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人材 マ ネジメ ン トの展望

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Academic year: 2021

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人材 マ ネジメ ン トの展望

- チ ー ムパ ワ ーへ の 着 目-

田 中 秀 穂

1 は じめ に

2 人材マネジメン トの潮流 3 人材マネジメン トの展望

日本的経営の一つの特徴であった雇用 ・労働慣行の見直 し,個の 自立, 成果主義 に代表 され るグローバ ルス タンダー ドへの傾斜 な ど,人材マ ネ

ジメン トは今,大 きな転横 を迎 えている.今後 を展望するうえで,キー になる潮流 を人材マ ネジメン トの原点,集団の構造,オフ ィス ワーカー の生産性 など 5つの視点か ら概観 し, これか らの人材マ ネジメン トの方 向 を考察 した.

日本の経営の強 さは,有 能な社員 には,次 々に重要 な仕事 を割 り当て ることによ り,インセ ンテ ィブを高める, とい巧みな仕組み,情報共有, 現場情報 を活用するチーム ワークの力,チームパ ワ-の活用 にあると考

えた.本稿 は,経営 に競争優位 をもた らす もの として,チーム ワークの 力,チームパ ワーをどうとらえてい くべ きか

,

個」に焦点 をあてた成果 主義 によるマネジメン ト手法 をどの様 に評価 すれば よいのか な ど,人材 マ ネジメン トの基本 コンセプ トを考察 し,その将来 を展望 した.

1 は じめに

グローバ リゼー ション,産業構造の変化,高度情報 ネ ッ トワー ク社会の到

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14 現代経営経清研究 創刊号

束など,これか らの企業経営-のインパク トは大 きく,各企業 とも, 自社 を いかに してこれ らの 「メガ トレン ド」 に乗せ てい くかが,大 きな課瓢 こなっ ている.そこで問われて くるのは 「経営者の予測力」 と 「ス ピーデ ィな意思 決定」,環境変化 に合わせて脱皮で きる 「柔軟 な組織」 とそれを支 える 「人 材ス トックとその活用」である.

バブル崩壊以降,一時期 を除 き経済活動が停滞 し各企業 に深刻 な影響 を与 えている.そ して競争力が問われる時代 になると,期待 どお りに収益があが らない,役に立つ人材が不足 している,組織の効率が悪い,新製品が生 まれ ないなど企業内に隠 されていた課題,経営構造変革の基本課題が一気 に表面 化 して くる.特 に人材マネジメン トの分野では, 日本的雇用,労働慣行 など の見直 しが進み ,個」の 自立,成果に見あ った報酬 な ど成果主義 と呼ばれ る仕組みが急速 にクローズア ップされて きた.これにより社員の意識改革 を 行い競争優位 の条件 を確立 したいとの思いである.

成果主義 は 90年代の前 半に米 国か ら日本 に導入 され ,4-5年前か ら急 速 に普及 した.その内容は,仕事 を進めるにあたって,上司の指示 に逐一従 うのではな く,顧客 に対 して 自ら付加価値 を提供 し,最終的には社員 と株主 と顧客の利益 の一致 を目指す ものであ り,単 なる実績 ・成果の追求ではない と定義 1)されている.

右肩上が りの経営か ら景気低迷 に直面 し,競争優位の条件づ くりを目指す 経営 にとって も,また多様 な価値観 を持 ち自己実現 を図 りたい社員 にとって ち,この成果主義は論理 として受け入れやすい ものであった.端的に言 えば, 雇用 を保証するか ら,経営への忠誠 を期待するという関係か ら,多様 な雇用 形態 を経常 としては提示する,社員は自己のキ ャリアア ップに繋がるもの を 自己責任で選択するという図式である.経営 と社員は従来の ような支配,被 支配の関係ではないのである.従 って,人材マ ネジメン トも定型的キャリア パスなどの従来の仕組みで育て られた安定志向の人材ではな く, 自立的で, 成果 をあげ,他社で も通用 し得 る人材 を育成するのが,これか らの方向 と大

きく舵が切 られて きた.

脊文 :人材マ ネジメン トの展望 J

この方向はグローバルス タンダー ドに依拠 し,世界で競争優位の条件 を作 らねばならない 日本経営 に とって,基本課題 になる ことは言 うまで もない.

しか し,この成果主義があ まりにも 「個の 自立」 を強調 しす ぎた.そ して結 果 として,協調性やチーム ワークによる生産効率の良 さが蔑ろにされ過 ぎて

しまった きらいがあった.

翻 ってみる と,高度成長 を詣歌 した 80年代の 日本経営 を支 えた ものの一 つにチームプ レイ,チームパ ワーがあった .NHKの番組 「プロジェク トⅩ」

も,チームパ ワーに焦点 をあて,古 き時代 を知 る中高年のみならず ,20代, 30代 か らも多大の共感 をよんだ.そのチーフプロデュウサー今井彰は,香 組制作 の動機 を次の ように述べ ている.「日本人に rチームの力』 を問い直 したかったか らです. 日本は国土 も狭 く,資源 もない,海に囲 まれた島国で す.それが戦後,これだけの経済大国 として成長 をとげた背景 には,幾多の チームの力が結集 し, プロジェク トを成功 させた積み重ねがあった と思 うの です.-- 仲 略)-・ -皆で一つのゴールに向かって継続す ることの 「強 さ

を忘れているのではないで しょうか.-・- (中略)--・日本人は もともと総 力戦が得%.一人の ヒーローによる改革ではな く,一人ひとりの小 さな力 を 集めて,大 きな力に してきたのです,それなのに, コツコツ頑張 る人たちを 評価 しない システムに陥 りつつある現在は変だ とお もい ます よ.21この今 井の指摘 は極端か ら極端に振れやすい 日本の経営の現況 に対する一つの警鐘 であろう.

本稿は,企業経営 としてチームワーク,チームパ ワーをどうとらえてい く べ きか

,

個」に焦点 をあてた成果主義 によるマネジメン ト手法 をどの様 に評 価すれば よいのかなど,人材マ ネジメン トの基本コンセプ トを考察 し,将来

を展望す るのが,その メインテーマである.

