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(1)

−39−

硫酸水溶液中における鉛合金のアノード挙動 一定電流分極開始直後の電位停滞について−

野坂

11111

TheAnodicBehaviorofLeadAlloysinSulfuricAcidSolution -OnthePotentialPlateau

ObservedatthelnitialStageofGalvanostaticPolarization-

HajimeNozAKA

(昭和62年10月30日受理)

Leadandleadalloysweresubjected toanodicoxidationinsulfuricacidsolutionunder

galvanostaticcondition.Thepotential・timetransientsofpureleadandPb‑Caalloyshowedone plateaucorrespondingtotheformationofPbSO4.OntheotherhandthoseofPb.Agalloyand Pb‑Ag‑Caalloyshowedtwoplateaus・ ThefirstplateaucolTespondedtotheformationof PbSO.$,andthesecondplateauindicatedtheformationofAg2SO4.Itseemsthattheseelectro‑

chemical reactionsproceedalongthedisolution‑depositionmechanism, andthecharge(Q) requiredtotheformationofPbSO4 isgivenbythefollowingform;

Q=K, (凡×I) !+a

(i :currentdensity K!,K2,a:constant)

ThatofAg2SO4ontheslowlysolidifiedalloysisthesameform。.十h.っ1,,,、7. 1,,,+nハ+nn↑hP (i:currentdensity K!,K2,a:constant)

tofAg2SO4ontheslowlysolidifiedalloys isthesameformastheabove

ilysolidinedalloys.

,butnotonthe

rapidly

1

を行ったところ新たな知見が得られたのでその結果

を報告する。

硫酸水溶液中における鉛あるいは鉛合金アノード の腐食挙動についての研究は古くから行なわれ多く の報告がなされてきた。そして電位規制下にある鉛 あるいは鉛合金アノード表面の腐食挙動については 熱力学的な面からの取')扱いが容易であるため,か な')の部分が明らかにされている。

一・方,鉛蓄電池の正極,非鉄金属の電解採取用ア ノードなと.は電流規制下にあると考えられ, それら の腐食挙動に関した研究報告も見られるが,不明な 点も多く残されている。

著者はこれまでに電流規制下にある鉛合金アノー ドの表面に生成する二酸化鉛の量について二,三の 報告を行なってきたが,前報')において二酸化鉛の 生成速度は電解初期とある程度酸化物膜が成長して からとでは異なることを示した。

そこで今回は電解初期の腐食挙動を詳細に検討す るため,電解開始直後に見られるアノード電位の停 滞現象に着目して,停滞電位および停滞時間の測定

2. 実験方法

アノード材としては純鉛,鉛一銀合金,鉛一カル シウム合金,鉛一銀一カルシウム合金を用いた。そ れらの合金中に含まれる添加元素の分析値を表1に 示す。これらの試料は著者らが既に報告した')2)方法 によって調製したものであり,急冷凝固試料と徐冷 凝固試料(SC)との両方を実験に供した。アノード の形状・表面の処理方法とも前報')と同様である。

電流密度(j ;A/cm2)は定電流電解装置を用いて 所定の値に設定した。試料アノードを電解液に入れ た時の自然電位から電解開始後約2分間の電位変化 をペンレコーダを用いて記録し,停滞電位,停滞時

"(/ ;sec)を記録紙から読み取った。

電解液は硫酸水溶液(150g/l),温度は40℃とし た。比較電極には市胴の硫酸第1水銀電極を用い,

以下特に示さない限I)電位は硫酸第1水銀電極基準

昭和63年2月

。〆〃

(2)

可■■

‑40‑

野坂

(+650mV水素電極基準, 25℃)で表す。

表1 3. 結果および考察

著者は電流密度が50mA/cm2付近のアノード挙 動を調べたいのであるが,電流密度が50mA/cm2付 近になると停滞時間が非常に短く,ペンレコーダを 用いた測定では読み取')が困難であった。そこで電 流密度が50mA/cm2よりも小さい側の停滞時間を 測定し,その結果を外挿して電流密度50mA/cm2の 時の値を推定することにした。

試料アノードを定電流分極した時の電位変化の一 例を図1に示す。図1に見られるように,純鉛アノー ドでは自然電位から1つの電位停滞を経てピークに 達し, その後徐々に電位が低下するという経過をた と.る。鉛一カルシウム合金も同様の変化を示した。

これに対し鉛一銀合金では図1に示すような自然電 位から2つの電位停滞を経てピークに達するという 経過をたどる。鉛一銀一カルシウム合金も2つの電 位停滞を有し,鉛一銀合金と同様の変化を示すこと がわかった。

純鉛,鉛一カルシウム合金アノードの停滞電位お よび鉛一銀合金,鉛一銀一カルシウム合金アノード の最初の停滞の電位は約‑990mVであることか

ら, これらの電位停滞は

Pb+SO42‑−→PbSO4+2e (Eo=1.009V,25℃)

