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日本における大学生スクールボランティアの動向と 課題

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課題

著者名(日) 武田 明典, 村瀬 公胤

雑誌名 神田外語大学紀要

巻 21

ページ 309‑330

発行年 2009‑03‑31

URL http://id.nii.ac.jp/1092/00001270/

(2)

日本における大学生スクールボランティアの 動向と課題       

武田明典 *  村瀬公胤 **

 昨今の日本では、大学生が地域の学校において教育活動を支援するスクー ルボランティアが導入されつつある。これに関連し、フレンドシップ、イン ターンシップ、そしてサービス・ラーニングなどがあり、これらは、ボランティ ア学生を受け入れる学校の教師や児童生徒に対して支援補佐できるばかりで はなく、学生自身にとっても現場に入り教職に対する理解が深まるメリット がある。しかしながら、スクールボランティアの導入が一巡し幾つかの実践 例が報告されるなかで、問題点が指摘されるようになった。本稿は、スクー ルボランティアについてこれまでの実践研究を包括的にレビューし、主に、

大学教育養成としての学生支援に関する 6 つの課題点について検討を行っ た。

キーワード:  スクールボランティア、フレンドシップ、インターンシップ、

サービス・ラーニング、教員養成

1.問題

 学校教育の現場と教員養成課程にまたがる大きな変革が起こりつつある。

OECD の PISA 調査などで明らかになった学力問題の解消や多様な児童生徒       

*   Akenori TAKEDA 

神田外語大学

** Masatsugu MURASE     麻布教育研究所

(3)

のニーズへの対応など、学校教育が担うべき役割は拡大した。しかし、財政 難による教員増配の困難や地域教育力の疲弊など、教育現場を取り巻く環境 はむしろ悪化している。国や地方自治体の教育行政がこうした問題の解決を 模索している一方で、教員養成の側でも、教員養成 GP(資質の高い教員養 成推進プログラム)や教職大学院の創設など、教育の “ 質 ” が再検討され始 めた。このような背景において、学校教育を効率的かつ柔軟なものにするた めに教職志望の大学生を人材として活用する、スクールボランティア(学校 ボランティア)活動が広まっている。また、スクールボランティアは、学生 をボランティアとして送り出す側の大学にとっても、教育実習以外に学生が 教育現場に接する機会が増すという教育的効果、ひいては教員採用上の効果 というメリットが期待される活動である。さらに、大学の地域貢献にもつな がり、スクールボランティアは、教育行政と大学、そして地域社会から大き な期待が寄せられている。以上の問題意識のもとに、本稿の大学生によるス クールボランティアとは、「学校、教育委員会、教育関連 NPO 等において、

それらの組織の指導のもとに大学生が主体性・自主性を持ちつつ行う教育支 援活動である。」と定義し、昨今の日本における動向を整理し、今後の課題 点について検討する。

 ところで、もともと教育に関わるボランティアが導入されたころは、大学

生よりも保護者や地域の人々が活動の中心であった。たとえば、ボランティ

ア先進国である米国で学校に関わるボランティアが広まった 1970 年代の状

況を報告した志熊(1974)によれば、教員の補助にあたる「教室ボランティ

ア(Classroom Volunteer)」と、各自の知識や経験を子どもたちに紹介する「資

料提供ボランティア(Resource Volunteer)」のそれぞれに保護者が参加して

いたという。日本においても、1990 年前後に学校で活動していたのは、地

域住民や保護者であった。1986 年の臨時教育審議会第 2 次答申において「地

域に開かれた学校づくり」という文脈で地域人材の活用が求められたことが

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日本における大学生スクールボランティアの動向と課題 嚆矢となり、1988 年の教育職員免許法改正、1996 年の第 15 期中央教育審議 会第 1 次答申へとこの流れは続いている(内海・堀・柏木 , 2001)。

 そうしたなか、日本でボランティアという単語が身近になったのは、「ボ ランティア元年」とも呼ばれている 1995 年以降である(内海 , 2001)。この 年の “ 阪神・淡路大震災 ” という国民的経験により、ボランティアが一般に 知られるようになるとともに、大学生などが積極的にボランティアに参加す る社会風土が醸成された。これ以後、学生たちはサークル活動などを通して 様々な分野のボランティア活動に参加していくことになった。

