色 B 3 ,? 1却 27.5 "B4 庁 180 35.3 B 5 '1 240 39. 4 B 6 " 300 44. 0 B 7 9 0 0 5 3 . 7 C 1 1. 0 60 9.7 C 2 " 120 15, 9 C 3 " 125 16, 7 C 4 " 145 20.5
C5 庁 180
重合初速度 (moljl. min)
0.02
色
H褐H
黄
福井大学工学部研究報告第10在 第 卜2号
〆r
112
徴 黄 色
黄 色 0̲01
11
な し あ り
重合初速度 (moljI.min)
0.32
0,13
"
750C
な し あ り ゲ Jレ 化
な し あ り
"
第4表 メチルビニルフマレートの塊状重合 試 料 3,3510g (0, 0217 mol) 堂 束 中 重 合 温 度
1 AI B N
│
重合時間 l 重 合 率│
(%)~min) ‑ ( 箔 A 1 1. 0 9 7,8 A 2 11 12 17,3 A 3 11 20 46,7 A 4 11 30 55.2
A 5 11 45 57,7
A 6 11 60 60.0
A 7 11 90 62.1
D 1 0.5 10 5.5 D 2 11 16 13.5
D 3 30 21. 9
D 4 11 45 28.7
D 5 庁 9o 49.5
11 11
"
"
"
C
ωL
fO 10 JO 40 50 5i! ノ♂ 8d "IJ 憂合問問(~)
第4図 メチルピニルフマレートの塊状重合
D
c ..'・・41BN 10九 0,....., u5Y.
ミ﹂ 叫肝 畑町 制
B
メチJレビ、ニルマレエートのj鬼状重合
y 1 ~O 11 ;}' IJ Ni~
AJ8N } o/.
!OX B
C
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l/‑ .> d
一一一一一一ー 事官時間(~)
第 3図
Sd
4{}
A U A M V E︐
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J・
﹃ き 併 命 制
41 11 14
10
不抱和三塩基酸誘導体の重合に閲する研究 (第2報) 113
ポリマレエートは第3表に示すように着色したがポリプマVートは着色しなかった。
図の重合曲線によればマレエートには誘導期聞が存在しなかったがプマレートには存在した。ゲ ノレ化点は開始剤の量に関係する処少なく,重合率15‑‑20% 付 近 に あ っ た 。 重 合 曲 線 の 横 軸 と の 交 点において切線を引き,その傾きから近似的の重合速度を求めた。この値も表に示しであるが,ブ マレートはマレエートの約30倍も大きい乙と
になるo この傾向はすでにLewis氏7¥らによ りジアルキルマレエート及びブマレートの共 重合において示されておるD 氏らの場合ブマ レートの反応性はマレエートの約20倍大きく これをトランス型の共鳴安定牲に因るものと 説明している口
3‑2
溶 液 重 合ベシゼンを溶媒とする溶液重合を前節塊状 重合とほぼ同様にして行なった。生成ポ日マ ーはベyゼンに溶解するのでゲノレ化が起るま では重合は均一系で進行した。石油エーテノレ で 沈 殿 を く り か え し た 精 製 ポ リ マ ー 中 の 残 存 二 重 結 合 を Siggia氏8¥ Barnett氏ら2】にな らって測定し,乙の値から推定環化率を計算 した。また2. 3の 試 料 に つ い て 適 当 な 有 機 溶剤を溶媒としてオストワノレド粘度計lとより 粘度を測定し,赤外線吸収スベクトノレにより 環 化 の 状 況 を う か が っ た 。 と れ ら の 結 果 を 第
5‑‑6表 , 第5‑‑6図に示した口
60
50
岬
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支﹂働
‑h 甲 国 明
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A v n v
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ー
60 /lO 1311 1<1.固 ';00 重 合 時M I加 巧 〉
第5図 メチルビ、ニルマレエー卜の椿液重合
JQ <10 70
一一一一一一ー 富合時l1li ( 甘 同 )
第6図 メチルピニルフマレートの溶液重什 第5表 メチノレビニルマレエートの溶液重合
モノマー濃度 55.9%c:重量 A 1 B N 2.0箔 , 窒素中 重合制度 700C ポリマー中の二重結合 │ 重 合 時 間 │ 重 合 率 Iu . 11. I粘度 (ηJ250C I モノレ箔
5
.=..E"..JI1
L‑1~-l 推定環
xp.
1
/ . , ゲ ル 化. 1 ̲ ̲ .
