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― ― 中国の対アフリカ直接投資の動機分析

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(1)

中国の対アフリカ直接投資の動機分析

―製造業企業の対アフリカ投資を中心に―

苑 志佳

【要約】

21

世紀に入ってから,中国が積極的に対アフリカ投資を増やしている.中国資 本の対アフリカ進出について,世界から様々な評価,関心,批判が出ている.こ れらの論点には,ネガティブなものが多い.中国資本の対アフリカ直接投資の動 機は一体,何であろうか.本稿の目的は,中国の製造業企業の対アフリカ直接投 資の動機を明らかにすることにある.本稿では中国企業の対アフリカ直接投資の 動機について,主にプッシュ要因とプル要因にわけて検証する.分析を通じて下 記の点が明らかにされた.

1 )

中国企業の対アフリカ直接投資を決めた要因には経 済的合理性を追求するものが圧倒的に多い.

2 )

国有企業の対アフリカ直接投資の 動機には,プッシュ要因が比較的多い.

3

民営企業の対アフリカ進出動機には,

プル要因が比較的多い.

4 )

中国企業によるアフリカ進出へのネガティブな批判に は,根拠に基づかないものがあることがわかった.

【キーワード】

 中国,対アフリカ直接投資,走出去,プッシュ要因,プル要因

I はじめに

かつて「貧困大陸」や「紛争大陸」といったネガティブなイメージで捉えられ がちであったアフリカは,いまや「地球上最後の巨大市場」

「資本主義最後のフロ

(2)

ンティア」といった,主に資源開発や経済成長をめぐるポジティブなイメージで 語られるようになった.経済産業省が作成した『通商白書』

2016

年版には,アフ リカの市場将来性について,下記の説明がある.

「アフリカ全体としては,豊富な

天然資源を有し,人口

10

億を抱え,インドと同程度の規模を持つ将来性ある地 域である.今後,アジアなどの他の途上国の人口増加が鈍化していく中,アフリ カ地域は着実に人口増加が続き,

2050

年には

20

億人を突破するとの予測もある.

また,過去

5

年の経済成長率は約

5

で推移しており,今後,巨大なアフリカ経 済圏の形成が期待できる.天然資源については,プラチナ,クロム,銅などの鉱 物資源の他,原油,天然ガスも埋蔵・産出されており,こうした多種多様で豊富 な天然資源は,諸外国への輸出が期待されるだけではなく,将来的な産業の立地 にも有利に働くことが予想される」1

そして,

2000

年代に入り高い経済成長が続くアフリカは,更なる経済発展が期 待されると同時に,中国の積極的な経済関与が注目されている.上記の『通商白 書』には,中国など諸外国の対アフリカ投資・貿易に対して下記のように高い関 心を示している.

「アフリカは潜在性あふれる世界最後のフロンティアとして世界

各国が注目している.特に投資については,欧州,米国,中国が積極的に対アフ リカ投資を増やしており,我が国は大きく水をあけられている.フランス,米国 及び英国の直接投資残高は我が国の約

5

倍である.特に中国は,道路や鉄道敷設,

港湾や工業団地建設等のインフラ投資に積極的に取り組んでおり,アフリカでの 認知度も高まっている.これに対して我が国は,アジアなど他地域に比べてアフ リカへの進出度合いは未だ成長の余地があり,現状での我が国企業のアフリカ進 出拠点数は,我が国企業の全世界進出拠点数の

1 %

未満である

(アジア・大洋州

への進出拠点数は全体の

70

超).今後,我が国も競争力のある分野について,

M&A

なども活用し大胆に進出することで,アフリカでのプレゼンスを徐々に高

めていくことが重要である」2

アメリカのコンサルティング会社のマッキンゼーの調査研究グループは

2017

年,

8

つのアフリカ主要経済国

(この 8

カ国の合計

GDP

はサハラ以南アフリカ

1

『通商白書』 2016

年電子版

( http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2016/ ).

2 同脚注1.

(3)

3

分の

2

を占める)を選んで研究したところ,アフリカで投資・事業着手した 中国企業は

1

万社超え,事前予想の

4

倍に上った.

1

万社のうち約

90 %

は異なる 規模で業務を多角化している民営企業で,その

3

分の

1

は製造業企業でなる.こ のような中国企業がアフリカ大陸に持ち込んだ資本,経営知識,創業精神は,ア フリカの各国の経済発展を加速した.過去

10

年間に中国とアフリカの経済協力 は急速に発展し,貿易総額は毎年

20 %

前後の急成長を遂げ,外資企業直接投資 の増加率は

40

に達した.非公式の資金流動を含めると,中国からアフリカへ 向かう資金は公式データを

15 %

上回る.中国はアフリカ各国の発展援助の一大 資金源となり,資本注入度は持続的に伸びている.また,中国はアフリカ最大の インフラ向け融資国で,近年はアフリカの大規模インフラ建設プロジェクトの背 後には,ほとんど中国の投資家の影がみられる.

他方,中国の積極的な対アフリカ進出について,世界から様々な評価,関心,

批判が出ている.これらの論点には,ネガティブなものが多い.つまり,政府の 後押しを背景に中国企業によるアフリカへの進出は,アフリカの天然資源の略奪,

現地人労働者への搾取,人権の無視などを伴う

(後述).さらに,中国の対アフリ

カ直接投資への極端な批判には,かつての植民地主義の性格を有する,という感 情論的なものもある.ところが,中国企業によるアフリカへの進出に関する客観 的な調査,分析が非常に少ない.はたして中国企業の対アフリカ進出の動機は一 体,何であろうか.本稿の目的は,中国の製造業企業によるアフリカへの直接投 資に関する動機を明らかにすることにある.

II 中国の対アフリカ直接投資をめぐる議論

(1)   「新植民地主義」論

「新植民地主義」論を主導する人物は,マイケル・ガーソン氏である.

