「ウィー ン売買条約 」 (CI SG ) における 契約 目的の実現 と, 契約か らの離脱 (2 ・ 完)
渡 辺 達 徳
目 次
Ⅰ は じめに〜本稿の 目的〜
Ⅱ 契約 目的の実現〜本来的履行の保障‑
1
契約違反の発生 と履行義香 (1)売主 による契約違反 の補完(2)
代替取 引2
「重大 な契約違反」概念の機能3
小 括 (以上第42巻1
号)Ⅲ
契約か らの離脱〜契約解除‑1
契約上の義務か らの解放2
給付の返還(1)原状回復の原則
(2
)清算 に付随す る諸問題3
他の救済手段〜 とりわけ損害賠償〜 との関係 4 小 括Ⅳ
むすびに代えてⅢ
契約からの離脱〜契約解除‑1 契約上の義務か らの解放
(1)
CI SG は,売主の義務 ( 4 9 条)及び買主の義務 ( 6 4 条)を規定す る中で 解除権の発生事 由を掲 げ, これを承 けて ,81 条か ら 8 4 条までが解除の 「 効果」
を定めるとい う構成を採 る 。CI SG が想定す る解除の基本的効果は ,81 条 に示
〔 1 31 〕
132
商 学 討 究 第43
巻 第1・2
号されている。すなわち,同条 1 項 によれば,契約の解除 は,支払われ るべ き損 害賠償を留保 して,両当事者をその義務か ら解放す る ( 同項前段)
。その際, 契約中に含 まれていた紛争解決のための条項,そのほか契約の解除によ り生ず る当事者の権利 ・義務を規律す る契約条項 は,解除の影響を受 けない ( 同項後 段)
。また,同条 2 項 は,契約の全部又 は一部を履行済みの当事者 は, 自己が 契約 に基づ き供給 し,又 は支払 った ものの返還を,相手方 に求めることがで き
る旨を規定 し,さ らに同項後段 は原状回復義務が同時履行 され るべ き旨を定め
る71) 0すなわち契約の解除によ り,当事者 は契約上の義務か ら解放 されて行動の自 由を回復 し ( 81 条 1 項),かつ,当事者双方 には原状回復義務が発生す る ( 81 条 2 項)
。これが CI SG における解除の基本的効果で あ り, ここに損害賠償 が数え られていないことに留意 され るべ きであろ う
。( 2 ) 解 除の機 能 をめ ぐって は, それが遡及 的 ( ex t unc) か又 は将来 的 ( exnunc) か とい う問題が,従来か ら多 くの議論 を呼び起 こして きた7 2
) 0この問題 に対す る CI S G の立場 は明快であ る。す なわち,まさに 81 条 1 項の 文言 に示 されたとお り,売買契約 は解除によ りその全体が遡及的に消滅す るの でな く,清算のための 「 枠組み 」 ( Rahmen) として将来 に向けて存続す る よ う予定 されている
73) 。いわば,契約で予定 されたプログラムが方向を逆 に 転 じ,巻戻 し的な清算関係へ と移行す るのである7 4 )0
こうして挫折 した契約 を清算す るとい う, いわば価値 中立的な解除の機能
71 )CI SG 81
条 は,実質 的にULI S7 8
条及 び1 97 8
年草案66
条 と趣 旨を同 じくす る。 た だ し,81
条1
項後段 に該 当す る文言 はULI S
には置かれてお らず, ここに掲 げ ら れた諸 々の義務が当該解除の影響 を受 けない ことを示す ため,CI SG
において挿入 され た もので あ る( Honnol d, Uni f orm Lawf or∫ nt ernat i onalSal es, 2 nded.
,19 91,§4 39,f n. 1 ; でal l on, i n: Bi anca/Bone l l , Comment ary, p. 6 01) 0
7 2)Tre i t e1 , op. ° i t .
(注1 0 ),§282
7 3 )Le s e r, Ve r t rags auf he bungi l ndRnc kabwi c kl ungunt e rden UN‑Kauf r e c ht
,i n: Schl echt ri em ( hrsg. ) , op. °i
t.(注22 ), S. 225( S. 228
f.)7 4 )Schl ec ht ri em, op. °i t .
(注50 ),S. 1 02;Rei nhart , UN‑Kauf recht , 1 991, Art . 8
1, Rn. 2
「ウィーン売買条約
」( CI SG)
における契約目的の実現と,契約からの離脱(2
・完)1 33 は, これを 「 損害賠償を損な うことのない履行か らの離脱」 ( DasAbgehen Yon der Erf t i l l ung unbeschadetdesSchadensersat zes ) と表 現 した ラーベルによ り,すで に国際統一売買法のための第一次草案 ( 1 9 3 5 年)段階 か ら承認 されてきた7 5
) 。そ して,すでに ULI S78 条 1 項 は,後の CI SG 81 条 1 項前段 と趣 旨を同 じくして, 「 契約解除によ り,両当事者 は支払われ るべ き 損害賠償を留保 して,自己の義務か ら解放 され る」と定 めていた。この規定 は, すでに損害賠償請求権の存続が予定 されている事実か ら知 られ るとお り,当該 契約 は,あたか もそれが締結 されなか ったかの如 く,遡及的に消滅す るとい う 趣 旨に理解 され るべ きではないと指摘 されていた 7 6 )0
(3)
こうして,契約が解除 されて も当該契約が清算のための 「 枠組み」 とし て存続す ることを示すのが ,81 条 1 項後段の規定である。すなわち,契約が解 除 されて も,紛争解決のための契約条項〜例えば,仲裁,準拠法 ・法廷地の選 択等 に関す る条項〜 は,解除の影響を受 けない。 これ ら条項 は,解除等 により 契約が挫折 した後 に効力を生ず るのであるか ら,それが解除 とともに遡及的に 消滅すると解す るのは,む しろ背理 ともいえよ う 。UNCI TRAL 仲裁規則 も, 契約中の仲裁条項 は契約の他の条項か ら独立 した約定 として扱われるべ き旨を 規定 し,仲裁条項 としての基本的機能を担保 してい るといわれ る ¶
' 。また,
75 )
ラーベルは, ドイツ普通商法典( ADHGB)
の成立過程及び商法上の用語法を参 照 しつ つ,損 害 賠 償 とは無 関係 な履 行 か らの解 放 を意 味 す る概 念 と して,"Auf hebung"
とい う用語を選択 したと述べている( Rabe l , De rEnt wurfe l nes ei nhei t l i chenKauf gese t z es, Rabe l s Z 9( 19 35 ) ,1( 7
1)‑ders., Gesammel t e Auf sat z e, Bd.