という反応の進行によるものと考えられ, これを steplと呼ぶことにする。これに対し鉛一銀合金,

鉛一銀一カノレシウム合金アノードの2番目の停滞の

電位は約OVであることからこれらの電位停滞は 2Ag+SO42‑−→Ag2SO4+2e (Eo=0.003V, 25℃)

という反応の進行によるものと考えられ, これを step2と呼̲;§ことにする。

またピークを持った電位変化を示すことは,すで に知られているように,導電性のない硫酸鉛が電位 の上昇によって導電性の二酸化鉛に変化し, その二 酸化鉛の表面から酸素の発生が始まるためであると 考えられる。

図2,図3はそれぞれ鉛一銀(0.7%)合金の急冷 凝固試料と徐冷凝固試料とについて電位停滞時間の

3 Pb

Pb−Ca Pb‑Ag

Pb‑Ag‑Ca

︵ご増腰

1

0

−1

−2

時間

図1 鉛合金アノードの電位変化

秋田高専研究紀要第23号

̲■

分析値 ( wt%)

1−万ルシウX−

1271362626●●●●●●●●●●

︒■■aOOOOOOOOO0

Pggggaaa55

e

AAAACCC・・1100

1 1 1 9 7 1 05

49 48 93 92

●●の■●●●●00010000

09 32 63 20 65 1 9 58

●●●●●●●0000000

(3)

‑41‑

硫酸水溶液中における鉛合金のアノード挙動

よって不働態化の機構が異なることを見い出してい る。すなわちアノード電位が−940mV以下の時は,

鉛は一度溶液中に溶け出し, その後飽和となった硫 酸鉛がアノード表面に析出するが,‑940mV以上 では鉛表面で直接硫酸鉛の核化・成長が起こるとい うことである。本研究は定電流法によって行われて いるため, Hampsonらの結果を直接適用すること はできないとしても,停滞電位から見てsteplにお ける反応機構は溶解一析出型であると考えられる。

step2における硫酸銀の生成についても, steplと 同程度の電気量が流れることから見て,溶解一析出 型の反応機構によるものと考えられる。 しかし硫酸 銀の溶解度(2.5×10‑2mOl/1,純水中25℃)は硫酸鉛 のそれ(1.4×10‑4mol/1,純水中25℃)よりも大きい と思われるため, アノード近傍の溶液が過飽和に達 するだけの量の銀がアノード表面に供給されるとい うことは困難であると考えられ, step2における不 働態化は硫酸銀の析出によってではなく,銀の供給 が停止されることによって達成されるものと推定さ れる。従ってsteplとstep2とで電流密度の影響に 関して同様の傾向(α<‑1)を示しているが, その 原因は異なるものと考えられる。

ところで表2を見ると,α 6の値と銀含有量ある いはカルシウム含有量との間には一定の傾向は見ら れない。それに対して, αと6とは図4,図5に見ら れるように相関があるものと思われる。急冷凝固試 料のstep2を除くと, αとjとの関係は次式によっ て表すことができる。

対数(1()g/ノ と芯流密度の対数(Iog/) との関係を 示したものである。いずれの場合もlogiとlog/と は直線関係にあることがわかる。つま')

1()g/="logi+6 ((7,"定数) (l) という式で表わすことができる。 (l)式より

/=1()b×ia

Q=/×/=10b×/'+a (Q:電気趾) (2) この関係は測定した他の試料アノードのすべてにお いて成立しており, それぞれの試料についての定数 α、 6の値を表2に示す。表2においてα 6の値が 示されていない部分は,電位停滞が全く現れないか あるいは低遮流密度においても停滞時間が短すぎて 読み取,)が不可能であったものである。 (2)式よI) 、 α=−,ならばそれぞれの反応によって生成する酸 化物の趾は遮流密度に依存しないということになる が,表2を見ると1つ(Ag‑1, step2)を除いて α<−,となっていることがわかる。α<− という ことは,岻流密度が増加するにつれて酸化物の生成 に消費される電気趾が減少するということを示して いる。 またここで亜要なことは,図3に顕著に現れ ているが.原子分率にして鉛の1/50以下しか含まれ ていない銀が反応する時,鉛が反応する場合と同程 度あるいはそれ以上の電気迅が流れるということが 多くの試料において観察されることである。鉛と銀 の酸化数を考慮すると,鉛の2倍以上の量の銀がア

ノード表面で反応したことになる。

Hampsonら3)は鉛を定電位法によって1M一硫 酸水溶液中でアノード分極し, アノードの電位に

11111

I

1.5 1.5

〔戸鼠tep

ユー農↑P価

1.0 1.0

一助○一

害0.5

︒卯齢

0 0

−0.5 −0.5

‑2.5 ‑2 ‑1.5 ‑1

logi

logt‑logiプロット (Ag‑0.796)

