The Japanese Association of Management Accounting
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The Japanese Assooiation of Management Aooounting
日本 管 理 会 計 学 会 誌
管理 会計 学2012 年 第20巻 第2号
論 壇
管理 会 計研 究の 現 状 と課 題
小倉 昇
〈論壇要旨〉
本論文の 目的は、 日本管理会 計学会 2011 年度 全国大 会の 統一論 題 「管 理 会 計 研 究の 現 状 と課 題」 に おける 3名の 報 告 者に よる研究報告の 内容を整理 し、 それ らに基づ き、ま た 不 足する部 分 を補い な が ら、近 年の 管 理 会 計 研 究の展 開を特徴づける視点 を見出 す と と もに、
管理会計の研 究 課 題 を 提示するこ とである。 統一論 題の 研 究 報 告 者 は、ポイン トを 得 た 先 行 研 究のサーベ イによ り、そ れ ぞ れの領 域に おける研 究動向を 要約 する と と もに、各自の問 題 意 識 に基づ く研 究 課 題の提案を行っ た。ま た、コ メンテータ の河田信 氏か らは、「気 付 き」とい う共 通 項 を 指 摘 し、組織構 成 員に よ る創発 的 な経営へ の 参 加 が 管理会 計の研 究 課 題 として重 要で あ
るこ とが提 案 された。
〈キーワー ド〉
イン タン ジ ブルズ、 バ ランス ト・ス コ ア カ ード
、 組 織 間コ ス トマ ネジメ ン ト、公的組織の予算 管理、
Recent management accounting researches and current issues
Noboru Ogura
Abstract
The 2011 annual meeting of the JAMA (Japanese Association of Management Accou飢ing)was conducted at Kansai University倉om October 8 to 童0,2011. The purposes of this artic{e are to
summarize three reports given under the key theme ‘‘Recent manageme 槻 accounting researches and current topics,’and discussion, and to propose a direction offUture researches and some research topics .
Three research reports , which are presented fbllowing to this article 量n this issue, gave us clear briefing
of recent researches on intangibles management , inter−organizational cost management , and management accounting in public organizat …onS , and pointed some 負ユture perspectives on each topics.
Key Words
Intangibles, balanced scorecard , inter−organizationa1 cost 皿anagement , budgeting in public
organlzatlons
2012年 1月15 日 受理
青山学 院 大 学 大 学 院 会 計 プロ フ ェ ッ ショナ ル研 究科
Accepted 15 January 2012
Graduate School of PrQfessinaL Accountancy, Aoyama Gakuin University
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管理 会計 学 第20巻 第2号
1 . 統一 論 題 の 課 題 とね らい
2011年 10 月に関 西 大学で 開催され た 日本管理会 計 学 会 全 国 大 会では、「管 理 会 計 研 究の現 状 と課 題」 とい うテーマ の 下で統一論題の研 究 報 告 とディ ス カ ッ シ ョ ンが行わ れ た。 この 年が、
日本 管理会計学会創設 から満 20 年に当た る年であるので、最 近 20 年ほ どの管理会計 研 究の発 展 を振 り返 り、管 理会計学の 現状を整理 し て み ようとい うね らい か ら上記の統一テーマ が 選 択 され たの である。
統一論 題で は