Ⅲ, S. 577
f.)。なお,ADHGB
の成立過程 における解除の機能 に ついては,後 にLeser, perRt i ckt ri t tvom Vert rag, 1 9 7 5, S. 1 0
ff.が詳細な考察 を加えている。76 )Wei t nauer, i n:D
61 1 e( hrsg. ),op. ° i t . (
注4), Art. 78 , Rn.2
77 )Honnol d, op. °i t . (
注71 ) ,§ 442
:このUNCI TRAL
仲裁規則21
条2
項は次の とお り定める (国際商事仲裁協会編 『仲裁法規集』の訳 による)0「仲裁裁判所 は,仲裁条項がその一部を成す契約の存在又は効力について決定 す る権限を有す る。 この条の規定の適用上,契約の一部であって この規則に基づ く仲裁を規定す る条項は,契約の他の条項か ら独立 した合意 として扱 う。契約が 無効である旨の仲裁裁判所の決定によって,仲裁条項が法律上当然 に無効 とされ
るものではない。」
1 34
商 学 討 究 第43
巻 第1・2
号国内法の多 くも,契約の解除にかかわ らず こうした諸条項の有効性を認めてい ることが指摘 されている7 8 )。
また,解除による当事者の権利 ・義務 を規律す る契約条項〜その例 と して は,免責,違約金 の定 め,損害賠償額の予定等 に関す る条項が考え られ る7 9 )
〜 も,将来に向けて存続す る。 この とき,形式的な文言解釈によると次のよう な疑問が生ず る。すなわち,あ る契約 中に供給遅滞 に備えた違約金の定 めが あったところ,供給 された商品が契約 に適合 しない ことを理由として契約が解 除されたとき, この解除は遅滞を理 由としてなされたのでないか ら, この違約 金の支払 は 「 契約解除の結果 として生ず る」義務ではないとも解 されることで ある釦
' 。しか し, こうした解釈 は,次の理 由か ら支持 し得 ない と指摘 されて いる。すなわち,当事者間の衝突を解決す るために有効な条項が消滅す るのを 防止す ることこそ この規定の趣 旨であるうえ,違約金 は損害賠償 に代替す るも のであって,かつ,損害賠償 は解除にかかわ らず存在す るためである
81) 0(4)
争 いを生ず るのは, 81 条 1 項 に明示 された以外の義務の帰趨 についてで ある。ある解釈によれば,買主が商品の受領を怠 る間,売主が商品を保管す る ために合理的な措置を採 る義務 ( 85 条),又 は,いったん商品を受理 した買主 が契約若 しくは条約 に基づ く受領拒絶権を行使 しよ うとす るとき買主が同 じく 負 う保管義務 は ( 86 条),契約解 除によ り損 なわれ るべ きでない と説かれ る
82) 。
しか し, この見解 に対 して は,た とえ 81 条を拡大解釈す るにせよその文 言か ら離れ るうえ,あえて このよ うに解す る有用性を疑問視す る向 きもあ る
。なぜ な ら, どの法体系 も,契約が解 除 された際 の商 品 の 占有者 に対 して, そ れ が 返 還 され る ま で 相 当 の 注 意 を 払 って 当該 商 品 を 保 存 す る よ う 7 8 )でal l on, i n:Bi anca/Bone
ll , Comme nt ary, p. 60 3
7 9 )
この点 に つ き,UNCI TRAL Yearbook,γ o
l.Ⅶ, 1 976, p. 1 32;でal l on, i n:
Bi anca/Bone
ll , Comment ary, p. 60 3
を参照。80 )でal l on, i n:Bi anca/Bone l l , Comme nt ary, p. 60 3
8
1)でal l on, i n:Bi anca/Bone l l , Comme nt ary, pp. 60 3‑604
8 2 )Honnol d, op. ° i
t.(注7
1),§ 443
が,事務局 コメ ンタ リーに即 して これを説 く。 さ らに,損害額の算定や受領を拒絶 した商品の取扱 に関す る契約条項 も, これに該当 す るとい う。「ウィーン売買条約
」( CI SG)
における契約 目的の実現 と,契約か らの離脱(2
・完)135 義務付けるという点では,一致を見ているためである
83) 0( 5 ) ここで,文献に掲げ られた設例に従い,以上 に概観 した解除の効果を確 認す ると次のとお りである8 4
) 。まず,履行期が到来 した ものの売主 ・買主共に履行 しないうちに,一方当事 者が契約の履行を拒絶 した際, 相手方には契約解除権が与え られるが ( 7 2 条) ,
この場合の効果はどのように考え られるか。 この とき 81 条 1 項に従い,解除当 事者 は自己の履行義務,及 び,相手方か らの履行を受領す る義務のいずれをも 免れる
。なお,解除当事者 は相手方 に履行を請求す る権利を失 うものの,契約 違反に基づ く損害賠償を求めることができる ( 7 4 条か ら 7 6 条までを参照)
。ま た,当事者の一方が履行済みにかかわ らず,相手方が契約を否定 し,又は重大 な違反を犯 したために,履行を済ませた当事者が解除す る場合 も,履行を受領 している者か ら解除当事者への目的物返還が加わる以外は,上の例 と同 じ処理 がなされることで足 りる。
次に,売主が,重大な契約違反 となるような欠陥を帯びた商品を買主 に供給 したため,買主が当該商品の返還 とともに代物の供給を請求す る場合 はどう か。 このとき,買主が最初に供給 された欠陥ある商品を返還することが解除を 意味す るか という問題を生ず る。なぜな ら, これが解除を意味す るな らば, こ の買主の行為 によって「当事者双方 は自己の義務か ら解放 され る 」( 81 条 1 項) ことになり,買主が売主に代物供給を求めることは不可能 となるためである。
しか し, こうした状況において,買主 は 46 条 2 項に基づ き代物供給を請求でき るのであって ,81 条 1 項の形式的解釈により,買主 に与え られる救済が損害賠 償に限定 されるとの帰結を導 くべきではない。
さらに,売主が契約に適合 した商品を供給 したところ,買主が代金を支払わ ないまま商品を直ちに転売 した場合,売主 は契約を解除 したうえ商品の返還を 請求で きる ( 81 条 2項)
。しか し,当該商品が転売 されている以上, この返還 8 3 )でal l o
n,in :Bi anc a/Bone
ll , Comme nt ar y, p. 6 0 4
8 4 )
以下 の設例 及 び解説 は,Honnol d, op. ° i t .