 さて、ふたたび教育関係に目を転ずるならば、障害児教育(特別支援教育)

の領域では若い労働力を必要とする独自のニーズがあり、ボランティアとい う名称が一般化する以前からボランティアと同様の活動が行われていた。そ の歴史の上に、教員養成大学の障害児教育研究室が中心になって構築した「函 教大ボランティアネットワーク」(斉藤・木村 , 1997)のような、大学が学 生のボランティア活動を制度的に支える仕組みが整えられていった。

 以上の 1) 開かれた学校づくりに参加するボランティア、2) 大学生全体の ボランティア機運、3) 若い労働力としてのニーズ という 3 つの系譜を引き 継ぎながら 1990 年代後半に誕生したのが、教職志望の学生が教育現場で活 動する形態のボランティアである。まず、1995 年前後から、他の分野の学 生と同じく教職志望の学生たちも自主的なサークル活動やゼミ単位の活動を 通してボランティアを行い始めていた。一方、このころ、いじめや不登校、

学級崩壊などの諸問題によって、教員の指導力不足に対する批判が続いてい

た。批判の矛先はやがて、「座学中心」、「現場との乖離」という表現で教員

養成にも向けられた。これらに呼応して、国の政策としても、大学の自主的

な改革としても、教員養成におけるボランティアの意義が注目されるように

なった。詳しくは後に検討するが、教職志望学生によるスクールボランティ

アは、 「フレンドシップ事業」 (例:森・寺岡・柳澤 , 2003)や「放課後学習チュー

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ター」(例:姫野・長瀬・小松・浦野 , 2005;羽賀・豊嶋・小山ら , 2006)等々 の政策により制度的な裏付けを得たこと、学力向上に関する社会的要請が高 まったことなどにより、急速に拡大した。

 こうして大学生によるスクールボランティアは全国各地で実践が積まれ、

量的発展を遂げたとともに、質的多様性を内包しながら現在に至っている。

たとえば、ボランティア活動に対する単位認定の有無、手当ての有無、教職 課程カリキュラム改革との連動の有無、行政・地域社会との連携の方法、活 動の評価方法など、スクールボランティアには多様な形態がある。また後述 するように、名称も「スクールボランティア」「学校ボランティア」「学校イ ンターシップ」など様々である(滝沢,2006)。スクールボランティアが活 動の内容に関しても名称に関しても多種多様に存在し、実践報告や実践に基 づく調査研究報告が蓄積したいま、これらを整理し見取り図を描く作業が求 められている。

2.目的

 日本において、スクールボランティアの実践が浸透しつつあり、実践例や 実践に基づく調査研究報告が成されている。しかしながら、包括的にレビュー を行った文献は見当たらない。また、実践と同時に課題点が指摘されている が、これらについて総合的に検討を行っている論文は見うけられない。ここ で、本稿は、これまでのスクールボランティアに関する実践研究およびカリ キュラム開発研究などをレビューすることにより、学生を支援するための大 学としての改善点や課題点を検討するものである。

3.日本におけるスクールボランティアの動向

3.1 スクールボランティア概念の整理

 「1. 問題」で概観したように、スクールボランティアは内容や名称が多様

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日本における大学生スクールボランティアの動向と課題 である。一般に「ボランティア」には、「自発性」「無償性」「公益性」とい う 3 つの条件が必要だと言われる(入江 , 1999)。しかし、これら 3 条件は いずれもきわめて理念的であり、解釈や運用には大きな幅がある。スクール ボランティアの多様性は、その幅に由来している。

 たとえば「無償性」について、米国のスクールボランティアに関する統計 では「給与なしに、教師または学校職員の指導のもとで、生徒の教育を強化 するために学校の目標を支援する人」と定義されているが、実際には「年金 生活を送っている人の中には、小額の俸給をもらっている場合もかなり多い」

という(内海,1999, pp. 89-90)。また、一般的なボランティアを論じた金子

(1992)の「ボランティアは新しい価値を発見し、それを授けてもらう人(p. 

