「 つ な が り 」 を 意 識 し た 小 学 校 外 国 語 活 動 の カ リ キ ュ ラ ム 開 発
ーコミュニケーション能力の素地を養い,人とよりよくかかわる児童の育成をめざしてー
高度学校教育実践専攻 教職実践力高度化コース 鈴 江 裕 子
第 1章 課 題 設 定
1 実践研究の背景と課題意識
来るべきグローパル社会,そして新しい知識,
情報,技術があらゆる領域で飛躍的に重要性を 増す「知識基盤社会」を生きていくためには,
様々な資質や能力が必要とされる。特に異なっ た言語や文化をもっ人々に対して,相手の立場 を尊重しながら理解したり,自分の考えや意思 を表現したりするコミュニケーション能力は重 要である。
平成23年度に小学校に外国語活動が導入さ れて3年が過ぎた。全国調査でも 70%以上の児 童が「外国語活動の授業が好き」だと答え, 90%
以上の児童が「使えるようになりたし、」と回答 している。しかし,外国語活動の目標が十分に 理解されず,研修・支援の不十分さから,教材 内容を消化するだけのマニュアル的な活動や楽 しさのみを追求したゲーム活動が行われていた り, ALTや外部人材にお任せ状態の授業が展開 されていたりする,といった課題もある。この ような中,平成25年に文部科学省は「グローパ ル化に対応した英語教育改革実施計画」を発表 した。平成32年度より小学校中学年からの外国 語活動の開始,高学年では外国語活動の教科化 が計画されている。「グローパル社会を生きる子 どもたちに必要なコミュニケーションカとは何 か」について,原点に立ち返って考えるべきで はないだろうか。
実 習 責 任 教 員 村 川 雅 弘 実 習 指 導 教 員 芝 山 明 義
2 学校アセスメントによる課題把握
実習校において,児童の実態と外国語活動に ついてのアセスメントを行った結果,実習校の 児 童 は 友 達 に 進 ん で か か わ る こ と が で き る 」 というよさがある一方, r話を聴くことや自分の 考えを深めること,上手に表現して相手に伝え ることが十分ではなしリといった,表現力やコ ミュニケーション能力に課題があることが明ら かになった。来るべきグローパノレ化や知識基盤 社会において,コミュニケーション能力は社会 からも教育界からも重要視されているが,実習 校にとっても,ここ数年,努力事項のーっとし て挙げられている。
外国語活動に関して,実習校は,平成21年度 に研究指定校となった経緯がある。そのため,
年間計画や指導案,教材教具がそろっているこ と,学級担任が主となって指導する授業スタイ ルであることが実習校の強みであった。また,
児童の多く (5年88%,6年 91%)は外国語活動 の授業が好きであることも明らかになった。し かし,教師の異動や,主たる研究課題の変更,
あるいは教師の時間のなさから,外国語活動に 関する研修ができていない,年間計画や活動の 検証が十分に行えていない,という課題もある。
その結果,学級担任が不安をもったまま授業を している現状もあった。
3 課題設定
外国語活動では,児童にとって不慣れな「英
語」を使うことで,児童は耳だけではなく,目 や心を相手に傾け話を聴こうとする,あるいは 言葉だけではなく,ジェスチャーや表情なども 駆使しながら相手に何とか伝えようとする活動 が可能である。外国語活動を充実することが実 習校の課題であるコミュニケーション能力を育 む一つの手立てとなり,そのためには,児童自 らがやりがいや意味を感じ.r心」がiWJく魅力的 なカリキュラムが必要である。そこでは,児童 の生活や興味関心との関連や異文化発見など,
新しい気付きを促す世界やもの,人と児童を「つ なぐ」ことが重要になるのではないかと考えた。
そこで,本実践研究では.rつながり」を意識し た外国語活動のカリキュラム開発をすることに
した。
第2章学習指導要領に見る「つながり」
小 学 校 で は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 素 地Jを,中学校では「コミュニケーション能力 の基礎」を,高等学校では「コミュ二ケーショ ン能力」そのものを養うことが目標となってい ることからも,小中高を通して.rコミュニケー シヨン能力Jの育成を図っていることがわかる。
小学校外国語活動の目標である「コミュニケー ション能力の素地Jとは,①言語や文化に対す る体験的な理解,②積極的にコミュニケーシヨ ンを図ろうとする態度,③外国語の音声や基本 的な表現への慣れ親しみ,のことである。これ らを「体験的」に「統合的」に学ぶことが小学 校外国語活動の目標である。
第3章 「つながり」を意識した外国語活動の カリキュラム
外国語活動におけるカリキュラムには,児童 の生活と結びつく体験や経験の存在が不可欠で ある。また,外国語活動における「学び」とは,
「体験」を重視していることからも.r獲得」で
はなく.