(注7 1 ) ,§§ 4 40 .1‑2
によ る もので あ る。1 36
商 学 討 究 第43
巻 第1 ・2
号請求 は不可能であるか ら, こうした状況においては 8 1 条 1 項により 「 留保 され た」損害賠償が売主 にとって唯一の救済 とな り,その額は未払い代金に利息を 加えた ものとなろう ( 7 4 条,7 8 条)。 この結果は,買主に代金相当額の支払を 求めるという意味で履行請求 ( 6 2 条)に類似す ると考え られる。 しか し ,8 1 条 1 項に規定 された 「 損害賠償」 というアプローチは,履行強制手段でな く,む しろ売主を通常の取立て手続へ と向かわせ ることになろう。
2 給付の返還
(1 )原状回復の原則
(1)
CI SG 81 条 2 項 は,解除に伴 う両当事者の原状回復義務を定め,また, 8 2 条か ら 84 条 までは, こうした清算に付随 して生ず る諸問題を規律する。すな わち,8 2 条 は,買主が商品受領時と同 じ状態で当該商 品を返還できない場合の 解除の可否を ,8 3 条 は前条が買主の他の救済手段に対 して及ぼす影響を,そ し て,84 条は原状回復に伴 う利息又は利益の返還方法を定めている。
( 2 ) 8 1 条 2 項は,その全部又は一部を履行済みの契約が解除された場合の効 果を念頭に置 き,各当事者 は, 自己が供給 し又は支払 った ものの返還を請求で きると定める8 5 )
。ULI S7 8 条 2 項の文言を, ほぼそのまま受容 した規定であ る。 こうして過去に向けて機能す るという限 りにおいて,同規定は遡及的な効 力を有する。いわば,同項に規定 された返還 により,なされた給付 との関連 と いう限 られた意味において,契約の結果が廃棄 され ることになる。 しか し,解 除 によ り部 分的 に履 行済 みの契約 の結 果が 除去 され る とはいえ,積極 ・ 消極利益 の賠償 において期待 され る如 く,「契約 が正常 に履行 されて いた 場合 の よ うに」,又 は 「契約が あたか も締結 され なか った場合 のよ うに」
とい った仮設 的 な 目的 と, ここで の機能 とが結 び付 くもので はな い8 6
) 。85 )
なお,当事者が原状回復の方法を定めることもで きる。その内容が,原状回復を行わない ことで もよい。例えば,割威販売契約 において,当事者 の双方が解除前 に受 領 した分の金品をそのまま保持す る旨の合意 も可能である
( でal l on, i n:Bi anca/
Bone
ll , Comment ary , p . 60 5 ) 0
8 6 )Les er, i n:CI SG‑Komment ar, Vor. Art t . 81‑84, Rn. 10
「ウィーン売買条約」(
CI SG)
における契約目的の実現と,契約か らの離脱(2・完) 1 37 すなわち, この機能を,解除により 「 契約が遡及的に消滅す る」のか否か とい
う抽象的な問題 と置 き換えることは意味を持たないとの指摘に留意 されるべ き であろう8 7
) 。( 3) 81 条 2 項の規律対象は,なされた給付 に変更が加え られないまま契約相 手方の許で保管 されていた場合 に限 られ〜ただ し,金銭 についてはその金額が 返還の対象 となる〜,商品の受領当時 と状態が異なる場合 については ,8 2 条か ら84 条 まで の規定 に服 す る銘)。 こうい った規定 の構造 か ら,次 の よ うな CI SG の趣 旨が読み取れ るといえよ う。 すなわち, 解除に伴 う給付 の返還 とは, 契約 目的の実現が挫折 した当事者のための救済 としては限定的であ り ,81 条か
ら 84 条 までの効果 は,いわば給付の返還 における危険の分配を定めるにす ぎな いとい うことである。そ して,それ故にこそ,解除は損害賠償 と並存 し,その 補完を受 けることで完全 な救済が実現 され るのである脇)0
両当事者が行 うべ き給付の返還 は,各国内の現行法 により規律 され る。 この 種の規定が存在す るところでは,原状回復の遅延 に対す る過料の賦課 ( アス ト
ラ ン ト)が命ぜ られ ると考え られ る釦)。その一方,特定履行が制約 されてい るとき,現物の返還を得 ることは難 しいであろ う
91) 。なお,原状回復 に要す る費用の負担 については明文を欠 くものの, CI SG における損害賠償の趣 旨が 権利を害 された当事者の全損失を填補す るところにあること,また,原状回復 費用 とは,事実上,損害賠償の性質を持つ ことに照 らす と, この種の費用 は不 87 )でal l on, i n: Bi anca/Bone
ll , Comme nt ary, p. 604
88 )Leser, i n. ・ CI SGIKomment ar, Art . 81, Rn. 1 3
89 )Lese r, i n: CI SG‑Komment ar, Vor. Art t . 8ト 84, Rn. 1 0 90 )Tal l on, i n. ・ Bi anca/Bone
ll , Comment ary, p. 60 5
9
1) コモン・ロー上は,商品そのものの物理的返還を要せず,原状回復は原則として金銭賠 償のかたちを採ることになろう (この指摘 につ き,Tall on, i n:Bi anca/Bone
ll,Comment ary, p. 60 4 )。すなわち,伝統的なコモ ン ・ロー思想 によれば,解除当
事者 は履行の価値の回復( quant um merui t)を請求で きるが, これは原契約 に
基づ く原状 回復でな く,法 によ り擬制 された新 たな準契約 に基づ く請求であ る( Trei t el , TheLaw ofCont ra
ct,8t h ed. ,1 991 , pp. 9 33‑9 37;Cheshi re/
Fi f oot /Furmt on, Law ofCont ract
,l l t hed. , 1 9 86, p. 5 31)。その限 りにおい
て,解除に遡及効がないとい う評価 (例えば,田中和夫 『英米契約法』(昭24 )3 37
頁)が妥当す るといえよう。1 38
商 学 討 究 第43
巻 第1・2
号履行当事者 に帰せ られ るべ きもの と考え られ る 9 2 )。
( 4) 81 条 2 項が適用 され る典型的な場面 として,文献上,次のような設例が 挙げ られている。すなわち,売主 による供給期 日を 6
月1 日,買主の支払 日を 7 月 1 日とす る売買契約 において,売主が約定 どお り供給 したにかかわ らず買 主が支払を怠 ったため,売主 は重大な契約違反を理 由として契約を解除 し,供 給 した商品の返還を買主 に求めた, といった場合である9 3
' 。この とき,大陸法系で は CI SG81 条 2 項 と同 じ結果,すなわち現物 の返還 が認め られ ると思われ る。その反面, コモ ン ・ロー及 びアメ リカ UC Cは, こ
こまでの 「 解除」の効果を認 めていない。すなわち, UC Cの規定 によれば,
売主が信用取引により商品を供給 した ものの支払を受 け られないとき,次のよ うな場合 に限 って商品の返還を請求で きる.それは,商品を取得す るにあた り 買主が不法な行為 ( 例えば欺岡行為)を行 った とき ( UC C §2‑7 0 2) ,又 は,
売主が商品の所有権 ( 若 しくは担保権)を留保す ることについて,買主が署名 入 り文書で合意 していた とき ( UC C § 9‑20 3 ( 1 ) (a ))である。
(5)
なお,解除に伴 う原状回復をめ ぐり,国際的統一法規 と国内法 との間の 相互作用 に問題を投げか ける場面 として,文献 には次のような例が現れている
94)
0
売買契約 において,買主 は商品供給後 3 0 日以内に代金を支払い,かつ,買主 が約定期間内に支払を怠れば,売主 は特段の通知を要す ることな く商品の所有 権を回復す る権利を持つ と約定 されていた とす る。 ここで買主が支払を怠 った ため,売主が商品の回復を求めて買主の裁判管轄 に訴えを提起 したとす ると, どのような結果が生ず るであろ うか。 この とき,買主か ら次のように主張 され る可能性がある。すなわち, 売主の権利 は条約 81 条の規律 に服す るべ きであ り, 同条 は契約解除に基づ く原状回復を定めているにかかわ らず,売主 は通知 によ
る解除を行 っていないとい うことである
。これに対 して,売主か らは, 自己の 92 ) でal l on, i n:Bi anca/Bone l l , Comment ary, p. 605
93 ) この設例及び以下の解説は, Honnol d, op. °i
t.(注71 ) ,§ 444 による。