151)」という意見に拠って、斉藤・木村(1997)は、スクールボランティア とは、「一言で言えば『若い労働力』として貢献し、『専門性を高めることが できる』という報酬を得る、ということになるだろう(p. 146)」と論じてい る。たしかに、教育・養成の枠組みにスクールボランティアを導入するなら ば、たとえ経済的な報酬がなくとも、学習あるいは成長という意味での報酬 が存在していることは前提と考えられる。しかし、学年、実習経験に応じて、

スクールボランティアから学生が得られる学習の報酬の “ 質 ” は異なり、適 切な大学側の支援があれば、原則的には学年の向上とともに専門性が高まる ものと考えてよいだろう。

 他方、 「自発性」に関して岡(2008)は、もともと「ボランティア」と「教 育」(教員養成教育を含む)は矛盾する概念であることを認めたうえで、そ の矛盾を引き受けつつ「教育的手法」として両者をつなぐ試みとして現在の ボランティアを解釈し、「サービス・ラーニング」と呼ぶことを積極的に提 案している(サービス・ラーニングの概要は、佐々木 [2004] 参照)。それゆえ、

岡の構想では、大学生活の早期から一定の専門性のある職場にのみ学生のボ

ランティア活動を限ることの難点を鑑み、より専門性が高く(自発性は低く)

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なる「インターンシップ」は上級学年に配置されている。ともあれ、岡も述 べているように、ボランティア経験を通した学びのプロセスをいかに保障す るかという問題がもっとも重要であり、教員養成カリキュラム全体の中にボ ランティアを位置づけることが重要である。そうした側面を重視するならば、

佐久間(2003)のように「長期恒常型の『教育実習』(p. 351)」として従来 の教育実習と比較しながら批判的検討を行う視点は貴重である。しかしそれ でもなお、自発性を重視し、ボランティア活動は「大学の授業の必修や単位 化に本来なじまない(p. 185)」とする松浦(2003)のような意見も傾聴する 必要がある。

 1997 年に始まった国立の教員養成大学・学部における「フレンドシップ 事業」は、この多様性が拡大する時期と重なった。全国の国立の教員養成大 学・学部は、子どもとの触れ合い、というフレンドシップの目的に沿う活動を、

学生の自主性と大学の制度的指導とのバランスの上に成り立たせたため、ど ちらに重点を置くかによって、立ち上げられた事業に多様性が生まれた。た とえば梶原・小野・鈴木(2004)は、同一大学のフレンドシップ事業であっ ても異なる様態の活動が存在し、単位認定の有無をはじめ教学上の位置が模 索されている当時の状況を報告している。ただ、その後の教員養成 GP など を通して、フレンドシップ事業で多かった触れ合いイベント型から、教員養 成カリキュラム全体のなかに重要な位置を与えられるカリキュラム化の傾向 が増えたと言ってよいであろう。以上の考察から、スクールボランティアの

「カリキュラム制約性」 (あるいはその逆のとらえ方としての「学生の自発性」)

と、 「教職専門性」という 2 軸の平面にスクールボランティアの広がりをプロッ トした(Figure 1)。

 ここでは、 「カリキュラム制約性」が低く「教職専門性」も低い「学生サー クル活動としてのボランティア」から、 「カリキュラム制約性」も「教職専門性」

も高い「サービス・ラーニング」や「インターンシップ」に向け、カリキュ

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日本における大学生スクールボランティアの動向と課題 ラム化の圧力によるスクールボランティア概念の広がりが示されている。

Figure 1. スクールボランティア概念の広がり

3.2 スクールボランティアの活動形態

 原・芦原(2005)は、大学生によるスクールボランティアの体験の有・無 と、必修の教育実習との体験の組み合わせにより、教職志望の目的意識や教 職に対するイメージなどについて相違があるか調査を行った。この調査に先 立ち、原・芦原は、スクールボランティアと教育実習との機能の違いについ て考察している。このなかで、両者の共通点としては、学生が学校現場で生 徒理解を深めることができる点や実践力が養われる点である。一方、決定的 な相違点としては、学生の「自主性」や「柔軟性」であることを指摘している。