米紙ワシ ントン・ポストのコラムニストで,ジョージ・

W ・ブッシュ大統領のスピーチラ

イターでもあったマイケル・ガーソン氏が,

2011

3

30

日の寄稿で,中国の アフリカでの投資を「新植民地主義」と批判している.ガーソン氏はまず,中国 の援助で議会やサッカー・スタジアムなどが建てられているマラウィの様子を指

(4)

摘した上で,こうした見てくれと言わんばかりの投資は,アフリカ諸国の政府の 関心を買うためだと指摘した.中国の動きは新植民地主義であり,経済資源を確 保し,中国製品の輸出市場を確保するのが目的だと分析している.その悪影響と しては,内政不干渉主義をうたう中国との協調は民衆の弾圧に好都合なほか,中 国による天然資源採掘の要請で単一資源に依存する脆弱な経済構造が強まる.ま た中国からの製品輸入は現地国の経済発展の機会を奪うことになる.ガーソン氏 は,アフリカ諸国が必要なのは,アメリカがこれまで推し進めてきた自由貿易や 民主化,政治の安定であって,アメリカが内向きになって援助を怠れば,さらに 中国の進出が強まると論じている.途上国に発展の術を伝えるのも先進国のある べき姿であろうが,利己的な対外政策をとる中国はいまだ大国の責任を果たす役 にあるとはいえない.また,途上国支援でも欧米の役割は依然大きいが,アメリ カでは財政健全化の議論の中で対外援助の削減を提案する声も出ている状況であ 3

そして,上記の対中国批判が,政治・外交レベルまでにもみられた.アメリカ 元国務長官のクリントン氏が「外国人がアフリカにやってきて,天然資源をもち 去り,指導者にお金を払い,立ち去っていく.現地を離れる際,アフリカの人々 にはあまり多くを残さない.アフリカで新たな植民地主義が現れることは望まな い」4 として,新植民地主義を振りかざす危険な国家として中国を非難するまでに 至った.さらにクリントン元長官の発言に代表されるように,欧米諸国側は「中 国政府によるアフリカへの投資は常にアフリカの人々の利益を考慮しているもの ではなく,中国当局が主張する他国の内政に干渉しないなどの政策はクリーンな 政治体制の実現にマイナスの影響をもたらす」とも批判している.

上記のような議論はいうまでもなく感情論的な色彩がかなり濃い.では,

「新植

民地主義」とは,どのようなコンセプトであるか.一般的な概念として,下記の 定義が挙げられる.つまり,

「新植民地主義とは,先進資本主義国が植民地主義の

新たな形態として採用したものである.これは植民地であった諸地域に名目上の 独立を与えながら,実質的に旧来の支配を続けようとする政策であり,とくにア

3

「アフリカで展開する中国の新植民地主義」( https://the-liberty.com/ ).

4

2011

6

月のアフリカ訪問に際するクリントン元米国国務長官の発言.

(5)

フリカにおいて顕著であった.すなわち,以前の植民地主義を表面的には否定し ながら,経済援助などの名目で支配・従属関係を再編成しようとするのである」5

したがって,「新植民地主義とは,旧植民地における植民地搾取を新しい方法に よって維持しようとする政策であるとされ,その新しい方法として,軍事同盟の 締結,軍事基地の取得,経済援助,さらに傀儡政権の樹立などが含まれる」6

.つ

まり,「新植民地主義」にあたるポイントは,「搾取」と「支配」である.はたし て中国の対アフリカ直接投資の場合は,これに当てはまるか.アメリカン大学国 際関係学部教授デボラ

( 2010 )

は,中国の対アフリカ投資について,下記のよう に指摘している.

「中国のアフリカ進出について,

欧米には「ネオ・コロニアリズ

(新植民地主義)」との批判があるが,

私はその議論にはくみしない.まず,新 植民地主義という概念は政治的な支配関係を指すものだが,中国は,アフリカ諸 国を政治的に支配するために経済力を使ってはいない.新植民地主義には,経済 的にも自立できずに,資金面などで旧宗主国への依存が続くといった意味合いも ある.製造業が発展せず,天然資源頼みから抜け出せないような状態だ.しかし 中国は,アフリカでの製造業や,セメント,建築資材などのインフラ業界への投 資に関心を持っている.ネオ・コロニアリズムと呼ぶのは単純すぎる.実際, フリカ各国の政府レベルでは,中国の進出について良いイメージが持たれてきた といえるだろう.中国が新たな選択肢になっているからだ.アフリカ側は,西欧 諸国からの

(人権尊重といった)

条件付き援助を好まず,もう少し尊敬の念をもっ て接して欲しいと願っている.アフリカの普通の消費者も,中国からの輸入でよ り安い商品が増えたことを歓迎している」7

(2)   「資源略奪」論

中国企業,とりわけ資源分野の企業による対アフリカ進出について,

「中国によ

るアフリカ資源の獲得・争奪」という議論もある.アジア経済研究所

( 2009 )

5 斉藤 孝

(2010) 『日本大百科全書』小学館の内容による.

6 同脚注

5 .

7 デボラ・ブローティガム

( 2010 )「中国のアフリカ援助をめぐる 4

つの誤解」(

http://

globe.asahi.com/worldeconmy/100920/01_02.html )

(6)

報告書は,その冒頭で下記の記述がある.

「最近中国がアフリカに急接近している

のは,慈善的な理想主義とはほとんど関係がない.それは,急成長する自国経済 と,その輸出品に対する新しい消費者市場に対応するために,必要不可欠な原料,

とくに石油および鉄鉱石にアクセスすることを最大の関心事としているからであ る.

21

世紀の終わりまでに原料の輸入を加速する必要に直面しているため,中国 の政策決定者は全地球規模でのエネルギー・資源の分散供給を確保するための戦 略的決定を行った.その方針は

2001

年の

9 11

危機によって加速した.なぜな ら,

9 ・ 11

によって,不安定な中東の石油供給に

60 %

以上を依存する中国の政策 の偏りが明らかになったからである.これを受けて中国の政策決定者は「積極的 に買いに行く」政策に舵をきった.当初は,新しい原料供給先を確保するため中 国の石油・資源企業が,アフリカ,中央アジアおよび南米へ赴くという戦略が重 視された.中国がアフリカのような地域にまで政治・経済的な触手を拡大してい るのは,国内の経済開発が喫緊の課題であるという焦りを,色濃く反映してい る」8

.また, 「中国は自国自身が比較的豊富な資源国であるが,急速な経済成長に

伴う需要増に対応できず,資源不足が生産活動のボトルネックになると懸念され ている.海外の資源権益などを掌握し,需要増に対応できるだけの資源調達ルー トを積極的に開発する動きの一環というわけである」(横山,

2010 ).