94 ) 以下の設例及び考察は, Honnol d, op. ° i
t.(注71 ) ,§ 444 . 1 による。
「ウィーン売買条約 」( CI SG) における契約目的の実現と, 契約からの離脱( 2
・完)139 訴えは商品の所有権回復の主張であ り,条約 は 「 売却 された商品の所有権」に 関わ る契約の効果 に関知 しないのであるか ら (4条 (a)) ,解除に関す る条 約の規定 は適用 されないとの反論が考え られ る (さ らに,所有権留保の特約が
あれば, これを も援用 し得 る)0
しか し,条約 8 1 条が規律 しようとす るのは,まさに買主が支払を怠 る際の商 品の返還 についてであることに照 らす と, このようなかたちで条約を排除 しよ うとす るのは相当でない。む しろ,商品の回復 は解除を前提 とす るとの主張に 対抗す るな らば,売主 は,当事者が条約の規定を排除す る権利 (6 条)を拠 り 所 とするべ きであろう
。すなわち当事者 らが,条約 6 条 に基づ き,契約違反 に 対す る救済規定を再構成す る権利を行使 した ということである。
(2) 清算に付随す る諸問題
(1
) 8 2 条 は,その 1 項 において, 「 買主が商品を受領 した時 と実質的に同 じ 状態で商品を返還で きないとき」, この買主 は契約解除権,又 は売主 に対す る 代物供給請求権を失 うことを原則 とし , 2 項において,前項の例外 となる幾っ かの状況を列挙 している9 5 )0
この 8 2 条 2 項の趣 旨は,たとえ買主が 「 実質的に」同 じ状態で商品を返還で きな くとも,受領 された商品が重大な欠陥を帯 びていた場合 に備えて, この買 主のための救済手段を確保す るところにあ る9 6
㌦す なわち , (a) 商品受領 時点 と実質的に同等の状態での返還不能が買主の作為又は不作為 によ らないと
き ,(b) 商品の全部又 は一部が3 8 条 に定める検査の結果 として滅失又は穀損
95 ) 同条は ULI S79 条と基本的に同旨である。ただし ,CI SG8 2 条 1 項では,当該状 況において,買主が解除権のみならず 「 代物供給請求権」をも失うことが新たに明 示された。また, 2 項においては, 「 買主‑の行為によらない返還不能 」 ( ULI S 7 9 条 2 項 (d ) ) と 「 契約違反による返還不能 」 ( 同項 (a ) ) が,同一事例の反 復であることから CI SG82 条 2 項 (a) として整理統合され,さらに 「 商品の穀 損又は変形改造が重大でないとき」を定めていた ULI S79 条 2 項 ( e) は,その 判断が不明確であるとの理由により削除された ( 以上の経緯は ,Lese r, i n:
CI SG‑Komment ar, Art . 82 , Rn. 1 ‑4 による)0
96 )Honnol d, op. °i t .
(注7
1),§ 448
140
商 学 討 究 第4 3
巻 第1・2
号した とき,及 び (C) 買主が不適合 を発見 し,若 しくは発見すべ きであ った 時より前 に,買主 によ り商品の全部又は一部が通常の取引に基づ き販売 され, 又 は,消費若 しくは変形改造 されたとき,買主 は 8 2 条 1 項の権利を失わない。
上 に掲 げた例外的諸状況 は, さ らに二つの角度か ら分析で きるg 7
) 。まず,
(a)号 と (b) 号 は,契約 に違反 して供給 され た商 品に起 因す る危険を もっぱ ら売主 に負担 させ るとい う共通点を持つ
。必要 とされる検査により商品 が損傷 した とい う (b) 号か らこの思想を最 も明確 に読 み取れ るはか,商品 の穀損,又 は商品の滅失 に至 る状況のすべてにつ き,それが買主の作為又 は不 作為 によ らない限 り売主 の危険に帰す るとい う (a) 号 も,同 じ趣 旨の下 に 理解 され るべ きものである。 すなわち, 偶発的事故及 び不可抗力の危険 は,もっ ぱ ら売主が負担す る
。一方, (C) 号で問題 とされ るの は,通常取 引上の使 用危険であ り, これ も売主の負担 に帰す る。ただ し,堀庇を認識 した時点を境 に して,よ り高次の危険が買主 に移転す るはか, ここでは 8 4 条 に定める損益相 殺の規定に服す ることに注意 され るべ きであろ う
。( 2 )8 3 条 は,買主が 8 2 条 に定める二つの救済,すなわち契約解除権 と代物供 給請求権を失 った場合で も,契約及び条約に基づ く他の救済を求める権利には 影響が及ばない旨を規定す る。契約違反 における諸 々の法的救済が,原則 とし て相互に独立 していることを示す とともに,解除 と損害賠償の両者が共 に行使 可能 な救済であることを も確認す る規定である躯
) 。損害賠償請求権 ( 4 5 条 1
項 (b) , 7 4‑7 6 条),及 び代金減額請求権 ( 50 条)が これに該 当す ること は明 らかであるS D
) 。また,転売,消費,加工その他の商品の状態の変更 によ り,すべての状況を勘案 して修補が不合理 とな らない限 り,修補 による商品の 契約不適合の補完 ( 4 6 条 3 項) も可能である1 0 0
) 。97 ) 以下の分析は ,Leser, i n:CI SG‑Komment ar, Art . 82, Rn. 1 6, 1 7 による。
9 8 )Lese r, i n:CI SG‑Komment ar, Art . 83, Rn. 2
99 )Lese r, i n:CI SG‑Komment ar, Art . 83, Rn. 3;でal l on, i n:Bi anca/Bone l l , Comment ary, p. 61 0
10 0 )Honnol d, op. ° i
t.(注7 1 ) ,§449;でal l on, i n:Bi anca/Bone l l , Comment ary ,
p.61 0
「ウィーン売買条約
」( CI SG)
における契約目的の実現と,契約か らの離脱(2
・完)1 41 ( 3) 8 4 条 は,解除 された契約 によ り支払われた代金,又 は供給 された商品の 回復が遅延 した ことに基づ く損益を調整す る規定である。すなわち,売主が代 金を払 い戻す義務を負 うときは, この代金受領 日か らの利息 も支払わなければ な らない ( 1項)
。また , (a) 買主が商品,又 はその一部 を返還 しなければ な らない とき, 又 は (b) 買主が商品の全部若 しくは一部 を返還で きず,又 は, 受領 した際 と実質的 に同 じ状態で商品の全部若 しくは一部を返還で きないにか かわ らず,契約を解除 し,又 は売主 に代物の供給を請求 した とき,買主 は商品 又はその一部か ら自己が取得 した全利益を売主 に賠償 しなければな らない。
1 項 に規定 された利息支払義務 は,利息 に関す る原則規定 ( 7 8 条)〜当事者 が代金 その他の金銭 の支払 いを遅滞 しているとき,相手方 は,74 条 に基づ き回 復可能 な損害賠償の請求を担 うことな く,その金銭 に対す る利息を受 ける権利 を有す る〜 と密接 に関わ る。 ULI S81 条 は,解除に伴 い代金返還義務を負 う売 主の利息支払義務 を定めていたが,その率 につ いて は『 損害賠償 に関す る補則』
中に置かれた 83 条 に従 うことを明示す るに とどめていた。そ して ULI S83 条 は,代金支払の遅延 における利率を,売主の営業所又 は常居所所在国における 公定割 引歩合 ( of f i ci aldi scountrat e) プラス 1 ㌫ と定めていた。 しか し, CI SG はこの算定方法を受容 しなか った。その理 由は, この利率算定方法が信 頼 し得 る基準か否かに疑問が持たれ, また,割引歩合 も国によりまちまちなた めであ った
101)。また,上 に見 られ るよ うに, ULI S が 『 損害賠償 に関す る補則』 ( 第 5 章第 4 節) 中に規定 して いた利率算定規定 ( 83 条)を CI SG が削除 した ことによ り, CI SG における利息 は全 く損害賠償か ら切 り離 され,独立 した位置付 けを 与え られた ことが明確化 された とも評価 されている 1 0 2 )1 0 3 ) 0
1 01 )Les e r, i n:CI SG‑Komment ar, Ar t . 8 4, Rn. 2
1 0 2 )
なお,利息が7 9
条 に定める免責規定 により排除されないことも, この趣 旨か ら理 解 され る。 これ らの指摘 につ き,Le s e r, i n:CI SG‑Komme J l t ar, Ar t . 8 4, Rn.