この他に、「表I-1スクールボランティアと教育実習の相違点(原・芦原 , 

2005, p. 135)」の比較表では、1) 評価、2 単位認定、3) 免許取得に対しての

強制力、そして、 4) 記録(実習記録簿)、の全ての項目で、 「スクールボランティ ア」は「なし」であり、他方、「教育実習」は「あり」と明記されている。

6

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 しかしながら、近年、創出されつつあるスクールボランティアのなかには、

例えば、玉川大学教育学部の「サービス・ラーニング(教育インターン)」、

および、それを改編させた神田外語大学の「学習支援活動ボランティア」(武

田 , 2008)のように、スクールボランティアが必修科目ではないものの、単

位認定制度が創出されている。この科目は、大学の正規授業であるので、記 録(実習ノート)の提出や評価(実習先の評価・大学の最終評価 [ 認定 / 不

認定 ])を伴う。また、報酬の点では、派遣先の育委員会や NPO 組織によっ

て相違があり、全くの無償の場合から、“ 上乗せ的な ” 交通費支給(均一金 額の場合も)や、時給を銘打ったものなど、いわゆる “ 有償ボランティア ” 形態を取るものも含まれている。このように、有償と無償の両者の境界はま すますあいまいになってきているといえるのではないだろうか。

 スクールボランティアの活動内容は多岐に渡るが、その概要別に 6 類型化 を試みた(Table 1)。

Table 1

スクールボランティアの活動類型

類型 活動内容 実践例

1) 学校行事参加型 ・遠足引率や運動会の補助 玉井(2005)

2) 授業実施型 ・理科実験 安藤ら(2005)

3) 授業補佐型 ・補助教員

・放課後学習チューター 平田(1997);

松浦(2003)  

4) 特別支援教育補

 助型 ・「通級訓練教室」支援

・養護学校行事参加 羽賀ら(2001);

寺田(2005)

5) 校外支援型 ・不登校支援

・「適応指導教室」の学習支援や  自由活動の補助

羽賀ら(2001);

齊藤・木村(1997)

6) 地域社会連携型 ・「少年自然の家」のキャンプ参加 釜田・濁川(2004);

谷塚(2003)

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日本における大学生スクールボランティアの動向と課題  Table 1 の説明としては、1)「学校行事参加型」:学生が校外学習や運動会、

バザーなどのPTA行事など、主に単発の活動; 2) 授業実施型:この例として、

神田外語大学の学生による千葉市内 5 つの小学校における総合学習の時間を 活用した学生主導の英語会授業活動、および、学生主体の「土曜スクール」 「放 課後チューター」などの課外学習活動;3) 授業補佐型:「ティーチングアシ スタント」としての授業補助や部活動支援型活動;4) 特別支援教育補助型:

特別支援を要する児童生徒に対する校内の適応指導教室、特別支援を要する 児童生徒の学習支援担当者、および日本語を母国語としない児童生徒ならび に保護者の通訳などを含む;5) 校外支援型(教育委員会教育相談センター や教育 NPO 機関における不登校・ひきこもり支援活動;そして、6)地域社 会連携型:高齢者施設訪問や(少年自然の家におけるキャンプ活動)など地 域社会に密着した活動補佐、などである。

6) に準じ、あるいは 1)・3) の要素を兼ね持つ複合例としては、学内と地域 社会とを “ 橋渡し ” するような地域社会連携型のボランティアも考えられる。

保住(2007)が紹介する川崎医療大学の「福祉学習サポーター」のように、

学生が小学校の総合的学習に出向き高齢者施設訪問活動を行う取り組みもあ げられる。また、遠足やPTAバザーなど学校行事参加の単発ではあるが、

一般市民と一緒に参画する取り組みも紹介されている(是枝・上田 , 2007)。

 スクールボランティアの活動範囲は、以上のように多岐にわたり、また、

類型化が困難な複合的で自由度の高いかかわりを持っているケースもあるこ とが理解できる。これらの活動について、その依頼主と送り出す側の大学に おける学生の人的な支援ルートを Figure 2 に示した。この Figure 2 からは、

学生派遣の流れについて、単純化されてはいるものの、学校を核としたさま

ざまなルートが示されていることがわかる。

(11)