2 人村 マネジメン トの潮流

80年代 の経営 は,オ イルシ ョックと円高 とい う二つの課題 を克服 し,戟 後のわが国の経営が追求 して きた欧米 に対するキャッチア ップを完成 させた

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16 現代雀宮軽清研究 創刊号

時期であ った. しか し ,90年代 に入ると高度成長 を支 えて きた数 々の条件 が逆 に企業経営の硬直化 をもた らし,羅針盤のない不透明な時代 を迎 えるに 至 った.

一方 「人材マ ネジメン ト」 に関 して も,働 き過 ぎへの批判

,

「ゆ とり」の 持 ち方 など,価値観についての世代 間のギ ャップ,若年層 を中心 とした 「 かさ」志向, 自分主義の広が り

,

物」 ではな く 「心」がキーワー ドになる など,従来の仕組みの制度疲労が 目立ち始めた.

この項では,今後の人材マネジメン トを展望す るうえで,その要諦になる と考 えられる 5つの視点 を取 り上げ考察す る.

(1)人材 マネジメン トの原点

従来経営 における人材マ ネジメン トの基本的な役割 は,社貝がある程度の 将来展望 を持 って,長期 に勤務で きる方策を指 し示すこと,表現 をかえれば, 企業に勤務 し,真面 目に仕事 をすれば,ある程度のポス トと報酬が期待 で き そ うだ, だか ら頑張 ろう, とい うような社員の志向 を下支えするのが人材 シ ステムの基本枠組みであった.この視点が今後 とも生 き続けてい くのか どう か検証す ることが必要である.

(∋ 「経営 (企業)の人間観」が人材 システムの基本 を決める

当然のことなが ら経営の人間観は,その時々の社会 ・経済環境の影響 を受 けなが ら形成 されてい く .

80年代 に入って 「能力主義」 を人事管理の根幹 に据 える企業が多 くなっ た.社貝の能力開発 を計画的 に行い,能力,実績 によって評価す るとい うの が,その基本であ った. しか しわが国の場合,経営や技術開発 に欧米 という お手本があ り,それ を リフ ァイ ン しつつ,規模 の拡大 を持続 し得 たため,

個」 を重視す る とか 「能力主義」 を徹底す るとい う人事思想の導入が積極 的 に試み られ た ものの,結果 と しては技 法 だけの導 入 にな って しまって いた.

論文 :人材マ ネジメン トの展望 J7

すなわち,拡大 ・成長 して きたこと -の 自信が終身雇用,年功序列などを 基本に した人間関係重視の確 固たる風土 を作 り上げ,それを変革す るまでに は至 らなか った と言 える.何故そのような変革がで きないのか,その理由は 次の ような人間観がその足柳 になっていた と考 えている.

1は年功序列の もと 「社員は誰 しも昇進意欲 を持 ってお り,昇進するこ とによって動機づけられる」 と考 えていたこと,そ して 「勤務年数 とともに, 自分の能力の限界を知 り, 自ず と現在の 自分の地位 に満足 し,会社 に感謝 し つつ退職す る」 ことを巧み に演 出す るのが人材マネジメン トの要諦 と潜在的 に考 えていたことである.一昔前であれば通用 したこの手法 も,価値観が多 様化 している社員が,企業 内で集団 としてのパ ワーを持 ち始めて きた現在,

「自ず と理解せ しめる」 とい う要諦 には,当然の ことなが ら限界が出て きて いる.

第2は 「横並びキャリアプランの構築が基本」 とい う発想である.企業は 社貞 をなん らかの基準で区分 し管理せ ざるを得 ないが,学歴 ほど明快 な区分 原理はな く,それが企業内に定着 し, うま く機能 して きた.能力主義の導入 と相使 って学歴ではな く能力 ・実績による管理 を標傍す る企業 も多 くなった が,職務-の貢献 よ り職務遂行能力が,実態 として評価の基準 になっていた わが国の場合,必ず しも成果があが らなか った.

学歴 をベースに した横並 びキャリアプランを作 り上げ,激烈な内部昇進競 争 をさせ,マ ネジメン ト適格者 を選抜 してい くシステムは,量産 による量的 拡大が経営の基調であった時代には適合 した仕組みであった.そ してこの仕 組みは 「経営者,管理者が上位 で専門職は裏方」 とい うマ ネジメン ト信仰 を 生み出 し,社員が企業 に全 てを捧げるワーカホリックを奨励 し,特異な才能 を持 った者 を企業か ら排除 して しまう画一的 なムラ意識 を醸成 して しまった ことも否定 で きない.過去 40年 を総括する と 「企業-の忠誠度の偏差値競 争」 であ ったと言 えよう.

バ ブル崩壊以降,個 人があ って,企業があ り,社会がある, とい う価値観 の方向 に振れ始めている.量産の時代 ではない今 日,特異 な才能のある社員

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β 現代経営経済研究 創刊 号

を生かすマ ネジメン トな くして企業 の永続的な発展 ・成長はあ り得 ない し, また 「横並 びの発想」か らの脱却が,「個 1を生かす基本 フレームにならね ばならない.

その ような時代的背景 を受け,実績主義,成果主義 による管理 などが脚光 を浴 びてお り,それに付随 してコアバ リュー, コンビタンシー,エ ンプロイ アビリティなどの新 しい概念が紹介 され,それが また一つの大 きな潮流にな りつつある.これ らがいかに軽骨 に定着 し,生か されてい くことが出来るか が,今後の大 きな課題である.

(参 「人材マネジメン ト」機能 について

人材マネジメン トの第 1の機能 は企業の事業計画に合わせ,人材 を調達す ることである.第 2は,企業 を支 える基盤技術 (ファンダメンタルズ)をよ り強固にするための人材育成 システムを確立す ることであ り,第 3は,社員 をモチ イペー トさせるための評価制度を提供することである.

この横能を遂行するため人材マネジメン トス タッフに求め られている視点 の一つは,内外の環境変化 を的確 にとらえ, とか く内に閉 じこもりが ちな社 員の 目を外 に向けることによって,企業風土の変革 をめ ざす ことである.二 つは人間 を理解 し,その能力 を活用するための技術 ・技能 ・ノウハ ウを蓄積 し, トップおよびラインマ ネジメン トに対 し,絶 えず情報 を提供 し,適切な コンサルテ ィング活動 を基本に置 くことである.三つは社員の生 きがいを実 現するため,社員に支持 される企業 目標,戦略の設定 とか,能力が発揮で き る硬直的でない柔軟 な組織の提案 とか, またゆとり,人間 らしさなど 「豊か さ」 を求め,私生活 を重視 し,「個」の発揮 を願 う社員 に対 し,適切 な目標 を設定す ることによって,その力 を結集 し,「企業の ドライブ」へ と変換 を はかってい くことである.