r
参加」としての学びであり.r
関係づ くり」としての学びである。そのため,外国語 活動の中で行われる「コミュニケーション活動」は関係づくりをめざしたものがふさわしい。教 師は,児童がコミュニケーション活動を行うた めの土壌づくりを行い,児童が周辺的な参加か ら活動の中心となって参加できるよう授業の中 に「足場づくりJをすることが必要である。
第4章 実 践 研 究 の 構 想
学校アセスメントにより見えてきた実習校の 課題と現在の背景と課題意識,先行研究より,
①外国語活動の目的に沿ったカリキュラムを開 発する,②平成32年を見据えて外国語活動の理 念や在り方を広げる,③児童の学びや思いが中 学校に「つながる」活動を実施する。
①については,高学年外国語活動において,
「世界Jr仲間Jr他教科での学びJr地域・未来」
と児童をつなぐカリキュラム開発を行う。また,
中学年においては 15分間のモジュール活動の カリキュラム開発を行う。②については,全体 研修や学年研修の他,学級担任とともに授業や 活動を行うことでその理念や方法を広げる。特 に,高学年外国語活動においては.FWI では 実習生が Tlとして授業をリードし.Fwnでは 学級担任がTlとして授業をリードし,実習生 は支援者としての役割を果たすように計画した。
③については,文字導入の工夫や中学校の英語 教師との交流など,小中連携の充実を図ること にした。
開発したカリキュラム(年間計画,単元計画,
授業計画)の有効性は,学級担任とともに授業 実践することで検証する。また,授業にかかわ った指導者との意見交流や,授業毎に行う児童 の振り返りカードをもとに,さらに改善を加え ることとする。
第5章 実 践 研 究
1 高学年の外国語活動力リキュラム開発と実 践・分析
4つの視点と児童をつなぐカリキュラムを開 発し,実践と分析を行った。
(1)仲間と児童をつなぐ
6年「できることを紹介しよう」では,聴く 活動から自然な発話につながるように活動を工 夫し,最終的には慣れ親しんだ表現を使って,
自分のできることを友達に知らせるスピーチを する。児童はスピーチを考える時に自分と向き 合い,友達のスピーチを聴くことで友達への理 解を深める。さらに,英語では言い尽くせない 友達のよさを ryoucanメッセージ」で友達に 伝え,メッセージをもらった児童は,友達から 新たな自分を発見させてもらう。
(2 )他教科での学びと児童をつなぐ
5年では.
r
足し算じゃんけん」を取り入れた り 6年では 3年時にならった地図記号を「地 域案内」の単元で取り入れたりした。(3)地域・未来と児童をつなぐ
Google Earthを使い.ALTやJTEの「甘い 物が食べたし、Jr運動がしたし、」などのリクエス
トに答え,地域案内を行った。
未来とつなぐ活動としては,中学校の l日を 紹介したり 5年は大文字 6年は小文字のア ルフアベット絵辞典づくりに取り組んだりした。
(4 )世界と児童をつなぐ
国際交流会を行うことで,実際に外国の人と 交流する機会を設けた。 GoogleEarthを使って
ALTの国を案内してもらうなど,児童に海外旅 行の疑似体験をさせた。最後の時間には.iPad
などの ICT機器を使い,自分のお薦めの国を友 達に紹介した。
児童の Reflectionsheetには rlt、つも一緒に
‑学録のスペ討.J凶レ〉タを古ろう
・みん剖Z知2て~おう 1 自分@できるとと {問自己とjスピーチ &Youcan)l'~時:-~) .友達の好き怠物.,‑,ずねよう
イ'''''~ユー活動 仲間鎮めゲ'‑b .心建一つにグ'‑b
など
仲間づくり 関係づ〈り 足場づ〈り
.英語で鱒:1<
{たし,
. G
.,A必ずん}一 一 一 一
一 一 一 一
品
吋
川 内
.J;.;史上の人物の榎生日 .地図配号を過して漣舗の
場所の言い方を知るう
・世界建盆ヅアーに低ζう .栄養棄を考えて
,、J~Y-)C二ユをつ.(ろラ 忽ど
参加
図1 4つの視点と児童をつなぐ単元,活動例 いる友達なのに,また新たな発見があったJ
ryou canメッセージで,自分の知らなかった 自分のよさに気付かされたJr行ってみたい国が 増えた」などとあり.