3

logi lⅦ

図3 1ogt‑logiプロット (A9‑0.7%SC)

1 1

図2

昭和63年2月

=. 砂子−●‐舎一トニ』■■=一一 bー→一 一一一一二・一"一一=一一一一一 一一一一口 L一一一一一 号

(4)

1

−42−

野坂

6=Atz+B (A,B:定数) (3) (2)式よI) Q=10Aa+B×i1+a

Q=10B‑A(10A×/)'+a

=Ki (脇×/)'+a

(Ki=10B‑A,&=10A) (4) 図4jg ') , steplについてはA=1.57,B=0.173で あるから

Q=0.040×(37.2/)'+a (5) 図5jg ') , step2については徐冷凝固試料に関して A=3.47,B=2.72で.あるから

Q=0.178×(2950i)'+a (6) となる。

ここで, step2の反応が起こる時はsteplの反応 によってアノード表面は硫酸鉛によって覆われてい ることになI) ,銀の溶解反応は硫酸鉛層の影響を受 けるものと考えられる。おそらくこのために,急冷 凝固試料のstep2におけるαと6とが複雑な関係 を示したものと思われる。徐冷凝固試料の場合は合 金表面に銀飽和相2)が析出しているため,硫酸鉛層 の影響をあまl)受けずにstep2の反応が起こるも のと考えられる。

表2

−1 .5 ()

○.笹. テ姓IAl図式料

●i術『柱│古1回式料

γ・ ノ〃●ノ

−2.0 −1 ノノノ

〃ノノ●一

●ノ

FQ

'

α″●

ヅノノ○

2.5 −2

●除冷縫固試料

−3.() −3

2. {) −1.5

a

図4 aとbとの相関(stepl)

‑‐ 1. () −1.5 −1. () −0.5

a

図5 aとbとの相関(step2)

秋田高専研究紀要第23号

STEP l

a b

STEP 2

a b

CCCCCCCCCSSSSSSSSS12713626261272626●●●■●●●●︒●●●●●①●●

1

1

bOOOOOOOOOObOOOOOOOP一一一一一一一一一一一P一一一一一一一一ggggaaa559gg95戸bAAAACCC■●00 11AAAA●己00 11

1.23 1.50 1.55 1.33 1.43 1.42 1.25 1.30 1.39 1.35 1.76 1.72 1.29 1.40 1.55 1 .54 1.63 1.55 1 .63 1.29 1.43

■■■、

1.83 2.09 2.27 1.92 2.23 2.25 1.67 1.86 1.95 1.83 2.57 2.44 2.02 1.94 2.21 2.18 2.59 2.26 2.41 1.79 2.01

一一一一一一一一一一写 一一一

1.20 0.66

1.07 1 .20 1.38 1.20

1.38 1.03 1.33 1.32 1. 17 1 .24

一一一一

一一一

2.75 1.69

1.86 2. 16 2.24 1.87

2.03 0.83 2. 10 1.84 1.49 1 .32

一一一一

(5)

−43−

硫酸水溶液中における鉛合金のアノード挙動

4. とめ という形の式で表わすことができる。 しかし硫酸銀

の生成に消費された電気量は徐冷凝固試料について のみ上式によって表わすことができ,急冷凝固試料 については統一的に表すことはできない。

鉛あるいは鉛合金アノードの定電流分極開始直後 に見られる電位停滞について調べたところ.純鉛お よび鉛一カルシウム合金では1つの停滞期を持つ が,鉛一銀,鉛一銀一カルシウム合金では2つの停 滞期を持つことがわかった。停滞電位から見て,純 鉛および鉛一カノレシウム合金の停滞は硫酸鉛の生成 によるもので,鉛一銀,鉛一銀一カノレシウム合金の 最初の停滞は硫酸鉛の生成,二番目の停滞は硫酸銀 の生成によるものと考えられる。 またそれら2つの 反応はいずれも溶解一析出型の機構によって進行す るものと思われる。

硫酸鉛の生成に消費きれた電気量(Q)に及ぼす添 加元素の影響については明瞭な傾向が見られない

5.

本研究を行なうにあたり終始ご指導いただきまし た東北大学選鉱製錬研究所戸沢一光教授ならびに梅 津良昭助教授に謝意を表します。

参考文献

1) 野坂,秋田高専研究紀要, 21,24(1986).

2) 梅津,野坂,戸沢, 日本鉱業会誌, 101, 375

(1985).

3) N、A. HAMPSONandJ.B. LAKEMAN,

が, それでもいずれのアノードにつb Q=KI (脇×/)!+a

(ノ :晒流密度(,,KE,":定数)

ドについても

SurfaceTechnology,9,97(1979).

I

い、

.TLl K】

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