このような着実な活動が社員か ら評価 され,社会 か ら認知 されることによ って,企業の魅力度が高 まってい くのである.結果 としてその ような企業 に はよい人材が集 まり,定着 し,組織が活性化,業溝 も伸 びてい くと考える

論文 :人材マ ネジメン トの展望 19

べ きである.

a.人材マネジメン トスタッフは 「戦略スタッフ」である

戦略ス タッフ」の機能 は,プラン, ドゥ一,シーのマネジメン トサ イク ルを 「戦略」 を基軸 に したものに変革することである.具体的に言えば,プ ランの前 にビジョンがあ り,そ してその ビジ ョンは,「時代の トレン ド」 を 敏感に察知 し,それが経常に及ぼす影響 を大 きくイメージす ることによって 形成 される.

社会 ・環境条件の動 きが,経営 にどの ような影響 を与えるかについて,常 に考 え抜 き仮説 を設定す る能力 を磨 くことが人材ス タッフには求 められて いる.

今,時代の変化は,「情報化」「グローバ リゼーシ ョン」「価値観の多様化

社会 との共生」 な どのキーワー ドで表現 されている.この動 きをどう企業 内に取 り込 まなければならないのか, また逆 にこれを利用 し,企業内にどう インパ ク トを与え,企業内革新 を進めねばならないのか,について突 き詰め て考え抜 くことが,その役割である.

戦略 とは ビジョン, イメージを前提 に した仮説 を設定 し,それ を検証 し, 実行計画 を作成 してい くことである.「人の活用」 についての仮説,例 えば

「若手社員の意欲 を引 き出す」 ことが今後の人事のキーになる と考 えれば, 若手社員の行動原理はどう変化 して きているのか,それを阻害 している社内 の諸要因の追求,社内 コンセ ンサス を得 るためになすべ きことは何 か とい う ように考 えを進めていかねばならない.

b.社則 ことっての 「分か り易 さ」 と 「明るさ」

人材マネジメン トは戦略 をベースに した 「実務」が基本 なので,戦略 と実 務 を結ぶ コンセプ トを明確にす る努力が重要な課題 になる.往々にして,理 論 と現実 とは違 うとい う言い訳 で実務のための実務に走 りが ちになるが,こ れはコンセプ トを明確 にす る努力が足 りないために起 こる現象であ り,人材

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20 現代軽営掛 斉研 究 創刊号

ス タッフにとって戒めねばならぬ点である.

また,コンセプ トが明確 になると,人事施策の内容 も単純化 して くる・ こ れか らは全ての人材マネジメン ト施策 に,社員に とっての 「分か り易 さ」 イ メージとしての 「明るさ」 を打 ち出すことが強 く求め られる.人材関連の施 策がブラックボックスになってはならないのである.

C.人事権時代の終蔦

人事部の武器 は 「人事権」の戦略的な行使 にあった.時代の変化が激 しく ない ときには,時間をかけて情報の整理がで き,ある程度 トレン ドも見通せ たので,人事権が 「戦略その もの」 になっていた.人材スタッフは社員 につ いての豊富 な情軌 例 えば,学歴,キャリア,得意技 などについての情報 を 駆使 して,事業展開のため,あるいはキャリア形成のための人事配置 を定期 異動 システムとして展開 して きた,人材ス タフの武器は,社員 についての 豊吉な情報 と,近未来を見通 し現在の状況 とうま く融和 させ る 「コモ ンセ ン

ス」であった といえる.

しか し情報のス ピー ドが速 くな り,多角化など,企業 白身の変化 も激 しく なると,多量の情報の処理がで きな くな り ,企業 に及ぼす インパ ク ト」 に っいての仮説が立て られな くなって きている.人材計画は長期的な視点 を持 っているが故 に, しっか りしたコンセプ トがない と,目先の変化 についてい けず, ラインの要請 に振 り回され,人材計画の根幹が崩れて しまう危険性 を 常 に持 っているものである.そ して企業の人材政策 は,事業成果の ように直 ぐに結果が現れ ない.人材政策の ミスは,ボデーフローの ようにジワジワ効 いて企業の体質 を弱めてい くものである. また人材政策で失敗 して も,その ミスは通例 「言い訳」が きき,事業の成果ほ どには責任 も追及 されない・ と 言 うのは

,

「人材政策の結果」が,事業成果 とは違 ってス トレー H =他杜 と 比較で きないか らである.

人材マネジメ ン トが うま くい っている と評価で きるのは,人事権があ り, 重点配置,キャリア形成のための人事がスムーズに展開 していることよりも,

論文 :人材マ ネジメン トの展望 21

組織が活性化 している,組織 の学習能力が高い,言葉 を換 えれば新 しい技術 などを素早 く吸収する柔軟 な組織 を確立 させ るための活動が,管理者や社員 か ら支持 されている状況 と考えるべ きである.人材ス タッフが人事権 という 権威 に執着する時代はすでに終 わって しまったのである.

(卦人事評価 について - 相対評価か ら絶対評価へ

能力 による評価」 とい う概念が 日本に紹介 されて以来, もはや 40余年が 経過 している. しか し能力の捉 え方 も多様であ り,その内容 も明確 になって いないため,能力 による人事評価が確実 に根付いているとは言 えない状況で あった.能力の発揮 を仕事の成果 ・実績 と見るか,将来への期待度 と見るか, 仕事への精励 ・努力度 と見るか, また階層 によって,そのウエ イ トをどの よ

うに考えてい くのかなど,企業 ごとにいろいろ工夫がなされてはいたが,先 に指摘 した 「人間観」 を土台 に して能力主義 を受 け入れたため ,木に竹 を 接 いだ」形での展開 とな り,実態 としては能力の内容 も,評価 される内容 も,

またその意味するコンセプ トも,管理者や社員に対 して具体的に明確 に説明 す ることがで きなかった.

従来の評価,昇進,昇格の管理は,全社調整,昇格枠管理 など形式的な手 続 きの整合性 をベースに した相対管理であ り ,徴差の管理」が基本 になっ ていた. これに対 し能力 による管理 は,能力の伸びと実績 を基本 に した管理 なので, この両者は本質的にな じむ ものではない.