3,
ll, 1 2
を参照。1 0 3 )
ただ しHonnol d, op. ° i
t.(注7
1),§ 451 . 2
はニュアンスを異 に し, この問題に論 争の余地 あることを示 している。それによれば,条約中に利率 に関す る規定が存在1 42
商 学 討 究 第43
巻 第1 ・2
号( 4 ) 次 に,契約解除に伴 い買主が受領 した商品の全部又 は一部を返還す るに あた り,それ と共 に償 うべ き「 商品又 はその一部か ら得 た全利益 」( 2 項 (a)) の内容が問題 となる。基本的には,果実 ( 天然果実,法定果実)及 び使用利益 のすべてが含 まれ ると考え られ る
lDl )。 なかんづ く,国際動産売買 とい う条約 の規律対象 に照 らす と, 重要 なのは法定果実である。これ に該 当す る例 として,
目的物の賃貸,対価を得て行われ る第三者へのライセ ンス譲渡,権利保護の対 象であ る著作物の複製又 はコピーの許可等か ら生ず る利益が挙げ られよう
。法 定果実 においては,当該対価が取引上通常 と認め られ る範囲にあれば,そ こで 獲得 された対価が基準 とされ,その限 りにおいて天然果実 と同 じ客観的判断に 服す ることになる1 0
5) 0一方,使用利益 に該 当す るのは買主の 自己使用か ら得 られた利益であ り,そ こには自動車,機械等の 目的物のみな らず, ソフ トウェア,特許, ライセ ンス 等の使用 も含 まれ る。 ここで売主 に返還 され るべ きは享受 された価値の賠償で あ り,その算定 は,物が客観的に有す る使用価値〜多 くは賃貸価値, ライセ ン ス価格等 々の市場価格を基準 とす る〜 に基づ きなされ ることになろ う1 【
冶) 0一つの疑問を提起す るのは,買主が商品を使用す るにあた り要 した費用をど のよ うに尉酌す るかである。条約 はこの問題 に触れていない ものの,可能 な限 りの原状回復を実現す るとい う条約の趣 旨に照 らす と , 8 4 条 2 項 にい う「 利益」
として買主か ら売主 に返還 され るの は, 「 純益」 ( N et t ovort ei l e ) に限 られ ると解す るのが相当である。 したが って,買主の許 における商品の維持費,刺 しないことから,妥当な解決は契約違反に基づ く損害賠償に関する条約の規定を類 推することにより,得 られるべきであるという。なぜなら,売主が代金を返還する 義務は〜まさに設例が示すとおり〜,この売主の契約違反から生ずると思われるた めである。こうした見方によれば,売主の不当利得を防止するというアプローチよ りも,権利を害された買主が被った損失を基礎とした利息を算定するほうが適切と 解されることになろう。
1 04 )Le se r, i n:CI SG‑Komment ar, Art . 8 4, Rn. 17‑1 9 1 05 )Lese r, i n:CI SG‑Komment ar, Art . 84, Rn. 1 8
1 06 )Leser, i n:CI SG‑Komment ar, Art . 84, Rn. 19 :ただし,返還されるべき利益
の範囲を判断する際,不当利得の一般原則を拠り所とする方向を示唆するものとし
て ,でal l on, i n:Bi anca/Bone l l , Comment ary, p. 61 2 をも参照。
「ウィーン売買条約 」( CI SG) における契約目的の実現と, 契約からの離脱( 2
・完)1 4 3 益獲得のために要 した費用,商品の加工費用等 は,返還 され るべ き利益か ら控 除 され るべ きことになろ う 1 g
7) 。(5)
84 条
2項 (b) は,買主が利益の償還を要求 され る場合 として,商品 の返還が不能であるにかかわ らず契約を解除 し,又 は売主 に代物 の引渡 を請求 した ときについて規定す る。 こうした状況が生ず るのは,買主が商品の全部又 は一部を通常の取引方法によ り売却 し,又 は,通常の用法 によ り消費若 しくは 変形改造 した場合であって,かつ,それが不適合を発見 し,若 しくは発見すべ きであった時 よ り前 に行われた ときである ( 82 条 2 項 (C))
。こうした状況 においては,買主 による解除が正当である一方,原状のままでの商品返還 は不 可能であるか ら,解除を行 った買主 は,商品の変形改造又 は転売 によ り取得 し
た全利益 の対価を,金銭の給付 とい うかたちで売主 に返還す ることにな る。す なわ ち, ここで生 じるの は,当該商品の代償 ( Surrogat e) と しての価値賠 償請求権であ り
108', これを定 める 84 条 2 項 (b) は,原状 のままでの商品返 還の原則 ( 82 条 1 項)に対す る例外を形成す る。
代償 としての価値賠償請求権 は,物か ら生ず る利得 ( commodum exre) と しての物 の使用若 しくは消費,又 は,取
引か ら生 ず る利得 ( commodum ex negot i at i one) としての転売 に基づ き発生す る
ICO' 。この うち,物 か ら生 ず る利得が返還の 目的 とな るとき,物の価値 は使用又 は消費 とい うかたちを と り,経済的意味においては買主 に帰属す るため,その返還 は不可能であ るとと もに無意味で もある。なお,価値賠償請求権の算定 は,客観的基準 に基づ きな され るとともに,合理的人間の視点か ら見た物の価値 に合わせて決せ られ るこ とになろ う
110'。一方,買主 によ り転売 がな された ときは若干の問題 を伴 う
。1 07 )Le s er, i n:CI SG‑Ⅹomment ar, Ar t . 8 4, Rn. 2 0;Honnol d, op. ° i
t.(注7 1 ) ,
§ 451
.3 , f n. 5
1 08 )Le s e r, i n:CI SG‑Komment ar, Ar t . 8 4, Rn. 2 3
1 09 )Le s e r, i n:CI SG‑Komment ar, Art . 8 4, Rn. 2 5 :この分類は, すでに ULI S81 条に即 して , Wei t naue r,i n:D61 1 e( hr sg . ) ,op. c i
t.(注4),Ar t . 81 ,Rn. 9 にお
いてなされていたところである。
1 1 0 )Les e r, i n:CI SG‑Komment ar, Art . 8 4, Rn. 2 6
1 44
商 学 討 究 第43
巻 第1・2
号なぜな ら,損益相殺 においてまず もって考察 に入れ るべ き転売代金 の決定 に不 確実 さが伴 うためである111)112)0
3
他 の救済手段〜 とりわ け損害賠償〜 との関係(1) 契約の一方当事者が,相手方か ら契約の本 旨に従 った履行を受 け られな いとき, こうして契約上の期待を害 された当事者が行使 しよ うとす る救済手段 は複数 あ り得 る。例 えば,購入 した機械が売主の保証 どお りに作動 しない とき, 買主 は欠陥の修補を求め,又 は,契約を解除 して機械の返還 と引換 に支払済代 金を返還 させ, さらに自己が被 った種 々の損害の賠償を請求す ることを望むで あろ う113)。 この とき,修補請求 と解除を同時 に行 うことは明 らかに背理であ る。 さらに,解除 と損害賠償 とを共 に行使す ることも理論的に困難 と説かれ る ことが ある。なぜな ら,解除 によ り契約が遡及的に消滅 し,契約当事者 は契約 が締結 されなか った とすれば置かれていたであろ う地位 に戻 され ると解す るな らば, こうした効果 を持っ解除 と損害賠償請求 とは両立 し得 ない とも見 られ る ためである114) 0
( 2 )