、 下 記の 3人の 研 究 者が、戦 略 管理会計、 コ ス トマ ネジメ ン ト、 非 営 利 組 織 管 理 会 計の 管理会計を代 表 するそ れ ぞ れ の 分野 につ い て最 近の研 究 動 向 と最 先 端の研 究 課題 につ
い て報 告し た。
伊藤和憲氏 (専 修 大 学 )「バ ラン ス ト ・ス コ ア カー ドの 現 状 と課 題」 窪田祐一氏 (大 阪府立 大学)「組 織 間コ ス トマ ネ ジメン ト研 究の展 開」
藤野雅 史 氏 (日本 大 学 )「行政経営改革は管 理 会 計 に 何 を もた ら し たの か」
これ らの研究者の 報告 内 容 は 節 を あ らた め て詳 し く触 れ たい と思 うが、 そ の 前に、筆 者 なりの
立場か ら 1980 年 代 以降の 管理会 計 研 究に対 す る 視 点を し て お き たい。
1980 年 代 後 半か ら 2000 年 の 期 間に は、米 国で は 活動 基 準 原価計 算 (activity−based
costing ;ABC )、経 済 付 加 価値 (economic value −added :EVA )、バ ラ ン ス ト・ス コ ア カー ド (balanced
scorecard :BSC )などの新しい 手法が次々 と提案さ れ た。同 じ時 期に 日本で も、 原価企 画の研 究 が 本 格 化 し、社 内 資 本金制度や ミニ プ ロ フ ィ ッ トセ ン ターな ど日本 企 業が実 践の 中で育成し て
きた独 自の 管理会 計 手 法に研 究の 目が向けられ た。
ま た、決し て新しい 手法 とはい え ないが、 品 質コ ス ト 〈cost of quarity) や ラ イ フ サ イ クル ・
コ ス テ ィ ン グ (life−cycle costing :LCC ) な どすで に 提案され、 利 用 されて い た概 念の見直し が行 われ たの もこの 時 期で あっ た。品質コ ス トにっ いては、品 質 管理 コ ス ト と失敗 コス トの 均 衡 点 を理 想とする静態的な 考 え 方が、1960 年 代か ら 70年代に かけて米 国の 品質管理学会を中 心に
発 展し て きた が、1980 年代に はい り 日本の 製 造企業か ら輸出 され るよ うになっ た 低コ ス ト・高
品質の製品 を 目の当 た りに し て 、静 態 的な 品質コ ス ト均 衡モデル に対 する批 判 や 反省が 米 国 内 で強 くなっ た。 その結果、 予防コ ス トの投 入か ら一
定の タ イム ラグ を 経て失 敗 コ ス トの削減に 結びつ く因 果 関 係 を分析 する動態 的 な品質コ ス トモ デル が評価さ れ る よ うになる。1980年 代 に
は品質コ ス トの 集 計 を 行っ て い る日本企業を ほ と ん ど み るこ とができ なかっ たの に対し、 梶 原 氏 が 行っ た 2007 年の 質 問紙調 査で は、 回答企業の 65 パ ーセ ン トが品 質 管 理 コ ス ト と失敗コ ス
トを 含 む 品 質コ ス トの集 計を行っ てい た ことが 明 らか に なっ た (梶 原、2008、 p.65)。
ま た LCC につ い て は、1960年 代に米 国 政 府の耐 久 財 調達の た め に国 防 総 省が中心 になっ て開 発 した 原 価 計算手 法で あ る とい われ てい る (中 島、2011 、p .11)。 1990 年 代はい る と、情 報シ
ス テ ムの コ ス ト・パ フt 一マ ン ス を評 価する た め に、シス テ ム の ラ イフサ イクル 全体に か か る
コ ス ト (シス テム の導入 コ ス トだ けでな く、運 用 費 用に加え てソフ トウェ ア の バ ージョ ン ア ッ
プ費用、 運 用 中の シ ス テム 拡張 のた めの コ ス トな ど を 含 む ) を 計算す る必 要が主 張 され TCO
(total eost ofownership ) と 呼 ば れ た。ま た、英 国で は、 サ ッ チャーか ら政 権 を受 け 継いだ メ ジ
ャー政 権 下で行 わ れた行 政 経営改革の中で、1992年に PFI (private fmarlce initiative二公共 サー
ビス 提 供へ の民間資金の活 用 )が提案さ れた。 PFI の 経 済 性 を 評 価 する た め に、 VFM (value for
money )とい う概念が使わ れ た。VFM とは、行 政 自 身が 公 共 サービス の提供を 実 施 する際の LCC
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管理会 計研究の現 状と課 題