これからの評価 は,個 々の社員の個性や意欲 を引 き出 し,杜貝 をモチベ- 下させ るための仕組み を考 えねばならない.当然のことなが ら評価 は絶対評 価 であ り,評価者は被評価者 を直接観察指導で き,その成果 も具体的に把握 で きる人に限定 しなければならない.全社調整 とかバ ランス管理は不要であ り,職務 についての成果 に密着 した評価 を基本 にすべ きである. また他方, 将来企業 を担 うキーマ ンを育成する昇進のための評価 は,本人の意思 を前提

に して,業績 とは全 く別の観点か ら,評価す る仕組みが必要である.有能 な 人材の一般的な共通因子 を抽出 し,理想の人材象 を作 るのではな く,我が社

(6)

22 現代経営軽滴研究 創刊号

として何 を大事 に しているのか,経営理念,経営方針 などから抽 出 して,そ の人材象 を描 き出 し,それを支 える評価制度 を設計すべ きである.

個」の 自立 と仕事の プロセス ・成果に着 目 した成果主義 などの手法 を導 入する場合には,先の能力主義的諸手法の導入時 に犯 した同 じ過 ちを繰 り返 してはならない.企業組織が持つ固有の風土,言いかえれば価値のプラッ ト フォームが変化 しなければ,新 しい仕組みは決 して組織 には根付 かない. こ の価値のプラ ッ トフォームを変革するとい う強い決意 とコンセ ンサス形成が 必須である.

(2)人材マネジメン トの視点 1- 情報体系 と人材マネジメン ト (丑企業の情報体系 と F励み」の体系

青木昌彦が提言 した 「企業の情報体系 と F励み』 の体系3)は情報系 と人 材マ ネジメン トの関連 について, 日本型パ ター ンと欧米型パ ター ンを比較, 検討 した ものであ り,示唆 に富 む ものである.青木は, 日本的経営 の特徴 と

して,現場情報の重視,「ヨコ」の繋が り,企業内一般訓練,格付 けによる 競争の四つをあげている.

現場情報の重視 とは,欧米に比べ 日本の場合,現場情報-の力点の置 き方 が違 うことを指摘 している.例 えばある新規 プロジェク トが立 ちあがる場合, その企画案が職制階層 を何回か行 き来 し,その過程 を通 じて現場の持 ってい るノウハ ウを企画案に取 り込んで行 く方式である. 日本の軽骨 で奨励 されて いるア ップ & ダウンと呼 ばれてい るものであ る. この ような考え方はホン ダなどの現場,現実,現物 を重視するとい う三現主義 にも代表 されている.

「ヨコ」の繋が りは, 日本の企業内の情報共有の仕組みにつ いての指摘で ある. 日本企業の コ ミュニケー シ ョンは必ず しも形式的な文書主義 にはよら ない,言いかえれば人 と人 との直接 的なコ ミュニケー ションに基づ く情報共 有や, また これに基づ く水平的なコ-デ イネーシ ョンを可能 にさせ るような 仕組みを大切に してきた. この仕組みが 情報の 「タテ」の流れを主流 とす る 欧米型の方式 に比べ,生 きている情報 をうまく流 して きた と考 えられる.例

論文 :人材マ ネジメン トの展望 23

えばクレーム対策 な どで営業 ,生産,技術の連携 プレイに見 られるように,

♯場間の インフォーマルコ ミュニケーションなどがこれにあたる・

企業内一般訓練は,社月が相互 にナマ情報 を活用す るには,社月の能力 レ ベルが一定の水準 に達 していない と効果 を発揮 しない し, またこの様 な能力 は入社前 に持 っている専門的な知識 ・技能では得 られる ものではない.入社 後の幅広 い職場経験 に基づ く一般 的な技能の訓練 に よって得 られる もので ある.

最後の格付 けによる競争は, 日本の企業では,社月 に様 々な職場経験 を積 ませ,その過程で蓄積 された知乱 技 能によって社員 を評価 し,格付 けて き た.社員がその ような一般訓練 に励 む源泉は何か, とい うことになる.青木 は社員 を仕事 に励 ませ るのは

,

「人事」である とした.これに反 し欧米の社 員の コン トロール手跡 ま人事ではな く,情報 と意思決定の 「タテの流れ」で ある.

日本型,欧米型パ ター ンをまとめると次の ようになる.

日本型パターン 欧米型パターン

①帰納的志向 〔分権的) a.演樺的志向 (集中的)

②横断的情報共有 (分権的ー b.集中化による情報共有 (集中的)

③企業内一般訓練 (集中的) C.職業的 ー専門的訓練 (分権的) d.即応的な金銭的報酬 (分権的)

(説明 )

1.帰納的志向 :現場情報 を重視することである.情報のアップ & ダウン.

2.横断的情報共有 :人 と人 との直接的なコ ミュニケーシ ョンによる情報 共有.

3.企業内一般訓練 :ある程度人材の レベ ルがそろっていて始めてナマ情 報 を活用で きる.現場の情報 を幅広い文脈で理解す る, この様 な能力は 入社後の幅広い職務軽験 に基づ く一般的な技能の訓練 によって得 られる.

4.格付 け :社員の 「励み」は何か,それは人事である.

(7)

24 現代 経営程 清研 究 創刊号

5.①,② をうま く働かすために,③ ,④が必要になる.

6.演樺的志向 :トップダウンによる意思決定.

7.集中化 による情報共有 :情報は組織の 「タテ」の流れ を通 して管理層 レベルに集中, またはデー タファイルに文書化 される.

8.人事 における分権的アプローチ (C,d)は集中化 された情報 によって 補完 される.

さ らに青木は今後の 日本経営が どの方向 に志向 してい くか を 「情報」 と

「人事の インセ ンテ ィブ」 とい うキーワー ドで分類 ・整理 し, これか らの 日 本の軽骨の方向は,図 1の○印で示 されている方向に向かって,集中で もな い,分権で もない,その両方が うまくバ ランス された状況に向かって進むと 指摘 している.