この契約解 除 と損害賠償請求 との関係如何 とい う問題 に対 す るCI SG
llD Lese r, i n:CI SG‑Komment ar, Art . 8 4, Rn. 27
1 1 2 )なお , Honnol d, op. °i t . (
注7
1),§ 452
は,原状回復の同時履行( 81
条2
項後段) 及び利息支払( 84
条1
項)との関連で,実務上重要と思われる次のような設例を挙 げる。すなわち,7
月1
日に供給される機械の代金の半額を買主が6
月1
日に支払 い,残代金は供給後30
日を経て支払われるべきものとされていたところ,買主が支 払を怠ったとする。そこで売主は,重大な契約違反を理由として契約を直ちに解除 し,引渡済の機械を押収する裁判所の命令を得た。これに対 し,買主は81
条を拠り 所として,相互の原状回復は同時履行されるべきであるから,買主が6
月1
日に支 払った代金の返還,及び,84条1
項に基づき代金支払日からの利息を請求 した,というものである。このとき不履行を犯 した当事者 [買主]からの利息請求を許容す るのは妥当でなかろう。むしろふさわしいのは原状回復の見地からアプローチする ことであって,受領 した金銭の利用から売主が得た利益を基礎として,回復される べき範囲が決せられるべきものと説かれている。
1 1 3 )Tr ei t e l , op. °i
t.(注1 0 ) ,§ 287
1 1 4 )Trei t el , op. °i
t.(注1 0 ) ,§ 287:BG
王iが,こうした見地に立って解除と損害賠償 を排他的関係と捉えたことは周知のとおりである( Mot i vezum Bt i rger l i che n
Ges et zbuchBd. Ⅱ, 1 896, S・ 211) 0
「ウィーン売買条約
」( CI SG)
における契約目的の実現 と,契約か らの離脱(2
・完)145 の立場 は,次の とお り明快かつ簡潔である。すなわち,契約当事者の一方が契 約又 は条約に定め られた義務を履行 しないとき,その相手方 は所定の条件 に基 づ き契約を解除 し,かつ,それ とともに損害賠償を請求で きる ( 81 条 1 項 :な お,売主 による契約違反につ き 45 条及 び 49 条,買主 による契約違反 につ き 61 条 及び 64 条を も参照)
。そ して,そこで賠償 されるべ き損害の範囲は 74 条の原則 どお り決せ られ ることで足 り ,75 条及 び 76 条がそのための基準を示 している。
このよ うに, CI SG において解除 と損害賠償 とが両立す る救済手段であること は 自明で あ り,そ こには何 らの例外 も介在 しない。 ここに示 され た趣 旨は ULI S と同 じであ り ( 24 条, 41 条 , 55 条, 63 条) ,CI SG は,義務違反の形態 ごとにそれに対す る救済を定めていた ULI S の形式を,立法技術的観点か ら 整理 ・改良 したにす ぎない
115)。つ ま り,解除 と損害賠償 とい う二つの救済を 重畳的に認 めるか,又 は択一的手段 と位置付 けるか とい う問題 につ き, ULI S の起草過程以来,前者 に与す る態度 は確立 されてお り, この ことをめ ぐり特段 の議論が交わされた形跡 は見 られないといえよう。 しか し, この問題 に対 して 国内法体系が示す立場の差異〜その両極 に位置す るのは, BGB とフラ ンス民 法典〜 に照 らす と
116),履行請求の位置付 けをめ ぐり見 られたよ うな論争が こ の場面で生 じていない ことは,かえ って興味を惹 くところともいえ る。
1 15 )Huber, i n:CI SG‑Komme nt ar, Art . 45, Rn. 6
1 1 6 )
解 除 と損害 賠償請 求 とを排 他 的 な関係 と捉 え る原則 を,法典上 も貫 いたの はBGB
で あ った。 ただ し, こ う して解 除 と損害 賠償 との両立 を認 めない とい う 構 造が,BGB
に固有 とい うわ けで はな い。 コモ ン ・ロー体 系 で も,解 除 と損 害賠償 とを共 に行 うの は理論的に不可能 との観念が,若干の影響を及ぼ して きたと指摘 されて い る
( Trei t el , op. °i
t.(注1 0) ,§ 28 8;Rabel, op. ° i
t.(注40) , S.
4 30;Ⅴ. Caemme re r, Probl emedesHa且gerei nhei t l i chenKauf recht s, AcP 1 78( 197 8 ) ,1 21( 13 3
))
。 例え ば,アメ リカ統一売買法( Uni f orm Sal esAct
,1 906 )
は, こうした矛盾を緩和す るために,
「契約条項 たる条件」( condi t i on)
違反が当然に契約の無効を もた らすのでな く,かかる条件か ら契約を遡及的に無効 と みなす権利が生ず るにす ぎないと構成 した。 こうして契約を無効 とみなす権利 と損 害賠償請求権 とが債権者 の選択 に委ね られ ると, ドイツ法 に比肩 され るべ き択一構 造が形成 され ることになる。判例上 も,買主が契約を解除 してすべての効果 (損害 賠償,違約罰等)を否定す るか,又 は,契約を維持 したまま損害賠償を請求す るかは,当該買主の選択 に委ね られていた といわれ る (以上の指摘 は
,Rabel , op. °i t .
(注40 ),S. 4 30
によ る。 また,Tre i t el , op. ° i
t.(注10 ) ,§ 28 8
も,一 時期 の アメ146
商 学 討 究 第4 3
巻 第1・2
号( 3 ) ULI S 及 び CI SG が,解除の効果 は遡及的 ( ex t une) か将来的 ( ex nunc) か という議論に深入 りす ることを回避 させたのは,条約起草上の次の
ような方法に一因すると考え られ る。すなわち, UNCI TRAL の代表たちは, 現実の状況を見据えて典型的な実務上の問題に対す る共通の解決策を兄い出す よう努め,様々な法体系に伏在す る先見要因 ( predi sposi t i ons) を関心か ら 遠 ざけよ うとした とい うことである
117)。また,解除が遡及的又 は将来的のい ずれの機能を持っかを 「 一般論 として」説 くことの実益に疑問が向け られてい たことも特筆 され るべ きであろう。その意味す るところは,次のような点にあ る
。すなわち,解除の持っ効果の一つ として,当事者たちを将来の主たる義務 か ら解放す るという意味において,解除は疑いな く将来的に機能す る一方,当 事者相互に原状回復義務を負わせ る点においては,一定の遡及効を持っの も真 理だとい うことである
118)0( 4 ) さらに,解除により,履行を怠 った者 自身 も契約上の義務か ら解放 され るとはいえ, ここでいう義務 とは 「 履行」義務に限 られると解釈することも可 能である。すなわち,損害賠償義務までが解除により排斥されると解す る必然 性 はない
119)0リカにおいて,権利 を害 された当時者 は解除 と損害賠償 とを選択 しなければな らな いとの観念が,広 く流布 していた ことを認 めている)。 ただ し,同 じコモ ン ・ロー 法系 にあ って も,英国法 は,権利を害 された当事者が解除 と損害賠償 とを選択 しな ければな らない との理論 に影響 されなか った。すなわち,解除 とは,当事者 らによ りな された引受 を履行す るとい う,将来 の第一 次 的義務 のみを終了 させ るとと も に,僻怠 ある当事者 に損害賠償 の支払 とい う二次的義務 を負わせ る もの と考え られ て きた
( Trei t el , op. ° i t .