そして,

「中国のアフリカにおける資源確保は,原油や銅,金,

ニッケルなどの 地下資源から,綿花や木材にも及んでいる.石油やレアメタルなど資源開発を担 うような民間セクターの欠如によって,中国政府が直接,鉱区を買収し,試掘し,

輸出するプロセスを担わねばならず,そのような他の先進国であれば企業活動と なるような業務が政府によって担われていることで国家元首らの動きや外交活動 が世界的に注目を集めることとなっている.中国の活発な資源外交の背景には中 国内の資源需要の増加があり,それに対応して,新しい資源産地へアクセスする 必要にせまられた状況がある.これに加えて,今後世界的に原油資源の獲得競争 が激化する見込みであることや,ナイジェリアなど一部の大規模産油国での供給 体制に不安が生じたことで,原油価格が高騰し,世界中で資源探査,試掘が進め

8 アジア経済研究所

( 2009 )『アフリカにおける中国―戦略的な概観』アジア経済研究

(7)

られるようになったことも背景にある.原油ばかりでなく,金,銅,ニッケル,

アルミなどの金属資源からレアメタル,レアアースについてもアフリカでは資源 獲得の競争が拡大している」(吉田,

2007 ).

以上のように,中国企業による資源獲得目的の対アフリカ直接投資については,

西側先進国では中国に対する批判が多い.つまり,多様な側面を持つかのような 中国のアフリカ進出が究極的には資源獲得目的のものであり,民主主義や国際協 定を無視し,アフリカ各地の独裁者と結びついて推し進められているとするもの である.これに対して中国はアフリカ諸国の資源の豊富さを持続発展可能な経済 力に変える支援をしており,それによってアフリカ諸国は経済力と生産技術をアッ プさせているとする主張がある.前掲の吉田

( 2007 )

も中国の対アフリカ投資を 下記のように述べている.

「新植民地主義の見方は資源獲得の場ではリアリティを

持つ側面もあろうが,アフリカの資源にアクセスしようとしているのは中国だけ ではない.アフリカの資源はアメリカ,インド,日本を含めて,多くの大消費国 の関心である.実際,スーダンのナイル流域原油開発公社

( GNPOC )

の立ち上 げに中国の石油天然ガス集団

( CNPC

と共に関わったのはカナダ企業であった が,その撤退した後にはインド政府石油公社

( ONGC )

が参入している.資源獲 得と経済協力を同時に進める方法は中国に限ったことではなく,他の輸入国との 間でも行われている」(吉田

( 2007 ), 30

頁).

(3)   「労働力搾取・過剰生産力輸出」論

周知のように,これまで中国は豊富な労働力という比較優位を生かして,労働 集約型製品の輸出を伸ばす一方で,機械や部品など資本・技術集約型製品を海外 から輸入してきた.しかし,労働力が過剰から不足に変わるにつれて,中国の比 較優位は労働集約型製品から,資本・技術集約型製品にシフトしていく.その一 方で,直接投資の面では,中国における比較優位の変化は,賃金上昇や為替レー トの上昇を通じて,労働集約型産業の海外への移転を加速させている.中国発の 国境を越える産業再編は,賃金コストの安い東南アジアの国々や,アフリカなど の新興国にとって,直接投資の流入をテコに工業化を加速させる好機となろう.

中国国内の人件費上昇,中国市場が飽和状態にあることなどが進出の理由である

(8)

が,巨大になる可能性を秘めたアフリカの消費マーケットに向けての先行投資と いう意味合いもある.結果として,アフリカに多くの中国企業が進出している.

ところが,企業の多国籍的展開に関する古典的な説明には,バーノンのプロダ クト・ライフ・サイクル論がある9

.バーノンは,

資本や技術そして経営管理技術 の保有において,絶対的な優位性をもっていた,米国ベースの多国籍企業の行動 原理を,プロダクト・ライフ・サイクル理論をもって解明しようと努力した.バー ノンによると,新製品は

〔導入期→成長期→成熟期→衰退期〕

というライフサイク ルをたどると考えられる.このようなサイクルを,プロダクト・サイクルまたは プロダクト・ライフ・サイクルという.バーノンは,プロダクト・ライフ・サイ クルを

3

段階に分類し,製品が成熟期に達すると,価格をめぐる競争が激化する ため,企業にとっては海外における低コスト労働力の利用が魅力的になる.しか しながら,企業にとって海外生産は国内生産とは異なるリスクを負担することに なるため,労働コストの低さだけでは直接投資による海外生産の決め手にはなら ない.さらに製品が標準化される段階に達すると,生産技術は陳腐化し,海外に おいても模倣品や類似品の生産が行われ,革新企業としての地位が脅威にさらさ れることが直接投資の引き金になる,とバーノンは主張する.その結果として,

海外での生産が開始されると,やがて海外生産が本国での生産を上回るようにな り,製品は本国へ逆輸出されるようになる.このように,バーノン理論の最大の ポイントは,企業が常に効率を求めてその市場戦略を策定する.自国市場の飽和 もしくは労働力コストの上昇という企業の経営効率を影響する条件が多く現れる と,企業は自然に新興市場および低コストの海外へ進出する.多くの中国企業の 対アフリカ投資の動機について,上記のバーノン理論は説明できると考えられる.

しかし,上記の理由によってアフリカへ進出した中国企業の行動にも多くのネ ガティブな評価と批判があった.

「そもそも中国企業の海外進出は,純粋な企業活

動の動機というより,中国政府の政策意図を大きく受けた面が否定できない.実 際,中国政府は

WTO

加盟を控えた

2000

年頃から対外的な競争力強化のために,

9 バーノンの

PLC

理論が最初に下記の出版物に現れた.

Vernon, R. 〔 1966 〕 “Interna-

tional Investment and International Trade in the Product Cycle”, Quarterly

Journal of Economics,. pp. 190–207 .