(参日本的経営の強 さ

これか らはグローバ ルな経営 を指向せ ざるをえない.そ うなると経営の評 価尺度 として,グローバルス タンダー ドが基準 になって くる.その ような観

1 情報 と 「励み」の構造パターンの方向

人事のイン

センティブ 集 中 主義的経営-(官僚的,権威 日本型パターン ワンマン経営)

/

分 権

Ⅲ ノ

将来の方向(組織として耗

青木 昌移民 モデ ル

論文 :人材マ ネジメン トの展望 25

点か ら考 えると,青木の指摘 は論理 として首肯 し得 る ものである. しか し, 日本 の軽骨 の競争力 を高め る とい う視点か らみる と

,

「日本 の強 さ ・特徴」

を何処 に求めていけばよいのかが明解ではない.チームワークによる情報共 有,現場情報 を活用す る巧みな仕組みが 日本経営の強 さであ り,それ を支 え るものが,企業内一般訓練であ り,長期 にわたる格付 け競争であった.今後 の動向 も考慮 し,この仕組みの中で何 を残 し,何 を変革 していかなければな らないのか を検証 してい くことが重要である.

人材マネジメン トの視点か らみると,社員の仕事へのイ ンセ ンテ ィブを何 に求めるか ということになる. 日本の経営は伝統的に有能な社員 には,次 々 重要な仕事 を割当てることで報いて きた. この枠組みが 日本的経営の強 さで あると考 えている.従 ってこれを壊 してはならない. しか し,従来の集権的 人事 ローテーシ ョンを堅持す るのではな く,各社員の意欲,意思 を前提 に し たローテー ションに変換すべ きであることは論 をまたない.

青木は,集 中で もない,分権で もない,その両方が うま くバ ランスされた 状況に向かって進 むと指摘 したが, グローバルな競争の中で 日本 の企業の武 器 になるのは,現場情報の共有 によるチームパ ワーである. この点 を考慮す ると,青木の主張 には疑問が残 る.

(3)人材マネジメ ン トの視点 2- 集団構造への接近 (∋構造 こわ し活動

古川久敬 によれば,組織 には仕事上の規則や手順の ように巨=こ見 える構造 (ハー ド構造),前例 ・慣行 ・しきた りの ように状況によって見 え隠れする構 (セ ミハー ド構造),考 え方や行動 についての暗黙のルールの ように目に 見 えない構造 (ソフ ト構造)4)がある.そ して組織の構成員の行動 を律 して いるのは,この ソフ ト構造であ り, ソフ ト構造の変革な くして,組織風土は 変革 されない と指摘 している.

また,集団にも年齢があ り,それに応 じて固有の行動特徴が示 されるとし, その概略は次の とお りである.

(8)

現代軽骨経済研究 創刊号

図 2

集団年齢 個人欲 求の特徴 リーダーの とるべ き行動

青年期 ①形が定まらず不安がいっぱい②集団規範の形成 と役割の明確化③アイデンテ ィティの確立 (む良好な人間関係つ くり 集団目標の提示 と集団の構造化 中年期 ①強い自己顕示②能力発揮の願望が高まる

③役割分化がはっきりし各メンバー の得意とする分野 (専門 )が色分 けされる

集団の成長度にあわせた柔軟行動 部下に能力発揮の機会の撞供 ,参加 型の意思決定 ,権限委譲など 老年期 (∋判断や決定の自動化

(む規範の安定度がさらに進む

③仕手 とは関係のない趣味やレジ -の話があふれる

新創造へ向けた 「構造こわ し」行動 新 しい構造の創造へ向けて .集団内 に存在する既存の規範や構造の見直 Lと作 り替えを内容 とする 「構造こ

そ して, 時 間 ともに集 団 が 硬 直化 して くる.集 団 に硬 直化 を もた らす 原 田 と して,

a.構 造 化 の進 行 :役 割 と行 動 の 固定 化 , 時 間が たつ につ れ て各 メ ンバ ー の役 割 と行 動 が 「型 に は ま りだす 」, そ して これ まで の経 線 や 実 績 か ら 役 割 分担 が 自動 的 に決 まる な ど, 暗黙 の 申合 わせ が 出来 て しま う.

b.標 準 化 の 進行 :思 考様 式 ,行 動様 式 の ワ ンパ ター ン化 , 各 メ ンバ ーの 考 え方 が次 第 に均 質化 し,相 互 に刺 激 性 が な くな る. ワ ンパ ター ン化 が 進 行 す る. 「こ う言 えば こ う答 え るで あ ろ う

「こん な事 を言 えば機 嫌 が 悪 くな る だ ろ う」 と妙 な気 配 りが始 ま る.

C .情 報伝 達 の平板 化 :コ ミュニ ケ ー シ ョンル ー トの 固定 化 と慣 行 化 , 各 メ ンバ ーが選 択 的 に情 報伝 達 , コ ミニ ュ ケ - シ ョンル ー トが 固定 化 ,慣 行 化 す る. 全 員 が 知 ってお い た方 が 良 い こ とで も一 部 の 人 しか 知 ら され ず ,職 場 の 中 にセ ク シ ョナ リズ ムや縄 張 り意 識 が お こる し, あ る時 は硬 直 や停 滞 を こえて反 目意 識 さえ うむ.

論文 :人材マネジメントの展望 27

d.関心 の 内部 化 外 部 情 報 との 疎 遠 や 隔 絶 , 世 の 中 や組 織 内他 部 署 で起 こ ってい る重 要 な事柄 や動 き とか け離 れ て しまい 「井 の 中 の蛙」 に陥 り やす くな る.変化 の必 要性 に対 す る感受性 を鈍 らせ た り,失 わせ た りす る.

4つ をあ げ て い る.

そ して, この様 に硬 直 した集 団 を壊 し, そ れ を再 生 す る方 向 と して古 川 は, 3に示 した 「構 造 こわ し」 行 動 の実践 を提 案 してい る.

(参集 団構 造変 革 へ の挑 戦 と実践

一 つ の職場 にお け る集 団 の 力 学 を考 え る場 合 ,古 川 の指摘 は示唆 に富 む も の で あ る. 集 団変動 の ニ ー ズ は ,企業 組織 にお い て 日常 的 な問 題 で あ り,敬 場 を 日々活性 化 してい くには ,職場 に新 しい血 をいれ ,職場 の長 だ け に許 さ れ る意 図 的 な逸 脱 行 動 に よ る職 場 へ の刺 激付 け ,職場 改 革 に賛 同す る勢 力 の 重 用 な どは, 問題 意 識 の深 さに差 は あ る もの の , 有 能 な管理 者 の管 理 手段 に な って い る.