神田外語大学紀要第 21 号

The Journal of Kanda University of International Studies Vol. 21(2009)

Figure 2. スクールボランティアの参加形態

3.3. 教員採用と教員養成の構造的変化

 これまでの教員養成モデルでは、大学が教職志望の学生を養成し、各教育 委員会が採用するという構図であった。そして合格者は、採用後に各配属校 で教師としての実践力を習得していった。しかしながら、大学の教育だけで は実践力を身につけることが必ずしも十分ではなく、このため、採用後の離 職者も増えていた実情がある。ここで、東京都教育委員会は全国に先駆けて、

2004 年に都教育委員会独自の教員養成と採用とを実質上合体させた「東京 教師用成塾」を創出させ、実践的な指導を試みている。つまり、これは、養 成段階から教育委員会が教員志望者に対してコミットしていることを示して いる。ここで、高野(2005)が考察しているように、スクールボランティア 参加者も、教員採用に深く関係する東京都の試みのように、採用的な意味合 いで教育委員会から認知されることも予想されることを指摘している。この 状況は、卒業後直ぐに採用するよりも、採用前に、現場からの学生のボラン ティア態度の情報を教育委員会が把握することも可能であるという点では貴 重な情報源になるであろう。また、採用される側の学生にとっても正採用さ

9

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(12)

日本における大学生スクールボランティアの動向と課題 れる前に現場の状況をより知りえることが可能である。このように、双方の ニーズが合致し、またメリットは大きいといえるので、今後の広がりが予想 される。

3.4 スクールボランティア研究

 スクールボランティアに関する研究では、姫野(2006)が指摘しているよ うに、以下の 3 つの側面に分けられる。つまり、1) カリキュラム開発面;2) 学生の学習効果面;3) 大学による支援モデル面-である。これらを包括す る文献レビューは成されていなかったので、文献として入手できる範囲で、

この 3 分類についてレビューを行う。

  1.カリキュラム開発面 :福島(2008)の研究によると、弘前大学教育学 部では 2004 年度に 1 年から 4 年次にわたるカリキュラム改訂を行った際に、

改訂前・後のカリキュラムにおける教育学部の 4 年生のうち、選択科目であ る「学校教育支援実習」としての「学習サポーター実習」を履修した学生(2003 年度当時の入学者 45 名; 2004 年度当時の入学者 64 名)に対して、各々実習前・

後の教職に対する意識調査を実施し、カリキュラムの有効性について検証を 行った例がある。

 廣岡・森脇・根津・松本(2008)の報告によると、三重大学教育学部で は、学生が現場実習に携わることの重要性を認識し、現場と大学との往復関 係を重視した地域・企業連携への学生参加型の教育、つまり、PBL(Problem/

Project Based Leaning) 教育を教育学部全体の教育理念とした。ここでは、

2007 年度には、のべ 36 人の教員による 13 コマの授業が展開された。また、

毎週月曜日を「PBL 教育デイ」とし、学部生と教員が共にグループで省察

して学び合う環境を創出させた。この他に、時間に制約されずに学生が情報

交換できるように Web 上の e-learning システムを構築した。これらの包括的

なカリキュラムは開発により、学生に対する教育の質の向上が今後よりいっ

(13)

そう期待されよう。

 また、村瀬ら(2006)の信州大学教育学部のように、スクールボランティ アが 4 年間を通した教員養成課程に明確に組み込まれ、カリキュラム改革か ら学内の組織創設まで及ぶような例もある。

  2.学生の学習効果面 :姫野(2006)は、放課後学習支援を中心としたスクー ルボランティア学生参加者について、教員の補佐としてのティームティーチ ングによる学習支援グループと、そうでない学生のみによる放課後学習支援 グループに分け、参加終了後に学生に対して意識アンケート調査を行い、両 グループの比較検討を行った。ティームティーチング参加グループでは、授 業進行の不安点がより解決された一方、学生のみの実習グループでは、教職 に就くことの責任感が高まった。原・芦原(2006)は、教職課程履修者に対 して、教育実習後に学生によるスクールボランティアの体験の有・無により、