(9)

「走出去 (世界進出)」のスローガンの下で企業向けに各種の奨励策を整備してい

る.従前,「世界の工場」 と位置づけられてきた中国だが,外資系製造業にとって は自国への輸出という市場が存在するのに対して,中国系製造業は「低価格・低 品質」で大量生産したものを,国内市場だけで吸収しきれず,アフリカなど販売 先市場を確保する必要があるためだ.また,海外拠点の設立や海外企業の買収も 同時に進められている」10

(4)   「有益な投資」論

これまで説明したように,中国による対アフリカ投資に関してはネガティブな 議論が圧倒的に多い.一方,中国の対アフリカ直接投資に関する肯定的な意見も 若干ある.丸川

( 2007

は,中国の対アフリカ直接投資の形態として,

( 1

資源開 発投資,(

2 )

政府開発援助,(

3 )

中国国有と民間企業の進出,の

3

つを取り上げ た.そのうち,(

2 )

の政府開発援助がもっとも注目された.つまり,中国政府援 助の中身は,医療,教育,人材育成などに力を入れていく方針を示している.ま た,アフリカに「境外経済貿易合作区」を作るという構想も含まれている.これ は中国企業を主な対象とする工業団地を造成する計画である.

「いまや中国の方が

日本型経済協力モデルに近いことをアフリカで展開しているのである.残念なが らこうした動きを日本のメディアは欧米の尻馬に乗って冷ややかに報じるばかり だが,中国との経済関係がアフリカに輸出拡大など積極的な効果をもたらしてい ることにも注意すべきであろう.中国企業向けの工業団地がもし成功すれば,ア フリカに東アジア型の成長モデルを導入する初めての試みとして大いに注目され ることだろう.その後に及んでも,もしこれを「新植民地主義」と揶揄しつづけ るとすれば,日本が中国や東南アジアで行っていることとの言行不一致を問われ ることになろう」11

そして,アイリーン

( 2017 )

が,中国の投資はアフリカを再形成し,アフリカ を次の世界の工場に変えつつあるとの観点を示したと同時に,中国のアフリカの 製造業における投資額が速やかに拡大していることを明らかにしている.現在,

10 前掲,横山

( 2010 ).

11 丸川

( 2007 )

による.

(10)

中国の民間企業によるアフリカの製造業への投資分野も様々な生産製造分野にま たがり,アフリカ各国の工業化プロセスを加速させる重要な牽引力となっている ほか,アフリカ国家の工業化を実現させ,貧困問題の解決に希望を与える存在に もなっている.また,アフリカに進出した中国企業の多くは,現地企業との協力 形式をとることでアフリカのビジネスエリートを育成し,未来のアフリカ大陸の ビジネス界の中堅人材へと育てていくことを狙っている.さらに,同氏は,工業 化はやりつくされた発展の道であるものの,発展途上国が社会を発展させ,国民 生活水準を高めていく唯一の道であるとの指摘も行っている.

また,前述したマッキンゼーの調査研究グループが作成した調査報告は,アフ リカに対する中国の投資と商業活動が現地に

3

つの経済的な恩恵をもたらしたと 分析した.

1

つ目は,就業の創出と技能の育成である.同研究グループのインタ ビューを受けた

1000

社余りの中国企業の従業員のうち

89 %

がアフリカの現地人 であった.調査によって,アフリカで中国企業が雇用した現地人従業員は数百万 人に上り,約

3

分の

2

の中国企業が従業員へ技能訓練を提供している.

2

つ目は,

知識と新技術の移転である.中国企業はアフリカ各国へ新製品と技術の導入を通 じて,アフリカ市場の現代化を進めた.過去

3

年間で約

48 %

の中国企業がアフ リカ大陸へ新製品やサービスを導入し,

36 %

の企業が新技術を導入した.

3

つ目 は融資とインフラ開発である.中国協力パートナーの最大の価値について聞かれ ると,約

50

人のアフリカ政府職員は,低コストの融資チャネルと大幅なインフ ラ改善という最も重要な

2

項目を挙げた.中国企業の主な優位性については,高 効率なコスト構造と,プロジェクト引渡しが比較的早いことと答えた12

III 中国の対アフリカ直接投資の経緯・段階・現状

これまで,中国による対アフリカ直接投資に関する様々な議論を紹介したが,

これらの議論には,客観的で学術的な議論が少ない.中国の対アフリカ直接投資 は,どの経緯・段階を踏んでここまで進んできたか.その現状はどうか.本節は

12 チャイナネット

( 2017 ).

(11)

これを明らかにする.これまでの先行研究には,中国とアフリカの経済協力関係 の開始から対アフリカ直接投資に至る時期までの各段階を詳細に分析したものが ある.ここでは,

( 2007

の論文を引用する形で上記の点を説明する.

( 2007

によると,中国とアフリカ経済貿易協力の進展過程は,おおむね次の

4

段階に分 けることができる.

1

段階は,中国とアフリカ経済貿易協力の確立と初歩的な発展の段階

( 1949–

1978

年)である.中国成立時,大多数のアフリカ諸国はまだ民族の独立を成し遂 げておらず,中国と貿易取引があったのはエジプト,モロッコなど少数の国々だ けであった.

1950

年代から

70

年代に,多くのアフリカ諸国が相次いで独立する とともに,相前後して中国と外交関係を樹立し,中国とアフリカ経済貿易協力に 良好な政治的基礎を築いた.

1949

9

月に採択された「共同綱領」に定められた 平等互恵の原則は,中国が対外経済関係を発展させるための指針であり,中国が アフリカ諸国との経済関係を発展させるための政策的根拠でもある.

1963

年, 国政府はさらに「中国のアラブ諸国およびアフリカ諸国に対する五つの原則」を 打ち出した.

当時の特殊な歴史的条件のために,中国とアフリカ経済貿易の多くが「非経済 的行為」であり,経済的利益は政治的,外交的ニーズに従属し,それに役立てる ものであった.経済取引は政府間関係に限られ,中国の一方的な援助が主で,二 国間貿易は補助的なものにすぎなかった.また協力分野は狭く,協力の形式も単 一的であった.にもかかわらず,中国とアフリカ貿易は一定の進展をみせ,貿易 パターンは民間貿易から一定規模の政府間貿易へ,商品構造は一次産品中心から 次第に工業製品中心の段階へと発展した.貿易相手国は最初の数カ国のみの段階 から数十カ国へと増え,貿易の支払い方式も覚書方式,バーター貿易から次第に 現金貿易へと変わった.

2

段階は,調整,充実,発展の段階

( 1979–1989

年)である.改革開放政策 の実施にともない,中国政府は対外貿易体制に初歩的な改革を行い,アフリカに 対する貿易政策に関しても調整を行った.