3 構造 こわ し」行動の実践

変革の準備 変革の導入 変革の実践

G)自職場の状況認知 (D変革導入の予告 -全体会 (∋部下集団の心理的抵抗の

・ソフ ト構造把撞 議や個別面篠の利用 克服

・革新指向性診断 ②変革導入の雰囲気作 りと ・リーダーの もつ心理的 ク

②変革課題の特定 根回 し レジットの活用

・経営戦略との関連付け ・変革必要性認知の高揚 ・マイノリテ ィとしての孤

・中長期経営戦略 との関連 ・変革コミットメントの高 独感 の克服 -変革同調者

付け .部下全月の議論を尊重 への支援

・現状 との関連付け ③職場変革 シナリオの手直 (参継続的な構造こわし活動

③職場変革のシナ.)オ作 り ・異質性の導入 と新規範同

・構造 こわ しターゲ ットの ④職場への変革目標のプレ 調音 -の正報酬付与 特定 / 4つのカテゴリー ゼンテ -シヨン ・主涜派 ,反主流派 を作 ら

に着 目 ・理解 しやすい変革 目標の ない

・変革プロセスの設計 設定とその理由づけ ・所規範のルール化 ,制度

(9)

28 凍 代経 営経 済研 究 創 刊 号

あるメーカーでの事例だが.景気が大 きく後退 したので,かな り長期 に

って生産調整 をせ ざるを得 な くな り,余剰人月の活用策が検討 され,梱包作 莱,設備保全関係作業,緑化関係作業 など生産に付帯す る作業 を主体 に した 殖産事業会社が設立 された.その会社の性格か らいって も当然だが,そ こに 集め られた人は現場で扱いに くい作業員だけであ り,事業が うまく立 ち至 っ てい くとは,当初誰 も考 えていなかった.

しか し, リーダーに新 しい人材 を投入 したこととそのグループが事業 を開 始 し,社外の顧客 とコンタク トを持 ちは じめると, この緑化関係 グープの行 動が徐 々に変わって きた. まず有志 による事業 目標の共有化がはか られ,そ れが グループ全体 に広が り, グループの価値観 を変革 していった.そ して今 まで生産現場 で仲間に決 してな じもうとしなか った人 まで, 目標達成のため のアイデアを出 し始めることまで起 こって きた.そ してアイデアが成果 に繋 が り, またアイデアを生 むとい う循環になって きたことがあった.

この例か らも明 らかなように,組織は生 き物であ り, よい触媒があれば 自 己増殖活動 を続けてい く.古川が指摘 したソフ ト構造への挑戦が成功 した事 例で もある.

管理者の最大の責務 は担 当す る組織の ソフ ト構造 に絶 えずチャ レンジ し, 組織の ソフ ト構造のバージ ョン ・ア ップをはか り,組織 目的に合致 した, よ

りよい規範 を作 り上げてい くことである. またローテーシ ョンについて もこ の観点か らの見直 しが必要である.管理者は担当組織のファンダメンタルズ を強化 してい くために,組織 のソフ ト構造 を絶 えず点検 し,変革への働 きか けを行 う・そ して組織 に蓄積 されている知識 ・ノウハ ウをリニ ューアル し, ソフ ト構造のバージ ョン ・ア ップをはかるため, 自職場の社員の ローテーシ ョンを梼極的 に提案 し,新 しい血 を組織 に導入す ることを検討せ ざるを得 な くなるのである.

ロ~テ~シ ョンは,通例 , トップマ ネジメン ト育成のための もの と,事業 計画に合わせて戦力の再配分 を狙 いに した もの と,長期雇用 を背景 に した気 分刷新の もの とに区分 されているが,これに前述の組織強化のためのローテ

論 文 :人材 マ ネジ メ ン トの展 望 ヱタ

-シヨンが加わって くることが予測 される.社貝が多様 な価値観 をもつ集団 に変化 しつつある現在 ,その ような社員 を,組抜 目的にベ ク トルを合わせ さ せ,成果 を生み出 してい くには,今 まで経験 しなかった本当の意味でのマ ネ ジメン トカが今後確実 に求め られて くるのである.

(4)人材マネジメン トの視点 3- オフィスワーカーの生産性

長期不況に直面 し,経営の効率化,合理化が課題 になって くると,ホワイ トカラー といわれるオフィスワーカーの生産性 の低 さが改めて目に付 きは じ めた.表面的にはアクティブに見えるが,オフィス ワーカーの活動の成果が

どれだけ経営 に貢献 して きたのか,経営の方向を正確 にフォロー した仕事 を しているのか,無駄な仕事 を していないのか,マルチ メデ ィアの活用 など仕 事環境の変化 に対 して柔軟 に対応 しているのか, また高齢 ・高給化 したス タ ッフ能力への疑問など生産現場 の生産性 向上成果 に対比 して,オフ ィス ワー カーへの漠然 とした不信感が生 まれて きた.

①生産性 を阻害す る もの

生産性 を阻害す る もの として二つの点 を取 り上 げる.一つ は 「職務意識」

に関す る ものである. ラインであれ,ス タッフであれ仕事 は,職務 を正 しく 理解する,正確 に実行する,早 く実行する,安 く実行する とい うステ ップを 基本 に して進 んでい く.「理解す る」 とは経営の期待 を正確 につかみ, 自分 の能力 を,職務 を通 じて発揮 し,経営 に貢献 してい く道筋 を見つけ出す こと である.各人が 自分の視点で 「仕事 を作 り出す」 ことではない.特 にス タ

フワークでは,往 々に して職務 の解釈が融通無碍 にな り,時 には経営者的な 発想 をす るか と思 えば,評論家になった り,担当者になった りして,仕事 舌 進める視点が定 まってこない きらいがある.いわば観客席で野球 を楽 しんで いるような状態であ り,当事者意識の未確立 に相通 じるものである.経営 の 視点ではな く自分の思い込みで仕事 を加工 して しまうのは,ベ ク トルが揃 わ ず経営 トー タルか ら見れば大 きな損失である. これは職務意識が確立 してい

(10)

1

現代軽営経済研 創刊号 論文 :人材マネジメントの展望 3

4 オフィスワーカーの意識マップ 0

3

ないことに起因 している.