教職に対する意識や志向性について調査を行った。その結果から、教育実習 終了後も教職志向性の強い学生ほど、教育実習終了後もスクールボランティ アに参与しており、また、スクールボランティアに参加している学生ほど、

教師を志向する意思が継続されていることが明らかになった。

 また、小泉(2008)は、学生時代に学生ボランティアに参加したものに対 して、ボランティア参加前後に志望動機や教職能力に関する認知を調査して おき、その学生が卒業後に実際に教職に就いたものと、そうではない就職先 の場合とでは、これらの面についてどのような相違がみられるのか研究した。

これから、1) 教職に就いた者はそうでない者よりもボランティア参加以前 から既に教職志向が強く、またボランティア参加後に志向が有意に上昇し、 2)

「生徒指導・学級経営」面と「教育技術(事務)」面においては、教職に就い たものは正の相関が見られたが、そうでない者は相関が見られないことが明 らかになった。

  3.大学による支援モデル面 :田実(2006)は、小・中学校や高等学校に

(14)

日本における大学生スクールボランティアの動向と課題 おけるスクールボランティアの活用実践は増えているものの、盲・聾・養護 学校におけるそれはほとんど進展していないことに問題意識を持ち、地域の 養護学校と協力し、「知的障害児支援ボランティア」と銘打ち、制度の立ち 上げと、 「総合的学習」を活用した授業開発を試みた。また、是枝・上田(2007)

は、福祉系大学の特色を生かし、学生が養護学校における社会科見学・遠足 やバザーなどの行事に同行する、単発の「教育ボランティア」の企画を学校 現場と地域の福祉協議会と連携をして活動を行うプログラムを紹介してい る。また、望月(2006)は、教育委員会と大学が連携をし、教育委員会をは じめとした、小・中学校校長会、PTA、地域代表者、国際交流機関、地域 の教育研究会のメンバーが集まり、「学校実践学推進協議会」を発足させた 事例を報告している。学生が現場で有効に活動できるのは、地域組織との連 携が欠かせない。何事も新しい組織を立ち上げるのには、発起人による、事 業モデルの提示、連携機関への “ 根回し ” というファシリテーション、そし て、継続的に熱意などが揃わなくては困難であろう。学生がボランティア活 動を行うには、まずその土台を築き上げておく必要がある。ここで、昨今は 大学が地域支援・交流のためにその役割を荷うことが期待されるが、担当教 員は大学に籠って受身的に待っているのではなく、外部への積極的なマネジ メント力が求められよう。この観点からすると、大学教職員は、組織作りを 怠ることなく進行させているかどうか、反省材料にもなろう。

 この 3 分類以外では、学校や教育委員会などの受け入れ機関の効果につい て、阪根(2006)は、学生がボランティアの意思を示し参加を希望しても、

学生と受け入れ先機関双方のニーズが合わず派遣に至らないケースや、学生 ボランティアに対する受け入れ機関からの懐疑的な意見があることを指摘し ている。ここで、受け入れの学校のニーズを把握するために、香川県下の全 公立小中学校に対し質問紙調査法による研究を行った(有効回答 240 校)。

その結果、1) 実際に受け入れた学校は 16.3%に留まっている点、2) 受け入

(15)

れ側の学生希望人数に達していなく不足している点、3) 学生ボランティア 受け入れ機関の満足度は高い点、4) 学生への旅費や報酬を出している機関 は1割程度と低い点、そして、5) 実際に受け入れた学校とそうではない学 校との比較では前者の方が際立って意義や効果を感じている点、などが明ら かになった。

 3 分類に分けてレビューを行ったように、近年、急速にスクールボランティ ア関連の研究が公表されている。これ以外の多くは、学生が現場に出向いた 後の感想を元にした考察の事例研究が主流であり、これらの多くは教育関連 の学会で口頭発表されている。

4.今後の課題

 以上のスクールボランティアに関する実践研究からそこで指摘された検討 事項を元に、以下、主に、スクールボランティアを推進する大学に対する 6 つの課題の検討を行う。