1980

年代初め,中国政府はアフリカ諸 国との経済技術協力について四つの原則を打ち出した.すなわち,

「平等互恵のも

と,実効をむねとし,多様な形式で,ともに発展する」である.これにより中国

(12)

とアフリカ経済貿易協力は調整,充実,発展の段階に入った.

3

段階は,安定的な発展の段階

( 1990–1999

年)である.

1990

年代に入って から,中国政府は引き続き対外貿易体制の改革を深め,市場多様化戦略,品質で 勝つ戦略,

「大経貿」戦略および科学技術による貿易振興戦略を定めた.また,中

ア経済貿易協力を促進するために,次のように具体的な政策を相前後して打ち出 した.すなわち,双方の企業が両国の経済貿易協力により大きな役割を果たすよ う促す.政府貸付や銀行が提供するソフトローンなどの方法で二国間の経済貿易 協力を推進する.請負,労働力などさまざまな方法で協力分野を広げる.アフリ カ諸国が経済を発展させるための努力をサポートする.貿易ルートを広げ,アフ リカからの輸出を増やすなどである.こうした政策のもと,中国とアフリカ経済 貿易協力は着実に発展しはじめた.

4

段階は急速な発展の段階

( 2000

年〜現在)である.

2000

10

月,中国政 府は「中国アフリカ協力フォーラム」

( FOCAC )

を立ち上げ,中国とアフリカ諸 国の間に多国間協議メカニズムをつくり,相互協力の新たな時代をスタートさせ た.フォーラムが採択した「中国アフリカ協力フォーラム北京宣言」と「中国ア フリカ経済社会発展協力綱領」は,中国とアフリカが

21

世紀に平等互恵の協力 を展開するための行動指針となった.双方の協力を推進するために,中国政府は 相次いで,次のような一連の措置を講じた.

FOCAC

では,債務削減,人材育成,

医療分野,貿易投資などの分野で協力内容を提案してアフリカ側の意見を集約,

「経済・社会開発のための中国・アフリカ協力プログラム」( 2001

年設置)では フォローアップ内容が具体化され,中国とアフリカで交互に開催される

2

年毎の 政府幹部級会議,

3

年毎の閣僚級会議の場でその進捗状況が評価されている.

さらに,中国はアフリカの重債務貧困国および後発開発国の債務

100

億元を減 免すると宣言した.中国企業のアフリカでの合弁・提携を奨励し,支援するため の特別資金を設立すると宣言した.

「アフリカ人材資源開発基金」を設立し,アフ

リカ諸国による各種の専門的な人材の育成を支援する.

2005

年から,アフリカ

28

ヶ国が中国に輸出する一部の商品に関税免除の待遇を与える.「アフリカ人材 資源開発基金」を増額し,アフリカのために

1

万人の各種の人材を育成する.ア フリカ

12

ヶ国に「中国公民出国旅行目的地」の地位を与える,などである.

2006

(13)

1

月,中国政府は「アフリカ政策文書」

( African Policy Paper )

を発表し,新 たな時代に中国とアフリカの友好協力を強化するための方向と重点を定めた.

4

月,中国政府は「政治的には相互信頼を深め,経済的には互恵関係を広げ,文化 的には互いに参考としあい,安全保障のうえでは相互協力を強め,国際的には互 いに緊密に協力する」という,中国とアフリカの新しい戦略的パートナーシップ の発展を促す

5

つの提案を行った.

11

月の中国アフリカ協力フォーラム北京サ ミットの期間中,中国政府が宣言したアフリカとの実務的な協力を強化するため

8

つの措置および中国政府が行った

5

つの提案には,中国とアフリカ発展基金 を設立すること,条件の整ったアフリカの国が経済貿易協力区を設立することな どが盛り込まれた.これら中国が中国とアフリカ経済貿易協力の推進のために講 じた措置および急速に深まる協力関係は,中国とアフリカの経済貿易協力が新た な段階に入ったことを示している.

そして,中国の対アフリカ直接投資の現状はどうであろうか.以下では,関係 統計資料によって中国の対アフリカ直接投資の現状を確認しよう.まず,中国の 対外直接投資全体に占めるアフリカへの投資状況をみる.〔図

1

は,中国の対外 直接投資残高の地域別分布を示すものであるが,

2015

年末現在,アジア向けの投

図 1 中国の対外直接投資残高の地域別分布

(2015 年末)

出所

:『 2015

年度中国対外直接投資統計公報』中国統計出版社,

2016

年,

17

頁.

䜦䜼䜦, 70.0%

䝭䝊䝷䜦䝥䝮䜯,

11.5%

Ḛᕗ

, 7.6%

໪⡷, 4.8%

䜦䝙䝮䜯, 3.2%

䜮䜿䜦䝏䜦,

2.9%

(14)

資が最大で,投資残高全体の

70 %

を占めている.この特徴は,対外直接投資統 計の公開以来,変わっていないものである.アジア向けに続いたのは,ラテンア メリカ

( 11.5 %),欧州 7.6 %),北米 4.8 %)

という順位になり,アフリカ向け は,全体の中で

5

( 3.2 %)

に位置する.全体からみれば,中国の対アフリカ直 接投資額は決して多くないが,アジアや欧州,北米向けの投資開始に比べて対ア フリカ投資の開始は比較的に遅いため,この結果になった理由の

1

つであると考 えられる.

そして,中国の対アフリカ直接投資の推移をみると

(〔図 2 〕), 2007 〜 15

年の

8

年間の間に対アフリカ投資額は順調に伸びていることがわかる.

8

年間の投資金 額は,

7.5

倍と急増したことも分かり,

346

億ドルの規模に膨らんでいる.しか も,世界金融危機のような突発するかく乱要因の発生があっても,対アフリカ直 接投資への影響が見られない特徴もある.

3

に,国際的な視点からみた中国の対アフリカ直接投資の状況をみる.日本 の経済産業省の『通商白書』の統計資料によれば

(〔図 3 〕), 2016

年現在,対アフ リカ投資国におけるアメリカの投資額は最大で,

645

億ドル

(ストック金額)

であ る.英国

( 595

億ドル),フランス

( 518

億ドル)はこれに続く.中国の投資金額

325

億ドルで,

4

位である.周知のように,アメリカは世界最大の対外投資国

図 2 中国の対アフリカ直接投資の推移

(ストック,百万ドル)

出所

:『 2015

年度中国対外直接投資統計公報』中国統計出版社,

2016

年,

48 〜 49

頁.