(注1 0 ) ,§288) 0
一方,フラ ンス法 は,解除 と損害賠償 とが「両立 しない」救済であ るとの見解 と, 終始,無縁であ った。民法典 は,解除権の行使が損害賠償 と共 に可能である旨を明 定 し
( 11 84
条2
項),損 害 の算 定 も通 常 の基準 に従 って行 わ れ る こ とで足 りる( Trei t e l , op. °i
t.(注1 0 )
,§288)
。 す なわ ち, わが国で も夙 に指摘 され るとお り, フラ ンス法上,解除 と損害賠償請求 との関係 とい う 「ドイツ民法 とスイス債務 法 とにつ いて は,あれ ほど議論 され るこの問題 は,格別議論 の対象 とされて いない」のである (我妻 栄 『債権各論上巻
』 ( 1 95 4 )1 44
貢)。11 7 )Kas t e l y, op. °i t .
(注37 ),p. 649 11 8 )Trei t el , op. °i t
,(注1 0 ),§2 82
11 9 )Tre i t el , op. °i t .
(注10 ),§2 82;Herber/Czerwenka, I nt ernat i oI l al esKauf ‑
rec ht, 1 991 , Art. 81, Rn. 2
:なお,すで にULI S
に即 して,Ⅴ. Caemmerer, op. °i
t. (注11 6 ),S. 1 34
0「ウィーン売買条約」(
CI SG)
における契約 目的の実現と,契約か らの離脱(2・完) 147
こうした考え方を裏付 けるのは,解除の結果 として生ず る 「 契約上の義務か らの解放」 と 「 損害賠償」 との機能領域の峻別である。すなわち,契約解除に 固有の効果 とは,相手方か ら約定 どお りの履行を受 け られず,契約に拘束 され る利益を失 った当事者が,当該契約関係か ら離脱 して行動の自由を回復す るこ とである。 この ことに伴 って,契約上の義務か らの解放 と履行済給付の清算が 行われる。 ここでは相手方の帰真性 は問題 とな らず,客観的な義務違反状態 に 基づ く契約上の利益の欠落が, 「 義務か らの解放」 と 「 清算」 とい う効果を も た らしている。そ して,履行を受 け られなか った当事者 にそれを超え る損害が 発生 した場合, ここで初めて,相手方の帰責性を要件 として 〜 CI SG において は 「 免責事由の不存在」 とい う消極要件のかたちを採 る ( 79 条)〜,その賠償 請求が認 め られ るのである1 2
0) 。このよ うに,履行義務 の消滅 と損害賠償がそ の趣 旨及び要件を異にす ると解せ るな らば,解除によ り消滅す るのは履行義務 のみであって,損害賠償義務が解除にかかわ らず存続す ることを妥当視 させ る
ことにもなろう
。1 20 )Honnol d, op. °i
t.(注10 ) ,§§ 253‑258
は,代表的な法圏を取 り上 げて,解除の 要件 としての帰責事由の位置付けを論 じている。 フランス, ドイツ及び英米の各法について,その概要を整理す ると次の とお りである。
まず, フラ ンス民法
( 11 84
条) に基づ く解除は,履行 における慨息が債務者 に「帰せ られ」
( i mput abl e
),又 は,当該債務者がその 「責を負 う」( res ponsi bl e)
とき認め られる。つま り,フオー トが損害賠償責任の要件であるとき,それは同時 に解除の要件で もあ る。 この ことは,11 84
条が,不履行 を被 った当事者 に解除 と 損害賠償の両方を許容 している事実か ら明 らかである。 もっとも, フオー トなき解 除があり得ないわけではない。例えば,売買 目的物が契約取消 し( redhi bi t i on)
に値す るよ うな欠陥を帯 びてお り,それが売主のフオー トによ らないとき, ここで の取消 しは損害賠償請求を伴わない点を除いて解除に類似す る (§ 254)。
次に
,BGB
において双務契約の不能の効果を規律す る325
条 は,不履行を被 っ た当事者 に損害賠償請求か契約解除かの選択を認めるが, これ らの権利は,不能が「債務者の責 に帰すべ き [状況]」 (
denerz uvert re t enhat)に基づ く場合 に
与え られ る。ただ し,ここで意味され るところの「帰責性」は故意 ・過失 より広 く, 過失がな くて も 「貢を負 うべ き」( re sponsi bl e)場合 は存在す る。例えば,種類
物の売主 は,いわゆる主観的不能において も,当該商品がいずれかの地で入手可能 である限 り損害賠償の責を負い( 27 9
条),そこでは同時に買主の解除権 も発生す るであろ う。 さらに,売買契約の目的物 に;畷癌があるとき,売主 は,その ことのみ1 4 8
商 学 討 究 第43
巻 第1 ・2
号また, こうした理解 は,一般 に解除に伴 う損害賠償 といわれ る範 囲を二つの 要素 に分化 し,その各 々を別異の要件の下 に規律す るとい う構成 とも連な る。
すなわち,解除に基づ く原状回復的清算 と,それを超え る賠償請求がそれであ り,前者 は契約 に留 まる利益の欠落 に基づ く解除に伴 い認 め られ る一方,後者 は債務者 に免責事 由が存在 しないことを要件 として行われ る
121)。こうした CI SG の規律 によれ ば,損害賠償 の請求 は 「 解 除 に際 して」 「 解 除 と並んで」行使 され る救済であるものの, 「 解除の効果」ではない。 この理 解 は,解除 と損害賠償 とを択一的関係 と捉え る誤謬か ら免れ る重要 な契機を堤 供す ることになる
。4
小 括( 1 ) CI SG に定 め る解除の効果 は, 簡潔 に して理解が容易であ る。 す なわち、
解除の 目的は,当事者 を契約上 の義務か ら解放 して行動の 自由を回復 させ ( 81 条 1 項),当事者双方 に巻戻 し的清算義務 ( 原状回復義務)を負わせ ることで
を理 由 として損害賠償の責を負 うことはないが,買主か らの解除
( Wandel ung)
及 び代金減額( Mi ndel ung)請求 に服す る可能性 はある。 これ と同 じ考え方 は,
遅滞( 326
条)及び積極的契約侵害 に基づ く解除 にもあてはまる (§ 255)0
一方,英米法上,債務者の過誤
( f au
lt) は解除の要件で はない。確か に,故意 又 は過失 による違法行為 という意味における過誤がないとき, 「損害賠償責任を発 生 させ るべき契約違反」は存在 しない。 しか し,過誤がなければ解除 も排斥 され る とい うわけで はな く, 「履行の不成就」 ( f ai l urei nper f ormance )
とい う事実 によ り解除権 は発生す る (§257)。