I 一一一一十二三レー~S/ -I 化 率 I (min) I (労) I (j‑f 7/'イ ド 百 フ ラ ン )1ピニノレ民訴! 酸 残 基 I (モル路) F 1 120 17.7 な しo
伺6 9.3土0.5 I 19.5士0.7 i 71 F 2 180 25.6F 3 I 210 31. 9 あ り I ‑ I F 4 I 270 35.4 庁 │ ー
第一6表 メチルピニ/レフマレートの溶液ill什 A 1 B N 2.0 % , 窒議ct ~合制度 700C
I ̲ • ̲̲ =‑^ ~-I- nFl! ='‑ ^ ‑‑*' I .td."'" (...., ポリマー中白二重結合 │
│モノマー│重合時間│重合率 I>,' . 11.
I
粘度〔甲J
25 O c I ',' / '(モ Jレ労5~'l'l=l q 推定環Exp. I濃 度 I ゲ、ノレ化 i ト 1一 一 一 一 一 化 率
1" I
(W
t.%) I (m凶 I (箔) I / .... I U I () ~叶川ン) Iビ ニ 峨 基 [長差益
I (モノレ箔)E 2 I 55.8 10 I 7.8 な し O.伺6
E 3 1/ 20 18.9 あ り : 一 l 一
E 1 1/ 25 23.3 11 ー │
G 1 38.7 30 15.9 な し 0.075
G 2 11 I 50 I 24.2 I 1/ 14.7土0.5I 20.6士0.6 I 65 G 3 I 1/ I 70 I 33. 9 Iあ り
114 福井大学工学部研究報告第10巻第ト2号
ポリマーの赤外線吸収スベクトノレを第
7‑‑8
図に示した。」一一ーーー・-'-ーーー~
3600 J200 28,岬 2q{)( :JXO 1900 ld(){j /70a /600 / '100 11100 け00 1200 I 100 I~OO 'l()() j(}{) '7(){)
WAVf NUMBER ((m‑')
第71盟 ポリメチルビ ニノレマレエートの赤外線吸収スベクトノレ
J晶00 3200 2100晶41)0 2000 1'00んf()O 1700 16iJO 1$00 /@O ,JlJO 1200 flO() 1000 90() 3品,o 7()()
WAVf NUMBE,R (Cm フ
第 8図 ポリメチルピニルフマレートの赤外線吸収スポクトJレ
ゲノレ化しないポPマーは極めて軽い白色の粉末であり,クロロホノレム,アセト Y,テトラハイド ロブラシ,ピリi/'Yなど広範囲の極性溶媒に溶解するO 固有粘度は相当低くしたがってポPマーの 分子量はかなり低いものと推定されるO
塊状重合にくらべてゲノレ化は高い重合率において起るのは当然であるが,反応性の大きいブマV
ートの方は塊状重合と余りかわらない低重合率でゲノレ化した口
環化率はこれまでの環化重合に行なわれている計算法に従い,全然環化しないと考えた鎖状重合 物の二重結合数を
100%
とし,乙れと実際の定量により測定された二重結合数との差は環化により 消失したものとした口この環化率は表に見る様lこポリブマレートよりポリマレエートの方が高い値 を示した。5 .
考 察いま第
1‑‑2
図モノマー,第7‑‑8
図ポリマーの赤外線吸収スベクトノレを比較すると第1‑‑2
図 の1 6 5 8
cm‑1,1 0 1 0
cm‑1,9 8 0
cm‑, l 8 8 0
cm‑1などの吸収がそれぞれ大きく減っているのが目立 つO また1 2 6 0
cm‑1から1 3 1 0
cm‑1にかけての大きな吸収も減っているがとれらは重合によって二 重結合が失なわれたための当然の結果と考えられるOつぎにモノマーに存在しないで両方のポリマーに現われた吸収として注目されるのは
1 7 8 9 ‑ 1 8 0 0
cm‑tの吸収であるD これはH.Hall氏9) S. Searles氏ら10)による r‑Butyrolactoneのカノレポニノレ の吸収とほぼ一致しているO すなわち重合により生じた環に5員環が存在することを示す。さらにポPマレエートとポリブマレートとを比較して認められる違いはマVエートに
1 8 4 0
cm‑1 の吸収が存することであるo これは S.Searles氏らによれば4員環のラクトンの吸収に相当すると不飽和二塩基酸誘導体の重合![関する研究 (第2報) 115
とから,ポりマー中lととの種類の環の存在が推定されるo 以上の4. 5員環の生成機構を化学式で 示せば
-pH-CH 、 CH=CH~ ‑CH 一 一 CH‑CH‑‑CHz 一
c d o c H 3 C l o ‑ d ι J o o C H J o ‑ b
‑(1〉COOCH3
一 CH
O ¥ J よ C ト H 1
CO~
cooc ト h
‑CHz‑CH 一 一 CH
・(2)
o CH‑
¥ t o /
. C O O C H 3
-CH~-CH 、 Héb t l H
¥CO/
川 円
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nUHn FLIPL
ー回
C O O C H 3
‑CH 一一円 ‑fHz . . . . . H ・ H ・ . . . . .