4,461.8

7,803.8 9,332.2

13,042.1

16,244.3

21,729.7

26,185.8

32,350.1

34,694.4

2007ᖳ 2008ᖳ 2009ᖳ 2010ᖳ 2011ᖳ 2012ᖳ 2013ᖳ 2014ᖳ 2015ᖳ

(15)

であるので,対アフリカ投資の最大国であることもその地位に相応しい.そして,

英国とフランスは,かつて多くのアフリカ国の旧宗主国であり,アフリカと太い 関係を持っているため,多額の直接投資をアフリカに投下することは理解しやす い.しかし,アフリカから地理的に遠く離れ,対外直接投資の歴史も浅い中国の 投資が米英仏に次ぐ規模になることは,予想に反する.金額だけをみる限りでは,

中国の投資金額は対アフリカ直接投資国第

6

位の日本の

3

倍以上になっているこ とがわかる.実際,中国企業の対アフリカ投資額は,各国政府の把握した規模よ り大きいという見方が多い.たとえば,

『日本経済新聞』

の報道によれば,日本企 業が工場建設などでアフリカに投下した直接投資額は

2011

年が

4.6

憶ドル,

12

年は

1.2

億ドルにとどまった一方,中国の直接投資額は

2011

年に

31

億ドルで日 本の

7

倍に相当するものである.投資残高でも

160

億ドルと日本の

2

倍に膨らん だ.

2013

年当時,似た経済規模の日本と中国であるが,アフリカ向け投資では大 差が開く一方である.また,日本のアフリカ在留者数は中国の

18

分の

1

8,100

人にとどまる13

.つまり,各国政府機関が把握した投資額のデータと中国企業が

図 3 各国の対アフリカ直接投資残高

(百万米ドル)

出所

:『通商白書』 2016

年版.

64,500

59,500

51,800

32,500

11,000 10,200

2,470

⡷ᅗ ⱝᅗ 䝙䝭䝷䜽 ୯ᅗ 䝍䜨䝈 ᪝ᮇ 㡉ᅗ

13

『日本経済新聞』 2013

5

3

日の記事による.

(16)

実際に行った投資額のデータは常に開きがある.その理由の

1

つとして,中国の 民間企業もしくは個人企業が様々な方法によって政府の管理を逃して資金を海外 に持ち出したことが挙げられる.

4

に,中国の対アフリカ直接投資状況を国別で確認する

(〔図 4 〕). 2015

末現在の投資額残高をみると,南アフリカ

( 13.6 %),コンゴ ( 9.3 %),アルジェ

リア

( 7.3 %),ナイジェリア ( 6.9 %),ザンビア ( 6.7 %),スーダン ( 5.2 %)

6

カ国は,中国の対アフリカ投資総額の約半分を占めることがわかる.つまり,

56

カ国からなるアフリカ大陸には,中国の直接投資がごく少数の国に投下されてい る.その特徴はきわめて鮮明であり,「資源国への投資」である.

2000

年以降,

経済の急成長を遂げていた中国は天然資源豊かなアフリカに他国がまだ進出して いないマーケットがあることに気づいた.以後,中国とアフリカの貿易額は年々 増大し続け,

2014

年には

2000

億ドルを超え,

2000

年時の

20

倍以上に拡大して いる.今や中国はアフリカ最大の貿易相手であり,アフリカに進出している中国 系企業の数も

3000

社を超えているといわれている.〔表

1 〕

は,

2006

年以降の

6

年間,アフリカに投下された主な鉱物資源

(石油を除く)

の投資案件である.これ

図 4 中国の対アフリカ主要国への直接投資状況

(2015 年末)

出所

:『 2015

年度中国対外直接投資統計公報』中国統計出版社,

2016

年,

48 〜 49

頁.

༞䜦䝙䝮䜯, 13.6%

䜷䝷䜸, 9.3%

䜦䝯䜼䜫䝮䜦, 7.3%

䝎䜨䜼䜫䝮䜦, 6.9%

䜺䝷䝗䜦, 6.7%

䜽䞀䝄䝷, 5.2%

䜼䝷䝔䝚䜬, 5.2%

䜰䞀䝎, 3.7%

䜦䝷䜸䝭, 3.7%

䝃䝷䜺䝏䜦, 3.3%

䜵䝏䜦, 3.2%

䛣䛴௙, 31.9%

(17)

表1 アフリカでの鉱物資源分野における主な投資案件 月 投資企業名 投資対象国 鉱種 投資金額

(百万 US $)

投資内容

2006 11

中国有色金

ザンビア

310 Chambishi

鉱山への投資

2007 10

中国有色金

ザンビア

100 Chambishi West orebody Proj- ect

への投資

2007 12 SinoSteel

ジンバブエ 鉄鉱石

100 Zimasco

への出資

(権益 92 %

得)

2008 6

中国核工業 集団

ニジェール ウラン

190 Azelic

鉱山への投資

2008 7

中国輸銀 コンゴ

3,000

当初発表額は

6,000

百万

US $

あったが,その後

IMF

との調整 により

3,000

百万

US $

に減額.

2008 7

中国中鉄,

中国水利水 電建設

コンゴ

2,000 JV

企業

Sicomines

への出資

(権

68 %

取得)

2009 1

五鉱資源有 限公司

南アフリカ クロム 数百万

US $ Vizirama

(クロム鉱山 /

探鉱 企業)への出資

(権益 70 %

取得)

2009 4

五鉱資源有 限公司

南アフリカ クロム

81 Townlands/ Kookfontein

ク ロ ム鉱山への投資

2009 5

中国有色金

ザンビア

300 Luanshya

鉱山への投資(権益

85 %

取得)

2009 8

金川集団 ザンビア ニッケル

37 Munali

鉱山への参画

(権益 51 %

取得)

2010 1

金川集団 タンザニア ニッケル

n/a Tanzania Royalty Exploration

社が保有する

Kabanga

プロジェ クトへの参画

2010 1

中国核工業 集団

ニジェール ウラン

53 Azelik

鉱山の株式

37.2 %

取得.