以上 に瞥見 された ところは,次のように要約 され る。すなわち,帰責事 由の存在 とい う要件が損害賠償請求にあた り求め られるにせよ, この ことは必ず しも解除に ついては妥当 しない。 この二つの救済 は,効果をまった く異 にす る。すなわち,不 履行 に免責事 由があれば,当該当事者 は相手方の損害賠償請求か ら免れ るものの, 解除が他の規定か ら正当祝 され るな らば,それは可能 とい うべ きである。 こうした 視点,すなわち,損害賠償 と解除の要件の間に必然的なっなが りはないとい う考え 方を明示 したのが,まさ しくULI
S
及 びCI SGである ( § 258
)01 21 ) Huber, Di e Recht sbe hel f e der Part ei en, i ns bes ondere de r Er t i l l ungs‑
ans pruch, di eVert ragsauf hebungundi hreFol genmachUN‑Kauf recht
i m Vergl e i c hzuERG undBGB, i n:Schl echt ri em ( hrsg . ), op. ci t . (
注22 ) ,
S. 208f f
.「ウィー ン売買条約
」( CI SG)
における契約 目的の実現 と,契約か らの離脱(2・完) 149 あ り ( 8 1 条 2 項),かつ,それに尽 きる ( 前 出 Ⅲ1)
。そ して ,8 2 条か ら 8 4 条
までは, こうした清算 に付随 して生ず る諸問題 を解決す るための規定である ( 前出 Ⅲ2)
。いわば解除の機能 は,挫折 した契約の清算 とい う価値中立的な 目的に奉仕す ることであ り,それは,解除が遡及的,将来的のいずれの方向に 機能す るか とい う ドグマによ り説明され得 るものではない。
(2)
また,解除の効果 は,相手方の非難可能性を要件 とす る損害賠償 と規律 領域を画 され る。確かに ,8 1 条 1 項 においては,解除によ り当事者が義務か ら 解放 され る際 も,損害賠償 は留保 され る旨が明示 されている。 しか し, この文 言 によ り,損害賠償が 「 解除の効果 として」生ず ると解す る必然性 はない。す なわち,解除の要件 は債権者が契約 に留まる利益の欠落である一方,損害賠償 の要件 は客観的義務違反状態の発生 と債務者の免責事 由不存在であ り,また, 前者の効果が契約上の義務か らの解放 と原状回復である一方,後者の効果 は, それを超えてなお も残存す る損害の填補である ( 前 出 Ⅲ3)
。( 3) その結果, 「 解除」 と 「 損害賠償」 との関係 に対す る CI SG の立場 は 明快 となる。すなわち, この二つの救済 は併せて行使す ることが可能であ り, 両者 は要件を異 にす る
。こうした帰結 を導いた背景 は, CI SG が解除による契 約の遡及的消滅 とい う概念上の桂棺か ら逃れ,解除によって も,清算 とい う目 的の範囲内で原契約 の「 枠組み」 が存続す ると構成 した ところに求 め られよ う。
また,一般に解除に伴 う損害賠償 として理解 されて きた範囲が,解除に基づ く
原状回復的清算部分 と,それを超え る賠償部分 とに分離 され ることも, CI SG
の構造か ら明確 に読み取れるに至 った といえよう ( 前 出 Ⅲ 3)
0150
商 学 討 究 第43
巻 第1・2
号Ⅳ むすびに代えて
(1)
本稿及 び前稿 において筆者 によ り解明が試み られて きたのは,契約違反 を規律す る CI SG の規定の枠組 みであ った。そ して,前稿では,英米 ( 主 と
して英国) コモ ン ・ローと大陸法 ( 主 として BGB)における契約の法的保障 機構を二つのモデル として, これ との対比 とい う角度 か ら CI SG の契約違反 規定,すなわちその全体的構造,並びに,履行請求,契約解除,損害賠償及び 環庇担保責任 といった個別的制度の概要 と特徴を把握す ることが意図 された。
それを承 けて, 本稿 においては, 契約違反が発生 した際の, 本来的履行保障 [ 契 約 目的の実現] と,解除 [ 契約か らの離脱] とい う脈絡を念頭 に置 き,前稿 と
はやや異なる角度か ら, CI SG 契約違反規定の構造をいっそ う精確 に把握す る よう試み られた。
以上 に考察 された ところか ら, CI SG において予定 された契約違反規定の構 造が,次のよ うに読み取れるであろ う1 2 2 )。
( 2) CI SG における契約違反の意義 は , 「 売主 ( 45 条)又 は買主 ( 61 条)が,
契約又 は条約 に定め られた義務を履行 しないこと」であ り,そ こか らすべての
法的救済が発生す る。その基本的な様式 は,債権者がなお も契約本来の履行を
請求す るか,又 は, もはや契約 に留 まる利益がない と見て契約を解除するかで
あり,そのいずれ と共 にせよ損害賠償を求めることができる。ただ し,契約違
反を犯 した債務者が免責の立証 に成功 した とき ( 7 9 条),この債務者 は損害賠
償の責を負わず,そ こでは債権者にとって,本来的履行の確保か契約か らの離
脱かの選択のみが残 ることになる。 この ことか ら,一つの重要な帰結が導かれ
1 22 )
前稿以来の考察か ら得 られた ところは, さ しあた りCI SG
契約違反規定の理解 に とどまる。また,CI SG
の主たる規律対象 は,あ くまで 「事業者 間」における 「市 場性ある」
「代替物」の 「売買」契約であ り, これ と私法の一般法たる民法債権法 との比較が どの程度許 され るか,検討課題 として残 されていることに照 らす と (こ の趣 旨の指摘 につ き,岡 孝 「明治民法 と梅謙次郎」法学志林88
巻4
号 (乎 3) 3
頁( 2 7
頁以下)を も参照), ここで 日本法 との関連 を軽 々に論ず ることは慎 むべ き であろ う。 しか し,筆者の将来の検討 に向けた覚書 として,以下では若干の指摘を 注記す ることを許 されたい。「ウィーン売買条約
」( CI SG)
における契約 目的の実現と,契約か らの離脱(2
・完)1 5 1 る。それは, 「 本来的契約 目的の実現」‑ 「 契約 に留 まる利益の欠落」‑ 「 契 約か らの離脱」 とい う一連の救済 システム と損害賠償 とが,機能領域を異 にす るとい うことである。言い換えれば,履行保障 と解除は債務者の帰責性の有無 と無関係の領域,すなわち 「 客観的契約違反」状態の効果である [ ‑以下 ( 3 ) で ま とめ る]一 万 1 2 3 ),損害賠償 は帰責事 由の存在 〜 CI SG に即 した表現を使え ば 「 免責事 由の不存在 」( 7 9 条)〜を要件 と してい る [ ‑以下 ( 4 ) で整理す る]
ともいえよ う
。その各領域 の仕組みをやや詳 しく見 ると,次の とお りである。
(3)