4.1 大学の支援体制

 学生派遣に対する費用面の問題が挙げられる。具体的には、1) 交通費支 給までをも含まない完全なる “ 無給 ”、2) 出先機関への交通費の支給、3) 交 通費支給が困難な場合の代用措置(給食配給など)、そして、4) 学生への

“ 謝礼 ” のニュアンスを含めた、また個別交通費算出の手間の軽減のための

“ 一律料金 ” や “ 時給 ” での支給、などに分けられる。1) から 3) までの金銭 的な形態に関しては、特に問題は生じないかと予想される。1) については、

学生の好意を尊重しつつも、社会人ではない学生としての置かれた立場を考

慮すると、学生に対する受け入れ先機関ないしは教育委員会からの交通費程

度の支給はむしろ必要ではないかと考える。ただし、久保田(2007)が、あ

る地方自治体のボランティア派遣で、2 年間にわたり学生 1 回の補助として

(16)

日本における大学生スクールボランティアの動向と課題

1,600 円の支給に加え、教員採用の 1 次試験の「総合教養」部門まで免除さ

れることに対して過度な待遇ではないかと疑問を呈しているように、極端な 高額支給の場合には問題点が表出してくるであろう。つまり、そもそも無償 の献身的な行為である “ ボランティア ” 精神としての根底部分に触れる点で あるからである。今後、支給額に関しても一定水準の上下枠が必要となって くるのではないだろうか。

 また、学生がボランティアを希望する際に、学生自ら直接依頼先に申し込 む場合もあるが、多くは、学校・教育委員会などの機関から大学の教職担当 教諭や事務職員などへ募集を依頼する場合が多い。この際に、これら機関と 連携が欠かせず、内容を熟知した学生募集の “ 橋渡し役 ” の担当者がいるこ とが望ましい。いうまでもなく、学生に対して、不安や質疑がある場合など、

その場できめ細かく対応できるからである。また、教育実習でも指摘される 場合があるが、大学側が学生を “ 現場任せ ” 状態にしてしまうことが危惧さ れる。このことは、特に学生が実習先で被害・加害者になるような事故の場 合など、顕著になってくるであろう。現場の児童生徒の支援を行っている学 生に対しては、大学と受け入れ先機関の双方が責任を持って支援にあたるこ とが求められることは当然なので、このように、少なくとも “ 現場任せ ” な らないような大学の人材的な支援が必要になってくるであろう。これに関し ては、既に充実している大学と課題を抱えている大学との相違があるだろう。

4.2 カリキュラム運営

 西園(2006)は、大学が教員としての実践的指導力を育成するためには、

「教員養成としての体系的なカリキュラムの編成が求められる (p. 144)」と指

摘している。このように、学生に授業科目提示する時期(学年)および、他

の科目との関連性・融合性など、教養教育を含むカリキュラム全体の視座に

立って編成することが重要である。つまり、教職科目以外の授業科目、およ

(17)

び時間編成など、全科目との連動・拡大性など、大学全体に関わるカリキュ ラムを再編成することにもなるであろう。例として、教育学部系大学では、

学生がボランティアや大学外でのインターンを行いやすいように、週のうち ある曜日を全日(例:三重大学;廣岡・森脇・根津・松本 , 2008)/ 半日(例:

弘前大学;福島 , 2008)、必修科目をはずしておくという配慮を行っている。

このように、スクールボランティアを円滑に行う時間帯の確保という点だけ でも、大学全体のカリキュラムと関連しているのである。

4.3 ボランティア実習年次

 教育実習は、旧国公立の教員養成系大学において、3 年次に行う大学があ るものの、その他大多数の大学においては 4 年次である。教育実習と同じく 必修科目である「介護等体験実習」は、各大学まちまちであるが、2、3 年 次以降からが多い。これに関しては、大学は実習に先立ち「事前・事後実習」

や単発の「オリエンテーション」を行っている。スクールボランティアでは、

そもそも学生の自主性を重んじた活動であるので、この 2 つほどは系統立て たオリエンテーションを大学が用意していない場合が多いであろうし、また、

過度に系統立ててしまうと、学生の活動意欲がそがれかねない。大学の代わ りに、依頼主の教育委員会や学校においてオリエンテーションを行うケース もある。玉井(2005)の事例では、「大胆にも 1 年生の入学時に、いきなり 学校現場に入り、子どもと触れあう (p. 228)」ことにより、学生の目的意識 が高まったとしている。学生の履修単位数や学生生活の時間は限られている。

