アメリカにおける早期事業再建の手法
著者 山本 研
雑誌名 明治学院大学法律科学研究所年報 = Annual Report of Institute for Legal Research
巻 31
ページ 113‑115
発行年 2015‑07‑31
URL http://hdl.handle.net/10723/2522
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アメリカにおける早期事業再建の手法アメリカにおける早期事業再建の手法
山 本 研
〈研究会報告の概要〉
現在わが国においては、法的な倒産手続の前に私的整理を前置し、金融債権者を中心とする主 要債権者と再建の方向性や計画案について一定の合意を形成するとともに、事前にスポンサー候 補も定めた上で、法的倒産手続を開始し、手続開始後は、事前の合意を尊重することにより手続 の多くの部分を省略し、法的手続に要する時間・コストを削減するとともに、早期に法的手続か ら離脱することを通じて、再建の実効性を高めるという、事前調整型の再建手法が注目を集めて いる。とくに実務においては、選択肢の一つとして、事業再生ADR等において計画案の多数決 による成立を可能とすべきとの要請が強く、かかる要請を可能とする法的枠組みの是非、その問 題点、想定される制度モデルなどについて検討するため、問題意識を共有する倒産実務家および 研究者により、「事業再生に関する紛争解決手続の更なる円滑化に関する検討会」(事務局:公益 社団法人商事法務研究会)が立ち上げられ、関係省庁等からもオブザーバー参加を得て、検討が 進められている。同検討会は、2014年3月以降、原則として毎月1回のペースで開催され、2015 年3月の第12回会合までの検討結果を踏まえ、現在報告書をとりまとめている段階である(2015 年3月現在)。
現在、事業再生に関する世界的な潮流として、裁判外でのワークアウト(私的整理)の利点を 活かし、事業価値の毀損を避け、早期の事業再建を図る方向での制度改革が進められており、欧 米においては、裁判外でのワークアウトによる合意を法的手続においても尊重する制度が既に活 用されているとともに(アメリカにおけるプレ・パッケージ型(pre-packed Chapter11)の手続 運用、フランスにおける迅速金融再生手続、イギリスにおける会社任意整理(C.V.A)および会 社整理計画(S.A.)など)、アジア諸国でも、裁判外でのワークアウトにおいて法定多数の債権 者の同意が得られた計画を裁判所が認可することにより発効させ、少数の不同意債権者を拘束す る制度が相次いで立法されている。そこで、上記検討会においても、これら諸外国の法制につい ての検討を手がかりとして、今後のわが国における早期事業再生のあり方について検討を進める こととしたところである。
筆者も上記検討会の委員として、検討に参加する機会を与えられ、諸外国の法制については、
アメリカにおける早期事業再建手法についての分析と報告を担当した。アメリカにおいては、現 行倒産法の制定時より、プレ・パッケージ型といわれる手続開始前に計画案に対する投票まで済 ませてしまう特別手続の利用が可能とされており、さらにリーマンショック以降は、大企業を中 心に、いわゆる363条セールを活用した事業譲渡との組み合わせによる事前調整型の早期事業再 建手法が活用されており(GMやクライスラーの早期事業再生がその好例としてあげられる)、
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共同研究:債権法改正を考える
判例理論の進展とともに活発な議論が展開されている。そこで、上記検討会における報告に向け た準備作業として、2014年9月24日に開催された共同研究会(「債権法改正を考える研究会」)に おいて、アメリカにおける早期事業再建手法の全体像、その運用状況、および、それに伴う問題 点等についての検討結果を報告したところである。
本研究会における報告は以上の経緯に基くものであり、その後の上記検討会における報告結果 等を踏まえた報告書(「事業再生に関する紛争解決手続の更なる円滑化に関する検討会報告書」)※ が別途取りまとめられているため、ここでは共同研究会において配布した報告レジュメのアウト ライン(項目)を再掲するにとどめさせていただくことをご了解いただきたい。
※ 2015年3月に同報告書は完成し、これに基づき、監督官庁に対して立法提言を行うとともに、
2015年7月には、報告書における提案内容を一般にも公開し、議論を重ねるべく、事業再生実 務家協会の主催(事業再生研究機構・全国倒産処理弁護士ネットワーク共催)により、シンポジ ウム「多数決による事業再生ADR」が開催された。
〈報告レジュメ概要〉
Ⅰ 事前調整型の再建手続の類型
1.プレ・パッケージ型手続(pre-packed Chapter 11)
⑴ 概要 ⑵ 根拠規定
⑶ プレ・パッケージ型手続の一般的な流れ
⑷ プレ・パッケージ型手続のメリットとデメリット
2.プレ・アレンジ型手続(Pre-arranged Chapter11)
⑴ 概要
cf. プレ・アレンジ型手続とプレ・ネゴシエイト型手続 ⑵ ロックアップ契約(Lock up agreement)
⑶ プレ・アレンジ型手続の一般的な流れ
⑷ プレ・アレンジ型手続のメリットとデメリット 3.アメリカにおける事前調整型の再建手続の利用状況
Ⅱ 363条セールによる事業譲渡
1.363条セール(11 U.S.C. §363(b))による事業譲渡
2.入札手続におけるストーキング・ホースの利用(Stalking Horse Bid)
3.363条セールの利用例―General Motors (GM)のケース―
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アメリカにおける早期事業再建の手法 4.363条セールのメリットとデメリット⑴ 363条セールのメリット ⑵ 363条セールの問題点
5.サブローザプラン(Sub Rosa Plan:隠れた再建計画)に関する判例法理 ⑴ サブローザプラン
⑵ サブローザプランに関する裁判例
6.363条セールにおけるストーキング・ホース・ビッドの活用 ⑴ ストーキング・ホースを活用した事業譲渡の流れ ⑵ ストーキング・ホース・ビッドのメリットとデメリット ① 債務者(売り手)にとってのメリットとデメリット ② ストーキング・ホースにとってのメリットとデメリット
Ⅲ 商取引債権者の処遇-critical vendor の実情
1.背景
2.従前の取り扱い
3.商取引債権者に対する優先弁済要件の厳格化-CoServ事件&Kmart事件 ① CoServ事件(In re CoServ. LLC.273 B.R.487(Bankr.N.D.Tex 2002))
② Kmart事件(In the matter of Kmart Corp., 359 F.3d 866(7th cir. 2004)
4.2005年連邦倒産法改正による商取引債権者の処遇 5.現在の取り扱い
⑴ 現在における取り扱いの概要
⑵ 重要な商取引債権者に対する弁済許可の申請 ⑶ 重要な商取引債権者の選定基準
⑷ 重要な商取引債権者に対する支払状況のモニタリング
Ⅳ わが国における早期事業再建のための新たな方向性
1.わが国における事業再生スキームの現状と新たな制度の検討の必要性 2.ADR型の事業再生と法的手続の融合・連動
3.ADR型の事業再生への多数決原理の導入にあたっての検討課題
以上