2010 4 China Railway Materials

シエラレオ

鉄鉱石

260 African Minerals

社 へ の 出 資

( Tonkolili

鉄鉱石プロジェクト の権益

12.5 %

取得)

2010 5

金川集団,

中国アフリ カ開発基金

南アフリカ プラチナ

878 Wesizwe

社の権益

51 %

取得

2010 7 Chinalco

ギニア 鉄鉱石

1,350 Simandou Block 3 & 4

への参 画について

RioTinto

と合意

(権

45 %

取得)

(18)

2010 8 CIF (中国

国際基金)

ギニア 鉄鉱石

1,200 Kalia

鉄 鉱 石 プ ロ ジ ェ ク ト と

Forecariah

鉄鉱石プロジェクト のインフラ整備を負担する代わ りに,

CIF

が両プロジェクトへ 参画.

2010 9 Bosai Minerals

ガーナ アルミニ ウム

1,200 Ghana Bauxite

(Awaso

プロ ジ ェ ク ト)の 権 益

80 %

Rio Tinto

より買収

2011 4

中国輸銀 ニジェール ウラン

99 Azelik

鉱山の拡張費用

2011 5

山東鋼鉄集

シエラレオ

鉄鉱石

1,490 African Minerals

社 へ の 出 資

( Tonkolili

鉄鉱石プロジェクト の権益

25 %

取得)

2011 7 Sinosteel

ジンバブエ クロム

300 Zimasco

への出資

2011 9

金川集団 南アフリカ 銅

1,280 Chibulma

銅鉱山(ザンビア),

Ruashi

銅鉱山

( DRC

コンゴ) 権益を有する

Metorex

社を買収

2012 2

五鉱資源有

限公司

コンゴ

1,330 Anvil Mining

の買収

出所

篠田

( 2012

年)による

(原データは, Heritage

財団).

らの案件の多くは,上記の国々に投下された.

5

に,中国の対アフリカ直接投資の産業別分布をみると

(〔図 5 〕),採掘業

( 27.5 %),建築業 ( 27.4 %),製造業 ( 13.3 %)

3

業種は全体の約

7

割を占めて いることがわかる.まず,最大分野の採掘業には,石油・天然ガス,鉱物資源が 含まれている.これは,上記の資源国への偏った投資という点に強い関連性があ ると考えられる.そして,建築業が大きなシェアを占める理由は,道路建設,鉄 道建設を含むインフラ関係の投資が多いためであると考えられる.

3

位に入った 製造業分野への投資は意味深い.つまり,現在,多くの中国製造業企業はアフリ カに進出し,工業製品を現地で生産している.近年来,中国のアフリカの製造業 における投資額が速やかに拡大していることを明らかにしている.現在,中国の 民間企業によるアフリカの製造業への投資件数は毎年

150

件を超えており,対象 となる分野も様々な生産製造分野にまたがり,アフリカ各国の工業化プロセスを 加速させる重要な牽引力となっているほか,アフリカ各国の工業化を実現させ,

貧困問題の解決に希望を与える存在にもなっている.また,アフリカに進出した

(19)

中国製造業企業の多くは,現地企業との協力形式をとることでアフリカのビジネ スエリートを育成し,未来のアフリカ大陸のビジネス界の中堅人材へと育ててい くことを狙っている.

IV   中国企業の対アフリカ直接投資の動機に関する検証―製造業 3 社の場合

4‒1 検証視点―プッシュ要因とプル要因

本節では,中国企業の対アフリカ直接投資の動機を検証する視点を説明しよう.

本稿は中国企業の対アフリカ直接投資の動機については,主にプッシュ要因とプ ル要因にわけて考える.ここでは,用語のプッシュ要因とプル要因について説明 しよう.一般的にはある特定の結果には原因が必ずある.ある現象を発生させて いる原因を考える場合に,原因の有りどころに着目した分類方法が,プッシュ要 因とプル要因である.現象の外側にあって,その現象の発生を助長してしまう要 因を「現象を送り込んでしまう」という意味合いでプッシュ要因という.一方,

現象が発生している側にあって,現象を発生させている要因を,

「現象を引き込ん

でしまう」という意味合いでプル要因という.

図 5 中国の対アフリカ直接投資の産業別分布

(2015 年末)

出所

:『 2015

年度中国対外直接投資統計公報』中国統計出版社,

2016

年,

22

頁.

᤿ᤸᴏ , 27.5%

ᘋ⠇ᴏ , 27.4%

⿿㏸ᴏ , 13.3%

㔘⼝ᴏ , 9.9%

⛁Ꮥᢇ⾙䛐 䜎䛹ᢇ⾙

䜹䞀䝗䜽 , 4.2%

䛣䛴௙ ,

17.7%

(20)

中国企業による対アフリカ直接投資のプッシュ要因としては資金の送り出し側 の中国において存在するものが挙げられる.具体的に本稿は,下記の要因―

1 )

「走出去」政策の実施, 2

投資資金あり,

3

輸送コスト節約,

4

国内市場の低 迷,

5 )

国内労働コスト上昇,

6 )

政府の資金支援―を

6

つ取り上げる.

まずは,「走出去」方針を実行するかしないかである.「走出去」とは,中国が 積極的に支持している海外の投資戦略のことである.多くの国々が外国からの資 本受け入れに躍起になり,海外への直接投資に消極的であるのに対し,中国は外 資導入と海外への投資拡大に積極的である.走出去戦略の略称として「走出去」

と呼ぶ.走出去戦略を行う主因は以下の

3

つである.第

1

に,中国の巨額の外貨 準備高は存在していることである.これにより,人民元は切り上げ圧力にさらさ れており,国際世論は変動相場制の採用を要求している.巨額の外貨準備を有効 に活用するために,中国は海外の優良資産を購入している.次に,中国が改革開 放を実施し,

2001

年には世界貿易機関に加盟したことにより,市場開放が進ん だ.その結果,世界の優良企業が中国市場に参入すると中国政府は予想した.そ こで,中国企業が海外から先進的な技術や経営ノウハウを学ぶことで中国企業が,

競争に生き残れるようにするために海外へ進出する.第

3

に,中国が世界トップ クラスの企業を持つべきだという,国家の威信がうかがえる.一般的には「走出 去」という国家戦略を忠実に実行するのがほとんど国有企業である.これに対し て民間企業は,必ずしもこれに協力しない.

次の要因は,対アフリカ投資の資金を豊富に保有するかしないか,である.近 年,中国企業による対外投資や海外企業買収が急拡大している背後にあるのは,

中国政府の「走出去」戦略だけではなく,国内市場の急拡大によって獲得された 収益にも関連する.さらに,

2012

年以降,経済の減速によるリスク回避を目的と して資金を海外に移転しようとする企業も増えている.