と、PFIに よっ て民 間資金が参 加する際の LCC の 差 額である。(中 島,2011, 104 ・107) さ らに、 1990 年 代に提 起 された環 境マ ネジ メン トの 議 論の 中で も、 LCC の 概 念は 再検討 さ れる よ うになる。 設備の 利 用の 途 上で排 出 される環 境 負 荷 物 質の処 理や 設 備の利用が終了し た 後 に 生じる 廃 棄 物の問 題 は、行 政が対 応し税金 で費用 が負担 され る場 合 が 多かっ たので、 社 会
コ ス ト と認 識 され ていた。 と こ ろが、 環 境 負荷物 質の処 理コ ス トが増 大 す ると ともに、税 金で 負担 し て いた 処 理 コ ス トを設備の利用者 あるい は受 益 者に負 担 さ せ る必 要 性が主 張 され た。税 金 で負担 し てい ると きに は個々 の設 備 と結びつ けた 正確な コ ス ト計算は 必要 なかっ た が、 設 備 利 用 者 に 費 用 負 担 を 求め る場合に は、 設 備種 類ごとの 厳密 な 計算を 求 め られ る。 つ まり、1980 年 代 以 前に は設 備の 購 入 費 用 (あるい は製 作 ・建 設 費 用 )と運用 段階で利用者 が 負 担する費用 を 合わ せ た もの を計算しLCC と 呼 ん でい た が、設備利 用 段 階で生じ る廃 棄 物 (排 気ガ ス、汚 水、
ごみ)の 処 理費用 や設備自身 を 廃棄するた めの費 用 を、設 備ごとに厳密に計算して利 用者に負 担 さ せ る 必要性が 主 張 され る ようになっ たの である。(國 部、2004 、pp .71 −82)
このよ うに、1980 年 代 以 後の 20 年 間 は、新しい管理手 法 や概念の 管理会 計へ の 導入 と既存
の 管理会計手 法の 見直しが 活発 に行 わ れ た 時 代 と位置 付 けるこ と がで きるだろう。 し か し、こ
の ような 現象だ けを取り 上 げて、近年の管理会 計研究の特徴と理解するこ とは 早 計 だ ろ う。決 し て新 しい 手法 や 概 念 を 提 案 するこ と だ けが研 究 者の役 割で は なく、新しく提案され た手法を 含 めて、既 存の管 理 手 法が実 際の 組 織の 中で どの よ うな効 果を期 待で き るの か を評 価 する必要 があり、ま た、実 務の 中で適 切に運 用 され るた め に は 必要な環壇 条件や導入 手順を突き と め て 明 らか にす ることも、 研 究者に求め ら れ る。 本稿で は、 1980年 代以後の 管 理 会 計 研 究 を 「研 究 拡 張の側面」 と 「研 究 深 化の側 面j に分け、 両者の 側 面 か ら管理会 計 研 究の 発 展 を 振り 返 るこ と を試み る。 まず、次の節では、統一論 題の報 告 者の研 究 報 告を概 観し、そ れ ぞ れ の報 告 者が 管理 会 計の研 究を どのよ うに 捉 え てい るの か を確 認する。 第 3節で は、第 2節の 内 容 を 補い な が ら 管理会 計 研 究の拡 張の側 面 を 筆 者の視 点か ら特徴づけ る。 最後に第4節で は、管理会 計 研 究の深化の 側面を 「管 理 会 計 研 究の課 題」 と捉 え たい 。
2 . 統一一th題 報 告者の報告論 旨
(1) 第 1報告者 :伊藤和憲氏 「バ ラ ン ス ト ・ス コ ア カー ドの 現状 と課 題」
伊藤氏の報 告では、 人的資産 を中心 とする イ ン タ ン ジブル ズのマ ネジ メン トに関 する研 究の 現状と 課題が紹介された。まず、バ ラ ン ス ト・ス コ アカードの 基 本 となる 4 つ の 視 点 (財 務の 視点、 顧客の 視 点、内 部プ ロセ ス の 視 点、学 習 と成 長の視点)の うち学 習 と成長の 視点に 強 く 関わる イン タンジ ブル ズ のマ ネジメン トが最も遅れ てい る 研究領域である こと を 指 摘 した。さ ら に、 イ ン タンジ ブル ズ のマ ネジメ ン トに関 する最近の 研 究を取り上 げて、研 究が深 ま らない 原 因を次の ように推 定 した。
ま ず、Kaplan and Norton(2004 )の学習 と成長の 視点に関 する解説 を 引 用 し て 、イン タンジ ブ
ル ズが人的 資 産、情 報 資 産、組 織 資 産 な どか ら構 成 され る もの の 、これ らの 構成要素が個別 に 価 値を持つ もので はなく相互 に因 果関係 を 構築する 必要 性 を 指 摘してい る。し か しなが ら、イ
ン タン ジブル ズのマ ネジ メン トに関 連 す る先 行 研 究の 多 くは、 人的資産や情報 資 産 など を個別
に取 り出し て議 論 し てお り、イン タンジ ブル ズ の構 成 要 素 間の因 果 関 係に 目 を向け る こ と が 少 なかっ たと、 問 題 提起し た。
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