(3)C O CH‑
¥ 0 /
Barnett21氏らはマレイン酸アリノレエステノレの環化において 5員環と 6員環の両者を生じるが5 員環生成の立体障害がやや少ないと述べているO 著者らの場合も同じ見解によってマレイシ酸ピニ ノレエステルでは 4員環を生じやすい筈であり,これは赤外線吸収スベクトノレにより明らかにされたD
ただしポリマレエートのやや高い環化率はこの 4員環の寄与によるものかどうかは 4員環 5員 環を示す吸収曲線の吸光率を測定する必要があり定量的の乙とは後日にゆずりたい。
つぎにポリマVエート,ポリブマレートいずれの場合も残存二重結合は酸の方に多いのであるか り
川 0
1・
c o ‑ C H = ‑ C H
C O O C H , ̲
C H 2 ‑CH‑CH
o C H ‑‑‑‑I
¥ /
ノ
i I
のピニノレ基聞の結合の方 カヨ
COOCH3 CHz‑CH‑CH
o CH
¥ /
C O
C O O C H 3 CH 一 一 CH
CO
o ‑C H=C H 2
)1'L の不飽和酸の閣の結合よ m.116 福井大学工学部研究報告第10巻 第 卜2号
り起り易いことになる。乙れはマレイン酸ならびにブマノレ酸のエステノレの単独重合速度が一般のピ ニノレ化合物のそれに比べてはるかに低い乙とから理解し得ることであるo
5 . 要
旨モノメチノレマレエート及びモノメチノレブマレートと酢酸ピニル'とのピニノレ交換反応によりメチノレ ピニノレマレエート及びメチノレビニノレブマレートを合成し,それらの諸定数を定めたD
ラジカノレ性開始剤により上のモノマーの環化重合を行ない,ブマレートの初期重合速度はマレエ ートの約30倍である乙とを確かめ,残存二重結合の定量及び赤外線吸収スベクトノレの検討により,
マレエートでは4員環及び 5員環,ブマレートでは 5員環の生成していることを推論した。
付記 乙の報告は「高分子化学」第19券1月 号 ( 昭 和37年)tc掲載の同じ標題の論文に補筆したも のであるD 試料無水マレイン酸ならびに赤外線吸収スベクトノレの撮影で荒川
l
林産化学工業(株)に お世話になった。また赤外線吸収スベクトノレは本学鯨井教授に検討して頂いたョ実験には当時の学 生前敏雄,松山茂春両君の熱心な協力を得士。ともに厚く感謝申上げる口文 献
1) C. S. Marvel and E. J. Gall; 1. Org. Chem. 25 1784 (1960) G. Paesschen et al; Makromol. Chem. 37 46 (1960)
麻生忠二;工化誌 63188, 363 (1960)
R. C. Schulz et al; Makromo .lChem. 44‑46 281 (1961) 三 宅 泰 治 工 化 誌 64359 (1961)
上記以前の文献は麻生;高分子8519 (1959) 2) M. D. Barnett et al; J. A. C. S. 81 5946 (1959) 3) R. L. Adelman; J. Org. Chem. 14 1057 (1949) 4)山 田 , 高 瀬 高 分 子 化 学 1885 (1961)
5) F. R. Mayo and C. Walling; Chem. Revs. 27 351 (1940) 6) H. Er lenmeyer et al; Hel. Chim. Acta. 20 1008 (1937) 7) F.乱1. Lewis and F. R. Mayo; J. A. C. S. 70 1533 (1948)
8) S. Siggia; Quantitative Organic Analysis via Functional Groups. John Wiley and Sons NewYork 9) H. K. Hall; J. A. C. S. 80 6428 (1958)
10) S. Searles; 1. A. C. S. 75 71 (1953)
(受理年月日 昭和37年1月22日)