3

の要因は,輸送コストの節約である.一般的には,国際間取引を想定すれ ば,輸送コストは必ず発生する.輸送コストというのは,出荷元となる生産者の 工場での梱包費用,港や空港までの輸送費,輸出通関料,空港や港等でかかる諸 経費,手数料,セキュリティ費用,航空便ならば燃料サーチャージ,仕向け地ま でのキロ当たりの輸送単価もしくはコンテナあたりの輸送単価,輸入側での通関

(21)

費用,空港・港等の利用にかかる費用・手数料,内陸輸送費用などから構成され ている.自動車と家電製品の海外輸出の場合,上記の輸送コストは生産者側の重 い負担になるだけでなく,その国際競争力にも深刻な影響を与える.これら輸送 コストを削減する有力な方法に

1

つは,やはり海外現地生産である.

4

のプッシュ要因は,国内市場の変化である.周知のとおり,世界の自動車・

家電を中心とする商品生産の中心地は依然として中国である.しかしながら,

2012

年以降,中国経済の成長率は以前と比べて鈍化している.これは,中国国内の需 要鈍化と世界経済の低迷から輸出も伸び悩んでいることによる.今まで急激に拡 大してきた中国国内の自動車・家電市場で勢いをつけてきた中国メーカーは,現 在,今後の持続的成長に向けて多くの課題に直面している.競争が激化する海外 市場で闘うために,技術リソース,製品力,販路,ブランドなど,自社で不足し ている部分を補う形で,海外市場とりわけ,新興経済国市場へ進出している.

5

の要因は,国内労働コストの上昇である.中国の経済発展に伴って,中国 における経営環境も大きく変化し,さまざまな面でコストも大幅に上昇した.こ れは,企業,とくに労働集約型の輸出企業の経営に大きなマイナス影響を与えて いる.持続的な経済成長により,沿海地域において労働力,とくに農村からの出 稼ぎ労働者の供給が厳しくなったため,賃金の上昇が激しい.さらに,

2008

年以 降,新しい「労働契約法」が実施され,また,労働者を引き止めるために福利厚 生を充実せざる得なくなり,結果として人件費負担を重くさせている.これを避 ける方法の

1

つとして,対外直接投資が挙げられる.

6

の要因は,政府の資金支援である.中国企業のアフリカへの直接投資にとっ てきわめて重要なことは,国家の金融機関をうまく利用することである.外国の 資源企業や鉱業エネルギー資源に対する積極的な買収,大陸の石油資源やインフ ラへの大規模投資プロジェクトを下支えしているのは,いつでも即座に世界に向 けて投資する用意のある,巨額な外貨準備金,それを運用する国有金融機関の集 合体である.これらの国家主導の機関は自由に利用できる巨額な資金をもち,中 国企業の海外進出に伴走し,欧米企業ならば避けられない厳密なアカウンタビリ ティと透明性原則に縛られることなく,低利融資を提供することができる.上記 の国有金融機関以外には政府系ファンドもあり,その目玉機関は,

「中国アフリカ

(22)

開発基金

( CADF )」である. CADF

は,

2006

年に北京で開かれた中国アフリ カ・サミットでの中国政府の公約によって,対アフリカ投資促進のための追加融 資を提供するため

2007

年に正式発足した.

CADF

は,過去

20

年間にわたって 中国経済において重要な役割を果たしてきた国有の中国開発銀行

( CDB )

から,

出資と監督を受けている.海外進出の意欲と戦略を有する一方,対外直接投資の 資金を不足する中国企業は,上記の政府金融機関もしくは政府系ファンドを利用 するかしないか,という点が検証の項目になる.

そして,上記の

6

つのプッシュ要因には,前述した,海外でよく批判された

3

要因―

7 )

新植民地支配,

8 )

天然資源獲得,

9 )

過剰生産力輸出―を追加する.

つまり,中国企業の対アフリカ進出の動機として,これらの要因が存在している かどうかについて検証する.

そして,中国企業の対アフリカ直接投資のプル要因としては投資受入側のアフ リカ各国において存在するものが挙げられる.具体的に本稿は,

10 )

市場の潜在 性,

11 )

天然資源へのアクセス,

12 )

進出国の投資優遇策,

13 )

低コスト労働力 へのアクセス,

14

進出先における市場条件の変化,の

5

項目がある.

まず,市場の潜在性は次の意味を持つ.ある商品に対するニーズはあると思わ れているものの,現時点ではその商品に備わっている魅力や性能が不十分であっ たり,技術的な面で見たならば現時点では未熟であったり,その商品を取り扱う 条件・インフラが整っていないなどといったことから,現時点では十分に開拓さ れていないと思われるような市場のことをいう.アフリカの場合,自動車や電機・

電子商品を中心とする工業製品市場は,このような性格を持っている国が多い.

このために中国企業は,進出するかしないか,という点も検証する.

次に,天然資源へのアクセスは,中国企業の対アフリカ進出の動機になるかと いう点である.周知の通りに,中国は自国自身が比較的豊富な資源国であるが,

急速な経済成長に伴う需要増に対応できず,資源不足が生産活動のボトルネック になると懸念されている.海外の資源権益などを掌握し,需要増に対応できるだ けの資源調達ルートを積極的に開発する動きの一環というわけである.中国のア フリカにおける資源確保は,原油や銅,金,ニッケルなどの地下資源から,綿花 や木材にも及んでいる.石油やレアメタルなど資源開発を担うような民間セクター

表 3 対象企業 3 社のアフリカ進出動機 要因の区分 具体的な要因 第一汽車集団 (南アフリカ) 第一汽車集団 (エチオピア) 海信集団 (南アフリカ) 金帝靴業 (ナイジェリア) プッシュ要因( 1 ) 「 走 出 去」 政策の実施 ○ ○ ○ × ( 2 ) 投資資金あ り ○ ○ ○ ○ ( 3 ) 輸送コスト 節約 ○ × ○ × ( 4 ) 国内市場の 変化 ○ ○ ○ ○ ( 5 ) 国内労働コ スト上昇 × × × × ( 6 ) 政府の資金 支援 ○ ○ ○ × ( 7 ) 新植民地支 配

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