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論文内 容の要 旨

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Academic year: 2021

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氏名・(本 籍)

学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件

学位論文題目

蛭  田  陽  一 (福島県)

工  学  博  士

工博甲第  23  号 昭和60年 2 月21日 学位規則第5条第1項該当

電子科学研究科 電子材料科学専攻 WO3系蒸着膜の光吸収スペクトル 論文審査委員(霊貝毒)萩野 賓

教 授 山田 祥二  教 授 野上  稔 教 授 熊川 征司  助教授 山口十六夫

論文内 容の要 旨

WO3系蒸着膜(WO8,MoO3,MocW卜CO3各蒸着膜)は電圧印加により着消色するェレクト ロクロミズムを示す。このエレクトロクロミズムを利用すると小型・軽量で低消費電力の表示素子 を実現することが可能である。現在エレクトロクロミズムを利用した表示素子(ECD)は一部実 用に供されつつある。しかし,その着色機構については完全な解釈がなされないままになってい る。

本研究はWO3系蒸着膜の着色機構を明らかにすることを目的としてWO3系蒸着膜の光吸収 スペクトルについて,注入電荷密度依存性及び温度依存性を調べたものである。

WO3系蒸着膜は電解質中で蒸着膜に負の,電解質に正の電圧を印加するとプロトンと電子が膜 中へ同時に注入され,近赤外あるいは可視域の長波長側に吸収のピrクを持つ吸収帯を生ずる。こ の吸収帯により長波長の可視光が吸収されるため膜は青く又は黒く着色する。WO3系蒸着膜中へ 注入された電子は6価の遷移金属イオンの一部を還元し5価のイオンを生じさせる。この還元され た遷移金属イオンの価電子が隣接する6価の遷移金属イオンへ光学的に遷移するたやに吸収帯が生 ずると考えられている。

MocWl−CO3膜は吸収のピrクがWO3膜やMoOS膜よりも高ユネルギr側に存在するため ECDの材料として用いた場合着色効率の改善が期待される物質である。Faughnan らはMoc Wl−CO膜のMo濃度を変えて吸収スペクトルを調べ,この膜には(1)Mo5+からMo6+,(2)W5十 からW6十への電子遷移の他に(3)Mo5十からW6+への高エネルギーの遷移が存在し,この吸収に より吸収のピークが短波長側へ移動していると推論した。本研究ではMocWl−CO3混合膜の吸収 のピrクの光エネルギr Epの注入電荷密度依存性を調べ,EpがFaughnanの提案した次の式

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(2)

によって定性的に表わされることを確認した。

、r<rの場合

Ep=((1−C)E〟Ⅳ+(C−J)E〝∬)/(1「ご)

エ>Cの場合

Ep=(cE脚+(ユ∵一C)EWW)/ェ      (ii)

ここで∬は混合膜がプロトンの注入によりブロンズHxMoW卜C03を形成しているとした場合の 遷移金属原子数に対するプロトン数の比である。また,E州,EWW,E〝Wはそれぞれ(1),(2),(3)

の遷移による吸収のピrクエネルギrである。E〝ガはMoOa膜のEpを注入電荷密度が0の場合 へ外挿することにより1.45eVと見積ることができる。同様にEWWはWO3膜のEpの値から 1.30eV と見積られる。これらの値をEpの式へ代入することにより E〟Ⅳ=2.06eV と求められ る。また,Mo5+ とW6十のエネルギー準位の差は0.76eV と求まった。混合膜の吸収スペクトル を更に詳しく調べた結果,(i),(ii)式では表わされない吸収成分が存在することが明らかとなった。

この吸収成分をT一成分と呼ぶことにする。T一成分はMoO3膜中にも存在し,1,500C/cm3 よ りも高い注入電荷密度で顕著になって来る吸収成分であることが明らかとなった。T−成分はWO8 膜には存在せず,従ってT一成分はMo原子と関連した吸収成分と考えられる。

混合膜の光吸収に関するFaughnanのモデルが成立することを確認し,更に吸収に関与する電 子の状態を明らかにするために吸収スペクトルの温度依存性を調べ解析を行った。透過率を80K,

173K,273Kの各温度で測定した結果WO8系蒸着膜の吸収スペクトルは僅かに弱く温度に依存 していることが明らかとなった。吸収スペクトルの温度依存性を詳細に調べるため温度変調分光法 による測定を行った。温度変調分光より得られる情報を用いて吸収スペクトルを解析する新しい方 法を考案し測定結果に適用した。その結果,吸収に関与する電子は格子との相互作用によりスモr ルポrラロンを形成していることが明らかとなった。また,ボナラロンの束縛エネルギー Ⅵ′p及 びフォノソエネルギー方叫を決定することができた。MoO3膜ではWp=0.72eV,ろ叫=0.10eV であり,WO8膜ではⅥ′p=0.62eV,方叫=0.14eVであった。混合膜の場合はェ<Cのとき,Ⅳp

=0.71eV,hwo=0.10eVであり,X>Cのとき,Wp=0.63eV,hw。=0.14eVであった。この様 にMocWl−CO3混合膜の Wp及びhw。の値をWO3膜及びMoO3膜の値と比較すると,X<C ではMoO8膜とほぼ等しく,J>CではWO8膜とほほ等しいことが分る。このことはごくCで は(1)の電子遷移により,.ご>Cでは(2)の電子遷移により吸収帯の低エネルギr領域の吸収が生じて いることを示している。

本研究により WO3系蒸着膜の光吸収スペクトルに関するFaughnan のモデルを、確立するとと ができた。また,電子がスモールポーラロンを形成していることが明らかとなった。温度変調分光 法をWO3系蒸着膜に適用したのは本研究が初めてであり,温度変調分光法が薄膜の吸収スペクト ルの温度依存性を調べる有力な方法であることが分った。

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参照

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