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特別なニーズがある子どもの就学移行支援

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Academic year: 2021

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55 人間発達学研究 第 11 号

55―56 2020 年3月

■学位論文内容要旨

特別なニーズがある子どもの就学移行支援

―幼児期における就学相談を中心に―

志村 美和(2019 年度修了)

1.研究の目的

 2011 年の障害者基本法の改正,2013 年の学校教育法 施行令の一部改正等により,特別なニーズがある子ども の就学に関して障害の状態等を踏まえた総合的な観点か ら就学先を決定することになった。これに伴い,各自治 体では,早期からの教育相談・就学相談等に取り組んで いる。

 認定こども園に勤務している筆者は,子どもの就学先 に悩んだり,就学先への支援の引継ぎ等の不安を抱いて いる保護者に多く出会う。市の教育委員会が行う就学相 談を勧める立場でもあるが,就学相談が何のためのある のかわからない,といった保護者の声を耳にすることが あり,「就学相談」の在り方について研究したいと考えた。

 しかし,就学相談の全般的な現状や課題について,と りわけ保護者の視点からまとめられた先行研究は,見当 たらない。特別なニーズがある子どもの就学移行期に各 自治体で行われている就学相談の現状と課題を保護者の 視点から明らかにし,子どもにとって最善な就学移行支 援のための就学相談の在り方について検討することを目 的とした。

2.研究の方法

 2018 年 1 月〜 3 月に,主に筆者が関わる愛知県 X 市と 隣接の Y 市の障害がある,又はその周辺にある子どもの 保護者を対象とし,アンケート調査を依頼した。

 アンケートは,「子どもが就学前の保護者用」と「子 どもが就学後の保護者用」の 2 種類作成し,現在の子ど

もの状態や就学相談に対するイメージ,就学相談に行っ た目的(又は行かなかった理由)等の質問を就学前と就 学後それぞれ 10 項目と 13 項目の選択肢による回答と,

就学相談への要望,就学に関する不安等については自由 記述で,回答を求めた。なお,協力依頼書に,アンケー トの目的,記入方法,無記名方式で答えたくない箇所は 答えなくてもよい旨,個人が特定されることがない事,

取り扱いに十分配慮することを記載し,回答することを 以ってアンケートの主旨を理解・承認していただけたこ ととした。

3.調査の結果と考察

 アンケート調査を行った結果,107 名分の保護者の回 答を得ることができた。回答者の現住所は X 市 82%,Y 市 18%,子どもが就学前 46%,就学後 53%,性別は,

男児 74%,女児 26%,きょうだいは,長子 37%,二男 二女 25%,末子 13%,一人っ子 26%であった。通園施 設(現在・過去)は,幼稚園 39%,保育園 58%,こど も園 3%,療育施設 14%(並行通園),現在の在籍につ いては,通常学級が 50%,特別支援学級が 39%,特別 支援学校が 10%だった。

 就学相談の現状の課題としては,一つ目に就学相談が 何のために行われるかという目的(周知方法を含む)が わかりづらいことだった。就学相談に行けば専門家とし ての意見が聞けるのではないかと期待していた,どこに 在籍したらどのような支援が受けられるのか教えてほし かった,相談すれば学校と連携してもらえると思った,

等何らかの情報やアドバイスが得られる場だと思ってい たのにそうではなかった,という回答が多かった。これ

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56 は就学相談についてのガイダンスが保護者にも園側にも 十分に行われていない現状が理由の一つと考えられる。

 二つ目は,就学相談の相談員のイメージが身近に感じ られないことだった。(図 1)就学相談に行った人も行っ ていない人(又は行かなかった人)にも回答を求めた中 で,「優しい」「受容的」「傾聴的である」等,比較的好印象・

好イメージであるのに対し,「身近」か「遠い」かの選 択肢に関しては,「遠い」と回答した保護者が多かった。

保護者にとっては子どもの就学先を決める大事な相談な のに子どものことをよく知らない人に相談すること自体 が相談員の存在の遠さを感じさせているだろう。

 三つ目は,就学後のフォローに対する要望だった。子 どもの成長を一緒に見守ってくれる相談機関があるとよ い,学校に直接言いにくいことを相談でき,その後学校 との話し合いができるようにつなげてくれる場がほし い,という意見が多くあった。保護者にとっては,就学 したらそれで終わり,ではなく,就学後新たな問題が起 きたときや学年が上がるごとに違う悩みや不安はずっと 続き,継続した相談できる場は必要であると考える。

 また,就学先決定について考える上で参考になった ことについての結果は,就学相談での相談が 16%だっ たのに対し,学校見学が 41%,家族での話し合いが 41%,障害がある子どもの先輩保護者の助言が 34%,

園や療育の先生の助言が 29%だった。また,就学相談 以外にとった行動についての質問の結果でも,学校見学

が 62%,家族で相談が 55%,園の先生に相談が 51%,

療育の先生に相談が 49%,障害がある子どもの保護者 に相談が 46%だった。

 就学先を考える上で,就学相談よりも直接学校見学を したり,子どもや保護者自身の身近な人の意見を参考に したことが明らかとなった。

4.まとめ

 本研究のタイトルは「特別なニーズがある子ども」と した。筆者が日頃こども園で接している配慮の必要な子 どもたちは,障害がある,またはその周辺にある子ども だけではなく,アレルギー,外国にルーツがある,家庭 環境に問題がある等,子ども一人一人のニーズが多様で ある。就学移行期にはこれら個別のニーズに対する適切 な配慮・支援が引き継がれることが重要である。

 そのためには,就学相談の対象は限定的にせず,多様 な子どものニーズに対応するための就学相談を行ってい く必要がある。また,特別なニーズがある子どもの情報 は保育者がもっと積極的に学校と共有できる環境を作っ ていくことも重要である。そして保育者は保護者の身近 な相談相手となり,同じような悩みを持った(持ってい た)保護者同士をつなぐ役割も担っていく事が必要だろ う。

図 1 就学相談のイメージ 志村 美和

参照

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