介護等体験における現地に赴いた学生の不適切行動(遅刻、服装・服装の乱れ、

施設入所者に対する無配慮な言動など)が少なからずの大学間で問題になっ

ていることとも関連するが、学生に対して、“ 理論よりも、まずは現場を先

に知らせる ” のか、あるいは、 “ 理論を踏まえてから現場に出向かせるのか、 ”

あるいは、“ 上手く組み合わせて同時並行させるのか ” について、効果を検

(18)

日本における大学生スクールボランティアの動向と課題 証することが重要であろう。

4.4 ボランティアの単位化

 スクールボランティア参加者に対しては、単位認定を行っている大学があ る。このなかには、教職を含む一般学生を対象としたもの(例:吉野 , 2006)と、

教育学部や教職課程履修者に限定して発行するものがある。原・芦原(2005)

は、スクールボランティアの単位化により、学生の自発性が損なわれること を危惧している。この疑問に関しては、単位化している大学とそうでない大 学との実践例に基づく、参加学生に対しての動機付けに関する検証が必要で ある。

4.5 ボランティアの理念

 佐久間(2003)によれば、ボランティアを含めて実習中の学生は、「『子ど

も (student)』と『教師(teacher)』を重層的に生きる存在であり、その立場

はきわめて中間的で不安定である」ため、「教師と子どもの間、子どもと親 との間、大学の指導教官と現場教師の間におかれ、問題が起きたときには両 者の板挟みにとなって困難な立場におかれることも少なくない」(p.357)と いう。そのため、実習の恒常化・長期化が進められるならば、こうした問題 に対して、従来の教育実習以上に学生への支援体制が必要であると問題提起 をしている。さらに原理的には、金子(1992)が述べているようにボランティ アとは、あえて自分の身を傷つきやすい「バルネラブル(vulnerable)」な状 態にさらすことによってはじめて、新しい他者との関係を築き、新しい価値 を発見することが可能になるという問題にまで遡ることもできよう。つまり、

学校という「異文化圏」(佐久間, 2003, p.357)に学生を送り出すことによっ

て大学の講義では得られない学びを期待するということは、学生を、ひとた

びは「バルネラブル」で不安定な状況に置くということに他ならないのであ

(19)

る。スクールボランティアに関わる大学や諸機関は、 「実践的指導力」や「現 場との連携」といったスローガンの底に潜む、こうした倫理的問題と対峙す る必要がある。

4.6 実践の検証と研究

 スクールボランティアは、その活動実践が定着しつつある。しかし、その 実践の効果を検証したものは、実践数の増加に見合わずととても少ない。ま た、単に実践研究の数が少ないことだけではなく、それらの多くは、活動内 容を報告し、また学生の感想や担当教員の現場視察などの所見をまとめたも のであり、質的・量的研究の視座に基づいた検証は不十分であり、この点は、

今後の課題であると同時に、研究の “ 宝庫 ” でもあろう。

 このように、スクールボランティアに対する大学からの支援だけでも多く の問題が指摘された。日本においてスクールボランティアが定着しつつある 今こそ、日本の児童・生徒の育成のために支援活動を行っている学生たちに 対して、大学および教育関連の教職員が後方から支援していくことは、たい へん意義深いことである。これまでの実践を振り返り、新たな実践方法や支 援体制を開発し、そしてそれを検証するための研究が求められるであろう。

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Figure 2. スクールボランティアの参加形態 3.3. 教員採用と教員養成の構造的変化  これまでの教員養成モデルでは、大学が教職志望の学生を養成し、各教育 委員会が採用するという構図であった。そして合格者は、採用後に各配属校 で教師としての実践力を習得していった。しかしながら、大学の教育だけで は実践力を身につけることが必ずしも十分ではなく、このため、採用後の離 職者も増えていた実情がある。ここで、東京都教育委員会は全国に先駆けて、 2004 年に都教育委員会独自の教員養成と採用とを実質上合体させた

参照

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