二つ 目は 「仕事の密度」 についての 自覚である.仕事の密度が上がれば, 明確 -載積意識- 畦昧 効率 も上がる.高度成長期の遺産 を背負 ったオフィスワーカー,特 にスタッ

当事者意識 フ職は仕事の密度,効率 について意外 と無関心 であ り, またその重要性 につ

●経営 目標 を視点 に して仕事が ● 自信 ・自分の視点型 いての 自覚が十分ではない.逆 に 「仕事 に費やす時間の長 さ」 を仕事がで き 組み立てられる ・アクテ ィブで影響力あ り る目安 と勘違い している向 きも多い.これは経験的 に確立 してきた仕事ス タ

イルを何の反省 もな く継続 して きた結果であ り,仕事のス タイル も時代 と共 に変化 してい くもの とい う視点が欠けているか らである.

-1

・結果重視 ・ツポを押 さえれば力あ り

・優先順位が明確 ・バ ランスが悪い

・自分を追い込み知恵 をだす ● 自信過剰型

・アクテ ィブで緊張感 ,使命感 評論が得意、よけ

・バランスが悪い ピ ンチに追 い込 む

生産現場 では 3S ( mpSi lifi tcaion,S d dtanari tzaion,Specifi tcaion)を徹底的 に活用 して仕事の密度 を高め,効率 を上げた.オフィスワーカー も仕事の慣 習の革新が必要 になって きている.

② オフィス ワーカーの意識

オフィスワーカーの生産性 を改善するには,各人の職務意識 を明確 に して い くこと,仕事 の密度 を上 げてい くことが一つの方向になる.図 4に職務意 識 と仕事の密度 を軸にオフィスワーカーの意識マ ップをインタビュー,観察, 調査 などにより考察 した結果 をまとめた.

便宜的 に図4でオフィス ワーカーをA型人材,B型人材,C型人材,D 人材 と類型化 したが,その多数 を占め る D型人材 の生産性がい ま槍玉に上 が ってい るのであ り, これ をいかに して A,B

,

C型人材 に転換せ しめ てい くかが大 きな課題 になる. と言 うのは価値観が多様化 し,個の 自立,尊 重 を求め る時代 の趨勢 に呼応 し,企業 を取巻 く社会 システムが変化 して きて いる.休 日の増加,フレックスタイム, 自由労働裁量性 な ど今後の労働環境 は確実 に変わって行 く.明確 な職務意識 を持 ち,仕事の密度 を高めてい く人 にとっては有益 な方向だが,その意識が なければ 「のんび り社員」が益 々は ばをきかせて しまうことにな りかねない.

さらに加えて情報化の進展 は,今 までの ような情報の偏在が な くな り,情 報の共有化が進 んで くるので仕事の仕組み も変わって くる.その仕組みを支

える組織 も人材 システム も装い を新たにする. にもかかわ らずオフィスワー カーの仕事の慣行が従来 と変わ らず生産性の低い ものであれば,経営が ます ます疲弊 して行 くことは当然であろう.

(卦仕事の慣習 を変 える - 生産性が高いオフ ィスワーカーへ

オフィスワーカーの生産性 を高めるには ,D型人材の比率 を減 らし ,A型 人材の比率 を増やす ことである. この課題 に取 り組 むに当た り,次の二つの 視点 を確認 してお く必 要がある.

一つは人に対する見方,人間観である.人の知恵は計 り知れない,適切 な 拍導がない と人は頭の無駄遣いをする,人がその気 になれば能力は倍増す る

と考えることである.

(11)

j.2 現代経営経済研究 創刊号

二つ目は仕事の基本 とは何か,何のために仕事 をするのかを原点 に立ち返 って明確 に してお くことである.仕事 を 「正 しく理解する」 ことは簡単なよ うで難 しい. トップ,上司 と仕事 を進めてい く上での視点の擦 りあわせが意 外にで きていないケースが多いか らである.理解がで きれば次 は 「正確 に

にであ り

,

早 く

安 く」 というステ ップが続いて行 くのである・

また担当 している仕事は経営の期待である.従 って自分の視点ではな く, 経営の立場に立って,持てる能力 (武器) を仕事 にぶつけ,経常 に貢献 して い くという自覚が仕事 を進める基本 と考 えねばならない.能力発揮の前提 に

「正 しい理解」があるのだが,この点が往々に して忘れ られている・

2を参照願いたい.D型か らA型人材- と変身 しなければならないが, 一挙 に変身す ることは出来 ない.D- B- A,D- C- A塾の 二つの道筋が考 えられる.

D型人材 は組織人 としてのアイデ ンティティが未だ確立 していない層であ る.その中にも 「カン」が良い人 (アイデンテ ィテ ィ末確立型 Ⅰ) と悪い人 (アイデ ンテ ィティ未確立型 Ⅱ)がいる.カンが良い とは,課題や指示の趣 旨を見抜 くことが比較的得意な人である.意図が分かれば,誰に何 を聞 き, どんな交渉をし,どんな調査 をすれば良いかが分かって くる.アクシ ョンプ ランが見 えて くるのである.

この層 に対 しては集中力 を高めるワークス タイルを指導 していけば良い・

時間当た りのコス トの自覚,効率重視の世間動札 雑用の効率的な処理,仕 事の効率 を上げる手法の習得, 目標管理 による自己統制などが考 えられる・

カンが悪い とは課題や指示の趣 旨を生半可 に,自分流 に解釈する人のこと である.この層 に対 しては,小林忠嗣が提案 している仕事 を単位作業に分解 す るチェ ックリス ト5)が参考 になる.単位作業 ごとに, この作業 を遂行す るには誰に聞 き,誰に伝 え,誰に頼み,自分は何 を行い,誰 と交渉するかを 上司 と確認 しあい,役割期待 を明確 にして仕事効率を上げてい く方法である・

仕事のブ レークダウンである.これはまた,経営の期待の理解,仕事の設計 技術の習得 と共に自分の持 っている武器 を点検 ・強化 してい くことにも繋が

論文 :人材 マ ネジメン トの展望 jj

るものである.