r
仲間づくり」や「自分づ くりJ. r世界づくり」が実現したのではなし、か と 考 え る 。 ま た 楽 し い か ら す ぐ な れ るJrわ かってうれしし、」と言った感想もあった。2 中学年のモジュール活動
手作りの Mybookを作り,そこに毎回取り上 げたテーマが残るように工夫した。最終的には,
その Mybookを使って.ALTに自分の好きな 物を紹介した。少ない回数ではあったが,児童 も学級担任も英語を使ってコミュニケーション を図る楽しさを実感してもらえたと考える。モ ジュール活動後の児童アンケートでは.rはじめ は難しく感じていたが,だんだん英語が好きに なったJr塾ではやらない活動があり,みんなと するから面白しリ「楽しくて,話したことも活動
したこともみんな覚えているJr苦手な数字だけ と英語活動は楽しし、からみんなおぼえた」な どの言葉があった。
しかし. 5年生から始まる外国語活動に不安 を感じている 4年生も若干名いる。今後は,こ
の児童らのために,どのような足場づくり(支 援)をしていくかを考えていく必要がある。
3 研修・支援
FWIでは外国語活動についての共通理解を 図り,活動の体験をする全体研修を 2固と授業 の打ち合わせなどの学年研修を随時行った。
FWIIでは, 2名の学級担任が研究授業を行い,
授業を通した研修が行えた。また,学級担任を 対象に英語力向上をめざした英会話研修を行っ た。さらに,授業案や教材づくりとともに,
FWIでは,学級担任のモデ、ルとして,学級担 任とともに授業を行い, FWIIでは,できるだ け学級担任が Tlとして授業をリードし,実習 者が支援するよう交替を図った。
研修は,毎回温かい雰囲気のもとで行われ,
外国語活動についての共通理解やよさは広げる ことができたと考える。研修後には,教師の外 国語活動への姿勢にも変化がみられた。
4 小中連携
小中連携では,中学校の教師との交流を進め ることと,文字の導入の工夫をすることにした。
交流では,中学校の英語教師に中学校の 1日を 紹介するスピーチ動画づくりに協力してもらっ たり,互いに授業参観をしたりした。文字の導 入では,辞典をつくるなどして,文字や中学校 での学習に関心が持てるようにした。また,ワ ークシートに QRコードをつけて音声を持ち帰 られるよう工夫した。しかし,連携を十分に進 展させるには至らなかった。
5 成果と課題
実践研究を通して,児童や教員の言葉から,
外国語活動のよさやねらいは十分に伝わり,外 国語活動を充実させることができたのではない かと考える。また,カリキュラム開発において,
友達どうしの関係づくりや異文化をもっ人への
かかわり,理解の向上は図れたと感じる。今後 も,今年度行った実践のよさや課題を引き継ぎ,
つなげながら,児童の実態に合った質の高いコ ミュニケーション活動を取り入れたカリキュラ ム開発を継続していく必要がある。実践の成果 と課題を整理すると,表 1のようになる。
表 1 実践の成果と課題
成 果 課題
カリ .4つの視点において, ‑他教科との関連をふ
仲間づくり。世界づ まえた力リキュラム キ ュ くりの函で効果が得 開発の見直 Lが必要
ラ ム られた. である。
‑児童自身もコミユヱ ‑コミュ二ケーション 開 発 ケーション活動のよ 活動や英語に困難さ さを感じることがで を感じている児童へ
た。 の足場づくりが十分
にできなかった。
研 修 ‑外国語活動について ‑指導力,英語力向上 の 共 通 理 解 を 図 りl 研修が+分にできな 支 援 「よさJを広げるこ かった。
とができた.
‑研究綬業を中心に授 業支援ができた。
小 中 . r文字導入の工夫」が ‑小中連絡会の進展が できた。 十 分 に 図 れ な か っ 連 携 ‑中学校英語教員との た。
つながりがもてた。
第6章 実 践 研 究 の 振 り 返 り
「関係づくり」を重視したカリキュラムにつ いては,概ね満足のいく結果となった。しかし,
カリキュラムは,自の前の児童の実態に合わせ てっくりなおし,編み直していくべきものであ る。今後も,
r
体験Jr
参加Jr
関係づくり」とし、った学習スタイルを重視しつつ,児童が「気が つけば英語を言っていた」状況をつくれるよう にしっかりと足場づくりを行いたい。平成32 年,高学年の外国語活動が教科となっても,児 童の心が動く,