C型人材 を区分すると,受動型 と状況型になる.この層は仕事 に対するア イデ ンテ ィテ ィがほほ固まっている.受動型 を A型人材 に昇華 させ るため にはピンチに追い込み,既 に各人が確立 しているアイデ ンテ ィテ ィを壊 して やることが必要である.従来その人が こな していた仕事量の 1.5倍程度の仕 手 を与え,期限を切 って追い立てればよい.経験的にい うと受動型の人の能 力 ・識見は概 して高い.その能力の生か し方 を体得 していないので業掛 こ結 びつかないのである.仕事の優先順位のつけ方 を徹底 して指導 し,そ して自 分の能力 (武器)を再確認 させることが,ポイン トになる.

B型人材 には自信型,自我過剰型がある.自信型は 「ツボ」 を押 さえれば 力を発揮するが, 自分の視点に拘 り,バ ランスが悪いのが欠点であ り,スタ ッフに良 くみ られるタイプである. これをA型人材 に変えて行 くには当事 者意識 を強化 してい く上司のマネジメン トカが重要になる.そ して経営に関 わっているとい う意識 をさらに持 たすには,ラインへ転出させ,ラインで操 まれて くるの も有効な方法 となる.

C型の状況型,B型の 自我過剰型に村す る格別の指導方法 はあま りない.

経営の視点からみれば,その組織 に適合で きない人材であ り,各自の進路 を 再検討 して もらわねばならない.

生産現場では工夫 をこらし,インプ ッ ト/ アウ トプ ッ トを正確 に測定 し, 生産性 を向上 させ た.オフィスワークで も生産性の効果を計 る尺度は工夫で

きるはずである.その一つの手掛か りは 「目標管理」の活性化である.

(5)人材マネジメン トの視点 4--1柵ミス ミに学ぶ新 しい波

㈱ ミス ミ (資本金 20億,従業員 262名 :20024月)は,1963年 に設立 され,プ レス金型用部品,プラスチ ック金型用部品,FA用部品などを取 り 扱 う中堅の商社である.同社は購買代理商杜 というユニークなどジネスモデ ルで順調に業容 を拡大 し,業績 もよい中堅企業である.

(12)

34 現代軽骨経済研究 創刊号

① ㈱ ミス ミの ビジネスモデル 6)

㈱ ミス ミは創業以来

,

「生産財の流通改革」 を標梼 し,すべての視座 をユ ーザーに据 え,ユ-サーが求めるものを必要なときに・必要な量 を適正な価 格で調達す る (マーケ ッ トアウ ト・プロダク トイン)・つ まりユーザ ーの購 買機能 を肩代 わ りするビジネスモデル (購買代理商社) を追求 して きた・ メ ーカー主導の流通構造 (プロダク トアウ ト マーケ ッ トイン)である販売代 理店型モデルとはすべての面 において逆の発想 を して きた・

人材活用面では

,

「イン トラプレナ- (社内起業家)は育てるのではな く・

自ら育つ」 とい う認識 に立 ち,同社は 「自ら育つ気のある人」 に活躍の場 と 環境の提供 を基本 にしている・チーム制 を基本 とした租絶体机 公募 による チームメンバーの編成な ど,社員は自分 自身にロイヤ リテ ィを持つべ きであ る し,経営は社員にチ ャレンジ ングな場 と環境 を提供す るだけであるとい う ユニー クなどジネスモデルである.

② ㈱ ミス ミが示唆す るもの

独 自の経営風土 を確立 し,好業績 を続けている購買代理商社 ミス ミは私た ちに新 しい ビジネスモデルを提供 した・ ミス ミが到達 したモデルは・これか らの経営 に とって極めて示唆 に富 む ものである

個」の重視・成果重視 とチ ームパ ワーの活用 を見事に融合 させている.年俸は,マーケ ッ トプライスで, 賞与はチーム成果で と明快 に区分 して,社員のモチベーションを高めている・

コーポレー ト・ベ ンチ ャーの卓越 したモデルである・

しか し,私たちが参考に したいのは,発信 されたモデルよりも幾多の試行錯 誤 をへて,現場か ら発想 し.エキスを抽出 したそのモデルの成立過程 にある・

これか らの人材育成担当者 にとって重要なことは,新 しい形式 を単 に追 う だけでな く,その仕組みが 自分 の組織 に何故必 要 なのか・当事者意識 を,

思い」や 「こだわ り」 を持 って考 え抜 いていかねばならない・事 象 を単 に 分析 して も何 も生れない.現場 に投入す ることに より・今 まで見えなかった ものを見なければならない.その意味で現場 は情報の宝庫である・それ を自

論文 :人材マ ネジメン トの展望 j∫

分の言葉で再構成 し,導入すべ き仕組みのニーズを語 るところか ら出発すべ きである.

3 人材マネジメン トの展望

これか らの人材 マネジメン トを展望す るにあた り,前項で考慮すべ き 5 の視点 にふれた.経営の人間観の変更が迫 られていること,マネジメン トシ ステムの透明性が求め られていること, 日本の経営の強 さの背景 にはチーム 力がある とい うこと,職場 の構造 に切 り込めば風土改革 も可能であること, 管理者,社員双方の意識改革 も必要であること,組織 にはそれぞれ固有 の問 題があ り

,

思い

「こだわ り」 をもって現場か ら発想す ること, と要約で き る.以上の諸点 を背景 に して, これか らの人材マネジメン トのあ り方 を展望

してい く .

(D成果主義が畢 む危険

現在

,

個 の自立

個の尊重」 を組織内で,いか に具現 してい くかが,人 材マ ネジメン トの大 きなテーマ になっている.企業 と個人が対等の関係 にな る,補足すれば,企業 と個人の関係が相互拘束型か ら相互選択型へ変化 させ るべ きであ る とい う主張 7)である.相互拘束型 とは,企業が長期的 な雇用 を保証す る代 わ りに,個人か ら全面的な忠誠行動 を期待する関係であ り,棉 互選択型 とは,企業 は多様 な雇用形態 を提供 し,個人は自己実現,市場価値 向上 を目指 してそれ を選択 する

,

縛 りあ う」のではな く

,

選 びあ う

か しあう」関係 を指 している.

ここ数年

,

個の 自立

相互選択型」経営-の流れを受け,成果 を重視 し, 的確 に評価 し,報いるための方策 として,所謂 「成果主義」 を導入,あるい は導入の検討 を進めている企業が急増 している.成果主義 とは個人の成果貢 献度によって給与 を決めることが本 旨であるが,給与 コン トロールの問題 だ けではな く,企業の ビジ ョンにあった成果志向の強い行動 を引 き出す ことも, その 目的 になっている 8).

参照

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